説明

折畳み型携帯電話機

【課題】内蔵型アンテナを備えた折畳み型携帯電話機において、ユーザがアンテナ性能を改善する手段がない。
【解決手段】表示部を備えた第1筐体と、内蔵アンテナを備えた第2筐体とが回動自在にヒンジ結合された携帯電話機であって、ヒンジ部は、通常の開いた状態である165度の状態に加え、携帯電話機の第1筐体と第2筐体とがなす角度が210度以上225度以下の所定の角度で、ユーザが携帯電話機を回動させるのに十分な力以上の力を加えない限りは、回動せず固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は折畳み型携帯電話機に関し、特にアンテナ性能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機には、伸縮可能なアンテナとして例えばホイップアンテナを備えるものがある。そのような携帯電話機においては、例えば通話時に、電波の受信状況が悪くて、相手の通話音声が聞き取りにくい場合に、ユーザはホイップアンテナを伸ばして、通話を行うということが行われる。つまり、ホイップアンテナを伸ばすことにより、アンテナを筐体の外に出して、受信状況を改善している。
【0003】
特許文献1には、そのようなホイップアンテナを備えた携帯電話機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−153807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、昨今、携帯電話機のアンテナとしては、携帯電話機のデザインや、ホイップアンテナの耐久性等を鑑みて、外部に露出する伸縮式のアンテナではなく、内蔵式のアンテナを用いることが主流となっている。この場合、ユーザとしては、受信状況が悪化したとしても、携帯電話機に対して何らかの操作を行って受信状況を改善したりすることができない。
【0006】
また、携帯電話機は、ユーザに近接させて使用するものであるから、人体の影響により、携帯電話機のアンテナ性能が劣化し、受信状況が悪化するという問題もある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、内蔵アンテナを備えた携帯電話機であっても、ユーザの手によってアンテナ性能を改善し得る携帯電話機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第1筐体と、内蔵アンテナが搭載された第2筐体とが回動自在にヒンジ結合された折畳み型携帯電話機であって、前記ヒンジ部には、2つの筐体を閉じた第1の状態、通話のために2つの筐体を所定角度まで開いた第2の状態、内蔵アンテナを人体から遠ざけるために第2の状態よりも更に一方の筐体を開き方向に回動した第3の状態の何れの状態にも角度を維持する機構が設けられていることを特徴としている。
【0008】
ここで、「維持する」とは、ユーザが筐体を0度〜165度まで回動させるのに通常必要とする力以上の力をかけなければ、その角度から変更できない程度に固定されることを意味する。
【発明の効果】
【0009】
これにより、携帯電話機は、内蔵アンテナを備えながらも、ユーザの手によってアンテナ性能を改善し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】折畳み型携帯電話機の外観図である。
【図2】折畳み型携帯電話機の使用形態を示す図である。
【図3】折畳み型携帯電話機の接続構成例を示す図である。
【図4】折畳み型携帯電話機のヒンジ部の構成を示す図である。
【図5】折畳み型携帯電話機の2つの筐体がなす角度に応じて測定されたデシベル値を示す表である。
【図6】折畳み型携帯電話機で使用する周波数帯の一つであるCellular帯における測定したデシベル値を示すグラフである。
【図7】折畳み型携帯電話機で使用する周波数帯の一つであるGPS帯における測定したデシベル値を示すグラフである。
【図8】折畳み型携帯電話機で使用する周波数帯の一つであるPCS帯における測定したデシベル値を示すグラフである。
【図9】折畳み型携帯電話機の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図10】折畳み型携帯電話機の通話時の動作を示すフローチャートである。
【図11】折畳み型携帯電話機の別構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
以下、本発明の一実施形態である携帯電話機について図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る携帯電話機100の外観図である。携帯電話機100は、第1筐体110と、第2筐体120とがヒンジ部130で回動自在にヒンジ結合された折畳み型携帯電話機である。
【0012】
第1筐体110は、LCD111とレシーバ112とを備える。レシーバ112は、厳密に言えば、レシーバ112の発する音声が携帯電話機110の外部に報知されるための開口部である。
第2筐体120は、マイク121と、テンキー群122とを備える。また、第2筐体120は、その筐体内部に、マイク121が備えられている主面とは反対側の主面に近接するように、内蔵アンテナ123を備えている。
【0013】
内蔵アンテナ123は板金であり、その面が第2筐体120の主面と略並行になるように設けられる。当該内蔵アンテナ123は、Cellular帯(約824.7MHz〜893.3MHz)、PCS(Personal Communication Services)帯(約1850MHz〜1990MHz)、GPS(Global Positioning System)帯(約1.57GHz)のそれぞれの電波を受信又は送信できる共用アンテナであり、トライプレクサにより周波数分離されて、それぞれの対応する通信回路で復調等の処理が実行されたり、変調されたアナログ信号を送信したりする。
【0014】
図2は、本発明に係る携帯電話機100の使用形態を示しており、図2(a)は通常の折畳み型携帯電話機と同様の通話状態を示している。図2(a)に示されるように、携帯電話機100は、ユーザの口元に第2筐体120のマイク121が近接するようにして使用される。この状態においては、第1筐体110と第2筐体120とのなす角度は165度となっている。ここで、第1筐体110と第2筐体120のなす角度とは、第1筐体110のLCD111及びレシーバ112がある主面と、第2筐体120のテンキー群121を備える主面と、その間にその他の主面を介在することなく、なす角度(以降、第1筐体110と第2筐体120とがなす角度をヒンジ角と記載する。)のこととする。しかし、このとき、第2筐体120は、ユーザに近接することになり、とりもなおさず、内蔵アンテナ123もまたユーザに近接することになる。すると、人体の影響を受けることになり、内蔵アンテナ123のアンテナ性能は劣化する。
【0015】
そこで、本発明に係る携帯電話機100は、図2(a)に示すように従来の折畳み型携帯電話機と同様に165度で固定される構成になっているが、更に、図2(b)に示すように、220度まで、回動させて固定できる構成になっている。これによって、内蔵アンテナ123を人体頭部から遠ざけることになるので、アンテナ性能を向上させることができる。なお、マイク121の集音性能は、図2(b)のようにユーザの口元から離しても十分音声を拾えるだけの性能を有するものとする。
【0016】
上記図2に示した使用形態を実現するための携帯電話機100の構成、即ち携帯電話機100のヒンジ角が165度及び220度の時に固定される固定機構を図3及び図4を用いて説明する。
なお、図3、図4においては、図面を見やすくするために、主要部分のみを記載するものとし、その他の構成、例えば、ヒンジ部130におけるフレキシブル基板等については、その図示を省略する。
【0017】
図3は、携帯電話機100の一構成手法を示した図であり、図4は、携帯電話機100のヒンジ部130の詳細を示す図である。図4(a)は、携帯電話機100のヒンジ部130の拡大図であり、図4(b)は、ヒンジ部130の平面図であって、携帯電話機100のヒンジ角を0度、165度、220度において固定状態を維持するための固定機構を説明するための図であり、図4(c)は、携帯電話機100のヒンジ部130を図1に示す携帯電話機100の右側面から見た図であって、左から順にヒンジ角が、0度(第1の状態)、165度(第2の状態)、220度(第3の状態)の状態で携帯電話機100が固定されることを示す図である。
【0018】
図3に示すように携帯電話機100は、第1筐体110の凸部に設けられた貫通孔114と、第2筐体120に設けられた貫通孔124b並びに嵌め込み孔124aとを貫通するように軸部材131が通されることで、第1筐体110と第2筐体120とは回動自在に接続されることになる。軸部材131を通したあとにキャップ125を嵌める。ヒンジ部130としては所謂フリーストップヒンジを用いてもよい。
【0019】
第1筐体110の凸部には、挿入孔113が設けられ、当該挿入孔113にばね115とボール116とが挿入される。
当該ボール116は、図4(b)の右図に示すように、通常第2筐体のヒンジ部分の側壁により、ばね115が収縮して挿入孔113内に押し込まれる。
一方、図4(b)左図や、図4(c)に示されるように、挿入孔113は、携帯電話機100のヒンジ角が0度、165度、220の時にそれぞれ、係合孔126a、126b、126cに正対する。このとき、ボール116は、ばね115により押し出されて各係合孔に係合する。当該機構によって、携帯電話機100は、ヒンジ角がそれぞれ0度、165度、220度の時に固定され、当該状態は、携帯電話機100を例えば0度〜165度まで回動させるのに必要とする力よりも大きい力をユーザが加えない限りは維持されるものとする。当該、挿入孔113、ばね115、ボール116、係合孔126a、126b、126cを以って、本実施の形態における固定機構とする。
【0020】
上述の構成によって、携帯電話機100は、通常の折畳み型携帯電話機を開いた状態以上に回動させて、更に開くことができ、これによって、内蔵アンテナ123をユーザから遠ざけることとなり、人体の影響により劣化していたアンテナ性能を改善できる。
即ち、折畳み型携帯電話機は、第1筐体と第2筐体とのなす角度が従来からも維持される第1の状態において維持できる構成に加えて、更に、第1の状態よりも広い角度である第2の状態においても維持できる。これによって、第2筐体を第1の状態に比べて人体から遠ざけることになるので、内蔵アンテナもまた人体から遠ざかることになり、アンテナ性能を改善できる。
<考察>
本実施の形態1に示す携帯電話機100を発明するに当たり、発明者らは、携帯電話機の構成、つまりヒンジ角に応じたアンテナ性能の劣化度合いについて検証した。
【0021】
図5は、携帯電話機100で使用する周波数帯と、ヒンジ角に応じた基準アンテナの示すデシベル値からの変化値を示しており、言い換えれば、アンテナ性能が劣化していないとされている状態からの各角度のアンテナ性能の劣化度合いを示している。即ち、当該表に示されるデシベル値が低いほど、アンテナ性能が劣化していることを示しており、この値が高いほど、アンテナ性能が良いことを示す。
【0022】
図5においては、縦軸に第1筐体110と第2筐体とがなす角度をとり、横軸に使用周波数をとり、それぞれに対応する低下したデシベル値を示している。図5の、Cellular帯と、PCS帯のそれぞれにおいて示す、TXは、送信を、RXは、受信を意味している。また、TXまたはRXに付随する、L、M、Hは、それぞれ、Low-channel、Middle-channel、High-channelを意味し、Low-channelは、各帯域の下限チャネルを意味し、Middle-channelは、各帯域の中心チャネルを意味し、High-channelは、各帯域の上限チャネルを意味する。なお、当該測定値は、図2に示す位置に携帯電話機を配した場合の測定値であり、当該測定は図2に示すユーザの位置に村田製作所のドライファントム(登録商標)を配して行われた。ドライファントム(登録商標)は、人体と同等の誘電特性を有する人体模型である。
【0023】
そして、図6〜図8は、図5に示した各周波数帯におけるデシベル値の変化をグラフ化したものであり、図5の表をより理解しやすくするために可視化したものである。図6は、Cellular帯の、図7は、GPS帯の、図8は、PCS帯のデシベル値の変化、即ちアンテナ性能の劣化度合いの変化を示している。
図6〜図8を見ればわかるように、ほぼ全ての周波数帯において、ヒンジ角が220度になるまでは、その角度が広がっていけば行くほど、アンテナ性能の劣化度合いが低減していくことがわかる。
【0024】
そして、図7と図8に示すように、GPS帯とPCS帯の場合、220度を超えると、アンテナ性能は再び劣化していくことがわかる。一方、Cellular帯の場合、225度を超えると、一旦大幅にアンテナ性能が劣化し、その後、240度を越えたあたりから、アンテナ性能は改善していく。また、Cellular帯の送信の低周波数帯(TX-L)の場合、210度を超えるとアンテナ性能が劣化している。また、その他の周波数帯においても、210度から225度にかけては横這いになっているものもある。
【0025】
これは、使用している周波数帯の信号に応じて、水平偏波と垂直偏波の振幅が異なるため、内蔵アンテナ123が信号を受信する受信のしやすさが変化するためである。
内蔵アンテナ123は、共用アンテナであるので、全周波数帯において、受信精度が改善されるように携帯電話機100の折り曲げ角度が固定されるのが望ましい。また、各周波数帯に応じて固定される角度を決めたとしてもユーザは、どの角度がどの周波数帯に適しているかなど、知り得ない。そのため、携帯電話機100では、165度よりも広い角度において、1つの角度に固定されるのがユーザビリティの観点からすると望ましく、発明者らは、上記図5〜図8の測定値に基づいて、当該1つの角度は、210度から225度の間のいずれかの角度であれば良いと定め、上記実施の形態においては、220度とする例を示した。
【0026】
以上に示してきたように、携帯電話機100は、通常の折畳み型携帯電話機とは異なり、ヒンジ角が165度である場合だけでなく220度である場合においても固定される機構を有する。これにより、ユーザは、受信状況が悪くて相手の通話音声が聞き取りにくい場合であっても、ヒンジ角が165度の状態から220度の状態に変化させることで、受信状況を変化させることができる。即ち、携帯電話機100は、内蔵アンテナ123を備えていながらも、ユーザが携帯電話機100を変形させることで受信状況を変化させることができる。また、220度の状態に固定される機構を備えることにより、携帯電話機100の第1筐体110と第2筐体120とがどの角度をなすときにアンテナ性能が改善されるのかわからないユーザにとっても一意にその箇所を特定することができる。
<実施の形態2>
上記実施の形態1においては、本発明の一実施形態である折畳み型携帯電話機100のハードウェア的構成について説明した。本実施の形態2においては、この折畳み型携帯電話機100の利便性を高める構成について説明する。
<構成>
図9は、携帯電話機100の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0027】
図9に示すように携帯電話機100は、通信部910と、表示部920と、音声処理部930と、操作部940と、検出部950と、記憶部960と、制御部970とを含んで構成される。
通信部910は、アンテナ123から受け取った受信信号を受話音声信号及び受信データ信号に復調し、復調した受話音声信号や、受信データ信号を制御部970に出力する機能を有する。また、通信部910は、制御部970を介して得られる音声処理部930でA/D変換された送話音声信号、及び制御部970から与えられる電子メールなどの送信データ信号を変調し、通信用アンテナ123から出力する機能を有する。
【0028】
表示部920は、LCD(Liquid Crystal Display)111などのディスプレイを含み、制御部970の指示による画像、例えば、メールの作成画面などをLCD111に表示する。
音声処理部930は、通信部910から出力された受話音声信号をD/A変換してレシーバ112に出力する機能と、マイク121から取得した送話音声信号をA/D変換し、変換された信号を制御部970に出力する機能を有する。上記実施の形態1においては、マイク121は十分な集音性能を有するものとしたが、本実施の形態2においては、マイク121は集音性能を変更することが可能なマイクであるとし、音声処理部930は、制御部970からの指示に従ってマイク121の集音性能を変更する機能も有する。マイク121の集音性能は、通常は初期状態に設定され、制御部970からの指示により、通話時に第1筐体110と第2筐体120とがなす角度が220度になったときに、その集音性能が上げられる。
【0029】
操作部940は、テンキー群122、オンフックキー、オフフックキー、方向キー、決定キー、メールキー、サイドキーなどを含み、ユーザの操作を受けて操作内容を制御部970に出力する機能を有する。操作部940を介して、ユーザは、メールの送信先を指定したり、メールの本文の内容を入力したりすることができる。
検出部950は、角度センサ951を含み、角度センサ951が220度を示した場合に、その旨を示す制御信号を制御部970に伝送する。角度センサ951は、図示していないが、図3のヒンジ部130の回動角を検出するためのセンサであり、携帯電話機100が閉じている状態、即ち、図1で言えば、第1筐体110のLCD111を備えている面と、第2筐体120のテンキー群120とが正対する状態を0度として、その状態から筐体を回動させた回動角を検出する。
【0030】
記憶部960は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含んで構成され、小型ハードディスクやメモリなどによって実現される。記憶部960は、携帯通信端末100の動作上必要な各種データやプログラムの他、音楽データや画像データなどを記憶する機能を有する。
制御部970は、CPU(Central Processing Unit)であり、携帯通信端末100の各部を制御する機能を有し、通常の携帯電話機が有する機能の他、通話中に検出部950が第1筐体110と第2筐体120とがなす角度が220度になったことを示す制御信号を受けた場合にマイク121の集音性能を上げる指示を音声処理部930に出力する機能も有する。
<動作>
次に、本実施の形態に係る携帯電話機100の動作を図10に示すフローチャートを用いて説明する。
【0031】
携帯電話機100は、ユーザからの指示を受け付けて、又は、他の電話機からのコールを受けて、他の電話機との通話処理を開始する(ステップS1001)。
制御部970は、通話中に、検出部950から、第1筐体110と第2筐体120とのなす角度が220度であることを示す制御信号を受け付けた場合に(ステップS1003のYES)、マイク121の集音性能を上げる指示信号を音声処理部930に伝送する。音声処理部930は、制御部970からの指示に従いマイク121の集音性能を上げる。なお、当該通話中において既に集音性能を上げてしまっている場合には、制御部970は、マイク121の集音性能を上げる指示を出力しない。
【0032】
制御部970は、ユーザからの通話終了指示、もしくは、通話相手からの通話終了処理による基地局との回線切断により処理を終了する。通話が終了していない場合は(ステップS1007のNO)、ステップS1003に戻る。
なお、携帯電話機100は、通話終了後に、マイク121の集音性能を上げていた場合には、その性能を初期値に戻す。
【0033】
以上に示すように、携帯電話機100は、通話中に、第1筐体110と第2筐体120とがなす角度が220度になったことを検出して、マイクの集音性能を上げる。よって、ユーザがアンテナ性能をあげるために、携帯電話機100を回動させて第1筐体110と第2筐体120とがなす角度を220度にすることによって、マイクがユーザの口元から遠ざかることになったとしても、ユーザの話し声を確実に拾えることができ、通話に支障をきたさない構成とすることができる。
<補足>
上記実施の形態において、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明の実施形態がこれに限られないことは勿論である。以下、上記実施形態以外に本発明として含まれる各種の変形例について説明する。
(1)上記実施の形態1においては、携帯電話機を、第1筐体と第2筐体とがなす角度が165度と220度との両方で固定できるように構成したものを示した。しかし、両角度は、一例に過ぎず、本発明に係る携帯電話機は、通話状態において、アンテナを人体から放す方向へ筐体が変化するようになっていれば、上記実施の形態において示した第1筐体110と第2筐体120とがなし、維持される角度である165度と220度との角度は、その他の角度であってもよい。例えば、165度を170度、220度を215度で固定されるように構成してもよい。また、当該210度〜225度という角度は、内蔵アンテナ123を第2筐体120のマイク121の近傍に配した場合の測定値によって求められたものであり、また、使用する周波数帯によっても異なってくるため、内蔵アンテナ123の配置箇所や、使用する周波数に応じて最もアンテナ性能が改善される角度であればよい。
【0034】
また、携帯電話機100を第1筐体110と第2筐体120とが上記2つの角度で固定されるための機構は上述するものに限られず、ユーザが通常第1筐体110と第2筐体120とを回動させるのに必要な力以上の力を加えない限りはその状態が維持される機構であれば、どのような機構であってもよい。例えば、ヒンジ部130にモータと、ヒンジ部130にかけられているユーザの力を計測するセンサとを備え、165度及び220度になったタイミングでモータを動作させて、一定以上の力を加えられない限りは、ヒンジ部130を回動させないように構成してもよい。
(2)上記実施の形態2においては、検出部950は、角度センサ951を用いて、第1筐体110と第2筐体120とがなす角度が220度になっているか否かを検出することとした。しかし、第1筐体と第2筐体とがなす角度を検出する手法は、これに限定されるものではなく、以下のような手法を用いて検出してもよい。
【0035】
例えば、ばね115と、ボール116とを導電性の金属で構成し、係合孔126cに導電性の金属膜を貼り付け、ばね115の端部と、係合孔126cに貼り付けた金属膜とに配線で結線する。そして、当該配線上において電流検出回路等を設け、電流が流れるかどうかを検出することによって、電流が流れる場合に、係合孔126cに対応する角度、即ち220度になっていることを検出することとしてもよい。また、同様の構成を係合孔126a、126bにも設けて、それぞれの角度を検出することとしてよい。
(3)上記実施の形態1においては、一つの軸部材131からなるヒンジ部130で第1筐体と第2筐体とヒンジ結合された構成の折畳み型携帯電話機を開示したが、本発明に係る折畳み型携帯電話機の構成はこれに限るものではない。
【0036】
例えば、図11に示されるように、2つのヒンジと両筐体の間に介在する第3の筐体で第1筐体110aと第2筐体120aとを接続するようにしてもよく、この際に、図11に示すように第1筐体110aと第2筐体120aとがなす角度が220度で固定される構成を備えていればよい。具体的には、実施の形態1に示したような、固定部の構成を両ヒンジ部に設けることで実現すればよい。
【0037】
また、携帯電話機100は、その他の形態であってもよく、ヒンジによって少なくとも2つの筐体が回動し、当該回動により、アンテナを搭載している筐体と、他方の筐体との相対位置関係が変化するものであればよく、例えば、所謂サイクロイド型の携帯電話機であってもよい。
(4)上記実施の形態においては、内蔵アンテナ123は、Cellular帯、GPS帯、PCS帯のそれぞれの周波数帯の信号を送受信可能な共用アンテナであるとしたが、内蔵アンテナ123は、そのうちの一つの周波数帯の信号のみが送受信できる専用アンテナであってもよいし、そのうちの二つの周波数帯の信号を送受信する共用アンテナ、あるいは、上述の三つ以上の周波数帯の信号を送受信できる共用アンテナであってもよい。
(5)上記実施の形態2においては、第1筐体と第2筐体とがなす角度が220度である場合に、マイク121の集音性能を上げる制御を実行することとした。これは、第1筐体と第2筐体とがなす角度を220度にするとマイクがユーザの口から遠ざかることになってしまうことに対応するための処理であったが、当該構成の換わりに、携帯電話機を以下の構成とすることで対応してもよい。
【0038】
即ち、マイク121を第2筐体120の、ヒンジ部130に近接する位置に(例えば、ファンクションキーの上部)配することとしてもよい。当該位置にマイク121を配することによって、携帯電話機100の回動によって、マイクは、さほど遠ざかることはなくなり、マイク121がユーザの話し声を拾えないという事態を防止することができる。
また、同様の思想により、マイク121を第1筐体110のヒンジ部130寄りに配することとしてもよい。
(6)上記実施の形態2においては、マイク121の集音性能を一度上げている場合には、以降は上げないこととした。しかし、マイク121は、その集音性能を段階的に上げてもよく、例えば、マイク121が拾う音声を変換して得られる信号レベルが所定の閾値よりも低い場合に当該閾値を超えるまで集音性能を上げ続けたりしてもよい。
(7)上述の実施形態2で示した第1筐体110と第2筐体120とのなす角度に応じて、マイクの集音性能を変化させる動作処理等(図10参照)を携帯電話機等のプロセッサ、及びそのプロセッサに接続された各種回路に実行させるためのプログラムコードからなる制御プログラムを、記録媒体に記録すること、又は各種通信路等を介して流通させ頒布させることもできる。このような記録媒体には、ICカード、ハードディスク、光ディスク、フレキシブルディスク、ROM等がある。流通、頒布された制御プログラムはプロセッサに読み出され得るメモリ等に格納されることにより利用に供され、そのプロセッサがその制御プログラムを実行することにより、実施形態で示したような各種機能が実現されるようになる。
(8)なお、上記実施形態1や実施形態2では、使用する周波数帯として、Cellular帯やPCS帯を用いたが、本発明はこのような周波数帯を用いる場合に限定されない。例えば、800MHz(約770MHz〜960MHz)や、2GHz帯(約1920MHz〜2200MHz)など、適宜な周波数帯を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る折畳み型携帯電話機は、内臓アンテナを用いて通信を行いながらも、ユーザが携帯電話機を操作することで、アンテナ性能を改善できる折畳み型携帯電話機として活用することができる。
【符号の説明】
【0040】
100 携帯電話機
110 第1筐体
111 LCD
112 レシーバ
115 ばね
116 ボール
120 第2筐体
121 マイク
122 テンキー群
123 内蔵アンテナ
126a、126b、126c 係合孔
130 ヒンジ部
131 軸部材
910 通信部
920 表示部
930 音声処理部
940 操作部
950 検出部
951 角度センサ
960 記憶部
970 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、内蔵アンテナが搭載された第2筐体とが回動自在にヒンジ結合された折畳み型携帯電話機であって、
前記ヒンジ部には、2つの筐体を閉じた第1の状態、通話のために2つの筐体を所定角度まで開いた第2の状態、内蔵アンテナを人体から遠ざけるために第2の状態よりも更に一方の筐体を開き方向に回動した第3の状態の何れの状態にも角度を維持する機構が設けられている
ことを特徴とする折畳み型携帯電話機。
【請求項2】
2つの筐体を折り畳んだ状態で互いに正対する2つの主面を、第1筐体の第1の主面と第2の筐体の第2の主面とした場合に、
前記第2の状態は、前記第1の主面と前記第2の主面とがなす角度が150度以上170度以下の範囲にあり、
前記第3の状態は、前記第1の主面と前記第2の主面とがなす角度が210度以上225度以下の範囲にある
ことを特徴とする請求項1記載の折畳み型携帯電話機。
【請求項3】
前記ヒンジ部は、前記第1の筐体の一端に設けた軸受け部と前記第2の筐体の一端に設けた軸受け部とが、1本の軸部材を軸承する構造であり、
前記角度を維持する機構は、両軸受け部の対抗する端面の、一方にスプリング付勢されたボールを設け、他方に前記ボールが嵌まり込む係合孔を設けた構成である
ことを特徴とする請求項2記載の折畳み型携帯電話機。
【請求項4】
前記スプリング付勢されたボールは1個であり、前記係合孔は前記第3の状態に相当する角度を持たせて3個形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の折畳み型携帯電話機。
【請求項5】
前記内蔵アンテナは、前記第2筐体が前記ヒンジ部を介して前記第1筐体に結合する側の前記第2筐体の第1の端部とは反対側の第2の端部に近接する位置に配される
ことを特徴とする請求項2記載の折畳み型携帯電話機。
【請求項6】
前記第2筐体は、前記第2の端部に近接する位置に配された、集音性能を変更可能なマイクを備え、
前記折畳み型携帯電話機は、更に、
自機が前記第3の状態にあるかどうかを検出する検出手段と、
前記通話を実行している場合であって、前記検出手段が自機が前記第3の状態にあると検出したときには、前記マイクの集音性能をあげる制御手段とを備える
ことを特徴とする請求項2記載の折畳み型携帯電話機。
【請求項7】
前記内蔵アンテナは、Cellular帯及びPCS帯の信号の送受信に用いられる共用アンテナである
ことを特徴とする請求項2記載の折畳み型携帯電話機。
【請求項8】
前記第1筐体の前記ヒンジ部を介して前記第2筐体に結合する側の端部寄りに、又は、前記第2筐体の前記ヒンジ部を介して前記第1筐体に結合する側の端部寄りに、マイクを備える
ことを特徴とする請求項2記載の折畳み型携帯電話機。
【請求項9】
前記内蔵アンテナは、800MHz帯及び2GHz帯の信号の送受信に用いられる共用アンテナであることを特徴とする請求項2記載の折畳み型携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−223297(P2011−223297A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90280(P2010−90280)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】