説明

成膜装置及び成膜システム

【課題】本発明は真空チャンバ内部の圧力状態に依存せず、特に1辺の長さが1mを超える大形基板に対して精密なパターニングに向けた高精度基板アライメントが可能な成膜装置または成膜システムを提供することである。
【解決手段】本発明は、基板とマスクとのアライメントを行い成膜材料を基板に真空成膜する真空チャンバを有する成膜装置またはシステムにおいて、前記真空チャンバの内部に設けた剛体の第1基準部材、真空チャンバの外部に設けた剛体の第2基準部材及び一端を前記第1基準部材の固定し、前記真空チャンバの壁に設けた貫通孔を通して他端を前記第2基準部材に固定された剛体の支柱を複数具備するかご構造体と、前記かご構造体を前記真空アライメントチャンバの所定位置に維持するフローティング機構と、前記支柱を覆い前記真空チャンバの気密性を確保し、アライメントマークを撮像する撮像手段を前記剛体のいずれかに取付けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル,有機ELパネル,有機EL照明を製造する上で、真空下でのマスクを用いた成膜,スパッタ,CVD成膜を対象とし、大形のガラス基板を用い、精密にマスクをアライメントして特定の領域に精密に成膜を施す成膜装置及び成膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から液晶パネルや有機ELパネルの製造工程でガラス基板上に薄膜トランジスタ(TFT)素子を形成する際に、CVD,スパッタなどの成膜工程,レジスト塗布工程,フォトリソ工程,エッチング工程,レジスト剥離工程を繰返し、配線パターン、トランジスタ、画素電極を作り込んで行く。これらの工程のうち成膜工程では、基板上の所定の範囲に限定して膜付けを行う際に、成膜したい領域を開口したマスクを基板に近接又は密着させて真空中で成膜を行うケースがある。
【0003】
例えば、真空中でマスク用いて精密な成膜を行うものに、有機ELパネルの有機層の成膜がある。有機ELパネルの場合、TFTを成膜後、TFTの各素子に接続する画素電極のうち、赤,緑,青の発光に対応した画素電極毎に、対応する有機層を真空成膜で直接パターニングして行く。マスクには、エッチング又は電鋳などにより製作した精密な孔パターンを持つ金属マスクシートが用いられる。マスクシートは一般的に弛まないように張力を掛けた状態で枠状のフレームに固定された状態で使用される。
【0004】
真空中でガラス基板等の基板とマスクのパターンを合わせ込むアライメントに関しては、特許文献1又は特許文献2に代表されるように、基板とマスクのアライメント用マークを撮影する撮像手段であるアライメントカメラと、基板又はマスクの位置を変更してアライメントするアライメント機構取り付けの基準を真空チャンバにする提案がなされてきた。
【0005】
特許文献1ではアライメントカメラと、アライメント機構双方が真空チャンバに取り付けられている例が示された。アライメントカメラは複数真空チャンバ外部に設置され、透明な窓のビューポート越しに、基板とマスクのアライメントマークのずれを観測し、アライメンずれを画像処理で計測し、それに従いアライメント機構でずれに応じて基板またはマスクの位置・姿勢を変更するものである。
同様に、特許文献2では、マスクを保持する機構と基板を動かすアライメント機構を真空チャンバに固定し、アライメントカメラをアライメント機構に固定する方法を提案している。
【0006】
基板とマスクのアライメントマークは、一般的に全ての個所で一致した時に基板上の画素電極とマスクの開口パターンが適正に位置決めされるように設計されている。アライメントマーク間のずれを所定の範囲に収めてから、成膜が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-206980
【特許文献2】特開2005-240121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
真空成膜に代表されるような真空チャンバ内でマスクを用いて精密に成膜範囲を限定するプロセスでは、基板の大型化を際に前記成膜範囲の精度の確保が問題となってきた。この問題は2つの要因がある。1つはプロセス時のマスク及び基板の温度上昇による熱膨張に起因するもので、2つ目としては設備の大形化による機構の剛性不足に起因する。
例えば、真空成膜では1辺が1m未満のガラス基板を取り扱う場合、圧倒的に熱膨張に起因する問題(例えば、基板やマスクの変形等)が影響する。このため、一般的に蒸発源からの輻射熱を抑制するために成膜源周辺にリフレクタを配置したり、冷却プレートで成膜源を囲むなどの手法がとられてきた。
【0009】
一方、1辺が1mを越えるガラス基板を扱う場合、ガラス基板の自重によるたわみへの対応だけではなく、さらに大形化する真空チャンバ壁のたわみの影響も行う必要がある。一般的に自重によるたわみの対策はマスクの剛性を向上する方法やマスク及びガラス基板を立てて処理する方法が用いられている。しかし、真空チャンバへの剛性向上については検討されてこなかった。
【0010】
基板サイズに合わせて真空チャンバを大形化して行くと、圧力差による真空チャンバ1の外部との境である壁1hの変形も無視できない大きさ(10mm程度以上)になることが解った。特許文献1の方式を図15、特許文献2の方式を図16に示す。両者は機能部材を真空チャンバ壁1hを基準として取り付けており、真空チャンバ壁1hが真空排気の際に変形した場合、機構部品や撮像手段に支障が生じる。
【0011】
図15ではアライメントカメラ11を真空チャンバ壁1hに取り付けているため、それがたわむとアライメントカメラの光軸がずれる。真空排気前では図13のように基板4のアライメントマーク画像28とマスクのアライメントマークの画像29は同心円として観測されたとする。ところが、真空排気後では光軸24のずれの影響で、図14のように観測されてしまう。また、アライメント機構15も真空チャンバ壁1のたわみの影響で機構全体として変形を起こし、動作に支障が生じる。
【0012】
一方図16のように基板アライメント機構15が真空チャンバ外部から吊り下げられている場合では、基板4とアライメントカメラ11の光軸の関係は正常に保たれる。またアライメント機構自体の動きも支障は生じない。しかし、マスク5の姿勢はアライメント機構15と連動しないため、マスク5に対するアライメントカメラ11の光軸がずれたり、基板とマスク間の距離が変化してしまうことにより、取得画像にボケが生じてしまい、検出エラーが発生する。
【0013】
真空チャンバ壁の真空排気時の変形を抑制するために通常、真空チャンバ壁の肉厚を厚くしたり、リブを増やすなどの対策を施す。しかし、装置の製作や搬送の観点から、チャンバ壁の肉厚を増やしたり、巨大なリブを取り付けたりできるのにも限界がある。
この対策として、真空チャンバ内で真空を保っている時点でカメラの調整を行えば、逆に大気開放中に不具合を生じる。このように、大形基板に対してマスクを用いて高精度な真空成膜を行う設備では、その開発・デバッグ・調整を困難にする問題も第15図の例同様に生じた。しかも、これでは、図15の例で示す機構の動作の支障は改善されない。
【0014】
なお、図15、図16において上記で説明されていない符号は、本発明の実施形態で説明したものと同一機能ものは同一のものを用いている。
また、以下の説明においてアライメント機能を行う真空チャンバを真空アライメントチャンバ1A、真空成膜を行うチャンバを真空成膜チャンバ1J、両方の機能を有するものを単に真空チャンバ1という。
【0015】
従って、本発明の目的は、上記に鑑みて、真空チャンバ内部の圧力状態に依存せずに、基板とマスクとのアライメントを高精度に実現可能であり、精密なパターニングな可能な成膜装置または成膜システムを提供することである。
また、本発明の他の目的は、特に、真空マスク成膜の1辺の長さが1mを超える大形基板に対して精密なパターニングに向けた高精度基板アライメントが可能な成膜装置または成膜システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために、基板とマスクとのアライメントを行なう真空アライメントチャンバと蒸発源内の成膜材料を基板に成膜する真空成膜チャンバを有する成膜装置において、前記真空アライメントチャンバの内部に設けた剛体の第1基準部材、真空アライメントチャンバの外部に設けた剛体の第2基準部材、及び一端を前記第1基準部材の固定し、前記真空アライメントチャンバの壁に設けた貫通孔を通して他端を前記第2基準部材に固定された剛体の支柱を複数具備するかご構造体と、前記貫通孔と前記第2基準部材の前記固定部との間の支柱を覆い、前記真空アライメントチャンバの気密性を確保する第1気密部と、前記かご構造体を前記真空アライメントチャンバの所定位置に維持する複数のフローティング機構と、前記基板とマスクに設けた複数のアライメントマークを撮像する複数の撮像手段とを有し、前記撮像手段の取付位置は前記剛体のいずれかに直接的あるいは間接的に取付ける位置であることを第1の特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記第1基準部材に固定され、マスクを直立またはほぼ直立に保持するマスクホルダ、前記基板を保持する基板ホルダー手段を具備する剛体の第3基準部材、前記第3基準部材を前記基板の姿勢を水平から垂直に変化させるアーム、前記第1基準部材に固定された前記アームの回転軸の軸受を有することを第2の特徴とする。
【0018】
さらに、本発明は、上記目的を達成するために、第1または第2の特徴に加え、前記複数のフローティング機構は、その一端を前記第1基準部材に固定され、他端を前記真空アライメントチャンバの壁に直接または間接的に固定されたことを第3の特徴とする。
また、本発明は、上記目的を達成するために、第1または第2の特徴に加え、前記複数のフローティング機構は、その一端を前記第2基準部材に固定され、他端を前記真空アライメントチャンバの壁に直接または間接的に固定されたことを第4の特徴とする。
さらに、本発明は、上記目的を達成するために、第3または第4の特徴に加え、前記各フローティング機構は、回転対偶、すべり対偶のうち少なくとも2自由度以上の回転対偶を有することを第5の特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記目的を達成するために、第1または第2の特徴に加え、前記取付位置は前記第2基準部材であって、前記真空アライメントチャンバに前記撮像手段が前記アライメントマークを撮像できるようにビューポートを設けたことを第6の特徴とする。
さらに、本発明は、上記目的を達成するために、第1または第2の特徴に加え、前記取付位置は前記真空アライメントチャンバ内における前記剛体であって、前記撮像手段は気密容器に内蔵され、前記気密容器は前記撮像手段が前記アライメントマークを撮像できるようにビューポートを有すること第7の特徴とする。
また、本発明は、上記目的を達成するために、第7の特徴に加え、前記気密容器、前記撮像手段のうち少なくとも一方を冷却する手段を有することを第8の特徴とする。
【0020】
さらに、本発明は、上記目的を達成するために、第8の特徴に加え、前記冷却手段は、前記真空アライメントチャンバ外の空気による前記気密容器を空冷する手段であることを第9特徴とする。
また、本発明は、上記目的を達成するために、第8の特徴に加え、前記冷却手段は、前記気密容器または前記撮像手段に接したヒートブロックを冷却材による冷却する手段であることを第10の特徴とする。
さらに、本発明は、上記目的を達成するために、第1の特徴に加え、前記アライメント機構は、前記前記第2基準部材に設けられ、前記真空アライメントチャンバに設けた貫通孔を通して被対象部を移動させる連接部、前記連接部を覆い、前記真空アライメントチャンバの気密性を確保する第2気密部を具備し、前記被対象部は前記基板または前記マスクであることを第11の特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記目的を達成するために、第6の特徴に加え、前記ビューポートの前面に成膜材料を遮断するシャッタ設けたことを第12の特徴とする。
さらに、本発明は、上記目的を達成するために、第1または第2の特徴に加え、前記マスクのアライメントマークの前面に成膜材料を遮断するシャッタまたはカバーを設けたことを第13の特徴とする。
また、本発明は、上記目的を達成するために、第1乃至第13のいずれかの特徴に加え、
前記真空アライメントチャンバと前記真空成膜チャンバは一体の一体真空チャンバであることを第14の特徴とする。
さらに、本発明は、上記目的を達成するために、第1乃至第13のいずれかの特徴に加え、前記真空アライメントチャンバは前記真空成膜チャンバとは別の真空チャンバであることを第15の特徴とする。
【0022】
また、本発明は、上記目的を達成するために、第1乃至第15のいずれかの特徴に加え、
有機EL表示装置の前記基板に対して領域毎に異なる組合わせの積層有機膜、もしくは、積層有機形成後に無機化合物または金属の膜を蒸着により形成し、通電時に領域毎に異なる発光色を示す素子を形成することを第16の特徴とする。
さらに、本発明は、上記目的を達成するために、第14の特徴を有する成膜装置を有し、前記一体真空チャンバを複数有し、前記一体真空チャンバ間を前記基板を搬送する真空搬送チャンバを有することを第17の特徴とする。
【0023】
また、本発明は、上記目的を達成するために、第14の特徴を有する成膜装置を有し、
前記真空アライメントチャンバと複数の前記真空成膜チャンバを有し、前記真空アライメントチャンバでアライメント後、前記基板と前記マスクを固定する固定手段と、前記固定された前記基板マスクを一体にして前記複数の真空成膜チャンバ間を搬送する真空搬送手段とを有することを第18の特徴とする。
さらに、本発明は、上記目的を達成するために、第18の特徴を有する成膜装置を有し、
赤,緑,青の三色成膜後、前記固定手段を解除し、前記マスクを前記複数の真空成膜チャンバのうち最前段の真空成膜チャンバに戻す搬送手段を有することを第19の特徴とする。
【0024】
また、本発明は、上記目的を達成するために、第17乃至第19のいずれかの特徴を有する成膜装置を有し、有機EL表示装置の前記基板に対して領域毎に異なる組合わせの積層有機膜、もしくは、積層有機形成後に無機化合物または金属の膜を蒸着により形成し、通電時に領域毎に異なる発光色を示す素子を形成することを第20の特徴とする。
最後に、本発明は、上記目的を達成するために、第1乃至第20のいずれかに記載の特徴に加え、前記成膜材料は有機ELであることを第20の特徴とする。
【0025】
なお、本発明における、剛体とは外力を受けても所望以上に形状が変化しないことを示し、必ずしも、真空チャンバ壁よりも剛性が高いというわけではない。
【発明の効果】
【0026】
従って、本発明によれば、真空チャンバ内部の圧力状態に依存せずに、基板とマスクとのアライメントを高精度に実現可能であり、精密なパターニングな可能な成膜装置または成膜システムを提供することができる。
また、本発明によれば、特に、真空マスク成膜の1辺の長さが1mを超える大形基板に対して精密なパターニングに向けた高精度基板アライメントが可能な成膜装置または成膜システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1、第2に実施形態の成膜システムを示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態における真空チャンバの第1実施例を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態における真空チャンバの第2実施例を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態における真空チャンバの第3実施例を示す図である。
【図5】第3の実施例において真空チャンバ内に設けたアライメントカメラを冷却水で冷却する構造を示す図である。
【図6】第3の実施例において真空チャンバ内に設けたアライメントカメラを空冷する機構造を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態における真空チャンバの第4実施例を示す図である。
【図8】第4の実施例において照明光を真空チャンバの外部に設けた照明手段からを投光するアライメント検出系を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態における真空チャンバを示す図である。
【図10】本発明の第3実施形態の成膜システムを示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態における真空チャンバの実施例を示す図である。
【図12】有機ELパネル製造の有機成膜でのマスクと画素のアライメント状態を示す図である。
【図13】マスク成膜における正常アライメントでのアライメントカメラの検出画像の1例を示す。
【図14】従来方法での真空チャンバ壁のたわみに影響を受けたときの光軸のゆがみと検出画像の一例を示した図である。
【図15】従来のマスク成膜装置の例を示す。
【図16】従来のマスク成膜装置の他の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、有機ELパネル製造における有機層の成膜膜42を例にマスク成膜を説明する。図4に有機ELパネルの成膜における基板4上の画素37とマスク5の位置関係の一例を示す。図12の例では同じ色の画素37が1列に並んでいる例を示している。それぞれの画素37にはTLO膜39上に設けられた画素電極40があり、画素電極40の周りには他の画素電極と隔絶するバンク41が設けられている。発光層のように隣りの画素と成膜材料が違うものを成膜する場合、特定の発光色を割り当てられている画素37に対して、対応個所に成膜開口部38を設けたマスク5を正確にアライメントし、蒸発源2からの蒸気を吹付けて成膜する。この成膜では隣り合う画素の間のバンク41が10μmを下回るものもあり、基板4とマスク5のアライメントは高精度に行う必要がある。
【0029】
図13に示すように基板4とマスク5のアライメントは、それぞれに設けたアライメントマーク25,26のずれをアライメントカメラ11で撮影し、得られた画像27に対して画像処理を施して相対的なずれ量を割り出し、基板4又はマスク5のいずれかを動かして修正を行うものである。
【0030】
基板4に設けるアライメントマーク25はフォトリソ工程を経て、金属膜や有機膜などで形成するが、エッチングなどで形成しても構わない。マスクのアライメントマーク26は、レーザやエッチングなどで孔や窪み加工を施す。電鋳で作成したメタルマスクでは孔パターンのひとつとしてアライメントマーク26を形成する。図12と図13では基板4の成膜面が下向きでマスク5に面する。基板の材質がガラスの場合、アライメントカメラ11は落斜照明又は透過照明を用いて撮像することができる。
【0031】
図12のように基板4側にアライメントカメラ11がある場合、透過照明を用いるケースではマスク側のアライメントマーク26は貫通孔で基板側のアライメントマーク25よりも大きくすれば、マーク同士を重ねて撮像した時に、区別しやすくすることができる。アライメントマーク25と26の図芯が一致したときにずれが無くなると定義しても良いし、画面内の所定の位置にある時にずれがなくなると定義しても良い。同一視野の画像27上で、アライメントマーク像28,29がそれぞれ判別でき、位置ずれ状態が検出できればどのような方法でも良い。また、角度的な誤差をなくすため、例えば対角など、2ヶ所以上のアライメントマーク25,26を用いて検出することが望ましい。
このようにして、基板4とマスク5をアライメントした後、図2に示す蒸発源2をスキャンさせることで成膜して行く。
【0032】
以下の第1又は第2の実施形態で示すように、アライメントと成膜を同一の真空チャンバ1で実現する場合は、例えば、図1に示すように、中心部に真空搬送ロボット66を持った多角形の真空搬送室68と、その周辺部に放射状に基板ストッカ室60や成膜室である真空チャンバ1を配置したクラスタ型の成膜システムの構成をとり、真空環境で連続的に膜を積層して行くことがデバイス寿命の観点から望ましい。
【0033】
以下、アライメント機能を有する前記真空チャンバ1の本発明の第1実施形態を図2〜図8を用いて以下に示す。まず、図2を用いて、本発明の一実施形態の基本構成を示す。
真空チャンバ1の内部を真空排気すると真空チャンバ壁は1kPaの負圧を受ける。真空チャンバが大型化すると、真空チャンバ1の壁1hのたわみの問題が顕著になる。一般的に真空チャンバ壁の厚みを増したり、リブを取り付けるなどの真空チャンバ壁の剛性を向上させる対策が採られてきた。しかし、これらの対策は、いずれにしろ、真空チャンバの重量がかさむ方向での対処のため、成膜装置をユーザのもとへ搬送する際に、搬送可能な重量を超えるケースも生じ始め、ある程度のチャンバ壁のたわみを許容せざるを得なくなった。
【0034】
真空チャンバ壁1hが変形すると基板とマスクのアライメントに支障が生じ、精密なマスク成膜が行えない。本実施形態では、真空チャンバ1内部に第1基準部材であり剛体のチャンバ内ベースプレート8を設け、それに対して剛体の支柱23を複数本設けた。支柱23は真空チャンバ壁1hに設けた貫通孔1hkを通り、真空チャンバ1外へ張り出させる。そして真空チャンバ1外に設けた第2基準部材であり剛体のアライメントベースプレート16を支柱端に固定する。これにより、真空チャンバ壁とは独立した第1基準部材、支柱及び第2基準部材で構成される剛体のかご構造体が形成される。真空チャンバの気密を保つためには真空チャンバ1とアライメントベース16の間に支柱23を取り囲むようにベローズを設ける。この状態で排気すると、かご構造体は支柱23の軸方向の差圧を受けて真空チャンバ1の下壁に押し付けられる。前記押付け力を受け止めるために、本実施形態ではかご構造体の受けるフローティング機構9を設ける。
【0035】
以下、この基本構成を有する本第1実施形態の実施例を説明する。
(実施例1)
図2に実施例1を示し、図2(a)は真空チャンバ1内を大気に開放した状態を、図2(b)は真空排気後の状態を示す。まず、フローティング機構9について説明する。フローティング機構9は、支柱23の軸(X)方向に複数9a、9b設けられている。フローティング機構9a、9bは、一端を第1基準部材であるチャンバ内ベースプレート8に固定され、他端を真空チャンバ1の横壁から設けた突出部1tに間接的に固定されている。また、真空チャンバ壁1hの変形に影響を受けないように、フローティング機構9a、9bは、前記2つの固定部間に回転9aa、9ba及びすべり対偶9bbを有する。前記回転対偶は2以上の自由度を有し、回転対偶のみを有するフローティング機構9aは真空チャンバ壁1hの変形によるかご構造体の回転のズレを吸収し、かご構造体の左右方向の位置決めをする。一方、回転及びすべり対偶を有するフローティング機構9bは、回転のズレと共にフローティング機構9aで吸収できなかったかご構造体の左右(X)方向の位置ずれを吸収する。
【0036】
この結果、かご構造体はフローティング機構9によって真空チャンバ面と平行な方向の自由な動きが制約され、おおよその位置が決められると共に、支柱23が真空チャンバ1の貫通部1hkに接触し発塵することもなくなる。フローティング機構9a、9bを真空チャンバ1の横壁に直接的に固定してもよいが、突出部1tは変形しないので安定してかご構造体を支持できる。
【0037】
次に、アライメント機構15とアライメントカメラ11について説明する。符号の煩雑さを避けるために、本説明部分の符号を図2(b)に示す。アライメント機構15とアライメントカメラ11は、第2基準部材であるアライメントベース16に固定されている。アライメント機構15は、基板4をXYθZ方向に移動させために、アライメントベース16に固定されたZステージ18、ZステージよりZ方向に移動され、基板4をXYθ方向に移動または回転するXYθステージ17、XYθステージを固定するステージ剛体19、基板4をチャックする基板チャック6、ステージ剛体19と基板チャック6とを貫通孔1htを通して連結する連結体20及び真空を維持するベローズ21を有する。
【0038】
アライメントカメラ11は真空チャンバ内部にある基板4及びマスク5のアライメントマーク25,26を観測するために、真空チャンバには透明材質のビューポート13を設けており、このビューポート13より照明,撮影を行うことができる。この例ではアライメント機構15は基板4側を動かしてマスク5とのアライメントを行うが、逆にマスク側を動かしてもよい。基板4を保持する基板チャック6は、メカニカルに基板を押さえつけても、静電気により吸着しても良い。
【0039】
一方マスク5を真空内ベースプレート8上に固定している。アライメントの機能はこのようにして真空チャンバ壁に切り離されたかご構造体に集約しており、即ち、また真空チャンバ壁1hの変形とは切り離されているため、真空チャンバの排気状態に関係なく正常な機能を発揮できる。例えば、アライメントカメラ11においては、真空排気前に図14に示すようなアライメントマーク検出状態27が得られる場合、真空排気後でも同様にアライメントマーク検出状態27を得ることができる。
【0040】
本実施形態では、基板4とマスク5をアライメントする真空アライメントチャンバ1Aと基板に成膜する真空成膜チャンバ1Bが同一である真空チャンバ1であるので、成膜に用いる蒸発源2の面からの粒子がマスク5及び基板4に届くようにチャンバ内ベースプレート8に基板4の成膜範囲に応じたマスク開口領域5aを設ける。
【0041】
(実施例2)
次に、第2の実施例を図3に示す、実施例2は、フローティング機構9以外は実施例1と同じである。実施例2のフローティング機構9は図1では真空チャンバ1内に設置しているが、本実施例2では、フローティング機構9は、真空チャンバ1外に設置され、その一端を第2基準部材であるアライメントベースプレート16に固定され、他端を真空チャンバ1の上壁に固定されている。アライメントベースプレート16側には、実施例1と同様にフローティング機構9は、前記2つの固定部の間に回転9aa、9ba及びすべり対偶9bbを有する。前記回転対偶は2以上の自由度を有している。本フローティング機構9においても、実施例1と同様な機能を有し、同様な効果が得られる。なお、図1、図2に示すようにローティング機構9の回転9aa、9ba及びすべり対偶9baを基準部材側に設けてよいし、真空チャンバの壁側に設けてもよい。
【0042】
(実施例3)
次に、第3の実施例を図4乃至図6に示す。実施例3は、アライメントカメラ11を真空チャンバ1内に設置した以外は実施例1と同じである。真空装置では発熱がある機器やアクチュエータ、発ガスを伴う機器を極力その外に置くことが望ましい。そのため、真空チャンバ1の中にアライメントカメラ11や照明手段14を有するアライメント光学系70を入れる場合には、気密容器12内に収め、アライメントカメラ11、撮像手段14からの発ガスを防止することが必要である。気密容器12の中は大気圧をとするとアライメントカメラ11及び照明手段14の動作にも支障がない。気密容器12には透明な材質のビューポート13が設置されている。気密容器12は図3では支柱23に取り付けているが、チャンバ内ベースプレート8に取り付けても同様である。
【0043】
気密容器12の中でアライメントカメラ11を照明を使用し続けると、外部は真空なので、放熱できずに、故障の原因となる。そこで図5に示すようにヒートブロック35a又は35bを気密容器12又はアライメントカメラ11に取り付ける。冷媒となる冷却水33a又は35bは真空チャンバ1外部からひかれた配管34a又は34bを通して供給,排出されて行く。別の冷却方法として図6に示すように、気密容器12の中に配管34を通して空気32を真空チャンバ1外から供給・吸い上げることで、アライメントカメラ11や照明手段14に対して空冷するものである。
【0044】
(実施例4)
第1実施形態の最後の実施例である実施例4を図7及び図8を用いて説明する。実施例4の先の実施例と異なる点は、第1に、フローティング機構9の取り付け位置であり、第2に、アライメント光学系70に防汚対策を付加した点である。
まず、第1のフローティング機構9の取り付け位置に関しては、以下の通りである。実施例1(図2)ではフローティング機構9をその一端をチャンバ内ベースプレート8に固定し、他端を真空チャンバ1の横壁から設けた突出部1tに間接的に固定しているの対し、本実施例ではフローティング機構9を一端チャンバ内ベースプレート8に固定された支柱23に固定し、他端を真空チャンバ1の横壁から設けた突出部1tに固定している。フローティング機構9の対偶構成及び配置並びにそれらに基づく機能効果は、実施例1乃至3と同じである。
【0045】
次に第2のアライメント光学系70の防汚対策を説明する。例えば、有機ELのような真空成膜では、蒸発源2内部の成膜材料を入れた坩堝を高温に熱して成膜粒子を発生させるもので、その温度変化に敏感である。このため、一時的にヒータをとめて蒸気を止めると安定させるまでに数10分はかかってしまう。真空チャンバ1を大気開放せずに、蒸発源2のスキャンの調整やトラブル復帰作業などを行う場合では、基板4がチャンバ内に搬入されていないケースもある。そのときに、蒸発源2を動かすとアライメントカメラ11が成膜粒子を浴びて撮像不能になる場合がある。
【0046】
そこで、図7に示すようにアライメントカメラ11(ビューポート13)と蒸発源2の間にシャッタ72を設けることで、成膜粒子を直接浴びないようにすることができる。このシャッタ72aは真空チャンバ1外部のロータリアクチュエータ77で軸を回転させることでシャッタのON/OFFを切り替える。シャッタ72は水冷することでさらに効果を上げることができる。また、基板4は入れ替わるが、マスク5はその場にとどまって次の成膜粒子を浴び続けるため、アライメントマーク26が成膜粒子で塞がり、透過光による撮影などで支障が生じる場合がある。これに関しては、マスクアライメントマーク26の保護を目的としてアライメントカメラ11とは別にマスクアライメントマーク26の保護を目的としてシャッタ72bを設けても良い。
【0047】
実施例3で示した反射照明による光学系では、上述したようにアライメントカメラ11あるいはマスクアライメントマーク26の前にシャッタ72を設けることで、アライメントカメラ11あるいはマスクアライメントマーク26への成膜粒子の付着を防ぐことができる。
【0048】
一方、透過照明では、基板側にアライメントカメラ11を設けると照明手段14はマスク5と蒸発源2の間に設けられる。要求される真空度が低い場合、チャンバ外部から光ファイバ等を用いてマスクアライメントマーク26を直接照らし、光ファイバを固定手段でマスクアライメントマーク26への成膜粒子の付着を防ぐことができる。
透過照明で高い真空度が要求される場合、図8に示すように真空チャンバ壁1hに設けたビューポート13越しに照明手段14から照明光を投光する。この場合、チャンバ内ベースプレート8に孔を空けるなどにより汚染防止を兼ねた光路74の確保や、ミラー75などの光学部品をカバー76で覆うといった対策を施すことで光学像を安定して得ることができる。
【0049】
以上各実施例で説明した第1実施形態をマスクを用いた大形基板に対する精密な成膜プロセス(例えば有機ELパネルにおける有機成膜プロセス)に適用すると、次のような効果を得る。
本実施形態では、アライメントカメラやアライメント機構などの部材を真空チャンバのたわみの影響を受けないかご構造体に固定し、かご構造体はフローティング機構を介して真空チャンバ内に固定される、大気側に張り出したかご構造体の部分が受ける差圧分を真空チャンバに受け持たせている。このため、かご構造体を基準とするアライメント機構とアライメントカメラは真空チャンバのたわみと切り離されて機能する。
【0050】
従って、本第1実施期待によれば、真空チャンバの真空排気の有無にかかわらず、アライメント機構ではその動きは正常な状態を維持でき、アライメントカメラにおいては光軸ずれが無い、高精度のアライメントができる。その結果、高精度の成膜のパターンニングが可能な成膜装置、成膜システムを提供できる。
また、従来真空チャンバを真空排気してからでないと量産時でのアライメントカメラの撮像状態が得られず、プロセス装置の調整ができなかったが、本発明により、チャンバ内部の気圧状態にかかわらず作業でき、デバッグ調整の自由度が増し、デバック調整時間を短縮でき、稼働率の高い成膜装置または成膜システムを提供できる。
【0051】
また、アライメント機構にストレスがかからなくなることから、アライメント機構の寿命やメンテナンス周期を長くすることが可能となり、稼働率の高い成膜装置または成膜システムを提供できる。
さらに、シャッタ等を設けることでアライメントカメラ11のビューポート13、あるいはマスクアライメントマーク26への成膜粒子の付着を防止でき、信頼性の高いアライメントができ、メイテナンス周期の長い稼動率の高い成膜装置または成膜システムを提供できる。
また、上記の効果は、例え真空マスク成膜の1辺の長さが1mを超える大形基板であっても同様な効果を得ることができる。
【0052】
次に、図9を用いて、真空アライメントチャンバ1Aと基板に成膜する真空成膜チャンバ1Bが同一の真空チャンバである第2実施形態を説明する。第2実施形態では、水平搬送されて来た基板を直立させて成膜する。第1実施形態では、チャンバ内ベースプレート8は板もしくは額縁状の板を示していたが、図9の第1基準部材で剛体であるチャンバ内ベースプレート8は中央部にマスク開口領域5aを有する図9の断面ではコ状で示される全体的には盆状の形状を有する。本例では真空チャンバ1の紙面右側の壁と底面にフローティング機構を設けて、チャンバ内ベースプレート8を設置している。マスク5を保持するマスクホルダ7はリニアガイド80を介してチャンバ内ベースプレート8に取り付けられている。
【0053】
真空チャンバ1の外側上部に設けたアライメント機構15は基本的な構造は図2と同じであるが、動作としては紙面奥行き(Y)方向と上下(Z)方向の2自由度を有する。紙面奥行き(Y)方向は第2基準部材であるアライメントベース16から吊り下げた紙面奥行き(Y)方向にアクチュエータ22で、上下(Z)方向はZ軸アクチュエータ94でロッド95をそれぞれ駆動する。アライメント機構15は、紙面奥側にもう1セット設けることで、マスクホルダ7のY方向及びZ方向の移動及び紙面に垂直な面における回転を制御し、アライメントを行う。なお、リニアガイド80は、前述のアライメント時にマスクホルダ7をスムーズに摺動させるものである。
【0054】
一方、水平に搬送されてきた基板を直立させるのに、チャンバ内ベースプレート8上に回転アーム47を設け、その先端に第3基準部材である直立ベース46を取り付ける。直立ベースは基板チャック6が取り付けられている。この例では、直立ベース46に気密容器12に収納されたアライメントカメラ11もチャンバ内ベースプレート8に取り付けている。
アームの回転は紙面手前若しくは奥側に設ける回転アクチュエータ(図示せず)で行う。このアクチュエータ取り付けにおいて、紙面奥側にも、支柱23及びアライメントベース16を設けて、アライメントベース16に対して回転アクチュエータを取り付け、真空チャンバに接触しないように動力を軸48に伝達させる。なお。49は軸受である。
【0055】
基板4を直立させた後、アライメント機構15でマスク5を動かして、アライメントを行った後に蒸発源2を揺動させて成膜を施す。
図8ではマスク側にアライメント機構を設けた例を示しているが、基板を直立させた時に、基板側の位置を調整するようにしても構わない。
【0056】
第2実施形態においても、アライメントカメラやアライメント機構などの部材を真空チャンバのたわみの影響を受けないかご構造体に固定し、かご構造体はフローティング機構を介して真空チャンバ内に固定されので、かご構造体を基準とするアライメント機構とアライメントカメラは真空チャンバのたわみと切り離されて機能する。
従って、第1実施形態と同様に、真空チャンバの真空排気の有無にかかわらず、アライメント機構ではその動きは正常な状態を維持でき、アライメントカメラにおいては光軸ずれが無い、高精度のアライメントができる。その結果、高精度の成膜のパターンニングが可能な成膜装置、成膜システムを提供できる。
また、従来真空チャンバを真空排気してからでないと量産時でのアライメントカメラの撮像状態が得られず、プロセス装置の調整ができなかったが、本発明により、チャンバ内部の気圧状態にかかわらず作業でき、デバッグ調整の自由度が増し、デバック調整時間を短縮でき、稼働率の高い成膜装置または成膜システムを提供できる。
【0057】
さらに、第1実施形態での施策を第2実施形態に適用することで、第1実施形態と同様な効果を奏することができる。
また、上記の効果は、例え真空マスク成膜の1辺の長さが1mを超える大形基板であっても同様な効果を得ることができる。
【0058】
上述した第1及び第2実施形態では、アライメント機能と成膜機能を1つの真空チャンバ1が受け持つ例を示してきた。以下ではアライメントのみ機能を有する真空アライメントチャンバ1Aと成膜による成膜機能のみの真空成膜チャンバ1Bを用いる場合の第3実施形態の成膜システム及び成膜装置を図10及び図11を用いて説明する。
【0059】
図10は、第3実施形態の成膜システムを示す、インライン型プロセス装置のレイアウトの例を示す。基板ストッカ室60から基板4をローラ搬送し、またマスクストッカ室61から台板51に固定したマスク5を搬入し、真空アライメントチャンバ1Aで基板4とマスク5のアライメントを行い、台板51に基板4を固定する。台板51に固定された基板4は一定速度でローラ搬送されながら、赤、緑、青の成膜膜を形成する3つの真空成膜チャンバ1Bを通過して成膜されて行く。全ての成膜が完了した後に、基板マスク分離室64において基板4とマスク5・台板51を分離し、基板4は下流の基板ストッカ室60に収納、台板51に固定されたマスク5はリターンコンベア65でマスクストッカ室61に戻されて行く。
【0060】
図11は、上記の真空アライメントチャンバ1Aの一実施例を示した図である。かご構造体に関する構造は基本的には図2と同じである。異なる点は、第1基準部材であるチャンバ内ベースプレート8は、成膜が不要なためにマスク開口領域5aを有していない点、チャンバ内ベースプレート8にはマスク5は台板51に対して固定された状態また、基板4は枚葉で真空チャンバ1に搬送される。そして、上記で示したような基板4とマスク5をアライメントする。アライメント完了状態でマスク4と基板5を近接又は密着させてから、台板上のクランプ52により基板を固定する。クランプ52の基板4に接触する面には、発ガスの影響が少ないフッ素系ゴムなどの緩衝材をつけておくと、基板の破損や傷付を防ぐことができる。クランプ52は所定のプロセスが完了するまで固定したままの状態を保持する。クランプさせる機構(図示せず)は、かご構造体に固定することで位置決め不良を抑えることができる。
インライン型プロセス装置では、プロセスが確立している場合、速いスループットで生産が可能となる。
【0061】
本第3実施形態によれば、アライメント機能を有する真空アライメントチャンバにおいても、アライメントアライメントカメラやアライメント機構などの部材を真空チャンバのたわみの影響を受けないかご構造体に固定し、かご構造体はフローティング機構を介して真空チャンバ内に固定されので、かご構造体を基準とするアライメント機構とアライメントカメラは真空チャンバのたわみと切り離されて機能する。
【0062】
従って、第1、第2実施形態と同様に、真空チャンバの真空排気の有無にかかわらず、アライメント機構ではその動きは正常な状態を維持でき、アライメントカメラにおいては光軸ずれが無い、高精度のアライメントができる。その結果、高精度の成膜のパターンニングが可能な成膜装置、成膜システムを提供できる。
また、本第3実施形態によれば、第1、第2実施形態と同様にデバッグ調整の自由度が増し、デバック調整時間を短縮でき、稼働率の高い成膜装置または成膜システムを提供できる。
さらに、第1、2実施形態での施策を第3実施形態に適用することで、第1、第2実施形態と同様な効果を奏することができる。
また、上記の効果は、例え真空マスク成膜の1辺の長さが1mを超える大形基板であっても同様な効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の活用例として、フラットパネルディスプレイに対する画素単位で成膜するような高精度なアライメントが要求される真空成膜プロセスに適する。有機ELパネル製造におけるマスク成膜プロセスのように特定の発光色に対応した画素電極上に有機膜を精密に成膜してプロセスで、1辺が1mを超えるような大形基板を用いるようなケースでは特に有効になる。
【符号の説明】
【0064】
1…真空チャンバ 1A…真空アライメントチャンバ
1B…真空成膜チャンバ 2…蒸発源 4…基板
5…マスク 6…基板チャック
8…チャンバ内ベースプレート(第1基準部材)
9…フローティング機構 11…アライメントカメラ
12…気密容器 13…ビューポート 14…照明手段
15…アライメント機構 16…アライメントベースプレート(第2基準部材)
17…XYθステージ 18…Zステージ
19… XYθステージを固定するステージ剛体 20…連結体
21…ベローズ 22…Yステージ 23…支柱
24…光軸 25…基板側アライメントマーク
26…マスク側アライメントマーク 27…アライメントカメラ取得画像
28…基板側アライメントマーク像 29…マスク側アライメントマーク像
31…マスク開口パターン 32…空気 33…冷却液
34…配管 35…冷却ブロック 37…画素
38…成膜開口部 39…TLO層 40…バンク
41…画素電極 42…成膜膜 45…基板直立機構
46…基板直立ベース 47…アーム 48…軸
49…軸受 51…台板 52…クランプ
55…カセット 60…基板ストッカ室 61…マスクストッカ室
64…基板マスク分離室 65…リターンコンベア 66…真空搬送ロボット
68…真空搬送室 70…アライメント光学系 72…シャッタ
74…照明光光路 75…ミラー 76…カバー
77…ロータリアクチュエータ 95…ロッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板とマスクとのアライメントを行なう真空アライメントチャンバと蒸発源内の成膜材料を基板に成膜する真空成膜チャンバを有する成膜装置において、
前記真空アライメントチャンバの内部に設けた剛体の第1基準部材、真空アライメントチャンバの外部に設けた剛体の第2基準部材、及び一端を前記第1基準部材に固定し、前記真空アライメントチャンバの壁に設けた貫通孔を通して他端を前記第2基準部材に固定された剛体の支柱を複数具備するかご構造体と、前記貫通孔と前記第2基準部材の前記固定部との間の支柱を覆い、前記真空アライメントチャンバの気密性を確保する第1気密部と、前記かご構造体を前記真空アライメントチャンバの所定位置に維持する複数のフローティング機構と、前記基板とマスクに設けた複数のアライメントマークを撮像する複数の撮像手段とを有し、前記撮像手段の取付位置は前記剛体のいずれかに直接的あるいは間接的に取付ける位置であることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1基準部材に固定され、マスクを直立またはほぼ直立に保持するマスクホルダ、前記基板を保持する基板ホルダー手段を具備する剛体の第3基準部材、前記第3基準部材を前記基板の姿勢を水平から垂直に変化させるアーム、前記第1基準部材に固定された前記アームの回転軸の軸受を有することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記複数のフローティング機構は、その一端を前記第1基準部材に固定され、他端を前記真空アライメントチャンバの壁に直接または間接的に固定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記複数のフローティング機構は、その一端を前記第2基準部材に固定され、他端を前記真空アライメントチャンバの壁に直接または間接的に固定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記各フローティング機構は、回転対偶、すべり対偶のうち少なくとも2自由度以上の回転対偶を有することを特徴とする請求項3または4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記取付位置は前記第2基準部材であって、前記真空アライメントチャンバに前記撮像手段が前記アライメントマークを撮像できるようにビューポートを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記取付位置は前記真空アライメントチャンバ内における前記剛体であって、前記撮像手段は気密容器に内蔵され、前記気密容器は前記撮像手段が前記アライメントマークを撮像できるようにビューポートを有すること特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記気密容器、前記撮像手段のうち少なくとも一方を冷却する手段を有することを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記冷却手段は、前記真空アライメントチャンバ外の空気による前記気密容器を空冷する手段であることを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記冷却手段は、前記気密容器または前記撮像手段に接したヒートブロックを冷却材による冷却する手段であることを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記アライメント機構は、前記前記第2基準部材に設けられ、前記真空アライメントチャンバに設けた貫通孔を通して被対象部を移動させる連接部、前記連接部を覆い、前記真空アライメントチャンバの気密性を確保する第2気密部を具備し、前記被対象部は前記基板または前記マスクであることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記ビューポートの前面に成膜材料を遮断するシャッタ設けたことを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記マスクのアライメントマークの前面に成膜材料を遮断するシャッタまたはカバーを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記真空アライメントチャンバと前記真空成膜チャンバは一体の一体真空チャンバであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項15】
前記真空アライメントチャンバは前記真空成膜チャンバとは別の真空チャンバであることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項16】
有機EL表示装置の前記基板に対して領域毎に異なる組合わせの積層有機膜、もしくは、積層有機形成後に無機化合物または金属の膜を蒸着により形成し、通電時に領域毎に異なる発光色を示す素子を形成することを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項17】
請求項14に記載の成膜装置であって、前記一体真空チャンバを複数有し、前記一体真空チャンバ間を前記基板を搬送する真空搬送チャンバを有することを特徴とする成膜システム。
【請求項18】
請求項15に記載の成膜装置であって、前記真空アライメントチャンバと複数の前記真空成膜チャンバを有し、前記真空アライメントチャンバでアライメント後、前記基板と前記マスクを固定する固定手段と、前記固定された前記基板マスクを一体にして前記複数の真空成膜チャンバ間を搬送する真空搬送手段とを有することを特徴とする成膜システム。
【請求項19】
前記基板の特定領域に成膜または領域毎に異なる膜を成膜後、前記固定手段を解除し、前記マスクを前記複数の真空成膜チャンバのうち最前段の真空成膜チャンバに戻す搬送手段を有することを特徴とする請求項18に記載の成膜システム。
【請求項20】
有機EL表示装置の前記基板に対して領域毎に異なる組合わせの積層有機膜、もしくは、積層有機形成後に無機化合物または金属の膜を蒸着により形成し、通電時に領域毎に異なる発光色を示す素子を形成することを特徴とする請求項17乃至19のいずれかに記載の成膜システム。
【請求項21】
前記成膜材料は有機ELであることを特徴とする請求項1乃至20のいずれかに記載の成膜システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2010−248583(P2010−248583A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100322(P2009−100322)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】