説明

抗老化剤、コラゲナーゼ阻害剤および抗酸化剤

【課題】生体内で生じるコラーゲン等のマトリックス線維の加水分解を防止し、これらの減少を有効に防止して皮膚の老化症状進行を防ぐことのできるコラゲナーゼ阻害剤、活性酸素消去(スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)様)作用を有する抗酸化剤、及び抗老化剤を提供する。
【解決手段】ゲッキ(学名:Rosa chinensis Jacq.)、ウキクサ(学名:Spirodela polyrhiza)、緑豆(学名:Phaseolus radiatus)、白花蛇舌草(フタバムグラ)(学名:Oldenlandia diffusa (Wild.) Roxb. )、丹参(学名:Salvia miltiorrhiza Bge.)、馬歯ケン(学名:Portulaca oleracea)、百部(学名:Stemona japonica)、菟絲子(ハマネナシカズラ)(学名:Cuscuta chinensis Lam.)、補骨脂(オランダヒユ)(学名:Psoralea corylifolia L.)より選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物抽出物からなる抗老化剤に関し、さらに詳しくは、皮膚の老化防止に有効な優れたコラゲナーゼ阻害活性を有するコラゲナーゼ阻害剤、活性酸素消去(SOD様)作用を有する抗酸化剤及びこれらの作用を有し、老化防止に有用な抗老化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の老化症状のひとつとして知られる皮膚弾性の低下は、真皮コラーゲン線維やエラスチンの減少、或いは過度の架橋の形成進行に起因すると考えられ、可溶性のコラーゲンやエラスチンを直接皮膚外用剤に配合したり、コラーゲン等のマトリックス成分を合成する線維芽細胞を活性化する作用を有するものを配合したりすることも検討されている。
【0003】
加齢に伴い、皮膚にはしわやしみの発生,弾性の低下といった老化症状の進行が認められる。近年、熱、紫外線、種々の化学物質等、環境中に存在する多様なストレスにより、かかる老化症状の進行が促進されることが明らかとなってきており、紫外線防御剤や活性酸素消去剤の配合により、皮膚の老化を防止する試みがなされている。
【0004】
しかしながら、可溶性のコラーゲン等は分子量の大きいタンパク質であり、経皮吸収性が悪く、腐敗や変性の防止等品質の維持にも注意を要する必要がある。さらに、経皮吸収された後に抗原性を示す懸念もあり、皮膚外用剤への配合に適するとは言いがたい。一方、種々の線維芽細胞活性化剤が検討されているが、経皮吸収性,作用効果,安定性のすべてにおいて優れ、さらに皮膚刺激性や感作性等の皮膚に対する悪影響の少ないものは未だにわずかである。
【0005】
一方、コラーゲン繊維の断片化を防ぐ目的でコラゲナーゼ阻害作用を有する物質利用の試みもなされている。従来からコラゲナーゼ阻害作用があることが知られている天然物由来の成分としては、ゴミシ、アセンヤク、ゲンノショウコ、ビンロウジ、大黄、生姜、桂皮、人参、ウワウルシ、セネガ、カンゾウ、キキョウ、シャクヤク、ショウキョウ、タイソウなどの植物抽出物が挙げられる(特許文献1〜3参照)。しかしながら、その効果は十分とはいえず、効果を上げるため抽出物を製剤に高配合した際には、特有の生薬臭や着色、成分析出等の問題があった。
また、抗酸化剤を用いる試みもなされている。ビタミンEやビタミンCなどは生体内におけるフリーラジカル捕捉型抗酸化物質である。さらに、抗酸化物質にはBHTやBHAなどの合成抗酸化物質も知られている。しかしながら、これら物質の抗酸化能(フリーラジカル捕捉能)は十分とは言えず、BHTやBHAにおいては発ガン性の疑いがある。天然の酸化防止剤としては、例えば担子菌類の抽出物(特許文献4〜6)他、種々の素材が報告されているが、その効果は十分とはいえず、さらに高い効果を有するものが望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−148426号公報
【特許文献2】特開平4−29933号公報
【特許文献3】特開平11−279039号公報
【特許文献4】特開平5−317016号公報
【特許文献5】特開平6−65575号公報
【特許文献6】特開昭59−124984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のことから、植物由来でより安全かつ安定で、優れたコラゲナーゼ阻害作用、抗酸化作用などの抗老化作用を有する薬剤の開発が望まれている。
そこで本発明においては、生体内で生じるコラーゲン等のマトリックス線維の加水分解を防止し、これらの減少を有効に防止して皮膚の老化症状進行を防ぐことのできるコラゲナーゼ阻害剤、活性酸素消去(スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)様)作用を有する抗酸化剤、及びこれらの作用に基づく老化防止に有効な抗老化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ゲッキ(学名:Rosa chinensis Jacq.)、ウキクサ(学名:Spirodela polyrhiza)、緑豆(学名:Phaseolus radiatus)、白花蛇舌草(フタバムグラ)(学名:Oldenlandia diffusa (Willd.) Roxb.)、丹参(学名:Salvia miltiorrhiza Bge.)、馬歯ケン(学名:Portulaca oleracea)、百部(学名:Stemona japonica)、菟絲子(ハマネナシカズラ)(学名:Cuscuta chinensis Lam.)、補骨脂(オランダヒユ)(学名:Psoralea corylifolia L.)より選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物を含有することを特徴とする抗老化剤である。
【0009】
本発明は、ゲッキ(学名:Rosa chinensis Jacq.)、ウキクサ(学名:Spirodela polyrhiza)、緑豆(学名:Phaseolus radiatus)より選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物を含有することを特徴とするコラゲナーゼ阻害剤である。
【0010】
本発明は、白花蛇舌草(フタバムグラ)(学名:Oldenlandia diffusa (Wild.) Roxb.)、ウキクサ(学名:Spirodela polyrhiza)、緑豆(学名:Phaseolus radiatus)、丹参(学名:Salvia miltiorrhiza Bge.)、馬歯ケン(学名:Portulaca oleracea)、百部(学名:Stemona japonica)、菟絲子(ハマネナシカズラ)(学名:Cuscuta chinensis Lam.)、補骨脂(オランダヒユ)(学名:Psoralea corylifolia L.)より選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコラゲナーゼ阻害剤によれば、生体内で生じるコラーゲン等のマトリックス線維の加水分解を防止し、これらの減少を有効に防止して皮膚の老化症状進行を防ぐことができる。
本発明の抗酸化剤によれば、優れた活性酸素消去(SOD様)作用を有し、皮膚の老化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の最良の実施形態について説明する。
本発明による抗老化剤、コラゲナーゼ阻害剤、抗酸化剤は、好ましくは実質的に上記植物抽出物からなるものであるが、その他の成分を含んでいても良い。
【0013】
本発明のコラゲナーゼ阻害剤に含有させる抽出物を得るために用いる植物としては、バラ科(Rosaceae)植物ゲッキ(学名:Rosa chinensis Jacq.)、ウキクサ科 (Lemnaceae)植物ウキクサ(学名:Spirodela polyrhiza)、マメ科(Leguminosae)植物緑豆(学名:Phaseolus radiatus)が挙げられ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。
【0014】
抗酸化剤に含有させる抽出物を得るために用いる植物としては、バラ科(Rosaceae)植物ゲッキ(学名:Rosa chinensis Jacq.)、アカネ科(Rubiaceae)植物白花蛇舌草(フタバムグラ)(学名:Oldenlandia diffusa (Willd.) Roxb.)、ウキクサ科(Lemnaceae)植物ウキクサ(学名:Spirodela polyrhiza)、マメ科(Leguminosae)植物緑豆(学名:Phaseolus radiatus)、シソ科(Labiatae)植物丹参(学名:Salvia miltiorrhiza Bge.)、スベリヒユ科(Portulacaceae)植物馬歯ケン(学名:Portulaca oleracea)、ビャクブ科(Stamenaceae)植物百部(学名:Stemona japonica)、ヒルガオ科(Convolvulaceae)植物菟絲子(ハマネナシカズラ)(学名:Cuscuta chinensis Lam.)、マメ科(Leguminosae)植物補骨脂(オランダヒユ)(学名:Psoralea corylifolia L.)が挙げられ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。
【0015】
以下に本発明で使用される植物について一般的な知見を述べる。
バラ科植物ゲッキ(学名:Rosa chinensis Jacq.)はその花蕾又は花びらを乾燥させたものが、生薬月季花(ゲッキカ)として用いられる。生薬月季花は、お血、打撲、ねんざ、生理不順、生理痛、生理前のイライラ、更年期障害に改善効果があると言われている。
ウキクサ科植物ウキクサ(学名:Spirodela polyrhiza)はその全草を乾燥させたものが、生薬浮萍(フヘイ)として用いられる。生薬浮萍は発汗・利水・消腫薬・風疹熱毒作用があることが知られている。
マメ科植物緑豆(学名:Phaseolus radiatus)はその果実を乾燥させたものが、生薬緑豆(リョクズ)として用いられる。生薬緑豆は清熱解毒・消暑止渇・利尿作用があることが知られている。
アカネ科植物白花蛇舌草(フタバムグラ)(学名:Oldenlandia diffusa (Willd.) Roxb.)はその全草を乾燥させたものが、生薬白花蛇舌草(ビャッカジャゼッソウ)として用いられる。生薬白花蛇舌草は清熱去お・消癰解毒抗菌作用・抗感染作用に用いられている。
シソ科植物丹参(学名:Salvia miltiorrhiza Bge.)はその根を乾燥させたものが、生薬丹参(タンジン)として用いられる。生薬丹参は活血去お・涼血・養血安神血管拡張・血管下降作用、抗菌作用を有し、臨床的には、鎮静・精神安定・鎮痛などの作用がある。
スベリヒユ科植物馬歯ケン(学名:Portulaca oleracea)はその全草を乾燥させたものが、生薬馬歯ケン(バシケン)として用いられる。生薬馬歯ケンは利尿、抗菌などの作用があることが知られている。
ビャクブ科植物百部(学名:Stemona japonica)はその塊根を乾燥させたものが、生薬百部(ビャクブ)として用いられる。生薬百部は止咳、抗菌殺虫作用を有し、皮膚の寄生虫駆除に用いられている。
ヒルガオ科植物菟絲子(ハマネナシカズラ)(学名:Cuscuta chinensis Lam.)はその成熟種子を乾燥させたものが、生薬菟絲子(トシシ)として用いられる。生薬菟絲子は薬理学的な研究では、心臓に対して強心的な作用、血流の改善作用などがある。また腎虚な人に赤血球の糖利用度の亢進作用、代謝機能の亢進作用、抗ストレス的なACTHの分泌亢進作用、免疫力の調整等が知られている。
マメ科植物補骨脂(オランダヒユ)(学名:Psoralea corylifolia L.)はその成熟した果実を乾燥させたものが、生薬補骨脂(ホコツシ)として用いられる。生薬補骨脂は、補腎壮陽の主薬として用いられている。下半身の冷え、腰痛、肩こり、筋力の低下、食欲不振などに応用されている。薬理学的にも動脈血管拡張作用、末梢循環改善作用、男性ホルモン様作用などが研究されている。
【0016】
本発明に用いられる植物抽出物は、上記植物の葉、地下茎を含む茎、根、果実、植物全草等を抽出溶媒と共に浸漬または加熱還流した後、濾過し、必要に応じて濃縮して得られる。本発明に用いられる抽出溶媒は、通常抽出に用いられる溶媒であれば何でもよく、水の他、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール等の低級アルコール、1,3-ブチレングリコール,プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル,プロピルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン,エチルメチルケトン等のケトン類などの極性有機溶媒を用いることができ、これらより1種又は2種以上を選択して用いる。また、皮膚外用剤への配合を考えて、リン酸緩衝液等を用いても良い。
また、植物を生のまま抽出操作に供しても良いが、抽出効率を考えると、細切,乾燥,粉砕等の処理を行った後に抽出を行うことが好ましい。抽出温度は室温〜50℃程度が適切である。
【0017】
本発明においては、上記植物は自生あるいは栽培何れで得られたものでも使用でき、また、上記植物抽出物は2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
上記植物の抽出物は、そのままでもコラゲナーゼ阻害剤、抗酸化剤として外用剤基剤に添加できるが、濃縮,乾固したものを水や極性溶媒に再度溶解したり、或いは脱色,脱臭,脱塩等の精製処理を行った後に添加しても良い。また保存のためには、精製処理の後凍結乾燥し、用時溶媒に溶解させて用いることが好ましい。皮膚外用剤への配合量は、上記の植物を十分浸漬し得る量の溶媒にて抽出して得た粗抽出物の状態で、0.001〜10.0質量%程度とするのが適当である。
【0019】
本発明のコラゲナーゼ阻害剤、抗酸化剤または抗老化剤を配合した皮膚外用剤は、上記必須成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0020】
その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸及びその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸及びその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の他の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0021】
本発明は、化粧料、医薬部外品等、特に好適には化粧料に広く適用することが可能であり、その剤型も水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水−油2層系、水−油−粉末3層系等、幅広い剤型を採り得る。すなわち、基礎化粧品であれば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)、パック、マスク等の形態に、上記の多様な剤型において広く適用可能である。また、メーキャップ化粧品であれば、ファンデーション等、トイレタリー製品としてはボディーソープ、石けん等の形態に広く適用可能である。さらに、医薬部外品であれば、各種の軟膏剤等の形態に広く適用が可能である。そして、これらの剤型及び形態に、本発明のコラゲナーゼ阻害剤、抗酸化剤および抗老化剤を含む皮膚外用剤の採り得る形態が限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
実施例に先立ち、本発明の植物抽出物のコラゲナーゼ阻害作用および抗酸化作用に関する試験方法とその結果について説明する。
【0023】
1.コラゲナーゼ阻害作用
(1)試料の調製
(a)月季花エタノール抽出物
月季(ゲッキ)の花10.0gにエタノール50mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液のエタノールを留去し、抽出物を2.75g(固形分)得た。
【0024】
(b)浮萍エタノール抽出物
浮萍(ウキクサ)の全草10.0gにエタノール50mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液のエタノールを留去し、抽出物を1.85g(固形分)得た。
【0025】
(c)緑豆エタノール抽出物
緑豆の果実10.0gにエタノール50mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液のエタノールを留去し、抽出物を0.65g(固形分)得た。
【0026】
(2)コラゲナーゼ抑制作用試験方法(I型コラーゲンアッセイ)およびその結果
得られた植物エタノール抽出物を試験試料として次の方法でコラゲナーゼ抑制作用を測定・評価した。
【0027】
(2-1)アッセイ方法
皮膚繊維芽細胞由来コラゲナーゼ及びFITC−typeI collagen solutionを用いて評価した。粗酵素液としては1L−1α(Wako)を添加後、数日培養したヒト皮膚繊維芽細胞培養上清をトリプシン処理して用いた。緩衝液は0.1Mトリス(塩酸)緩衝液(pH7.5,20mM CaCl含有)を用いた。試料、粗酵素液、緩衝液、及び基質を混合し37℃で2時間反応させた後、10mM o−Phenanthrolineを添加し反応を停止した。遠心分離(10,000rpm,15min)後、上清の蛍光強度(励起光490nm, 蛍光530nm)を蛍光分光光度計にて測定した。尚、反応後に酵素の代わりに溶媒を添加する盲検を設け、検体と盲検の吸光度の差から以下の「数1」で阻害率を算出した。結果は下記のアッセイ結果の通りであった。
【0028】
「数1」
コラゲナーゼ活性阻害率(%)=100−{(阻害物質存在下の検体−盲検)/(阻害物質非存在下の検体−盲検)}×100
【0029】
(2-2)アッセイ結果
アッセイの結果得られたI型コラーゲン測定結果(阻害率)を下記表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
上記の結果の通り、本発明の月季花、浮萍、緑豆の抽出物はコラゲナーゼ活性を有意に阻害する効果が認められ、コラゲナーゼ阻害剤として有用であると認められた。
【0032】
2.抗酸化作用
(1)試料の調製(白花蛇舌草、浮萍、緑豆、丹参、馬歯ケン、百部、菟絲子、補骨脂エタノール抽出物)
浮萍エタノール抽出物および緑豆エタノール抽出物については、前述した方法で試料を調製した。
【0033】
(a)白花蛇舌草(フタバムグラ)30%エタノール抽出物
白花蛇舌草の全草10.0gに30%エタノール50mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の30%エタノールを留去し、抽出物を1.48g(固形分)得た。
【0034】
(b)丹参30%エタノール抽出物
丹参の根10.0gに30%エタノール50mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の30%エタノールを留去し、抽出物を0.15g(固形分)得た。
【0035】
(c)馬歯ケン30%エタノール抽出物
馬歯ケンの全草10.0gに30%エタノール50mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の30%エタノールを留去し、抽出物を1.87g(固形分)得た。
【0036】
(d)百部エタノール抽出物
百部の塊根10.0gにエタノール50mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液のエタノールを留去し、抽出物を1.62g(固形分)得た。
【0037】
(e)菟絲子(ハマネナシカズラ)30%エタノール抽出物
菟絲子(ハマネナシカズラ)の成熟種子10.0gに30%エタノール50mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の30%エタノールを留去し、抽出物を0.40g(固形分)得た。
【0038】
(f)補骨脂(オランダヒユ)30%エタノール抽出物
補骨脂(オランダヒユ)の果実10.0gに30%エタノール50mLを加え、室温で7日間浸漬後、ろ過した。ろ液の30%エタノールを留去し、抽出物を6.76g(固形分)得た。
【0039】
(2)活性酸素消去(SOD様)作用試験方法およびその結果
(2-1)試験方法
得られた植物エタノール抽出物を試験試料として次の方法で活性酸素消去(SOD様)作用を測定・評価した。
近年、活性酸素によって誘発される疾患・疾病も数多く報告され、活性酸素を除去・消去する作用(SOD活性)は、組織障害の予防につながるものと指摘されている。本試験では、上記(1)で得られた抽出液について、キサンチン−キサンチンオキシダーゼ系により発生させた活性酸素に対する消去能を検討した。
【0040】
SOD Assay Kit-WST(Dojindo Molecular Technologies,Inc.)を用い、プロトコールに従い試験を行った。96wellプレートの各wellに、試料溶液(試料、ブランク2)または試料の溶媒(ブランク1、ブランク3)を各20μL入れ、各wellにWST working solution(WST solution 1mLをBuffer solution 19mLで希釈)を200μL加え混合した。ブランク2とブランク3のwellにDilution bufferを20μL加え、試料およびブランク1のwellにはEnzyme working solution(Enzyme solutionを混合し、その15μLをとりDilution buffer 2.5mLで希釈)を20μL加えて、37℃で20分間インキュベートした。450nmにおける吸光度を測定し、次式「数2」により活性酸素消去率を求めた。
【0041】
「数2」
活性酸素消去率(%)={(ブランク1−ブランク3)−(試料−ブランク2)}/(ブランク1−ブランク3)}×100
ブランク1:阻害なしの全発色量
ブランク2:試料のブランク
ブランク3:WST working solutionのブランク
【0042】
(2-2)試験結果
試験の結果を下記表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
上記の結果の通り、本発明の白花蛇舌草、浮萍、緑豆、丹参、馬歯ケン、百部、菟絲子、補骨脂の各植物抽出物は、活性酸素の生成を有意に抑え、活性酸素消去作用を有することが確認された。
【0045】
続いて、本発明に係る抗老化剤、コラゲナーゼ阻害剤、抗酸化剤を配合した皮膚外用剤についての処方例を示す。
[処方例1]油中水型(W/O)2層タイプクリーム
ジメチルポリシロキサン 5.0 質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 25.0
トリメチルシロキシケイ酸 5.0
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 2.0
ジプロピレングリコール 5.0
パルミチン酸デキストリン被覆微粒子酸化亜鉛(60nm) 15.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.02
グルタチオン 1.0
チオタウリン 0.05
Oldenlandia diffusa (Willd.) Roxb.のヘキサン抽出物 1.0
パラベン 適量
フェノキシエタノール 適量
エデト酸三ナトリウム 適量
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 7.5
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
球状ポリアクリル酸アルキル粉末 5.0
ブチルエチルプロパンジオール 0.5
精製水 残余
香料 適量
【0046】
[処方例2]水中油型(O/W)乳液
ワセリン 5.0 質量%
ベヘニルアルコール 0.5
バチルアルコール 0.5
グリセリン 7.0
1,3−ブチレングリコール 7.0
1,2−ペンタンジオール 1.0
キシリット 3.0
ポリエチレングリコール20000 2.0
硬化油 2.0
ホホバ油 2.0
スクワラン 5.0
イソステアリン酸 0.5
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 2.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 0.4
水酸化カリウム 適量
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.01
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
トリメチルグリシン 3.0
アルブチン 3.0
酵母エキス 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
チオタウリン 0.1
クララエキス 0.1
ベンガラ 適量
クインスシードエキス 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.2
フェノキシエタノール 適量
精製水 残余
Salvia miltiorrhiza Bge.のエタノール抽出物 2.0
【0047】
[処方例3]水中油型(O/W)乳液
ジメチルポリシロキサン 3.0 質量%
メチルフェニルポリシロキサン 3.0
エタノール 5.0
グリセリン 4.0
ジプロピレングリコール 5.0
1,3−ブチレングリコールコハク酸ジ2−エチルヘキシル 3.5
水酸化カリウム 0.1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.1
チオタウリン 0.1
エデト酸三ナトリウム 0.1
4−t−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン 3.0
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 3.0
酸化鉄 0.01
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(ペミュレンTR−2) 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.2
パラベン 適量
Portulaca oleraceaの1,3−ブチレングリコール抽出物 2.5
精製水 残余
香料 適量
【0048】
[処方例4]化粧水(可溶化系)
エチルアルコール 5.0 質量%
グリセリン 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル 0.2
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.03
トリメチルグリシン 1.0
ポリアスパラギン酸ナトリウム 0.1
α−トコフェロール 2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム 0.1
チオタウリン 0.1
緑茶エキス 0.1
西洋ハッカエキス 0.1
EDTA3ナトリウム 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.05
水酸化カリウム 0.02
フェノキシエタノール 適量
精製水 残余
香料 適量
Rosa chinensis Jacq. の酢酸エチルエステル抽出物 2.5
Stemona japonicaの50%エタノール水溶液抽出物 1.5
【0049】
[処方例5]化粧水
エタノール 10.0 質量%
グリセリン 2.0
ジプロピレングリコール 1.0
イソステアリン酸 0.1
ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体 1.0
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 0.1
クエン酸 0.02
クエン酸ナトリウム 0.08
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.01
ヒポタウリン 0.1
カモミラエキス 0.1
ラベンダー油 0.001
フェノキシエタノール 適量
活性水素水 1.0
Spirodela polyrhizaのエタノール抽出物 2.5
Cuscuta chinensis Lam.のアセトン抽出物 1.5
精製水 残余
【0050】
[処方例6]粉末固形ファンデーション(両用タイプ)
α−オレフィンオリゴマー 3.0 質量%
ジメチルポリシロキサン 8.0
メチルハイドロジェンポリシロキサン 0.5
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1.0
リン酸水素カルシウム 3.0
アルキル変性シリコン樹脂被覆黄酸化鉄 2.0
アルキル変性シリコン樹脂被覆ベンガラ 1.0
アルキル変性シリコン樹脂被覆黒酸化鉄 適量
アルキル変性シリコン樹脂被覆酸化チタン 10.0
アルキル変性シリコン樹脂被覆タルク 5.0
低温焼成酸化亜鉛 5.0
硫酸バリウム 2.0
焼成セリサイト 10.0
金雲母 残余
球状ポリメチルシルセスキオキサン粉末 3.0
架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体粉末 5.0
酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
D−δ−トコフェロール 0.1
チオタウリン 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
パラメトキシ桂皮酸2−エチルへキシル 3.0
無水ケイ酸 1.0
酸化チタン 2.0
Phaseolus radiatusのヘキサン抽出物 2.5
Psoralea corylifolia L.のエタノール抽出物 1.5
【0051】
[処方例7]化粧下地(油中水型乳化タイプ)
ジメチルポリシロキサン(6mPas) 5.0 質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 25.0
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 3.0
グリセリン 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
キシリット 0.5
イソステアリン酸 0.5
アルキル変性シリコン樹脂被覆無水ケイ酸 2.0
タルク 0.5
ステアリン酸アルミニウム 1.0
ベンガラ被覆雲母チタン 0.1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
L−セリン 0.1
オトギリソウエキス 0.1
酢酸DL−α−トコフェロール 0.2
チオタウリン 0.1
トゲナシエキス 0.1
シャクヤクエキス 0.1
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
ユキノシタエキス 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
フェノキシエタノール 適量
パルミチン酸デキストリン被覆黄酸化鉄 0.1
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1.0
精製水 残余
トリメチルシロキシケイ酸 1.5
球状無水ケイ酸 1.0
球状ポリエチレン末 5.0
香料 適量
Spirodela polyrhiza のエタノール抽出物 2.0
【0052】
[処方例8]スティックコンシーラー(油性)
マイクロクリスタリンワックス 5.0 質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
メチルフェニルポリシロキサン 5.0
スクワラン 20.0
カルナウバロウ 1.0
セスキイソステアリン酸ソルビタン 1.0
酸化チタン 残余
セリサイト 15.0
合成金雲母 0.5
カオリン 10.0
架橋型シリコーン末(トレフィルE−506) 0.1
ベンガラ被覆雲母チタン 5.0
酢酸トコフェロール 0.1
δ−トコフェロール 0.1
チオタウリン 0.1
Rosa chinensis Jacq. の水抽出物 0.5
ベンガラ 適量
黄酸化鉄 適量
香料 適量


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲッキ(学名:Rosa chinensis Jacq.)、ウキクサ(学名:Spirodela polyrhiza)、緑豆(学名:Phaseolus radiatus)、白花蛇舌草(フタバムグラ)(学名:Oldenlandia diffusa (Wild.) Roxb. )、丹参(学名:Salvia miltiorrhiza Bge.)、馬歯ケン(学名:Portulaca oleracea)、百部(学名:Stemona japonica)、菟絲子(ハマネナシカズラ)(学名:Cuscuta chinensis Lam.)、補骨脂(オランダヒユ)(学名:Psoralea corylifolia L.)より選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物を含有することを特徴とする抗老化剤。
【請求項2】
ゲッキ(学名:Rosa chinensis Jacq.)、ウキクサ(学名:Spirodela polyrhiza)、緑豆(学名:Phaseolus radiatus)より選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物を含有することを特徴とするコラゲナーゼ阻害剤。
【請求項3】
白花蛇舌草(フタバムグラ)(学名:Oldenlandia diffusa (Wild.) Roxb.)、ウキクサ(学名:Spirodela polyrhiza)、緑豆(学名:Phaseolus radiatus)、丹参(学名:Salvia miltiorrhiza Bge.)、馬歯ケン(学名:Portulaca oleracea)、百部(学名:Stemona japonica)、菟絲子(ハマネナシカズラ)(学名:Cuscuta chinensis Lam.)、補骨脂(オランダヒユ)(学名:Psoralea corylifolia L.)より選ばれる1種又は2種以上の植物の抽出物を含有することを特徴とする抗酸化剤。

【公開番号】特開2007−126368(P2007−126368A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318286(P2005−318286)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】