説明

成膜装置およびそれを用いた成膜方法

【課題】成膜原料から形成されたパーティクルの配管等への付着を防止すると共に、成膜原料を除害する。
【解決手段】超臨界流体に成膜原料が溶解した処理媒体をチャンバ16から冷却装置17に導入し、該冷却装置17によって臨界温度以下に冷却して超臨界流体を液体溶媒40に変化させる。これにより、液体溶媒40と成膜原料とに分離する。次に、液体溶媒40と成膜原料とをトラップ18に導入し、トラップ18に備えられたトラップ溶媒30に成膜原料を溶解する。そして、トラップ18から減圧バルブ19に液体溶媒40を導入し、減圧バルブ19によって液体溶媒40を減圧することにより気化させる。以上により、成膜原料を回収すると共に液体溶媒40のみを気化できるので、成膜原料が核化したパーティクルが発生することはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界流体に成膜原料を溶解させた処理媒体を用いて、基板に成膜を行う成膜装置およびそれを用いた成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、超臨界流体は有機溶媒に代わる溶媒として様々なところで応用されている。例えば、超臨界流体を成膜原料の溶媒として用いる成膜方法が知られている。この超臨界流体の流量や圧力の制御には、減圧バルブによる減圧工程が必要となる。そして、減圧工程部分では、ジュール・トムソン効果により流体温度が低下する。しかし、超臨界流体は圧力が低下することによって密度が低下し、また温度が低下することによっても密度が低下する。その結果、超臨界流体の溶解度が減少する。そのため、減圧バルブ内部もしくはその下流において成膜原料が析出し、析出された成膜原料がバルブもしくはその下流の配管の詰まりの原因となる。
【0003】
そこで、特許文献1では、成膜原料を溶解した超臨界流体に他の加圧した流体を混合することにより元の超臨界流体の圧力を減圧し、成膜原料を捕集器もしくは加圧した流体に溶解する方法が提案されている。これにより、超臨界流体から成膜原料を分離した後、超臨界流体を廃棄している。
【0004】
また、成膜に用いられた成膜原料が溶解した超臨界流体を廃棄する方法として、チャンバから排出された該超臨界流体を排気バルブ後に設けられたトラップを介することにより、成膜原料と溶媒とを分離して廃棄する方法も知られている。
【特許文献1】特開平8−52315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トラップを用いて該超臨界流体を廃棄する方法では、排気バルブ下流において超臨界流体が減圧されるため、超臨界流体が急激に膨張することにより、超臨界流体の溶解度が急激に減少してしまう。これにより、超臨界流体中に溶解していた成膜原料が核化してパーティクルを形成するRESS(Rapid Expansion for supercritical solutions)によって、減圧バルブ内部や配管にパーティクルが付着し、減圧バルブの漏れや配管の詰まりの原因となる。
【0006】
このように、減圧バルブの漏れや配管の詰まりが起こると、成膜原料が溶解した超臨界流体を成膜装置から排出できなくなる。このため、成膜自体ができなくなったり、成膜装置そのものが壊れたりする可能性がある。
【0007】
また、パーティクルとなった成膜原料は有害物質であるため、成膜装置から安全に廃棄できるようにもしなければならない。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、成膜原料から形成されたパーティクルの配管等への付着を防止すると共に、成膜原料を除害することができる成膜装置およびそれを用いた成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、液体溶媒(40)を加圧および加熱して超臨界流体に変化させ、超臨界流体に成膜原料を溶解した処理媒体をチャンバ(16)内に導入することにより成膜を行い、成膜に用いた処理媒体を冷却および減圧して外部に排出する成膜装置であって、チャンバ(16)から排出された成膜に用いられた処理媒体を減圧バルブ(19)で臨界圧力以下に減圧する前に臨界温度以下に冷却して超臨界流体を液体溶媒(40)に変化させ、液体溶媒(40)と成膜原料とに分離する冷却分離手段(17)と、成膜原料が溶解するトラップ溶媒(30)を有し、冷却分離手段(17)によって分離された液体溶媒(40)と成膜原料とを導入し、成膜原料をトラップ溶媒(30)に溶解するトラップ手段(18)と、トラップ手段(18)から液体溶媒(40)を導入し、該液体溶媒(40)を減圧することにより気化させる減圧バルブ(19)とを備えていることを特徴とする。
【0010】
これによると、処理媒体を減圧バルブ(19)で減圧する前に冷却分離手段(17)によって超臨界流体状態を液体溶媒(40)に変化させることができる。これにより、成膜原料が析出することなく、成膜原料と液体溶媒(40)とに分離することができる。
【0011】
また、トラップ手段(18)によって成膜原料をトラップ溶媒(30)に溶解しているため、成膜原料を除害することができる。これにより、成膜原料によるパーティクルが形成されることはなく、液体溶媒(40)のみを減圧バルブ(19)に通過させることができる。したがって、該パーティクルの配管等への付着を防止することができ、ひいては減圧バルブ(19)の漏れや配管の詰まりを抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、トラップ手段(18)は、トラップ溶媒(30)が備えられた密閉容器(18a)と、冷却分離手段(17)と密閉容器(18a)とを接続し、密閉容器(18a)に液体溶媒(40)および成膜原料を導入する導入管(18b)と、密閉容器(18a)と減圧バルブ(19)とを接続する排出管(18c)とを備えて構成されており、トラップ溶媒(30)の比重が液体溶媒(40)よりも大きい場合、密閉容器(18a)内では、トラップ溶媒(30)の相と液体溶媒(40)の相とが形成されると共に、トラップ溶媒(30)の相が液体溶媒(40)の相よりも密閉容器(18a)の底部側に位置し、導入管(18b)は、冷却分離手段(17)から液体溶媒(40)と成膜原料とをトラップ溶媒(30)の相に導入するように密閉容器(18a)の底部側に接続され、排出管(18c)は、液体溶媒(40)の相から液体溶媒(40)のみを減圧バルブ(19)に導くように密閉容器(18a)の上部側に接続されていることを特徴とする。
【0013】
このように、トラップ溶媒(30)と液体溶媒(40)との比重の差を利用することにより、トラップ溶媒(30)の相と液体溶媒(40)の相とを形成することができる。したがって、排出管(18c)を介して液体溶媒(40)のみを減圧バルブ(19)に導くことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、トラップ手段(18)は、トラップ溶媒(30)が備えられた密閉容器(18a)と、冷却分離手段(17)と密閉容器(18a)とを接続し、密閉容器(18a)に液体溶媒(40)および成膜原料を導入する導入管(18b)と、密閉容器(18a)と減圧バルブ(19)とを接続する排出管(18c)とを備えて構成されており、液体溶媒(40)の比重がトラップ溶媒(30)よりも大きい場合、密閉容器(18a)内では、液体溶媒(40)の相とトラップ溶媒(30)の相とが形成されると共に、液体溶媒(40)の相がトラップ溶媒(30)の相よりも密閉容器(18a)の底部側に位置し、導入管(18b)は、冷却分離手段(17)から液体溶媒(40)と成膜原料とをトラップ溶媒(30)の相に導入するように密閉容器(18a)の上部側に接続され、排出管(18c)は、液体溶媒(40)の相から液体溶媒(40)のみを減圧バルブ(19)に導くように密閉容器(18a)の底部側に接続されていることを特徴とする。
【0015】
これにより、請求項2と同様に、排出管(18c)を介して液体溶媒(40)のみを減圧バルブ(19)に導くことができる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、導入管(18b)は、密閉容器(18a)から冷却分離手段(17)への液体溶媒(40)および成膜原料の流れを阻止する逆止弁(18d)を備えていることを特徴とする。これにより、トラップ手段(18)から冷却分離手段(17)への逆流を防止することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、液体溶媒(40)は、二酸化炭素であることを特徴とする。この二酸化炭素は、超臨界流体として用いられるものの中で常温・常圧に近いところに臨界点を持つ。したがって、二酸化炭素を液体溶媒(40)として用いることにより、装置を大がかりな構成とすることなく処理媒体を作り出すことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、液体溶媒(40)を加圧および加熱して超臨界流体に変化させ、超臨界流体に成膜原料を溶解した処理媒体をチャンバ(16)内に導入することにより成膜を行い、成膜に用いた処理媒体を冷却および減圧して外部に排出する成膜方法であって、チャンバ(16)から排出された成膜に用いられた処理媒体を減圧バルブ(19)で臨界圧力以下に減圧する前に冷却分離手段(17)によって臨界温度以下に冷却して超臨界流体を液体溶媒(40)に変化させ、液体溶媒(40)と成膜原料とに分離する分離工程と、液体溶媒(40)と成膜原料とをトラップ手段(18)に導入し、トラップ手段(18)に備えられたトラップ溶媒(30)に成膜原料を溶解する溶解工程と、トラップ手段(18)から減圧バルブ(19)に液体溶媒(40)を導入し、減圧バルブ(19)によって液体溶媒(40)を減圧することにより気化させる気化工程とを含んでいることを特徴とする。
【0019】
このように、処理媒体を減圧バルブ(19)で減圧する前に冷却分離手段(17)によって超臨界流体状態から液体の液体溶媒(40)に変化させることにより、成膜原料が析出することなく、成膜原料と液体溶媒(40)とに分離することができる。
【0020】
さらに、溶解工程においてトラップ手段(18)によって成膜原料をトラップ溶媒(30)に溶解することで成膜原料を除害することができる。これにより、成膜原料によるパーティクルを形成することなく、液体溶媒(40)のみを減圧バルブ(19)に導くことができる。したがって、該パーティクルの配管等への付着を防止することができ、ひいては減圧バルブ(19)の漏れや配管の詰まりを抑制することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明では、溶解工程では、トラップ手段(18)として、トラップ溶媒(30)が備えられた密閉容器(18a)と、冷却分離手段(17)と密閉容器(18a)とを接続し、密閉容器(18a)に液体溶媒(40)および成膜原料を導入する導入管(18b)と、密閉容器(18a)と減圧バルブ(19)とを接続する排出管(18c)とを備えて構成されたものを用い、トラップ溶媒(30)の比重が液体溶媒(40)よりも大きい場合、密閉容器(18a)内にトラップ溶媒(30)の相と液体溶媒(40)の相とを形成すると共に、トラップ溶媒(30)の相を液体溶媒(40)の相よりも密閉容器(18a)の底部側に位置させ、導入管(18b)を密閉容器(18a)の底部側に接続することで、冷却分離手段(17)から液体溶媒(40)と成膜原料とをトラップ溶媒(30)の相に導入し、排出管(18c)を密閉容器(18a)の上部側に接続することで、液体溶媒(40)の相から液体溶媒(40)のみを密閉容器(18a)から減圧バルブ(19)に導くことを特徴とする。
【0022】
これにより、トラップ溶媒(30)と液体溶媒(40)との比重の差を利用して、トラップ溶媒(30)の相と液体溶媒(40)の相とを形成することができる。したがって、排出管(18c)を介して液体溶媒(40)のみを減圧バルブ(19)に導くことができる。
【0023】
請求項8に記載の発明では、溶解工程では、トラップ手段(18)として、トラップ溶媒(30)が備えられた密閉容器(18a)と、冷却分離手段(17)と密閉容器(18a)とを接続し、密閉容器(18a)に液体溶媒(40)および成膜原料を導入する導入管(18b)と、密閉容器(18a)と減圧バルブ(19)とを接続する排出管(18c)とを備えて構成されたものを用い、前記液体溶媒(40)の比重がトラップ溶媒(30)よりも大きい場合、密閉容器(18a)内に液体溶媒(40)の相とトラップ溶媒(30)の相とを形成すると共に、液体溶媒(40)の相をトラップ溶媒(30)の相よりも密閉容器(18a)の底部側に位置させ、導入管(18b)を密閉容器(18a)の上部側に接続することで、冷却分離手段(17)から液体溶媒(40)と成膜原料とをトラップ溶媒(30)の相に導入し、排出管(18c)を密閉容器(18a)の底部側に接続することで、液体溶媒(40)の相から液体溶媒(40)のみを密閉容器(18a)から減圧バルブ(19)に導くことを特徴とする。
【0024】
これにより、請求項7と同様に、排出管(18c)を介して液体溶媒(40)のみを減圧バルブ(19)に導くことができる。
【0025】
請求項9に記載の発明では、導入管(18b)として、密閉容器(18a)から冷却分離手段(17)への液体溶媒(40)および成膜原料の流れを阻止する逆止弁(18d)を備えたものを用いることを特徴とする。これにより、トラップ手段(18)から冷却分離手段(17)への逆流を防止することができる。
【0026】
請求項10に記載の発明では、液体溶媒(40)として、二酸化炭素を用いることを特徴とする。これにより、請求項5と同様の効果を得ることができる。
【0027】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態で示される成膜装置は、液体溶媒を加圧および加熱して超臨界流体に変化させ、超臨界流体に成膜原料を溶解した処理媒体をチャンバ内に導入することにより成膜を行い、成膜に用いた処理媒体を冷却および減圧して外部に排出するものである。特に、成膜に用いられた処理媒体を除害して排気する際に適している。
【0030】
本実施形態では、溶媒として超臨界流体に変化する二酸化炭素(CO)を用いる。二酸化炭素の臨界点については、温度が31.1℃であり、圧力が7.38MPaである。これら温度および圧力の両方を満たすとき、二酸化炭素は超臨界流体の状態に変化する。なお、超臨界流体の状態に変化する物質として水(HO)もある。水の臨界点は、温度が374℃であり、圧力が22.12MPaである。
【0031】
図1は、本実施形態に係る成膜装置の構成図である。この図に示されるように、成膜装置は、二酸化炭素タンク10、冷却装置11、ポンプ12、TEOSタンク13、ポンプ14、加熱装置15、チャンバ16、冷却装置17、トラップ18、および減圧バルブ19を備えている。
【0032】
二酸化炭素タンク10は、溶媒として用いられるCOが気体の状態で閉じこめられたタンクである。この二酸化炭素タンク10は、バルブ20を介して冷却装置11に接続されており、気体のCOが冷却装置11で例えば0℃に冷やされて液体に変化させられる。冷却装置11にて液体に変化したCOは、ポンプ12によって例えば10MPaに加圧され、バルブ21を介して加熱装置15に供給される構成になっている。
【0033】
また、TEOSタンク13は、成膜原料として液体のTEOS(Si(OC)が液体の状態で閉じこめられたタンクである。TEOSタンク13内の液体のTEOSは、ポンプ14およびバルブ22を介して加熱装置15に供給される構成になっている。
【0034】
加熱装置15では、液体のCOとTEOSとを例えば37℃を超える温度に加熱されるものである。これにより、液体のCOが超臨界流体に変化させられ、超臨界流体としてのCOと液体のTEOSが混ざり合うことで処理媒体が生成される。この処理媒体は、チャンバ16の導入通路23に導入され、導入通路23に設けられたバルブ24を介してチャンバ16に供給される。
【0035】
チャンバ16は、成膜を行うための処理室が設けられたものであり、この処理室に基板が配置されている。基板として、Siウェハやガラス基板などが採用される。このチャンバ16に処理媒体が導入され、基板に成膜が行われる。なお、チャンバ16内には基板を加熱する図示しないヒータ等も備えられている。
【0036】
そして、図1に示されるように、チャンバ16で成膜に用いられた処理媒体は、バルブ25を介して排出通路26に排出される。排出通路26は冷却装置17に接続されている。さらに、導入通路23からバルブ27を介して排出通路26に処理媒体を移動できるようにもなっている。
【0037】
冷却装置17は、チャンバ16から排出された成膜に用いられた処理媒体を臨界温度以下に冷却して超臨界流体を液体溶媒に変化させることにより、液体溶媒と成膜原料とに分離するものである。
【0038】
図2は、冷却装置17の模式図である。この図に示されるように、冷却装置17は例えば熱交換器によって構成される。そして、チャンバ16から流れ出た超臨界流体となったCOには未反応のTEOSが溶解している。したがって、冷却装置17は、減圧バルブ19より前で超臨界流体となったCOを臨界点以下に冷却することにより、超臨界流体のCOを液体溶媒に変化させる。液体溶媒となったCOはTEOSをほとんど溶解しないため、COとTEOSとに分離することができる。
【0039】
トラップ18は、成膜原料が溶解するトラップ溶媒を有しており、冷却装置17によって分離された液体溶媒と成膜原料とを導入して、成膜原料のみをトラップ溶媒30に溶解するものである。トラップ溶媒としては、例えば、TEOSが溶解するエタノールが用いられる。
【0040】
図3は、トラップ18の模式図である。この図に示されるように、トラップ18は、密閉容器18aと、導入管18bと、排出管18cとを備えている。密閉容器18aには、成膜原料が溶解するトラップ溶媒30が備えられている。
【0041】
導入管18bは、冷却装置17と密閉容器18aとを接続する部位であり、冷却装置17から密閉容器18aに液体溶媒40および成膜原料を導入する。この導入管18bには、密閉容器18aから冷却装置17への液体溶媒40および成膜原料の流れを阻止する逆止弁18dが設けられている。これにより、トラップ18から冷却装置への逆流が防止される。排出管18cは密閉容器18aと減圧バルブ19とを接続する部位である。
【0042】
本実施形態では、トラップ溶媒30であるエタノールは、液体溶媒40である液体のCOよりも比重が大きい。このため、図3に示されるように、密閉容器18a内ではトラップ溶媒30の相と液体溶媒40の相とが形成されると共に、トラップ溶媒30の相が液体溶媒40の相よりも密閉容器18aの底部側に位置している。
【0043】
そして、液体溶媒40および成膜原料が必ずトラップ溶媒30を通過するように、導入管18bは密閉容器18aの底部側に接続されている。これにより、冷却装置17から液体溶媒40および成膜原料がトラップ溶媒30の相に導入されるようになっている。
【0044】
また、密閉容器18aから液体溶媒40のみを排出するため、排出管18cは密閉容器18aの上部側に接続されている。これにより、密閉容器18aの上部側に集まった液体溶媒40の相から液体溶媒40のみを排出することができるようになっている。
【0045】
そして、図1に示される減圧バルブ19は、トラップ18から流れてきた液体溶媒40を減圧することにより気化させるものである。これにより、液体のCOは気体に変化させられ、外部に排気される。以上が、本実施形態に係る成膜装置の全体構成である。なお、各バルブ20〜22、24、25、27や減圧バルブ19の開閉、冷却装置11、17や加熱装置15等の制御は、図示しない制御装置によって行われる。
【0046】
次に、上記成膜装置を用いた成膜方法について説明する。まず、二酸化炭素タンク10から気体のCOを冷却装置11に送って液体化し、これにポンプ12で圧力を加え、加熱装置15に送る。
【0047】
一方、TEOSタンク13から液状のTEOSを加熱装置15に送る。そして、加熱装置15で液体のCOおよびTEOSをCOの臨界温度を超える温度に加熱することにより、COを超臨界流体に変化させる。これにより、TEOSが超臨界流体のCOに溶解し、処理媒体が得られる。導入通路23を介してこの処理媒体をチャンバ16に供給する。
【0048】
COは、超臨界流体として用いられるものの中で常温・常圧に近いところに臨界点を持つため、装置を大がかりな構成とすることなく超臨界流体を作り出すことが可能である。
【0049】
この後、チャンバ16内でヒータを加熱制御して基板を加熱し、基板の表面側に処理媒体中の成膜原料を析出することにより、例えば、基板の表面側にSiO膜を形成する成膜工程を行う。この成膜工程で用いられた処理媒体には、成膜に用いられなかった成膜原料が溶解しているため、該成膜原料を以下の工程により回収する。
【0050】
すなわち、チャンバ16から排出された成膜に用いられた処理媒体を冷却装置17に導入し、冷却装置17によって処理媒体を臨界温度以下に冷却して超臨界流体を液体溶媒40に変化させ、処理媒体を液体溶媒40と成膜原料とに分離する分離工程を行う。この分離工程は、減圧バルブ19で処理媒体を臨界圧力以下に減圧する前に行う。
【0051】
図4は、本実施形態で溶媒として用いられる二酸化炭素の相線図である。上記の分離工程により処理媒体の圧力は一定に保持された状態で冷却装置17によって臨界温度以下に冷却される。このため、二酸化炭素は超臨界流体の状態を維持できなくなり、図4の経路Aをたどって液体溶媒40に変化する。
【0052】
液体溶媒40である液体のCOは成膜原料であるTEOSをほとんど溶解しないため、液体のCOと液体のTEOSとが分離した状態になっている。
【0053】
次に、冷却装置17から液体溶媒40および成膜原料をトラップ18に導入し、トラップ18に備えられたトラップ溶媒30に成膜原料を溶解する溶解工程を行う。
【0054】
具体的には、導入管18bを介して液体溶媒40(液体のCO)と成膜原料(液体のTEOS)とに分離した液体を冷却装置17から密閉容器18aに導入する。上述のように、導入管18bは密閉容器18aの底部側に取り付けられているため、液体溶媒40および成膜原料はトラップ溶媒30の相(エタノール相)に導入されて混ざる。
【0055】
そして、成膜原料であるTEOSはトラップ溶媒30であるエタノールに溶ける。また、トラップ溶媒30であるエタノールは液体溶媒40である液体のCOよりも比重が大きいため、エタノールより比重が軽い液体のCOが密閉容器18aの上部へ溜まる。つまり、トラップ溶媒30の相が液体溶媒40の相よりも密閉容器18aの底部側に位置する。したがって、図3に示されるように、密閉容器18a内にトラップ溶媒30の相(エタノール相)と液体溶媒40の相(液体CO相)とが形成される。
【0056】
このように、密閉容器18aの上部に溜まった液体溶媒40の相から液体溶媒40のみを排出管18cを介して減圧バルブ19に導く。成膜原料はトラップ溶媒30に溶解して回収されるため、成膜原料が密閉容器18aから排出されることはない。このように、トラップ溶媒30と液体溶媒40との比重の差を利用することにより、トラップ溶媒30の相と液体溶媒40の相とを形成することができ、排出管18cを介して液体溶媒40のみを減圧バルブ19に導くことができる。
【0057】
この後、トラップ18から減圧バルブ19に液体溶媒40を導入し、減圧バルブ19によって液体溶媒40を減圧することにより気化させる気化工程を行う。すなわち、液体溶媒40が減圧バルブ19によって減圧されることにより、液体のCOは液体の状態から図4の経路Bをたどって気体のCOに変化する。このようにして、気体となったCOを成膜装置から排気する。
【0058】
ここで、従来のように、成膜原料が溶解した超臨界流体の状態の処理媒体を図4に示される経路Cで冷却および減圧すると、減圧バルブ19での断熱膨張によるRESSにより減圧バルブ19や配管内壁に粒子が付着する。しかし、本実施形態では、気化工程で液体溶媒40である液体のCOのみを減圧バルブ19で気化させている。これは、減圧バルブ19で処理媒体を臨界圧力以下に減圧する前に、分離工程で処理媒体を冷却することによりCOの超臨界流体の状態を解除し、さらに溶解工程でRESSによりパーティクルの元となる成膜原料のみを回収するという二段階の工程(経路A、B)を経ているからこそ可能となることである。
【0059】
したがって、本実施形態では、成膜原料が含まれていない液体溶媒40を気化させることになり、減圧バルブ19での断熱膨張によるRESSにより減圧バルブ19や配管内壁に粒子が付着することはない。
【0060】
以上説明したように、本実施形態では、成膜に用いられた処理媒体を冷却装置17によって冷却することにより、超臨界流体の状態から液体溶媒40に変化させ、その後、トラップ18によって成膜原料のみを回収し、液体溶媒40のみを減圧バルブ19で気化させることが特徴となっている。
【0061】
これにより、処理媒体を成膜原料と液体溶媒40とに分離することができ、トラップ18によって成膜原料をトラップ溶媒30に溶解して回収することができる。このため、成膜原料が減圧バルブ19にまで到達することはなく、液体溶媒40のみを減圧バルブ19で気化させることができる。したがって、成膜原料によるパーティクルが形成されないようにすることができ、該パーティクルの配管等への付着や減圧バルブ19の漏れや配管の詰まりを防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態の記載と特許請求の範囲の記載との対応関係については、冷却装置11が特許請求の範囲の冷却分離手段に対応し、トラップ18が特許請求の範囲のトラップ手段に対応する。
【0063】
(第2実施形態)
図5は、本実施形態に係るトラップ18の模式図である。この図に示されるように、液体溶媒40の比重がトラップ溶媒30よりも大きい場合、密閉容器18a内では、液体溶媒40の相とトラップ溶媒30の相とが形成される。また、液体溶媒40の相がトラップ溶媒30の相よりも密閉容器18aの底部側に位置している。
【0064】
このような各相の形成に伴い、導入管18bは、冷却装置17から液体溶媒40と成膜原料とをトラップ溶媒30の相に導入するように密閉容器18aの上部側に接続されている。導入管18bには第1実施形態と同様に逆止弁18dが設けられている。一方、排出管18cは、液体溶媒40の相から液体溶媒40のみを減圧バルブ19に導くように密閉容器18aの底部側に接続されている。
【0065】
したがって、液体溶媒40とトラップ溶媒30との比重の差によって液体溶媒40が密閉容器18aの底部側に相を形成する場合には、導入管18bを密閉容器18aの上部側に接続して成膜原料がトラップ溶媒30を通過させる。これにより、成膜原料のみをトラップ溶媒30で回収することができるし、液体溶媒40のみを密閉容器18aの底部側に集めることもできる。以上のように、トラップ18を構成することもできる。
【0066】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、成膜原料としてTEOSを用いているが、液体のCOと分離できるものであれば他のものでも良い。また、成膜原料を除害するための液体としてエタノールを用いたが、成膜原料が溶解するものであれば他のものでも良い。
【0067】
上記各実施形態で示された逆止弁18dの位置は一例を示したものであり、該逆止弁18dの位置は導入管18bのどの位置でも良い。また、一箇所に限らず、複数設けられていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態に係る成膜装置の構成図である。
【図2】図1に示される冷却装置の模式図である。
【図3】図1に示されるトラップの模式図である。
【図4】溶媒として用いられる二酸化炭素の相線図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るトラップの模式図である。
【符号の説明】
【0069】
16 チャンバ
17 冷却装置
18 トラップ
18a 密閉容器
18b 導入管
18c 排出管
18d 逆止弁
19 減圧バルブ
30 トラップ溶媒
40 液体溶媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体溶媒(40)を加圧および加熱して超臨界流体に変化させ、前記超臨界流体に成膜原料を溶解した処理媒体をチャンバ(16)内に導入することにより成膜を行い、成膜に用いた前記処理媒体を冷却および減圧して外部に排出する成膜装置であって、
前記チャンバ(16)から排出された前記成膜に用いられた前記処理媒体を前記減圧バルブ(19)で臨界圧力以下に減圧する前に臨界温度以下に冷却して前記超臨界流体を前記液体溶媒(40)に変化させ、前記液体溶媒(40)と前記成膜原料とに分離する冷却分離手段(17)と、
前記成膜原料が溶解するトラップ溶媒(30)を有し、前記冷却分離手段(17)によって分離された前記液体溶媒(40)と前記成膜原料とを導入し、前記成膜原料を前記トラップ溶媒(30)に溶解するトラップ手段(18)と、
前記トラップ手段(18)から前記液体溶媒(40)を導入し、該液体溶媒(40)を減圧することにより気化させる減圧バルブ(19)とを備えていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記トラップ手段(18)は、
前記トラップ溶媒(30)が備えられた密閉容器(18a)と、
前記冷却分離手段(17)と前記密閉容器(18a)とを接続し、前記密閉容器(18a)に前記液体溶媒(40)および前記成膜原料を導入する導入管(18b)と、
前記密閉容器(18a)と前記減圧バルブ(19)とを接続する排出管(18c)とを備えて構成されており、
前記トラップ溶媒(30)の比重が前記液体溶媒(40)よりも大きい場合、前記密閉容器(18a)内では、前記トラップ溶媒(30)の相と前記液体溶媒(40)の相とが形成されると共に、前記トラップ溶媒(30)の相が前記液体溶媒(40)の相よりも前記密閉容器(18a)の底部側に位置し、
前記導入管(18b)は、前記冷却分離手段(17)から前記液体溶媒(40)と前記成膜原料とを前記トラップ溶媒(30)の相に導入するように前記密閉容器(18a)の底部側に接続され、
前記排出管(18c)は、前記液体溶媒(40)の相から前記液体溶媒(40)のみを前記減圧バルブ(19)に導くように前記密閉容器(18a)の上部側に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記トラップ手段(18)は、
前記トラップ溶媒(30)が備えられた密閉容器(18a)と、
前記冷却分離手段(17)と前記密閉容器(18a)とを接続し、前記密閉容器(18a)に前記液体溶媒(40)および前記成膜原料を導入する導入管(18b)と、
前記密閉容器(18a)と前記減圧バルブ(19)とを接続する排出管(18c)とを備えて構成されており、
前記液体溶媒(40)の比重がトラップ溶媒(30)よりも大きい場合、前記密閉容器(18a)内では、前記液体溶媒(40)の相と前記トラップ溶媒(30)の相とが形成されると共に、前記液体溶媒(40)の相が前記トラップ溶媒(30)の相よりも前記密閉容器(18a)の底部側に位置し、
前記導入管(18b)は、前記冷却分離手段(17)から前記液体溶媒(40)と前記成膜原料とを前記トラップ溶媒(30)の相に導入するように前記密閉容器(18a)の上部側に接続され、
前記排出管(18c)は、前記液体溶媒(40)の相から前記液体溶媒(40)のみを前記減圧バルブ(19)に導くように前記密閉容器(18a)の底部側に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記導入管(18b)は、前記密閉容器(18a)から前記冷却分離手段(17)への前記液体溶媒(40)および前記成膜原料の流れを阻止する逆止弁(18d)を備えていることを特徴とする請求項2または3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記液体溶媒(40)は、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の成膜装置。
【請求項6】
液体溶媒(40)を加圧および加熱して超臨界流体に変化させ、前記超臨界流体に成膜原料を溶解した処理媒体をチャンバ(16)内に導入することにより成膜を行い、成膜に用いた前記処理媒体を冷却および減圧して外部に排出する成膜方法であって、
前記チャンバ(16)から排出された前記成膜に用いられた前記処理媒体を前記減圧バルブ(19)で臨界圧力以下に減圧する前に冷却分離手段(17)によって臨界温度以下に冷却して前記超臨界流体を前記液体溶媒(40)に変化させ、前記液体溶媒(40)と前記成膜原料とに分離する分離工程と、
前記液体溶媒(40)と前記成膜原料とをトラップ手段(18)に導入し、前記トラップ手段(18)に備えられたトラップ溶媒(30)に前記成膜原料を溶解する溶解工程と、
前記トラップ手段(18)から減圧バルブ(19)に前記液体溶媒(40)を導入し、前記減圧バルブ(19)によって前記液体溶媒(40)を減圧することにより気化させる気化工程とを含んでいることを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
前記溶解工程では、前記トラップ手段(18)として、前記トラップ溶媒(30)が備えられた密閉容器(18a)と、前記冷却分離手段(17)と前記密閉容器(18a)とを接続し、前記密閉容器(18a)に前記液体溶媒(40)および前記成膜原料を導入する導入管(18b)と、前記密閉容器(18a)と前記減圧バルブ(19)とを接続する排出管(18c)とを備えて構成されたものを用い、
前記トラップ溶媒(30)の比重が前記液体溶媒(40)よりも大きい場合、前記密閉容器(18a)内に前記トラップ溶媒(30)の相と前記液体溶媒(40)の相とを形成すると共に、前記トラップ溶媒(30)の相を前記液体溶媒(40)の相よりも前記密閉容器(18a)の底部側に位置させ、
前記導入管(18b)を前記密閉容器(18a)の底部側に接続することで、前記冷却分離手段(17)から前記液体溶媒(40)と前記成膜原料とを前記トラップ溶媒(30)の相に導入し、
前記排出管(18c)を前記密閉容器(18a)の上部側に接続することで、前記液体溶媒(40)の相から前記液体溶媒(40)のみを前記密閉容器(18a)から前記減圧バルブ(19)に導くことを特徴とする請求項6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記溶解工程では、前記トラップ手段(18)として、前記トラップ溶媒(30)が備えられた密閉容器(18a)と、前記冷却分離手段(17)と前記密閉容器(18a)とを接続し、前記密閉容器(18a)に前記液体溶媒(40)および前記成膜原料を導入する導入管(18b)と、前記密閉容器(18a)と前記減圧バルブ(19)とを接続する排出管(18c)とを備えて構成されたものを用い、
前記液体溶媒(40)の比重がトラップ溶媒(30)よりも大きい場合、前記密閉容器(18a)内に前記液体溶媒(40)の相と前記トラップ溶媒(30)の相とを形成すると共に、前記液体溶媒(40)の相を前記トラップ溶媒(30)の相よりも前記密閉容器(18a)の底部側に位置させ、
前記導入管(18b)を前記密閉容器(18a)の上部側に接続することで、前記冷却分離手段(17)から前記液体溶媒(40)と前記成膜原料とを前記トラップ溶媒(30)の相に導入し、
前記排出管(18c)を前記密閉容器(18a)の底部側に接続することで、前記液体溶媒(40)の相から前記液体溶媒(40)のみを前記密閉容器(18a)から前記減圧バルブ(19)に導くことを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記導入管(18b)として、前記密閉容器(18a)から前記冷却分離手段(17)への前記液体溶媒(40)および前記成膜原料の流れを阻止する逆止弁(18d)を備えたものを用いることを特徴とする請求項7または8に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記液体溶媒(40)として、二酸化炭素を用いることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1つに記載の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−51850(P2010−51850A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216896(P2008−216896)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】