投写用レンズシステムおよびプロジェクタ装置
【課題】コンパクトで広角な投写用レンズシステムの提供。
【解決手段】スクリーン9の側から順に、負正正の3群の投写用レンズシステム10を提供する。第1のレンズ群G1は、第1の負メニスカスレンズL11と、第2の負メニスカスレンズL12と、負レンズL13から構成され、第2のレンズ群G2は、正レンズL21から構成され、第1のレンズ群G1の合成焦点距離f1と、第2の負メニスカスレンズL12の焦点距離f12と、負レンズL13の焦点距離f13と、第2の負メニスカスレンズL12の屈折率n12と、第2の負メニスカスレンズL12の面S3の曲率半径R12aと、正レンズL21の面S8の曲率半径R21bが以下の条件(1)〜(4)を満たす。1.0<|f12/f1|<4.0・・・(1)、5.0<|f13/f1|<9.0・・・(2)、1.75<n12<2.0・・・(3)、0.1<|R21b/R12a|<0.8・・・(4)
【解決手段】スクリーン9の側から順に、負正正の3群の投写用レンズシステム10を提供する。第1のレンズ群G1は、第1の負メニスカスレンズL11と、第2の負メニスカスレンズL12と、負レンズL13から構成され、第2のレンズ群G2は、正レンズL21から構成され、第1のレンズ群G1の合成焦点距離f1と、第2の負メニスカスレンズL12の焦点距離f12と、負レンズL13の焦点距離f13と、第2の負メニスカスレンズL12の屈折率n12と、第2の負メニスカスレンズL12の面S3の曲率半径R12aと、正レンズL21の面S8の曲率半径R21bが以下の条件(1)〜(4)を満たす。1.0<|f12/f1|<4.0・・・(1)、5.0<|f13/f1|<9.0・・・(2)、1.75<n12<2.0・・・(3)、0.1<|R21b/R12a|<0.8・・・(4)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ装置の投写用レンズシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、DMDなどの、光の反射方向を変えて画像を生成する複数の素子を備えた光変調器に適した、コンパクトで、広角の投写用レンズシステムを提供することが記載されている。そのため、特許文献1には、スクリーンの側から、負の第1のレンズ群と、正の第2のレンズ群を配置し、入射側を非テレセントリックとし、さらに、第2のレンズ群のスクリーンの側に、接合面が逆方向を向いた、屈折力が正の2枚貼合わせレンズのペアを配置し、ライトバルブの側に、屈折力が正の3枚貼合わせレンズを配置する構成により、像面湾曲を効果的に補正することができるので、コンパクトで、半画角が47度以上の広角な投写レンズシステムを提供できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−215476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレゼンテーション用や学校教育用などの用途において、さらに広角で、コンパクトな投写用レンズシステムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様の1つは、光変調器からの投影光をスクリーンに投写する投写用レンズシステムである。この投写用レンズシステムは、スクリーンの側から順に、負の屈折力を備えた第1のレンズ群と、正の屈折力を備えた第2のレンズ群と、正の屈折力を備えた第3のレンズ群とから構成され、第1のレンズ群は、スクリーンの側から順に配置されたスクリーンの側に凸の樹脂製の第1の負メニスカスレンズと、スクリーンの側に凸のガラス製の第2の負メニスカスレンズと、両凹の樹脂製の負レンズとから構成され、第1の負メニスカスレンズおよび負レンズの両面は非球面であり、第2のレンズ群は、両凸のガラス製の正レンズから構成され、第1のレンズ群の合成焦点距離f1と、第1のレンズ群の第2の負メニスカスレンズの焦点距離f12と、第1のレンズ群の負レンズの焦点距離f13と、第1のレンズ群の第2の負メニスカスレンズの屈折率n12と、第1のレンズ群の第2の負メニスカスレンズのスクリーンの側の面の曲率半径R12aと、第2のレンズ群の正レンズの光変調器の側の面の曲率半径R21bとが以下の条件(1)〜(4)を満たす。
1.0<|f12/f1|<4.0 ・・・(1)
5.0<|f13/f1|<9.0 ・・・(2)
1.75<n12<2.0 ・・・(3)
0.1<|R21b/R12a|<0.8・・・(4)
【0006】
この投写用レンズシステムは、負−正−正の3群構成であり、最もスクリーンの側、すなわち拡大共役側で比較的大口径となる第1のレンズ群の3枚のレンズを樹脂製、ガラス製、樹脂製とすることにより低コストで、広角であり、さらにコンパクトな投写用レンズシステムを提供している。すなわち、低コスト化のためにすべてのレンズを樹脂製にすると負の屈折力が不足するために、各レンズの径、特に最もスクリーンの側のレンズの径が大きくなり、コンパクトな投写用レンズシステムを提供することが難しい。一方、コンパクトにするために各レンズの焦点距離を短くすると、すべてのレンズが樹脂製であると曲率が大きくなり、収差の補正が難しくなるとともに温度によるレンズ性能の変動が大きくなり好ましくない。
【0007】
この投写用レンズシステムにおいては、第1のレンズ群の第2の負メニスカスレンズを屈折力の大きなガラス製とすることにより、前後の2枚の樹脂製のレンズの有効径を比較的小さくできる。さらに、前後の2枚の樹脂製のレンズの曲率を大きくせずに、コンパクトで収差補正も良好な投写用レンズシステムを提供できる。
【0008】
さらに、この投写用レンズシステムにおいては、ガラス製の第2の負メニスカスレンズのパワーを条件(1)に示すようにさらに強くすることにより、条件(2)に示すように樹脂製の負レンズのパワーをさらに弱くし、温度によるレンズ性能の変動、特に、バックフォーカスの変動を抑制している。また、パワーをさらに強くした第2の負メニスカスレンズにおいては、条件(3)に示すような高屈折率のガラス素材を用いることにより、曲率が極端に大きくなることを抑制し、収差の発生を抑えている。
【0009】
すなわち、この投写用レンズシステムにおいては、条件(1)の上限を超えると、第1のレンズ群のパワーの中に占める第2の負メニスカスレンズのパワーが弱くなり、条件(2)に示した程度に樹脂製の負レンズのパワーを第1のレンズ群のパワーに対して弱くすることが難しくなる。したがって、広角で、温度変動に起因するバックフォーカスの変動の小さなレンズシステムを提供することが困難となる。また、第2の負メニスカスレンズの屈折率n12は高いことが望ましいが、条件(3)の範囲に収めることにより、高分散となりすぎることを抑制し、色収差の補正が良好に行えるようにしている。
【0010】
さらに、この投写用レンズシステムにおいては、第2の負メニスカスレンズの強い負の屈折力により発散方向の収差が発生しやすい。このため、この投写用レンズシステムにおいては、第2の負メニスカスレンズのスクリーンの側の面に対して最も近い縮小共役側の面となる第2のレンズ群の正レンズの光変調器の側の面の曲率半径R21bを、第2の負メニスカスレンズのスクリーンの側の面の曲率半径R12aに対して小さく(曲率を大きく)、すなわち、条件(4)の範囲内として、第2のレンズ群の正レンズの光変調器の側の面により、逆方向(収束方向)の収差を発生させ、第2の負メニスカスレンズの収差を良好に補正できるようにしている。
【0011】
この投写用レンズシステムにおいては、さらに、以下の条件(1´)〜(4´)を満たすことが望ましい。
2.0<|f12/f1|<3.5 ・・・(1´)
6.0<|f13/f1|<8.0 ・・・(2´)
1.80<n12<2.0 ・・・(3´)
0.2<|R21b/R12a|<0.5・・・(4´)
【0012】
この投写用レンズシステムにおいては、第1のレンズ群の第1の負メニスカスレンズの中心厚みt11cと、第1のレンズ群の第1の負メニスカスレンズの光変調器の側の面の有効径端部の厚みt11eとが以下の条件(5)を満たすことが望ましい。
4.0≦t11e/t11c≦5.0 ・・・(5)
【0013】
この投写用レンズシステムにおいては、条件(5)の範囲内とすることにより、非点収差を含めた諸収差を良好に補正することができる。条件(5)の上限を超えると、第1の負メニスカスレンズの有効径端部の厚みt11eが中心厚みt11cに対して大きくなり、レンズ内で吸収される光線量の差が中心部と周辺部とで大きくなるため、周辺光量比の低下が著しくなる。一方、条件(5)の下限を超えると、第1の負メニスカスレンズの有効径端部の厚みt11eが中心厚みt11cに対して小さくなり、非点収差を含めた諸収差の補正が困難となる。
【0014】
第3のレンズ群は、第1の接合レンズと、第2の接合レンズと、両凸の第1の正レンズとを含むことが望ましい。第3のレンズ群に複数の接合レンズを配置することにより、縮小共役側における色収差補正能力を向上できる。このため、第1のレンズ群の色収差能力を良好に補完でき、第2の負メニスカスレンズとしてさらに高屈折率で高分散なガラス製のレンズを採用できる。したがって、第1のレンズ群をさらにコンパクトで広角に対応した構成にできる。
【0015】
第1の接合レンズは、第1の正レンズのスクリーンの側に1つの空気間隔を挟んで配置され、第2の接合レンズは、第1の正レンズの光変調器の側に少なくとも1つの空気間隔を挟んで配置されており、第1の接合レンズは、スクリーンの側から順に配置された両凸の正レンズおよび両凹の負レンズから構成され、第3のレンズ群の第1の接合レンズの負レンズの光変調器の側の面の曲率半径R32bと、第3のレンズ群の第1の正レンズのスクリーンの側の面の曲率半径R33aとが以下の条件(6)を満たすことが望ましい。
0.89<R32b/R33a<1.01・・・(6)
【0016】
この投写用レンズシステムにおいては、1つの空気間隔を挟んで隣接する負レンズおよび正レンズの対向する面の曲率半径を条件(6)の範囲内とすることにより、ほぼ等しい曲率半径を備えた2つの面を同じ向きに並べることができる。このため、コマ収差を含めた諸収差をいっそう良好に補正することができる。
【0017】
第2の接合レンズは、スクリーンの側から順に配置されたスクリーンの側に凸の負メニスカスレンズ、両凸の正レンズおよび光変調器の側に凸の負メニスカスレンズから構成され、さらに、第3のレンズ群は、第2の接合レンズの光変調器の側に配置された両凸の第2の正レンズを含んでいてもよい。
【0018】
第1の接合レンズは、第1の正レンズの光変調器の側に配置され、第2の接合レンズは、第1の接合レンズの光変調器の側に配置されており、第1の接合レンズは、スクリーンの側から順に配置されたスクリーンの側に凸の負メニスカスレンズおよび両凸の正レンズから構成され、第2の接合レンズは、スクリーンの側から順に配置された両凸の正レンズおよび光変調器の側に凸の負メニスカスレンズから構成され、さらに、第3のレンズ群は、第2の接合レンズの光変調器の側に配置された両凸の第2の正レンズを含んでいてもよい。
【0019】
本発明の異なる態様の1つは、上記の投写用レンズシステムと、照明用の光を変調して投写用レンズシステムに供給する光変調器とを有するプロジェクタ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る投写用レンズシステムを用いたプロジェクタ装置の概略構成を示す図。
【図2】第1の実施形態に係る投写用レンズシステムの概略構成を示す図。
【図3】第1の実施形態に係る投写用レンズシステムのレンズデータを示す図。
【図4】第1の実施形態に係る投写用レンズシステムの諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は非球面データを示す。
【図5】第1の実施形態に係る投写用レンズシステムの収差図であり、(a)は縦収差を示し、(b)は横収差を示す。
【図6】第2の実施形態に係る投写用レンズシステムの概略構成を示す図。
【図7】第2の実施形態に係る投写用レンズシステムのレンズデータを示す図。
【図8】第2の実施形態に係る投写用レンズシステムの諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は非球面データを示す。
【図9】第2の実施形態に係る投写用レンズシステムの収差図であり、(a)は縦収差を示し、(b)は横収差を示す。
【図10】第3の実施形態に係る投写用レンズシステムの概略構成を示す図。
【図11】第3の実施形態に係る投写用レンズシステムのレンズデータを示す図。
【図12】第3の実施形態に係る投写用レンズシステムの諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は非球面データを示す。
【図13】第3の実施形態に係る投写用レンズシステムの収差図であり、(a)は縦収差を示し、(b)は横収差を示す。
【図14】第4の実施形態に係る投写用レンズシステムの概略構成を示す図。
【図15】第4の実施形態に係る投写用レンズシステムのレンズデータを示す図。
【図16】第4の実施形態に係る投写用レンズシステムの諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は非球面データを示す。
【図17】第4の実施形態に係る投写用レンズシステムの収差図であり、(a)は縦収差を示し、(b)は横収差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、本発明の実施形態に係る典型的な投写用レンズシステムを用いたプロジェクタ装置の概略構成を示している。プロジェクタ(プロジェクタ装置)1は、光変調器(ライトバルブ)2と、ライトバルブ2に変調用の照明光91を照射する光照射システム3と、ライトバルブ2により有効な方向に反射された投影光92をスクリーン9に投写する投写用レンズシステム10とを備えている。本例のプロジェクタ1は、ライトバルブ2としてDMD(デジタルミラーデバイス)を採用した単板式のビデオプロジェクタであり、光照射システム3は、ハロゲンランプなどの白色光源4と、円盤型の回転色分割フィルタ(カラーホイール)5とを備えている。このため、DMD(ライトバルブ)2には、赤、緑、青の3原色が時分割で照射される。そして、それぞれの色の光が照射されるタイミングで個々の画素に対応する素子を制御することによりカラー画像が表示される。光照射システム3は、さらに、白色光源4からの光を集光して非テレセントリックな照明光91を、ミラー6などを介してDMD2に出力する照明レンズシステム7を備えている。
【0022】
第1の実施形態
図2に、第1の実施形態に係る投写用レンズシステム10を示している。この投写用レンズシステム10は、スクリーン9の側から順に、負の屈折力を備えた第1のレンズ群G1と、正の屈折力を備えた第2のレンズ群G2と、正の屈折力を備えた第3のレンズ群G3とから構成されている。
【0023】
最もスクリーン9の側の第1のレンズ群G1は、全体が負の屈折力を備えたレンズ群であり、スクリーン9の側から順に配置された、スクリーン9の側に凸の樹脂製の第1の負メニスカスレンズL11と、スクリーン9の側に凸のガラス製の第2の負メニスカスレンズL12と、両凹の樹脂製の負レンズL13とから構成されている。第1の負メニスカスレンズL11の両面、すなわちスクリーン9の側の面S1およびDMD2の側の面S2は非球面である。さらに、負レンズL13の両面、すなわちスクリーン9の側の面S5およびDMD2の側の面S6も非球面である。第1のレンズ群G1の第1の負メニスカスレンズL11は、投写用レンズシステム10の中で最も大きな有効径(口径)のレンズとなる。
【0024】
第2のレンズ群G2は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、両凸のガラス製の正レンズL21から構成されている。
【0025】
最もDMD2の側の第3のレンズ群G3は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、スクリーン9の側から順に配置された、2枚貼合の第1の接合レンズ(バルサムレンズ、ダブレット)L3B1と、両凸の正レンズ(第1の正レンズ)L33と、3枚貼合の第2の接合レンズ(バルサムレンズ、トリプレット)L3B2とから構成されている。第1の接合レンズL3B1は、スクリーン9の側から順に配置された両凸の正レンズL31と、両凹の負レンズL32とから構成されている。第2の接合レンズL3B2は、スクリーン9の側から順に配置された両凸の正レンズL34と、両凹の負レンズL35と、両凸の正レンズL36とから構成されている。第3のレンズ群G3は、投写用レンズシステム10の中で最も小さな有効径(口径)の正レンズL34を備えている。第3のレンズ群G3のスクリーン9の側には、フレア絞りFSが配置されており、フレアやゴーストの原因となる散乱光(不要光)を遮断している。第3のレンズ群G3のDMD2の側には、1枚のガラス製のカバーガラスCGが配置されている。なお、カバーガラスCGは1枚に限定されず、複数枚配置されていてもよい。
【0026】
本例の投写用レンズシステム10は、スクリーン9の側から順に、負−正−正の屈折力を備えた3つのレンズ群G1〜G3にグループ化された10枚のレンズL11〜L13、L21およびL31〜L36により構成されている。この投写用レンズシステム10は、変倍を行わない単焦点タイプのレンズシステムであり、第3のレンズ群G3は動かず固定されており、第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2が光軸100の方向に動くことにより焦点調整(フォーカシング)を行う。
【0027】
この投写用レンズシステム10は、最もスクリーン9の側、すなわち拡大共役側10aで比較的大口径となる第1のレンズ群G1の3枚のレンズL11〜L13を順に樹脂製、ガラス製、樹脂製とすることにより低コストで、広角であり、さらにコンパクトな投写用レンズシステム10を提供している。すなわち、低コスト化のためにすべてのレンズを樹脂製にすると負の屈折力が不足するために、各レンズの径、特に最もスクリーンの側のレンズの径が大きくなり、コンパクトな投写用レンズシステムを提供することが難しい。一方、コンパクトにするために各レンズの焦点距離を短くすると、すべてのレンズが樹脂製であると曲率が大きくなり、収差の補正が難しくなるとともに温度によるレンズ性能の変動が大きくなり好ましくない。
【0028】
この投写用レンズシステム10においては、第1のレンズ群G1の第2の負メニスカスレンズL12を屈折力の大きなガラス製とすることにより、前後の2枚の樹脂製のレンズL11およびL13の有効径を比較的小さくできる。さらに、前後の2枚の樹脂製のレンズL11およびL13の曲率を大きくせずに、コンパクトで収差補正も良好な投写用レンズシステム10を提供できる。
【0029】
この投写用レンズシステム10においては、第1のレンズ群G1の合成焦点距離f1と、第1のレンズ群G1の第2の負メニスカスレンズL12の焦点距離f12と、第1のレンズ群G1の負レンズL13の焦点距離f13と、第1のレンズ群G1の第2の負メニスカスレンズL12の屈折率n12と、第1のレンズ群G1の第2の負メニスカスレンズL12のスクリーン9の側の面S3の曲率半径R12aと、第2のレンズ群G2の正レンズL21のDMD2の側の面S8の曲率半径R21bとが以下の条件(1)〜(4)を満たすように設計されている。
1.0<|f12/f1|<4.0 ・・・(1)
5.0<|f13/f1|<9.0 ・・・(2)
1.75<n12<2.0 ・・・(3)
0.1<|R21b/R12a|<0.8・・・(4)
【0030】
この投写用レンズシステム10においては、ガラス製の第2の負メニスカスレンズL12のパワーを条件(1)に示すようにさらに強くすることにより、条件(2)に示すように樹脂製の負レンズL13のパワーをさらに弱くし、温度によるレンズ性能の変動、特に、バックフォーカスの変動を抑制している。また、パワーをさらに強くした第2の負メニスカスレンズL12においては、条件(3)に示すような高屈折率のガラス素材を用いることにより、曲率が極端に大きくなることを抑制し、収差の発生を抑えている。
【0031】
すなわち、この投写用レンズシステム10においては、条件(1)の上限を超えると、第1のレンズ群G1のパワーの中に占める第2の負メニスカスレンズL12のパワーが弱くなり、条件(2)に示した程度に樹脂製の負レンズL13のパワーを第1のレンズ群G1のパワーに対して弱くすることが難しくなる。したがって、広角で、温度変動に起因するバックフォーカスの変動の小さな投写用レンズシステムを提供することが困難となる。また、第2の負メニスカスレンズL12の屈折率n12は高いことが望ましいが、条件(3)の範囲に収めることにより、高分散となりすぎることを抑制し、色収差の補正が良好に行えるようにしている。
【0032】
さらに、この投写用レンズシステム10の第2の負メニスカスレンズL12は、強い負の屈折力を備えているので発散方向の収差が発生しやすい。このため、スクリーン9の側に凸の第2の負メニスカスレンズL12のスクリーン9の側の面S3に最も近い入射側(DMD2)の側の面で、面S3と反対側に凸の、すなわち、DMD2の側に凸の第2のレンズ群G2の正レンズL21のDMD2の側の面S8の曲率半径R21bを、面S3の曲率半径R12aに対して小さくしている。したがって、正レンズL21の面S8により逆方向(収束方向)の収差を発生させることにより、第2の負メニスカスレンズL12の収差を良好に補正できる。
【0033】
なお、条件(1)の上限を超えると、第2の負メニスカスレンズL12のパワー(屈折力)が第1のレンズ群G1に対して弱くなり、負の屈折力が不足する。このため、投写用レンズシステム10を広角化(広画角化)することが困難となる。同様に、条件(2)の上限を超えると、負レンズL13のパワーが第1のレンズ群G1に対して弱くなり、広角化が困難となる。一方、条件(2)の下限を超えると、負レンズL13のパワーが第1のレンズ群G1に対して強くなり、樹脂化した負レンズL13の温度変動に起因するバックフォーカスの変動を抑制することが困難となる。条件(3)の上限を超えると、第2の負メニスカスレンズL12が高分散となり、色収差の補正が困難となる。一方、条件(3)の下限を超えると、第2の負メニスカスレンズL12のパワーが弱くなり、投写用レンズシステム10を広角化することが困難となる。また、条件(4)の上限を超えると、第2の負メニスカスレンズL21により発生する収差の補正が難しくなる。一方、条件(4)の下限を超えると、正レンズL21の面S8のパワーが強くなり収差の補正が困難となる。したがって、いずれの場合もコマ収差を含めた諸収差が増大する傾向になる。
【0034】
条件(1)の上限は、3.7であることが望ましく、3.5であることがさらに望ましく、3.4であることがいっそう望ましい。また、条件(1)の下限は、2.0であることが望ましい。
【0035】
条件(2)の上限は、8.0であることが望ましい。また、条件(2)の下限は、5.5であることが望ましく、6.0であることがさらに望ましく、6.4であることがいっそう望ましい。
【0036】
条件(3)の上限は、1.9であることが望ましい。また、条件(3)の下限は、1.78であることが望ましく、1.80であることがいっそう望ましい。
【0037】
条件(4)の上限は、0.6であることが望ましく、0.5であることがさらに望ましく、0.4であることがいっそう望ましい。また、条件(4)の下限は、0.2であることが望ましい。
【0038】
このように、入射側10bから出射側10aに向けて順に、パワーの強いガラス製の正レンズL21と、パワーの弱い樹脂製の負レンズL13と、パワーの強いガラス製の負メニスカスレンズL12と、パワーの弱い樹脂製の負メニスカスレンズL11とを配置した構成は、投写用レンズシステム10の広角化と収差補正を図るのに極めて有効である。
【0039】
さらに、この投写用レンズシステム10においては、第1のレンズ群G1の第1の負メニスカスレンズL11の光軸100の中心厚みt11cと、第1のレンズ群G1の第1の負メニスカスレンズL11のDMD2の側の面S2の有効径端部の厚みt11eとが以下の条件(5)を満たすように設計されている。
4.0≦t11e/t11c≦5.0 ・・・(5)
【0040】
この投写用レンズシステム10においては、条件(5)の範囲内とすることにより、非点収差を含めた諸収差を良好に補正することができる。条件(5)の上限を超えると、第1の負メニスカスレンズL11の有効径端部の厚みt11eが中心厚みt11cに対して大きくなり、レンズ内で吸収される光線量の差が中心部と周辺部とで大きくなるため、周辺光量比の低下が著しくなる。一方、条件(5)の下限を超えると、第1の負メニスカスレンズL11の有効径端部の厚みt11eが中心厚みt11cに対して小さくなり、非点収差を含めた諸収差の補正が困難となる。
【0041】
この投写用レンズシステム10においては、ガラス製の第2の負メニスカスレンズL12のパワーを強くするために、条件(3)により第2の負メニスカスレンズL12の屈折率n12を高く設定しており、高屈折率(高分散)の第2の負メニスカスレンズL12により色収差の補正が不足しやすい。このため、第3のレンズ群G3に2つの接合レンズL3B1およびL3B2を配置することにより、拡大共役側10aにおける色収差補正の不足を縮小共役側10bにおいて補っている。したがって、色収差を含めた諸収差が良好に補正された投写用レンズシステム10を提供できる。
【0042】
図2に示すように、この投写用レンズシステム10は、スクリーン9の側から順に、負−正−正の屈折力を備えた3つのレンズ群G1〜G3にグループ化された10枚のレンズL11〜L36により構成されている。第3のレンズ群G3は、スクリーン9の側から順に配置された、2枚貼合の第1の接合レンズL3B1と、両凸の第1の正レンズ(正レンズ)L33と、3枚貼合の接合レンズL3B2とから構成されている。第1の接合レンズL3B1は、正レンズL33のスクリーン9の側に他のレンズを挟まず1つの空気間隔d11のみを挟んで配置されており、第2の接合レンズL3B2は、正レンズL33のDMD2の側に他のレンズを挟まず1つの空気間隔d13のみを挟んで配置されている。
【0043】
この投写用レンズシステム10においては、第3のレンズ群G3の第1の接合レンズL3B1の負レンズL32のDMD2の側の面S11の曲率半径R32bと、第3のレンズ群G3の正レンズL33のスクリーン9の側の面S12の曲率半径R33aとが以下の条件(6)を満たすように設計されている。
0.89<R32b/R33a<1.01 ・・・(6)
【0044】
この投写用レンズシステム10においては、第1の接合レンズL3B1の負レンズL32と、正レンズL33との対向する面S11と面S12との曲率半径を条件(6)の範囲内とすることにより、ほぼ等しい曲率半径を備えた2つの面S11およびS12を同じ向きに並べ、さらにそれらの面S11および面S12を接合するのではなく、最少空気間隔またはそれに近い狭い空気間隔d11、本例では0.80mmを隔てて配置している。このため、トリプレットに近い色収差の補正能力と、それに加えてコマ収差を含めた諸収差の補正能力とを得ることができる。
【0045】
図3に、投写用レンズシステム10の各レンズのレンズデータを示している。図4に、投写用レンズシステム10の諸数値を示している。レンズデータにおいて、Riはスクリーン9の側から順に並んだ各レンズ(各レンズ面)の曲率半径(mm)、diはスクリーン9の側から順に並んだ各レンズ面の間の距離(mm)、Diはスクリーン9の側から順に並んだ各レンズ面の有効径(mm)、ndはスクリーン9の側から順に並んだ各レンズの屈折率(d線)、νdはスクリーン9の側から順に並んだ各レンズのアッベ数(d線)を示している。図3において、Flatは平面を示している。図4(b)において、「En」は、「10のn乗」を意味する。たとえば、「E−06」は、「10の−6乗」を意味し、「E−11」は、「10の−11乗」を意味する。以降の実施形態においても同様である。
【0046】
また、第1のレンズ群G1の最もスクリーン9の側に配置された第1の負メニスカスレンズL11の両面S1およびS2と、第1のレンズ群G1の最もDMD2の側に配置された負レンズL13の両面S5およびS6とは、非球面である。非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、図4(b)の係数K、A、B、C、DおよびEを用いて次式で表わされる。以降の実施形態においても同様である。
X=(1/R)Y2/[1+{1−(1+K)(1/R)2Y2}1/2]
+AY4+BY6+CY8+DY10+EY12
【0047】
本例のズームレンズシステム10の上述した条件(1)〜(6)を与える各式の値は、以下のようになる。
条件(1) |f12/f1|=3.4
条件(2) |f13/f1|=6.0
条件(3) n12=1.8010
条件(4) |R21b/R12a|=0.31
条件(5) t11e/t11c=4.0(なお、t11eは16.0mmであり、t11cは4.0mmである。)
条件(6) R32b/R33a=1.009
【0048】
図5に、投写用レンズシステム10の縦収差図および横収差図を示している。図5に示すように、いずれの収差も良好に補正されており、高画質の大画像をスクリーン9に投写できる。なお、球面収差は、波長630nm(点線)と、波長550nm(実線)と、波長460nm(破線)とを示している。また、非点収差およびコマ収差においては、タンジェンシャル光線(T)およびサジタル光線(S)の収差をそれぞれ示している。以降の実施形態においても同様である。
【0049】
したがって、第1の実施形態に係る投写用レンズシステム10は、10枚構成で最大径が70mm程度という簡易でコンパクトな構成でありながら、全画角が114.2度(半画角が57.1度)、焦点距離が7.11と広角で、F値が2.79と明るく鮮明な画像を投影できる、性能およびコストのバランスが取れた投写用レンズシステム10の一例である。
【0050】
第2の実施形態
図6に、第2の実施形態に係る投写用レンズシステム20を示している。この投写用レンズシステム20も、スクリーン9の側から順に、負−正−正の屈折力を備えた3つのレンズ群G1〜G3にグループ化された10枚のレンズL11〜L13、L21およびL31〜L36により構成されている。これらのレンズ群G1〜G3の構成、およびレンズ群G1〜G3に含まれる各レンズの形状は、第1の実施形態と共通するため、個々のレンズの詳しい説明は省略する。以降の実施形態においても同様である。
【0051】
図7に、投写用レンズシステム20の各レンズのレンズデータを示している。図8に、投写用レンズシステム20の諸数値を示している。本例のズームレンズシステム20の上述した条件(1)〜(6)を与える各式の値は、以下のようになる。
条件(1) |f12/f1|=3.3
条件(2) |f13/f1|=6.5
条件(3) n12=1.8010
条件(4) |R21b/R12a|=0.29
条件(5) t11e/t11c=5.0(なお、t11eは15.0mmであり、t11cは3.0mmである。)
条件(6) R32b/R33a=1.008
【0052】
図9に、投写用レンズシステム20の縦収差図および横収差図を示している。図9に示すように、いずれの収差も良好に補正されており、高画質の大画像をスクリーン9に投写できる。
【0053】
このように、第2の実施形態に係る投写用レンズシステム20は、第1の実施形態よりも第1の負メニスカスレンズL11の中心厚みt11cと有効径端部の厚みt11eとの比を大きくして条件(5)を向上させている。このため、F値が2.3とさらに明るく鮮明な画像を得ることができる高性能な投写用レンズシステム20を提供できる。
【0054】
第3の実施形態
図10に、第3の実施形態に係る投写用レンズシステム30を示している。この投写用レンズシステム30も、スクリーン9の側から順に、負−正−正の屈折力を備えた3つのレンズ群G1〜G3にグループ化された10枚のレンズL11〜L13、L21およびL31〜L36により構成されている。
【0055】
第3のレンズ群G3は、スクリーン9の側から順に配置された、両凸の正レンズL31と、2枚貼合の第1の接合レンズ(バルサムレンズ、ダブレット)L3B1と、2枚貼合の第2の接合レンズ(バルサムレンズ、ダブレット)L3B2と、両凸の正レンズ(第2の正レンズ)L36とから構成されている。第1の接合レンズL3B1は、スクリーン9の側から順に配置された、スクリーン9の側に凸の負メニスカスレンズL32と、両凸の正レンズL33とから構成されている。第2の接合レンズL3B2は、スクリーン9の側から順に配置された両凸の正レンズL34と、DMD2の側に凸の負メニスカスレンズL35とから構成されている。
【0056】
このように、この投写用レンズシステム30においては、上記の実施形態とは異なり、第3のレンズ群G3にいずれも2枚貼合の2つの接合レンズL3B1およびL3B2を配置している。
【0057】
図11に、投写用レンズシステム30の各レンズのレンズデータを示している。図12に、投写用レンズシステム30の諸数値を示している。本例のズームレンズシステム30の上述した条件(1)〜(5)を与える各式の値は、以下のようになる。
条件(1) |f12/f1|=3.6
条件(2) |f13/f1|=6.1
条件(3) n12=1.8010
条件(4) |R21b/R12a|=0.37
条件(5) t11e/t11c=4.0(なお、t11eは16.0mmであり、t11cは4.0mmである。)
【0058】
図13に、投写用レンズシステム30の縦収差図および横収差図を示している。図13に示すように、いずれの収差も良好に補正されており、高画質の大画像をスクリーン9に投写できる。
【0059】
したがって、第3の実施形態に係る投写用レンズシステム30は、第3のレンズ群G3の第1の接合レンズL3B1および第2の接合レンズL3B2の貼り合わせるレンズの組み合わせを変更することにより、3枚貼合の接合レンズを省略した、低コストの投写用レンズシステム30の一例である。
【0060】
第4の実施形態
図14に、第4の実施形態に係る投写用レンズシステム40を示している。この投写用レンズシステム40は、スクリーン9の側から順に、負−正−正の屈折力を備えた3つのレンズ群G1〜G3にグループ化された11枚のレンズL11〜L13、L21およびL31〜L37により構成されている。この投写用レンズシステム40は、フライアイレンズなどのインテグレータとTIRプリズムを用いることにより、入射する投影光92をテレセントリックの状態にしたタイプのレンズシステムである。
【0061】
第3のレンズ群G3は、スクリーン9の側から順に配置された、2枚貼合の第1の接合レンズL3B1と、両凸の正レンズ(第1の正レンズ)L33と、3枚貼合の接合レンズL3B2と、両凸の正レンズ(第2の正レンズ)L37とから構成されている。第1の接合レンズL3B1は、スクリーン9の側から順に配置された両凸の正レンズL31と、両凹の負レンズL32とから構成されている。第2の接合レンズL3B2は、スクリーン9の側から順に配置された、スクリーン9の側に凸の負メニスカスレンズL34と、両凸の正レンズL35と、DMD2の側に凸の負メニスカスレンズL36とから構成されている。
【0062】
このように、この投写用レンズシステム40においては、上記の実施形態とは異なり、第3のレンズ群G3の第2の接合レンズL3B2のDMD2の側に正レンズ(第2の正レンズ)L37を追加して配置している。第3のレンズ群G3のスクリーン9の側には、絞りSが配置されている。第3のレンズ群G3のDMD2の側には、厚みd20が大きい、本例では25.00mmの1枚のガラス製のカバーガラスCGが配置されている。
【0063】
図15に、投写用レンズシステム40の各レンズのレンズデータを示している。図16に、投写用レンズシステム40の諸数値を示している。本例のズームレンズシステム40の上述した条件(1)〜(6)を与える各式の値は、以下のようになる。
条件(1) |f12/f1|=3.5
条件(2) |f13/f1|=6.5
条件(3) n12=1.8010
条件(4) |R21b/R12a|=0.30
条件(5) t11e/t11c=5.0(なお、t11eは15.0mmであり、t11cは3.0mmである。)
条件(6) R32b/R33a=0.89
【0064】
図17に、投写用レンズシステム40の縦収差図および横収差図を示している。図17に示すように、いずれの収差も良好に補正されており、高画質の大画像をスクリーン9に投写できる。
【0065】
したがって、第4の実施形態に係る投写用レンズシステム40は、第3のレンズ群G3の第2の接合レンズL3B2のDMD2の側に正レンズL37を追加したことにより、入射する投影光92をいっそうテレセントリックまたはそれに近い状態にできるので、プロジェクタ1が光軸100の方向にわずかに移動しても鮮明な画像を得ることができる投写用レンズシステム40の一例である。
【0066】
なお、本発明はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に規定されたものを含む。また、本発明の投写用レンズシステム10(20、30、40)は、白色光源4をダイクロイックフィルタ(ミラー)などにより3色に分離させる3板式のプロジェクタに搭載することもできる。また、光変調器2はLCD(液晶パネル)であってもよく、各色の画像を時分割で再生する単板式であっても、ダイクロイックプリズムなどにより各色の画像を合成するタイプであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 プロジェクタ
10、20、30、40 投写用レンズシステム
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ装置の投写用レンズシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、DMDなどの、光の反射方向を変えて画像を生成する複数の素子を備えた光変調器に適した、コンパクトで、広角の投写用レンズシステムを提供することが記載されている。そのため、特許文献1には、スクリーンの側から、負の第1のレンズ群と、正の第2のレンズ群を配置し、入射側を非テレセントリックとし、さらに、第2のレンズ群のスクリーンの側に、接合面が逆方向を向いた、屈折力が正の2枚貼合わせレンズのペアを配置し、ライトバルブの側に、屈折力が正の3枚貼合わせレンズを配置する構成により、像面湾曲を効果的に補正することができるので、コンパクトで、半画角が47度以上の広角な投写レンズシステムを提供できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−215476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレゼンテーション用や学校教育用などの用途において、さらに広角で、コンパクトな投写用レンズシステムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様の1つは、光変調器からの投影光をスクリーンに投写する投写用レンズシステムである。この投写用レンズシステムは、スクリーンの側から順に、負の屈折力を備えた第1のレンズ群と、正の屈折力を備えた第2のレンズ群と、正の屈折力を備えた第3のレンズ群とから構成され、第1のレンズ群は、スクリーンの側から順に配置されたスクリーンの側に凸の樹脂製の第1の負メニスカスレンズと、スクリーンの側に凸のガラス製の第2の負メニスカスレンズと、両凹の樹脂製の負レンズとから構成され、第1の負メニスカスレンズおよび負レンズの両面は非球面であり、第2のレンズ群は、両凸のガラス製の正レンズから構成され、第1のレンズ群の合成焦点距離f1と、第1のレンズ群の第2の負メニスカスレンズの焦点距離f12と、第1のレンズ群の負レンズの焦点距離f13と、第1のレンズ群の第2の負メニスカスレンズの屈折率n12と、第1のレンズ群の第2の負メニスカスレンズのスクリーンの側の面の曲率半径R12aと、第2のレンズ群の正レンズの光変調器の側の面の曲率半径R21bとが以下の条件(1)〜(4)を満たす。
1.0<|f12/f1|<4.0 ・・・(1)
5.0<|f13/f1|<9.0 ・・・(2)
1.75<n12<2.0 ・・・(3)
0.1<|R21b/R12a|<0.8・・・(4)
【0006】
この投写用レンズシステムは、負−正−正の3群構成であり、最もスクリーンの側、すなわち拡大共役側で比較的大口径となる第1のレンズ群の3枚のレンズを樹脂製、ガラス製、樹脂製とすることにより低コストで、広角であり、さらにコンパクトな投写用レンズシステムを提供している。すなわち、低コスト化のためにすべてのレンズを樹脂製にすると負の屈折力が不足するために、各レンズの径、特に最もスクリーンの側のレンズの径が大きくなり、コンパクトな投写用レンズシステムを提供することが難しい。一方、コンパクトにするために各レンズの焦点距離を短くすると、すべてのレンズが樹脂製であると曲率が大きくなり、収差の補正が難しくなるとともに温度によるレンズ性能の変動が大きくなり好ましくない。
【0007】
この投写用レンズシステムにおいては、第1のレンズ群の第2の負メニスカスレンズを屈折力の大きなガラス製とすることにより、前後の2枚の樹脂製のレンズの有効径を比較的小さくできる。さらに、前後の2枚の樹脂製のレンズの曲率を大きくせずに、コンパクトで収差補正も良好な投写用レンズシステムを提供できる。
【0008】
さらに、この投写用レンズシステムにおいては、ガラス製の第2の負メニスカスレンズのパワーを条件(1)に示すようにさらに強くすることにより、条件(2)に示すように樹脂製の負レンズのパワーをさらに弱くし、温度によるレンズ性能の変動、特に、バックフォーカスの変動を抑制している。また、パワーをさらに強くした第2の負メニスカスレンズにおいては、条件(3)に示すような高屈折率のガラス素材を用いることにより、曲率が極端に大きくなることを抑制し、収差の発生を抑えている。
【0009】
すなわち、この投写用レンズシステムにおいては、条件(1)の上限を超えると、第1のレンズ群のパワーの中に占める第2の負メニスカスレンズのパワーが弱くなり、条件(2)に示した程度に樹脂製の負レンズのパワーを第1のレンズ群のパワーに対して弱くすることが難しくなる。したがって、広角で、温度変動に起因するバックフォーカスの変動の小さなレンズシステムを提供することが困難となる。また、第2の負メニスカスレンズの屈折率n12は高いことが望ましいが、条件(3)の範囲に収めることにより、高分散となりすぎることを抑制し、色収差の補正が良好に行えるようにしている。
【0010】
さらに、この投写用レンズシステムにおいては、第2の負メニスカスレンズの強い負の屈折力により発散方向の収差が発生しやすい。このため、この投写用レンズシステムにおいては、第2の負メニスカスレンズのスクリーンの側の面に対して最も近い縮小共役側の面となる第2のレンズ群の正レンズの光変調器の側の面の曲率半径R21bを、第2の負メニスカスレンズのスクリーンの側の面の曲率半径R12aに対して小さく(曲率を大きく)、すなわち、条件(4)の範囲内として、第2のレンズ群の正レンズの光変調器の側の面により、逆方向(収束方向)の収差を発生させ、第2の負メニスカスレンズの収差を良好に補正できるようにしている。
【0011】
この投写用レンズシステムにおいては、さらに、以下の条件(1´)〜(4´)を満たすことが望ましい。
2.0<|f12/f1|<3.5 ・・・(1´)
6.0<|f13/f1|<8.0 ・・・(2´)
1.80<n12<2.0 ・・・(3´)
0.2<|R21b/R12a|<0.5・・・(4´)
【0012】
この投写用レンズシステムにおいては、第1のレンズ群の第1の負メニスカスレンズの中心厚みt11cと、第1のレンズ群の第1の負メニスカスレンズの光変調器の側の面の有効径端部の厚みt11eとが以下の条件(5)を満たすことが望ましい。
4.0≦t11e/t11c≦5.0 ・・・(5)
【0013】
この投写用レンズシステムにおいては、条件(5)の範囲内とすることにより、非点収差を含めた諸収差を良好に補正することができる。条件(5)の上限を超えると、第1の負メニスカスレンズの有効径端部の厚みt11eが中心厚みt11cに対して大きくなり、レンズ内で吸収される光線量の差が中心部と周辺部とで大きくなるため、周辺光量比の低下が著しくなる。一方、条件(5)の下限を超えると、第1の負メニスカスレンズの有効径端部の厚みt11eが中心厚みt11cに対して小さくなり、非点収差を含めた諸収差の補正が困難となる。
【0014】
第3のレンズ群は、第1の接合レンズと、第2の接合レンズと、両凸の第1の正レンズとを含むことが望ましい。第3のレンズ群に複数の接合レンズを配置することにより、縮小共役側における色収差補正能力を向上できる。このため、第1のレンズ群の色収差能力を良好に補完でき、第2の負メニスカスレンズとしてさらに高屈折率で高分散なガラス製のレンズを採用できる。したがって、第1のレンズ群をさらにコンパクトで広角に対応した構成にできる。
【0015】
第1の接合レンズは、第1の正レンズのスクリーンの側に1つの空気間隔を挟んで配置され、第2の接合レンズは、第1の正レンズの光変調器の側に少なくとも1つの空気間隔を挟んで配置されており、第1の接合レンズは、スクリーンの側から順に配置された両凸の正レンズおよび両凹の負レンズから構成され、第3のレンズ群の第1の接合レンズの負レンズの光変調器の側の面の曲率半径R32bと、第3のレンズ群の第1の正レンズのスクリーンの側の面の曲率半径R33aとが以下の条件(6)を満たすことが望ましい。
0.89<R32b/R33a<1.01・・・(6)
【0016】
この投写用レンズシステムにおいては、1つの空気間隔を挟んで隣接する負レンズおよび正レンズの対向する面の曲率半径を条件(6)の範囲内とすることにより、ほぼ等しい曲率半径を備えた2つの面を同じ向きに並べることができる。このため、コマ収差を含めた諸収差をいっそう良好に補正することができる。
【0017】
第2の接合レンズは、スクリーンの側から順に配置されたスクリーンの側に凸の負メニスカスレンズ、両凸の正レンズおよび光変調器の側に凸の負メニスカスレンズから構成され、さらに、第3のレンズ群は、第2の接合レンズの光変調器の側に配置された両凸の第2の正レンズを含んでいてもよい。
【0018】
第1の接合レンズは、第1の正レンズの光変調器の側に配置され、第2の接合レンズは、第1の接合レンズの光変調器の側に配置されており、第1の接合レンズは、スクリーンの側から順に配置されたスクリーンの側に凸の負メニスカスレンズおよび両凸の正レンズから構成され、第2の接合レンズは、スクリーンの側から順に配置された両凸の正レンズおよび光変調器の側に凸の負メニスカスレンズから構成され、さらに、第3のレンズ群は、第2の接合レンズの光変調器の側に配置された両凸の第2の正レンズを含んでいてもよい。
【0019】
本発明の異なる態様の1つは、上記の投写用レンズシステムと、照明用の光を変調して投写用レンズシステムに供給する光変調器とを有するプロジェクタ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る投写用レンズシステムを用いたプロジェクタ装置の概略構成を示す図。
【図2】第1の実施形態に係る投写用レンズシステムの概略構成を示す図。
【図3】第1の実施形態に係る投写用レンズシステムのレンズデータを示す図。
【図4】第1の実施形態に係る投写用レンズシステムの諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は非球面データを示す。
【図5】第1の実施形態に係る投写用レンズシステムの収差図であり、(a)は縦収差を示し、(b)は横収差を示す。
【図6】第2の実施形態に係る投写用レンズシステムの概略構成を示す図。
【図7】第2の実施形態に係る投写用レンズシステムのレンズデータを示す図。
【図8】第2の実施形態に係る投写用レンズシステムの諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は非球面データを示す。
【図9】第2の実施形態に係る投写用レンズシステムの収差図であり、(a)は縦収差を示し、(b)は横収差を示す。
【図10】第3の実施形態に係る投写用レンズシステムの概略構成を示す図。
【図11】第3の実施形態に係る投写用レンズシステムのレンズデータを示す図。
【図12】第3の実施形態に係る投写用レンズシステムの諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は非球面データを示す。
【図13】第3の実施形態に係る投写用レンズシステムの収差図であり、(a)は縦収差を示し、(b)は横収差を示す。
【図14】第4の実施形態に係る投写用レンズシステムの概略構成を示す図。
【図15】第4の実施形態に係る投写用レンズシステムのレンズデータを示す図。
【図16】第4の実施形態に係る投写用レンズシステムの諸数値を示す図であり、(a)は基本データを示し、(b)は非球面データを示す。
【図17】第4の実施形態に係る投写用レンズシステムの収差図であり、(a)は縦収差を示し、(b)は横収差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、本発明の実施形態に係る典型的な投写用レンズシステムを用いたプロジェクタ装置の概略構成を示している。プロジェクタ(プロジェクタ装置)1は、光変調器(ライトバルブ)2と、ライトバルブ2に変調用の照明光91を照射する光照射システム3と、ライトバルブ2により有効な方向に反射された投影光92をスクリーン9に投写する投写用レンズシステム10とを備えている。本例のプロジェクタ1は、ライトバルブ2としてDMD(デジタルミラーデバイス)を採用した単板式のビデオプロジェクタであり、光照射システム3は、ハロゲンランプなどの白色光源4と、円盤型の回転色分割フィルタ(カラーホイール)5とを備えている。このため、DMD(ライトバルブ)2には、赤、緑、青の3原色が時分割で照射される。そして、それぞれの色の光が照射されるタイミングで個々の画素に対応する素子を制御することによりカラー画像が表示される。光照射システム3は、さらに、白色光源4からの光を集光して非テレセントリックな照明光91を、ミラー6などを介してDMD2に出力する照明レンズシステム7を備えている。
【0022】
第1の実施形態
図2に、第1の実施形態に係る投写用レンズシステム10を示している。この投写用レンズシステム10は、スクリーン9の側から順に、負の屈折力を備えた第1のレンズ群G1と、正の屈折力を備えた第2のレンズ群G2と、正の屈折力を備えた第3のレンズ群G3とから構成されている。
【0023】
最もスクリーン9の側の第1のレンズ群G1は、全体が負の屈折力を備えたレンズ群であり、スクリーン9の側から順に配置された、スクリーン9の側に凸の樹脂製の第1の負メニスカスレンズL11と、スクリーン9の側に凸のガラス製の第2の負メニスカスレンズL12と、両凹の樹脂製の負レンズL13とから構成されている。第1の負メニスカスレンズL11の両面、すなわちスクリーン9の側の面S1およびDMD2の側の面S2は非球面である。さらに、負レンズL13の両面、すなわちスクリーン9の側の面S5およびDMD2の側の面S6も非球面である。第1のレンズ群G1の第1の負メニスカスレンズL11は、投写用レンズシステム10の中で最も大きな有効径(口径)のレンズとなる。
【0024】
第2のレンズ群G2は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、両凸のガラス製の正レンズL21から構成されている。
【0025】
最もDMD2の側の第3のレンズ群G3は、全体が正の屈折力を備えたレンズ群であり、スクリーン9の側から順に配置された、2枚貼合の第1の接合レンズ(バルサムレンズ、ダブレット)L3B1と、両凸の正レンズ(第1の正レンズ)L33と、3枚貼合の第2の接合レンズ(バルサムレンズ、トリプレット)L3B2とから構成されている。第1の接合レンズL3B1は、スクリーン9の側から順に配置された両凸の正レンズL31と、両凹の負レンズL32とから構成されている。第2の接合レンズL3B2は、スクリーン9の側から順に配置された両凸の正レンズL34と、両凹の負レンズL35と、両凸の正レンズL36とから構成されている。第3のレンズ群G3は、投写用レンズシステム10の中で最も小さな有効径(口径)の正レンズL34を備えている。第3のレンズ群G3のスクリーン9の側には、フレア絞りFSが配置されており、フレアやゴーストの原因となる散乱光(不要光)を遮断している。第3のレンズ群G3のDMD2の側には、1枚のガラス製のカバーガラスCGが配置されている。なお、カバーガラスCGは1枚に限定されず、複数枚配置されていてもよい。
【0026】
本例の投写用レンズシステム10は、スクリーン9の側から順に、負−正−正の屈折力を備えた3つのレンズ群G1〜G3にグループ化された10枚のレンズL11〜L13、L21およびL31〜L36により構成されている。この投写用レンズシステム10は、変倍を行わない単焦点タイプのレンズシステムであり、第3のレンズ群G3は動かず固定されており、第1のレンズ群G1および第2のレンズ群G2が光軸100の方向に動くことにより焦点調整(フォーカシング)を行う。
【0027】
この投写用レンズシステム10は、最もスクリーン9の側、すなわち拡大共役側10aで比較的大口径となる第1のレンズ群G1の3枚のレンズL11〜L13を順に樹脂製、ガラス製、樹脂製とすることにより低コストで、広角であり、さらにコンパクトな投写用レンズシステム10を提供している。すなわち、低コスト化のためにすべてのレンズを樹脂製にすると負の屈折力が不足するために、各レンズの径、特に最もスクリーンの側のレンズの径が大きくなり、コンパクトな投写用レンズシステムを提供することが難しい。一方、コンパクトにするために各レンズの焦点距離を短くすると、すべてのレンズが樹脂製であると曲率が大きくなり、収差の補正が難しくなるとともに温度によるレンズ性能の変動が大きくなり好ましくない。
【0028】
この投写用レンズシステム10においては、第1のレンズ群G1の第2の負メニスカスレンズL12を屈折力の大きなガラス製とすることにより、前後の2枚の樹脂製のレンズL11およびL13の有効径を比較的小さくできる。さらに、前後の2枚の樹脂製のレンズL11およびL13の曲率を大きくせずに、コンパクトで収差補正も良好な投写用レンズシステム10を提供できる。
【0029】
この投写用レンズシステム10においては、第1のレンズ群G1の合成焦点距離f1と、第1のレンズ群G1の第2の負メニスカスレンズL12の焦点距離f12と、第1のレンズ群G1の負レンズL13の焦点距離f13と、第1のレンズ群G1の第2の負メニスカスレンズL12の屈折率n12と、第1のレンズ群G1の第2の負メニスカスレンズL12のスクリーン9の側の面S3の曲率半径R12aと、第2のレンズ群G2の正レンズL21のDMD2の側の面S8の曲率半径R21bとが以下の条件(1)〜(4)を満たすように設計されている。
1.0<|f12/f1|<4.0 ・・・(1)
5.0<|f13/f1|<9.0 ・・・(2)
1.75<n12<2.0 ・・・(3)
0.1<|R21b/R12a|<0.8・・・(4)
【0030】
この投写用レンズシステム10においては、ガラス製の第2の負メニスカスレンズL12のパワーを条件(1)に示すようにさらに強くすることにより、条件(2)に示すように樹脂製の負レンズL13のパワーをさらに弱くし、温度によるレンズ性能の変動、特に、バックフォーカスの変動を抑制している。また、パワーをさらに強くした第2の負メニスカスレンズL12においては、条件(3)に示すような高屈折率のガラス素材を用いることにより、曲率が極端に大きくなることを抑制し、収差の発生を抑えている。
【0031】
すなわち、この投写用レンズシステム10においては、条件(1)の上限を超えると、第1のレンズ群G1のパワーの中に占める第2の負メニスカスレンズL12のパワーが弱くなり、条件(2)に示した程度に樹脂製の負レンズL13のパワーを第1のレンズ群G1のパワーに対して弱くすることが難しくなる。したがって、広角で、温度変動に起因するバックフォーカスの変動の小さな投写用レンズシステムを提供することが困難となる。また、第2の負メニスカスレンズL12の屈折率n12は高いことが望ましいが、条件(3)の範囲に収めることにより、高分散となりすぎることを抑制し、色収差の補正が良好に行えるようにしている。
【0032】
さらに、この投写用レンズシステム10の第2の負メニスカスレンズL12は、強い負の屈折力を備えているので発散方向の収差が発生しやすい。このため、スクリーン9の側に凸の第2の負メニスカスレンズL12のスクリーン9の側の面S3に最も近い入射側(DMD2)の側の面で、面S3と反対側に凸の、すなわち、DMD2の側に凸の第2のレンズ群G2の正レンズL21のDMD2の側の面S8の曲率半径R21bを、面S3の曲率半径R12aに対して小さくしている。したがって、正レンズL21の面S8により逆方向(収束方向)の収差を発生させることにより、第2の負メニスカスレンズL12の収差を良好に補正できる。
【0033】
なお、条件(1)の上限を超えると、第2の負メニスカスレンズL12のパワー(屈折力)が第1のレンズ群G1に対して弱くなり、負の屈折力が不足する。このため、投写用レンズシステム10を広角化(広画角化)することが困難となる。同様に、条件(2)の上限を超えると、負レンズL13のパワーが第1のレンズ群G1に対して弱くなり、広角化が困難となる。一方、条件(2)の下限を超えると、負レンズL13のパワーが第1のレンズ群G1に対して強くなり、樹脂化した負レンズL13の温度変動に起因するバックフォーカスの変動を抑制することが困難となる。条件(3)の上限を超えると、第2の負メニスカスレンズL12が高分散となり、色収差の補正が困難となる。一方、条件(3)の下限を超えると、第2の負メニスカスレンズL12のパワーが弱くなり、投写用レンズシステム10を広角化することが困難となる。また、条件(4)の上限を超えると、第2の負メニスカスレンズL21により発生する収差の補正が難しくなる。一方、条件(4)の下限を超えると、正レンズL21の面S8のパワーが強くなり収差の補正が困難となる。したがって、いずれの場合もコマ収差を含めた諸収差が増大する傾向になる。
【0034】
条件(1)の上限は、3.7であることが望ましく、3.5であることがさらに望ましく、3.4であることがいっそう望ましい。また、条件(1)の下限は、2.0であることが望ましい。
【0035】
条件(2)の上限は、8.0であることが望ましい。また、条件(2)の下限は、5.5であることが望ましく、6.0であることがさらに望ましく、6.4であることがいっそう望ましい。
【0036】
条件(3)の上限は、1.9であることが望ましい。また、条件(3)の下限は、1.78であることが望ましく、1.80であることがいっそう望ましい。
【0037】
条件(4)の上限は、0.6であることが望ましく、0.5であることがさらに望ましく、0.4であることがいっそう望ましい。また、条件(4)の下限は、0.2であることが望ましい。
【0038】
このように、入射側10bから出射側10aに向けて順に、パワーの強いガラス製の正レンズL21と、パワーの弱い樹脂製の負レンズL13と、パワーの強いガラス製の負メニスカスレンズL12と、パワーの弱い樹脂製の負メニスカスレンズL11とを配置した構成は、投写用レンズシステム10の広角化と収差補正を図るのに極めて有効である。
【0039】
さらに、この投写用レンズシステム10においては、第1のレンズ群G1の第1の負メニスカスレンズL11の光軸100の中心厚みt11cと、第1のレンズ群G1の第1の負メニスカスレンズL11のDMD2の側の面S2の有効径端部の厚みt11eとが以下の条件(5)を満たすように設計されている。
4.0≦t11e/t11c≦5.0 ・・・(5)
【0040】
この投写用レンズシステム10においては、条件(5)の範囲内とすることにより、非点収差を含めた諸収差を良好に補正することができる。条件(5)の上限を超えると、第1の負メニスカスレンズL11の有効径端部の厚みt11eが中心厚みt11cに対して大きくなり、レンズ内で吸収される光線量の差が中心部と周辺部とで大きくなるため、周辺光量比の低下が著しくなる。一方、条件(5)の下限を超えると、第1の負メニスカスレンズL11の有効径端部の厚みt11eが中心厚みt11cに対して小さくなり、非点収差を含めた諸収差の補正が困難となる。
【0041】
この投写用レンズシステム10においては、ガラス製の第2の負メニスカスレンズL12のパワーを強くするために、条件(3)により第2の負メニスカスレンズL12の屈折率n12を高く設定しており、高屈折率(高分散)の第2の負メニスカスレンズL12により色収差の補正が不足しやすい。このため、第3のレンズ群G3に2つの接合レンズL3B1およびL3B2を配置することにより、拡大共役側10aにおける色収差補正の不足を縮小共役側10bにおいて補っている。したがって、色収差を含めた諸収差が良好に補正された投写用レンズシステム10を提供できる。
【0042】
図2に示すように、この投写用レンズシステム10は、スクリーン9の側から順に、負−正−正の屈折力を備えた3つのレンズ群G1〜G3にグループ化された10枚のレンズL11〜L36により構成されている。第3のレンズ群G3は、スクリーン9の側から順に配置された、2枚貼合の第1の接合レンズL3B1と、両凸の第1の正レンズ(正レンズ)L33と、3枚貼合の接合レンズL3B2とから構成されている。第1の接合レンズL3B1は、正レンズL33のスクリーン9の側に他のレンズを挟まず1つの空気間隔d11のみを挟んで配置されており、第2の接合レンズL3B2は、正レンズL33のDMD2の側に他のレンズを挟まず1つの空気間隔d13のみを挟んで配置されている。
【0043】
この投写用レンズシステム10においては、第3のレンズ群G3の第1の接合レンズL3B1の負レンズL32のDMD2の側の面S11の曲率半径R32bと、第3のレンズ群G3の正レンズL33のスクリーン9の側の面S12の曲率半径R33aとが以下の条件(6)を満たすように設計されている。
0.89<R32b/R33a<1.01 ・・・(6)
【0044】
この投写用レンズシステム10においては、第1の接合レンズL3B1の負レンズL32と、正レンズL33との対向する面S11と面S12との曲率半径を条件(6)の範囲内とすることにより、ほぼ等しい曲率半径を備えた2つの面S11およびS12を同じ向きに並べ、さらにそれらの面S11および面S12を接合するのではなく、最少空気間隔またはそれに近い狭い空気間隔d11、本例では0.80mmを隔てて配置している。このため、トリプレットに近い色収差の補正能力と、それに加えてコマ収差を含めた諸収差の補正能力とを得ることができる。
【0045】
図3に、投写用レンズシステム10の各レンズのレンズデータを示している。図4に、投写用レンズシステム10の諸数値を示している。レンズデータにおいて、Riはスクリーン9の側から順に並んだ各レンズ(各レンズ面)の曲率半径(mm)、diはスクリーン9の側から順に並んだ各レンズ面の間の距離(mm)、Diはスクリーン9の側から順に並んだ各レンズ面の有効径(mm)、ndはスクリーン9の側から順に並んだ各レンズの屈折率(d線)、νdはスクリーン9の側から順に並んだ各レンズのアッベ数(d線)を示している。図3において、Flatは平面を示している。図4(b)において、「En」は、「10のn乗」を意味する。たとえば、「E−06」は、「10の−6乗」を意味し、「E−11」は、「10の−11乗」を意味する。以降の実施形態においても同様である。
【0046】
また、第1のレンズ群G1の最もスクリーン9の側に配置された第1の負メニスカスレンズL11の両面S1およびS2と、第1のレンズ群G1の最もDMD2の側に配置された負レンズL13の両面S5およびS6とは、非球面である。非球面は、Xを光軸方向の座標、Yを光軸と垂直方向の座標、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径とすると、図4(b)の係数K、A、B、C、DおよびEを用いて次式で表わされる。以降の実施形態においても同様である。
X=(1/R)Y2/[1+{1−(1+K)(1/R)2Y2}1/2]
+AY4+BY6+CY8+DY10+EY12
【0047】
本例のズームレンズシステム10の上述した条件(1)〜(6)を与える各式の値は、以下のようになる。
条件(1) |f12/f1|=3.4
条件(2) |f13/f1|=6.0
条件(3) n12=1.8010
条件(4) |R21b/R12a|=0.31
条件(5) t11e/t11c=4.0(なお、t11eは16.0mmであり、t11cは4.0mmである。)
条件(6) R32b/R33a=1.009
【0048】
図5に、投写用レンズシステム10の縦収差図および横収差図を示している。図5に示すように、いずれの収差も良好に補正されており、高画質の大画像をスクリーン9に投写できる。なお、球面収差は、波長630nm(点線)と、波長550nm(実線)と、波長460nm(破線)とを示している。また、非点収差およびコマ収差においては、タンジェンシャル光線(T)およびサジタル光線(S)の収差をそれぞれ示している。以降の実施形態においても同様である。
【0049】
したがって、第1の実施形態に係る投写用レンズシステム10は、10枚構成で最大径が70mm程度という簡易でコンパクトな構成でありながら、全画角が114.2度(半画角が57.1度)、焦点距離が7.11と広角で、F値が2.79と明るく鮮明な画像を投影できる、性能およびコストのバランスが取れた投写用レンズシステム10の一例である。
【0050】
第2の実施形態
図6に、第2の実施形態に係る投写用レンズシステム20を示している。この投写用レンズシステム20も、スクリーン9の側から順に、負−正−正の屈折力を備えた3つのレンズ群G1〜G3にグループ化された10枚のレンズL11〜L13、L21およびL31〜L36により構成されている。これらのレンズ群G1〜G3の構成、およびレンズ群G1〜G3に含まれる各レンズの形状は、第1の実施形態と共通するため、個々のレンズの詳しい説明は省略する。以降の実施形態においても同様である。
【0051】
図7に、投写用レンズシステム20の各レンズのレンズデータを示している。図8に、投写用レンズシステム20の諸数値を示している。本例のズームレンズシステム20の上述した条件(1)〜(6)を与える各式の値は、以下のようになる。
条件(1) |f12/f1|=3.3
条件(2) |f13/f1|=6.5
条件(3) n12=1.8010
条件(4) |R21b/R12a|=0.29
条件(5) t11e/t11c=5.0(なお、t11eは15.0mmであり、t11cは3.0mmである。)
条件(6) R32b/R33a=1.008
【0052】
図9に、投写用レンズシステム20の縦収差図および横収差図を示している。図9に示すように、いずれの収差も良好に補正されており、高画質の大画像をスクリーン9に投写できる。
【0053】
このように、第2の実施形態に係る投写用レンズシステム20は、第1の実施形態よりも第1の負メニスカスレンズL11の中心厚みt11cと有効径端部の厚みt11eとの比を大きくして条件(5)を向上させている。このため、F値が2.3とさらに明るく鮮明な画像を得ることができる高性能な投写用レンズシステム20を提供できる。
【0054】
第3の実施形態
図10に、第3の実施形態に係る投写用レンズシステム30を示している。この投写用レンズシステム30も、スクリーン9の側から順に、負−正−正の屈折力を備えた3つのレンズ群G1〜G3にグループ化された10枚のレンズL11〜L13、L21およびL31〜L36により構成されている。
【0055】
第3のレンズ群G3は、スクリーン9の側から順に配置された、両凸の正レンズL31と、2枚貼合の第1の接合レンズ(バルサムレンズ、ダブレット)L3B1と、2枚貼合の第2の接合レンズ(バルサムレンズ、ダブレット)L3B2と、両凸の正レンズ(第2の正レンズ)L36とから構成されている。第1の接合レンズL3B1は、スクリーン9の側から順に配置された、スクリーン9の側に凸の負メニスカスレンズL32と、両凸の正レンズL33とから構成されている。第2の接合レンズL3B2は、スクリーン9の側から順に配置された両凸の正レンズL34と、DMD2の側に凸の負メニスカスレンズL35とから構成されている。
【0056】
このように、この投写用レンズシステム30においては、上記の実施形態とは異なり、第3のレンズ群G3にいずれも2枚貼合の2つの接合レンズL3B1およびL3B2を配置している。
【0057】
図11に、投写用レンズシステム30の各レンズのレンズデータを示している。図12に、投写用レンズシステム30の諸数値を示している。本例のズームレンズシステム30の上述した条件(1)〜(5)を与える各式の値は、以下のようになる。
条件(1) |f12/f1|=3.6
条件(2) |f13/f1|=6.1
条件(3) n12=1.8010
条件(4) |R21b/R12a|=0.37
条件(5) t11e/t11c=4.0(なお、t11eは16.0mmであり、t11cは4.0mmである。)
【0058】
図13に、投写用レンズシステム30の縦収差図および横収差図を示している。図13に示すように、いずれの収差も良好に補正されており、高画質の大画像をスクリーン9に投写できる。
【0059】
したがって、第3の実施形態に係る投写用レンズシステム30は、第3のレンズ群G3の第1の接合レンズL3B1および第2の接合レンズL3B2の貼り合わせるレンズの組み合わせを変更することにより、3枚貼合の接合レンズを省略した、低コストの投写用レンズシステム30の一例である。
【0060】
第4の実施形態
図14に、第4の実施形態に係る投写用レンズシステム40を示している。この投写用レンズシステム40は、スクリーン9の側から順に、負−正−正の屈折力を備えた3つのレンズ群G1〜G3にグループ化された11枚のレンズL11〜L13、L21およびL31〜L37により構成されている。この投写用レンズシステム40は、フライアイレンズなどのインテグレータとTIRプリズムを用いることにより、入射する投影光92をテレセントリックの状態にしたタイプのレンズシステムである。
【0061】
第3のレンズ群G3は、スクリーン9の側から順に配置された、2枚貼合の第1の接合レンズL3B1と、両凸の正レンズ(第1の正レンズ)L33と、3枚貼合の接合レンズL3B2と、両凸の正レンズ(第2の正レンズ)L37とから構成されている。第1の接合レンズL3B1は、スクリーン9の側から順に配置された両凸の正レンズL31と、両凹の負レンズL32とから構成されている。第2の接合レンズL3B2は、スクリーン9の側から順に配置された、スクリーン9の側に凸の負メニスカスレンズL34と、両凸の正レンズL35と、DMD2の側に凸の負メニスカスレンズL36とから構成されている。
【0062】
このように、この投写用レンズシステム40においては、上記の実施形態とは異なり、第3のレンズ群G3の第2の接合レンズL3B2のDMD2の側に正レンズ(第2の正レンズ)L37を追加して配置している。第3のレンズ群G3のスクリーン9の側には、絞りSが配置されている。第3のレンズ群G3のDMD2の側には、厚みd20が大きい、本例では25.00mmの1枚のガラス製のカバーガラスCGが配置されている。
【0063】
図15に、投写用レンズシステム40の各レンズのレンズデータを示している。図16に、投写用レンズシステム40の諸数値を示している。本例のズームレンズシステム40の上述した条件(1)〜(6)を与える各式の値は、以下のようになる。
条件(1) |f12/f1|=3.5
条件(2) |f13/f1|=6.5
条件(3) n12=1.8010
条件(4) |R21b/R12a|=0.30
条件(5) t11e/t11c=5.0(なお、t11eは15.0mmであり、t11cは3.0mmである。)
条件(6) R32b/R33a=0.89
【0064】
図17に、投写用レンズシステム40の縦収差図および横収差図を示している。図17に示すように、いずれの収差も良好に補正されており、高画質の大画像をスクリーン9に投写できる。
【0065】
したがって、第4の実施形態に係る投写用レンズシステム40は、第3のレンズ群G3の第2の接合レンズL3B2のDMD2の側に正レンズL37を追加したことにより、入射する投影光92をいっそうテレセントリックまたはそれに近い状態にできるので、プロジェクタ1が光軸100の方向にわずかに移動しても鮮明な画像を得ることができる投写用レンズシステム40の一例である。
【0066】
なお、本発明はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に規定されたものを含む。また、本発明の投写用レンズシステム10(20、30、40)は、白色光源4をダイクロイックフィルタ(ミラー)などにより3色に分離させる3板式のプロジェクタに搭載することもできる。また、光変調器2はLCD(液晶パネル)であってもよく、各色の画像を時分割で再生する単板式であっても、ダイクロイックプリズムなどにより各色の画像を合成するタイプであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 プロジェクタ
10、20、30、40 投写用レンズシステム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調器からの投影光をスクリーンに投写する投写用レンズシステムであって、
前記スクリーンの側から順に、負の屈折力を備えた第1のレンズ群と、正の屈折力を備えた第2のレンズ群と、正の屈折力を備えた第3のレンズ群とから構成され、
前記第1のレンズ群は、前記スクリーンの側から順に配置された前記スクリーンの側に凸の樹脂製の第1の負メニスカスレンズと、前記スクリーンの側に凸のガラス製の第2の負メニスカスレンズと、両凹の樹脂製の負レンズとから構成され、前記第1の負メニスカスレンズおよび前記負レンズの両面は非球面であり、
前記第2のレンズ群は、両凸のガラス製の正レンズから構成され、
前記第1のレンズ群の合成焦点距離f1と、前記第1のレンズ群の前記第2の負メニスカスレンズの焦点距離f12と、前記第1のレンズ群の前記負レンズの焦点距離f13と、前記第1のレンズ群の前記第2の負メニスカスレンズの屈折率n12と、前記第1のレンズ群の前記第2の負メニスカスレンズの前記スクリーンの側の面の曲率半径R12aと、前記第2のレンズ群の前記正レンズの前記光変調器の側の面の曲率半径R21bとが以下の条件を満たす、投写用レンズシステム。
1.0<|f12/f1|<4.0
5.0<|f13/f1|<9.0
1.75<n12<2.0
0.1<|R21b/R12a|<0.8
【請求項2】
請求項1において、
さらに、以下の条件を満たす、投写用レンズシステム。
2.0<|f12/f1|<3.5
6.0<|f13/f1|<8.0
1.80<n12<2.0
0.2<|R21b/R12a|<0.5
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1のレンズ群の前記第1の負メニスカスレンズの中心厚みt11cと、前記第1のレンズ群の前記第1の負メニスカスレンズの前記光変調器の側の面の有効径端部の厚みt11eとが以下の条件を満たす、投写用レンズシステム。
4.0≦t11e/t11c≦5.0
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第3のレンズ群は、第1の接合レンズと、第2の接合レンズと、両凸の第1の正レンズとを含む、投写用レンズシステム。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の接合レンズは、前記第1の正レンズの前記スクリーンの側に1つの空気間隔を挟んで配置され、前記第2の接合レンズは、前記第1の正レンズの前記光変調器の側に少なくとも1つの空気間隔を挟んで配置されており、
前記第1の接合レンズは、前記スクリーンの側から順に配置された両凸の正レンズおよび両凹の負レンズから構成され、
前記第3のレンズ群の前記第1の接合レンズの前記負レンズの前記光変調器の側の面の曲率半径R32bと、前記第3のレンズ群の前記第1の正レンズの前記スクリーンの側の面の曲率半径R33aとが以下の条件を満たす、投写用レンズシステム。
0.89<R32b/R33a<1.01
【請求項6】
請求項5において、
前記第2の接合レンズは、前記スクリーンの側から順に配置された前記スクリーンの側に凸の負メニスカスレンズ、両凸の正レンズおよび前記光変調器の側に凸の負メニスカスレンズから構成され、
さらに、前記第3のレンズ群は、前記第2の接合レンズの前記光変調器の側に配置された両凸の第2の正レンズを含む、投写用レンズシステム。
【請求項7】
請求項4において、
前記第1の接合レンズは、前記第1の正レンズの前記光変調器の側に配置され、前記第2の接合レンズは、前記第1の接合レンズの前記光変調器の側に配置されており、
前記第1の接合レンズは、前記スクリーンの側から順に配置された前記スクリーンの側に凸の負メニスカスレンズおよび両凸の正レンズから構成され、
前記第2の接合レンズは、前記スクリーンの側から順に配置された両凸の正レンズおよび前記光変調器の側に凸の負メニスカスレンズから構成され、
さらに、前記第3のレンズ群は、前記第2の接合レンズの前記光変調器の側に配置された両凸の第2の正レンズを含む、投写用レンズシステム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の投写用レンズシステムと、
照明用の光を変調して前記投写用レンズシステムに供給する光変調器とを有する、プロジェクタ装置。
【請求項1】
光変調器からの投影光をスクリーンに投写する投写用レンズシステムであって、
前記スクリーンの側から順に、負の屈折力を備えた第1のレンズ群と、正の屈折力を備えた第2のレンズ群と、正の屈折力を備えた第3のレンズ群とから構成され、
前記第1のレンズ群は、前記スクリーンの側から順に配置された前記スクリーンの側に凸の樹脂製の第1の負メニスカスレンズと、前記スクリーンの側に凸のガラス製の第2の負メニスカスレンズと、両凹の樹脂製の負レンズとから構成され、前記第1の負メニスカスレンズおよび前記負レンズの両面は非球面であり、
前記第2のレンズ群は、両凸のガラス製の正レンズから構成され、
前記第1のレンズ群の合成焦点距離f1と、前記第1のレンズ群の前記第2の負メニスカスレンズの焦点距離f12と、前記第1のレンズ群の前記負レンズの焦点距離f13と、前記第1のレンズ群の前記第2の負メニスカスレンズの屈折率n12と、前記第1のレンズ群の前記第2の負メニスカスレンズの前記スクリーンの側の面の曲率半径R12aと、前記第2のレンズ群の前記正レンズの前記光変調器の側の面の曲率半径R21bとが以下の条件を満たす、投写用レンズシステム。
1.0<|f12/f1|<4.0
5.0<|f13/f1|<9.0
1.75<n12<2.0
0.1<|R21b/R12a|<0.8
【請求項2】
請求項1において、
さらに、以下の条件を満たす、投写用レンズシステム。
2.0<|f12/f1|<3.5
6.0<|f13/f1|<8.0
1.80<n12<2.0
0.2<|R21b/R12a|<0.5
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1のレンズ群の前記第1の負メニスカスレンズの中心厚みt11cと、前記第1のレンズ群の前記第1の負メニスカスレンズの前記光変調器の側の面の有効径端部の厚みt11eとが以下の条件を満たす、投写用レンズシステム。
4.0≦t11e/t11c≦5.0
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記第3のレンズ群は、第1の接合レンズと、第2の接合レンズと、両凸の第1の正レンズとを含む、投写用レンズシステム。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の接合レンズは、前記第1の正レンズの前記スクリーンの側に1つの空気間隔を挟んで配置され、前記第2の接合レンズは、前記第1の正レンズの前記光変調器の側に少なくとも1つの空気間隔を挟んで配置されており、
前記第1の接合レンズは、前記スクリーンの側から順に配置された両凸の正レンズおよび両凹の負レンズから構成され、
前記第3のレンズ群の前記第1の接合レンズの前記負レンズの前記光変調器の側の面の曲率半径R32bと、前記第3のレンズ群の前記第1の正レンズの前記スクリーンの側の面の曲率半径R33aとが以下の条件を満たす、投写用レンズシステム。
0.89<R32b/R33a<1.01
【請求項6】
請求項5において、
前記第2の接合レンズは、前記スクリーンの側から順に配置された前記スクリーンの側に凸の負メニスカスレンズ、両凸の正レンズおよび前記光変調器の側に凸の負メニスカスレンズから構成され、
さらに、前記第3のレンズ群は、前記第2の接合レンズの前記光変調器の側に配置された両凸の第2の正レンズを含む、投写用レンズシステム。
【請求項7】
請求項4において、
前記第1の接合レンズは、前記第1の正レンズの前記光変調器の側に配置され、前記第2の接合レンズは、前記第1の接合レンズの前記光変調器の側に配置されており、
前記第1の接合レンズは、前記スクリーンの側から順に配置された前記スクリーンの側に凸の負メニスカスレンズおよび両凸の正レンズから構成され、
前記第2の接合レンズは、前記スクリーンの側から順に配置された両凸の正レンズおよび前記光変調器の側に凸の負メニスカスレンズから構成され、
さらに、前記第3のレンズ群は、前記第2の接合レンズの前記光変調器の側に配置された両凸の第2の正レンズを含む、投写用レンズシステム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の投写用レンズシステムと、
照明用の光を変調して前記投写用レンズシステムに供給する光変調器とを有する、プロジェクタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−220875(P2012−220875A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89088(P2011−89088)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000227364)日東光学株式会社 (151)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000227364)日東光学株式会社 (151)
【Fターム(参考)】
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