成膜装置、成膜方法、液晶装置、並びにプロジェクタ
【課題】簡素な構成でターゲットに対する基板の姿勢を調整することが可能な成膜装置用の基板搬送系を提供する。
【解決手段】基板搬送系50は、ターゲット11から放出された粒子の飛行領域を横切るように、ターゲット11に対して相対的に基板15を移動させるものであり、基板15が搭載されるトレイ53A,53B,53Cと、トレイ53A,53B,53Cにおけるターゲット11に近い第1位置PT1とターゲット11から遠い第2位置PT2とを支持し、かつ第1位置PT1と第2位置PT2とを通る軸線を横切る方向(移動中心軸51方向)にトレイ53A,53B,53Cを搬送する搬送機構54と、トレイ53A,53B,53Cの第1位置PT1及び/又は第2位置PT2に配設され、搬送機構54に対するトレイ53A,53B,53Cの高さを規定する高さ規定部材55A,55B,55Cとを有する。
【解決手段】基板搬送系50は、ターゲット11から放出された粒子の飛行領域を横切るように、ターゲット11に対して相対的に基板15を移動させるものであり、基板15が搭載されるトレイ53A,53B,53Cと、トレイ53A,53B,53Cにおけるターゲット11に近い第1位置PT1とターゲット11から遠い第2位置PT2とを支持し、かつ第1位置PT1と第2位置PT2とを通る軸線を横切る方向(移動中心軸51方向)にトレイ53A,53B,53Cを搬送する搬送機構54と、トレイ53A,53B,53Cの第1位置PT1及び/又は第2位置PT2に配設され、搬送機構54に対するトレイ53A,53B,53Cの高さを規定する高さ規定部材55A,55B,55Cとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、成膜方法、液晶装置、並びにプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ターゲット材から放出された粒子を基板に付着・堆積させる成膜装置が広く用いられており、例えば、真空槽内に基板を配置した状態で成膜材料を放出させ、その放出粒子を基板の被成膜面に到達させると、その被成膜面上にその材料の膜が成長する。こうした成膜技術としては、例えば、蒸着法、スパッタ法等が知られている。
【0003】
ターゲット材から放出された粒子を被成膜面に斜めに入射させることにより、その被成膜面上に一定の配向性を有する成膜材料の結晶が成長し、その結晶配向性に起因する機能(例えば液晶配向性)を有する膜が得られる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭57−157214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような成膜装置において、ターゲット材から放出された粒子の飛行領域を横切るように、ターゲット材に対して相対的に基板を移動させることにより、ターゲット材からの粒子を被成膜面の全面に付着させることができる。
【0005】
ターゲット材からの粒子を基板に斜めに入射させる場合、成膜条件等に応じて、ターゲット材に対する基板の相対的な姿勢の調整が必要である。しかしながら、成膜時に基板が移動する構成では、基板の姿勢を調整する機構が複雑になりやすい。
【0006】
本発明は、簡素な構成でターゲットに対する基板の姿勢を調整することが可能な基板搬送系、及びそれを備えた成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板搬送系は、ターゲットから放出された粒子の飛行領域を横切るように、前記ターゲットに対して相対的に基板を移動させる基板搬送系であって、前記基板が搭載されるトレイと、前記トレイにおける前記ターゲットに近い第1位置と前記ターゲットから遠い第2位置とを支持し、かつ前記第1位置と前記第2位置とを通る軸線を横切る方向に前記トレイを搬送する搬送機構と、前記トレイの前記第1位置及び/又は前記第2位置に配設され、前記搬送機構に対する前記トレイの高さを規定する高さ規定部材と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の基板搬送系では、基板用のトレイに配設される高さ規定部材の形状に応じて、ターゲットに対する基板の傾き及び/又はターゲットと基板との距離が変化する。
すなわち、トレイにおけるターゲットに近い第1位置及び/又はターゲットから遠い第2位置について、高さ規定部材によって搬送機構からの高さを変化させることにより、簡素な構成でありながら、ターゲットに対する基板の相対的な姿勢を調整することができる。
さらに、本発明の基板搬送系によれば、ターゲットに対する基板の姿勢を、基板ごとに調整することが可能である。
【0009】
本発明の基板搬送系において、前記高さ規定部材は、板状部材である構成とすることができる。
あるいは、前記高さ規定部材は、前記トレイの一部である構成とすることができる。
これらにより、構成の簡素化が図られる。
【0010】
本発明の成膜装置は、ターゲットから放出された粒子を基板の一面に斜めに入射させかつ付着させる成膜装置であって、本発明の基板搬送系を備える、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の成膜装置では、ターゲットから放出された粒子が基板の一面に斜めに入射することから、配向性を有する膜を形成することができる。また、この成膜装置では、本発明の基板搬送系を備えることにより、構成の簡素化が図られるとともに、ターゲットに対する基板の相対的な姿勢に基づく膜構造の制御が容易となる。
【0012】
本発明の成膜装置において、前記基板の一面に前記粒子が入射するときの入射角度が15°以下である構成とすることができる。
この構成によれば、水平配向型の液晶配向に適した膜を形成することができる。
【0013】
また、本発明の成膜装置において、前記ターゲットは、主として無機材料を含む構成とすることができる。
この構成によれば、無機材料を主材料とする膜を形成することができる。
【0014】
本発明の液晶装置は、本発明の成膜装置で成膜された配向膜を備えることを特徴とする。
本発明の液晶装置によれば、簡素な構成の成膜装置を用いて配向膜が形成されるから、低コスト化が図られる。
【0015】
本発明の液晶装置において、前記配向膜は、無機材料を主成分とする無機配向膜である構成とすることができる。
一般に、無機材料は、有機材料に比べて、化学的安定性、耐光性に優れている。無機材料を主成分とする無機配向膜は、光劣化が少なく、長期にわたり安定した配向特性を有する。
【0016】
本発明のプロジェクタは、本発明の液晶装置を備える、ことを特徴とする。
本発明のプロジェクタによれば、本発明の液晶装置を備えることから、低コスト化が図られる。
【0017】
本発明の成膜方法は、ターゲットから放出された粒子を基板の一面に斜めに入射させかつ付着させる成膜方法であって、前記ターゲットから放出された粒子の飛行領域を横切るように、前記ターゲットに対して相対的に前記基板を移動させるとともに、前記基板の移動時における前記ターゲットに対する前記基板の相対的な姿勢を、前記基板ごとに調整する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の成膜方法では、ターゲットに対する基板の相対的な姿勢を、基板ごとに調整することから、多品種生産に好ましく利用できる。
【0019】
本発明の成膜方法において、前記相対的な姿勢は、前記ターゲットに対する前記基板の傾き、及び前記ターゲットと前記基板との距離(TS距離)、の少なくとも1つを含む構成とすることができる。
こうした姿勢の調整により、膜構造の制御が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の成膜装置の基本構成を説明するための図であり、図2は、図1の成膜装置の要部構成を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、成膜装置IBS1は、真空雰囲気内に配置されたターゲット11に対して高エネルギーに加速したイオンビーム12を照射し、そのビーム12の衝突によってターゲット原子を放出させ、その放出粒子を基板15上に付着・堆積させるイオンビームスパッタリング装置であり、成膜室としての真空槽20、イオンガン30、及び搬送系40等を主体に構成されている。イオンビームスパッタ法を用いた成膜は、高真空中でのスパッタが可能である、イオンや電子による膜の損傷が少ない、高融点物質の薄膜化が可能である、などの利点を有する。
【0022】
真空槽20には、真空排気系21が接続されている。真空排気系21が稼動すると、真空槽20の内部が真空排気され、真空槽20の内部に真空雰囲気が形成される。また、真空槽20内には、放出源としてのターゲット11が配置されている。真空排気系21によって真空槽20内部が真空排気されると、ターゲット11は真空雰囲気に置かれる。成膜圧力が高真空圧(例えば5×10−1Pa以下、より好ましくは5×10−2以下)であると、イオンビーム12の直進性が向上するとともに、真空槽20内におけるスパッタ粒子の散乱(飛行方向性の乱れ)が抑制される。
【0023】
ターゲット11は、無機配向膜形成用の材料として、SiO2 、SiO、Al2O3、ZnO2 、Ta2O3、TiO2 、Si3N4、ITO(インジウム錫酸化物)等の他、様々な無機材料(無機酸化物、無機窒化膜、金属酸化物、金属窒化膜)が好ましく適用される。1種あるいは2種以上の材料を組み合わせてターゲットに用いることもできる。SiO2は、誘電率が特に低く、また、高い光安定性を有する。無機配向膜の上層膜や下層膜、あるいは無機配向膜以外の膜形成用として、上記とは別の材料をターゲット11に用いることも可能である。
【0024】
イオンガン30は、独立したイオン源にスパッタ用のガスを導入し、そのガスをイオン化しかつ加速させて放出口31からビーム状に引き出すものであり、ターゲット11の斜め側方であって、ターゲット11を挟んで基板15とは反対側に配されている。イオンガン30の放出口31は、真空槽20の内部でターゲット11の表面であるスパッタ面11aに向けられていて、イオンガン30からのイオンビーム12は、ターゲット11のスパッタ面11aに斜めに入射する。なお、イオンガン30とは別に、成膜前または成膜時の基板15に、アシスト用のイオン照射を行ったり、アシスト用のレーザ照射を行ったりするアシスト手段を備えてもよい。
【0025】
ここで、スパッタ面11aとイオンビーム12のビーム軸32との交点(照射点)をPtとし、照射点Ptを通るスパッタ面11aの法線16とビーム軸32とが成す角度(以後、ビーム角(beam angle)と称する。)をθ1とするとき、 θ1<90° であり、好ましくは、45°≦θ1≦70° であり、例えばθ1=45°である。
【0026】
スパッタ用のガスとしては、Ar、He、Ne、Kr、Xeの他に、ターゲット11に対して不活性な様々な不活性ガスを適用することができる。例えば、窒素などの分子イオン、中性粒子、クラスターイオン等を用いてもよい。イオンビーム12は所定のビーム幅を有しており、イオンビーム12がスパッタ面11aに入射すると、そのビーム幅に応じた広さの領域がスパッタリングされ、スパッタ粒子が真空槽20内部に放出される。
【0027】
搬送系40は、基板15をターゲット11に対して相対的に移動させる基板搬送系50を含む。成膜時において、基板15は、ターゲット11から離れた位置でありかつターゲット11の斜め側方であって、ターゲット11からのスパッタ粒子の放出分布範囲内に配される。基板搬送系50は、ターゲット11から放出された粒子の飛行領域を横切るように、ターゲット11に対して相対的に基板15を移動させる。これにより、スパッタ粒子が、ターゲット11から基板15の移動軸を横切るように放出され、基板15の被成膜面15aに衝突することによりその被成膜面15a上に堆積する。
【0028】
ここで、ある1点から放出されるスパッタ粒子は、そのエネルギー分布・角度分布を正確に予測することは難しいものの、少なくとも三次元的な広がりを持って飛行する。スパッタ粒子の放出角度分布は、一般に余弦則(law of cosines)に従うことが知られている。放出分布は、軸対称二次元断面が扇状やハート状(蝶ねじ状)とも言われ、イオンビームのパワーなどのスパッタリング条件に応じて変化することがある。また、スパッタ用ビームがターゲット表面に対して斜めに入射されると、スパッタ粒子の分布中心軸もターゲット表面に対して斜めに傾く。
【0029】
基板15の被成膜面15aにおける任意の位置である成膜点(本例では被成膜面15aの中心)をPsとするとき、基板15は、スパッタ粒子の見込み分布中心軸が成膜点Psを通るように配置される。すなわち、スパッタ粒子の見込み分布中心軸はターゲット11の表面であるスパッタ面11aに対して傾いているから、基板15は、そのスパッタ面11aの法線16に対して、イオンビーム12のビーム軸32とは逆方向に倒れた位置に配される。
【0030】
照射点Ptと成膜点Psとを結ぶ線分PtPsと、スパッタ面11aの法線16とが成す角度(以後、基板15の倒れ角(slant angle)と称する。)をθ2とするとき、 θ2<90° であり、好ましくは、 45°≦θ2<90° である。
【0031】
図2に示すように、基板搬送系50は、上記倒れ角θ2に基づく移動中心軸51に沿って、さらに線分PtPsと基板15の被成膜面15aとの間に所定の角度が形成された状態を維持しながら、基板15を移動させる。すなわち、成膜時における基板15の移動方向は、ビーム軸32と線分PtPsとを含む仮想平面を横切る方向であり、また、基板15の被成膜面15aは、移動中心軸51を中心に線分PtPsに対して傾いている。なお、本例では、移動中心軸51と線分PtPsとは直交し、また、移動中心軸51は基板15の被成膜面15aの中心の軌跡と一致している。
【0032】
ここで、図1に戻り、線分PtPsと基板15の被成膜面15aとが成す角度、すなわち、移動中心軸51を中心とした線分PtPsに対する基板15(被成膜面15a)の傾斜角(tilt angle)をθ3とするとき、 θ3<90°であり、好ましくは θ3<45° であり、より好ましくは θ3≦15° である。
【0033】
図3は、基板搬送系50の構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図3に示すように、基板搬送系50は、基板15が搭載されるトレイ53と、トレイ53を搬送する搬送機構54と、トレイ53に配設された高さ規定部材55とを有する。トレイ53には、ターゲット11からの粒子を基板15の被成膜面15aに向けて通過させるための開口部53aが設けられている。トレイ53に対する基板15の搭載時において、トレイ53に対する基板15の配置角度が決定される。
【0034】
搬送機構54は、トレイ53におけるターゲット11に近い第1位置PT1と前記ターゲット11から遠い第2位置PT2とを支持し、かつ第1位置PT1と第2位置PT2とを通る軸線ATを横切る方向(移動中心軸51方向)にトレイ53を搬送するように構成されている。搬送機構54としては、例えば、リニア駆動機構、ローラコンベア、ベルトコンベア等、様々な形態が適用可能である。
【0035】
高さ規定部材55は、搬送機構54に対するトレイ53の高さ、すなわち搬送機構54における支持面とトレイ53との距離LTを規定するものであり、トレイ53における第1位置PT1及び/又は第2位置PT2に配設される。本例では、高さ規定部材55は、板状部材からなり、トレイ53におけるターゲット11から遠い縁部のみに配設されている。
【0036】
図4は、ターゲット11に対する基板15の相対的な姿勢の変化の様子を模式的に示す図である。
図4の例では、3種類のトレイ53A、53B、53Cを示している。各トレイ53A、53B、53Cにおけるターゲット11から遠い縁部には、高さ規定部材55A、55B、55Cが配設されている。高さ規定部材55A、55B、55Cは互いに形状が異なり、高さ規定部材55A、55B、55Cの各形状に応じて、ターゲット11から遠い位置(第2位置PT2)において、搬送機構54の支持面からの各トレイ53A、53B、53Cの高さが互いに異なる。すなわち、その第2位置PT2における搬送機構54からの各トレイ53A、53B、53Cの距離を、LT(A)、LT(B)、LT(C)とするとき、LT(C)<LT(A)<LT(B)、である。また、ターゲット11に近い位置(第1位置PT1)において、搬送機構54の支持面からの各トレイ53A、53B、53Cの高さは等しい。
【0037】
この場合、基板15の倒れ角θ2に関して、トレイ53B<トレイ53A<トレイ53C、である。また、基板15の傾斜角θ3に関して、トレイ53B<トレイ53A<トレイ53C、である。なお、θ2に比べて、θ3の変化量は小さい。さらに、照射点Ptと成膜点Psとを結ぶ線分PtPsの長さ、すなわち照射点Ptと成膜点Psとの間の距離(TS距離)に関して、トレイ53C<トレイ53A<トレイ53B、である。
【0038】
このように、本例の基板搬送系50では、基板15用のトレイ53に配設される高さ規定部材55の形状に応じて、ターゲット11に対する基板15の傾き(θ2、θ3)やターゲット11と基板15との距離(TS距離)が変化する。すなわち、トレイ53におけるターゲット11から遠い第2位置PT2について、高さ規定部材55によって搬送機構54からの高さを変化させることにより、ターゲット11に対する基板15の姿勢を調整することができる。
【0039】
上記の基板15の姿勢調整に係る基板搬送系50の構成、すなわち、トレイ53に任意形状の高さ規定部材55を取り付ける構成は簡素でありかつ柔軟性が高い。さらに、トレイ53ごとに高さ規定部材55の形状を変化させることで、ターゲット11に対する基板15の姿勢を、基板15ごとに調整することが可能である。基板15ごとにターゲット11に対する姿勢を調整する成膜方法は、多品種生産に好ましく適用される。
【0040】
なお、上記の例では、トレイ53におけるターゲット11から遠い位置(第2位置PT2)についてのみ、高さ規定部材55によって搬送機構54からの高さを変化させる構成であるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、トレイ53におけるターゲット11に近い位置(第1位置PT1)についても、高さ規定部材55によって搬送機構54からの高さを変化させる構成としてもよい。トレイ53におけるターゲット11に近い第1位置PT1及び/又はターゲット11から遠い第2位置PT2について、高さ規定部材55によって搬送機構54からの高さを変化させることにより、簡素な構成でありながら、ターゲット11に対する基板15の相対的な姿勢を調整することができる。
【0041】
また、高さ規定部材55の形態は、板状部材に限らず、他の形態でもよい。例えば、高さ規定部材55は、トレイ53の一部としてトレイ53と一体的に形成されたものであってもよい。あるいは、高さ規定部材55は、形状を調整自在な機構を有する形態であってもよい。
【0042】
図1に戻り、線分PtPsに沿って進行するスパッタ粒子は、上記傾斜角θ3に基づき、基板15の被成膜面15aに斜めに入射する。実際には、スパッタ粒子は、三次元的な広がりを持って進行するから、基板15に対するスパッタ粒子の入射方向は様々である。また、ターゲット11に近いほど粒子密度が高く、離れるほど粒子密度が低い。
【0043】
本例では、被成膜面15aに対するスパッタ粒子の入射方向を規制することを目的として、照射点Ptと成膜点Psとの間の距離(TS距離)が制御されるとともに、ターゲット11と基板15との間にコリメータ110が配置されている。
【0044】
ターゲット11から放出されたスパッタ粒子のうち、分布中心軸に沿って進行する比較的高エネルギーのスパッタ粒子は、比較的遠方の地点に到達する。これに対して、分布中心軸からずれて進行する比較的低エネルギーのスパッタ粒子は、その遠方地点に到達しない。したがって、TS距離を制御することにより、被成膜面15aに対するスパッタ粒子の入射方向を規制することができる。例えば、TS距離が長いほど、スパッタ粒子の入射方向は、分布中心軸(例えば線分PtPs)に平行な方向に近づく。TS距離を制御する際には、イオンビーム12の幅も適切に制御される。
【0045】
本例では、基板15の倒れ角θ2が45°以上90°未満であり、また、基板15の傾斜角θ3が45°未満であることにより、TS距離が比較的短くても、被成膜面15aと非平行な方向、すなわち、被成膜面15aに対して傾斜する方向に関して、スパッタ粒子の入射方向が規制される。ただし、被成膜面15aと平行な方向、すなわち、被成膜面15aと平行な面内でのツイスト方向に関しては、TS距離が比較的短いと、基板15の傾斜角θ3を小さくするだけでは、スパッタ粒子の入射方向を規制するのは難しい。本例では、このツイスト方向に関する入射方向の規制を、コリメータ110によって行う。
【0046】
図2に示すように、コリメータ110は、基板15の移動方向(本例では、被成膜面15aと平行な方向)に互いに離間して並ぶ複数の規制板111を有している。ターゲット11から放出された粒子のうち、この複数の規制板111同士の隙間を通過した粒子は基板15に向けて飛行を続ける。一方、規制板111に衝突した粒子の多くは、規制板111に捕捉されるか、エネルギーが減衰して基板15に到達しない。したがって、このコリメータ110を、ターゲット11と基板15との間に配置することで、基板15の移動方向(被成膜面15aと平行な方向、ツイスト方向)に関し、スパッタ粒子の入射方向を規制することができる。なお、複数の規制板111同士の隙間(スリットの幅)が狭いほど、被成膜面15aに対するスパッタ粒子の入射方向が揃うことになる。
【0047】
上述したビーム角θ1、基板15の倒れ角θ2、及び基板15の傾斜角θ3は、目標とする成膜結晶構造に応じて適宜設定される。本例では、θ1、θ2、及びθ3の制御により、基板15の被成膜面15aがターゲット11の斜め側方位置においてターゲット11のスパッタ面11aに対して斜めになるように配置されるとともに、スパッタ粒子の入射方向と被成膜面15aとの成す角度(入射角度)が90°未満に設定され、その結果、スパッタ粒子が被成膜面15aに斜めに入射し、被成膜面15aに成膜材料の斜方結晶が成長する。
【0048】
また本例では、θ2及びθ3の制御によって、被成膜面15aに対する傾斜方向に関してスパッタ粒子の入射方向が規制されるとともに、コリメータ110によって基板15の移動方向(被成膜面15aと平行な方向、ツイスト方向)に関するスパッタ粒子の入射方向が規制される。その結果、TS距離の伸長化、すなわち装置の拡大化を招くことなく、結晶配向性に優れた斜方柱状構造を有する膜を形成することができる。
【0049】
さらに本例では、イオンビームスパッタ法を用いることにより、次に説明するように、被成膜面15aに対する成長方位角が小さくかつ緻密質な斜方構造を有する膜を形成することができる。
【0050】
図5は、基板15に飛来した粒子によって斜方結晶が成長する様子を示している。
図5に示すように、一般に、蒸着法ではクラスター状態の比較的大きな材料粒子が基板に向けて飛行し、イオンビームスパッタ法では分子状態の比較的小さな材料粒子が基板に向けて飛行する。そのため、蒸着法では、被成膜面に対して結晶成長方位が立つ傾向、すなわち被成膜面に対する粒子の入射角度に比べてその成長方位の角度が大きくなる傾向にある。そして、蒸着法では、特に粒子の入射角度が小さくなると、結晶の影となる部分での結晶成長が抑制され(シャドーイング)、その結果、結晶同士の間隔が比較的大きいポーラス状態の膜が形成される傾向にある。
【0051】
これに対し、イオンビームスパッタ法では、入射角度と結晶成長方位との相関性が高く、さらに上記のシャドーイングが生じにくいことから、入射角度が小さくても、その入射角度と同程度の成長方位角を有して結晶が成長するとともに、結晶同士の間隔の広がりが比較的小さい。すなわち、イオンビームスパッタ法では、成長方位角が小さくかつ緻密質な斜方柱状構造を有する結晶膜を形成することができる。こうした膜は、水平配向型の液晶の配向膜として好ましく適用される。ここで、配向膜は、液晶分子の配向方向を揃える機能と、液晶分子のプレチルト角を制御する機能とを有しており、水平配向型のプレチルト角は、例えば0°〜20°である。
【0052】
図1に戻り、イオンビームスパッタ法を用いて水平配向型液晶の配向膜を形成する場合、被成膜面15a上の任意の点に入射するスパッタ粒子の入射角度の最大値(最大入射角度θ5)は15°以下に制限されるのが好ましく、入射角度の最大値と最小値の差である入射見込み角度Δθは10°以下に制限されるのが好ましい。例えば、基板15の傾斜角θ3が15°以下にされることで最大入射角度θ5が15°以下にされ、TS距離が長くされることで、見込み入射角度Δθも10°以下と小さくされる。これにより、イオンビームスパッタ法を用いて、水平配向型の液晶配向に適した膜を形成することができる。
【0053】
結晶の成長過程に応じて、基板15の傾斜角θ3を変化させてもよい。例えば、水平配向型液晶の配向膜を形成する場合において、成長初期においてはθ3を15°より大きくし、成長中期あるいは後期以降においてθ3を15°以下とする。これにより、成長初期段階における膜の成長レート(成膜レート)を高め、処理時間の短縮化を図ることができる。また、他の膜の形成においては、基板15の傾斜角θ3は、15°以下に限定されず、最大入射角度θ5も、15°以下に限定されない。また、イオンビーム12とは別に、基板15に対してアシスト用のイオン照射を行ったり、アシスト用のレーザ照射を行ったりすることにより、膜の結晶学的性質などの膜特性を制御することが可能である。
【0054】
図2に示すように、ターゲット11と基板15との間にはさらに、基板15の被成膜面15aに対するスパッタ粒子の入射領域を規制することを目的として、遮蔽板120が配置されている。遮蔽板120は、粒子の通過を遮る遮蔽部121,122と、遮蔽部121と122との間に形成されて粒子を通過させるための開口部123とを有する。本例では、遮蔽板120は、コリメータ110と基板15との間において基板15の被成膜面15aの隣接位置に配置され、その遮蔽部121,122は互いに対向する縁部分が間隔を空けて同一平面内に配置され、遮蔽部121,122を含む平面は基板15の被成膜面15aと平行である。遮蔽板120は、遮蔽部121と122とが一体化された形態であってもよく、遮蔽部121と122との距離を調整可能な形態であってもよい。
【0055】
図6は、図1に示す矢視A方向から見た模式的な平面図である。なお、以後の説明において、基板15の移動方向(走査方向、基板15の移動中心軸51と一致する方向)をY方向とする。
【0056】
図6に示すように、遮蔽板120の開口部123は、ターゲット11からの距離に応じて基板15の移動方向(Y方向)に関する幅が異なる。具体的には、遮蔽部121,122における互いに対向する縁部分の両端のうち、ターゲット11から遠い方の縁部は曲線を有しており、近い方の縁部の間隔よりも遠い方の縁部の間隔が広がっている。それに伴い、遮蔽板120の開口部123は、ターゲット11から離れる方向に沿って曲線を描きながらその幅が徐々に広くなっている。すなわち、遮蔽板120の開口部123は、ターゲット11に近い方の幅が狭く(幅狭部123a)、遠い方の幅が広い(幅広部123b)。
【0057】
なお、遮蔽板120の形態は、上記の例に限定されない。例えば、遮蔽板120は、ターゲット11から離れる方向に沿って段階的に広くなる開口部を有する形態であってもよい。あるいは、遮蔽板120は、複数の開口部を有する形態であってもよい。
【0058】
成膜時において、遮蔽板120(遮蔽部121,122)と基板15の被成膜面15aとは平行であり、その平行な状態を維持したまま、基板15が一定速度で遮蔽板120に対して相対的にY方向に移動(走査移動)する。この基板15の移動と同時に、遮蔽板120の開口部123を通過したスパッタ粒子が、基板15の被成膜面15aに入射する。そして、基板15の被成膜面15aの全領域が遮蔽板120の開口部123を横切ることにより、その被成膜面15aの全領域にスパッタ粒子が付着する。
【0059】
スパッタ粒子が90°未満の入射角度で被成膜面15aに入射する場合には、被成膜面15aにおけるターゲット11側の端部と反対側の端部との間にターゲット11からの距離に比較的大きな差が生じ、また、ターゲット11から近い位置に比べ、遠い位置では、長い距離を飛行する分だけスパッタ粒子が拡散されるので、スパッタ粒子の密度が小さくなる。
【0060】
前述したように、遮蔽板120の開口部123は、ターゲット11に近い方の幅が狭く、遠い方の幅が広い。そのため、被成膜面15aにおけるターゲット11に近い部分ほど、開口部123を介してターゲット11に露出される時間が短い。すなわち、基板15の被成膜面15aのうち、ターゲット11に近い部分は密度の高い粒子に短時間晒され、遠い部分は密度の低い粒子に長時間晒される。その結果、被成膜面15aのターゲット11に近い部分と遠い部分とに略等しい量の粒子が到達し、被成膜面15aに膜厚均一な膜が形成される。
【0061】
さらに、本例では、遮蔽板120の開口部123を通過するスパッタ粒子は、コリメータ110によって基板15に対する入射方向が規制されているから、基板15の被成膜面15aに形成される膜は、膜厚均一であることに加え、配向方向が揃った斜方構造を有する。基板15の被成膜面15aの全領域が開口部123を複数回繰り返し通過することにより、1回通過することにより形成される膜よりも、膜厚の大きい膜を形成することができる。
【0062】
なお、遮蔽板120の開口部123とは別の場所から、基板15に対してスパッタ粒子が入射することを防止するために、遮蔽板120の外周縁の外側には、スパッタ粒子の飛行領域を制限する防着板が適宜配設される。
【0063】
ここで、コリメータ110における複数の規制板111の間隙の形状は、照射点Ptと成膜点Psとの間の距離(TS距離)、ターゲット11におけるビーム12の照射領域35の大きさ(放出領域の大きさ)、基板15の配置空間の圧力(成膜圧力)、コリメータ110の配設位置、及び遮蔽板120の開口部123の形状、等に基づいて定められる。本例では、複数の規制板111の間隙における幅Laと線分PtPsの軸方向に関する深さLbとの比(アスペクト比)が遮蔽板120の開口部123における幅狭部123aの幅Lcと全体の開口長さLdの比とほぼ同じであって、例えば、La:Lb=1:5、である。なお、このアスペクト比は一例であって、本発明はこれに限定されない。アスペクト比La/Lbが小さくなるほど、被成膜面15aに対するスパッタ粒子の入射方向は揃うものの、コリメータ110を通過する粒子の量が少なくなって成膜レートが低下する。成膜レートは、ターゲット11に対するビーム12の照射領域35を変化させることで制御することが可能である。
【0064】
なお、コリメータ110の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、基板15の移動方向に関して、中央部と端部とでスリット幅が異なる形態としてもよい。また、複数の板によって開口断面が格子状となる形態であってもよい。
【0065】
遮蔽板120の形状も特に限定されるものではなく、複数の開口部を有する形態としてもよい。また、遮蔽板120の開口部の幅を、ターゲット11から遠い側からターゲット11に近い側へ向かって段階的に狭くしてもよい。
【0066】
基板15の形状も円盤状に限定されるものではなく、長方形、正方形、楕円等種々の形状の基板を用いることができる。
【0067】
また、ターゲット11をスパッタリングする方法は、上述したようなイオンビームスパッタ法に限定されず、真空槽20内部にスパッタガスを供給しながら真空排気し、真空槽20内部に所定圧力の真空雰囲気を維持しながら、ターゲット11に負電圧を印加し、スパッタリングを行ってもよい。
【0068】
また、成膜材料を収容した容器の開口や、成膜材料の液面(放出源、ターゲット)から真空槽内部に成膜材料の蒸気を放出して成膜を行う蒸着法も本発明に含まれる。
【0069】
また、本発明は、基板15だけを移動させながら成膜を行う場合に限定されない。基板15を固定した状態で、コリメータ110、遮蔽板120、及びターゲット11を一緒に移動させながら成膜を行ってもよいし、基板15、コリメータ110、遮蔽板120、及びターゲット11を移動させながら成膜を行ってもよい。なお、イオンビームスパッタリングで成膜を行う場合には、ターゲット11を固定した状態でイオンビーム12の照射位置を移動する、又はターゲット11の移動と一緒にイオンビーム12の照射位置を移動することでターゲット11を移動させることができる。
【0070】
図7及び図8は、図1及び図2の成膜装置IBS1の変形例を示している。
図7の例では、真空槽内に、複数のターゲット11A,11B,11Cが配設され、複数のターゲット11A,11B,11Cのうちのいずれかがイオンビーム12の照射位置に選択的に配置される。複数のターゲット11A,11B,11Cは、同一材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0071】
図8の例では、真空槽内において、互いに異なる位置に複数のターゲット11D,11Eが配置されており、各配置位置においてターゲット11D,11Eから粒子が放出される。1つのイオンガンから各ターゲット11D,11Eにイオンビームを照射する構成であってもよく、複数のイオンガンから複数のターゲット11D,11Eに対して個別にイオンビームを照射する構成であってもよい。
【0072】
こうした多元スパッタリングは、成膜される膜構造の制御を行ったり、積層構造の膜を形成したりするのに好ましく用いられる。この場合、必要に応じて、ターゲットに対する基板の姿勢(傾き、TS距離など)が制御される。積層膜を形成する場合、例えば、配向膜の下地膜として、柱状構造を必要としない膜を形成することができ、イオンビームスパッタ法では、緻密質な構造を有する膜を形成することができるから、例えば、基板からの溶出物質の移動を遮断するイオンバリア膜を形成することができる。なお、膜構造の制御や積層膜の形成に際しては、1つの真空槽(成膜室)で行う方法に限らず、複数の真空槽(成膜室)で行う方法を採用してもよい。
【0073】
図9及び図10は、図1及び図2の成膜装置IBS1の別の変形例を示している。また、図11は、図9に示す矢視B方向から見た模式的な平面図である。なお、上述した成膜装置IBS1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0074】
図9、図10、及び図11に示すように、成膜装置IBS2は、前記の成膜装置IBS1と同様に、真空槽20、イオンガン30、及び搬送系40等を主体に構成され、ターゲット11と基板15との間には、コリメータ110と、遮蔽板120とが配置されている。ビーム角θ1は、 θ1<90° であり、好ましくは、45°≦θ1≦70° であり、例えばθ1=45°である。基板15の倒れ角θ2は、 θ2<90° であり、好ましくは、 45°≦θ2<90° である。基板15の傾斜角θ3は、 θ3<90°であり、好ましくは θ3<45° であり、より好ましくは θ3≦15° である。
【0075】
また、本例の成膜装置IBS2は、前記の成膜装置IBS1と異なり、コリメータ110と遮蔽板120とが一体となって治具(整流治具100)を構成している。すなわち、コリメータ110は、基板15の移動方向(本例では、被成膜面15aと平行な方向)に互いに離間して並ぶ複数の規制板111を有しており、遮蔽板120は、粒子の通過を遮る遮蔽部121,122と、遮蔽部121と122との間に形成されて粒子を通過させるための開口部123とを有している。そして、遮蔽板120の開口部123における開口長さLdと同程度の長さを有して複数の規制板111が形成され、遮蔽板120の前面にコリメータ110が配設されている。
【0076】
本例の成膜装置IBS2においても、上記傾斜角θ3に基づき、ターゲット11から放出されたスパッタ粒子が基板15の被成膜面15aに斜めに入射する。そして、コリメータ110によってスパッタ粒子の入射方向が規制されるとともに、遮蔽板120によってスパッタ粒子の入射領域が規制され、その結果、配向方向が揃った膜厚均一な斜方構造を有する膜が基板15上に形成される。
【0077】
さらに本例では、コリメータ110と遮蔽板120とが一体となって整流治具100を構成していることから、洗浄時などにおけるその治具100の搬送が容易である。例えば、コリメータ110及び遮蔽板120に堆積した成膜材料を洗浄する際に、整流治具100の搬送手段によって、コリメータ110と遮蔽板120とを同時かつ容易に真空槽20内から外部に搬出することができる。また、形態が異なる複数種類の整流治具100を用意しておき、目標とする成膜構造に応じて任意の整流治具100を選択的に使用するといったことも容易に行うことができる。
【0078】
(液晶装置)
次に、本発明の液晶装置について説明する。
図12は、本発明の液晶装置の一例を概略的に示す平面図であり、図13は、その液晶装置の部分断面図である。
【0079】
図12及び図13に示すように、液晶装置500は、ガラスや石英等の透明な材料からなる互いに対向配置された基板502及び基板503と、この基板502と基板503との間に挟持された液晶層504と、基板502と基板503とを貼り合わせるためのシール材505(接着剤)とを備えて構成されている。ここで、この液晶装置500は、液晶を水平配向させる水平配向型であり、また、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等のスイッチング素子を有するアクティブマトリクス方式の透過型液晶装置である。
【0080】
図12に示すように、基板502の中央部には画像作製領域501が形成され、その画像作製領域501の周縁部にシール材505が配設されている。画像作製領域501内において、基板502と基板503との間に液晶層504(図13参照)が封止されている。なお、この液晶装置500では、塗布法により液晶を直接基板上に配置したことから、シール材505には液晶の注入口が設けられていない。シール材505の外側には、不図示の走査線に走査信号を供給する走査線駆動素子510と、不図示のデータ線に画像信号を供給するデータ線駆動素子511とが実装されている。その駆動素子510,511から、基板502の端部に形成された接続端子530にかけて、配線531が引き廻されている。
【0081】
一方、基板503には、共通電極521が形成されている。この共通電極521は画像作製領域501のほぼ全域に形成され、共通電極521の四隅には基板間導通部525が設けられている。その基板間導通部525から接続端子530にかけて、配線532が引き廻されている。
そして、外部から入力された各種信号が、接続端子530を介して画像作製領域501に供給されることにより、液晶装置500が駆動されるようになっている。
【0082】
図13に示すように、基板502の液晶側の表面には、マトリクス状に配列された複数の画素電極520が形成されている。具体的に、その基板502の表面には、マトリクス状に配列された画素電極520、この画素電極520に接続されたスイッチング素子(不図示)、及びこのスイッチング素子に接続された金属配線(不図示)等が設けられ、さらに、画素電極520を覆うように配向膜550が設けられている。
基板503の液晶側の表面には、例えばITO等の透明な材料により形成された共通電極521が形成されており、さらに、この共通電極521を覆うように配向膜551が設けられている。
【0083】
基板502と基板503との間に挟持された液晶層504は、ネマチック液晶からなる。ネマチック液晶分子は、正の誘電率異方性を有するものであり、非選択電圧印加時には基板に沿って水平配向し、選択電圧印加時には電界方向に沿って垂直配向する。またネマチック液晶分子は、正の屈折率異方性を有するものであり、その複屈折と液晶層厚との積(リタデーション)Δndは、例えば約0.40μm(60℃)である。なお、基板502の配向膜550による配向規制方向と、基板503の配向膜551による配向規制方向とは、約90°ねじれた状態に設定されている。すなわち、この液晶装置500は、TN(Twisted Nematic)モードで動作する。
【0084】
基板502及び503の液晶と反対側の表面にはそれぞれ、偏光板560,561が貼り付けられている。偏光板560,561は、例えばポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素をドープした材料等からなり、その吸収軸方向の直線偏光を吸収しかつ透過軸方向の直線偏光を透過する機能を有する。基板502側の偏光板560は、その透過軸が配向膜550の配向規制方向と略一致するように配置され、基板503側の偏光板561は、その透過軸が配向膜551の配向規制方向と略一致するように配置されている。放熱性の向上のために、サファイヤガラスや水晶等の高熱伝導率材料からなる支持基板上に偏光板560,561を装着し、液晶装置500から離間配置することが望ましい。基板503側から入射する光のうちの偏光板561の透過軸と一致する直線偏光のみが偏光板561を透過して液晶層504に入射する。
【0085】
非選択電圧印加時においては、基板に対して水平配向した液晶分子が液晶層504の厚さ方向に沿って約90°ねじれたらせん状に積層配置され、液晶層504に入射した直線偏光は、約90°旋光されて液晶層504から射出する。この直線偏光は、偏光板560の透過軸と一致し、偏光板560を透過する。
一方、選択電圧印加時においては、液晶分子が基板に対して垂直配向しているから、液晶層504に入射した直線偏光は、旋光されることなく液晶層504から射出する。この直線偏光は、偏光板560の透過軸と直交し、偏光板560を透過しない。
【0086】
上述した液晶装置500では、配向膜550,551として、無機材料を主成分とする無機配向膜を採用しており、その無機配向膜が上述した成膜装置及び成膜方法を用いて形成されている。ポリイミド等の有機材料を主成分とする配向膜は、高強度の光や熱によって有機物がダメージを受けやすい。例えば、有機物が光によって分解するとともに、吸収熱でその分解が促進される。これに対して、無機材料を主成分とする無機配向膜は、光劣化が少なく、長期にわたり安定した配向特性を有する。また、上述した成膜装置及び成膜方法を用いて形成された配向膜は、配向性に優れた斜方構造を有しかつ膜厚均一であることから、液晶装置500は動作安定性に優れる。
【0087】
無機材料としては、SiO2 、SiO、Al2O3、ZnO2 、Ta2O3、TiO2 などの他、様々な無機材料(無機酸化物、金属酸化物)が採用される。無機配向膜の平均厚さは、例えば、0.02〜0.3μmであるのが好ましく、0.02〜0.08μmであるのがより好ましい。無機配向膜の厚さが薄すぎると、プレチルト角の面内均一性が低下しやすいので好ましくなく、無機配向膜の厚さが厚すぎると、液晶装置500の駆動電圧が高くなるので好ましくない。
【0088】
なお、、TN(Twisted Nematic)モードで機能する液晶装置を例にして説明したが、VA(Vertical Alignment)モードで機能する液晶装置に本発明を適用することも可能である。
また、スイッチング素子としてTFTを備えた液晶装置を例にして説明したが、スイッチング素子として薄膜ダイオード(Thin Film Diode)等の二端子型素子を備えた液晶装置に本発明を適用することも可能である。
また、透過型液晶装置を例にして説明したが、反射型液晶装置に本発明を適用することも可能である。
また、アクティブ型の液晶装置を例にして説明したが、パッシブ型の液晶装置に本発明を適用することも可能である。
【0089】
(プロジェクタ)
次に、本発明のプロジェクタについて説明する。
図14は、本発明のプロジェクタの一例を概略的に示す図である。
このプロジェクタPJ1は、本発明の液晶装置を光変調手段(液晶ライトバルブ)として用いており、R(赤)、G(緑)、B(青)の異なる色毎に透過型液晶ライトバルブを備えた3板式の間欠表示型カラー液晶プロジェクタである。
【0090】
図14に示すように、プロジェクタPJ1は、光源810と、ダイクロイックミラー813,814と、反射ミラー815,816,817と、入射レンズ818と、リレーレンズ819と、射出レンズ820と、液晶ライトバルブ822,823,824と、クロスダイクロイックプリズム825と、投射レンズ826とを備えて構成されている。
【0091】
光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とを含む。
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、赤色光用液晶ライトバルブ822に入射する。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、緑色光用液晶ライトバルブ822に入射する。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および射出レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が青色光用液晶ライトバルブ824に入射する。
【0092】
各液晶ライトバルブ822,823,824により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投影され、画像が拡大されて表示される。
【0093】
上述したプロジェクタPJ1によれば、無機配向膜を採用した液晶ライトバルブ822,823,824を備えることから光劣化が少ない。また、無機配向膜の配向性に優れ、高い信頼性を有する。
【0094】
なお、本例では赤色光用,緑色光用,青色光用の各液晶ライトバルブに本発明の液晶装置を採用したが、係る液晶装置は必ずしも全ての液晶ライトバルブに適用される必要はなく、少なくともR,G,Bのうちのいずれかの液晶ライトバルブに適用すれば、その効果を得ることができる。光のエネルギーが高い青色光(B)用の液晶ライトバルブに本発明の液晶装置を適用すると特に効果的である。
また、3板式の投射型表示装置(プロジェクタ)を例にして説明したが、単板式の投射型表示装置や直視型表示装置に本発明を適用することも可能である。
【0095】
また、本発明の液晶装置を、プロジェクタ以外の電子機器に適用することも可能である。その具体例として、本発明の液晶装置を表示部に備えた携帯電話を挙げることができる。また、その他の電子機器としては、例えば、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、PDA(Personal Digital Assistant)、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が挙げられる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の成膜装置の基本構成を説明するための図。
【図2】図1の成膜装置の要部構成を示す斜視図。
【図3】基板搬送系の構成例を示す図。
【図4】ターゲットに対する基板の相対的な姿勢の変化の様子を模式的に示す図。
【図5】基板に飛来した粒子によって斜方結晶が成長する様子を示す図。
【図6】図1に示す矢視A方向から見た模式的な平面図。
【図7】図1及び図2の成膜装置の変形例を示す図。
【図8】図1及び図2の成膜装置の変形例を示す図。
【図9】図1及び図2の成膜装置の別の変形例を示す図。
【図10】図1及び図2の成膜装置の別の変形例を示す図。
【図11】図9に示す矢視B方向から見た模式的な平面図。
【図12】本発明の液晶装置の一例を概略的に示す平面図。
【図13】図12の液晶装置の部分断面図。
【図14】本発明のプロジェクタの一例を概略的に示す図。
【符号の説明】
【0098】
IBS1,IBS2…成膜装置、Pt…照射点、Ps…成膜点、θ1…ビーム角、θ2…基板の倒れ角、θ3…基板の傾斜角、11…ターゲット、11a…スパッタ面、12…イオンビーム、15…基板、15a…被成膜面、16…法線、20…真空槽(成膜室)、21…真空排気系、30…イオンガン、31…放出口、32…ビーム軸、35…照射領域(放出領域)、40…搬送系、50…基板搬送系、51…移動中心軸、PT1…第1位置、PT2…第2位置、53…トレイ、54…搬送機構、55…高さ規定部材、60…治具搬送系、70…制御装置、100…整流治具、110…コリメータ、111…規制板、120…遮蔽板、121,122…遮蔽部、123…開口部、123a…幅狭部、123b…幅広部、130,131…防着板、500…液晶装置、504…液晶層、550,551…配向膜、PJ1…プロジェクタ、822,823,824…液晶ライトバルブ(液晶装置)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、成膜方法、液晶装置、並びにプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ターゲット材から放出された粒子を基板に付着・堆積させる成膜装置が広く用いられており、例えば、真空槽内に基板を配置した状態で成膜材料を放出させ、その放出粒子を基板の被成膜面に到達させると、その被成膜面上にその材料の膜が成長する。こうした成膜技術としては、例えば、蒸着法、スパッタ法等が知られている。
【0003】
ターゲット材から放出された粒子を被成膜面に斜めに入射させることにより、その被成膜面上に一定の配向性を有する成膜材料の結晶が成長し、その結晶配向性に起因する機能(例えば液晶配向性)を有する膜が得られる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭57−157214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような成膜装置において、ターゲット材から放出された粒子の飛行領域を横切るように、ターゲット材に対して相対的に基板を移動させることにより、ターゲット材からの粒子を被成膜面の全面に付着させることができる。
【0005】
ターゲット材からの粒子を基板に斜めに入射させる場合、成膜条件等に応じて、ターゲット材に対する基板の相対的な姿勢の調整が必要である。しかしながら、成膜時に基板が移動する構成では、基板の姿勢を調整する機構が複雑になりやすい。
【0006】
本発明は、簡素な構成でターゲットに対する基板の姿勢を調整することが可能な基板搬送系、及びそれを備えた成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の基板搬送系は、ターゲットから放出された粒子の飛行領域を横切るように、前記ターゲットに対して相対的に基板を移動させる基板搬送系であって、前記基板が搭載されるトレイと、前記トレイにおける前記ターゲットに近い第1位置と前記ターゲットから遠い第2位置とを支持し、かつ前記第1位置と前記第2位置とを通る軸線を横切る方向に前記トレイを搬送する搬送機構と、前記トレイの前記第1位置及び/又は前記第2位置に配設され、前記搬送機構に対する前記トレイの高さを規定する高さ規定部材と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の基板搬送系では、基板用のトレイに配設される高さ規定部材の形状に応じて、ターゲットに対する基板の傾き及び/又はターゲットと基板との距離が変化する。
すなわち、トレイにおけるターゲットに近い第1位置及び/又はターゲットから遠い第2位置について、高さ規定部材によって搬送機構からの高さを変化させることにより、簡素な構成でありながら、ターゲットに対する基板の相対的な姿勢を調整することができる。
さらに、本発明の基板搬送系によれば、ターゲットに対する基板の姿勢を、基板ごとに調整することが可能である。
【0009】
本発明の基板搬送系において、前記高さ規定部材は、板状部材である構成とすることができる。
あるいは、前記高さ規定部材は、前記トレイの一部である構成とすることができる。
これらにより、構成の簡素化が図られる。
【0010】
本発明の成膜装置は、ターゲットから放出された粒子を基板の一面に斜めに入射させかつ付着させる成膜装置であって、本発明の基板搬送系を備える、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の成膜装置では、ターゲットから放出された粒子が基板の一面に斜めに入射することから、配向性を有する膜を形成することができる。また、この成膜装置では、本発明の基板搬送系を備えることにより、構成の簡素化が図られるとともに、ターゲットに対する基板の相対的な姿勢に基づく膜構造の制御が容易となる。
【0012】
本発明の成膜装置において、前記基板の一面に前記粒子が入射するときの入射角度が15°以下である構成とすることができる。
この構成によれば、水平配向型の液晶配向に適した膜を形成することができる。
【0013】
また、本発明の成膜装置において、前記ターゲットは、主として無機材料を含む構成とすることができる。
この構成によれば、無機材料を主材料とする膜を形成することができる。
【0014】
本発明の液晶装置は、本発明の成膜装置で成膜された配向膜を備えることを特徴とする。
本発明の液晶装置によれば、簡素な構成の成膜装置を用いて配向膜が形成されるから、低コスト化が図られる。
【0015】
本発明の液晶装置において、前記配向膜は、無機材料を主成分とする無機配向膜である構成とすることができる。
一般に、無機材料は、有機材料に比べて、化学的安定性、耐光性に優れている。無機材料を主成分とする無機配向膜は、光劣化が少なく、長期にわたり安定した配向特性を有する。
【0016】
本発明のプロジェクタは、本発明の液晶装置を備える、ことを特徴とする。
本発明のプロジェクタによれば、本発明の液晶装置を備えることから、低コスト化が図られる。
【0017】
本発明の成膜方法は、ターゲットから放出された粒子を基板の一面に斜めに入射させかつ付着させる成膜方法であって、前記ターゲットから放出された粒子の飛行領域を横切るように、前記ターゲットに対して相対的に前記基板を移動させるとともに、前記基板の移動時における前記ターゲットに対する前記基板の相対的な姿勢を、前記基板ごとに調整する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の成膜方法では、ターゲットに対する基板の相対的な姿勢を、基板ごとに調整することから、多品種生産に好ましく利用できる。
【0019】
本発明の成膜方法において、前記相対的な姿勢は、前記ターゲットに対する前記基板の傾き、及び前記ターゲットと前記基板との距離(TS距離)、の少なくとも1つを含む構成とすることができる。
こうした姿勢の調整により、膜構造の制御が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の成膜装置の基本構成を説明するための図であり、図2は、図1の成膜装置の要部構成を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、成膜装置IBS1は、真空雰囲気内に配置されたターゲット11に対して高エネルギーに加速したイオンビーム12を照射し、そのビーム12の衝突によってターゲット原子を放出させ、その放出粒子を基板15上に付着・堆積させるイオンビームスパッタリング装置であり、成膜室としての真空槽20、イオンガン30、及び搬送系40等を主体に構成されている。イオンビームスパッタ法を用いた成膜は、高真空中でのスパッタが可能である、イオンや電子による膜の損傷が少ない、高融点物質の薄膜化が可能である、などの利点を有する。
【0022】
真空槽20には、真空排気系21が接続されている。真空排気系21が稼動すると、真空槽20の内部が真空排気され、真空槽20の内部に真空雰囲気が形成される。また、真空槽20内には、放出源としてのターゲット11が配置されている。真空排気系21によって真空槽20内部が真空排気されると、ターゲット11は真空雰囲気に置かれる。成膜圧力が高真空圧(例えば5×10−1Pa以下、より好ましくは5×10−2以下)であると、イオンビーム12の直進性が向上するとともに、真空槽20内におけるスパッタ粒子の散乱(飛行方向性の乱れ)が抑制される。
【0023】
ターゲット11は、無機配向膜形成用の材料として、SiO2 、SiO、Al2O3、ZnO2 、Ta2O3、TiO2 、Si3N4、ITO(インジウム錫酸化物)等の他、様々な無機材料(無機酸化物、無機窒化膜、金属酸化物、金属窒化膜)が好ましく適用される。1種あるいは2種以上の材料を組み合わせてターゲットに用いることもできる。SiO2は、誘電率が特に低く、また、高い光安定性を有する。無機配向膜の上層膜や下層膜、あるいは無機配向膜以外の膜形成用として、上記とは別の材料をターゲット11に用いることも可能である。
【0024】
イオンガン30は、独立したイオン源にスパッタ用のガスを導入し、そのガスをイオン化しかつ加速させて放出口31からビーム状に引き出すものであり、ターゲット11の斜め側方であって、ターゲット11を挟んで基板15とは反対側に配されている。イオンガン30の放出口31は、真空槽20の内部でターゲット11の表面であるスパッタ面11aに向けられていて、イオンガン30からのイオンビーム12は、ターゲット11のスパッタ面11aに斜めに入射する。なお、イオンガン30とは別に、成膜前または成膜時の基板15に、アシスト用のイオン照射を行ったり、アシスト用のレーザ照射を行ったりするアシスト手段を備えてもよい。
【0025】
ここで、スパッタ面11aとイオンビーム12のビーム軸32との交点(照射点)をPtとし、照射点Ptを通るスパッタ面11aの法線16とビーム軸32とが成す角度(以後、ビーム角(beam angle)と称する。)をθ1とするとき、 θ1<90° であり、好ましくは、45°≦θ1≦70° であり、例えばθ1=45°である。
【0026】
スパッタ用のガスとしては、Ar、He、Ne、Kr、Xeの他に、ターゲット11に対して不活性な様々な不活性ガスを適用することができる。例えば、窒素などの分子イオン、中性粒子、クラスターイオン等を用いてもよい。イオンビーム12は所定のビーム幅を有しており、イオンビーム12がスパッタ面11aに入射すると、そのビーム幅に応じた広さの領域がスパッタリングされ、スパッタ粒子が真空槽20内部に放出される。
【0027】
搬送系40は、基板15をターゲット11に対して相対的に移動させる基板搬送系50を含む。成膜時において、基板15は、ターゲット11から離れた位置でありかつターゲット11の斜め側方であって、ターゲット11からのスパッタ粒子の放出分布範囲内に配される。基板搬送系50は、ターゲット11から放出された粒子の飛行領域を横切るように、ターゲット11に対して相対的に基板15を移動させる。これにより、スパッタ粒子が、ターゲット11から基板15の移動軸を横切るように放出され、基板15の被成膜面15aに衝突することによりその被成膜面15a上に堆積する。
【0028】
ここで、ある1点から放出されるスパッタ粒子は、そのエネルギー分布・角度分布を正確に予測することは難しいものの、少なくとも三次元的な広がりを持って飛行する。スパッタ粒子の放出角度分布は、一般に余弦則(law of cosines)に従うことが知られている。放出分布は、軸対称二次元断面が扇状やハート状(蝶ねじ状)とも言われ、イオンビームのパワーなどのスパッタリング条件に応じて変化することがある。また、スパッタ用ビームがターゲット表面に対して斜めに入射されると、スパッタ粒子の分布中心軸もターゲット表面に対して斜めに傾く。
【0029】
基板15の被成膜面15aにおける任意の位置である成膜点(本例では被成膜面15aの中心)をPsとするとき、基板15は、スパッタ粒子の見込み分布中心軸が成膜点Psを通るように配置される。すなわち、スパッタ粒子の見込み分布中心軸はターゲット11の表面であるスパッタ面11aに対して傾いているから、基板15は、そのスパッタ面11aの法線16に対して、イオンビーム12のビーム軸32とは逆方向に倒れた位置に配される。
【0030】
照射点Ptと成膜点Psとを結ぶ線分PtPsと、スパッタ面11aの法線16とが成す角度(以後、基板15の倒れ角(slant angle)と称する。)をθ2とするとき、 θ2<90° であり、好ましくは、 45°≦θ2<90° である。
【0031】
図2に示すように、基板搬送系50は、上記倒れ角θ2に基づく移動中心軸51に沿って、さらに線分PtPsと基板15の被成膜面15aとの間に所定の角度が形成された状態を維持しながら、基板15を移動させる。すなわち、成膜時における基板15の移動方向は、ビーム軸32と線分PtPsとを含む仮想平面を横切る方向であり、また、基板15の被成膜面15aは、移動中心軸51を中心に線分PtPsに対して傾いている。なお、本例では、移動中心軸51と線分PtPsとは直交し、また、移動中心軸51は基板15の被成膜面15aの中心の軌跡と一致している。
【0032】
ここで、図1に戻り、線分PtPsと基板15の被成膜面15aとが成す角度、すなわち、移動中心軸51を中心とした線分PtPsに対する基板15(被成膜面15a)の傾斜角(tilt angle)をθ3とするとき、 θ3<90°であり、好ましくは θ3<45° であり、より好ましくは θ3≦15° である。
【0033】
図3は、基板搬送系50の構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
図3に示すように、基板搬送系50は、基板15が搭載されるトレイ53と、トレイ53を搬送する搬送機構54と、トレイ53に配設された高さ規定部材55とを有する。トレイ53には、ターゲット11からの粒子を基板15の被成膜面15aに向けて通過させるための開口部53aが設けられている。トレイ53に対する基板15の搭載時において、トレイ53に対する基板15の配置角度が決定される。
【0034】
搬送機構54は、トレイ53におけるターゲット11に近い第1位置PT1と前記ターゲット11から遠い第2位置PT2とを支持し、かつ第1位置PT1と第2位置PT2とを通る軸線ATを横切る方向(移動中心軸51方向)にトレイ53を搬送するように構成されている。搬送機構54としては、例えば、リニア駆動機構、ローラコンベア、ベルトコンベア等、様々な形態が適用可能である。
【0035】
高さ規定部材55は、搬送機構54に対するトレイ53の高さ、すなわち搬送機構54における支持面とトレイ53との距離LTを規定するものであり、トレイ53における第1位置PT1及び/又は第2位置PT2に配設される。本例では、高さ規定部材55は、板状部材からなり、トレイ53におけるターゲット11から遠い縁部のみに配設されている。
【0036】
図4は、ターゲット11に対する基板15の相対的な姿勢の変化の様子を模式的に示す図である。
図4の例では、3種類のトレイ53A、53B、53Cを示している。各トレイ53A、53B、53Cにおけるターゲット11から遠い縁部には、高さ規定部材55A、55B、55Cが配設されている。高さ規定部材55A、55B、55Cは互いに形状が異なり、高さ規定部材55A、55B、55Cの各形状に応じて、ターゲット11から遠い位置(第2位置PT2)において、搬送機構54の支持面からの各トレイ53A、53B、53Cの高さが互いに異なる。すなわち、その第2位置PT2における搬送機構54からの各トレイ53A、53B、53Cの距離を、LT(A)、LT(B)、LT(C)とするとき、LT(C)<LT(A)<LT(B)、である。また、ターゲット11に近い位置(第1位置PT1)において、搬送機構54の支持面からの各トレイ53A、53B、53Cの高さは等しい。
【0037】
この場合、基板15の倒れ角θ2に関して、トレイ53B<トレイ53A<トレイ53C、である。また、基板15の傾斜角θ3に関して、トレイ53B<トレイ53A<トレイ53C、である。なお、θ2に比べて、θ3の変化量は小さい。さらに、照射点Ptと成膜点Psとを結ぶ線分PtPsの長さ、すなわち照射点Ptと成膜点Psとの間の距離(TS距離)に関して、トレイ53C<トレイ53A<トレイ53B、である。
【0038】
このように、本例の基板搬送系50では、基板15用のトレイ53に配設される高さ規定部材55の形状に応じて、ターゲット11に対する基板15の傾き(θ2、θ3)やターゲット11と基板15との距離(TS距離)が変化する。すなわち、トレイ53におけるターゲット11から遠い第2位置PT2について、高さ規定部材55によって搬送機構54からの高さを変化させることにより、ターゲット11に対する基板15の姿勢を調整することができる。
【0039】
上記の基板15の姿勢調整に係る基板搬送系50の構成、すなわち、トレイ53に任意形状の高さ規定部材55を取り付ける構成は簡素でありかつ柔軟性が高い。さらに、トレイ53ごとに高さ規定部材55の形状を変化させることで、ターゲット11に対する基板15の姿勢を、基板15ごとに調整することが可能である。基板15ごとにターゲット11に対する姿勢を調整する成膜方法は、多品種生産に好ましく適用される。
【0040】
なお、上記の例では、トレイ53におけるターゲット11から遠い位置(第2位置PT2)についてのみ、高さ規定部材55によって搬送機構54からの高さを変化させる構成であるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、トレイ53におけるターゲット11に近い位置(第1位置PT1)についても、高さ規定部材55によって搬送機構54からの高さを変化させる構成としてもよい。トレイ53におけるターゲット11に近い第1位置PT1及び/又はターゲット11から遠い第2位置PT2について、高さ規定部材55によって搬送機構54からの高さを変化させることにより、簡素な構成でありながら、ターゲット11に対する基板15の相対的な姿勢を調整することができる。
【0041】
また、高さ規定部材55の形態は、板状部材に限らず、他の形態でもよい。例えば、高さ規定部材55は、トレイ53の一部としてトレイ53と一体的に形成されたものであってもよい。あるいは、高さ規定部材55は、形状を調整自在な機構を有する形態であってもよい。
【0042】
図1に戻り、線分PtPsに沿って進行するスパッタ粒子は、上記傾斜角θ3に基づき、基板15の被成膜面15aに斜めに入射する。実際には、スパッタ粒子は、三次元的な広がりを持って進行するから、基板15に対するスパッタ粒子の入射方向は様々である。また、ターゲット11に近いほど粒子密度が高く、離れるほど粒子密度が低い。
【0043】
本例では、被成膜面15aに対するスパッタ粒子の入射方向を規制することを目的として、照射点Ptと成膜点Psとの間の距離(TS距離)が制御されるとともに、ターゲット11と基板15との間にコリメータ110が配置されている。
【0044】
ターゲット11から放出されたスパッタ粒子のうち、分布中心軸に沿って進行する比較的高エネルギーのスパッタ粒子は、比較的遠方の地点に到達する。これに対して、分布中心軸からずれて進行する比較的低エネルギーのスパッタ粒子は、その遠方地点に到達しない。したがって、TS距離を制御することにより、被成膜面15aに対するスパッタ粒子の入射方向を規制することができる。例えば、TS距離が長いほど、スパッタ粒子の入射方向は、分布中心軸(例えば線分PtPs)に平行な方向に近づく。TS距離を制御する際には、イオンビーム12の幅も適切に制御される。
【0045】
本例では、基板15の倒れ角θ2が45°以上90°未満であり、また、基板15の傾斜角θ3が45°未満であることにより、TS距離が比較的短くても、被成膜面15aと非平行な方向、すなわち、被成膜面15aに対して傾斜する方向に関して、スパッタ粒子の入射方向が規制される。ただし、被成膜面15aと平行な方向、すなわち、被成膜面15aと平行な面内でのツイスト方向に関しては、TS距離が比較的短いと、基板15の傾斜角θ3を小さくするだけでは、スパッタ粒子の入射方向を規制するのは難しい。本例では、このツイスト方向に関する入射方向の規制を、コリメータ110によって行う。
【0046】
図2に示すように、コリメータ110は、基板15の移動方向(本例では、被成膜面15aと平行な方向)に互いに離間して並ぶ複数の規制板111を有している。ターゲット11から放出された粒子のうち、この複数の規制板111同士の隙間を通過した粒子は基板15に向けて飛行を続ける。一方、規制板111に衝突した粒子の多くは、規制板111に捕捉されるか、エネルギーが減衰して基板15に到達しない。したがって、このコリメータ110を、ターゲット11と基板15との間に配置することで、基板15の移動方向(被成膜面15aと平行な方向、ツイスト方向)に関し、スパッタ粒子の入射方向を規制することができる。なお、複数の規制板111同士の隙間(スリットの幅)が狭いほど、被成膜面15aに対するスパッタ粒子の入射方向が揃うことになる。
【0047】
上述したビーム角θ1、基板15の倒れ角θ2、及び基板15の傾斜角θ3は、目標とする成膜結晶構造に応じて適宜設定される。本例では、θ1、θ2、及びθ3の制御により、基板15の被成膜面15aがターゲット11の斜め側方位置においてターゲット11のスパッタ面11aに対して斜めになるように配置されるとともに、スパッタ粒子の入射方向と被成膜面15aとの成す角度(入射角度)が90°未満に設定され、その結果、スパッタ粒子が被成膜面15aに斜めに入射し、被成膜面15aに成膜材料の斜方結晶が成長する。
【0048】
また本例では、θ2及びθ3の制御によって、被成膜面15aに対する傾斜方向に関してスパッタ粒子の入射方向が規制されるとともに、コリメータ110によって基板15の移動方向(被成膜面15aと平行な方向、ツイスト方向)に関するスパッタ粒子の入射方向が規制される。その結果、TS距離の伸長化、すなわち装置の拡大化を招くことなく、結晶配向性に優れた斜方柱状構造を有する膜を形成することができる。
【0049】
さらに本例では、イオンビームスパッタ法を用いることにより、次に説明するように、被成膜面15aに対する成長方位角が小さくかつ緻密質な斜方構造を有する膜を形成することができる。
【0050】
図5は、基板15に飛来した粒子によって斜方結晶が成長する様子を示している。
図5に示すように、一般に、蒸着法ではクラスター状態の比較的大きな材料粒子が基板に向けて飛行し、イオンビームスパッタ法では分子状態の比較的小さな材料粒子が基板に向けて飛行する。そのため、蒸着法では、被成膜面に対して結晶成長方位が立つ傾向、すなわち被成膜面に対する粒子の入射角度に比べてその成長方位の角度が大きくなる傾向にある。そして、蒸着法では、特に粒子の入射角度が小さくなると、結晶の影となる部分での結晶成長が抑制され(シャドーイング)、その結果、結晶同士の間隔が比較的大きいポーラス状態の膜が形成される傾向にある。
【0051】
これに対し、イオンビームスパッタ法では、入射角度と結晶成長方位との相関性が高く、さらに上記のシャドーイングが生じにくいことから、入射角度が小さくても、その入射角度と同程度の成長方位角を有して結晶が成長するとともに、結晶同士の間隔の広がりが比較的小さい。すなわち、イオンビームスパッタ法では、成長方位角が小さくかつ緻密質な斜方柱状構造を有する結晶膜を形成することができる。こうした膜は、水平配向型の液晶の配向膜として好ましく適用される。ここで、配向膜は、液晶分子の配向方向を揃える機能と、液晶分子のプレチルト角を制御する機能とを有しており、水平配向型のプレチルト角は、例えば0°〜20°である。
【0052】
図1に戻り、イオンビームスパッタ法を用いて水平配向型液晶の配向膜を形成する場合、被成膜面15a上の任意の点に入射するスパッタ粒子の入射角度の最大値(最大入射角度θ5)は15°以下に制限されるのが好ましく、入射角度の最大値と最小値の差である入射見込み角度Δθは10°以下に制限されるのが好ましい。例えば、基板15の傾斜角θ3が15°以下にされることで最大入射角度θ5が15°以下にされ、TS距離が長くされることで、見込み入射角度Δθも10°以下と小さくされる。これにより、イオンビームスパッタ法を用いて、水平配向型の液晶配向に適した膜を形成することができる。
【0053】
結晶の成長過程に応じて、基板15の傾斜角θ3を変化させてもよい。例えば、水平配向型液晶の配向膜を形成する場合において、成長初期においてはθ3を15°より大きくし、成長中期あるいは後期以降においてθ3を15°以下とする。これにより、成長初期段階における膜の成長レート(成膜レート)を高め、処理時間の短縮化を図ることができる。また、他の膜の形成においては、基板15の傾斜角θ3は、15°以下に限定されず、最大入射角度θ5も、15°以下に限定されない。また、イオンビーム12とは別に、基板15に対してアシスト用のイオン照射を行ったり、アシスト用のレーザ照射を行ったりすることにより、膜の結晶学的性質などの膜特性を制御することが可能である。
【0054】
図2に示すように、ターゲット11と基板15との間にはさらに、基板15の被成膜面15aに対するスパッタ粒子の入射領域を規制することを目的として、遮蔽板120が配置されている。遮蔽板120は、粒子の通過を遮る遮蔽部121,122と、遮蔽部121と122との間に形成されて粒子を通過させるための開口部123とを有する。本例では、遮蔽板120は、コリメータ110と基板15との間において基板15の被成膜面15aの隣接位置に配置され、その遮蔽部121,122は互いに対向する縁部分が間隔を空けて同一平面内に配置され、遮蔽部121,122を含む平面は基板15の被成膜面15aと平行である。遮蔽板120は、遮蔽部121と122とが一体化された形態であってもよく、遮蔽部121と122との距離を調整可能な形態であってもよい。
【0055】
図6は、図1に示す矢視A方向から見た模式的な平面図である。なお、以後の説明において、基板15の移動方向(走査方向、基板15の移動中心軸51と一致する方向)をY方向とする。
【0056】
図6に示すように、遮蔽板120の開口部123は、ターゲット11からの距離に応じて基板15の移動方向(Y方向)に関する幅が異なる。具体的には、遮蔽部121,122における互いに対向する縁部分の両端のうち、ターゲット11から遠い方の縁部は曲線を有しており、近い方の縁部の間隔よりも遠い方の縁部の間隔が広がっている。それに伴い、遮蔽板120の開口部123は、ターゲット11から離れる方向に沿って曲線を描きながらその幅が徐々に広くなっている。すなわち、遮蔽板120の開口部123は、ターゲット11に近い方の幅が狭く(幅狭部123a)、遠い方の幅が広い(幅広部123b)。
【0057】
なお、遮蔽板120の形態は、上記の例に限定されない。例えば、遮蔽板120は、ターゲット11から離れる方向に沿って段階的に広くなる開口部を有する形態であってもよい。あるいは、遮蔽板120は、複数の開口部を有する形態であってもよい。
【0058】
成膜時において、遮蔽板120(遮蔽部121,122)と基板15の被成膜面15aとは平行であり、その平行な状態を維持したまま、基板15が一定速度で遮蔽板120に対して相対的にY方向に移動(走査移動)する。この基板15の移動と同時に、遮蔽板120の開口部123を通過したスパッタ粒子が、基板15の被成膜面15aに入射する。そして、基板15の被成膜面15aの全領域が遮蔽板120の開口部123を横切ることにより、その被成膜面15aの全領域にスパッタ粒子が付着する。
【0059】
スパッタ粒子が90°未満の入射角度で被成膜面15aに入射する場合には、被成膜面15aにおけるターゲット11側の端部と反対側の端部との間にターゲット11からの距離に比較的大きな差が生じ、また、ターゲット11から近い位置に比べ、遠い位置では、長い距離を飛行する分だけスパッタ粒子が拡散されるので、スパッタ粒子の密度が小さくなる。
【0060】
前述したように、遮蔽板120の開口部123は、ターゲット11に近い方の幅が狭く、遠い方の幅が広い。そのため、被成膜面15aにおけるターゲット11に近い部分ほど、開口部123を介してターゲット11に露出される時間が短い。すなわち、基板15の被成膜面15aのうち、ターゲット11に近い部分は密度の高い粒子に短時間晒され、遠い部分は密度の低い粒子に長時間晒される。その結果、被成膜面15aのターゲット11に近い部分と遠い部分とに略等しい量の粒子が到達し、被成膜面15aに膜厚均一な膜が形成される。
【0061】
さらに、本例では、遮蔽板120の開口部123を通過するスパッタ粒子は、コリメータ110によって基板15に対する入射方向が規制されているから、基板15の被成膜面15aに形成される膜は、膜厚均一であることに加え、配向方向が揃った斜方構造を有する。基板15の被成膜面15aの全領域が開口部123を複数回繰り返し通過することにより、1回通過することにより形成される膜よりも、膜厚の大きい膜を形成することができる。
【0062】
なお、遮蔽板120の開口部123とは別の場所から、基板15に対してスパッタ粒子が入射することを防止するために、遮蔽板120の外周縁の外側には、スパッタ粒子の飛行領域を制限する防着板が適宜配設される。
【0063】
ここで、コリメータ110における複数の規制板111の間隙の形状は、照射点Ptと成膜点Psとの間の距離(TS距離)、ターゲット11におけるビーム12の照射領域35の大きさ(放出領域の大きさ)、基板15の配置空間の圧力(成膜圧力)、コリメータ110の配設位置、及び遮蔽板120の開口部123の形状、等に基づいて定められる。本例では、複数の規制板111の間隙における幅Laと線分PtPsの軸方向に関する深さLbとの比(アスペクト比)が遮蔽板120の開口部123における幅狭部123aの幅Lcと全体の開口長さLdの比とほぼ同じであって、例えば、La:Lb=1:5、である。なお、このアスペクト比は一例であって、本発明はこれに限定されない。アスペクト比La/Lbが小さくなるほど、被成膜面15aに対するスパッタ粒子の入射方向は揃うものの、コリメータ110を通過する粒子の量が少なくなって成膜レートが低下する。成膜レートは、ターゲット11に対するビーム12の照射領域35を変化させることで制御することが可能である。
【0064】
なお、コリメータ110の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、基板15の移動方向に関して、中央部と端部とでスリット幅が異なる形態としてもよい。また、複数の板によって開口断面が格子状となる形態であってもよい。
【0065】
遮蔽板120の形状も特に限定されるものではなく、複数の開口部を有する形態としてもよい。また、遮蔽板120の開口部の幅を、ターゲット11から遠い側からターゲット11に近い側へ向かって段階的に狭くしてもよい。
【0066】
基板15の形状も円盤状に限定されるものではなく、長方形、正方形、楕円等種々の形状の基板を用いることができる。
【0067】
また、ターゲット11をスパッタリングする方法は、上述したようなイオンビームスパッタ法に限定されず、真空槽20内部にスパッタガスを供給しながら真空排気し、真空槽20内部に所定圧力の真空雰囲気を維持しながら、ターゲット11に負電圧を印加し、スパッタリングを行ってもよい。
【0068】
また、成膜材料を収容した容器の開口や、成膜材料の液面(放出源、ターゲット)から真空槽内部に成膜材料の蒸気を放出して成膜を行う蒸着法も本発明に含まれる。
【0069】
また、本発明は、基板15だけを移動させながら成膜を行う場合に限定されない。基板15を固定した状態で、コリメータ110、遮蔽板120、及びターゲット11を一緒に移動させながら成膜を行ってもよいし、基板15、コリメータ110、遮蔽板120、及びターゲット11を移動させながら成膜を行ってもよい。なお、イオンビームスパッタリングで成膜を行う場合には、ターゲット11を固定した状態でイオンビーム12の照射位置を移動する、又はターゲット11の移動と一緒にイオンビーム12の照射位置を移動することでターゲット11を移動させることができる。
【0070】
図7及び図8は、図1及び図2の成膜装置IBS1の変形例を示している。
図7の例では、真空槽内に、複数のターゲット11A,11B,11Cが配設され、複数のターゲット11A,11B,11Cのうちのいずれかがイオンビーム12の照射位置に選択的に配置される。複数のターゲット11A,11B,11Cは、同一材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
【0071】
図8の例では、真空槽内において、互いに異なる位置に複数のターゲット11D,11Eが配置されており、各配置位置においてターゲット11D,11Eから粒子が放出される。1つのイオンガンから各ターゲット11D,11Eにイオンビームを照射する構成であってもよく、複数のイオンガンから複数のターゲット11D,11Eに対して個別にイオンビームを照射する構成であってもよい。
【0072】
こうした多元スパッタリングは、成膜される膜構造の制御を行ったり、積層構造の膜を形成したりするのに好ましく用いられる。この場合、必要に応じて、ターゲットに対する基板の姿勢(傾き、TS距離など)が制御される。積層膜を形成する場合、例えば、配向膜の下地膜として、柱状構造を必要としない膜を形成することができ、イオンビームスパッタ法では、緻密質な構造を有する膜を形成することができるから、例えば、基板からの溶出物質の移動を遮断するイオンバリア膜を形成することができる。なお、膜構造の制御や積層膜の形成に際しては、1つの真空槽(成膜室)で行う方法に限らず、複数の真空槽(成膜室)で行う方法を採用してもよい。
【0073】
図9及び図10は、図1及び図2の成膜装置IBS1の別の変形例を示している。また、図11は、図9に示す矢視B方向から見た模式的な平面図である。なお、上述した成膜装置IBS1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0074】
図9、図10、及び図11に示すように、成膜装置IBS2は、前記の成膜装置IBS1と同様に、真空槽20、イオンガン30、及び搬送系40等を主体に構成され、ターゲット11と基板15との間には、コリメータ110と、遮蔽板120とが配置されている。ビーム角θ1は、 θ1<90° であり、好ましくは、45°≦θ1≦70° であり、例えばθ1=45°である。基板15の倒れ角θ2は、 θ2<90° であり、好ましくは、 45°≦θ2<90° である。基板15の傾斜角θ3は、 θ3<90°であり、好ましくは θ3<45° であり、より好ましくは θ3≦15° である。
【0075】
また、本例の成膜装置IBS2は、前記の成膜装置IBS1と異なり、コリメータ110と遮蔽板120とが一体となって治具(整流治具100)を構成している。すなわち、コリメータ110は、基板15の移動方向(本例では、被成膜面15aと平行な方向)に互いに離間して並ぶ複数の規制板111を有しており、遮蔽板120は、粒子の通過を遮る遮蔽部121,122と、遮蔽部121と122との間に形成されて粒子を通過させるための開口部123とを有している。そして、遮蔽板120の開口部123における開口長さLdと同程度の長さを有して複数の規制板111が形成され、遮蔽板120の前面にコリメータ110が配設されている。
【0076】
本例の成膜装置IBS2においても、上記傾斜角θ3に基づき、ターゲット11から放出されたスパッタ粒子が基板15の被成膜面15aに斜めに入射する。そして、コリメータ110によってスパッタ粒子の入射方向が規制されるとともに、遮蔽板120によってスパッタ粒子の入射領域が規制され、その結果、配向方向が揃った膜厚均一な斜方構造を有する膜が基板15上に形成される。
【0077】
さらに本例では、コリメータ110と遮蔽板120とが一体となって整流治具100を構成していることから、洗浄時などにおけるその治具100の搬送が容易である。例えば、コリメータ110及び遮蔽板120に堆積した成膜材料を洗浄する際に、整流治具100の搬送手段によって、コリメータ110と遮蔽板120とを同時かつ容易に真空槽20内から外部に搬出することができる。また、形態が異なる複数種類の整流治具100を用意しておき、目標とする成膜構造に応じて任意の整流治具100を選択的に使用するといったことも容易に行うことができる。
【0078】
(液晶装置)
次に、本発明の液晶装置について説明する。
図12は、本発明の液晶装置の一例を概略的に示す平面図であり、図13は、その液晶装置の部分断面図である。
【0079】
図12及び図13に示すように、液晶装置500は、ガラスや石英等の透明な材料からなる互いに対向配置された基板502及び基板503と、この基板502と基板503との間に挟持された液晶層504と、基板502と基板503とを貼り合わせるためのシール材505(接着剤)とを備えて構成されている。ここで、この液晶装置500は、液晶を水平配向させる水平配向型であり、また、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等のスイッチング素子を有するアクティブマトリクス方式の透過型液晶装置である。
【0080】
図12に示すように、基板502の中央部には画像作製領域501が形成され、その画像作製領域501の周縁部にシール材505が配設されている。画像作製領域501内において、基板502と基板503との間に液晶層504(図13参照)が封止されている。なお、この液晶装置500では、塗布法により液晶を直接基板上に配置したことから、シール材505には液晶の注入口が設けられていない。シール材505の外側には、不図示の走査線に走査信号を供給する走査線駆動素子510と、不図示のデータ線に画像信号を供給するデータ線駆動素子511とが実装されている。その駆動素子510,511から、基板502の端部に形成された接続端子530にかけて、配線531が引き廻されている。
【0081】
一方、基板503には、共通電極521が形成されている。この共通電極521は画像作製領域501のほぼ全域に形成され、共通電極521の四隅には基板間導通部525が設けられている。その基板間導通部525から接続端子530にかけて、配線532が引き廻されている。
そして、外部から入力された各種信号が、接続端子530を介して画像作製領域501に供給されることにより、液晶装置500が駆動されるようになっている。
【0082】
図13に示すように、基板502の液晶側の表面には、マトリクス状に配列された複数の画素電極520が形成されている。具体的に、その基板502の表面には、マトリクス状に配列された画素電極520、この画素電極520に接続されたスイッチング素子(不図示)、及びこのスイッチング素子に接続された金属配線(不図示)等が設けられ、さらに、画素電極520を覆うように配向膜550が設けられている。
基板503の液晶側の表面には、例えばITO等の透明な材料により形成された共通電極521が形成されており、さらに、この共通電極521を覆うように配向膜551が設けられている。
【0083】
基板502と基板503との間に挟持された液晶層504は、ネマチック液晶からなる。ネマチック液晶分子は、正の誘電率異方性を有するものであり、非選択電圧印加時には基板に沿って水平配向し、選択電圧印加時には電界方向に沿って垂直配向する。またネマチック液晶分子は、正の屈折率異方性を有するものであり、その複屈折と液晶層厚との積(リタデーション)Δndは、例えば約0.40μm(60℃)である。なお、基板502の配向膜550による配向規制方向と、基板503の配向膜551による配向規制方向とは、約90°ねじれた状態に設定されている。すなわち、この液晶装置500は、TN(Twisted Nematic)モードで動作する。
【0084】
基板502及び503の液晶と反対側の表面にはそれぞれ、偏光板560,561が貼り付けられている。偏光板560,561は、例えばポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素をドープした材料等からなり、その吸収軸方向の直線偏光を吸収しかつ透過軸方向の直線偏光を透過する機能を有する。基板502側の偏光板560は、その透過軸が配向膜550の配向規制方向と略一致するように配置され、基板503側の偏光板561は、その透過軸が配向膜551の配向規制方向と略一致するように配置されている。放熱性の向上のために、サファイヤガラスや水晶等の高熱伝導率材料からなる支持基板上に偏光板560,561を装着し、液晶装置500から離間配置することが望ましい。基板503側から入射する光のうちの偏光板561の透過軸と一致する直線偏光のみが偏光板561を透過して液晶層504に入射する。
【0085】
非選択電圧印加時においては、基板に対して水平配向した液晶分子が液晶層504の厚さ方向に沿って約90°ねじれたらせん状に積層配置され、液晶層504に入射した直線偏光は、約90°旋光されて液晶層504から射出する。この直線偏光は、偏光板560の透過軸と一致し、偏光板560を透過する。
一方、選択電圧印加時においては、液晶分子が基板に対して垂直配向しているから、液晶層504に入射した直線偏光は、旋光されることなく液晶層504から射出する。この直線偏光は、偏光板560の透過軸と直交し、偏光板560を透過しない。
【0086】
上述した液晶装置500では、配向膜550,551として、無機材料を主成分とする無機配向膜を採用しており、その無機配向膜が上述した成膜装置及び成膜方法を用いて形成されている。ポリイミド等の有機材料を主成分とする配向膜は、高強度の光や熱によって有機物がダメージを受けやすい。例えば、有機物が光によって分解するとともに、吸収熱でその分解が促進される。これに対して、無機材料を主成分とする無機配向膜は、光劣化が少なく、長期にわたり安定した配向特性を有する。また、上述した成膜装置及び成膜方法を用いて形成された配向膜は、配向性に優れた斜方構造を有しかつ膜厚均一であることから、液晶装置500は動作安定性に優れる。
【0087】
無機材料としては、SiO2 、SiO、Al2O3、ZnO2 、Ta2O3、TiO2 などの他、様々な無機材料(無機酸化物、金属酸化物)が採用される。無機配向膜の平均厚さは、例えば、0.02〜0.3μmであるのが好ましく、0.02〜0.08μmであるのがより好ましい。無機配向膜の厚さが薄すぎると、プレチルト角の面内均一性が低下しやすいので好ましくなく、無機配向膜の厚さが厚すぎると、液晶装置500の駆動電圧が高くなるので好ましくない。
【0088】
なお、、TN(Twisted Nematic)モードで機能する液晶装置を例にして説明したが、VA(Vertical Alignment)モードで機能する液晶装置に本発明を適用することも可能である。
また、スイッチング素子としてTFTを備えた液晶装置を例にして説明したが、スイッチング素子として薄膜ダイオード(Thin Film Diode)等の二端子型素子を備えた液晶装置に本発明を適用することも可能である。
また、透過型液晶装置を例にして説明したが、反射型液晶装置に本発明を適用することも可能である。
また、アクティブ型の液晶装置を例にして説明したが、パッシブ型の液晶装置に本発明を適用することも可能である。
【0089】
(プロジェクタ)
次に、本発明のプロジェクタについて説明する。
図14は、本発明のプロジェクタの一例を概略的に示す図である。
このプロジェクタPJ1は、本発明の液晶装置を光変調手段(液晶ライトバルブ)として用いており、R(赤)、G(緑)、B(青)の異なる色毎に透過型液晶ライトバルブを備えた3板式の間欠表示型カラー液晶プロジェクタである。
【0090】
図14に示すように、プロジェクタPJ1は、光源810と、ダイクロイックミラー813,814と、反射ミラー815,816,817と、入射レンズ818と、リレーレンズ819と、射出レンズ820と、液晶ライトバルブ822,823,824と、クロスダイクロイックプリズム825と、投射レンズ826とを備えて構成されている。
【0091】
光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とを含む。
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、赤色光用液晶ライトバルブ822に入射する。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、緑色光用液晶ライトバルブ822に入射する。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および射出レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が青色光用液晶ライトバルブ824に入射する。
【0092】
各液晶ライトバルブ822,823,824により変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投影され、画像が拡大されて表示される。
【0093】
上述したプロジェクタPJ1によれば、無機配向膜を採用した液晶ライトバルブ822,823,824を備えることから光劣化が少ない。また、無機配向膜の配向性に優れ、高い信頼性を有する。
【0094】
なお、本例では赤色光用,緑色光用,青色光用の各液晶ライトバルブに本発明の液晶装置を採用したが、係る液晶装置は必ずしも全ての液晶ライトバルブに適用される必要はなく、少なくともR,G,Bのうちのいずれかの液晶ライトバルブに適用すれば、その効果を得ることができる。光のエネルギーが高い青色光(B)用の液晶ライトバルブに本発明の液晶装置を適用すると特に効果的である。
また、3板式の投射型表示装置(プロジェクタ)を例にして説明したが、単板式の投射型表示装置や直視型表示装置に本発明を適用することも可能である。
【0095】
また、本発明の液晶装置を、プロジェクタ以外の電子機器に適用することも可能である。その具体例として、本発明の液晶装置を表示部に備えた携帯電話を挙げることができる。また、その他の電子機器としては、例えば、ビデオカメラ、パーソナルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、さらに表示機能付きファックス装置、デジタルカメラのファインダ、携帯型TV、PDA(Personal Digital Assistant)、電子手帳、電光掲示盤、宣伝公告用ディスプレイ等が挙げられる。
【0096】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の成膜装置の基本構成を説明するための図。
【図2】図1の成膜装置の要部構成を示す斜視図。
【図3】基板搬送系の構成例を示す図。
【図4】ターゲットに対する基板の相対的な姿勢の変化の様子を模式的に示す図。
【図5】基板に飛来した粒子によって斜方結晶が成長する様子を示す図。
【図6】図1に示す矢視A方向から見た模式的な平面図。
【図7】図1及び図2の成膜装置の変形例を示す図。
【図8】図1及び図2の成膜装置の変形例を示す図。
【図9】図1及び図2の成膜装置の別の変形例を示す図。
【図10】図1及び図2の成膜装置の別の変形例を示す図。
【図11】図9に示す矢視B方向から見た模式的な平面図。
【図12】本発明の液晶装置の一例を概略的に示す平面図。
【図13】図12の液晶装置の部分断面図。
【図14】本発明のプロジェクタの一例を概略的に示す図。
【符号の説明】
【0098】
IBS1,IBS2…成膜装置、Pt…照射点、Ps…成膜点、θ1…ビーム角、θ2…基板の倒れ角、θ3…基板の傾斜角、11…ターゲット、11a…スパッタ面、12…イオンビーム、15…基板、15a…被成膜面、16…法線、20…真空槽(成膜室)、21…真空排気系、30…イオンガン、31…放出口、32…ビーム軸、35…照射領域(放出領域)、40…搬送系、50…基板搬送系、51…移動中心軸、PT1…第1位置、PT2…第2位置、53…トレイ、54…搬送機構、55…高さ規定部材、60…治具搬送系、70…制御装置、100…整流治具、110…コリメータ、111…規制板、120…遮蔽板、121,122…遮蔽部、123…開口部、123a…幅狭部、123b…幅広部、130,131…防着板、500…液晶装置、504…液晶層、550,551…配向膜、PJ1…プロジェクタ、822,823,824…液晶ライトバルブ(液晶装置)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットから放出された粒子の飛行領域を横切るように、前記ターゲットに対して相対的に基板を移動させる基板搬送系であって、
前記基板が搭載されるトレイと、
前記トレイにおける前記ターゲットに近い第1位置と前記ターゲットから遠い第2位置とを支持し、かつ前記第1位置と前記第2位置とを通る軸線を横切る方向に前記トレイを搬送する搬送機構と、
前記トレイの前記第1位置及び/又は前記第2位置に配設され、前記搬送機構に対する前記トレイの高さを規定する高さ規定部材と、を有する、ことを特徴とする基板搬送系。
【請求項2】
前記高さ規定部材は、板状部材である、ことを特徴とする請求項1に記載の基板搬送系。
【請求項3】
前記高さ規定部材は、前記トレイの一部である、ことを特徴とする請求項1に記載の基板搬送系。
【請求項4】
ターゲットから放出された粒子を基板の一面に斜めに入射させかつ付着させる成膜装置であって、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板搬送系を備える、ことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
前記基板の一面に前記粒子が入射するときの入射角度が15°以下である、ことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記ターゲットは、主として無機材料を含む、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の成膜装置で成膜された配向膜を備える、ことを特徴とする液晶装置。
【請求項8】
前記配向膜は、無機材料を主成分とする無機配向膜である、ことを特徴とする請求項7に記載の液晶装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶装置を備える、ことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項10】
ターゲットから放出された粒子を基板の一面に斜めに入射させかつ付着させる成膜方法であって、
前記ターゲットから放出された粒子の飛行領域を横切るように、前記ターゲットに対して相対的に前記基板を移動させるとともに、
前記基板の移動時における前記ターゲットに対する前記基板の相対的な姿勢を、前記基板ごとに調整する、ことを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
前記相対的な姿勢は、前記ターゲットに対する前記基板の傾き、及び前記ターゲットと前記基板との距離、の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の成膜方法。
【請求項1】
ターゲットから放出された粒子の飛行領域を横切るように、前記ターゲットに対して相対的に基板を移動させる基板搬送系であって、
前記基板が搭載されるトレイと、
前記トレイにおける前記ターゲットに近い第1位置と前記ターゲットから遠い第2位置とを支持し、かつ前記第1位置と前記第2位置とを通る軸線を横切る方向に前記トレイを搬送する搬送機構と、
前記トレイの前記第1位置及び/又は前記第2位置に配設され、前記搬送機構に対する前記トレイの高さを規定する高さ規定部材と、を有する、ことを特徴とする基板搬送系。
【請求項2】
前記高さ規定部材は、板状部材である、ことを特徴とする請求項1に記載の基板搬送系。
【請求項3】
前記高さ規定部材は、前記トレイの一部である、ことを特徴とする請求項1に記載の基板搬送系。
【請求項4】
ターゲットから放出された粒子を基板の一面に斜めに入射させかつ付着させる成膜装置であって、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の基板搬送系を備える、ことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
前記基板の一面に前記粒子が入射するときの入射角度が15°以下である、ことを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記ターゲットは、主として無機材料を含む、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の成膜装置で成膜された配向膜を備える、ことを特徴とする液晶装置。
【請求項8】
前記配向膜は、無機材料を主成分とする無機配向膜である、ことを特徴とする請求項7に記載の液晶装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶装置を備える、ことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項10】
ターゲットから放出された粒子を基板の一面に斜めに入射させかつ付着させる成膜方法であって、
前記ターゲットから放出された粒子の飛行領域を横切るように、前記ターゲットに対して相対的に前記基板を移動させるとともに、
前記基板の移動時における前記ターゲットに対する前記基板の相対的な姿勢を、前記基板ごとに調整する、ことを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
前記相対的な姿勢は、前記ターゲットに対する前記基板の傾き、及び前記ターゲットと前記基板との距離、の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−20829(P2008−20829A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194482(P2006−194482)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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