説明

成膜装置および成膜方法

【課題】高純度化したEL材料を用いてEL層を形成することができる成膜装置および成膜方法を提供する。
【解決手段】 本発明における成膜装置および成膜方法は、成膜直前に純粋なEL材料の昇華温度を利用してEL材料の昇華精製を行い、EL材料に含まれる酸素、水およびその他の不純物を除去すると共に、昇華精製により得られたEL材料(高純度EL材料)をそのまま蒸発源として用いて成膜を行うことができるという機能を有する成膜装置およびそれを用いた成膜方法であり、これまで以上に高純度なEL層を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にEL素子を形成する際に、成膜材料を昇華精製すると共に精製された材料を用いて成膜を行う際に用いる成膜装置および成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光型の素子としてEL素子を有した発光装置の研究が活発化しており、特に、EL材料として有機材料を用いた発光装置が注目されている。この発光装置は有機ELディスプレイ(OELD:Organic EL Display)又は有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)とも呼ばれている。
【0003】
なお、EL素子は、電場を加えることで発生するルミネッセンス(Electro Luminescence)が得られる有機化合物を含む層(以下、EL層と記す)と、陽極と、陰極とを有する。有機化合物におけるルミネッセンスには、一重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(蛍光)と三重項励起状態から基底状態に戻る際の発光(リン光)とがあるが、本発明の成膜装置および成膜方法により作製される発光装置は、どちらの発光を用いた場合にも適用可能である。
【0004】
発光装置は、液晶表示装置と異なり自発光型であるため視野角の問題がないという特徴がある。即ち、屋外に用いられるディスプレイとしては、液晶ディスプレイよりも適しており、様々な形での使用が提案されている。
【0005】
EL素子は一対の電極間にEL層が挟まれた構造となっているが、EL層は通常、積層構造となっている。代表的には、コダック・イーストマン・カンパニーのTangらが提案した「正孔輸送層/発光層/電子輸送層」という積層構造が挙げられる。この構造は非常に発光効率が高く、現在、研究開発が進められている発光装置は殆どこの構造を採用している。
【0006】
また、他にも陽極上に正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、または正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層の順に積層する構造も良い。発光層に対して蛍光性色素等をドーピングしても良い。また、これらの層は、全て低分子系の材料を用いて形成しても良いし、全て高分子系の材料を用いて形成しても良い。
【0007】
なお、本明細書において、陰極と陽極との間に設けられる全ての層を総称してEL層という。したがって、上述した正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、全てEL層に含まれる。
【0008】
また、本明細書中では、陰極、EL層及び陽極で形成される発光素子をEL素子といい、これには、互いに直交するように設けられた2種類のストライプ状電極の間にEL層を形成する方式(単純マトリクス方式)、又はTFTに接続されマトリクス状に配列された画素電極と対向電極との間にEL層を形成する方式(アクティブマトリクス方式)の2種類がある。
【0009】
EL素子の実用化における最大の問題は、素子の寿命が不十分な点である。また、素子の劣化は、長時間発光させると共に非発光領域(ダークスポット)が広がるという形で現れるが、その原因としてEL層の劣化が問題となっている。
【0010】
EL層を形成するEL材料は、酸素や水等の不純物により劣化を受ける。また、その他の不純物がEL材料に含まれることでEL層の劣化に影響を及ぼすことも考えられる。
【0011】
従来、蒸着法により成膜を行う際には、蒸発材料をそのまま用いているが、蒸着時の蒸発材料には、不純物が混入していることが考えられる。すなわち、EL素子の劣化原因の一つである酸素や水及びその他の不純物が混入している可能性がある。
【0012】
また、蒸発材料を予め精製することにより純度を高めることはできるが、蒸着するまでの間に不純物が混入してしまうという可能性もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、成膜時にEL材料に含まれる不純物を分離除去し、これにより純度を高めたEL材料を用いて成膜を行い、高純度なEL層を形成することができる成膜装置および成膜方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
図2(A)に示す系(1) 201は、底部に底があり、上部が開放されている筒体(図2に符号なし)からなる第1の有底筒体である。前記第1の有底筒体は、上部に第1の開放部(図2に符号なし)を有するとともに、底部(図2に符号なし)に蒸発材料、たとえば、EL材料200が入っている。また、前記第1の有底筒体は、前記蒸発材料を気化する第1の温度に制御するための第1の温度調節機構(a)203が備えられている。
【0015】
図2(A)に示す系(2) 204は、底部が開放され、上部に開口部210が設けられている第2の筒体(図2に符号なし)である。前記第2の筒体は、前記第1の有底筒体の第1の開放部上に第2の開放部が設けられ、上部に前記蒸発した気体が通過できる第2の開口部210が備えられている。また、前記第2の筒体は、第2の温度調節機構(b)205により、前記第1の温度よりも低い第2の温度に制御され、前記第1の有底筒体において、気化された蒸発材料を、前記第2の開口部210から除去する第1の気体と、第1の固体(a)211の状態に分離する。
【0016】
図2(A)に示す第2の筒体は、図示されていない反転機構によって、180度反転し、図2(B)に示す状態にする。
【0017】
図2(B)に示す系(3) 206は、下部が開放され、上部に開口部213が設けられている第3の筒体(図2に符号なし)である。前記第3の筒体は、図2(B)に系(3) 206として示されているように、第3の開放部を下方に向け、前記第2の筒体上部に設けられる。また、前記第3の筒体は、上部に蒸発した気体が通過できる第3の開口部213を備えているとともに、第3の温度調節機構(c)207により前記第1の温度よりも低く前記第2の温度よりも高い第3の温度に制御されている。前記第2の開放部から上昇した気体は、前記第3の温度により、前記第1の固体(a)211を第2の気体と第2の固体(b)212の状態に分離する。
【0018】
前記第3の筒体の第3の開口部213から放出される前記第2の気体は、図2(B)に示すように、基板208の表面に膜を形成する。なお、本明細書において、系(1) 201、系(2) 204、系(3) 206は、図2において示されている第1の有底筒体、第2の筒体、第3の筒体をそれぞれ指している。
【0019】
本発明は、純粋なEL材料の昇華温度を利用して、成膜直前にEL材料の昇華精製を行うことで、EL材料に含まれる複数の不純物を除去することができ、精製されたEL材料(以下、高純度EL材料という)を蒸発源として用いて薄膜を成膜することを特徴とする。
【0020】
図1では、複数の不純物物質が含まれているEL材料を固体から気化させて、これに温度変化を与えると各物質の昇華温度の違いにより複数の物質が分離できる点について説明する。なお、縦軸に温度をとり、横軸に総析出量を示す。また、本明細書中では、高純度EL材料よりも昇華温度の高い物質(不純物)を高温材料とよび、昇華温度の低い物質(不純物)を低温材料とよぶことにする。また、高温と低温の中間に位置する温度で昇華する高純度EL材料を中温材料と呼ぶことにする。なお、温度毎に析出した材料を予め質量分析(GC−MS)等の分析により調べておくことで、純粋なEL材料の昇華温度を調べることができる。
【0021】
はじめに、EL材料に含まれる全ての物質(高純度EL材料及び不純物)が気化する温度(以下完全昇華温度)をかける。これにより完全昇華領域100においてEL材料に含まれる全ての物質が気体として存在する。さらにこの後、徐々に温度を下げていくと、図1の高温材料析出領域101において昇華温度の高い高温材料が固体として析出する。
【0022】
さらに、温度を下げていくと図1の中温材料析出領域102において、主生成物である中温材料(高純度EL材料)が析出する。そして、再び温度を下げていくと低温材料析出領域103において、低温材料が析出する。
【0023】
つまり、本発明は、析出温度の差を利用して高純度EL材料(中温材料)より高温で析出する不純物(高温材料)、または、低温で析出する不純物(低温材料)を分離し、高純度EL材料のみで成膜を行う成膜装置および成膜方法を提供する。さらに、成膜材料だけでなく、成膜装置自体も高純度化のための様々な機能を有していることを特徴とする。
【0024】
図2においては、EL材料200を昇華精製した後で蒸着により成膜を行う方法について説明する。図2は、断面図であり、はじめに、図2(A)により低温材料(不純物)の分離を行う。系には、温度調節機構が備えられており、系においては、EL材料が温度による固体−気体間の状態変化、すなわち昇華という現象が生じる。図2に示す複数の系においては、これらの状態変化が行われている。なお、ここでいう温度調節機構の具体的な例として、ヒーターが含まれる。系(1)201には、EL材料200が備えられている。又、系(1)201には、温度調節機構(a)203が備えられており、EL材料を全て気化させる完全昇華温度に温度を制御することができる。また、このような系(1)201において気化したEL材料のことを気体EL材料と呼ぶことにする。
【0025】
系(1)201で発生した気体EL材料は、図2(A)に示すように備えられている系(2)204に移動する。また、系(2)204には、温度調節機構(b)205が備えられていて、系(2)204を中温に維持することができる。なお、系(2)204は、図2(A)の断面図から見て下側は、系(1)201で発生した気体が全て系(2)204に移動できるように連結されており、又上側になる部分は、系(2)204内部の気体が通過できる程度の開口部210が設けられている。
【0026】
系(2)204に移動した気体EL材料のうち中温以上の温度で昇華する物質は、系(2)204の内部の析出領域(a)211に固体として析出する。本明細書中では、ここで析出した物質を準EL材料と呼ぶことにする。なお、中温以下の温度で昇華する低温材料は、気体のままであるため、系(2)204の開口部210から系(2)204の外部に放出される。ここで放出される低温材料は、EL材料に含まれていた不純物であるので外部に回収される。
【0027】
次に、気体を除去した系(2)204を図2(B)に示すように180°反転させて備える。そして、温度調節機構(b)205により系(2)204を完全昇華温度に維持する。これにより、系(2)204内部に析出した準EL材料は気化し、系(3)206に移動する。
【0028】
系(3)206には、温度調節機構(c)207が備えられている。ここで、温度調節機構(c)207により系(3)206は、高温に維持される。このとき、準EL材料のうち、高温材料(不純物)は、系(3)206内部の領域(b)212に析出する。これにより、高温材料(不純物)を分離することができ、系(3)206内部に中温材料(高純度EL材料)のみを気体として存在させることができる。
【0029】
また、系(3)206は、図2(A)における系(2)204と同様上部に気体が通過できる開口部213を有しているので、系(3)206の外部に高純度EL材料(気体)を放出することができる。
【0030】
そして、高純度EL材料(気体)が放出される方向に基板208を備えておくことで、これまでの昇華精製により得られた高純度EL材料を成膜(蒸着)することが可能となる。
【0031】
なお、基板208は、成膜直前に加熱処理を行い、基板208上の酸素や水等の不純物を除去しておくことが好ましい。
【0032】
さらに、これらのEL材料の昇華精製及び成膜を行う成膜室の内部に用いる材料としては、その表面積を小さくすることで酸素や水等の不純物の吸着性を小さくすることができるので、電解研磨を施して鏡面化させたアルミニウムやステンレス(SUS)等を内部壁面に用いる。これにより、成膜室内部の真空度を10-5〜10-6Paに維持することができる。また、気孔がきわめて少なくなるように処理されたセラミックス等の材料を内部部材に用いる。なお、これらは、中心線平均粗さが30Å以下となる表面平滑性を有するものが好ましい。
【0033】
また、本発明の成膜装置が有する成膜室や搬送室等の処理室において、各処理室にガスが導入される場合には、処理室直前に備えられているガス精製機により酸素や水等の不純物等が除去され高純度化されたガスが導入されるようになっている。
【0034】
さらに、本発明の成膜装置が有するこれらの成膜室や搬送室等の処理室の全てには、磁気浮上型のターボ分子ポンプ、クライオポンプ、またはドライポンプが備えられている。これにより各処理室の到達真空度を10-5〜10-6Paにすることが可能であり、さらにポンプ側および排気系からの不純物の逆拡散を制御することができる。
【0035】
なお、本発明の成膜装置を用いてEL層を形成する際には、その形成前に基板上に形成されたEL素子の陽極もしくは陰極の表面処理を行う。その具体的な方法としては、酸素中で紫外光を照射しつつ加熱処理を行ったり、酸素または水素プラズマ処理を行いつつ加熱処理を行う等の方法がある。なお、加熱の温度は100℃以下であるのが好ましい。また、成膜室の内部は、成膜前に成膜室内の不純物を除去するために成膜室を100℃以下に加熱する機構を設けておくことも有効である。
【0036】
なお、本発明における昇華精製は、EL材料のみならず、蒸着に用いる金属材料等のその他の材料の精製にも用いることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の成膜装置を用いることで、より昇華精製された材料による薄膜形成が可能となり、さらに成膜装置内部に不純物汚染を防ぐ機能を設けていることから成膜時に不純物による汚染を受けずに成膜ができる。以上により、EL素子の素子特性をこれまで以上に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の成膜装置に備えられる成膜室の構成について図3に示す。図3(A)は成膜室の上面図であり、図3(B)及び図3(C)は、断面図である。なお、共通の部分には、共通の符号を使うものとする。
【0039】
図3(A)において、301は成膜室であり、成膜室301の内部に基板302が搬送される。基板302が搬送されると、成膜室301に備えられている複数の蒸発源のうち、必要な蒸発源のみが使えるようにシャッター(2)306が開く構造になっている。なお、シャッター(2)306は蒸発源と基板302の間に備えられており、所望の蒸発源のみから基板上に蒸着が行えるように、その他の蒸発源からの蒸発材料の放出を遮断する役割を果たしている。図3は、複数の蒸発源のうち、蒸発源(1)303、蒸発源(2)304を用いて共蒸着が行われる場合について示している。
【0040】
具体的な構造については、図3(A)を点線AA’で紙面に垂直方向に切断した断面構造である図3(B)、(C)を用いて説明する。
【0041】
まず、図3(B)において、蒸着前のEL材料に含まれる不純物のうち、低温材料の分離除去が行われる。系(1)311には、EL材料312が備えてある。また、系(1)311には、温度調節機構(1)313が備えてあるので系(1)311内部の温度が調節できるようになっている。
【0042】
温度調節機構(1)313により、系(1)311内部はEL材料が気化して気体EL材料となる温度(完全昇華温度)に維持される。そして、気体EL材料は、系(1)311から系(2)314に移動する。
【0043】
系(2)314には、温度調節機構(2)315が備えてあるので系(2)314内部の温度が調節できるようになっている。
【0044】
温度調節機構(2)315により、系(2)314内部の気体EL材料のうち中温材料及び高温材料を含むEL材料が固体として析出する温度(中温)に維持される。このとき低温材料は気体のままであり、系(2)314の開口部316から系(2)314の外部に放出される。なお、このとき成膜室内部は、シャッター(1)317により系(1)311および系(2)314と上部に備えられている系(3)318とは遮断されている。
【0045】
また、ここでは、図示されていないが、系(2)314の開口部316から放出された低温材料(気体)は、排気系により装置外部に放出されるようになっている。なお、ここでの排気は、クライオポンプにより行われている。
【0046】
低温材料が除去されると図3(C)に示すようにシャッター(1)317が開き、系(2)314が180°反転する。そして、系(3)318と連結される。
【0047】
系(2)314には、図3(B)において析出させた中温材料及び高温材料を含むEL材料が存在するが、温度調節機構(2)315により系(2)314の内部を完全昇華温度にすることで、再び気化させることができる。そして、気化したEL材料は、系(2)314から系(3)318に移動する。系(3)318には、温度調節機構(3)321が備えられており、温度調節機構(3)321により、系(3)318内部の温度は、高温に保たれている。このとき、気化したEL材料に含まれる高温材料は、昇華により系(3)318の内部に析出する。以上により、系(3)318に存在する気体は高純度EL材料(中温材料)のみとなる。
【0048】
また、それぞれの蒸発源が有する系(3)318の上部には、シャッター(2)306が設けられていて、必要な蒸発源のシャッターのみが開くようになっている。なお、本実施の形態では、蒸発源(1)303と蒸発源(2)304のシャッターのみが開いている。
【0049】
つまり、シャッター(2)306が開くことにより、蒸発源(1)303と蒸発源(2)304のそれぞれの系(3)318の開口部322からEL材料が放出され、系(3)318の上部に備えられている基板上に蒸着が行われる。なお、蒸発源が複数の場合には、共蒸着が行われる。
【0050】
また、複数のEL材料を基板上に塗り分ける場合には、シャッター(2)306と基板の間に開口部を設けたシャドーマスクを備えておいても良い。なお、シャドーマスクとしては、金属板やガラス板からなるものを用いることができる。
【0051】
また、これらの成膜室の内部壁面は、アルミニウムやステンレス(SUS)等の金属材料で通常形成されているが、これらの材料は、酸素や水等の不純物を放出するなどの問題がある。そこで、これらの金属材料表面を電解研磨により鏡面化させたものを用いる。さらに、成膜室内部に用いる部材にも通常のセラミックスに比べて気孔が極限的に少なく、内部表面における表面積が小さい材料を用いることが好ましい。これは、内部の表面積を小さくすることで、水や酸素といった不純物等の脱離特性を向上させ、成膜室内の不純物汚染を防ぐためである。なお、これらの表面は、中心線平均粗さ1〜30Åの平滑性を有している。
【0052】
次に、これまで説明したものと少し異なる方法で蒸着前にEL材料を昇華精製し、蒸着を行う場合について説明する。
【0053】
図4において、401は、分離管であり、内部に窒素や希ガス等の不活性ガスをキャリヤーガスとして流している。なお、本発明の成膜装置において、装置内部に導入されるこれらのガスは、装置内に導入される前にガス精製機により高純度化されたものを用いる。従って、ガスが高純度化された後に成膜装置に導入されるようにガス精製機を備えておく必要がある。これにより、ガス中に含まれる酸素や水、その他の不純物を予め除去することができるため、装置内部にこれらの不純物が導入されるのを防ぐことができる。
【0054】
また、材料室402には、EL材料403が備えられており、材料室402には、EL材料403を気化するための加熱機構404が備えられている。なお、この加熱機構404によりEL材料403を気化する前に予めEL材料403を加熱することで、水等の不純物を除去することができる。また、この時の加熱温度は、200℃以下であることが好ましい。
【0055】
さらに、ここでは図示していないが、材料室402は、材料交換室とゲートを介して連結される。なお、材料交換室には、交換したEL材料を加熱するヒーターが設けられている。予め材料を加熱することで水等の不純物を除去することができる。この時加える温度は200℃以下であることが望ましい。また、材料交換室には、内部を減圧状態にすることができる排気ポンプが備えられており、外部からEL材料を導入した後、内部を減圧状態にする。そして、材料室402内と同じ圧力状態になったところでゲートを開け、材料室402内部にEL材料を備えることができるようになっている。
【0056】
材料室402で気化した気体EL材料は、キャリヤーガスとともに分離管401内を矢印aの方向に移動する。なお、分離管401には、その内部の温度を調節するための温度調節機構405(具体的には、ヒーターが含まれる)が備えられている。
【0057】
温度調節機構405では、気体EL材料が流れてくる方向から徐々に温度が低くなるように設定されている。なお、温度調節機構405の高温部分の温度は、加熱機構404よりも低い温度になるように調節されている。
【0058】
そして、気体EL材料が温度調節機構を備えた分離管内部を移動する際に、昇華温度の違いにより、高純度EL材料よりも昇華温度の高い不純物(高温材料)、昇華温度の低い不純物(低温材料)及び高純度EL材料(中温材料)を異なる温度領域ごとに分離して析出させることができる。
【0059】
なお、予め純粋なEL材料が析出する温度を測定しておけば、温度と位置の調節は容易である。また、通常は、純粋なEL材料の融点から±10℃付近が析出温度となる。そして、分離管401のある領域406をゲート(a)407及びゲート(b)408により分離できるような構造にしておき、この領域に純粋なEL材料が析出するように温度を調節すればよい。なお、分離管401をゲート(a)407及びゲート(b)408により分離することで、蒸発源分離室409を形成することができる。
【0060】
なお、ここでは図示しないが、分離管401は、ゲート(c)410を介して、成膜室と連結されている。そこで、分離管401に連結された成膜室の構成について図5を用いて説明する。
【0061】
図5(A)において、分離管501内部の気体EL材料が温度調節機構502により分離析出し、高純度なEL材料(高純度EL材料)509のみが分離管501内部でゲート(a)503、ゲート(b)504及びゲート(c)505により遮断された蒸発源分離室506内部に析出する。なお、蒸発源分離室506は、ゲート(c)505を介して成膜室507と連結されている。つまり、ゲート(c)505が開くと、領域(a)508において高純度EL材料の蒸着が可能になる。
【0062】
なお、図5(B)に領域(a)508の拡大図を示す。基板511はゲート(d)512を通り、成膜室507に搬入される。また、基板511は、成膜面を下面に向け、固定台513上に固定され、蒸着される。
【0063】
なお、ここでは、EL層を形成するため、基板上には、予め画素電極514(陽極もしくは陰極)が形成されている。
【実施例】
【0064】
〔実施例1〕
本発明の成膜装置について図6を用いて説明する。図6において、601は搬送室であり、搬送室601には搬送機構(A)602が備えられ、基板603の搬送が行われる。搬送室601は減圧雰囲気にされており、各処理室とはゲートによって連結されている。各処理室への基板の受け渡しは、ゲートを開けた際に搬送機構(A)602によって行われる。また、搬送室601を減圧するには、ドライポンプ、メカニカルブースターポンプ、ターボ分子ポンプ(磁気浮上型)もしくはクライオポンプなどの排気ポンプを用いることが可能であるが、より高純度に高真空状態を得るためには磁気浮上型のターボ分子ポンプが好ましい。
【0065】
以下に、各処理室についての説明を行う。なお、搬送室601は減圧雰囲気となるので、搬送室601に直接的に連結された処理室には全て排気ポンプ(図示せず)が備えられている。排気ポンプとしては上述のドライポンプ、メカニカルブースターポンプ、ターボ分子ポンプ(磁気浮上型)もしくはクライオポンプが用いられるが、ここでも磁気浮上型のターボ分子ポンプが好ましい。
【0066】
まず、604は基板のセッティング(設置)を行うロード室であり、アンロード室も兼ねている。ロード室604はゲート600aにより搬送室601と連結され、ここに基板603をセットしたキャリア(図示せず)が配置される。なお、ロード室604は基板搬入用と基板搬出用とで部屋が区別されていても良い。また、ロード室604は上述の排気ポンプと高純度の窒素ガスまたは希ガスを導入するためのパージラインを備えている。なお、排気ポンプとしては、ターボ分子ポンプが望ましい。さらに、このパージラインには、ガス精製機が備えられており、装置内に導入されるガスの不純物(酸素や水)が予め除去されるようになっている。
【0067】
なお、本実施例では基板603として、EL素子の陽極となる透明導電膜まで形成した基板を用いる。本実施例では基板603を、被成膜面を下向きにしてキャリアにセットする。これは後に蒸着法による成膜を行う際に、フェイスダウン方式(デポアップ方式ともいう)を行いやすくするためである。フェイスダウン方式とは、基板の被成膜面が下を向いた状態で成膜する方式をいい、この方式によればゴミの付着などを抑えることができる。
【0068】
次に、605で示されるのはEL素子の陽極もしくは陰極(本実施例では陽極)の表面を処理する処理室(以下、前処理室という)であり、前処理室605はゲート600bにより搬送室601と連結される。前処理室605はEL素子の作製プロセスによって様々に変えることができるが、本実施例では透明導電膜からなる陽極の表面に酸素中で紫外光を照射しつつ100〜120℃で加熱できるようにする。このような前処理は、EL素子の陽極表面を処理する際に有効である。
【0069】
その他の前処理法としては、酸素または水素中でプラズマを照射しつつ200〜400℃で加熱するという方法も有効であり、この場合には、プラズマ処理及び加熱処理が可能な機構を前処理室に備えておけばよい。
【0070】
次に、606は蒸着法により有機EL材料を成膜するための成膜室であり、成膜室(A)と呼ぶ。成膜室(A)606はゲート600cを介して搬送室601に連結される。本実施例では成膜室(A)606として図3に示した構造の成膜室を設けている。
【0071】
本実施例では、成膜室(A)606内の成膜部607において、赤色に発色する発光層を成膜する。従って、成膜室(A)606内に備えられている複数の蒸発源のうち赤色に発色する発光層となる有機EL材料が備えられている蒸発源の上部のシャッターを開けておく。また、選択的に赤色に発色する発光層を形成するためにシャドーマスクがセットされている。なお、赤色に発色する発光層としては、Alq3にDCMをドーピングしたものを用いて形成することができる。その他にもEu錯体(Eu(DCM)3(Phen)、アルミキノリラト錯体(Alq3)にDCM−1をドーパントとして用いたもの等を用いることができるが、その他公知の材料を用いることもできる。
【0072】
また、成膜室(A)606はゲート600gを介して材料交換室614に連結される。なお、材料交換室614には、交換した材料を加熱するヒーターが設けられている。予め材料を加熱することで水等の不純物を除去することができる。この時加える温度は200℃以下であることが望ましい。また、材料交換室614には、内部を減圧状態にすることができる排気ポンプが備えられているので、外部から蒸発材料を追加または交換して加熱処理した後、内部を減圧状態にする。そして、成膜室内と同じ圧力状態になったところでゲート600gを開け、成膜室内部の蒸発源に蒸発材料を備えることができるようになっている。なお、蒸発材料は、搬送機構などにより成膜室内の蒸発源に備えられる。
【0073】
なお、成膜室(A)606内における成膜プロセスに関しては、図3の説明を参照すれば良い。
【0074】
次に、608は蒸着法により有機EL材料を成膜するための成膜室であり、成膜室(B)と呼ぶ。成膜室(B)608はゲート600dを介して搬送室601に連結される。本実施例では成膜室(B)608として図3に示した構造の成膜室を設けている。本実施例では、成膜室(B)608内の成膜部609において、緑色に発色する発光層を成膜する。なお、緑色に発色する発光層としては、CBPとIr(ppy)3 を共蒸着することにより形成させることができる。なお、この他にもアルミキノリラト錯体(Alq3)、ベンゾキノリノラトベリリウム錯体(BeBq)を用いることができる。さらには、アルミキノリラト錯体(Alq3)にクマリン6やキナクリドンといった材料をドーパントとして用いたものも可能であるが、その他公知の材料を用いることもできる。
【0075】
また、成膜室(B)608はゲート600hを介して材料交換室615に連結される。なお、材料交換室615には、交換した材料を加熱するヒーターが設けられている。予め材料を加熱することで水等の不純物を除去することができる。この時加える温度は200℃以下であることが望ましい。また、材料交換室615には、内部を減圧状態にすることができる排気ポンプが備えられているので、外部から蒸発材料を導入した後、内部を減圧状態にする。そして、成膜室内と同じ圧力状態になったところでゲート600hを開け、成膜室内部の蒸発源に蒸発材料を備えることができるようになっている。なお、蒸発材料は、搬送機構などにより成膜室内の蒸発源に備えられる。
【0076】
なお、成膜室(B)608内における成膜プロセスに関しては、図3の説明を参照すれば良い。
【0077】
次に、610は蒸着法により有機EL材料を成膜するための成膜室であり、成膜室(C)と呼ぶ。成膜室(C)610はゲート600eを介して搬送室601に連結される。本実施例では成膜室(C)610として図3に示した構造の成膜室を設けている。本実施例では、成膜室(C)610内の成膜部611において、青色に発色する発光層を成膜する。なお、青色に発色する発光層としては、ジスチリル誘導体であるDPVBiや、アゾメチン化合物を配位子に持つ亜鉛錯体及びDPVBiにペリレンをドーピングしたものを用いることもできるが、その他の公知の材料を用いても良い。
【0078】
また、成膜室(C)610はゲート600iを介して材料交換室616に連結される。なお、材料交換室616には、交換した材料を加熱するヒーターが設けられている。予め材料を加熱することで水等の不純物を除去することができる。この時加える温度は200℃以下であることが望ましい。また、材料交換室616には、内部を減圧状態にすることができる排気ポンプが備えられているので、外部から蒸発材料を導入した後、内部を減圧状態にする。そして、成膜室内と同じ圧力状態になったところでゲート600iを開け、成膜室内部の蒸発源に蒸発材料を備えることができるようになっている。なお、蒸発材料は、搬送機構などにより成膜室内の蒸発源に備えられる。
【0079】
なお、成膜室(C)610内における成膜プロセスに関しては、図3の説明を参照すれば良い。
【0080】
なお、本実施例では、EL素子の陽極もしくは陰極上に直接発光層を形成させる例について説明したが、発光層の形成を行う前に正孔注入層や正孔輸送層を形成させても良い。なお、正孔注入層としては、銅フタロシアニンやポリチオフェン誘導体であるPEDOTなどを用いることができ、正孔輸送層としては、MTDATA(4,4',4''-tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine)やα−NPD等を用いることができる。なお、高分子材料からなる層を形成する場合には、この成膜室の代わりにスピンコート処理が可能な成膜室を設けても良い。
【0081】
また、発光層形成後には、電子輸送層や電子注入層を形成させても良い。なお、電子輸送層としては、1,3,4−オキサジアゾール誘導体や1,2,4−トリアゾール誘導体(TAZ)といった材料を用いることができる。さらに、バッファー層として、フッ化リチウム(LiF)、酸化アルミニウム(Al23)、リチウムアセチルアセトネート(Liacac)といった材料を用いた層を形成させても良い。
【0082】
次に、612は蒸着法によりEL素子の陽極もしくは陰極となる導電膜(本実施例では陰極となる金属膜)を成膜するための成膜室であり、成膜室(D)と呼ぶ。成膜室(D)612はゲート600fを介して搬送室601に連結される。本実施例では、成膜室(D)612内の成膜部613において、EL素子の陰極となる導電膜としてAl−Li合金膜(アルミニウムとリチウムとの合金膜)を成膜する。なお、周期表(元素周期律)の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着することも可能である。共蒸着とは、同時に蒸着セルを加熱し、成膜段階で異なる物質を混合する蒸着法をいう。
【0083】
また、成膜室(D)612はゲート600jを介して材料交換室617に連結される。なお、材料交換室617には、交換した材料を加熱するヒーターが設けられている。予め材料を加熱することで水等の不純物を除去することができる。この時加える温度は200℃以下であることが望ましい。また、材料交換室617には、内部を減圧状態にすることができる排気ポンプが備えられているので、外部から蒸発材料を導入した後、内部を減圧状態にする。そして、成膜室内と同じ圧力状態になったところでゲート600jを開け、成膜室内部の蒸発源に蒸発材料を備えることができるようになっている。
【0084】
なお、成膜室(A)606、成膜室(B)608、成膜室(C)610及び成膜室(D)612には、成膜室内にイメージセンサーとして知られているCCD(Charge Coupled Device)を備えておくことにより、メタルマスクを用いて成膜を行う際に基板とメタルマスクの位置合わせを精度良く行うことを可能にする。
【0085】
また、成膜室(A)606、成膜室(B)608、成膜室(C)610及び成膜室(D)612には、各成膜室内を加熱する機構を備えておく。これにより、成膜室内の不純物の一部を除去することができる。
【0086】
さらにこれらの成膜室に備える排気ポンプとしては、ドライポンプ、メカニカルブースターポンプ、ターボ分子ポンプ(磁気浮上型)もしくはクライオポンプなどを用いることが可能であるが、本実施例ではクライオポンプ及びドライポンプが望ましい。
【0087】
また、成膜室(A)606、成膜室(B)608、成膜室(C)610及び成膜室(D)612は、排気ポンプにより減圧される。なお、この時の到達真空度は10-6Pa以上であることが望ましく、例えば、排気速度が10000l/s(H2O)のクライオポンプを用いて、成膜室内部の表面積を10m2とし、成膜室内部をアルミニウムで形成したときの成膜室内部のリーク量は、20時間で4.1×10-7Pa・m3・s-1以下になるようにしなければならない。この様な真空度を得るためには、成膜室内部を電解研磨により表面積を小さくすることが効果的である。
【0088】
次に、618は封止室(封入室またはグローブボックスともいう)であり、ゲート600kを介してロード室604に連結されている。封止室618では、最終的にEL素子を密閉空間に封入するための処理が行われる。この処理は形成されたEL素子を酸素や水分から保護するための処理であり、カバー材で機械的に封入する、又は熱硬化性樹脂若しくは紫外光硬化性樹脂で封入するといった手段を用いる。
【0089】
カバー材としては、ガラス、セラミックス、プラスチックもしくは金属を用いることができるが、カバー材側に光を放射させる場合は透光性でなければならない。また、カバー材と上記EL素子が形成された基板とは熱硬化性樹脂又は紫外光硬化性樹脂等のシール材を用いて貼り合わせられ、熱処理又は紫外光照射処理によって樹脂を硬化させて密閉空間を形成する。この密閉空間の中に酸化バリウムに代表される吸湿材を設けることも有効である。
【0090】
また、カバー材とEL素子の形成された基板との空間を熱硬化性樹脂若しくは紫外光硬化性樹脂で充填することも可能である。この場合、熱硬化性樹脂若しくは紫外光硬化性樹脂の中に酸化バリウムに代表される吸湿材を添加しておくことは有効である。
【0091】
図6に示した成膜装置では、封止室618の内部に紫外光を照射するための機構(以下、紫外光照射機構という)619が設けられており、この紫外光照射機構619から発した紫外光によって紫外光硬化性樹脂を硬化させる構成となっている。また、封止室618の内部は排気ポンプを取り付けることで減圧にすることも可能である。上記封入工程をロボット操作で機械的に行う場合には、減圧下で行うことで酸素や水分の混入を防ぐことができる。なお、具体的には、酸素及び水の濃度は0.3ppm以下にすることが望ましい。また、逆に封止室618の内部を与圧とすることも可能である。この場合、高純度な窒素ガスや希ガスでパージしつつ与圧とし、外気から酸素等が侵入することを防ぐ。
【0092】
次に、封止室618には受渡室(パスボックス)620が連結される。受渡室620には搬送機構(B)621が設けられ、封止室618でEL素子の封入が完了した基板を受渡室620へと搬送する。受渡室620も排気ポンプを取り付けることで減圧とすることが可能である。この受渡室620は封止室618を直接外気に晒さないようにするための設備であり、ここから基板を取り出す。その他、封止室において用いる部材を供給する部材供給室を設けることも可能である。
【0093】
なお、本実施例において図示しなかったが、EL素子の形成後に窒化珪素や酸化珪素等の珪素を含む化合物やこれらの化合物の上に炭素を含むDLC(Diamond Like Carbon)膜を積層させた絶縁膜をEL素子上に形成させても良い。なお、DLC(Diamond Like Carbon)膜とは、ダイヤモンド結合(sp3結合)とグラファイト結合(SP2結合)が混在した非晶質膜である。またこの場合には、自己バイアスを印加することでプラズマを発生させ、原料ガスのプラズマ放電分解により薄膜を形成させるCVD(chemical vapor deposition)装置を備えた成膜室を設ければよい。
【0094】
なお、CVD(chemical vapor deposition)装置を備えた成膜室においては、酸素(O2)、水素(H2)、メタン(CH4)、アンモニア(NH3)、シラン(SiH4)を用いることができる。また、CVD装置としては、平行平板型の電極を有しRF電源が13.56MHzのものを用いることができる。
【0095】
さらに、スパッタリング法(または、スパッタ法ともいう)により成膜を行う成膜室を設けることも可能である。EL素子の陰極上にEL層が形成された後、陽極を形成する場合にスパッタリングによる成膜が有効であるためである。すなわち画素電極が陰極である場合に有効である。なお、成膜時の成膜室内は、アルゴン中に酸素を添加した雰囲気にしておくことで成膜された膜中の酸素濃度を制御し、透過率の高い低抵抗な膜を形成することができる。また、その他の成膜室と同様に成膜室はゲートにより搬送室と遮断されるのが望ましい。
【0096】
また、スパッタリングを行う成膜室においては、成膜基板の温度を制御する機構を設けても良い。なお、成膜基板は20〜150℃に維持されることが望ましい。さらに、成膜室に備える排気ポンプとしては、ドライポンプ、メカニカルブースターポンプ、ターボ分子ポンプ(磁気浮上型)もしくはクライオポンプなどを用いることが可能であるが、本実施例ではターボ分子ポンプ(磁気浮上型)及びドライポンプが望ましい。
【0097】
以上のように、図6に示した成膜装置を用いることで完全にEL素子を密閉空間に封入するまで外気に晒さずに済むため、信頼性の高い発光装置を作製することが可能となる。
【0098】
また、本実施例で示したのと異なる形状を有する成膜装置について図11にしめす。図6で示した成膜装置は、ロード室、前処理室の他にEL材料を成膜する成膜室が3室、金属材料を成膜する成膜室が1室、封止室および受渡室を有する構造であったが、図11に示す成膜装置は、搬送機構(1102、1104)を備えた搬送室(1101、1103)、ロード室1105、前処理室1106、EL材料を成膜する成膜室(A)1107、金属材料を成膜する成膜室(B)1108、スパッタ処理を行う成膜室(C)1109、搬送室1110、CVD処理を行う成膜室(D)1115、ゲート(1100a〜1100i)、封止室1111および受渡室1112から形成されている。なお、EL材料を成膜する成膜室(A)1107及び金属材料を成膜する成膜室(B)1108には、材料交換室(1113、1114)がゲートを介して連結されているが、成膜室に重なるような構造にして、試料交換時に材料交換室(1113、1114)を引き出して試料を交換する構造であっても良い。なお、図11に示す成膜装置に備えられているこれらの処理室は、本実施例において説明した機能を有し、また本実施例において説明した処理が可能である。
【0099】
〔実施例2〕
本発明の成膜装置をマルチチャンバー方式(クラスターツール方式ともいう)とした場合について図7を用いて説明する。図7において、701は搬送室であり、搬送室701には搬送機構(A)702が備えられ、基板703の搬送が行われる。搬送室701は減圧雰囲気にされており、各処理室とはゲートによって連結されている。各処理室への基板の受け渡しは、ゲートを開けた際に搬送機構(A)702によって行われる。また、搬送室701を減圧するには、ドライポンプ、メカニカルブースターポンプ、ターボ分子ポンプ(磁気浮上型)もしくはクライオポンプなどの排気ポンプを用いることが可能であるが、より高純度に高真空状態を得るためには磁気浮上型のターボ分子ポンプが好ましい。
【0100】
以下に、各処理室についての説明を行う。なお、搬送室701は減圧雰囲気となるので、搬送室701に直接的に連結された処理室には全て排気ポンプ(図示せず)が備えられている。排気ポンプとしては上述のドライポンプ、メカニカルブースターポンプ、ターボ分子ポンプ若しくはクライオポンプが用いられるが、上記同様磁気浮上型のターボ分子ポンプが好ましい。
【0101】
又、ゲートは、各処理室および搬送室を完全な密閉空間とするためにOリング等を用いて密閉性を高めている。なお、装置内の不純物汚染を防ぐために、より脱ガスの少ないOリングを用いることが好ましい。
【0102】
まず、704は基板のセッティング(設置)を行うロード室であり、ロードロック室とも呼ばれる。ロード室704はゲート700aにより搬送室701と連結され、ここに基板703をセットしたキャリア(図示せず)が配置される。なお、ロード室704は基板搬入用と基板搬出用とで部屋が区別されていても良い。また、ロード室704は上述の排気ポンプと高純度化された窒素ガスまたは希ガスを導入するためのパージラインを備えている。
【0103】
次に、705で示されるのはEL素子の陽極もしくは陰極(本実施例では陽極)の表面を処理する前処理室であり、前処理室705はゲート700bにより搬送室701と連結される。前処理室はEL素子の作製プロセスによって様々に変えることができるが、本実施例では透明導電膜からなる陽極の表面に酸素中で紫外光を照射しつつ100〜120℃で加熱できるようにする。このような前処理は、EL素子の陽極表面を処理する際に有効である。
【0104】
次に、706は蒸着法により有機EL材料を成膜するための塗布室であり、塗布室と呼ぶ。なお、塗布室706は搬送室701との間に真空排気用処理室714を設けて、塗布室706のみ常圧(大気圧)での処理を可能にした構成を示す。
【0105】
実施例1では、薄膜形成装置の内部は、全て減圧状態にあり、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等のEL層の形成も減圧下で行う例を示したが、高分子材料を用いてEL層を形成する場合には、窒素や希ガス等の不活性ガスを満たした常圧で行うため、塗布室706に基板を搬送するためには、塗布室706とそれ以外の成膜装置内部における圧力差を克服しなければならない。
【0106】
そこで本実施例では、まず真空排気用処理室714を搬送室701と同じ圧力まで減圧しておき、その状態でゲート700cを開けて基板を搬送する。そして、ゲート700cを閉めた後、真空排気用処理室714内を不活性ガスでパージし、常圧に戻った時点でゲート700gを開けて塗布室706へと基板を搬送する。ここでは、基板と一緒にステージごと搬送しても良いし、専用の搬送手段で行っても良い。
【0107】
なお、本実施例では、正孔注入層として高分子材料を形成する場合について説明する。なお、ここで用いる高分子材料としては、ポリチオフェン誘導体であるPEDOT(polyethylenedioxy thiophene)が好ましいが、その他の公知の高分子EL材料を用いることは可能である。
【0108】
そして、塗布室706においてスピンコート法により正孔注入層が形成される。なお、塗布室706には、加熱機構を備えておき、塗布後の乾燥を行う機能を設けておいても良い。
【0109】
以上により正孔注入層の形成が終了したら、ゲート700gを開けて真空排気用処理室714へ基板を搬送し、ゲート700g及びゲート700cを閉めた状態で真空排気を行う。こうして真空排気用処理室714が搬送室701と同じ減圧状態にまで達したら、ゲート700cを開けて基板を搬送室701へと搬送する。
【0110】
次に、708は蒸着法により有機EL材料を成膜するための成膜室であり、成膜室(A)と呼ぶ。成膜室(A)708はゲート700dを介して搬送室701に連結される。本実施例では成膜室(A)708として図5に示した構造の成膜室を設けている。本実施例では、成膜室(A)708内の成膜部709において、赤色、緑色および青色に発色する発光層をそれぞれ成膜する。なお、赤色、緑色および青色に発色する発光層としては、実施例1で述べた材料の他、公知の材料を用いれば良い。また、これらの材料は、それぞれ別の蒸発源に備えられてあり、各色毎にシャドーマスクを用いて所望の位置に成膜が行われる。
【0111】
さらに、成膜室(A)708に備えられた複数の蒸発材料は、それぞれ分離管715により昇華精製された後、蒸着される。また、これらの蒸発材料は、分離管715とゲート700hを介して連結されている材料交換室716において、追加もしくは交換される。なお、材料交換室716には、交換した材料を加熱するヒーターが設けられている。予め材料を加熱することで水等の不純物を除去することができる。この時加える温度は200℃以下であることが望ましい。また、材料交換室716には、内部を減圧状態にすることができる排気ポンプが備えられているので、外部から蒸発材料を導入した後、内部を減圧状態にする。そして、成膜室内と同じ圧力状態になったところでゲート700hを開け、成膜室内部の蒸発源に蒸発材料を備えることができるようになっている。
【0112】
次に、710は蒸着法により有機EL材料を成膜するための成膜室であり、成膜室(B)と呼ぶ。成膜室(B)710はゲート700eを介して搬送室701に連結される。本実施例では成膜室(B)710として図5に示した構造の成膜室を設けている。本実施例では、成膜室(B)710内の成膜部711において、電子輸送層もしくは電子注入層を成膜する。なお、電子輸送層もしくは電子注入層としては公知の材料を用いれば良い。
【0113】
さらに、成膜室(B)710に備えられた複数の蒸発材料は、それぞれ分離管717により昇華精製された後、蒸着される。また、これらの蒸発材料は、分離管717とゲート700iを介して連結されている材料交換室718において、追加もしくは交換される。なお、材料交換室718には、交換した材料を加熱するヒーターが設けられている。予め材料を加熱することで水等の不純物を除去することができる。この時加える温度は200℃以下であることが望ましい。また、材料交換室718には、内部を減圧状態にすることができる排気ポンプが備えられているので、外部から蒸発材料を導入した後、内部を減圧状態にする。そして、成膜室内と同じ圧力状態になったところでゲート700iを開け、成膜室内部の蒸発源に蒸発材料を備えることができるようになっている。
【0114】
次に、712は蒸着法によりEL素子の陽極もしくは陰極となる導電膜(本実施例では陰極となる金属膜)を成膜するための成膜室であり、成膜室(C)と呼ぶ。成膜室(C)712はゲート700fを介して搬送室701に連結される。本実施例では成膜室(C)712として図5に示した構造の成膜室を設けている。本実施例では、成膜室(C)712内の成膜部713において、EL素子の陰極となる導電膜としてAl−Li合金膜(アルミニウムとリチウムとの合金膜)を成膜する。なお、周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着することも可能である。
【0115】
さらに、成膜室(C)712に備えられた複数の蒸発材料は、それぞれ分離管719により昇華精製された後、蒸着される。また、これらの蒸発材料は、分離管719とゲート700jを介して連結されている材料交換室720において、追加もしくは交換される。なお、材料交換室720には、交換した材料を加熱するヒーターが設けられている。予め材料を加熱することで水等の不純物を除去することができる。この時加える温度は200℃以下であることが望ましい。また、材料交換室720には、内部を減圧状態にすることができる排気ポンプが備えられているので、外部から蒸発材料を導入した後、内部を減圧状態にする。そして、成膜室内と同じ圧力状態になったところでゲート700jを開け、成膜室内部の蒸発源に蒸発材料を備えることができるようになっている。
【0116】
次に、721は封止室であり、ゲート700kを介してロード室704に連結されている。封止室721の説明は実施例1を参照すれば良い。また、実施例1と同様に封止室721の内部には紫外光照射機構722が設けられている。さらに、封止室721には受渡室723が連結される。受渡室723には搬送機構(B)724が設けられ、封止室721でEL素子の封入が完了した基板を受渡室723へと搬送する。受渡室723の説明も実施例1を参照すれば良い。
【0117】
以上のように、図7に示した成膜装置を用いることで完全にEL素子を密閉空間に封入するまで外気に晒さずに済むため、信頼性の高いEL表示装置を作製することが可能となる。なお、本実施例の構成は、実施例1に示したいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【0118】
〔実施例3〕
本発明の成膜装置をインライン方式とした場合について図8を用いて説明する。図8において801はロード室であり、基板の搬送はここから行われる。ロード室801には排気系800aが備えられ、排気系800aは第1バルブ81、ターボ分子ポンプ82、第2バルブ83、第3バルブ84及びドライポンプ85を含んだ構成からなっている。
【0119】
また、本実施例においてもゲートで遮断されたロード室、前処理室、成膜室、封止室及びアンロード室等の各処理室の内部に用いる材料としては、その表面積を小さくすることで酸素や水等の不純物の吸着性を小さくすることができるので、電解研磨を施して鏡面化させたアルミニウムやステンレス(SUS)等の材料を内部壁面に用い、また、気孔がきわめて少なくなるように処理されたセラミックス等の材料からなる内部部材を用いる。なおこれらの材料は中心平均粗さが30Å以下となるような表面平滑性を有する。
【0120】
第1バルブ81は、ゲート弁を有するメインバルブであるが、コンダクタンスバルブを兼ねてバタフライバルブを用いる場合もある。第2バルブ83および第3バルブ84はフォアバルブであり、まず第2バルブ83を開けてドライポンプ84によりロード室801を粗く減圧し、次に第1バルブ81及び第3バルブ84を空けてターボ分子ポンプ82でロード室801を高真空まで減圧する。なお、ターボ分子ポンプの代わりにメカニカルブースターポンプを用いても良いし、メカニカルブースターポンプで真空度を高めてからターボ分子ポンプを用いても良い。
【0121】
次に、802で示されるのはEL素子の陽極もしくは陰極(本実施例では陽極)の表面を処理する前処理室であり、前処理室802は排気系800bを備えている。また、ロード室801とは図示しないゲートで密閉遮断されている。前処理室802はEL素子の作製プロセスによって様々に変えることができるが、本実施例では透明導電膜からなる陽極の表面に酸素中で紫外光を照射しつつ100〜120℃で加熱できるようにする。その他にも酸素または水素中でプラズマ照射しつつ200〜400℃で加熱処理をするという方法を用いても良い。
【0122】
次に、803は蒸着法により有機EL材料を成膜するための成膜室であり、成膜室(A)と呼ぶ。成膜室(A)803は排気系800cを備えている。また、前処理室802とは図示しないゲートで密閉遮断されている。本実施例では成膜室(A)803として図3に示した構造の成膜室を設けている。
【0123】
成膜室(A)803に搬送された基板804は、成膜室(A)803に備えられた複数の蒸発源805のうちシャッターが開いた蒸発源(本実施例では、蒸発源(a)805)を用いて成膜が行われる。なお、成膜室(A)803の詳細な動作に関しては、図3の説明を参照すれば良い。本実施例では、成膜室(A)803において、正孔注入層または正孔輸送層もしくは正孔注入層と正孔輸送層の両方を成膜する。正孔注入層および正孔輸送層を形成する材料としては、公知の材料を用いれば良い。
【0124】
次に、806は蒸着法により有機EL材料を成膜するための成膜室であり、成膜室(B)と呼ぶ。成膜室(B)806は排気系800dを備えている。また、成膜室(A)803とは図示しないゲートで密閉遮断されている。本実施例では成膜室(B)806として図3に示した構造の成膜室を設けている。従って成膜室(B)806の詳細な動作に関しては、図3の説明を参照すれば良い。また、本実施例では、成膜室(B)806において、赤色に発色する発光層を成膜する。赤色に発色する発光層としては公知の材料を用いれば良い。
【0125】
次に、807は蒸着法により有機EL材料を成膜するための成膜室であり、成膜室(C)と呼ぶ。成膜室(C)807は排気系800eを備えている。また、成膜室(B)806とは図示しないゲートで密閉遮断されている。本実施例では成膜室(C)807として図3に示した構造の成膜室を設けている。従って成膜室(C)807の詳細な動作に関しては、図3の説明を参照すれば良い。また、本実施例では、成膜室(C)807において、緑色に発色する発光層を成膜する。緑色に発色する発光層としては公知の材料を用いれば良い。
【0126】
次に、808は蒸着法により有機EL材料を成膜するための成膜室であり、成膜室(D)と呼ぶ。成膜室(D)808は排気系800fを備えている。また、成膜室(C)807とは図示しないゲートで密閉遮断されている。本実施例では成膜室(D)808として図3に示した構造の成膜室を設けている。従って成膜室(D)808の詳細な動作に関しては、図3の説明を参照すれば良い。また、本実施例では、成膜室(D)808において、青色に発色する発光層を成膜する。青色に発色する発光層としては公知の材料を用いれば良い。
【0127】
次に、809は蒸着法により有機EL材料を成膜するための成膜室であり、成膜室(E)と呼ぶ。成膜室(E)809は排気系800gを備えている。また、成膜室(D)808とは図示しないゲートで密閉遮断されている。本実施例では成膜室(E)809として図3に示した構造の成膜室を設けている。従って成膜室(E)809の詳細な動作に関しては、図3の説明を参照すれば良い。また、本実施例では、成膜室(E)809において、電子輸送層もしくは電子注入層を成膜する。なお、電子輸送層もしくは電子注入層を形成する材料としては、公知の材料を用いれば良い。
【0128】
次に、810は蒸着法によりEL素子の陽極もしくは陰極となる導電膜(本実施例では陰極となる金属膜)を成膜するための成膜室であり、成膜室(F)と呼ぶ。成膜室(F)810は排気系800hを備えている。また、成膜室(E)809とは図示しないゲートで密閉遮断されている。本実施例では成膜室(F)810として図3に示した構造の成膜室を設けている。従って成膜室(F)810の詳細な動作に関しては、図3の説明を参照すれば良い。
【0129】
本実施例では、成膜室(F)810において、EL素子の陰極となる導電膜としてAl−Li合金膜(アルミニウムとリチウムとの合金膜)を成膜する。なお、周期表の1族もしくは2族に属する元素とアルミニウムとを共蒸着することも可能である。
【0130】
また、ここで、実施例1で説明したのと同様にCVD室を設けて、窒化珪素膜、酸化珪素膜及びDLC膜等の絶縁膜をEL素子の保護膜(パッシベーション膜)として形成させてもよい。
【0131】
なお、CVD室を設ける場合には、CVD室で用いる材料ガスを予め高純度化するためのガス精製機を設けておくと良い。
【0132】
次に、811は封止室であり、排気系800iを備えている。また、成膜室(F)810とは図示しないゲートで密閉遮断されている。封止室811の説明は実施例1を参照すれば良い。また、実施例1と同様に封止室811の内部には紫外光照射機構(図示せず)が設けられている。
【0133】
最後に、812はアンロード室であり、排気系800jを備えている。EL素子が形成された基板はここから取り出される。
【0134】
以上のように、図8に示した成膜装置を用いることで完全にEL素子を密閉空間に封入するまで外気に晒さずに済むため、信頼性の高い発光装置を作製することが可能となる。また、インライン方式により高いスループットで発光装置を作製することができる。なお、本実施例の構成は、実施例1に示したいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【0135】
〔実施例4〕
本実施例では、本発明の成膜装置を用いて、EL素子を保護するための封止(または封入)工程まで行った発光装置について示し、さらに途中の作製行程においてEL素子における不純物による劣化を防止するための方法についても説明する。
【0136】
図9(A)は、EL素子の封止までを行った状態の断面図である。ガラス基板900の上方には画素部901、駆動回路902が形成されており、画素部901は電流制御用TFT903とそのドレインに電気的に接続された画素電極904を含む複数の画素により形成される。また、駆動回路902はnチャネル型トランジスタ905とpチャネル型トランジスタ906とを組み合わせたCMOS回路を用いて形成される。なお、ガラス基板900上には、保護膜として窒化珪素、酸化珪素または酸化窒化珪素といった珪素を含む化合物や炭素膜(具体的にはダイヤモンドライクカーボン膜)916を2〜30nmの厚さに設けると良い。これにより、基板側からの不純物の侵入を防ぐことができる。
【0137】
画素電極904はEL素子の陽極として機能する。また、画素電極904の両端にはバンク907が形成され、画素電極904上にはEL層908およびEL素子の陰極909が形成される。陰極909は全画素に共通の配線としても機能し、接続配線910を経由してFPC(フレキシブルプリントサーキット)911に電気的に接続されている。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。さらに、画素部901及び駆動回路902に含まれる素子は全てパッシベーション膜912で覆われている。
【0138】
なお、EL素子に酸素や水等の不純物が侵入するのを防ぐために917の部分で行う処理について図9(B)及び図9(C)を用いて説明する。
【0139】
図9(B)において、91a及び91bは層間絶縁膜であり、91aは、ポリイミドやポリアミドといった有機樹脂膜で形成されており、その上には、窒化珪素膜、酸化珪素膜及びDLC膜といった絶縁膜が形成される。そして、画素電極92および電流制御用TFTからの接続配線93が形成され、さらに画素電極間の隙間を埋めるようにバンク94が形成される。
【0140】
この時バンク94は、ポリイミドやポリアミドといった有機樹脂膜で形成されている。そこで、本実施例では、バンク94の表面をAr等の希ガス中でプラズマ処理を行うことにより表面を緻密化させる。これによりバンク表面に含まれていた不純物を除去することができると共に外部からの不純物の侵入を防ぐことができる。
【0141】
また、図9(C)は、図9(B)とバンク94の形成までは同じであるが、バンク94上に窒化珪素膜、酸化珪素膜及びDLC膜といったパッシベーション膜95を2〜30nmの膜厚で形成する。なお、この場合には、バンク94は、パッシベーション膜95により完全に封止されてしまうので、バンク94中に含まれる酸素及び水等の不純物が外部に放出されることはなく、EL素子の劣化を防ぐことができる。
【0142】
次に図9(A)に示すように、シール材913によりカバー材914が貼り合わされている。なお、カバー材914とEL素子との間隔を確保するためにスペーサを設けても良い。そして、シール材913の内側には空隙915が形成されている。なお、シール材913は水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。さらに、空隙915の内部に吸湿効果をもつ物質や酸化防止効果をもつ物質を設けることは有効である。
【0143】
なお、カバー材914の表面および裏面には保護膜として炭素膜(具体的にはダイヤモンドライクカーボン膜)916a、916bを2〜30nmの厚さに設けると良い。このような炭素膜は、酸素および水の侵入を防ぐとともにカバー材914の表面を機械的に保護する役割をもつ。
【0144】
以上のような構造でEL素子を封入することにより、EL素子を外部から完全に遮断することができ、外部から水分や酸素等のEL層の酸化による劣化を促す物質が侵入することを防ぐことができる。従って、信頼性の高い発光装置が得られる。なお、本実施例の構成は、実施例1〜実施例3に示したいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【0145】
〔実施例5〕
本実施例では、本発明の成膜装置を用いてEL層のカラー化を実現するために成膜時に用いるメタルマスクについて図10を用いて説明する。
【0146】
図10(A)は、メタルマスクの上面図である。1001は、メタルマスクのマスク部であり、成膜しない部分を覆う役目を果たす。
【0147】
また、1001に複数形成されている1002は、開口部aであり、蒸着時に開口部a1002を通過したEL材料が基板上に成膜される。
【0148】
なお、本実施例において図10(A)で示したメタルマスクは、EL材料を一色成膜した後、矢印xの方向に移動させ、隣の画素に異なる色を成膜していく。これを繰り返すことで、複数色のEL材料の成膜が可能となる。
【0149】
また、メタルマスクの開口部a1002の形状に関しては、横方向(異色の画素列が形成される方向)に隣り合う開口部aの距離(p)は、10〜200μmが好ましく、縦方向(同色の画素列が形成される方向)に隣り合う開口部a1002との距離(q)は、10〜40μmが好ましい。さらに、開口部a1002の短辺(r)は、20〜200μmであるのが好ましい。
【0150】
なお、メタルマスクのマスク部1001は、2層構造のマスク部材から形成されるが、マスク部1001をマスク枠1003に貼り合わせて3層構造とすることで、より強度の高いメタルマスクを形成することができる。図10(A)をA−A’で切断した際の断面図を図10(B)に示す。なお、本実施例において用いるマスク枠1003には、中空アルミニウムやアルミナ等の部材を用いることができる。また、膜厚は1〜15mmであることが好ましい。さらに、マスク枠1003はメタルマスク(第1マスク1001a、第2マスク1001b)よりもやや小さい開口部b1011が設けられており、この開口部b1011にマスク部1001を重ね、一部が重なるようにしてマスク枠1003と貼り合わせることによりメタルマスクを完成させることができる。
【0151】
次に、メタルマスクを形成する方法について図10(C)を用いて説明する。ただし、ここで、図10(C)により形成されるメタルマスクは、図10(B)に示すものとは一部の構造が異なるが、本発明においては、どちらの構造のメタルマスクを用いることができる。
【0152】
はじめに、第1のマスク層1101aが形成される。なお、1101aは、鉄、銅、ニッケル、コバルト、アルミニウム、銀、タンタル、タングステンといった金属材料や、これらの金属からなる合金及びステンレス(SUS316)といった磁石に引きつけられる材料で形成するのが好ましい。なお、ここで形成される第1のマスク層1101aの膜厚は、50〜200μmであるのが好ましい。
【0153】
次に第1のマスク層1101aに第2のマスク層1101bを積層させる。この時の第2のマスク層1101bは、蒸着法、スパッタリング法およびCVD法等の公知の成膜方法を用いて成膜すればよい。なお、ここで形成される第2のマスク層1101bの膜厚は、0.5〜20μmであるのが好ましい。また、ここで形成される第2のマスク層1101bは、第1のマスク層1101aと同じエッチング液を用いて同時にエッチングを行った際にエッチングの選択比が十分にとれるような材料を用いなければならない。
【0154】
なお、第1のマスク層1101aに対する第2のマスク層1101bの膜厚比は0.1〜0.01となるのが好ましい。さらに、同一のエッチング液を用いた際の第1のマスク層1101aを形成する材料のエッチング速度に対する第2のマスク層1101bを形成する材料のエッチング速度の比は、両者の膜厚比が0.01以下であった場合には、0.001以下であることが望ましい。
【0155】
このようにして、第1のマスク層1101a及び第2のマスク層1101bを積層させたメタルマスクは、両面をレジスト材料(1004aおよび1004b)で覆った後に一度にエッチングすることで、図10(C)の1201a,1201bに示されるような形状のメタルマスクを形成させることができる。なお、ここでは、2種類の材料を用いてメタルマスクを形成する場合について説明したが、一種類の材料を用いてこれをエッチングすることにより形成することも可能である。
【0156】
メタルマスク(1201a、1201b)を形成した後、レジスト(1004a、1004b)を除去し、マスク枠1003と貼り合わせることにより、より強度の高いメタルマスクを形成することができる。また、マスク枠1003を用いることにより、400×500mmや620×720mmといった大判サイズのメタルマスクを形成させることもできる。
【0157】
次に画素電極1006、配線1007及びバンク1008が形成されたTFT(図示せず)を有する基板上に図10(C)により形成したメタルマスクを備えて成膜を行う方法についてその一部の断面図を示した図10(D)を用いて説明する。この時基板のメタルマスクと反対側に磁石1009を備えておくことで、第1マスク1201aが磁力で引きつけられるために、基板とメタルマスク間の距離(s)を小さくし(s≧0)、基板とメタルマスクの密着性をより向上させることができる。以上により、メタルマスクの撓みや浮きやズレなどにより作製するパターンの不良を防ぐことができ、EL材料の成膜を精度良く行うことができる。
【0158】
また、本実施例の構成は、実施例1〜実施例4のいずれの構成とも自由に組み合わせて実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の構成を示す図。
【図2】本発明の構成を示す図。
【図3】成膜室の構造を示す図。
【図4】成膜室の構造を示す図。
【図5】蒸着室の構造を示す図。
【図6】成膜装置の構造を示す図。
【図7】成膜装置の構造を示す図。
【図8】成膜装置の構造を示す図。
【図9】発光装置の断面構造を示す図。
【図10】メタルマスクについて説明する図。
【図11】成膜装置の構造を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に第1の開放部を有するとともに、底部に蒸発材料を入れ、前記蒸発材料を気化する第1の温度に制御する第1の温度調節機構を備えている第1の有底筒体と、
前記第1の有底筒体の第1の開放部上に第2の開放部が設けられ、上部に前記蒸発した気体が通過できる第2の開口部を備えているとともに、前記気化した蒸発材料を、第2の温度調節機構により、前記第1の温度よりも低い第2の温度に制御し、前記第2の開口部から除去する第1の気体と、第1の固体の状態に分離する第2の筒体と、
前記第2の筒体を反転して、前記第2の開放部を上方に向ける機構と、
前記第2の筒体の第2の開放部上に第3の開放部が設けられ、上部に蒸発した気体が通過できる第3の開口部を備えているとともに、第3の温度調節機構により前記第1の温度よりも低く前記第2の温度よりも高い第3の温度に制御し、前記第1の固体を第2の気体と第2の固体の状態に分離する第3の筒体と、
から少なくとも構成され、
前記第3の筒体の第3の開口部から放出される前記第2の気体を用いて基板に成膜することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
上部に第1の開放部を有するとともに、底部に蒸発材料を入れ、前記蒸発材料を気化する第1の温度に制御する第1の温度調節機構を備えている第1の有底筒体と、
前記第1の有底筒体の第1の開放部上に第2の開放部が設けられ、上部に前記蒸発した気体が通過できる第2の開口部を備えているとともに、前記気化した蒸発材料を、第2の温度調節機構により、前記第1の温度よりも低い第2の温度に制御し、前記第2の開口部から除去する第1の気体と、第1の固体の状態に分離する第2の筒体と、
前記第2の筒体を反転して、前記第2の開放部を上方に向ける機構と、
前記第2の筒体の第2の開放部上に設けられた第1のシャッターと、
前記第2の筒体の第2の開放部上に前記第1のシャッターを介して第3の開放部が設けられ、上部に蒸発した気体が通過できる第3の開口部を備えているとともに、第3の温度調節機構により前記第1の温度よりも低く前記第2の温度よりも高い第3の温度に制御し、前記第1の固体を第2の気体と第2の固体の状態に分離する第3の筒体と、
前記第3の筒体の上部に設けられ、前記第3の開口部から前記第2の気体を放出する第2のシャッターと、
から少なくとも構成され、
前記第3の筒体の第3の開口部から放出される前記第2の気体を用いて基板に成膜することを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記蒸発材料は、EL材料であることを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、前記蒸発材料は、金属材料であることを特徴する成膜装置。
【請求項5】
上部に第1の開放部を有する第1の有底筒体の底部に入れられた蒸発材料を第1の温度調節機構により第1の温度に制御して気化し、
下部に第2の開放部、上部に第2の開口部を備えている第2の筒体を前記第1の有底筒体の第1の開放部上に設け、第2の温度調節機構により、前記第1の温度よりも低い第2の温度に制御し、前記気化した蒸発材料を前記第2の開口部から除去するとともに、第1の固体の状態に分離し、
前記第2の筒体を反転して、前記第2の開放部を上方に向け、
前記第2の筒体の第2の開放部上に第3の開放部が設けられ、上部に蒸発した気体が通過できる第3の開口部を備えている第3の筒体を、第3の温度調節機構により前記第1の温度よりも低く前記第2の温度よりも高い第3の温度に制御し、前記第1の固体を第2の気体と第2の固体の状態に分離し、
前記第3の筒体の第3の開口部から放出される前記第2の気体を用いて基板に成膜することを特徴とする成膜方法。
【請求項6】
上部に第1の開放部を有する第1の有底筒体の底部に入れられた蒸発材料を第1の温度調節機構により第1の温度に制御して気化し、
下部に第2の開放部、上部に第2の開口部を備えている第2の筒体を前記第1の有底筒体の第1の開放部上に設け、第2の温度調節機構により、前記第1の温度よりも低い第2の温度に制御し、前記気化した蒸発材料を前記第2の開口部から除去するとともに、第1の固体の状態に分離し、
前記第2の筒体を反転して、前記第2の開放部を上方に向け、
前記第2の筒体の第2の開放部上に設けられた第1のシャッターを介して第3の開放部が設けられ、上部に蒸発した気体が通過できる第3の開口部を備えている第3の筒体を第3の温度調節機構により前記第1の温度よりも低く前記第2の温度よりも高い第3の温度に制御し、前記第1の固体を第2の気体と第2の固体の状態に分離し、
前記第3の筒体の上部に第2のシャッターが設けられ、前記第3の開口部から前記第2の気体を放出し、
前記第3の筒体の第3の開口部から放出される前記第2の気体を用いて基板に成膜することを特徴とする成膜方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−69459(P2008−69459A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300269(P2007−300269)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【分割の表示】特願2001−323018(P2001−323018)の分割
【原出願日】平成13年10月22日(2001.10.22)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】