説明

扁平形振動モータ

【課題】機器側の印刷配線板に対して自動実装でリフロー処理できる扁平形振動モータの提供。
【解決手段】このモータは支軸13を持ち給電用フレキシブル基板30を搭載するステータ板11と偏心錘24を持ち支軸13に対し回転自在に支持されたロータ20を備える。フレキシブル基板30は、ステータ板11の下面に支軸13を中心として重なる下面側基板部31と、ステータ板11の上面に重なる上面側基板部32と、ステータ板11の外周の切り欠き11bで下面側基板部31と上面側基板部32とを一体的に折り曲げて連結する幅狭状連結部33を有する。下面側基板部31は中心給電固着用パターン31aと幅狭状連結部33側を除き中心給電固着用パターン31aを同心環状に取り囲んだ外周給電固着用パターン31bとを有する。上面側基板部32は半田盛りMを充填してランド32fとステータ板11とを固着接続するスルーホールhを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータなどを用いて構成した所謂コイン形の扁平形振動モータに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10−262352の扁平形振動モータにおいては、ステータ板(底板)の上面側に給電用フレキシブル基板を接着し、ステータ板の一部から耳状に張り出た端子受け部で給電用フレキシブル基板の給電電極部を折り曲げて端子受け部の裏面に接着した給電構造が示されている。
【特許文献1】特開平10−262352(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の給電構造にあっては以下のような問題点がある。第1に、給電電極部は端子受け部を包むように上面と下面と側面との3方で露出しているものの、固着面積が少ないため、機器側の印刷配線基板に対して自動実装でリフローソルダリングする場合には適用できない。第2に、端子受け部が耳状に張り出たステータ板を用いねばならず、機器側の印刷配線基板の占有面積を無駄消費している。
【0004】
そこで上記問題点に鑑み、本発明の第1の課題は、機器側の印刷配線基板に対して自動実装でリフローソルダリングできる扁平形振動モータを提供することにある。本発明の第2の課題は、機器側の印刷配線基板の占有面積を節約できる扁平形振動モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、支軸を持ち給電用フレキシブル基板を搭載する金属製のステータ板と、偏心錘を持ち支軸に対し回転自在に支持されたロータとを備える扁平形振動モータにおいて、給電用フレキシブル基板は、ステータ板の下面に支軸を中心として重なる下面側基板部と、ステータ板の上面に重なる上面側基板部と、ステータ板の外周の切り欠きで下面側基板部と上面側基板部とを一体的に折り曲げて連結する幅狭状連結部とを有し、上面側基板部は半田盛りを充填して上面側配線パターンとステータ板とを固着接続するスルーホールを有し、下面側基板部は給電固着用パターンを有することを特徴とする。
【0006】
一枚の給電用フレキシブル基板がステータ板の下面に支軸を中心として重なる下面側基板部を有し、下面側基板部は給電固着用パターンを有し、またステータ板の上面に重なる上面側基板部は半田盛りを充填して上面側配線パターンとステータ板とを固着接続するスルーホールを有しているため、下面側基板部の給電固着用パターンのみならず、ステータ板の下面の一部を給電固着領域として利用でき、十分な固着面積を確保でき、リフローソルダリングに適した扁平形振動モータを提供できる。また、ステータ板では耳状の張り出し部分が不要になることから、機器側の印刷配線基板の占有面積を節約できる。更に、上面側基板部は半田盛りを充填して上面側配線パターンとステータ板とを固着接続するスルーホールを有し、ステータ板の下面の一部が単なる固着領域ではなく、給電固着領域となるので、例えばモータ駆動停止の制動端子などを増やすことができる。
【0007】
ステータ板としては、その下面に下面側基板部を収める凹部とこの凹部を取り囲む固着用外周部とを有することが望ましい。ステータ板の固着用外周部を半田盛りで接続した上記給電固着領域とすることができる。
【0008】
下面側基板部の給電固着用パターンが、中心給電固着用パターンと幅狭状連結部側を除き中心給電固着用パターンを取り囲んだ外周給電固着用パターンとを有して成る場合、同様のパターンを機器側の印刷配線板に形成することにより、自動実装でリフローソルダリングする場合、位置決め時の誤差を吸収できる。
【0009】
下面側基板部の外周縁と固着用外周部の内周縁との間に半田溜まり溝が形成されている場合、リフローソルダリング時の過剰な半田をこの半田溜まり溝内に収めることができ、しかも、固着強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機器側の印刷配線基板に対して自動実装でリフローソルダリングでき、しかも機器側の印刷配線基板の占有面積を節約できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1(A)は本発明の実施例に係る扁平形振動モータを示す平面図、図1(B)は図1(A)のB−B′線に沿って切断した断面図、図2は同扁平形振動モータに用いる給電用フレキシブル基板を示す平面図、図3(A)は同扁平形振動モータの底面図、図3(B)は同扁平形振動モータのステータ板を示す底面図、図4は同扁平形振動モータにおけるステータの断面図である。
【0012】
本例の扁平形(コイン形)振動モータはステータ10とロータ20とから成るブラシレスモータである。ステータ10は、金属製円形のステータ板(ベースプレートないし底板)11と、このステータ板11の中央孔11aに一端を嵌めて溶接した支軸(固定軸)13と、この支軸13に嵌めたワッシャー12と、ステータ板11の上面に重ね合せて熱溶着した給電用フレキシブル基板30と、このフレキシブル基板30の上に搭載された回転位置検出用ホール素子を含むスイッチング用集積回路14及びコンデンサ15と、給電用フレキシブル基板30上に配置された2個の励磁用の扁平形空芯コイル16,16と、ステータ板11が嵌合して中央孔17aに支軸13の他端が圧入する金属製浅カップ状のカバー17を有する。
【0013】
ロータ20は、軸受ホルダー部23aのメタル軸受21を介して支軸13に回転自在に支持され、扁平形空芯コイル16,16と面対向する環状6極の永久磁石22を下側に持つロータ板23と、このロータ板23の外周側に設けられた弧状の偏心錘24とを有する。
【0014】
給電用フレキシブル基板30は片面導電層基板で、図2に示す如く、ステータ板11の下面に中央孔11aを中心として重なる円板状の下面側基板部31と、ステータ板11の上面に重なる円板状の上面側基板部32と、ステータ板11の外周の切り欠き11b(図3(B)参照)で下面側基板部31と上面側基板部32とを一体的に折り曲げて連結する幅狭状連結部33とを有する。この下面側基板部31は、円形の中心給電固着用パターン31aと幅狭状連結部33側を除き中心給電固着用パターン31aを同心環状(C字状)に取り囲んだ外周給電固着用パターン31bとを有している。中心給電固着用パターン31aから引き出された給電配線Lと外周給電固着用パターン31bの一端から引き出された給電配線Lとが幅狭状連結部33の上を通過し、上面側基板部32でワッシャー12に嵌る中央孔32aと幅狭状連結部33側との間に位置するスイッチング用集積回路14の端子固着用パターン(図示せず)まで導かれている。この端子固着用パターンからは第1の扁平形空芯コイル16(図2では不図示)の一方のコイル端末固着用パターン32bに繋がる給電配線Lと第2の扁平形空芯コイル16(図2では不図示)の一方のコイル端末固着用パターン32cに繋がる給電配線Lが引き出されており、また、第1の扁平形空芯コイル16(図2では不図示)の他方のコイル端末固着用パターン32dと第2の扁平形空芯コイル16(図2では不図示)の他方のコイル端末固着用パターン32eとを繋げる給電配線Lが形成されている。そして、上面側基板部32はスルーホールhを持つランド32fから出た給電配線Lを有し、この給電配線Lはスイッチング用集積回路14の端子固着用パターン(図示せず)まで導かれている。
【0015】
ステータ板11は鉄製などの磁性板をプレス成形したものであり、その下面(底面)側は固着用外周部11cの内領域に下面側基板部31が固着用外周部11cと面一に重なるように基板厚みだけ窪ませた円形凹部11dとなっており、円形凹部11dから切り欠き11bにかけても幅狭状連結部33を収めるため、円形凹部11dと面一の狭窄凹所11eとなっている。下面側基板部31は円形凹部11d内の面に熱溶着で重ね合わされており、図3(A)に示す如く、下面側基板部31の外周縁と固着用外周部11cの内周縁との間には半田溜まり溝Sが形成されている。そして、図4に示す如く、上面側基板部32のランド32fのスルーホールh内に半田を充填して半田盛りMが形成されており、ランド32fとステータ板11とが固着接続している。
【0016】
図3(B)に示す如く、円形凹部11dの領域内においては、中央孔11aを中心として等距離で120°間隔ごとにコギング発生用丸孔11fが形成されている。また、固着用外周部11cは、カバー17の下端を受けて噛み合うための弧状張出片11gを有している。
【0017】
このように、本例においては、一枚の給電用フレキシブル基板30がステータ板11の下面に支軸13を中心として重なる下面側基板部31を有し、この下面側基板部31はスイッチング用集積回路14に駆動用給電圧と駆動停止時逆転用の制動給電圧を印加するため中心給電固着用パターン31aと外周給電固着用パターン31bとを有し、また上面側基板部32は半田盛りMを充填してランド32fとステータ板11とを固着接続するスルーホールhを有しているため、ステータ板11の固着用外周部11cを給電固着領域として利用でき、十分な固着面積を確保でき、リフローソルダリングに適した扁平形振動モータを提供できる。また、ステータ板11では耳状の張り出し部分が不要になることから、機器側の印刷配線基板の占有面積を節約できる。更に、固着用外周部11cはGND用として用いることができ、中心給電固着用パターン31aと外周給電固着用パターン31bとのいずれか一方をモータ駆動停止時逆転用の制動端子とすることができ、3端子ブラシレスモータにより、駆動停止時のイナーシャーを抑え、振動の瞬時停止を図ることができる。
【0018】
そして、中心給電固着用パターン31aと外周給電固着用パターン31bとの蛇の目形パターンを機器側の印刷配線板に形成することにより、自動実装でリフローソルダリングする場合、位置決め時の誤差を吸収できる。また、下面側基板部31の外周縁と固着用外周部11cの内周縁との間には半田溜まり溝Sが形成されているため、リフローソルダリング時の過剰な半田をこの半田溜まり溝S内に収めることができ、しかも、固着強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(A)は本発明の実施例に係る扁平形振動モータを示す平面図、(B)は(A)のB−B′線に沿って切断した断面図である。
【図2】同扁平形振動モータに用いる給電用フレキシブル基板を示す平面図である。
【図3】(A)は同扁平形振動モータの底面図、(B)は同扁平形振動モータのステータ板を示す底面図である。
【図4】同扁平形振動モータにおけるステータの断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10…ステータ
11…ステータ板
11a,17a,32a…中央孔
11b…切り欠き
11c…固着用外周部
11d…円形凹部
11e…狭窄凹所
11f…コギング発生用丸孔
11g…弧状張出片
12…軸固定用ワッシャー
13…支軸
14…スイッチング用集積回路
15…コンデンサ
16…扁平形空芯コイル
17…カバー
20…ロータ
21…メタル軸受
22…永久磁石
23…ロータ板
23a…軸受ホルダー部
24…偏心錘
30…給電用フレキシブル基板
31…下面側基板部
31a…中心給電固着用パターン
31b…外周給電固着用パターン
32…上面側基板部
32b〜32e…コイル端末固着用パターン
32f…ランド
33…幅狭状連結部
h…スルーホール
M…半田盛り
〜L…給電配線
S…半田溜まり溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支軸を持ち給電用フレキシブル基板を搭載する金属製のステータ板と、偏心錘を持ち前記支軸に対し回転自在に支持されたロータとを備える扁平形振動モータにおいて、
前記給電用フレキシブル基板は、前記ステータ板の下面に前記支軸を中心として重なる下面側基板部と、前記ステータ板の上面に重なる上面側基板部と、前記ステータ板の外周の切り欠きで前記下面側基板部と前記上面側基板部とを一体的に折り曲げて連結する幅狭状連結部とを有し、前記上面側基板部は半田盛りを充填して上面側配線パターンと前記ステータ板とを固着接続するスルーホールを有し、前記下面側基板部は給電固着用パターンを有することを特徴とする扁平形振動モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平形振動モータにおいて、前記ステータ板は、前記下面に前記下面側基板部を収める凹部とこの凹部を取り囲む固着用外周部とを有することを特徴とする扁平形振動モータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の扁平形振動モータにおいて、前記給電固着用パターンは、中心給電固着用パターンと幅狭状連結部側を除き前記中心給電固着用パターンを取り囲んだ外周給電固着用パターンとを有して成ることを特徴とする扁平形振動モータ。
【請求項4】
請求項3に記載の扁平形振動モータにおいて、前記下面側基板部の外周縁と前記固着用外周部の内周縁との間に半田溜まり溝が形成されていることを特徴とする扁平形振動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−303443(P2009−303443A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157681(P2008−157681)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000177151)三洋精密株式会社 (143)
【Fターム(参考)】