説明

抗肥満剤

【課題】本発明は、日常的に連用可能であり、効果的且つ安全性の高い抗肥満剤、脂肪分解促進剤、血中中性脂肪上昇抑制剤及びアディポネクチン産生促進剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、アイブライトの抽出物を含有することを特徴とする。製剤形態は種々のものが選択できるが、特に内服剤が好ましい。投与量は、使用目的、年齢、体重、症状、治療効果等によって異なるが、体重1kg当り0.02〜500mg、特に好ましくは0.1〜300mgである。本発明は、肥満に対して多面的に作用して優れた改善効果を発揮するため、肥満及び肥満に関連する生活習慣病の予防・改善を目的とする医薬品、医薬部外品、食品及び化粧品等に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイブライトの抽出物を含有することを特徴とする抗肥満剤、脂肪分解促進剤、血中中性脂肪上昇抑制剤及びアディポネクチン産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国では、食生活が豊かになったことによるカロリー過剰摂取と運動不足を要因とする肥満が急激に増加している。肥満とは、脂肪細胞に中性脂肪が過剰に蓄積された状態である。肥満の主要因は前述のようにカロリー過剰摂取と運動不足であるが、それ以外にも体質的因子、代謝性因子、食餌性因子、精神的因子、中枢性因子等の多くの要因が関わっており、多方面から肥満を予防・改善する種々の方法が提案されている。
【0003】
抗肥満剤としては代表的なものに、糖質や脂質の消化や吸収を妨げることにより、肥満を予防・改善するものがある。例えば、ウコギ又はその抽出物を含有することを特徴とするα−アミラーゼ阻害剤(特許文献1)、ハクトウオウ、ミツモウカ等からなる群から選ばれた1種又は2種以上を配合することを特徴とする脂肪吸収抑制剤(特許文献2)である。
【0004】
脂肪細胞中の中性脂肪を積極的に分解して肥満を予防・改善するものとして、脂肪分解促進剤が提案されている。例えば、ハマビシ科ラフレ属植物の抽出物を有効成分とする脂肪分解促進剤(特許文献3)、ミカン科植物の果皮、葉又はそれらの抽出物からなる脂肪分解促進剤(特許文献4)である。
【0005】
一般に、血中の中性脂肪の値が150mg/dL以上となった状態を脂質異常症と呼ぶ。脂質異常症が進行すると、中性脂肪が血管壁に沈着して動脈硬化を引き起こし、さらには虚血性心疾患や脳血管障害等の重篤な疾患につながることが知られている。又、体内に急速に吸収された中性脂肪は血管に放出され、そのほとんどがエネルギーに変換されることなく脂肪細胞に蓄積することから、血中中性脂肪は肥満と密接な関連性を有する。
血中中性脂肪上昇抑制剤としては、例えば、ヘスペリジン及びその配糖体を有効成分とするリパーゼ阻害剤及び血中トリグリセライド低下剤(特許文献5)、雲南紅茶の抽出物を有効成分とする食後の血中中性脂肪上昇抑制剤(特許文献6)が開示されている。
【0006】
アディポネクチンは、脂肪組織の脂肪細胞から特異的に産生、分泌されるサイトカインであり、糖や脂質の代謝に密接に関与している(非特許文献1)。アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるにも拘らず、肥満によりその血中濃度が低下し、循環器系疾患のリスクが増大することが知られている(非特許文献2)。又、アディポネクチンは、骨格筋や肝臓のAMPキナーゼを活性化することによって脂肪燃焼を促進することが報告されており(非特許文献3)、肥満と密接な関係がある。このため、血中アディポネクチン濃度を高めるべく、種々のアディポネクチン産生促進剤が提案されている。
例えば、ナツメグの実の抽出物又は処理物を有効成分として含むことを特徴とするアディポネクチン産生促進剤(特許文献7)、冬虫夏草の熱水抽出物を有効成分とするアディポネクチン産生促進剤(特許文献8)である。
【0007】
しかし、前述の脂肪分解促進剤、血中中性脂肪上昇抑制剤及びアディポネクチン産生促進剤の効果はいずれも満足できるものではなく、特に、複数の要因が複雑に関与する肥満に対しては、多くの効果を期待できるものではなかった。
【0008】
本発明に関わるアイブライトとは、ヨーロッパ、西アジア、北米を原産とするゴマノハグサ科に属する草本であり、学名をEuphrasia officinalisという。アイブライトは、ヨーロッパでは独自の植物療法に使用されており、洗顔液又は茶剤として、目の急性・亜急性の炎症、特に結膜炎、眼瞼炎、視力障害に用いられてきた。その他にも、タンパク質の糖化を抑制し、糖化が原因で起こる糖尿病合併症、網膜症、腎症等、各種疾患の治療への応用(特許文献9)、アレルギー性の炎症を治療するIgE産生抑制剤への使用(特許文献10)、美白効果を有する皮膚外用剤への使用(特許文献11)等が提案されている。
【0009】
しかし、アイブライトの抗肥満効果、脂肪分解促進効果、血中中性脂肪上昇抑制効果及びアディポネクチン産生促進効果については、全く報告されていない。
【0010】
【特許文献1】特開2004−256432号公報
【特許文献2】特開2006−169181号公報
【特許文献3】特開2004−35516号公報
【特許文献4】特開2002−326947号公報
【特許文献5】特開平9−143070号公報
【特許文献6】特開2007−99651号公報
【特許文献7】特開2007−261993号公報
【特許文献8】特開2007−31302号公報
【特許文献9】特開2008−88102号公報
【特許文献10】特開2003−2811号公報
【特許文献11】特開2002−284631号公報
【非特許文献1】Nature Medicine、2002年、8巻、p.731−737
【非特許文献2】Circulation Journal、2004年、68巻、p.975−981
【非特許文献3】Nature Medicine、2002年、8巻、p.1288−1295
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、効果的で安全性の高い抗肥満剤、脂肪分解促進剤、血中中性脂肪上昇抑制剤及びアディポネクチン産生促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、アイブライトの抽出物が、優れた抗肥満効果、脂肪分解促進効果、血中中性脂肪上昇抑制効果及びアディポネクチン産生促進効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明に関わるアイブライトの抽出物とは、アイブライトの地上部から溶媒で抽出することによって得られる。その抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出、常温抽出等を適宜選択することができる。
【0014】
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール類(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。これらの溶媒は、1種又は2種以上を混合して用いても良い。好ましくは、水、低級アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、含水エタノールである。
【0015】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理をして用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良い。
【0016】
本発明に関わる抗肥満剤、脂肪分解促進剤、血中中性脂肪上昇抑制剤及びアディポネクチン産生促進剤には、上記抽出物をそのまま使用しても良く、抽出物の効果を損なわない範囲内において、他の成分を配合することもできる。他の成分としては、固体、液体、半固体でも良く、例えば、次のものが挙げられる。すなわち、賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、香料、保存料、溶解補助剤、溶剤等である。具体的には、乳糖、ショ糖、ソルビット、マンニット、澱粉、沈降性炭酸カルシウム、重質酸化マグネシウム、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、セルロース又はその誘導体、アミロペクチン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、界面活性剤、水、生理食塩水、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、カカオ脂、オリーブ油、ワセリン、パラフィン、高級アルコール等である。
【0017】
本発明に関わる抗肥満剤、脂肪分解促進剤、血中中性脂肪上昇抑制剤及びアディポネクチン産生促進剤は、医薬品、医薬部外品、食品又は化粧品のいずれにも用いることができる。投与方法としては、経口投与(内服剤)及び経皮投与(外用剤)等が挙げられるため、製剤形態は種々のものを選択できるが、特に内服剤が好ましい。例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、シロップ剤、丸剤、懸濁剤、液剤、乳剤等である。非経口用としては、ローション、クリーム、乳液、浴用剤、注射薬、座薬等の剤型が挙げられる。
【0018】
本発明に関わる抽出物の配合量は、製剤形態、使用目的等によって異なるが、外用剤の場合、乾燥固形分として0.001〜10重量%であれば良く、より好ましくは0.01〜5重量%である。又、内服剤の場合、本発明に関わる抽出物の1日の投与量は、使用目的、年齢、体重、症状、治療効果等によって異なるが、体重1kg当り0.02〜500mg、特に好ましくは0.1〜300mgである。製剤への添加法は予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明に関わる抗肥満剤、脂肪分解促進剤、血中中性脂肪上昇抑制剤及びアディポネクチン産生促進剤は、各剤の目的に対して優れた効果を発揮するばかりでなく、肥満について多面的に作用して優れた改善効果を発揮するため、肥満及び肥満に関連した生活習慣病の予防・改善に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を詳細に説明するため実施例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に示す配合量の部とは重量部を示し、%は重量%を示す。
【実施例1】
【0021】
アイブライトの熱水抽出物
アイブライトの乾燥物(地上部)100gに精製水2kgを加え、95〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して熱水抽出物を21g得た。
【実施例2】
【0022】
アイブライトの20%エタノール抽出物
アイブライトの乾燥物(地上部)100gに精製水1.6kg及びエタノール0.4kgを加え、常温で3日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥して20%エタノール抽出物を14g得た。
【実施例3】
【0023】
アイブライトのエタノール抽出物
アイブライトの乾燥物(地上部)100gにエタノール2kgを加え、常温で3日間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してエタノール抽出物を9g得た。
【実施例4】
【0024】
アイブライトの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
アイブライトの乾燥物(地上部)100gに精製水500g及び1,3−ブチレングリコール(1,3−BG)500gを加え、常温で7日間抽出した後、濾過し、50%1,3−BG抽出物を980g得た。
【実施例5】
【0025】
ローション
処方 配合量(部)
1.アイブライトの50%1,3−BG抽出物(実施例4) 1.0
2.1,3−BG 7.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パントテン酸エチルアルコール 0.1
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
10.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
11.香料 0.1
12.精製水 84.47
[製造方法]成分1〜6及び12と、成分7〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し、濾過して製品とする。
【実施例6】
【0026】
クリーム
処方 配合量(部)
1.アイブライトのエタノール抽出物(実施例3) 0.05
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.1,3−BG 8.5
14.精製水 68.1
[製造方法]成分1〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、さらに30℃まで冷却して製品とする。
【実施例7】
【0027】
乳液
処方 配合量(部)
1.アイブライトの熱水抽出物(実施例1) 0.01
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水 73.19
[製造方法]成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、さらに30℃まで冷却して製品とする。
【実施例8】
【0028】
浴用剤
処方 配合量(部)
1.アイブライトのエタノール抽出物(実施例3) 5.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.メントール 0.1
4.黄色202号(1) 0.01
5.香料 0.1
6.硫酸ナトリウム 44.79
[製造方法]成分1〜6を均一に混合し、製品とする。
【実施例9】
【0029】
散剤
処方 配合量(部)
1.アイブライトの20%エタノール抽出物(実施例2) 20
2.乾燥コーンスターチ 30
3.微結晶セルロース 50
[製法]成分1〜3を混合し、散剤とする。
【実施例10】
【0030】
錠剤
処方 配合量(部)
1.アイブライトの熱水抽出物(実施例1) 1
2.乾燥コーンスターチ 29
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20
4.微結晶セルロース 40
5.ポリビニルピロリドン 7
6.タルク 3
[製法]成分1〜5を混合し、次いで10%の水を結合剤として加えて、押出し造粒後乾燥する。成形した顆粒に成分6を加えて混合し、打錠する。1錠0.52gとする。
【実施例11】
【0031】
錠菓
処方 配合量(部)
1.アイブライトのエタノール抽出物(実施例3) 1.5
2.乾燥コーンスターチ 50.0
3.エリスリトール 40.0
4.クエン酸 5.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 3.4
6.香料 0.1
[製法]成分1〜4を混合し、10%の水を結合剤として加え、流動層造粒する。成形した顆粒に成分5及び6を加えて混合し、打錠する。1粒1.0gとする。
【実施例12】
【0032】
飲料
処方 配合量(部)
1.アイブライトの20%エタノール抽出物(実施例2) 1.0
2.ステビア 0.05
3.リンゴ酸 5.0
4.香料 0.1
5.精製水 93.85
[製法]成分1〜4を成分5の一部の精製水に撹拌溶解する。次いで、成分5の残りの精製水を加えて混合し、90℃に加熱して50mLのガラス瓶に充填する。
【実施例13】
【0033】
実験例1 脂肪細胞を用いた脂肪分解促進効果の確認
35mmディッシュにマウス前駆脂肪細胞(3T3−L1)を播種し、培養用培地(10%牛胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM培地))2mL中にて、コンフルエントに達するまで5%CO存在下、37℃で培養した。細胞がコンフルエントに達した後、培養液を吸引除去し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS(−))によって洗浄した後に、分化誘導培地1(10%牛胎児血清、1μM デキサメタゾン、10μg/mL インスリン、0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン及び100μM アスコルビン酸を含むDMEM培地)2mLを添加し、同様に3日間培養した。次いで、培養液を吸引除去し、細胞をPBS(−)にて洗浄した後、分化誘導培地2(10%牛胎児血清、10μg/mL インスリン及び100μM アスコルビン酸を含むDMEM培地)2mLを添加し、3日間培養した。その後、培養液を吸引除去し、細胞をPBS(−)にて洗浄し、10%牛胎児血清を含むDMEM培地2mLを添加し、更に8日間培養した。
分化誘導開始から14日後、培養液を吸引除去し、PBS(−)にて洗浄した後に、新たに10%牛胎児血清を含むDMEM培地2mLを添加した。この際、アイブライトの20%エタノール抽出物(日本粉末薬品)をDMSOに溶解した試料溶液2μLを添加し、更に7日間培養した。尚、対照として、試料溶液の代わりにDMSOのみを添加した。試料添加から7日後、培地を吸引除去し、PBS(−)にて洗浄した。ディッシュに対し、1mLのPBS(−)を添加し、ディッシュ上の細胞を剥離し、1.5mLチューブに移した。1.5mLチューブを4℃、15,000rpmにて5分間遠心分離し、上清を除去した後、新たにPBS(−)を0.5mL添加した。超音波破砕機を用いて細胞沈殿物をPBS(−)中に分散し、その懸濁液をタンパク定量及び脂肪定量に供した。タンパク定量はローリー法により、脂肪定量はトリグリセライドE−テストワコー(和光純薬)を用い、それぞれ実施した。
【0034】
タンパク定量及び脂肪定量の結果より、単位タンパク当りの脂肪量を算出した。脂肪分解促進効果は、単位タンパク当りの脂肪減少率を比較することにより行った。すなわち、脂肪減少率が高いほど脂肪分解促進効果が強いことを示す。脂肪減少率は以下の式により算出した。
脂肪減少率(%)=(1−(アイブライトの抽出物を添加した時の単位タンパク当りの脂肪量)/(DMSOのみを添加した時の単位タンパク当りの脂肪量))×100
【0035】
【表1】

【0036】
以上の実験方法を用いて脂肪細胞に対する脂肪分解促進効果を検討した結果、表1に示すように、本発明に関わるアイブライトの抽出物は、濃度依存的に脂肪減少率を上昇させ、脂肪分解促進効果を有することが判明した。
【実施例14】
【0037】
実験例2 アディポネクチン産生促進効果の確認
35mmディッシュにマウス前駆脂肪細胞(3T3−L1)を播種し、培養用培地(10%牛胎児血清を含むDMEM培地)2mL中にて、コンフルエントに達するまで5%CO存在下、37℃で培養した。細胞がコンフルエントに達した後に、培養液を分化誘導培地1(10%牛胎児血清、1μM デキサメタゾン、10μg/mL インスリン、0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン及び100μM アスコルビン酸を含むDMEM培地)に置換し、同様に3日間培養した。その後、培養液を分化誘導培地2(10%牛胎児血清、10μg/mL インスリン及び100μM アスコルビン酸を含むDMEM培地)に置換し、同様に3日間培養した。さらに10%牛胎児血清を含むDMEM培地に置換し、3日間培養した。
分化誘導開始から9日後、培養液を吸引除去し、PBS(−)にて洗浄した後に、新たに10%牛胎児血清を含むDMEM培地2mLを添加した。この際、アイブライトの20%エタノール抽出物(日本粉末薬品)をDMSOに溶解した試料溶液2μLを添加し、更に2日間培養した。尚、対照として、試料溶液の代わりにDMSOのみを添加した。試料添加から2日後、培養上清を採取し、アディポネクチン分泌量の測定に用いた。培養上清中のアディポネクチンの定量は、大塚製薬株式会社製マウス/ラットアディポネクチンELISAキットを使用した。
【0038】
【表2】

【0039】
表2に示すように、脂肪細胞に対して本発明に関わるアイブライトの抽出物を添加することにより、アディポネクチンの産生は濃度依存的に増加した。これより、アイブライトの抽出物は、アディポネクチン産生促進効果を有することが判明した。
【実施例15】
【0040】
実験例3 抗肥満効果及び血中脂質上昇抑制効果の確認
アイブライトの20%エタノール抽出物(日本粉末薬品)を使用して、抗肥満効果及び血中脂質上昇抑制効果を確認した。実験には4週令SD系雄性ラットを1群6匹として使用した。通常食群は、市販の飼料(オリエンタル酵母工業製:マウス・ラット飼育用−MF)を用い飼育した。肥満を誘導するための高脂肪食は、牛脂23%を含有する高脂肪飼料(オリエンタル酵母工業製)を用いた。アイブライトの20%エタノール抽出物を0.5%添加した高脂肪飼料を調製し、自由に摂取させ飼育した(アイブライト群)。アイブライトの20%エタノール抽出物の投与量は、飼料の摂取量より算出すると、体重1kg当りおよそ200mgとなる。又、比較のため、アイブライトの20%エタノール抽出物の代わりにカゼインを0.5%添加した高脂肪飼料による飼育群(対照群)と、血中脂質上昇抑制効果が既に報告されている糖転移ヘスペリジン(林原生物化学研究所)を1.0%添加した高脂肪飼料による飼育群(糖転移ヘスペリジン群)を設定した。
飼育開始から12日、16日、23日、30日、37日、43日及び51日目の午前にラットの体重を測定した。又、試験終了時に解剖を行い、組織検査と血液検査を行った。内臓脂肪蓄積量の評価として、副睾丸脂肪組織重量を測定した。血中脂質の測定にあたっては、飼育47日目の夕方より18時間絶食し、48日目に空腹時の血液を尾静脈より採取した。次いで、遠心分離により血漿を分取し、中性脂肪については、トリグリセライドE−テストワコー(和光純薬工業製)を用い、遊離脂肪酸については、NEFA−C−テストワコー(和光純薬工業製)を用い、それぞれ測定を行った。
【0041】
表3に、飼育開始から12日、16日、23日、30日、37日、43日及び51日目における各群の体重の平均値を示す。アイブライトの20%エタノール抽出物を投与した群は、対照群と比較して体重増加量が少なく、アイブライトの抽出物に充分な体重増加抑制効果が認められた。アイブライト群における体重増加の過程において、飼育初期の段階の体重減少は観察されず、又、実験終了時の解剖所見において、組織学的にも血液学的にも異常は認められなかったことから、アイブライトの抽出物は、一般的健康状態には影響を与えることなく、体重増加の抑制に効果的であることが示された。
【0042】
【表3】

【0043】
血中中性脂肪の測定結果を表4に、血中遊離脂肪酸の測定結果を表5に示す。高脂肪飼料を用いた飼育により、血中の中性脂肪と遊離脂肪酸は共に増加するが、アイブライトの抽出物を投与することにより、何れの血中脂質も抑制されることが判明した。その効果は、血中脂質上昇抑制効果が既に報告されている糖転移ヘスペリジンよりも高く、極めて優れていた。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
副睾丸脂肪組織重量の測定結果を表6に示す。高脂肪飼料を用いた飼育により副睾丸脂肪組織重量は増加するが、アイブライトの抽出物を投与することにより、重量増加の抑制が認められた。
【0047】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に関わるアイブライトの抽出物を含有することを特徴とする抗肥満剤、脂肪分解促進剤、血中中性脂肪上昇抑制剤及びアディポネクチン産生促進剤は、各剤の目的に対して優れた改善効果を発揮する。よって、肥満や生活習慣病等の予防・改善を目的とする医薬品、医薬部外品、食品及び化粧品等に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイブライトの抽出物を含有することを特徴とする抗肥満剤。
【請求項2】
アイブライトの抽出物を含有することを特徴とする脂肪分解促進剤。
【請求項3】
アイブライトの抽出物を含有することを特徴とする血中中性脂肪上昇抑制剤。
【請求項4】
アイブライトの抽出物を含有することを特徴とするアディポネクチン産生促進剤。
【請求項5】
請求項1記載の抗肥満剤、請求項2記載の脂肪分解促進剤、請求項3記載の血中中性脂肪上昇抑制剤及び請求項4記載のアディポネクチン産生促進剤のいずれかを含む内服剤。


【公開番号】特開2011−201785(P2011−201785A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68158(P2010−68158)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】