説明

手動式三次元測定装置、手動式三次元測定方法、及び手動式三次元測定用プログラム

【課題】手動式三次元測定の操作性及び正確性を向上させる。
【解決手段】手動式三次元測定装置は、被測定物2を測定する測定プローブ21と、測定プローブ21を三次元座標測定空間内において作業者が手動操作で移動させることができるように移動自在に支持する移動機構11〜13と、測定プローブ21の三次元座標空間内における位置情報を出力する位置情報出力部と、被測定物2の測定点情報を含むCAD情報を入力しこのCAD情報と測定プローブ21の位置情報とに基づいて測定プローブ21と測定点3との位置関係を逐次演算する位置演算部51と、位置演算部51の演算結果に基づいて測定プローブ21を測定点3で停止させるように移動機構11〜13による測定プローブ21の移動を規制する停止制御部53とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が測定プローブを直接手で動かして、被測定物上の任意の点の三次元座標値を取り込むことにより、被測定物の三次元形状、表面性状等の測定を行う手動式三次元測定装置、手動式三次元測定方法、及び手動式三次元測定用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の三次元形状、表面性状等の測定を行う三次元測定装置として、作業者が被測定物の測定点に測定プローブを手動で移動させて、被測定物の三次元形状、表面性状等の測定を行う手動式三次元測定装置(マニュアルCMM)が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−17198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、手動式三次元測定装置は、作業者が紙ベースあるいは、表示装置上に映し出されたCADの図面を見ながら測定プローブを手動で移動させて被測定物の測定点を測定するものであるため、例えば同じような穴の開いた基板などのように、被測定物の測定箇所が複雑である場合には、誤った箇所の測定を行うおそれがある。このような測定の誤りは、測定時に気付かないことが多く、後に判明した場合には座標系の設定からやり直さなければならないため、非常に大変な工数を費やすことになるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、測定の操作性及び正確性を向上させることができる手動式三次元測定装置、手動式三次元測定方法、及び手動式三次元測定用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る手動式三次元測定装置は、被測定物を測定する測定プローブと、前記測定プローブを三次元座標測定空間内において作業者が手動操作で移動させることができるように移動自在に支持する移動機構と、前記測定プローブの前記三次元座標空間内における位置情報を出力する位置情報出力部と、前記被測定物の測定点の情報を含むCAD情報を入力しこのCAD情報と前記測定プローブの位置情報とに基づいて前記測定プローブと前記測定点との位置関係を逐次演算する位置演算部と、前記位置演算部の演算結果に基づいて前記測定プローブを前記測定点で停止させるように前記移動機構による前記測定プローブの移動を規制する停止制御部とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る手動式三次元測定装置において、前記被測定物及び測定プローブのイメージを表示する表示部と、前記CAD情報に基づいて前記被測定物のイメージと測定点を特定するイメージとを生成すると共に、前記測定プローブの位置情報に基づいて前記測定プローブのイメージを生成し、これらイメージを前記被測定物と前記測定プローブの位置関係に応じて重ねて前記表示部に表示させる表示制御部とを更に備えることが好ましい。
【0008】
また、前記移動機構は、前記測定プローブをX軸方向に移動可能に支持するX軸移動機構と、前記測定プローブをY軸方向に移動可能に支持するY軸移動機構と、前記測定プローブをZ軸方向に移動可能に支持するZ軸移動機構と、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の少なくとも1つの移動機構の移動を規制することにより、前記測定プローブの移動を規制するブレーキ機構とを備え、前記停止制御部は、前記位置演算部の演算結果に基づいて前記ブレーキ機構に停止信号を出力するものであることが好ましい。
【0009】
また、前記ブレーキ機構による前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の移動の規制は、前記測定プローブと前記測定点との距離に応じて段階的に行なわれることが好ましい。
また、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の少なくとも1つの移動機構は、前記ブレーキ機構により移動が規制された状態において、規制された該移動機構を移動方向に微少移動させることができる微動機構を備えていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る手動式三次元測定装置の好適な実施形態において、前記ブレーキ機構は、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の少なくとも1つの移動機構の移動を規制する、第1エアシリンダと前記第1エアシリンダよりもクランプ力の弱い第2エアシリンダとを備え、前記ブレーキ機構による前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の段階的な移動の規制は、前記第1エアシリンダと前記第2エアシリンダとの作動に時間差を与えることにより行なわれることを特徴とする。
【0011】
また、他の実施形態において、前記ブレーキ機構は、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の少なくとも1つの移動機構の移動を規制するエアシリンダを備え、前記エアシリンダは、エアー圧力の異なる少なくとも2つのエアー源と選択的に接続され、前記ブレーキ機構による前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の段階的な移動の規制は、前記エアシリンダへエアーを供給するエアー源を切り替えることにより行なわれることを特徴とする。
【0012】
また更に、他の実施形態において、前記ブレーキ機構は、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の少なくとも1つの移動機構の移動を規制するエアシリンダを備え、前記エアシリンダには、該エアシリンダの内部にエアーを流入させる流入孔と、該エアシリンダの内部に流入したエアーを大気に放出させる流出孔とが形成され、前記ブレーキ機構による前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の段階的な移動の規制は、前記エアシリンダの流入孔又は流出孔の少なくとも1の孔にエアーの供給量又は排出量を調節するスピードコントローラが設けられることにより行なわれることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る手動式三次元測定方法は、三次元座標測定空間内において作業者が手動で移動させることができるように移動自在に支持された測定プローブの位置情報を出力する位置情報出力ステップと、前記測定プローブの位置情報に基づいて前記測定プローブの位置を演算する位置演算ステップと、前記位置演算ステップの演算結果に基づいて前記測定プローブと測定点との距離を演算し、その演算結果に基づいて、前記停止位置における前記測定プローブの移動を制御する停止制御ステップとを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る手動式三次元測定用プログラムは、作業者が手動で移動させることができるように構成され被測定物を測定する測定プローブを備える手動式三次元測定装置の測定用プログラムであって、前記測定プローブの三次元座標測定空間内における位置情報を出力する位置情報出力ステップと、前記測定プローブの位置情報に基づいて前記測定プローブの位置を演算する位置演算ステップと、前記位置演算ステップの演算結果に基づいて前記測定プローブと測定点との距離を演算し、その演算結果に基づいて、前記停止位置における前記測定プローブの移動を制御する停止制御ステップとをコンピュータに実行させるようにされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、測定の操作性及び正確性を向上させることができる手動式三次元測定装置、手動式三次元測定方法、及び手動式三次元測定用プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る手動式三次元測定装置の構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る手動式三次元測定装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態に係る手動式三次元測定装置のブレーキ機構を示す部分拡大図である。
【図4】図3のA−A´線に沿った断面図である。
【図5】第1実施形態に係る手動式三次元測定装置の測定工程を示す工程図である。
【図6】第1実施形態に係る手動式三次元測定装置の表示部を示す平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る手動式三次元測定装置の構成を示す斜視図である。
【図8】第2実施形態に係る手動式三次元測定装置のブレーキ機構を示す部分拡大図である。
【図9】第2実施形態に係る手動式三次元測定装置の測定工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の第1実施形態に係る手動式三次元測定装置及び三次元測定方法について詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る手動式三次元測定装置の構成を示す斜視図、図2は、同装置の電気的な構成を示すブロック図である。
第1実施形態に係る手動式三次元測定装置は、図1に示すように、手動式三次元測定装置本体10と、これを制御すると共に測定データを処理するコントローラ50とを備えて構成されている。
図1において、手動式三次元測定装置本体10は、測定テーブル14上に設けられた直交3軸移動機構によって測定プローブ21を手動操作で移動可能に支持したものである。すなわち、測定テーブル14のX軸方向の両端には、コラム15とサポータ16が立設され、これらコラム15とサポータ16との間にX軸ビーム17が架け渡されている。また、このX軸ビーム17に、空気軸受けを介してX軸移動機構11を構成するX軸スライダ19が左右方向(X軸方向)に移動可能に支持され、X軸スライダ19に、空気軸受けを介してZ軸移動機構13を構成するZ軸スピンドル20が上下方向(Z軸方向)に移動可能に支持されている。コラム15とサポータ16も空気軸受けによって測定テーブル14から浮上して支持されており、コラム15は測定テーブル14の一端に設けられたY軸ガイド機構18によって前後方向(Y軸方向)にガイドされているので、コラム15とサポータ16は一体となってY軸方向に移動可能なY軸移動機構12を構成している。ここで、X軸、Y軸、Z軸は各々直交関係にある。
【0018】
Z軸スピンドル20の下端には、測定プローブ21が設置されており、測定プローブ21のスタイラスの先端には球状接触子22が設けられている。測定プローブ21は、X軸移動機構11、Y軸移動機構12及びZ軸移動機構13により、作業者の手動操作によって、測定テーブル14上の三次元座標測定空間内を移動可能に構成されている。また、測定プローブ21には、タッチ信号生成回路29が備えられており、タッチ信号生成回路29は、測定テーブル14上の三次元座標測定空間内において、測定プローブ21の球状接触子22が被測定物2の測定点3に接触されるとタッチ信号を生成し、後述する位置演算部51に出力するように構成されている。
【0019】
X軸スライダ19、コラム15及びZ軸スピンドル20の移動による測定プローブ21の各軸方向の移動量は、図2に示すように、それぞれ各軸に設けられたX軸スケール23、Y軸スケール24及びZ軸スケール25によって検出される。また、X軸スケール23、Y軸スケール24及びZ軸スケール25には、検出された各軸の移動量を計数するX軸カウンタ26、Y軸カウンタ27及びZ軸カウンタ28がそれぞれ接続されている。これら各軸スケール23、24、25と各軸カウンタ26、27、28で位置情報出力部を構成する。
【0020】
位置演算部51は、各軸スケール23、24、25によって検出された各軸移動機構11、12、13の移動量に対応した各軸カウンタ26、27、28のカウンタ値に基づいて、測定プローブ21の位置情報を算出し、この位置情報をリアルタイムで表示制御部52、停止制御部53及び測定制御部57に出力する。また、位置演算部51は、タッチ信号生成回路29からタッチ信号が出力された際には、タッチ信号が出力された瞬間の測定プローブ21の座標値を、各軸カウンタ26、27、28のカウンタ値から算出し、これを測定データとして表示制御部52及び測定制御部57に出力する。表示制御部52は、CADデータ記憶部56に記憶されたCADデータから被測定物2及びその測定点3を示すイメージを生成すると共に、位置演算部51で求められた測定プローブ21の位置情報からその位置に対応する被測定物2のイメージ上の位置に測定プローブ21のイメージを生成し出力する。表示制御部52で生成された被測定物2及び測定プローブ21のイメージは、表示部54に表示される。入力部55は、測定プローブ21の手動操作のための指示入力や測定のための必要な情報入力を行うものである。測定制御部57は、入力部55から入力された情報、位置演算部51から入力された測定データ及びCADデータ記憶部56から与えられたCADデータに基づき、測定点3の測定座標を算出する。
【0021】
停止制御部53は、位置演算部51により演算された測定プローブ21の位置情報と、CADデータに含まれる目標とする測定点3の位置情報との差分値を算出し、この差分値に基づいて、測定プローブ21がブレーキ制御範囲内に位置するか否かを判定し、その判定結果に基づいてブレーキ制御信号を出力する。
【0022】
X軸移動機構11、Y軸移動機構12及びZ軸移動機構13には、停止制御部53から出力されるブレーキ制御信号に応じてX軸スライダ19、コラム15及びZ軸スピンドル20の移動をそれぞれ独立して制御するブレーキ機構31a、31b、31cがそれぞれ取り付けられている。なお、ブレーキ機構31b、31cは、ブレーキ機構31aと同様の構成であるため、ブレーキ機構31aについてのみ説明する。ここで、ブレーキ機構31a、31b、31cは、X軸スライダ19、コラム15及びZ軸スピンドル20の全てに取り付けられている必要はなく、X軸移動機構11、Y軸移動機構12及びZ軸移動機構13の少なくとも一つの移動を制御可能に取り付けられていれば良い。
【0023】
図3は、ブレーキ機構31aの一例を示す図であり、図4は図3のA−A′断面図である。ブレーキ機構31aは、X軸ビーム17の長手方向に平行に設けられ、回転可能な案内軸32と、X軸スライダ19に設けられ、案内軸32上を軸方向に移動させることができると共に、停止制御部53からのブレーキ制御信号に基づいて案内軸32の一部を挟み込んでクランプさせることが可能なブレーキ部33と、クランプ状態のブレーキ部33を軸方向に微動させることができる微動機構41とを備えている。
【0024】
ブレーキ部33は、X軸スライダ19の前面19aに水平方向に突出して設けられるとともに、案内軸32を間に挟んで上下に対向して設けられた支持盤34及び固定盤37と、支持盤34の案内軸32側の面とは反対側の面において支持されると共に、支持盤34の図示しない貫通孔を介して案内軸32の軸方向と直交する方向へ進退可能な接続シャフト36を有するエアシリンダ35と、このエアシリンダ35の接続シャフト36の先端に結合されて、支持盤34と案内軸32との間において案内軸32に向けて進退する可動盤38とを備えている。
【0025】
エアシリンダ35は、内部にエアーを流入させる流入孔35aと、内部に流入したエアーを大気に解放する流出孔35bを有し、流入孔35aには、低圧エアー源48及び高圧エアー源49のいずれか一方からのエアーが、それらに設けられたバルブ45、46により流路47を介して選択的に流入するようになっている。接続シャフト36は、エアシリンダ35の内部にエアーが流入されると突出し、エアシリンダ35の内部のエアーが大気に流出されると後退するように形成されている。
【0026】
接続シャフト36と一緒に前進又は後退する可動盤38には、一対の可動盤側ローラ40が設けられており、固定盤37には、二対の固定盤側ローラ39、39が設けられている。これら可動盤側ローラ40及び固定盤側ローラ39、39は、可動盤38がエアシリンダ35によって固定盤37側に突出した際に、案内軸32を相互に挟み込んでクランプすることができる位置に設けられている。また、可動盤側ローラ40及び固定盤側ローラ39、39の回転軸は、案内軸32の軸方向に対して斜めに傾けられて設けられている。
【0027】
微動機構41は、案内軸32の一端に連結されたフレキシブル構造の連結部42と、連結部42の他端と連結されることにより、連結部42を介して案内軸32を回転させるハンドル43とを備えている。ハンドル43は、支持部材44によって、コラム15の側面に取付けられている。
【0028】
次に、このように構成された第1実施形態に係る手動式三次元測定装置の動作について、図5に基づいて説明する。なお、以下の処理は、専用のコントローラ50による実行の他、汎用コンピュータで実行可能な三次元測定プログラムによって実現することも可能である。
三次元座標測定の実行を開始すると(S1)、まず、コントローラ50は、入力部55からの入力情報に基づいてCADデータ記憶部56から被測定物2に関するCADデータを取り込むと共に、入力部55から、測定に必要となる情報、例えば測定条件や測定点などを取り込む(S2)。測定条件としては、用いる測定プローブ21の種類(タッチ信号プローブ/倣いプローブ)、測定プローブ21の球状接触子22の直径、スタイラスの長さ、測定種類(ピッチ測定/形状測定)などがある。表示制御部52は、CADデータに基づき、図6に示すような被測定物2のイメージを表示部54に表示する。測定点3の指定は、例えば、図6に示す被測定物2のイメージ上で指定したり、の三次元座標値(x,y,z)を直接入力したりすることにより行なわれる。
【0029】
次に、コントローラ50の位置演算部51が、各軸カウンタ26、27、28によって計数された値から三次元座標空間内における測定プローブ21の現在位置を算出する(S3)。位置演算部51によって演算された測定プローブ21の位置情報は、表示制御部52に出力され、表示制御部52は、位置情報に基づいて被測定物2のイメージに重ねて測定プローブ21のイメージを生成する。このイメージが、図6に示すように、表示部54の画面上に表示される。この際、表示部54に目的とする測定点3の座標値や目的とする測定点3へ案内する表示等がなされることにより、より操作性を向上させることが可能となる。作業者は、表示部54の表示に従って測定プローブ21を移動させ、目的とする測定点3に接近させる(S4)。ここで、測定プローブ21が三次元座標空間内において移動すると、位置演算部51は、各軸カウンタ26、27、28によって計数された値から測定プローブ21の位置座標を常時算出する(S5)。算出された測定プローブ21の位置座標は、停止制御部53へ出力され、停止制御部53において測定プローブ21の位置座標と目的とする測定点3との座標値の差分が算出されると共に(S6)、算出された差分値から、停止位置制御部53においてブレーキ機構31a、31b、31cのブレーキ制御を行なうか否かが判定される(S7)。判定結果がNoである場合、すなわち、算出された差分値が所定の差分値よりも大きい場合(測定プローブ21が目的とする測定点3の近傍の所定範囲内に進入していない場合)には、ブレーキ機構31a、31b、31cへのブレーキ制御は実行されず、測定プローブ21は、三次元座標測定空間内を自由に移動することができる。判定結果がYesの場合、すなわち、算出された差分値が所定の差分値以下である場合(測定プローブ21が目的とする測定点3の近傍の所定範囲内に進入した場合)には、停止位置制御部53によりブレーキ機構31a、31b、31cが作動され、ブレーキ機構31a、31b、31cによる各軸移動機構11、12、13の1次ブレーキ制御が実行される。
【0030】
ブレーキ機構31a、31b、31cによる1次ブレーキ制御は、エアシリンダ35の内部に低圧エアー源48から流路47を介して低圧のエアーが流入されることにより行なわれる(S8)。具体的には、エアシリンダ35に低圧のエアーが流入されることにより、接続シャフト36を介して可動盤38が固定盤37側に突出し、可動盤38の可動盤側ローラ40と固定盤37の固定盤側ローラ39、39とによって案内軸32がクランプされ、ブレーキ機構31a、31b、31cが取付けられている各軸移動機構11、12、13にブレーキ力を与える。ここで、エアシリンダ35に流入されたエアーは低圧であり、クランプ力が比較的弱いため、1次ブレーキ制御がなされた状態においても各軸移動機構11、12、13は完全にクランプされておらず、作業者は1次ブレーキ制御による負荷を感じながら測定プローブ21を三次元測定空間内において移動させることができる。
【0031】
1次ブレーキ制御がされている状態において、さらに測定プローブ21を目的とする測定点3へ移動させ、測定プローブ21が目的とする測定点3に到達したと判定された場合、すなわち、位置演算部51及び停止制御部53によって常時算出される差分値がゼロとなった場合には、ブレーキ機構31a、31b、31cによる2次ブレーキ制御が行なわれる(S9)。ブレーキ機構31a、31b、31cによる2次ブレーキ制御は、エアシリンダ35の内部に流入されているエアーの供給を低圧エアー源48から高圧エアー源49に切り替えることにより行なわれる。これにより、エアシリンダ35に流入するエアーが高圧となり、可動盤38の固定盤37に対する押し付け力が増加するため、各軸移動機構11、12、13は強固にクランプされ、測定プローブ21の移動は規制される。
【0032】
これにより、被測定物2の測定点3の位置が特定されるため、作業者は、図示しないクランプ状態解除スイッチを操作してブレーキ機構31a、31b、31cのクランプ状態を解除し、測定プローブ21を自由に移動可能な状態にして測定点3に対する手動による測定を行なっても良いし(S10´)、微動機構41を操作して測定プローブ21を微少移動させて、測定プローブ21の球状接触子22を被測定物2の測定箇所に接触させるようにしても良い(S10)。微動機構41による測定プローブ21の微動移動は、具体的には、作業者が微動機構41のハンドル43を操作して案内軸32を回転させることによって行なわれる。ここで案内軸32が回転されると、案内軸32を挟み込んでいるブレーキ部33の固定盤側ローラ39、39及び可動盤側ローラ40は、案内軸32の方向に対して斜めに傾けられて設けられているため、案内軸32の回転に伴ってブレーキ部33が案内軸32上を軸方向に微少移動し、ブレーキ機構31a、31b、31cが取付けられている各軸移動機構11、12、13もブレーキ機構31a、31b、31cのブレーキ部33に付随して微少移動される。
【0033】
測定プローブ21の球状接触子22を被測定物2の測定箇所に接触させると、測定プローブ21のタッチ信号生成回路29によりタッチ信号が生成され、位置演算部51に出力される(S11)。タッチ信号が入力された位置演算部51は、タッチ信号が出力された瞬間の測定プローブ21の座標値を各軸カウンタ26、27、28によって計数された値から算出すると共に、算出した座標値を測定制御部57に出力する。測定制御部57は、入力された1点又は複数点の座標値から測定点3の座標値を算出し、これを表示制御部52に出力し、測定点3の座標値を測定データとして表示部54に表示させる(S12)。ここで、目的とする測定点が複数箇所存在する場合には、ブレーキ機構31a、31b、31cのクランプ状態を解除し、再度測定プローブ21を移動させて、S4からS12までの測定工程を繰り返し行なう。
【0034】
このように、上記のように構成された手動式三次元測定装置によれば、位置演算部51からの測定プローブ21の位置情報と目的とする測定点3の座標値との差分値を停止制御部53において常時算出し、この差分値に基づいて停止制御部53でブレーキ機構31a、31b、31cの作動制御を自動で行うことができ、これによって目的とする測定点3に測定プローブ21を正確に停止させることができる。
したがって、作業者は、実際の測定プローブ21を注視しながら操作する必要が無くなるので、表示部54に表示された被測定物2と測定プローブ21のイメージとを見ながら、被測定物2のイメージ上に強調表示された測定目標点3を目安に測定プローブ21を手動操作することができる。この結果、測定箇所を誤り無く、正確に測定することができ、しかも実際の測定プローブ21は目標点3に近づくと移動規制されるので、測定プローブ21と被測定物2とが勢いよく衝突する事態を回避することが出来る。
【0035】
また、ブレーキ機構31a、31b、31cは、ブレーキ駆動装置としてエアシリンダ35を用いるとともに、エアシリンダ35にエアーを供給するエアー源を低圧エアー源48と高圧エアー源49とのエアー圧力の異なる2種類のエアー源とすることにより、ブレーキ力を可変にする特別なアクチュエータを用いることなく、1次ブレーキ制御と2次ブレーキ制御とでブレーキ力を可変にすることができるため、多段階的にブレーキ制御が可能な手動式三次元測定装置を安価に提供することができる。
【0036】
第1実施形態に係る手動式三次元測定装置において、エアシリンダ35にエアーを供給するエアー源は、低圧エアー源48と高圧エアー源49との2種類としたが、これに限定されるものではなく、高圧エアー源49のみ又は異なるエアー圧力のエアー源を3種類以上設けるようにしても良い。この場合において、高圧エアー源49のみの場合は、エアシリンダ35によるブレーキ制御は、2次ブレーキ制御のみとなる。また、エアー源が3種類以上設けられる場合には、より多段階的なブレーキ制御が可能となる。
【0037】
また、エアシリンダ35にエアーを供給するエアー源を複数設ける構成ではなく、それぞれクランプ力の異なるエアシリンダを複数設ける構成としても良い。このように、クランプ力の異なるエアシリンダを複数設ける構成によっても、測定プローブ21の位置に応じて比較的クランプ力の弱いエアシリンダから順次作動させることにより、測定プローブ21が目的とする測定点に近づくにつれてブレーキ力を強くする多段階的なブレーキ制御が可能となる。
さらに、エアシリンダ35の多段階的なブレーキ制御は、エアシリンダ35の流入孔35a又は流出孔35bのいずれかにスピードコントローラを設け、このスピードコントローラによって行なわれるようにしても良く、これにより、より精度の高いブレーキ力の可変制御を行うことができる。
【0038】
次に、本発明の第2実施形態に係る手動式三次元測定装置及び三次元測定方法について詳細に説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る手動式三次元測定装置の構成を示す斜視図である。なお、第2実施形態に係る手動式三次元測定装置において、第1実施形態に係る手動式三次元測定装置の構成と共通する構成についての説明は割愛し、同一の符号を用いる。以下、第1実施形態に係る手動式三次元測定装置の構成と異なる構成についてのみ説明する。
【0039】
第2実施形態に係る手動式三次元測定装置が、第1の実施形態の装置と異なるのは、手動式三次元測定装置本体10´におけるブレーキ機構61a、61b、61cの構成である。なお、ブレーキ機構61b、61cは、ブレーキ機構61aと同様の構成であるため、ブレーキ機構61aについてのみ説明する。ここで、ブレーキ機構61a、61b、61cは、X軸スライダ19、コラム15及びZ軸スピンドル20の全てに取り付けられている必要はなく、X軸移動機構11、Z軸移動機構12及びY軸移動機構13の少なくとも一つの移動を制御可能に取り付けられていれば良い。
【0040】
ブレーキ機構61aは、図8に示すように、X軸ビーム17の前面17aの両端に設けられた一対の滑車62a、62bと、一方の滑車62aから他方の62bへ亘って掛け渡された環状のワイヤ63と、X軸ビーム17の前面17aに設けられ、ワイヤ63の一部を挟み込んで移動を規制することができるブレーキ部64と、ブレーキ部64によって移動が規制された状態のワイヤ63を回転方向に微少移動させることができる微動機構65とを備えている。
【0041】
ワイヤ63の上弦部分の一部は、連結部材66を介してX軸スライダ19と固定されている。これにより、X軸スライダ19がX軸方向に移動した場合には、ワイヤ63もX軸スライダ19の移動に付随して、滑車62a、62bを折り返し点としてX軸方向に移動する。
【0042】
ブレーキ部64は、X軸ビーム17の前面17aに取付けられた基盤67と、アームピン69によって基盤67に取付けられ、アームピン69を中心に回動可能なアーム68と、アーム68をアームピン69を中心に回動させるエアシリンダ70、72と、アーム68の一端に取り付けられた可動側ローラ75及びこの可動側ローラ75と相互にワイヤ63を挟み込んで移動を規制する固定側ローラ74とを備えている。
【0043】
アーム68は、T字状の左端68bから上方に延びる上端68aを有する形状からなり、上端68aに可動側ローラ75が設けられ、アーム68の下端68dには、可動側ローラ75をワイヤ63側に押圧する方向に付勢した状態でバネ部材76が装着されている。また、アーム68の右端68cには、連結部材77aを介して後述するエアシリンダ70の接続シャフト71の先端が連結されており、左端68bには、連結部材77bを介して後述するエアシリンダ72の接続シャフト73の先端が連結されている。
【0044】
エアシリンダ70は、基盤67に固定された支持盤78に取付けられ、支持盤78の図示しない貫通孔を介して進退する接続シャフト71を有し、内部にエアーを流入させる流入孔70aと、内部に流入されたエアーを大気に解放させる流出孔70bを有する。エアシリンダ70の流入孔70aは、流路79aを介して高圧エアー源80と接続されており、エアシリンダ70に設けられた接続シャフト71は、エアシリンダ70の内部にエアーが流入されるとエアシリンダ70側から支持盤78に形成された貫通孔を介して突出してアーム68の右端68cを押し上げ、エアシリンダ70の内部のエアーが大気に流出されると後退するように形成されている。高圧エアー源80からエアシリンダ70へのエアーの流入は、流路79aに設けられたバルブ81が解放されることにより行なわれる。
【0045】
エアシリンダ72は、エアシリンダ70よりも小型な比較的クランプ力の弱いエアシリンダであり、基盤67に固定された支持盤83に取付けられ、支持盤83の図示しない貫通孔を介して進退する接続シャフト73を有し、内部にエアーを流入させる流入孔72aと、内部に流入されたエアーを大気に解放させる流出孔72bを有する。エアシリンダ72の流入孔72aは、流路79bを介して高圧エアー源80と接続されており、流路79bには、高圧エアー源80からエアシリンダ72に流入されるエアーの供給量を調節するスピードコントローラ84が設けられている。エアシリンダ72に設けられた接続シャフト73は、エアシリンダ72の内部にエアーが流入されるとエアシリンダ72側から支持盤83に形成された貫通孔を介して突出し、アーム68の左端68bを押し上げ、エアシリンダ72の内部のエアーが大気に流出されると後退するように形成されている。高圧エアー源80からエアシリンダ72へのエアーの流入は、流路79bに設けられたバルブ82が解放されることにより行なわれる。
【0046】
固定側ローラ74は、アーム68の上端68aに設けられた可動側ローラ75と共にワイヤ63を挟み込むローラ部74aと、外周が後述するウォーム85と噛合するウォームホイール部74bとが一体として形成されている。また、固定側ローラ74は、基盤67上に取付けられており、アーム68のアームピン69を中心とした回転により可動側ローラ75がワイヤ63側に押し付けられた際に、可動側ローラ75と共にワイヤ63を挟み込んでクランプすることができる位置に設けられている。
【0047】
ブレーキ機構61a、61b、61cは、このように構成されることにより、エアシリンダ70及びエアシリンダ72にエアーが流入されていない状態においては、バネ部材76の収縮力によってアーム68がアームピン69を中心に時計回りに回動し、固定側ローラ74と可動側ローラ75とがワイヤ63をクランプすることによって、ワイヤ63及びワイヤ63に固定されているX軸スライダ19の移動が規制される。また、エアシリンダ72をオン状態(接続シャフト73が突出状態)とすることにより、クランプ力を段階的に増加させることもできる。また、エアシリンダ72がオフ状態で、エアシリンダ70に高圧エアー源80からエアーが流入されると、エアシリンダ70の接続シャフト71がアーム68の右端68cを押し上げるため、アーム68がアームピン69を中心に反時計回りに回動し、固定側ローラ74と可動側ローラ75とによるワイヤ63の移動の規制を解除することができる。
【0048】
微動機構65は、固定側ローラ74のウォームホイール部74bに噛合するウォーム85と、ウォーム85を正回転又は逆回転させるハンドル86と、ハンドル86とウォーム85とを連結するフレキシブル構造の連結部87とを備えている。
【0049】
次に、このように構成された第2実施形態に係る手動式三次元測定装置の動作について、図8及び図9に基づいて説明する。なお、第2実施形態に係る手動式三次元測定装置の動作において、第1実施形態に係る手動式三次元測定装置の動作と共通する動作についての説明は割愛し、異なる動作についてのみ説明する。
【0050】
まず、S101によって三次元座標測定の実行を開始する。この際、ブレーキ機構61a、61b、61cのエアシリンダ70及び72にエアーが流入されていないため、ブレーキ部64によりワイヤ63及び各軸移動機構11、12、13の移動は規制されている。次に、バルブ81を解放し、ブレーキ機構61a、61b、61cのエアシリンダ70に高圧エアー源80からエアーを流入する(S102)。これにより、ブレーキ機構61a、61b、61cによるワイヤ63及び各軸移動機構11、12、13の移動の規制が解除され、測定プローブ21の三次元測定空間内における移動が可能になる。図9のステップS103〜S108は、図5のステップS2〜S7と同様である。
【0051】
ブレーキ機構61a、61b、61cによる1次ブレーキ制御は、バルブ82を解放し、エアシリンダ72の内部に高圧エアー源80から流路79bを介してエアーが流入されることにより行なわれる(S109)。具体的には、エアシリンダ72にエアーが流入されることにより、エアシリンダ72の接続シャフト73がアーム68の左端68bを押し上げ、アーム68の上端68aに設けられている可動側ローラ75が固定側ローラ74に押し付けられるため、固定側ローラ74と可動側ローラ75とによりワイヤ63がクランプされ、各軸移動機構11、12、13にブレーキ力を与える。ここで、エアシリンダ72はエアシリンダ70よりもクランプ力が弱いため、固定側ローラ74と可動側ローラ75とによるワイヤ63のクランプは完全には行なわれておらず、作業者は1次ブレーキ制御による負荷を感じながら測定プローブ21を三次元測定空間内において移動させることができる。この際、エアシリンダ72に供給するエアーの供給量を流路79bに設けられたスピードコントローラ84で調節することにより、徐々にブレーキ力が増す可変ブレーキ制御とすることができる。
【0052】
1次ブレーキ制御がされている状態において、さらに測定プローブ21を目的とする測定点3へ移動させ、測定プローブ21が目的とする測定点3に到達したと判定された場合、すなわち、位置演算部51及び停止制御部53によって常時算出される差分値がゼロとなった場合には、ブレーキ機構61a、61b、61cによる2次ブレーキ制御が行なわれる(S110)。ブレーキ機構61a、61b、61cによる2次ブレーキ制御は、バルブ81を封鎖してエアシリンダ70の内部に流入されているエアーの供給を停止することにより行なわれる。具体的には、エアシリンダ70の内部に流入されているエアーの供給が停止されることにより、エアシリンダ70の接続シャフト71が後退し、アーム68の右端68cの押し上げが中止されるため、バネ部材76の収縮力によりアーム68がアームピン69を中心にさらに時計回りに回動し、固定側ローラ74と可動側ローラ75とによりワイヤ63をさらに強固に挟み込んで完全にクランプすることにより行なわれる。また、ワイヤ63が完全にクランプされることにより、ワイヤ63に固定されている各軸移動機構11、12、13の移動も完全に規制される。
【0053】
これにより、被測定物2の測定点3の位置が特定されるため、作業者は、図示しないクランプ状態解除スイッチを操作してブレーキ機構61a、61b、61cのクランプ状態を解除し、測定プローブ21を自由に移動可能な状態にして測定点3に対する手動による測定を行なっても良いし(S111´)、ブレーキ機構61a、61b、61cの微動機構65を操作して測定プローブ21を微少移動させて、測定プローブ21の球状接触子22を被測定物2の測定箇所に接触させるようにしても良い(S111)。微動機構65による測定プローブ21の微動移動は、具体的には、作業者が微動機構65のハンドル86を操作してウォーム85を正回転又は逆回転させることにより、固定側ローラ74のウォームホイール部74bを介してローラ部74aを回転させ、クランプしているワイヤ63を微少移動させる。また、ワイヤ63の微少移動に付随して各軸移動機構11、12、13も微少移動される。
【0054】
測定プローブ21の球状接触子22を被測定物2の測定箇所に接触させると、測定プローブ21のタッチ信号生成回路29によりタッチ信号が生成され、位置演算部51に出力される(S112)。タッチ信号が入力された位置演算部51は、タッチ信号が出力された瞬間の測定プローブ21の座標値を各軸カウンタ26、27、28によって計数された値から算出すると共に、算出した座標値を測定制御部57に出力する。測定制御部57は、入力された1点又は複数点の座標値から測定点3の座標値を算出し、これを表示制御部52に出力し、測定点3の座標値を測定データとして表示部54に表示させる(S113)。ここで、目的とする測定点が複数箇所存在する場合には、ブレーキ機構61a、61b、61cのクランプ状態を解除し、再度測定プローブ21を移動させて、S105からS113までの測定工程を繰り返し行なう。
【0055】
第2実施形態に係る手動式三次元測定装置において、ブレーキ機構61a、61b、61cのブレーキ制御は、エアシリンダ70及びエアシリンダ72により多段階的に行なわれるとしたが、これに限定されるものではなく、エアシリンダ70のみにより行なわれるとしても良い。
【0056】
また、本実施形態に係る手動式三次元測定装置において、エアシリンダ72には、高圧エアー源80からエアシリンダ72に流入されるエアーの供給量を調節するスピードコントローラ84が設けられているとしたが、これに限定されるものではなく、スピードコントローラ84を設けない構成としても良い。
【符号の説明】
【0057】
10 手動式三次元測定装置本体、21 測定プローブ、31、61 ブレーキ機構、33 ブレーキ部、41 微動機構、50 コントローラ、51 位置演算部、52 表示制御部、53 停止制御部、54 表示部、55 入力部、56 CADデータ記憶部、57 測定制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を測定する測定プローブと、
前記測定プローブを三次元座標測定空間内において作業者が手動操作で移動させることができるように移動自在に支持する移動機構と、
前記測定プローブの前記三次元座標空間内における位置情報を出力する位置情報出力部と、
前記被測定物の測定点の情報を含むCAD情報を入力しこのCAD情報と前記測定プローブの位置情報とに基づいて前記測定プローブと前記測定点との位置関係を逐次演算する位置演算部と、
前記位置演算部の演算結果に基づいて前記測定プローブを前記測定点で停止させるように前記移動機構による前記測定プローブの移動を規制する停止制御部と
を備えたことを特徴とする手動式三次元測定装置。
【請求項2】
前記被測定物及び測定プローブのイメージを表示する表示部と、
前記CAD情報に基づいて前記被測定物のイメージと測定点を特定するイメージとを生成すると共に、前記測定プローブの位置情報に基づいて前記測定プローブのイメージを生成し、これらイメージを前記被測定物と前記測定プローブの位置関係に応じて重ねて前記表示部に表示させる表示制御部と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の手動式三次元測定装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記測定プローブをX軸方向に移動可能に支持するX軸移動機構と、前記測定プローブをY軸方向に移動可能に支持するY軸移動機構と、前記測定プローブをZ軸方向に移動可能に支持するZ軸移動機構と、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の少なくとも1つの移動機構の移動を規制することにより、前記測定プローブの移動を規制するブレーキ機構とを備え、
前記停止制御部は、前記位置演算部の演算結果に基づいて前記ブレーキ機構に停止信号を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の手動式三次元測定装置。
【請求項4】
前記ブレーキ機構による前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の移動の規制は、前記測定プローブと前記測定点との距離に応じて段階的に行なわれることを特徴とする請求項3記載の手動式三次元測定装置。
【請求項5】
前記ブレーキ機構は、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の少なくとも1つの移動機構の移動を規制する、第1エアシリンダと前記第1エアシリンダよりもクランプ力の弱い第2エアシリンダとを備え、
前記ブレーキ機構による前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の段階的な移動の規制は、前記第1エアシリンダと前記第2エアシリンダとの作動に時間差を与えることにより行なわれることを特徴とする請求項4記載の手動式三次元測定装置。
【請求項6】
前記ブレーキ機構は、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の少なくとも1つの移動機構の移動を規制するエアシリンダを備え、
前記エアシリンダは、エアー圧力の異なる少なくとも2つのエアー源と選択的に接続され、
前記ブレーキ機構による前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の段階的な移動の規制は、前記エアシリンダへエアーを供給するエアー源を切り替えることにより行なわれることを特徴とする請求項4記載の手動式三次元測定装置。
【請求項7】
前記ブレーキ機構は、前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の少なくとも1つの移動機構の移動を規制するエアシリンダを備え、
前記エアシリンダには、該エアシリンダの内部にエアーを流入させる流入孔と、該エアシリンダの内部に流入したエアーを大気に放出させる流出孔とが形成され、
前記ブレーキ機構による前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の段階的な移動の規制は、前記エアシリンダの流入孔又は流出孔の少なくとも1の孔にエアーの供給量又は排出量を調節するスピードコントローラが設けられることにより行なわれることを特徴とする請求項4記載の手動式三次元装置。
【請求項8】
前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構及び前記Z軸移動機構の少なくとも1つの移動機構は、前記ブレーキ機構により移動が規制された状態において、規制された該移動機構を移動方向に微少移動させることができる微動機構を備えていることを特徴とする請求項3乃至7いずれか1項記載の手動式三次元測定装置。
【請求項9】
三次元座標測定空間内において作業者が手動で移動させることができるように移動自在に支持された測定プローブの位置情報を出力する位置情報出力ステップと、
前記測定プローブの位置情報に基づいて前記測定プローブの位置を演算する位置演算ステップと、
前記位置演算ステップの演算結果に基づいて前記測定プローブと測定点との距離を演算し、その演算結果に基づいて、前記停止位置における前記測定プローブの移動を制御する停止制御ステップと
を備えたことを特徴とする手動式三次元測定方法。
【請求項10】
作業者が手動で移動させることができるように構成され被測定物を測定する測定プローブを備える手動式三次元測定装置の測定用プログラムであって、
前記測定プローブの三次元座標測定空間内における位置情報を出力する位置情報出力ステップと、
前記測定プローブの位置情報に基づいて前記測定プローブの位置を演算する位置演算ステップと、
前記位置演算ステップの演算結果に基づいて前記測定プローブと測定点との距離を演算し、その演算結果に基づいて、前記停止位置における前記測定プローブの移動を制御する停止制御ステップと
をコンピュータに実行させるようにされたことを特徴とする手動式三次元測定用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−27616(P2011−27616A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175300(P2009−175300)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】