説明

抗菌剤組成物

〜Cの低級アルコール及び水;グルコン酸クロルヘキシジンのようなカチオン性抗菌剤;低級アルコールに可溶性の疎水性ポリマー;二塩基酸のジエステル及びクエン酸のトリエステルのような皮膚軟化剤エステル;及びC12〜C21脂肪酸アルコール、C12〜C21脂肪族エステル、C12〜C21脂肪族エーテル、C12〜C21脂肪酸アミド、及びこれらの組み合わせなどの遊離ヒドロキシル基を少なくとも1つ含む任意の脂肪族成分からなるヒドロキシル溶媒系を含有する抗菌剤組成物が提供される。本明細書に記載される組成物は、改善された抗菌有効性及び改善された審美的優美性を呈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、2007年12月31日出願の米国仮出願整理番号第61/018165号に優先を主張し、本明細書に参照することにより組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
手術、カテーテル法、又は針穿刺などの侵襲的処置に先立って、感染の危険性を減少させるために皮膚を殺菌することは、工業世界において標準的な習慣である。現在、クロルヘキシジン組成物は、手、皮膚、手術部位、カテーテル部位、及び口腔を殺菌するために選択される薬剤である。クロルヘキシジン及びその塩は、使用するのに安全である、優れた有効性を有する周知の抗菌剤である。クロルヘキシジン及びその塩はまた、24時間を超える、皮膚上で持続的な抗菌活性を示すことが多い。
【0003】
クロルヘキシジンを含有する2種のヒドロアルコール性組成物が現在入手可能である。AVAGARD手術用の手による前処理剤は、3M Companyから入手可能な、61%のエタノール中に1%のクロルヘキシジングルコネートを含有するヒドロアルコール性組成物である。クロロプレップ(CHLOROPREP)手術用前処理剤は、Cardinal Healthから入手可能な、2w/v%のクロルヘキシジングルコネート(CHG)、70v/v%のイソプロパノール、及び水を含有する組成物である。
【0004】
クロルヘキシジン又はその誘導体を含有する製品はいくつかの不利点を有する。クロルヘキシジンはカチオン性ビグアニドであり、塩(塩化物、炭酸塩など)、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、並びに有機酸又は有機酸の塩などのアニオン性化合物によって、容易に不活性化され得る。多くの石鹸及び皮膚クリームはこれらの物質を含有し、クロルヘキシジン及びその塩を容易に不活性化する。クロルヘキシジン組成物はまた、皮膚及び粘膜に対して刺激性であり得る。2%を超えるCHGを含有する製品は、特に繰返し使用した後に、重度の炎症を引き起こす可能性がある。
【0005】
クロルヘキシジン及び/又は他の抗菌剤を含有する手術用前処理剤は、特に濡れた皮膚状態の下で、医療用テープ、包帯、及び手術用ドレープの接着を弱める可能性がある。クロルヘキシジン塩は特にこの問題を悪化するが、それは、これらが親水性であり、局所適用後に皮膚表面に残るからである。大量の体液又は生理食塩水が存在する場合の手術におけるように、濡れた状態の下では、クロルヘキシジン塩は手術用ドレープ及び包帯の接着の喪失原因となる可能性がある。この接着の喪失は多くの場合「ドレープリフト」と称され、非常に望ましくないが、それは、滅菌野に割り込み、手術部位の感染の可能性を高めるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
手術及びカテーテル部位での使用に、低刺激性、審美的受容性、優れた有効性、及び改善された湿式接着性を有するクロルヘキシジン組成物に対する必要性が明瞭に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、皮膚消毒剤、術前手術用前処理剤、手用殺菌剤、カテ−テル及び点滴用皮膚前処理剤及び無水手用スクラブなどの皮膚殺菌用の製品として有用な組成物を提供する。本発明の好ましい処方は通常、1回の適用後、及び複数回の適用後のどちらでも望ましい審美的感触を有する。加えて、好ましい処方は、特に水分の存在下で、医療物品の皮膚への接着を維持又は改善する。術前手術用前処理剤又は消毒剤として使用されるとき、本明細書に記載される組成物は改善された抗菌有効性を達成する。
【0008】
1つの態様では、少なくとも35重量%の量で存在するC〜C低級アルコール、その低級アルコール内にある可溶性又は分散性疎水性ポリマー、エステル皮膚軟化剤、及びカチオン性抗菌剤を含む抗菌剤組成物が提供される。抗菌剤組成物は、6を超えるHLBを有する界面活性剤を含まず、かつ親水性ポリマーを実質的に含まない。
【0009】
別の態様では、少なくとも35重量%の量で存在するC〜C低級アルコール、その低級アルコール内にある可溶性疎水性ポリマー、カチオン性抗菌剤、並びに二塩基酸のジエステル、クエン酸のトリエステル、ジオールのジエステル、トリオールのトリエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるエステル皮膚軟化剤、を含む抗菌剤組成物が提供される。抗菌剤組成物は、6を超えるHLBを有する界面活性剤を含まず、かつ親水性ポリマーを実質的に含まない。
【0010】
別の態様では、少なくとも35重量%の量で存在するC〜C低級アルコール、その低級アルコール内にあるアクリレート及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、n−ビニルラクタムポリマー及びビニルコポリマー、並びに前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択させる可溶性疎水性ポリマー、カチオン性抗菌剤、並びエステル皮膚軟化剤、を含む抗菌剤組成物が提供される抗菌剤組成物は、6を超えるHLBを有する界面活性剤を含まず、かつ親水性ポリマーを実質的に含まない。
【0011】
更なる態様では、疎水性ポリマー、カチオン性抗菌剤、並びに二塩基酸のジエステル、クエン酸のトリエステル、ジオールのジエステル、トリオールのトリエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるエステル皮膚軟化剤からなる群から選択されるエステル皮膚軟化剤、を含む抗菌剤組成物が提供される。抗菌剤組成物は、親水性ポリマーを実質的に含まず、かつ界面活性剤を含まない。
【0012】
更なる態様では、哺乳類の皮膚状態を守る又は処理する方法が提供され、この方法は、上記組成物のいずれかの抗菌剤組成物を皮膚に適用する工程を含む。
【0013】
別の態様では、手術部位又はカテーテル部位の感染予防方法が提供され、この方法は、上記組成物のいずれかの抗菌剤組成物を手術又はカテーテル処理に先立って適用する工程を含む。
【0014】
用語の定義
「室温」とは、本明細書で使用されるとき、約21℃〜25℃の範囲の温度を指す。
【0015】
「皮膚軟化剤」とは、本明細書で使用されるとき、繰返し使用すると、皮膚の水分濃度、弾性、又は外観を維持又は改善できる物質を指す。皮膚軟化剤は多くの場合、角質層の湿分含量を高めるように作用する。皮膚軟化剤は通常、それらの機能に基づいて2つの部類に大きく分類される。皮膚軟化剤の第1の部類は、閉塞性バリアーを形成することによって機能し、角質層からの水分の蒸発を減少させる。皮膚軟化剤の第1の部類は、室温でワックスである化合物と、液体又は油である化合物とに更に分類される。皮膚軟化剤の第2の部類は、角質層に浸透して、水を物理的に束縛して蒸発を防ぐ。皮膚軟化剤の第2の部類には、水溶性であり、多くの場合保湿剤と呼ばれるものが挙げられる。皮膚軟化剤エステルは閉塞性皮膚軟化剤としても機能し、皮膚状態を維持又は改善するのを助け得るが、この発明の目的に関し、皮膚軟化剤エステルは、使用され得る他のいずれの皮膚軟化剤からも分離したもの及び別個のものであると考えられる。
【0016】
「ポリマー」とは、本明細書で使用されるとき、反復ユニット及び少なくとも10,000の数平均分子量を有する自然又は合成分子を指し、いかなる長さのホモポリマー及びコポリマーをも含む。
【0017】
「(メタ)アクリレートモノマー」は、アルコールのアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである。
【0018】
「コポリマー」は、いかなる長さ(オリゴマーを含む)の2つ以上のタイプの重合可能なモノマーを含み、したがって、ターポリマー、テトラポリマー等を含み、それは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、又は逐次コポリマーを含むことができる。
【0019】
「ローション」とは、いかなる噴射剤も含まない液体又はクリームを意味する。
【0020】
「溶媒系」又は「ヒドロアルコール性溶媒系」とは、本明細書で使用されるとき、本明細書に記載される組成物における低級(C〜C)アルコールと水の組み合わせを指す。
【0021】
「溶媒」とは、本明細書で使用されるとき、別の化合物を溶解又は分散するために使用されるいずれかの有機化合物を指す。
【0022】
「界面活性剤」は、本明細書で使用されるとき、「乳化剤」と同義であり、水の表面張力及び/又は水と不混和性液体との間の界面張力を減少させることが可能な両親媒性物質(共有結合している極性及び無極性のどちらの領域も有する分子)を意味する。
【0023】
「脂肪族」とは、本明細書で使用されるとき、特に指示のない限り、8個以上の炭素原子(奇数又は偶数))の炭化水素鎖長を指す。
【0024】
「サイダトロープ」は、本明細書で使用されるとき、抗菌剤組成物の有効性を増強する組成物の疎水性成分を表す用語であり、例えば、抗菌剤を含まない組成物とサイダトロープ成分を含まない組成物が別々に使用されるとき、それらは、全体の組成物と同程度の抗菌活性を提供しない。例えば、抗菌剤が存在しない場合、サイダトロープ成分は、評価可能ないかなる抗菌活性も提供し得ない。強化効果は、死滅水準、死滅速度、及び/又は死滅する微生物の範囲に関連する場合があり、全ての微生物について見られなくてもよい。サイダトロープ成分は、相乗的に作用してもよく、例えば、残りの組成物と組み合わされるとき、組成物は全体として、サイダトロープ成分を含まない組成物の活性と抗菌剤を含まない組成物の活性との合計よりも大きな活性を示す。サイダトロープは好ましくは周囲条件で液体であり、25℃未満の融解温度を有する。抗菌剤組成物中に1つを超えるサイダトロープが存在するとき、少なくとも1つのサイダトロープは25℃未満の融解温度を有する。疎水性ポリマー、エステル皮膚軟化剤、及び任意の脂肪族成分は、すべて本明細書に記載される組成物内で、サイダトロープとして機能する。
【0025】
「疎水性」又は「非水溶性」とは、23℃において水に有意に溶解しない物質を指す。溶解度は、適切な濃度において23℃で少なくとも24時間にわたって(又は化合物を溶解するのに必要であれば、高温で)化合物を水と徹底的に混合し、これを23〜25℃で24時間にわたって置いておき、試料を観察することにより決定することができる。4cmの経路長を有するガラス瓶の中に、試料は第2相の痕跡を有すべきであり、これは液体又は固体である可能性があり、上部、底部に分離し得るか又は試料全体に分布し得る。結晶性化合物については、過飽和溶液を生じないように注意が払われるべきである。成分は混合され、観察されるべきである。混濁又は可視的な沈殿の存在又は分離相は、溶解度限界が超えていることを示す。典型的には、1×1cmセルに定置されるとき、好適な分光光度計において655nmの波長で測定されると試料は70%未満の透過率を有する。裸眼で観察することができるものよりも低い溶解度の測定については、Henrik Vorum,et al.in Biochemica et.Biophysica Acta,1126,135〜142、「pH7.4におけるリン酸緩衝液内の長鎖脂肪酸の溶解度の従来の溶解度評価」に記載されるように、放射線標識された化合物を使用して溶解度は測定される。本発明の疎水性ポリマーは、組成物の総重量に基づいて、1%未満、より好ましくは0.5%未満、更により好ましくは0.25%未満、最も好ましくは0.10%未満の水への溶解度を有する。
【0026】
「親水性」又は「水溶性」又は「水膨潤性」は、23℃の温度で、親水性物質及び水の総重量に基づいて、少なくとも7重量%、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、更により好ましくは少なくとも25重量%、更により好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも40重量%の量で、水(又は特定されるような他の水溶液)の中に溶解、可溶化、分散、又はそうでなければ懸濁する物質を指す。60℃で少なくとも4時間にわたって化合物を水と十分に混合し、これを24時間にわたって23〜25℃まで冷却させ、組成物を十分に混合した後で、化合物が、4cmの経路長を有する瓶の中で目に可視的混濁、分離相、又は沈殿物がなく均一な澄明な液に見える場合、成分は溶解していると考えられる。典型的には、1×1cmセルに定置されるとき、好適な分光光度計において655nmの波長で測定されると、試料は70%を超える透過率を示す。水分散性で親水性の物質は、水中に親水性成分を5重量%混合したものを激しく振盪した後に、水中に分散して均一な混濁分散を形成する。水膨潤性で親水性の物質は、水の中に可溶化又浮遊し、粘性溶液又は粘着性ゲルを形成する物質を含む。
【0027】
「不揮発性」とは、成分が周囲条件で容易に蒸発しないことを意味し、これは、4cmの皿の中の20グラムの試料が、例えば、周囲条件に暴露された場合に60分以内にわたって、その重量の2%以下を超えて失わないことを意味する。本明細書に記載される組成物の不揮発性成分の例には、グリセリン、クロルヘキシド及びその塩、並びに10個を超える炭素の鎖長を有する脂肪族成分が挙げられる。
【0028】
「本質的に含まない」とは、組成物の総重量に基づいて、1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、更に好ましくは0.1重量%未満の成分を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書に提供される組成物は、急速で持続的な抗菌活性を提供するヒドロアルコール性処方である。この組成物は、低級C〜Cアルコール及び水を含むヒドロアルコール性溶媒系、並びにクロルヘキシジングルコネートなどのカチオン性抗菌剤を包含する。組成物はまた、更に下記に論じられるように、ヒドロアルコール性組成物に可溶性又は分散性の疎水性ポリマーを含む。組成物はまた、二塩基酸のジエステル及びクエン酸のトリエステルなどの疎水性皮膚軟化剤エステルを包含する。組成物はまた、C12〜C21脂肪族アルコール、C12〜C21脂肪酸エステル、C12〜C21脂肪族エーテル、C12〜C21脂肪酸アミド、及びこれらの組み合わせなどの、少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基を含有する任意の脂肪族成分を含むこともできる。本明細書に記載の組成物は、術前手術用前処理剤、手消毒剤、歯科用消毒剤及びバーニッシュ、消毒用スワブ、並びに皮膚消毒用拭き取り用品として有用である。この組成物は、皮膚上で消毒剤として使用されるとき、手術部位及びカテーテル部位を守るのに特に有用である。
【0030】
本明細書に記載される組成物は、改善された抗菌有効性及び改善された審美的優美性を呈示する。改善された抗菌有効性とは、以下のいずれか1つ又は組み合わせを示す組成物を示す:(i)カチオン性抗菌剤と相互作用することが既知である成分が存在するにも関わらず、組成物がカチオン性抗菌剤の存在下で抗菌活性を維持する、(ii)疎水性ポリマー又は皮膚軟化剤エステルのどちらか一方しか存在しないことを除いて同一である組成物に較べて、組成物が抗菌活性を改善する、又は(iii)より少ないカチオン性抗菌剤が存在する組成物が、より多くのカチオン性抗菌剤が存在するが疎水性ポリマー又は皮膚軟化剤エステルのどちらか一方を欠く組成物に較べて、同一の活性を維持する、あるいは(iv)カチオン性抗菌剤、疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルが存在するときに、組成物が相乗的な抗菌活性を示す。
【0031】
皮膚に適用されると、組成物は、高濃度の低級アルコールと、疎水性ポリマー、皮膚軟化剤エステル、及び任意での脂肪族成分の存在下でのカチオン性抗菌剤の増強された活性とに起因して、急速な殺菌活性を有する。組成物が皮膚に適用された後、組成物は低級アルコールが蒸発するとともに迅速に乾燥し、不揮発性抗菌剤組成物は残る。この不揮発性組成物は、カチオン性抗菌剤、疎水性ポリマー、皮膚軟化剤エステル、及び任意で脂肪族成分を含む。皮膚上に残ったこの抗菌剤組成物は、無刺激性であるとともに、持続的な殺菌活性を提供する。抗菌活性を増強することに加えて、疎水性ポリマーはまた、保護剤としても働くことができ、水性流体での洗浄による抗菌剤組成物の早急な除去を防止することができる。
【0032】
本明細書に記載される組成物はまた、組成物の存在下で又は組成物上で使用され得る医療用接着物品の改善された接着性に寄与する。クロルヘキシジングルコネート(CHG)などのビグアニドは、典型的には水溶性物質であり、包帯、接着性切創ドレープ又はテープなどの医療用接着物品の皮膚接着性を水分の存在下で再可溶化して弱め得る。この接着性の喪失は結果として、医療用接着物品の早期の破損を生じ、例えば、切開領域での切創ドレープの浮き上がり又はカテーテル固定の喪失といった、感染の危険性が高められた状況に患者を置くことになる。本発明の組成物は、主として疎水性ポリマー、及び任意での脂肪族成分、特にもし存在する場合脂肪族アルコールの結果として、医療用接着物品の改善された接着性能に寄与する。接着性における改善は、接着効果における全体的な高まり、即ち、本明細書で記載される抗菌剤組成物でコーティングされた皮膚への医療用接着物品の高められた接着であり得る。接着性における改善はまた、患者間に存在する、医療用接着物品の接着性能のばらつきの減少であり得、結果的に、所与の患者人口において医療用接着物品のより普遍的に有効な取り付けを生じることができる。接着性における改善は、ドレープの浮き上がり又は水若しくは生理食塩水の存在下での接着喪失の予防となり得る。これは、切開の領域で大量の血液及び生理食塩水が存在する際に、組成物が術前手術用前処理剤として使用されるとき、利益をもたらす。
【0033】
この適用の発明者達は、驚くべきことに、疎水性ポリマー及び皮膚軟化材エステルの組み合わせは、クロルヘキシジン及びその様々な塩、特にグルコン酸クロルヘキシジンのようなカチオン性抗菌剤の抗菌有効性を増強することを発見した。本発明者らはまた、皮膚軟化剤エステルとの疎水性ポリマーの組み合わせが、更に組成物の活性を相乗的に増強することを発見した。したがって、この組成物は、当該技術分野において現在採用されているカチオン性抗菌剤を含有する組成物と比較して、改善された抗菌有効性を有する。
【0034】
疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルは両方とも組成物の疎水性を高めるために働く。脂肪族成分はまた、含められるとき、組成物の疎水性本性を更に高めることもできる。組成物の高められた疎水性は、皮膚上での乾燥後、水分の存在下で医療用物品の接着性を改善するために働く。組成物の疎水性の性質はまた、滅菌生理食塩水すすぎ液などの健康管理状況下で採用されている親水性溶液又は水溶液による、活性カチオン性物質の「洗い流し」効果を減少させる。
【0035】
意外にも、皮膚軟化剤エステルとの組み合わせにおける疎水性ポリマーは、組成物の抗菌活性に悪影響を及ぼさず、ほとんどの場合、抗菌剤組成物の抗菌有効性を改善した。驚くべきことに、疎水ポリマーとともに皮膚軟化剤エステルを添加すると、例えば、皮膚軟化材の追加の3.5%固体を乾燥組成物に添加すると乾燥マトリックスを22%CHG(4.5:1)〜12.5%CHG(8:1)に希釈するような、皮膚軟化材エステルの明らかな希釈効果にも関わらず活性を著しく改善した。これは、いくつかの理由により驚くべきことである。第1に、カチオン性抗菌剤への疎水性ポリマーと皮膚軟化剤エステルの希釈効果は、組成物の抗菌活性に影響を及ぼさない。したがって、低濃度のカチオン性抗菌剤(特にCHG)が、所与の抗菌有効性レベルを形成するために必要である。皮膚上のカチオン性抗菌剤の濃度のこの減少はまた、高濃度のCHGを含有する組成物による皮膚炎症の可能性を減少するのに役立つこともできる。アルコール、CHG、及び水のみを含有する組成物が皮膚に適用されると、アルコールは迅速に蒸発し、その後に実質的に高濃度のCHGを備えるフィルムを残し、それが皮膚に炎症を起こす潜在能力を有する。
【0036】
逆に、疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステル、並びに脂肪酸成分により高められた疎水性はまた、使用されるときに、組成物中に高められた濃度のCHGを許容し、これにより組成物の抗菌活性を高め、望ましい審美的感触を維持する一方で皮膚炎症を最小化する。
【0037】
第2に、クロルヘキシジン塩とともに用いられたたとき、発明者達は、驚くべきことにまた、疎水性ポリマー及び皮膚軟化材エステルの組み合わせは抗菌有効性を増強することを発見した。非イオン性界面活性剤又は高級アルコールなどのほとんどの皮膚軟化剤は、米国特許第5,017,617号に議論されているように、クロルヘキシジン活性を低下させる傾向を有する。アニオン性界面活性剤は通常不適合であり、クロルヘキシジン塩の抗菌活性を低下させることがある。非イオン性界面活性剤の使用はまた、クロルヘキシジン塩及びそれらの活性の供給可能性に劇的な影響を及ぼす可能性がある。理論に束縛されるのを望むものではないが、1つの説明は、クロルヘキシジンのミセル結合であり得る。
【0038】
疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルの添加が増加すると、抗菌有効性の最適範囲が生じる。皮膚軟化剤エステルと組み合わされる疎水性ポリマーのより高濃度において、抗菌有効性は徐々に減少するが、それはおそらくはカチオン性抗菌剤を最終的に打ち負かす希釈効果によるものである。好ましい実施形態では、不揮発性の疎水性成分(例えば、疎水性ポリマー、皮膚軟化剤エステル、任意の脂肪族成分、及び存在すれば、他の脂質との合計)のカチオン性抗菌剤に対する比が、少なくとも0.5:1、より好ましくは1:1、更に好ましくは2:1、最も好ましくは3:1である。
【0039】
抗菌剤組成物の特定の実施形態について、皮膚軟化剤エステルのカチオン性抗菌剤に対する重量比は少なくもと0.5:1である。
【0040】
抗菌剤組成物の特定の実施形態では、皮膚軟化剤エステルのカチオン性抗菌剤に対する重量比は少なくもと1:1である。
【0041】
抗菌剤組成物の特定の実施形態について、疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルの組み合わせのカチオン性抗菌剤に対する重量比は少なくもと1:1である。
【0042】
抗菌剤組成物の特定の実施形態について、疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルの組み合わせのカチオン性抗菌剤に対する重量比は少なくもと2:1である。
【0043】
組成物の抗菌有効性は、6:1を超える比又は8:1の事象で高いままではあるが、疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルの高まっていく濃度が、組成物の審美的感触と、乾燥までの時間(又は少なくとも乾燥の発現)との両方に負の影響を及ぼし始める。特に皮膚軟化剤エステルは、使用する際、美的に望ましくない可能性がある油のような外観及び感触に寄与する。
【0044】
適用される場合、抗菌剤組成物は、好ましくは溶液の形態としてヒドロアルコール性組成物である。少なくとも、カチオン性抗菌剤、疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルは、使用時に周囲条件下で低級アルコール及びヒドロアルコール性溶媒系に可溶性であるべきである。
【0045】
低級アルコール
本発明で使用されるアルコールは、C〜Cアルコールなどの低級炭化水素鎖アルコールである。好ましい実施形態では、アルコールは、エタノール及びイソプロパノールから選択され、最も好ましくはエタノールである。エタノールは、広域スペクトルであること及び迅速な殺菌剤であること、並びに医師、看護士及び臨床医などの消費者にとって受容可能な香りであることに基づいて好ましいアルコールである。プロピルアルコール(1−プロパノール及び2−プロパノール)もまた使用されてもよい。
【0046】
2種以上の低級アルコールのブレンドが、ヒドロアルコール性溶媒系中のアルコール内容物として使用されてよい。低級アルコールは、例えば、SDA−3C(Eastman Chemical,Kingsport,TN)から市販)などの変性エタノールのように、変性されてもよい。共溶媒が低級アルコールとともに組成物に更に包含されてよい。抗菌剤組成物について意図される局所適用を考慮すると、好適な共溶媒には、アセトン、炭化水素(例えばイソオクタン)、グリコール、ケトン、エーテル、及び短鎖エステルが挙げられる。
【0047】
組成物に使用されるC〜C低級アルコールは、疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルを溶解するのに十分な量で使用される。ほとんどの実施形態では、低級アルコールは、抗菌剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも35重量%、更に好ましくは少なくとも50重量%の量で存在する。
【0048】
低級アルコールの水に対する割合が40:60〜95:5の範囲内である組成物は、即効性殺菌を確実にする。好ましい実施形態では、低級アルコール対水の割合は約55:45〜90:10であり、より好ましくは少なくとも65:35である。最適抗菌活性のため、及び組成物が速乾することを確実にするために、低級アルコールの水に対するより高い割合が好ましい実施形態では使用される。
【0049】
疎水性ポリマー及びカチオン性抗菌剤の有用な濃度は、所与のヒドロアルコール性溶媒系の中でのそれぞれの溶解度に依存する。例えば、ヒドロアルコール性溶媒系の中でのCHGの溶解度は、C〜Cアルコール濃度の増加とともに、減少する。対照的に、疎水性ポリマーは、疎水性ポリマーを可溶化するために高められたC〜Cアルコール濃度を必要とすることがある。当業者であれば、所与の抗菌剤組成物又は所与の溶媒系に対するカチオン性抗菌剤及び疎水性ポリマーの溶解度に基づいて、濃度の最適範囲を容易に決定することができる。
【0050】
疎水性ポリマー
抗菌剤組成物は、低級アルコールに可溶する疎水性ポリマーを含み、膚軟化剤エステルとともに抗菌剤組成物に改善された抗菌有効性を提供する。特定の実施形態について、本発明の疎水性ポリマーは、1%未満、より好ましくは0.5%未満、更により好ましくは0.25%未満、最も好ましくは0.10%未満の水への溶解度を有する。抗菌剤組成物を乾燥した後に形成されるフィルムは、皮膚によく付着し、伸縮自在のままで残りかつ皮膚が穏やかに曲げられた場合にひび割れせず、水又は体液に暴露された場合に流れ落ちない。
【0051】
抗菌剤組成物は、以下のようにして水に対する抵抗を試験できる。組成物を健康な志願者の前腕に適用する。組成物は、1平方センチメートル(mg/cm)あたりおよそ4ミリグラムの量で均一な湿式の被覆として適用され、およそ5×5cmの面積上で十分に乾燥(典型的に最低5分間)させられる。乾燥された組成物は、23℃〜24℃の温度で約2.5リットル/分(L/min)の流速で流れる水に暴露される。水が試験部位のすぐ上の腕に当たるようにし、部位の上を流れるようにする。腕をおよそ45度の角度に保ち、水を腕に当たる前のおよそ15cmから落とす。色が完全になくなるまでの時間を記録する。ベタジン(BETADINE)手術用溶液(10%ポビドンヨード、「ペイント」)が対照として使用されてよく、これは典型的に5秒未満持続する。色の無い組成物を好適な着色剤を添加することにより試験できる。着色剤は本質性に悪影響を及ぼすべきなく、そのため、顔料がしばしば採用される。乾燥されたときに耐水性である組成物は、流れ落ちにくく、特定の実施形態では30秒を超える、好ましくは60秒を超える、より好ましくは90秒を超える持続値を有する。特定の実施形態について、組成物を洗い落とすのに必要な時間である持続値は、少なくとも5分間である。
【0052】
抗菌剤組成物での使用に好ましい疎水性ポリマーには、米国特許第4,542,012号及び同第4,584,192号に記載のようなn−ビニルラクタムから誘導されるフィルム形成ポリマー、米国特許第7,030,203号に記載のビニルポリマー、並びにエチルセルロースのような誘導体(水中で親水性、水溶性又は膨潤性であるもの以外)を含むセルロースが挙げられる。
【0053】
好適な疎水性ポリマーには、複数のイソシアネート機能性を有するプレポリマーの反応生成物であるフィルム形成ポリマー、及びポリビニルピロリドンポリマーが挙げられる。ポリビニルピロリドンポリマーは、少なくともN−ビニルピロリドン及び米国特許第4,542,012号に更に記載のビニル機能性化合物のフリーラジカル重合反応生成物である。他の好適なフィルム形成ポリマーには、以下を含むフィルム形成コポリマーが挙げられる:(i)2〜約14個の炭素原子を有し、単一のヒドロキシルを包含するアルキルアルコールの単量体アクリル又はメタクリル酸エステル、(ii)1〜6個の炭素原子を有し、単一のヒドロキシルを包含するアルキルアルコールの単量体メタクリル酸エステル、及び(iii)米国特許第4,584,192号に更に記載のN−ビニルラクタム。
【0054】
他の好適な疎水性ポリマーには、例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルアセテート及びそれらの誘導体、スチレン化合物(即ち、スチレンの誘導体)、並びにN−ビニルラクタム(例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びそれらの誘導体を含む)のようなビニルモノマーから誘導されるポリマーのようなビニルポリマーが挙げられる。好適なビニルポリマーは、低級アルコールに可溶性(即ち、透明な均質の溶液を形成する)又は分散性であり、水には不溶性又はやや溶けにくい傾向がある。3つのモノマー(ターポリマー)を使用する特定のビニルポリマーもまた、有用である。
【0055】
本明細書に記載される抗菌剤組成物に有用なポリマーの好ましい部類は、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和アルキル(メタ)アクリルモノマー、好ましくは、アルキル(メタ)アクリル酸エステル(即ち、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート)の重合から誘導されるポリマーを含む。ビニルポリマーの1つの好ましい部類は、少なくとも1つの共重合モノエチレン性不飽和アルキル(メタ)アクリルモノマーを含む。本明細書で使用するとき、アルキル(メタ)アクリルモノマーの中の用語「モノエチレン性不飽和」は、アクリル不飽和を指す。好ましくは、「アルキル(メタ)アクリル」モノマーは、(メタ)アクリルアミド(例えば、オクチルアクリルアミド)、(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせを含む。より好ましくは、「アルキル(メタ)アクリル」モノマーは、アルキル(メタ)アクリル酸エステル(即ち、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート)であり、アルキル基は少なくとも4個の炭素原子(又は平均)を有する。
【0056】
疎水性ポリマーを作製するの使用され得るモノマーの例としては、ビニルピリジン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソビニルアクリレート、イソテトロラデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、エチルエキシルジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、ヘキシルポリエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリシジルメタクリレート、トリメチルプロパンベンゾエートアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルアセテート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタム、スチレン、スチレンマクロマ、ビニルブチラル、アクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルスチレン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ブチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレートヒドロクロライド、ジイソプロピルアミノエチルメタクリレート、モルホリニルアクリレート、モルホリニルメタクリレート、ジメチルアミノネオペンチルアクリレート、ジアリルアミン、アミノエチルメタクリルアミド、アミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、及びジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アミノプロピルメタクリルアミドクロライド、アミノエチルメタクリルアミドヒドロクロライドのようなそれらの第4級塩が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも1つのこれらのモノマーの重合から誘導される疎水性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、又はポリマーの配合物であってよい。
【0057】
他の好適な疎水性ポリマーは、セルロース及び例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチル、任意にヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシ基のセルロースの疎水性誘導体、並びにC〜C20アルキル誘導体及びそれらの組み合わせである誘導体が挙げられる。かかるセルロース誘導体のいくつかの例として、メチルヒドロキプロピルセルロース、セセチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシブチルメチルセルロースが挙げられる。好ましい実施形態では、セルロース誘導体はエチルセルロースである。
【0058】
本明細書に記載の抗菌剤組成物に有用な疎水性ポリマーは、ヒドロアルコール性溶剤系に可溶性であり、特に低級アルコールに可溶性である。通常、本明細書で使用される疎水性ポリマーは、水に不溶性又はわずかのみ可溶性である。単独で使用されるとき、疎水性ポリマーは耐水性フィルムを形成する能力を有することができる。かかるポリマーは、例えば、適用され乾燥された後で容易に水で流れ落ちることができないような手術用手用前処理剤及び抗菌剤手用ローションを生成するであろうことから、本明細書に記載の抗菌剤組成物に望ましい。
【0059】
組成物の疎水性ポリマーはまた、皮膚軟化剤エステル、及び任意で脂肪族成分とともに、皮膚への医療用接着物品の改善された接着性、特に湿気又は流体の存在下で、に寄与できる。疎水性ポリマーはまた、組成物の全体的な審美的肌触りを向上するために、好ましくは液体でもある。
【0060】
疎水性ポリマーは、好ましくはエトキシル化でない。エトキシル化は、得られた抗菌剤組成物の水分感受性に影響を及ぼし、結果として接着性能の低下を生じる。成分のいずれかがエトキシル化されているならば、それは好ましくは1又は2モル以下のエチレンオキシドである。
【0061】
使用されるとき、疎水性ポリマーは、抗菌剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、更により好ましくは少なくとも3重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%の量で組成物中に存在する。特定の実施形態では、疎水性ポリマーは、10重量%以下、より好ましくは6重量%以下の量で存在する。上記に議論されているような抗菌剤組成物の中のカチオン性抗菌剤の総不揮発性成分に対する割合に応じて、より高い値が使用され得る。
【0062】
他のポリマー及び添加剤を添加してよいが、乾燥された組成物が上述の耐水性フィルムを形成することが重要である。
【0063】
皮膚軟化剤エステル
抗菌剤組成物はまた、抗菌剤組成物に改善された抗菌有効性を提供するサイダトロープとして皮膚軟化剤エステルを包含するほとんどの実施形態では、皮膚軟化剤エステルは、好ましくは全体で少なくとも8個の炭素原子を含み、好ましくは20個以下の炭素原子を含み、少なくとも2個のエステル結合を含む。
【0064】
本発明に使用される皮膚軟化剤エステルは、1つ以上の目的に寄与できる可能性がある。これらは、皮膚の刺激及び乾燥を防ぎ、処方の審美的感触を改善し、処方の抗菌活性を増強し、水の透過を減少させることで皮膚を潤すことに寄与できる可能性がある。より高い濃度で使用されるとき、皮膚軟化剤エステルはまた、医療用接着物品の乾燥接着力を増強する。
【0065】
皮膚軟化剤エステルは、一般に室温で液体であり、水に対して弱い溶解度を有する。即ち、23℃で2重量%未満の量で水に溶解する。抗菌剤組成物内でサイダトロープとして使用に好適な皮膚軟化剤エステルは、二塩基酸のジエステル、ジオールのジエステル、クエン酸のトリエステル、トリオールのトリエステル、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0066】
特定の実施形態について、皮膚軟化剤エステルは、例えば、ジブチルアジパート、ジイソプロピルアジパート、ジイソブチルアジパート、ジヘキシルアジパート、ジイソプロピルセバケート、及びジブチルセバケートのような(C2〜C12)二塩基酸の(C1〜C8)アルキルアルコールエステル、ブタンジオール及びヒキサンジオオールのジエステル、プロピレングリコールジカプリレート、例えば、トリブチルシトレートのようなクエン酸の(C2〜C8)アルキルアルコールジエステル及びトリエステル、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される。他の皮膚軟化剤エステルには、ジオールのジアルキル酸エステル、及びトリオールのトリアルキル酸エステル、並びに他のジ及びトリカルボン酸のジアルキルアルコールエステルが挙げられる。
【0067】
特定の実施形態について、皮膚軟化剤エステルは、二塩基酸のジアルキルエステル、クエン酸のトリアルキルエステル、ジオールのジアルキルエステル、トリオールのトリアルキルエステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい二塩基酸のジエステルには、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル及びこれらの混合物が挙げられる。同様に、好ましいクエン酸のトリエステルには、クエン酸トリブチルが挙げられる。好ましいジオールのジエステルには、ブタンジオール及びヘキサンジオールのエステルが挙げられる。プロピレングリコールジカプリラートなどのプロピレングリコールのジエステルもまた有用である。最も好ましい皮膚軟化剤エステルは、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、及びクエン酸トリブチルである。
【0068】
好適であり得る他の皮膚軟化剤の例としては、長(即ち、C8〜C36)直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルケニルアルコール又は酸の短鎖(即ち、C1〜C6)アルキル又は(C6〜C12)アリルエステル;利用可能な位置において−OHによって任意に置換される(C4〜C12)二塩基酸又は(C4〜C12)ジオールの短鎖(即ち、C1〜C6)アルキル又は(C6〜C12)アリルエステル;グリセロール、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、プロピレングリコールの(C2〜C18)アルキル又は(C6〜C12)アリルエステル;ポリプロピレングリコールの(C12〜C22)アルキルエステル又は(C12〜C22)エーテル;ポリプロピレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマーの(C12〜C22)アルキルエステル又は(C12〜C22)エーテル;及び長(即ち、C8〜C18)直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルケニルアルコール又は酸の長鎖(即ち、C8〜C36)アルキル及びアルケニルエステル、長直鎖又は分枝鎖(即ち、C8〜C36)アルキル又はアルケニルアミン又は酸の長鎖(即ち、C8〜C36)アルキル及びアルケニルアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
特定の実施形態について、皮膚軟化剤エステルは、(C8〜C36)直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルケニルアルコール又は酸の(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルエステル;少なくとも1つの利用可能な位置において−OHによって任意に置換される(C2〜C12)二塩基酸又は(C4〜C12)ジオールの(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルジエステル;クエン酸の(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルジ又はトリエステル;グリセロール、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、又はプロピレングリコールの(C2〜C18)アルキル及び(C6〜C12)アリルエステル;ポリプロピレングリコールの(C12〜C22)アルキルエステル及び(C12〜C22)エーテル;ポリプロピレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマーの(C12〜C22)アルキルエステル及び(C12〜C22)エーテル;長(即ち、C8〜C18)直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルケニルアルコール又は酸の長鎖(即ち、C8〜C36)アルキル及びアルケニルエステル、並びに長直鎖又は分枝鎖(即ち、C8〜C36)アルキル又はアルケニルアミン又は酸の長鎖(即ち、C8〜C36)アルキル及びアルケニルアミドからなる群から選択される。
【0070】
特定の実施形態について、皮膚軟化剤エステルは、(C8〜C36)直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルケニルアルコール又は酸の(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルエステル;少なくとも1つの利用可能な位置において−OHによって任意に置換される(C2〜C12)二塩基酸又は(C4〜C12)ジオールの(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルジエステル;クエン酸の(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルジ又はトリエステルからなる群から選択される。
【0071】
好ましくは、皮膚軟化剤エステルは、少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、最も好ましくは少なくとも2重量%の量で組成物中に存在する。好ましい実施形態では、皮膚軟化剤エステルは、10.0重量%以下、より好ましくは6重量%以下の量で組成物中に存在する。上記に議論されているようにカチオン性抗菌剤の総不揮発性成分に対する割合に応じてより高い値が使用され得る。
【0072】
カチオン性抗菌剤
カチオン性抗菌剤は、抗菌活性の少なくとも一部を提供する組成物の成分である。即ち、カチオン性抗菌剤は、少なくとも1つの微生物に対して、少なくともいくらかの抗菌活性を有する。カチオン性抗菌剤は、本明細書に記載される組成物の主要な活性成分と通常考えられている。カチオン性抗菌剤は、ジグルコネート、ジアセテート、ジメトサルフェート、及びジラクテート塩、並びにそれらの組み合わせもまた含むが、それらに限定されない、クロルヘキシジン及びそのさまざまな塩のようなビグアニド及びビスビグアニド;ポリエキサメチレンビグアニドのようなポリマー性第4級アンモニウム化合物;ベンザルコニウムハロゲン化物、ベンゼトニウムハロゲン化合物、アルキル置換ベンゼトニウムハロゲン化合物、セチルピリジウムハロゲン化合物のような小分子第4級アンモニウム化合物;並びにそれらの両立し得る組み合わせからなる群から選択される1つ以上の抗菌剤の効果的な量を含む。しかしながら、水性流体中の溶解度を処置機構の最小阻害濃度(MIC)以上に確保する対イオンを使用することが、塩形態であるカチオン性抗菌剤について特に重要である。溶解限度がMIC未満である場合、処置は無効となる可能性がある。
【0073】
抗菌剤組成物の特定の実施形態について、カチオン性抗菌剤は、クロルヘキシジン、クロルヘキシジンジグルコネート、クロルヘキシジンジアセテート、クロルヘキシジンジメトサルフェート、クロルヘキシジンジラクテート塩、ポリヘキサメチレンビグアニド、ベンザルコニウムハロゲン化合物、オクテニジン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0074】
抗菌剤組成物の特定の実施形態について、カチオン性抗菌剤は、クロルヘキシジン、クロルヘキシジンジグルコネート、クロルヘキシンジアセテート、クロルヘキシジンジメトサルフェート、クロルヘキシジンジラクテート塩、ポリヘキサメチレンビグアニド、ベンザルコニウムハロゲン化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0075】
カチオン性成分は、組成物中の不揮発性成分の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、より好ましくは15重量%である。カチオン性抗菌剤は、組成物中の不揮発性成分の総重量に基づいて、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。
【0076】
抗菌剤組成物の総重量に基づいて、カチオン性抗菌剤は典型的には、少なくとも0.05重量%、好ましくは少なくとも0.1重量%、更に好ましくは少なくとも0.25重量%、最も好ましくは少なくとも0.5重量%の濃度で使用される。この部類の化合物は、組成物の、好ましくは約8重量%未満、より好ましくは約6重量%未満、最も好ましくは約4重量%未満の濃度で使用される。
【0077】
本発明に好適なカチオン性抗菌剤の部類は以下で更に論じられる。
【0078】
ビグアニド
この部類の抗菌剤は次式で表される:
R−NH−C(NH)−NH−C(NH)−NH(CHNHC(NH)−C(NH)−NH−R
式中、n=3〜10、好ましくは4〜8、最も好ましくは6であり、R=利用可能な部位がハロゲンにより任意で置換されたC〜C18分枝鎖若しくは直鎖アルキル、又は利用可能な部位がハロゲンにより任意で置換されたC〜C12アリール若しくはアルカリル、である。
【0079】
この部類の好ましい化合物は、クロルヘキシジンである。これは、遊離基として存在してよいが、好ましくは酢酸塩、グルコン酸塩、ラクテート、メトサルフェート(CHOSO)の複塩又はハロゲン化物若しくはこれらの組み合わせとして存在してよい。最も好ましい化合物は、クロルヘキシジンジグルコネート(CHG)である。他のアニオンも有用であり得る。クロルヘキシジンの多くの塩は、アルコール/水系に高い溶解度(>1g/100mL)を有し、したがって、本発明の組成物に有用である。
【0080】
この分類の抗菌剤は、典型的に水を含む処方の中に使用され、光から保護される。これは、化合物の劣化を減少させると考えられている。約20重量%未満の水を含む組成物中で使用されるとき、この部類の抗菌剤は、抗菌剤を可溶化する親水性溶媒を包含してもよい。かかる溶媒は、アルコール及び/又はヒドロアルコール性混合物中で混和性である。クロルヘキシジングルコネートに好適な溶媒の例には、2000未満、好ましくは1000未満、最も好ましくは少なくとも約800ダルトン未満の分子量を有するPEGなどのグリコール(分子毎に少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物)、グリセリン及びポリグリセロール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム若しくはブロックコポリマー、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、パネトテノール、グルクロノラクトン、グルコン酸など、並びにN−メチルピロリドン、炭酸プロピレン、ブチロラクトンなどの他の極性溶媒も挙げられる。使用されるとき、可溶化溶媒は、水に対する感受性を最小化するために十分に低い量で存在するべきである。好ましくは、可溶化溶媒は、抗菌剤組成物全体の重量に対して1重量%未満の量で存在する。
【0081】
クロルヘキシジン並びに他のカチオン性抗菌剤化合物を処方するときには、界面活性剤及び/又は乳化剤を組み込むことにより形成され得るミセルの中にそれを封鎖することによる不活性化を避けるために、注意を払わなければならない。本発明の好ましい組成物は、本質的に界面活性剤及び/又は乳化剤を含まない。
【0082】
クロルヘキシジンなどのビス(ビグアニド)は、塩基性が強く、アニオン性物質と複数のイオン結合を形成することができる。この理由から、ビグアニド含有組成物は、好ましくは抗菌剤の沈殿を結果的に生ずる可能性があるアニオン性化合物を含まない。例えば湿潤剤として有用なアニオン性界面活性剤もまた避ける必要がある可能性もある。ハロゲン化物の塩を避ける必要があり得る。例えば、クロルヘキシジンジグルコネート(CHG)は、約0.1Mの濃度以上でハロゲン化物の塩が存在する場合、急速に沈殿する。したがって、系がCHG又はこの部類の他の抗菌剤を包含し、安定性又は他の目的のために塩を含む必要を有する場合、好ましくは、トリエタノールアミングルコネート又はナトリウムグルコネートなどのグルコネート塩が使用される。
【0083】
ポリマー性第4級アミン化合物
第4級アミン基を含む抗菌剤ポリマーもまた、本明細書で記載される組成物の中でカチオン性抗菌剤として使用されてもよい。これらは典型的には、少なくとも6個の炭素原子の、好ましくは少なくとも8個の炭素原子の、アルキル又はアラルキル鎖を少なくとも1つ有する第4級アミン基を有するポリマーである。このポリマーは、直鎖、分枝鎖、過分枝鎖又はデンドリマーであってもよい。好ましい抗菌剤ポリマー性第4級アミンポリマーには、米国特許第6,440,405号、同第5,408,022号、及び同第5,084,096号、PCT国際公開特許第02102244号、並びにDisinfection,Sterilization and Presevation,S.Block,4th ed.,1991,Chapter 13,Lea & Febigerに記載されているものが挙げられる。
【0084】
特に好ましい部類のポリマー性第4級アンモニウム抗菌剤化合物は、ポリビグアニドである。この部類の化合物は次式で表される:
X−R−NH−C(NH)−NH−C(NH)−NH−R−NHC(NH)−NH−C(NH)−NH−R−X
式中、R、R、及びRは、好ましくは2〜10個のメチレン基を、より好ましくは4〜8個のメチレン基を、最も好ましくは6個のメチレン基を有するポリメチレン基などの架橋基である。メチレン基は、利用可能な部位においてハロゲン、ヒドロキシル、又はフェニル基に任意に置換することができる。Xは末端基であり、典型的にはアミン、アミン塩、又はジシアンジアミド基である。この部類の好ましい化合物は、Aveci,Wilmington,DEからコスモシールCQとして市販されているポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)である。
【0085】
PHMBなどのポリ(ビグアニド)は、塩基性が強く、アニオン性物質と複数のイオン結合を形成することができる。この理由から、ビグアニド含有組成物は、抗菌剤の沈殿及び/又は不活性化を結果的に生じ得るアニオン性化合物を、好ましくは、含まない。例えば湿潤剤として有用なアニオン性界面活性剤もまた避ける必要がある可能性もある。ハロゲン化物の塩もまた避ける必要がある場合もある。
【0086】
小分子第4級アンモニウム化合物
この部類の化合物は典型的には1個以上の第4級アンモニウム基を有し、少なくとも1個のC〜C18直鎖又は分枝鎖アルキル又はアラルキル鎖が第4級アンモニウム基に結合している。好ましい化合物には、Disinfection,Sterilization and Presevation,S.Block,4th ed.,1991,Chapter13,Lea & Febigerに記載されているものが挙げられる。特に好ましいこの部類の化合物は、1個又は2個のC〜C18アルキル又はアラルキル鎖を有し、次式により表わすことができる:
NR4+
式中、R及びRは、利用可能な部位で、N、O、又はSにより置換されてよいC1〜C18直鎖又は分枝鎖アルキル、アルカリル、又はアラルキル鎖であり、又は少なくとも1個のR又はRは、利用可能な部位で、N、O、又はSにより置換されてよいC〜C18直鎖又は分枝鎖アルキル、アルカリル、又はアラルキル鎖である。R及びRは、C〜Cアルキル、フェニル、ベンジル、又はC〜C12アルカリル基である。R及びRはまた、第4級アンモニウム基の窒素でピリジン環などの環を形成してもよい。Xはアニオン、好ましくはハロゲン化合物、最も好ましくはC−又はBr−である。他のアニオンには、メトサルフェート、エトサルフェート、ホフェートなどが挙げられる。この部類の好ましい化合物には、モノアリールトリメチルアンモニウム塩、モノアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム、及びオクテニジンが挙げられる。
【0087】
好ましい第4級アンモニウム消毒剤の例には、C〜C18アルキル鎖長、より好ましくはC12〜C16アルキル鎖長、最も好ましくは鎖長の混合物、を有するベンザルコニウムハロゲン化物が挙げられる。例えば、典型的な塩化ベンザルコニウム試料は、40%のC12アルキル鎖、50%のC14アルキル鎖、及び10%のC16アルキル鎖からなり得る。これらは、Lonza(Barquat MB−50)、フェニル環上でアルキル基によって置換されたベンザルコニウムハロゲン化物、を含むさまざまな供給源から市販されている。市販の試料はLonzaから入手可能なBarquat 4250であり、それは、アルキル基がC〜C18の鎖長を有するジメチルジアルキルアンモニウムである。ジオクチル、ジラウリル、及びジオクタデシルの混合物などの鎖長の混合物は、特に有用であり得る。例示的な化合物は、LonzaからBardac 2050、205M及び2250として市販されており、塩化セパコールとしてMerrell labsから入手可能な塩化セチルピリジニウムなどのセチルピリジニウムハロゲン化物、Rohm and Hassから入手可能なハイアミン1622及びハイアミン10Xなどのベンゼトニウムハロゲン化物及びアルキル置換ベンゼトニウムハロゲン化物、並びにオクテニジンなどである。
【0088】
任意の脂肪族成分
抗菌剤組成物はまた、抗菌剤組成物に改善された抗菌有効性を提供するサイダトロープとしての脂肪族成分を任意に含むこともできる。脂肪族成分は、好ましくは少なくとも12個の炭素原子、最も好ましくは少なくとも14個の炭素原子を含む。脂肪族成分は、好ましくは21個以下の炭素原子、より好ましくは18個以下の炭素原子を含む。
【0089】
抗菌剤組成物中でサイダトロープとして使用されるのに好適な脂肪族成分には、C12〜C21脂肪族アルコール、1個以上の遊離ヒドロキシル基を含有するC12〜C21脂肪酸エステル、1個以上の遊離ヒドロキシル基を含有するC12〜C21脂肪族エーテル、1個以上の遊離ヒドロキシル基を含有するC12〜C21脂肪酸アミド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。脂肪族成分は、好ましくは直鎖アルキル鎖であるが、分枝鎖アルキル鎖もまた使用されてもよい。
【0090】
組成物の脂肪族成分はまた、疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルとともに、特に湿気又は流体の存在下で皮膚への医療用接着物品の改善された接着性にも寄与できる。脂肪族成分はまた、組成物の全体的な審美的肌触りを向上するために、好ましくはワックス状でもある。
【0091】
脂肪族成分は、好ましくはエトキシル化でない。エトキシル化は、得られた抗菌剤組成物の水分感受性に影響を及ぼし、結果として接着性能の低下を生じる。成分のいずれかがエトキシル化されているならば、それは好ましくは1又は2モル以下のエチレンオキシドである。
【0092】
使用されるとき、脂肪族成分は、抗菌剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、更により好ましくは少なくとも2重量%、最も好ましくは少なくとも3重量%の量で組成物内に存在する。特定の実施形態では、脂肪族成分は、6重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。上記に議論されているように抗菌剤組成物の中のカチオン性抗菌剤の総不揮発性成分に対する割合に応じて、より高い値が使用され得る。
【0093】
脂肪族アルコール
本明細書に記載の組成物での使用に好適な脂肪族アルコールの部類には、少なくとも12個の炭素原子を含む、最も好ましくは14個の炭素原子を含む、直鎖又は分枝鎖アルキル、アルケニル又はアラルキルアルコールが挙げられる。脂肪族アルコールは、最大でも21個の炭素原子、好ましくは最大でも18個の炭素原子を含む。脂肪族アルコールは好ましくは第1級脂肪族アルコールであるが、第2級又は第3級アルコールも有効である。好適なC12〜C21脂肪族アルコールの例には、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、イソセチルアルコール、オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、及び2−ヘキシルドデカノールが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、C12〜C21脂肪族アルコールは周囲条件下でワックスである。
【0094】
特に好ましいC12〜C21脂肪族アルコールは、ミリスチルアルコール及びセチルアルコールである。セチルアルコール又は1−ヘキサデカノールは、増強されて好ましくはカチオン性抗菌剤と相乗的な殺菌活性と、局所適用されると受容可能な審美的感触とを提供する。セチルアルコールは安全で、無刺激性であり、薬剤及び薬物クリームに広く使用されている。これはまた、皮膚に適用された後に処方に対して耐水性を提供し、これにより、組成物に対する医療用接着物品の改善された皮膚接着に寄与する。抗菌剤組成物の総重量に基づいて、2重量%を超える量で、C12〜C21脂肪族アルコールは濡れた状態の下、改善された皮膚接着性に寄与する。
【0095】
脂肪族エステル
本組成物での使用に好適な脂肪酸エステルの部類は、C12〜C18分枝鎖又は直鎖アルキル基、少なくとも1個のエステル結合、及び少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基を含む、C12〜C21脂肪酸エステルである。好ましくは、脂肪酸エステルは純度が高く、即ち、脂肪酸モノエステル、脂肪酸ジエステルである。
【0096】
本明細書に記載される組成物での使用に好適なこの部類の部分集合には、多価アルコールの(C12〜C18)飽和又は不飽和脂肪酸エステルが挙げられる。好ましくは、脂肪酸エステルは、多価アルコールの(C12〜C18)飽和脂肪酸エステルである。多価アルコールの脂肪酸エステルは、好ましくは式(R−C(O)−O)−Rであり、式中、Rは、(C12〜C16)飽和脂肪酸(好ましくは、(C12〜C16)飽和脂肪酸)、又は(C12〜C18)不飽和(好ましくは、多価不飽和を含むC12〜C16)不飽和)脂肪酸の残基であり、Rは、多価アルコール(典型的には及び好ましくは、グリセリン、及びプロピレングリコールであるが、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、及びジオールを含む広範囲の他のものも使用することができる)の残基であり、n=1又は2である。R基は、少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基(好ましくは、グリセリン又はプロピレングリコールの残基)を包含する。好ましい多価アルコールの脂肪酸エステルは、C12、C14、及びC16飽和脂肪酸に由来するエステルである。多価アルコールがグリセリン又はプロピレングリコールである実施形態については、n=1である。グリセリンのジエステル(n=2)もまた有用であり得る。
【0097】
例示的な脂肪酸モノエステルには、ラウリン酸(モノラウリン)、ミリスチン酸及びパルミチン酸のグリセロールモノエステル、並びにラウリン酸、ミリスチン酸及びパルミチン酸のプロピレングリコールモノエステルが挙げられるが、これらに限定されない。他の脂肪酸モノエステルとしては、オレイン(18:1)、リノール(18:2)、リノレン(18:3)、及びアラコン(20:4)不飽和(多価不飽和を含む)脂肪酸のグリセリン及びプロピレングリコールモノエステルが挙げられる。通常知られているように、例えば、18:1は、化合物が18個の炭素原子と1個の炭素−炭素二重結合を有することを意味する。好ましい不飽和鎖は、シス異性体形態において少なくとも1個の不飽和基を有する。
【0098】
脂肪族成分としての使用に好適な脂肪酸エステルの別の部分集合には、(C〜C)ヒドロキシカルボン酸の(C12〜C21)脂肪族アルコールエステル((C12〜C18)脂肪族アルコールの(C〜C)ヒドロキシカルボン酸エステルともしばしば呼ばれる)、(C〜C)ヒドロキシカルボン酸の(C12〜C22)モノ−又は多価不飽和脂肪族アルコールエステル((C12〜18)モノ−又は多価不飽和脂肪族アルコールの(C〜C)ヒドロキシカルボン酸エステルともしばしば呼ばれる)が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸部分は、脂肪族及び/又は芳香族基を含んでよい。例えば、サリチル酸の脂肪族アルコールエステルが可能である。
【0099】
ヒドロキシ酸は典型的には、1個のヒドロキシル基及び1個のカルボン酸基を有する。これらは好ましくは、乳酸、マンデル酸、グリコール酸、サリチル酸、及びヒドロキシブタン酸などのα−及びβ−ヒドロキシ酸から選択される。脂肪族アルコールは、最も好ましくは12〜18個の炭素原子を有し、最も好ましくは12〜16個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキルアルコール、又は(C12〜C20)(好ましくは、C12〜C18)不飽和脂肪族アルコール(多価不飽和脂肪族アルコールを包含する)が挙げられる。脂肪族アルコールの例には、ラウリル、ミリスチル、セチル、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0100】
例示的なヒドロキシカルボン酸の脂肪族アルコールモノエステルには、C12〜C15アルキルラクテート、ラウリルラクテート、ミリスチルラクテート、セチルラクテート、及びイソステアリルラクテートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
脂肪族エーテル
本組成物での使用に好適な脂肪族エーテルの部類は、C12〜C18分枝鎖又は直鎖アルキル基、少なくとも1個のエーテル結合、及び少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基を含む、C12〜C21脂肪酸エ−テルである。抗菌剤組成物での使用に好適な脂肪族エーテルの部分集合には、多価アルコールの(C12〜C18)飽和又は不飽和脂肪族エーテルが挙げられる。好ましくは、脂肪族エーテルは、多価アルコールの(C12〜C16)飽和脂肪族エーテルである。
【0102】
多価アルコールの脂肪族エーテルは、好ましくは式(R−O)−Rを有し、式中、Rは、(C12〜C18)飽和脂肪族基(好ましくは、(C12〜C16)飽和脂肪族基)、又は(C12〜C18)不飽和(好ましくは、(C12〜C16)不飽和(多価不飽和を包含する))脂肪族基であり、Rは、グリセリン、ブチレングリコール、又はプロピレングリコールの残基であり、n=1又は2である。グリセリン及びプロピレングリコールについては、n=1である。好ましい脂肪族エーテルは、(C12〜C18)アルキル基(より好ましくは、C12〜C16アルキル基)のモノエーテルである。
【0103】
例示的な脂肪族モノエーテルには、ラウリルグリセリルエーテル及びラウリルプロピレングリコールエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。他の脂肪族モノエーテルには、オレイル(18:1)、リノレイル(18:2)及びリノレニル(18:3)不飽和及び多価不飽和脂肪族アルコールのグリセリン及びプロピレングリコールモノエーテルが挙げられる。特定の好ましい実施形態では、本組成物での使用に好適な脂肪族モノエーテルには、ラウリルグリセリルエーテル、ミリスチルグリセリルエーテル、ラウリルプロピレングリコールエーテル、セチルプロピレングリコールエーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。不飽和鎖は、好ましくは、シス異性体形において少なくとも1個の不飽和結合を有する。
【0104】
追加の任意成分
本発明の組成物は、塩、保湿剤(これらの親水性及び水分感受性への影響により最小の量で)、安定剤、他の抗菌剤、芳香剤、治療薬、噴射剤、染料、溶媒、他の皮膚軟化剤、コンディショニング剤、及びビタミンなどの成分を任意で包含してよい。好ましい溶媒には、アセトン、ジメチルイソソルビド、及びイソオクタンが挙げられる。
【0105】
上述のように乾燥した組成物が耐水性フィルムを形成する限りにおいては、所望により親水性界面活性剤及び他の添加剤を抗菌剤組成物に添加してよい。
【0106】
好ましくは、処方は、界面活性剤を本質的に含まない。最も好ましくは、組成物は、いかなる測定可能な量でも界面活性剤を含有しない。特定の実施形態について、処方は実質的に親水性界面活性剤が存在しない界面活性剤である。親水性界面活性剤は、皮膚上に適用されたとき、処方の水感受性を高め、接着性能を減少させる。存在する場合には、界面活性剤は、好ましくは8未満、より好ましくは6未満、更により好ましくは4未満のHLB(親水性対親油性バランス)を有する。界面活性剤の例には、グリセロールパルミテート、ポロキサマー、ポリグリセロールエステル、PEG−エステル、及びソルビタンエステルが挙げられる。
【0107】
特定の実施形態について、抗菌剤組成物は、抗菌活性を有し、抗菌剤組成物として考慮されるかもしれないものを除いては、イオン性界面活性剤を実質的に含まない。
【0108】
好ましくは、組成物は、親水性ポリマー、及び水溶性又は水膨潤性ポリマーを実質的に含まない。
【0109】
脂肪酸エステルの部類の特定の脂肪族成分並びに皮膚軟化剤エステルは両親媒性物質であり、並びに界面活性であってもよいことに留意すべきである。例えば、本明細書に記載された特定のアルキルモノグリセリドは、界面活性である。本発明の特定の実施形態について、皮膚軟化剤エステル成分、及び脂肪族成分は、使用されるとき、「界面活性剤」成分とは異なると考えられる。
【0110】
処方の方法
本明細書に記載される組成物を処方するとき、液体として皮膚軟化剤エステルを有することが望ましい。疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルの組み合わせを使用することにより、その結果生じる組成物は、より優雅な肌触りを有し、迅速に乾燥する。例えば、組成物中に疎水性ポリマーを含まずに0.5%(w/w)の濃度以上で存在するほとんどの皮膚軟化剤エステルは、乾燥するのに時間がかかり、局所適用したときに皮膚上に望ましくない油状の被膜を残す。疎水性ポリマー、及び任意に脂肪族成分を組成物内に組み入れることにより、組成物はより速く乾燥し、その油状の感触を喪失し、審美的受容性になる。
【0111】
更に、疎水性ポリマーと皮膚軟化剤エステルの組み合わせを使用することにより、処方に使用することができるそれぞれの成分の量を、どちらかが単独で使用される場合よりもはるかに多くすることができる。疎水性ポリマー又は皮膚軟化剤エステルのより多い量を使用することが非常に望ましく、それはどちらかの成分の濃度を増大させると、乾燥フィルムの水分不感受性及び組成物の抗菌有効性を高めるためである。疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルの両方を使用することにより、組成物は望ましい肌触り及び改善された抗菌有効性の両方を示す。
【0112】
通常、本明細書に記載される組成物内の疎水性ポリマー/皮膚軟化剤エステルの割合は約5:1〜1:10である。好ましくは、割合は1:2を超え、最も好ましくは約1:1である。好ましくは、疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルはどちらも低級アルコール/水溶液に可溶性であり、時間が経過しても沈殿しない。最も好ましくは、疎水性ポリマーは周囲温度で固体である。特定の理論に束縛されるものではないが、皮膚軟化剤エステルは、カチオン性抗菌剤の活性を相乗的に増強させる形で、細菌の外側細胞膜と相互作用すると考えられる。
【0113】
本発明の組成物は、特に術前手術前処理、カテーテル、及び点滴用消毒前処理剤に有用である。それらはまた、カテーテルに関連した血流感染の防止又は皮膚感染の予防及び減少に有用である。これらの処方にとって、増強された湿式接着及び増強された抗菌有効性は重要な2つの利点である。これらの前処理剤の本発明による好ましい処方は、好ましくは2重量%を超える、最も好ましくは2.5重量%を超える、相当量の疎水性ポリマーを包含する。理想的には、疎水性ポリマーは、湿潤状態で包帯の接着性を増強するためにできる限り疎水性であるべきであり(けれどもヒドロアルコール性溶液に対する可溶性又は分散性を維持する)、25℃を超える融点又はTgを備える固体であるべきである。
【0114】
処方はまた、皮膚軟化剤エステルを包含し、それは、好ましくは皮膚孔を閉塞せず、増強された抗菌有効性を更に提供する。カテーテル及び点滴用前処理剤用の本発明による好ましい皮膚軟化剤エステルは、1重量%を超える、好ましくは1.5重量%を超える濃度で、ジイソプロピルアジパート、ジブチルアジパート、及びトリブチルシトレートを含む。組成物はまた、カテーテル関連の血流感染防止のためのCenter for Disease Control(CDC)の指針にかなうために、約2%(w/w又はw/v)のグルコン酸クロルヘキシジンを含む。これらはまた、多量の、好ましくは65重量%を超える、C〜Cアルコールを含有し、これにより、処方は、適所適用後、迅速に乾燥する。カテ−テル前処理剤組成物はまた、好ましくは保湿剤と他の水溶性物質(界面活性剤など)のいずれも含有しないが、それは、これらが濡れた状態の下で包帯接着を弱める恐れがあるからである。これは特に重要であり、なぜならば、少量の界面活性剤(特に脂肪族アルコールエトキシレート)は汗、生理食塩水、血液及び水などの水分の存在下で接着を有意に弱める可能性があるからである。少量の、グリコール及びグリセロールなどの保湿剤が組成物のいくつかの実施形態で使用され得るが、ほとんどの組成物は好ましくは保湿剤を含まない。
【0115】
本発明の組成物はまた手消毒剤及び手術用スクラブに有用である。この用途について医療用接着物品の接着は重要性に劣るが、増強された有効性及び優れた肌触りは非常に重要である。手消毒剤について、組成物は好ましくは、60重量%超える低級アルコール及び疎水性ポリマー、皮膚軟化剤エステル、及び任意で脂肪族成分を含む約2〜8重量%の疎水性成分を含有する。組成物の水分感受性が手消毒用途においてそれほど重要でないために、保湿剤もまた使用されてもよい。最も好ましくは、組成物は、手の過性及び正常フローラの、迅速で有意な減少を提供するために、70重量%を超えるアルコールを含有する。加えて、組成物は、好ましくは0.3〜1.5重量%、最も好ましくは0.4〜1.0重量%の不揮発性抗菌カチオン性物質を含む。
【0116】
組成物の水分感受性が手消毒用途においてそれほど重要でないために、広範囲の疎水性ポリマーが、潜在的に使用され得る。好ましくは、組成物はまた、クエン酸トリブチル又はアジピン酸ジイソプロピルなどの、軽やかな感触の液体皮膚軟化剤エステル及び少量の保湿剤を含有する。固体疎水性ポリマー及び液体皮膚軟化剤エステルの組み合わせを使用すると、これらの成分の1つのみを単独で含有する組成物に較べて、優れた肌触りを得られる。更に、両方の成分をともに使用することで、疎水性ポリマー及び皮膚軟化剤エステルの両方をより高い濃度で使用できるようになる。更に、これらの成分のより高い濃度での使用は、特に繰返し適用される場合に、これらの組成物中の低級アルコールによって引き起こされる乾燥の影響及び皮膚刺激の影響を弱める。低級アルコール(エタノールなど)自体が特に高濃度において乾燥することで知られている。任意で処方は、抗菌有効性を増強しないが、皮膚の経皮水分蒸散量(TEWL)を低下させる高分子量ワックス及び油などの他の皮膚軟化剤を含有してもよい。
【0117】
本発明の組成物はまた皮膚感染の予防及び処置に有用である。本組成物は、手術前に皮膚に本組成物を適用することにより、手術部位の感染を予防するために使用されてよい。本組成物がクロルヘキシジングルコネートを含有するとき、皮膚は、好ましくは手術の約30時間未満前に、最も好ましくは手術の10時間未満前に、局所的な処置が行われ得る。これらの組成物は、過性及び正常フローラを減らすために適用される。繰返しの適用が、皮膚上に更に高い有効性(細菌のlog減少)を提供するために使用されてもよい。好ましい実施形態では、本処方は、術前手術用前処理剤又は皮膚消毒剤として使用される。
【0118】
同様に、本発明の組成物は、カテーテルに関連した血流感染を予防するために使用することができる。特に、本組成物は、30〜180秒間にわたって皮膚に局所適用され、30〜180秒間又はアルコールが蒸発するような時間にわたって、乾燥される。不揮発性成分の残存層は驚くべきことに、長時間にわたって持続する、増強された抗菌活性を提供する。本組成物が適用されて視覚的に乾燥した後で、カテ−テル又は静脈ラインが挿入され、透明な包帯で固定される。不揮発性成分は、皮膚上で、高活性の持続性殺菌層として包帯の下に残る。
【0119】
本組成物は、鼻(前鼻孔、鼻咽頭腔、鼻腔など)、外耳、及び口、直腸、膣又は他の同様な組織中のもののような、皮膚及び/又は粘膜上の微生物(例えば、グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、原生動物、マイコプラズマ、酵母、ウィルス、及び更には脂質エンベロープウィルス)により引き起こされ又は悪化する疾患の処置及び/又は予防に使用することができる。このような疾患を引き起こす又は悪化させる、特に関連する有機体には、ブドウ球菌属、連鎖球菌属、シュードモナス属、腸球菌属、及びエシェリチア属、細菌、並びにヘルペスウィルス、アスペルギルス属、フザリウム属、カンジダ属、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。特に悪性の有機体には、黄色ブドウ球菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの耐性種を包含する)、表皮ブドウ球菌、肺炎球菌、エンテロコッカス・フェカリス、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、緑膿菌、大腸菌、クロコウジカビ、アスペルギルス・フミガータス、アスペルギルス・クラバタス、フザリウム・ソラニ、フザリウム・オキスポラム、フザリウムクラミドスポラム、カンジダアルビカンス、カンジダグラブラタ、カンジダクルセイ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0120】
本発明の組成物は、1種以上の微生物により引き起こされる感染又は他の疾患の予防及び/又は処置のために使用することができる。特に、本発明の組成物は、以下の1つ以上を予防及び/又は処置するために使用することができる:膿痂疹、湿疹、幼児並びに失禁症状のある成人におけるおむつかぶれ、造瘻装置周辺の炎症、帯状疱疹、及び開放創における細菌感染(例えば、切り傷、擦り傷、火傷、裂傷、慢性の傷)、壊疽性筋膜炎、外耳の感染、膣の酵母感染、細菌性鼻炎、眼の感染、ヘルペス、生殖器ヘルペス、黄色ブドウ球菌によるコロニー形成、足白癬(即ち、水虫)、股部白癬(即ち、いんきん)、体部白癬(即ち、たむし)、カンジダ症、ストレプ喉、溶血性連鎖球菌咽頭炎、及び他のA群連鎖球菌感染症、酒さ(しばしば大人ニキビと呼ばれる)、乾癬、並びに火傷などの、皮膚病変、皮膚の症状。即ち、本発明の組成物は、微生物感染(例えば、酵母、ウィルス、細菌の感染症)により引き起こされる様々な局所的疾患を予防及び/又は処置するために使用することができる。
【0121】
低級アルコール、及び使用される場合はいくつかの脂肪族成分は、皮膚浸透助剤としれ知られており、皮膚の深層に不揮発性成分を供給できるので、組成物は特に有用である。更にその上に、低級アルコールは皮膚上の微生物の速やかなlog減少を提供する。
【0122】
適用方法
本組成物は、フォーム適用、綿棒、飽和させた綿棒、飽和させた拭き取り用品、エアゾール、スプレー、ブラシ、浸漬が挙げられるがこれらに限定されない様々な技術を使用して適用することができる。好ましくは、本組成物は皮膚又は無生物の物体に15〜180秒間にわたって接触され、次に乾燥される。これらは塗料として又は手術用スクラブとして使用されてよい。本発明の組成物の独特な特性のため、本組成物は、術前消毒手術前処理剤、及びカテーテル処理に先立って使用される消毒用皮膚前処理剤などの感染予防製品に特に有用である。これらの組成物は、濡れているか又はそれに準じる状態の下で、医療用接着剤、テープ、手術用ドレープ及び透明な包帯と併用して使用されるとき、特に有用である。
【0123】
本発明の組成物の多くが抗菌剤を含有するため、これらが有効で正確な量で分与されることが重要である。本発明の組成物は、米国特許第5,897,031号及び同第5,799,841号に開示されるディスペンサーを使用して慎重にほぼ均一な量で分与することができる。
【0124】
調製方法
本発明の組成物は、様々な技術により調製され得る。高剪断混合の量及び強度、冷却速度、及び添加の順序を含むプロセス可変要素は当業者であれば容易に決定できる。
【0125】
試験方法
皮膚接着試験プロトコル
ボランティアのヒトの被験者に対して皮膚接着試験が行われた。被験者の背中が、希釈されたアイボリー石鹸により洗浄され、すすがれ、十分に乾燥された。試験組成物で飽和させたガーゼを連続的な円形運動で3回にわたって緩やかな圧力をかけて特定の部位に単純に塗布することによって、試験組成物が被験者の背中に適用された。試験組成物を乾燥させた後で、3M IOBAN 2抗菌切創ドレープの2.54cm×7.6cm(1インチ×3インチ)片が乾燥した組成物の上に非常に静かに適用された。5分間以内に試料は、均一な適用圧力を確実にするために及び手術での条件をシミュレートするために、2.1キログラム(kg)(4.5ポンド)、5.1cm(2インチ)ローラーでロールされた。ドレープが適用された後に、5分間の待機時間があった。生理食塩水に浸漬された1片のガーゼ(試料を覆うのに十分な大きさ)が適用され、その後、更に5分間の待機時間が続いた。追加の生理食塩水3mLがガーゼに添加され、その後、更に5分間の待機時間が続いた。ガーゼは試料から取り外された。切創ドレープ片は、皮膚に対して90°の剥離角度及び30.5cm(12インチ)/分の剥離速度で抵抗力測定装置を使用しながら取り外された。平均剥離抵抗力は10個の試料に対して20回の試験(それぞれの試料あたり2回)に基づいて計算された。試料を取り外すのに必要な平均剥離抵抗力が記録された。
【0126】
直接植菌フィルターアッセイ
これは、異なる手術用皮膚前処理剤処方の残留物有効性を比較するために、濾紙を使用するインビトロアッセイである。
【0127】
34グラムのKHPOを500mLの脱イオン水に加え、10NのNaOHによりpHを7.2に調整し、1リットルになるように十分な脱イオン水を添加することによって、0.25M原液を作ることにより、リン酸緩衝液(PBW)が作られた。この溶液は濾過され、滅菌され、1リットル滅菌瓶の中に分与されて、冷却状態で保存された。ButterfieldのPBWは、1.25mLの原液を900mLの脱イオン水に添加し、中和剤を添加し、かき混ぜ、成分を溶解するために加熱し、脱イオン水で1リットルまで希釈することによって作製された。この溶液は十分に混合され、2本の500mL瓶に分与された。溶液を含有する瓶は、25分間にわたって121℃で加圧滅菌される。内容物は、オートクレーブから瓶を取り出した後で、注意深くかき混ぜられた。
【0128】
0.4グラムのKHPO、10.1グラムのNaHPO、1.0グラムのTRITON X−100界面活性剤、3.0グラムのレシチン、30.0グラムのTWEEN 80、及び全容量を1リットルにするだけの脱イオン水を含有する標準試料溶液(SSS)が調製された。
【0129】
追加の溶液及び材料には、大腸レンサ球菌の24時間成長板、ATCC#10741、トレプシン大豆寒天、Lenexa,KSのRemelから入手可能な0.5マックファーランド標準比濁液、Franklin Lakes,NJのBecton Dickenson & Co.から入手可能な無菌使い捨て希釈管、Maidstone,EnglandのWhatman International,Ltd.の直径15mmの円に切られたワットマンNo.54ろ紙、Media,PAのVWR Scientific,Inc.から入手可能な無菌円状顕微鏡カバースリップ、VWRから入手可能な顕微鏡スライド、無菌鉗子、70%イソプロピルアルコール(IPA)、VWRから入手可能な無菌使い捨てペトリ皿、Franklin Lakes,NJのBecton Dickenson & Co.から入手可能な無菌50mL遠心分離管及び適当体積のピペッターが含まれていた。
【0130】
PBWを含有する試験管にコロニーを添加することにより、大腸連鎖球菌の原懸濁液が調製された。0.5マックファーランド標準比濁液を使用して、懸濁液はおよそ1.5×10にされた。連続希釈が行われて、10−6を得て、2連で10−6及び10−7をプレートした。それぞれの実施例、比較調製又は対照(70% IPA)のために、顕微鏡スライドは70% IPAで拭かれ、ペトリ皿の底部に定置された。滅菌鉗子を使用して、2枚の滅菌18mm円形カバーガラスがスライド上に並んで定置され、次に15mm円形に切られているワットマンフィルターディスクがそれぞれの円形カバーガラス上に定置される。
【0131】
それぞれのフィルターディクス上に、それぞれの実施例、比較調製又は対照の25μLがピペットされた。これらのディスクは10分間にわたって乾燥された。10分間の乾燥時間の後、大腸レンサ球菌の原液がそれぞれのフィルター上にピペットされた。植菌材料はフィルター上に5分間にわたって置いておかれた。5分間の植菌材料曝露時間後に、滅菌鉗子が使用されて、20mL SSS溶液を含有する50mL遠心菅の中にそれぞれのカバーガラス及びフィルターディスクを定置した。それぞれの実施例、比較調製又は対照は、遠心管の中で2分間ボルテックスされた。次に、それぞれの実施例又は対照の100μLは、9.9mLのPBWを包含する希釈管の中で10−2希釈をもたらすために希釈された。連続希釈が繰返されて、10−4希釈液を得た。希釈液は、混釈平板法を使用してTSAで2連で定置され、35℃で48時間にわたって培養された。48時間後に、コロニーが計数され、記録された。
【0132】
CFU/mLは、CFU計数を希釈率で乗じることにより決定された。CFU/試料は、CFU/mLを20(SSS希釈液の量)で乗じることにより計算された。CFU/試料のlog10が計算された。これがそれぞれの試料の対数回収であった。対数回収値は、それぞれの試料(実施例)及び対照の反復で平均化された。それぞれの試料の対数回収値は、対照の対数回収から減じられた。結果は、実施例調製液についてのlog減少である。対照の対数回収は、原懸濁液の計数に基づいて計算された植菌材料の量と統計上等しいと実証された。特記しない限り、下記に報告されるlog減少値は2連の調製液の平均である。
【0133】
皮膚パネルの評価
本調査の目的は、本発明の実施形態及びアルコール/CHG比較例を表す、選択された実施例処方の抗菌有効性を査定することであった。背中における正常皮膚フローラの減少は、前処理の10分後に測定された。
【0134】
調査日前の2週間(14日)にわたって、ヒトの被験者は、抗菌石鹸及びシャンプー、ローション(背中に)並びに局所的及び全身性抗生物質の使用を控える;化学的に処理された風呂、ジェットバス、スイミングプール及び日焼けベッドの使用を控える;接着背中パネル評価及び/又は抗菌又は消毒背中パネル評価を控える;調査前の24時間にわたって背中をシャワー又は入浴で洗うのを控える(但し、被験者はスポンジ清拭を行ってもよい)という、洗浄手順に従った。クリッピングが必要な場合、被験者は調査日の最短でも48時間前にパネル設備に戻る。
【0135】
調査日に、被験者が洗浄手順に従い、依然として参加するのに適格であったかどうかを決定する「調査日質問票」が全ての項目にわたって記入された。それぞれの背中に対して無作為化スキームが、基準試料採取及び処置(前処理された)試験部位の位置を決定した。皮膚フローラの基準試料採取が、ウィリアムソン−クリーグマン・カップスクラブ法を使用して行われた。それぞれの前処理処方は、スポンジを用いて30秒間にわたっての前後運動を行って適切な試験部位に適用され、およそ5.1cm×5.1cm(2インチ×2インチ)の領域を覆った。前処理された部位は乾燥され、処理後皮膚試料がウィリアムソン−クリーグマン・カップスクラブ法を使用して10分(±1分)の時点で採取された。試料採取の計時は、適用後に開始された。
【0136】
被験者の中和洗浄は7日間にわたり、調査日前の24時間は、シャワー又は入浴を控えることは要求されなかった。試料は、ウィリアムソン−クリーグマン・カップスクラブ法を使用して採取された。
【0137】
ウィリアムソン−クリーグマン・カップスクラブ法
無菌スクラブカップは、所望する皮膚部位上に定置されて皮膚に堅固に保持された。2.5mLの試料溶液は、カップの中にピペットされ、その区域を無菌テフロン(登録商標)ポリスマンを使用して1分間中圧で擦った。試料溶液は取り出され、滅菌試験管の中に定置された。追加の2.5mLの新しい試料溶液がカップにピペットで滴下された。擦ることが繰返され、この溶液は第1のものとともにたまった。試料の細菌は、リン酸緩衝液中での連続希釈に続いて、混釈平板法を使用して計数された。プレートは、35℃±2℃で72±4時間にわたって培養された。コロニー形成単位(CFU)は計数され、細菌は標準的な方法を使用して計数された。
【0138】
皮膚を擦るための試料溶液は、0.1%のTriton X−100、3.0%のTWEEN 80、及び0.3%のレシチンを含有し、pHが7.90.1に調整された、リン酸緩衝液(0.04%のKHPO、1.01%のNaHPO)からなる。これらの溶液における中和剤の適合性及び有効性は、調査処理に先立って、インビトロ法により確認された。
【実施例】
【0139】
以下の非限定的な実施例は、本発明の様々な特徴を示すために提供されるものであって、本発明の範囲の限定を意図するものではない。全ての百分率量は、特記されない限り、重量/重量の百分率(%w/w)である。
【0140】
【表1】

【0141】
(実施例1〜6)
CHG対照例及び
比較実施例C1〜C3
表2及び3に示される実施例は、以下の方法で60グラムの量で調製された。第1の容器に、以下の成分の特定量が添加された:エチルセルロース、DIPS、DIPA、エタノール及びグリセロール。この第1の容器を50℃まで加熱した。第2の容器に、CHG及び水の特定量を添加して混合した。第1の容器の中身を第2の容器に添加する間、CHG混合物を混合するために第2の容器を回転させた。処方を、小さな角穴の乳化ヘッドが装着されているシルバーソン(Silverson)均質化器を使用して高速で30秒間更に均質化した。試料を次に、実験台の上で室温まで冷却させた。表2及び3における成分の量は、特記されない限り、グラムで示されている。調製された実施例それぞれの総重量は60グラムであった。これらの処方は、上述した直接植菌フィルターアッセイに従って試験された。更に、前腕上に約0.5gの処方を定置し、約90秒間にわたって処方を乾燥させておいた後に処理された皮膚を清潔な指で評価することにより、それぞれの処方は肌触りについて評価された。その結果を下の表2及び3に示す。
【0142】
【表2】

【0143】
【表3】

【0144】
(実施例7〜12)
表4に示される実施例は、まずIPAをPVP及びエトセルと混合し、オーブンで50℃で加熱し、溶解するまで混合することにより、調製された。次に、ミリスチルアルコールが添加され、溶解するまで50℃で加熱された。別個に、食品、医薬品及び化粧品青色1号染料が水に添加され、溶解された。グリセロール及びそれぞれのエステルは、アルコール溶液に添加され混合された。次に水溶液がアルコール溶液に添加され、混合された。最後に、CHGが添加されて、処方は更に混合された。特記されない限り、組成物はグラム単位である。実施例は、上述した皮膚接着力手順に従って試験された。
【0145】
【表4】

【0146】
比較実施例C4及びC5
比較実施例C4〜C5は、まず200プルーフエタノール(EtOH)に脂肪族アルコールを溶解することにより調製された。脂肪族アルコールが溶解した後で、水及び残りの成分が添加され、それに続き、最後にCHGを添加することにより、下記の表5に示される組成物を有する最終処方が得られた。これらの処方は、上述した直接植菌フィルターアッセイに従って試験された。表5における成分の量は、特記されない限り、グラムで示されている。調製された実施例それぞれの総重量は60グラムであった。
【0147】
【表5】

【0148】
比較実施例C6〜C10
比較例C6〜C10は、上記の実施例1〜4と同様の方法で調製された。これらの実施例は、下記の表6に示され、全ての成分は重量/重量の百分率(%w/w)の単位で列挙される。前腕上に約0.5gの処方を定置し、約90秒間にわたって処方を乾燥させておいた後に処理された皮膚を清潔な指で評価することにより、それぞれの処方は肌触りについて評価された。結果を以下の表6に示す。
【0149】
【表6】

【0150】
比較実施例C11〜C14
比較実施例C11〜C14は、比較実施例C6〜C10と同一の方法により調製されたが、別個の必要性に基づいた。これらの実施例及び対照は、下記の表7に示され、全ての成分は重量/重量の百分率(%w/w)の単位で列挙される。これらの処方は上述した直接植菌フィルターアッセイに従って試験され、これらの結果は表7に示される。
【0151】
【表7】

【0152】
(実施例13〜17)
実施例13〜17は、まずエトセル、グリセロール、PVP及びIPAのポリマープレミックスを調製することにより作製された。次に、残りの成分が添加されて攪拌され、最後に水及びCHGが添加された。最終処方は約2分間にわたって攪拌されて、完全に混合した。調製された実施例は上述した皮膚パネルの評価の手順に従って評価された。実施例13〜17及び対照についての成分及び結果は下記の表8に提示される。
【0153】
細菌計数は、分析の前にlog10CFU/cmに換算された。1CFU/cm未満の計数は、対数変換値がゼロになるように、1CFU/cmとして処理された。log減少は、背中の同一の領域で得られた基準log計数から処理後のlog計数を減じることにより計算された。基準CFU計数は、平均すると3.1logになった。
【0154】
【表8】

【0155】
本発明の様々な改良及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せず、当業者には明らかとなるであろう。本出願に記載された実施例は、組成物の種類、量及び比率並びに本発明の処方の作製方法を変化させる可能性を例示するものである。本明細書に記載の特許、特許出願、及び刊行物の全ての開示内容は、それぞれが参照により個々に援用された場合と同様に、その全内容が参照によって援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも35重量%の量で存在するC〜Cの低級アルコールと、
b)前記低級アルコールに可溶性又は分散性の疎水性ポリマーと、
c)皮膚軟化剤エステルと、
d)カチオン性抗菌剤と、を含む抗菌剤組成物であって、
6を超えるHLBを有する界面活性剤を含まず、かつ親水性ポリマーを実質的に含まない、抗菌剤組成物。
【請求項2】
前記皮膚軟化剤エステルが、(C8〜C36)直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルケニルアルコール又は酸の(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルエステル、少なくとも1つの利用可能な位置において−OHによって任意に置換される(C2〜C12)二価酸又は(C4〜C12)ジオールの(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルジエステル、クエン酸の(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルジ又はトリエステル、グリセロール、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、又はプロピレングリコールの(C2〜C18)アルキル及び(C6〜C12)アリルエステル、ポリプロピレングリコールの(C12〜C22)アルキルエステル及び(C12〜C22)エーテル、ポリプロピレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマーの(C12〜C22)アルキルエステル及び(C12〜C22)エーテル、(C8〜C18)直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルケニルアルコール又は酸の(C8〜C36)アルキル及びアルケニルエステル、並びに直鎖又は分枝鎖(C8〜C36)アルキル又はアルケニルアミン又は酸の(C8〜C36)アルキル及びアルケニルアミドからなる群から選択される、請求項1に記載の抗菌剤組成物。
【請求項3】
前記皮膚軟化剤エステルが、(C8〜C36)直鎖又は分枝鎖アルキル又はアルケニルアルコール又は酸の(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルエステル、少なくとも1つの利用可能な位置において−OHによって任意に置換される(C2〜C12)二塩基酸又は(C4〜C12)ジオールの(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルジエステル、及びクエン酸の(C1〜C6)アルキル及び(C6〜C12)アリルジ又はトリエステルからなる群から選択される、請求項2に記載の抗菌剤組成物。
【請求項4】
a)少なくとも35重量%の量で存在するC〜Cの低級アルコールと、
b)前記低級アルコールに可溶性の疎水性ポリマーと、
c)カチオン性抗菌剤と、
d)二塩基酸のジエステル、クエン酸のトリエステル、ジオールのジエステル、トリオールのトリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される皮膚軟化剤エステルと、を含む抗菌剤組成物であって、
6を超すHLBを有する界面活性剤を含まず、かつ親水性ポリマーを実質的に含まない、抗菌剤組成物。
【請求項5】
a)少なくとも35重量%の量で存在するC〜Cの低級アルコールと、
b)アクリレート及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、n−ビニルラクタムコポリマー及びビニルコポリマー、並びに前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される前記低級アルコールに可溶性の疎水性ポリマーと、
c)カチオン性抗菌剤と、
d)皮膚軟化材エステルと、を含む抗菌剤組成物であって、
6を超すHLBを有する界面活性剤を含まず、かつ親水性ポリマーを実質的に含まない、抗菌剤組成物。
【請求項6】
a)少なくとも35重量%の量で存在するC〜Cの低級アルコールと、
b)アクリレート及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、n−ビニルラクタムコポリマー及びビニルコポリマー、並びに前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される前記低級アルコールに可溶性の疎水性ポリマーと、
c)カチオン性抗菌剤と、
d)皮膚軟化材エステルと、を含む抗菌剤組成物であって、
6を超すHLBを有する界面活性剤を含まず、かつ乾燥されるとき水に耐性を示す、抗菌剤組成物。
【請求項7】
a)少なくとも35重量%の量で存在するC〜Cの低級アルコールと、
b)アクリレート及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、n−ビニルラクタムコポリマー及びビニルコポリマー、並びに前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される前記低級アルコールに可溶性の疎水性ポリマーと、
c)カチオン性抗菌剤と、
d)二塩基酸のジエステル、クエン酸のトリエステル、ジオールのジエステル、トリオールのトリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される皮膚軟化材エステルと、を含む抗菌剤組成物であって、
6を超すHLBを有する界面活性剤を含まず、かつ親水性ポリマーを実質的に含まない、抗菌剤組成物。
【請求項8】
a)少なくとも35重量%の量で存在するC〜Cの低級アルコールと、
b)アクリレート及びその誘導体、セルロース及びその誘導体、n−ビニルラクタムコポリマー及びビニルコポリマー、並びに前述の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される前記低級アルコールに可溶性の疎水性ポリマーと、
c)カチオン性抗菌剤と、
d)二塩基酸のジエステル、クエン酸のトリエステル、ジオールのジエステル、トリオールのトリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される皮膚軟化材エステルと、を含む抗菌剤組成物であって、
6を超すHLBを有する界面活性剤を含まず、かつ乾燥されるとき水に耐性を示す、抗菌剤組成物。
【請求項9】
不揮発性抗菌剤組成物であって、
(a)疎水性ポリマーと、
(b)カチオン性抗菌剤と、
(c)二塩基酸のジエステル、クエン酸のトリエステル、ジオールのジエステル、トリオールのトリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される皮膚軟化材エステルと、を含む抗菌剤組成物であって、
親水性ポリマーを実質的に含まず、界面活性剤を含まない、抗菌剤組成物。
【請求項10】
不揮発性抗菌剤組成物であって、
(a)疎水性ポリマーと、
(b)カチオン性抗菌剤と、
(c)二塩基酸のジエステル、クエン酸のトリエステル、ジオールのジエステル、トリオールのトリエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される皮膚軟化材エステルと、を含む抗菌剤組成物であって、
乾燥されるとき水に耐性を示し、界面活性剤を含まない、抗菌剤組成物。
【請求項11】
前記皮膚軟化剤エステルが、二塩基酸のジアルキルエステル、クエン酸のトリアルキルエステル、ジオールのジアルキルエステル、トリオールのトリアルキルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4、8、及び10に記載の抗菌剤組成物。
【請求項12】
前記抗菌剤組成物が、界面活性剤を本質的に含まない、請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項13】
前記低級アルコールの水に対する重量比が、40:60〜95:5である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項14】
12〜C21の脂肪族アルコール、C12〜C21の脂肪族エーテル、C12〜C21の脂肪族アミド、及び前述のすべての組み合わせからなる群から選択される1つ以上の遊離ヒドロキシ基を含む脂肪族成分を更に含有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項15】
前記皮膚軟化剤エステルの前記カチオン性抗菌剤に対する前記重量比が、少なくとも0.5:1である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項16】
皮膚軟化剤エステルの前記カチオン性抗菌剤に対する前記重量比が、少なくとも1:1である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項17】
前記疎水性ポリマー及び前記皮膚軟化剤エステルの組み合わせの前記カチオン性抗菌剤に対する前記重量比が、少なくとも1:1である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項18】
前記疎水性ポリマー及び前記皮膚軟化剤エステルの組み合わせの前記カチオン性抗菌剤に対する前記重量比が、少なくとも2:1である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項19】
前記組成物中に、前記抗菌剤組成物の総重量に基づいて、前記疎水性ポリマーが、少なくとも2重量%の量で存在する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項20】
前記組成物中に、前記抗菌剤組成物の総重量に基づいて、前記皮膚軟化剤エステルが、少なくとも2重量%の量で存在する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項21】
前記皮膚軟化剤エステルが、水に対して2重量%未満の溶解度を有する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項22】
前記皮膚軟化剤エステルが、液体である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項23】
前記皮膚軟化剤エステルが、前記低級アルコールに可溶性である、請求項1〜22のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項24】
前記抗菌剤組成物が、湿式皮膚接着試験により試験されるとき、対照としての約2重量%のカチオン性抗菌剤を含有する組成物と比較して、改善された接着性を示す、請求項1〜23のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項25】
前記組成物中に、前記不揮発性組成物の総重量に基づいて、前記カチオン性抗菌剤が、少なくとも10重量%である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項26】
前記組成物中に、前記不揮発性組成物の総重量に基づいて、前記カチオン性抗菌剤が、70重量%以下である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項27】
前記カチオン性抗菌剤が、ビグアニド及びビスビグアニド、ポリマー性第4級アンモニウム化合物、小分子第4級アンモニウム化合物、及びそれらに適合する組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜26のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項28】
前記カチオン性抗菌剤が、クロルヘキシジン、クロルヘキシジンジグルコネート、クロルヘキシジンジアセテート、クロルヘキシジンジメトサルフェ、クロルヘキシジンジラクテート塩、ポリヘキサメチレンビグアニド、ベンザルコニウムハロゲン化合物、オクテニジン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜27のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項29】
前記組成物の総重量に基づいて、前記カチオン性抗菌剤が、少なくとも0.05重量%の量で存在する、請求項1〜28のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項30】
前記皮膚軟化剤エステルが、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、ブタンジオールとヘキサンジオールのジエステル、プロピレングリコールジカプリラート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜29のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項31】
保湿剤を更に含有する、請求項1〜30のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項32】
前記組成物中に、前記皮膚軟化剤エステルが、少なくとも1重量%の量で存在する、請求項1〜19及び21〜31のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物。
【請求項33】
医療用接着物品の湿式接着力を改善する方法であって、以下を含む組成物を適用することを含み、
a)少なくとも35重量%の量で存在するC〜Cの低級アルコールと、
b)前記低級アルコールに可溶性又は分散性の疎水性ポリマーと、
c)皮膚軟化剤エステルと、
d)カチオン性抗菌剤と、を含む組成物であって、
前記組成物に医療用接着物品を適用することを含む、方法であって、
前記医療用接着物品は前記湿式皮膚接着力試験によって測定されたときに、皮膚への接着力を改善する、方法。
【請求項34】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物を皮膚に適用する工程を含む、哺乳類の皮膚状態を守る又は処理する方法。
【請求項35】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の抗菌剤組成物を、手術又はカテーテル処理に先立って適用する工程を含む、手術部位又はカテーテル部位の感染予防方法。

【公表番号】特表2011−507978(P2011−507978A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541531(P2010−541531)
【出願日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/088590
【国際公開番号】WO2009/088894
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】