抵抗型酸素センサ、空燃比制御装置および輸送機器
【課題】センサ出力の温度依存性を簡便に低減し得る抵抗型酸素センサを提供する。
【解決手段】本発明による抵抗型酸素センサは、雰囲気ガス中の酸素分圧に応じて抵抗率が変化する酸素濃度検出部1を備えた抵抗型酸素センサであって、それぞれが酸素濃度検出部1に電気的に直列に接続され得る複数の固定抵抗素子2A〜2Cと、酸素濃度検出部1の温度に応じて、酸素濃度検出部1と複数の固定抵抗素子2A〜2Cとの電気的な接続関係を制御する制御部3とを備える。
【解決手段】本発明による抵抗型酸素センサは、雰囲気ガス中の酸素分圧に応じて抵抗率が変化する酸素濃度検出部1を備えた抵抗型酸素センサであって、それぞれが酸素濃度検出部1に電気的に直列に接続され得る複数の固定抵抗素子2A〜2Cと、酸素濃度検出部1の温度に応じて、酸素濃度検出部1と複数の固定抵抗素子2A〜2Cとの電気的な接続関係を制御する制御部3とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素センサに関し、特に、雰囲気ガス中の酸素分圧に応じて抵抗率が変化する酸素濃度検出部を備えた抵抗型酸素センサに関する。また、本発明は、抵抗型酸素センサを備えた空燃比制御装置や輸送機器にも関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題やエネルギー問題の観点から、内燃機関の燃費を向上させたり、内燃機関の排気ガス中に含まれる規制物質(NOxなど)の排出量を低減したりすることが求められている。このためには、常に最適な条件で燃料の燃焼が行えるよう、燃焼状態に応じて燃料と空気との比率を適切に制御する必要がある。空気と燃料との比率は空燃比(A/F)と呼ばれ、三元触媒を用いる場合、最適な空燃比は理論空燃比である。理論空燃比とは、空気と燃料とが過不足なく燃焼する空燃比である。
【0003】
理論空燃比で燃料が燃焼している場合、排気ガス中には一定の酸素が含まれる。空燃比が理論空燃比よりも小さい場合、つまり、燃料の濃度が相対的に高い場合には、排気ガス中の酸素量が、理論空燃比の場合の酸素量に比べて減少する。一方、空燃比が理論空燃比よりも大きい(燃料の濃度が相対的に低い)場合には、排気ガス中の酸素量は増加する。このため、排気ガス中の酸素量あるいは酸素濃度を計測することによって、空燃比が理論空燃比からどの程度ずれているかを推定し、空燃比を調節して最適な条件で燃料が燃焼するように制御することが可能となる。
【0004】
排気ガス中の酸素濃度を計測するための酸素センサとしては、特許文献1に開示されているような固体電解質を用いた酸素センサや、特許文献2に開示されているような抵抗型の酸素センサが知られている。
【0005】
固体電解質を用いた酸素センサは、基準極および測定極間での酸素分圧の違いを起電力として検出することによって酸素濃度を測定する。このため、この方式の酸素センサでは、測定極および基準極を排気ガスおよび空気にそれぞれ曝す必要がある。従って、酸素センサ自体の構造が複雑になるとともに、排気管に酸素センサを取り付けるための構造も複雑化してしまう。また、構造が複雑になるために、酸素センサを小型化し難いという問題も生じる。
【0006】
これに対して、抵抗型酸素センサは、排気ガスに接するように設けられた酸化物半導体層の抵抗率の変化を検出する。排気ガス中の酸素分圧が変化すると、酸化物半導体層中の酸素空孔濃度が変動するので、酸化物半導体層の抵抗率が変化する。従って、この抵抗率の変化を検出することにより、酸素濃度を測定することができる。抵抗型酸素センサは、基準極を必要としないため、酸素センサ自体の構造を簡単にすることができる。また、排気管に酸素センサを取り付けるための構造も簡単にすることができる。抵抗型酸素センサに用いられる酸化物半導体としては、耐久性や安定性の点から酸化セリウムが有望視されている。
【0007】
しかしながら、酸化物半導体層の抵抗率は、酸素分圧だけでなく、温度に対しても強い依存性を示す。図17に、酸化物半導体層の抵抗率と温度との関係の一例を示す。図17に示すように、温度が高いほど抵抗率は低くなる。例えば600℃と1000℃とで比較した場合、リッチ領域では約10倍、リーン領域では100倍以上抵抗率が異なっており、抵抗率が非常に大きな温度依存性を有していることがわかる。このように、酸化物半導体層の抵抗率が温度依存性を有しているので、従来の抵抗型酸素センサは、センサ出力の温度依存性が極めて大きいという問題を有していた。
【0008】
この問題を解決するために、特許文献3には、センサ出力の温度依存性を低減させるための温度補償機構を有する抵抗型酸素センサが提案されている。図18および図19に、特許文献3に開示されている酸素センサ810を示す。図18(a)および(b)は、酸素センサ810を模式的に示す上面図および断面図であり、図19は、酸素センサ810の等価回路図である。
【0009】
酸素センサ810は、基板801と、基板801上に設けられたガス検出部分802および温度補償部分803と、ガス検出部分802および温度補償部分803に接触するように設けられた電極804とを有している。
【0010】
酸化物半導体から形成されたガス検出部分802の抵抗率は、温度と酸素分圧の両方に依存性を有している。これに対し、酸素イオン伝導体から形成された温度補償部分803の抵抗率は、温度には依存性を有しているが、酸素分圧には依存性をほとんど有していない。ガス検出部分802の抵抗率の温度依存性と、温度補償部分803の抵抗率の温度依存性とができるだけ同じになるように、ガス検出部分802および温度補償部分803の材料が選択される。
【0011】
ガス検出部分802と温度補償部分803とは、図19に示すように、電気的に直列に接続されている。ガス検出部分802および温度補償部分803に所定の電圧Vが印加され、ガス検出部分802にかかる電圧Voutの入力電圧Vに対する比Vout/Vがセンサ出力となる。
【0012】
ガス検出部分802の抵抗率rgは、次式で表される。
rg=rg0・P1/n・exp(Eg/kT)
ここで、rg0は温度にも酸素分圧にも依存しないガス検出部分802固有の定数、Pは酸素分圧、nは4〜6の値、Egはガス検出部分802の活性化エネルギー、kはボルツマン定数、Tは温度である。
【0013】
一方、温度補償部分803の抵抗率rnは、次式で表される。
rn=rn0・exp(En/kT)
ここで、rn0は温度にも酸素分圧にも依存しない温度補償部分803固有の定数、Enは温度補償部分803の活性化エネルギーである。
【0014】
ガス検出部分802および温度補償部分803に所定の電圧Vが印加されたとき、ガス検出部分802にかかる分圧電圧Voutは、次式で表される。
Vout=rg/(rg+rn)・V
=rg0・P1/n・exp(Eg/kT)/{rg0・P1/n・exp(Eg/kT)+rn0・exp(En/kT)}・V
【0015】
ガス検出部分802の活性化エネルギーEgと温度補償部分803の活性化エネルギーEnが等しいならば、上式において温度に依存する項が消え、センサ出力Vout/Vは、次式で表される。
Vout/V=(rg0・P1/n)/(rg0・P1/n+rn0)
【0016】
このように、センサ出力は、温度に依存しない値となる。なお、ガス検出部分802の活性化エネルギーEgと温度補償部分803の活性化エネルギーEnとが異なっている場合にはセンサ出力は温度依存性を示すが、EgとEnとができるだけ一致するようにガス検出部分802と温度補償部分803の材料を選択することにより、センサ出力の温度依存性を十分に低減することができる。
【特許文献1】特開平8−114571号公報
【特許文献2】特開平5−18921号公報
【特許文献3】特開2004−85549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献3に開示されているような温度補償部分を設ける場合、温度補償部分を形成するための工程を追加する必要があり、製造時の工程数が増加してしまう。また、ガス検出部分が設けられた基板上に温度補償部分を配置する必要があるために、酸素センサの大型化を招いてしまう。酸素センサが大型化すると、電極や触媒層、ヒータなどを形成するための材料(白金などの貴金属が用いられることが多い。)の量も増加するので、製造コストも増加してしまう。さらに、ガス検出部分と温度補償部分のそれぞれの抵抗率のばらつき(製造時の寸法精度のばらつきに起因して設計値からばらつく)が、センサ出力のばらつきとして現れるため、信頼性の確保が難しい。
【0018】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサ出力の温度依存性を簡便に低減し得る抵抗型酸素センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による抵抗型酸素センサは、雰囲気ガス中の酸素分圧に応じて抵抗率が変化する酸素濃度検出部を備えた抵抗型酸素センサであって、それぞれが前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続され得る複数の固定抵抗素子と、前記酸素濃度検出部の温度に応じて、前記酸素濃度検出部と前記複数の固定抵抗素子との電気的な接続関係を制御する制御部とを備える。
【0020】
ある好適な実施形態において、前記制御部は、前記酸素濃度検出部の温度に応じて、前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる。
【0021】
ある好適な実施形態において、動作中には常に、前記酸素濃度検出部に前記複数の固定抵抗素子のうちの少なくとも1つの固定抵抗素子が電気的に直列に接続されている。
【0022】
ある好適な実施形態において、前記酸素濃度検出部および前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている前記少なくとも1つの固定抵抗素子に基準電圧が印加され、前記酸素濃度検出部または前記少なくとも1つの固定抵抗素子にかかる電圧の、前記基準電圧に対する比がセンサ出力とされる。
【0023】
ある好適な実施形態において、前記複数の固定抵抗素子は、少なくとも3つの固定抵抗素子を含んでいる。
【0024】
本発明による空燃比制御装置は、上記構成を有する抵抗型酸素センサを備えている。
【0025】
ある好適な実施形態において、本発明による空燃比制御装置は、前記抵抗型酸素センサに接続された電子制御ユニットをさらに備えており、前記複数の固定抵抗素子は、前記電子制御ユニット内に設けられている。
【0026】
ある好適な実施形態において、前記電子制御ユニットが前記抵抗型酸素センサの制御部としても機能する。
【0027】
本発明による輸送機器は、上記構成を有する空燃比制御装置を備えている。
【0028】
本発明による抵抗型酸素センサは、それぞれが酸素濃度検出部に電気的に直列に接続され得る複数の固定抵抗素子と、酸素濃度検出部の温度に応じて、酸素濃度検出部と複数の固定抵抗素子との電気的な接続関係を制御する制御部とを備えている。従って、酸素濃度検出部に直列に接続されている抵抗要素の抵抗率を、酸素濃度検出部の温度に応じて変化させることができる。そのため、上記の抵抗要素(すなわち酸素濃度検出部に直列に接続された少なくとも1つの固定抵抗素子)に、酸素濃度検出部の抵抗率の温度依存性と類似した傾向の温度依存性を持たせることができる。それ故、センサ出力の温度依存性を低減することができる。また、複数の固定抵抗素子は、酸素濃度検出部に近接して配置する(例えば同じ基板上に設ける)必要はないので、特許文献3に開示されているような温度補償部分を設ける場合に比べ、製造工程数の削減や酸素センサの小型化、低コスト化を図ることができる。さらに、温度補償部分を設けた場合のようなセンサ出力のばらつきも抑制されるため、高い信頼性が得られる。このように、本発明によれば、センサ出力の温度依存性を簡便に(つまり小型化、低コスト化、高信頼性を実現できる簡易な構成で)低減することができる。
【0029】
制御部は、例えば、酸素濃度検出部の温度に応じて、酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる(つまり複数段階で切り替える)。このような制御を行う制御部は、比較的簡易な構成で実現できる。
【0030】
本発明による抵抗型酸素センサでは、典型的には、動作中には常に、酸素濃度検出部に複数の固定抵抗素子のうちの少なくとも1つの固定抵抗素子が電気的に直列に接続されている。
【0031】
本発明による抵抗型酸素センサでは、具体的には、酸素濃度検出部および酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている少なくとも1つの固定抵抗素子に基準電圧を印加し、酸素濃度検出部または少なくとも1つの固定抵抗素子にかかる電圧(分配電圧)の、基準電圧に対する比をセンサ出力とすることが好ましい。このような電圧比は、温度依存性が低減されたセンサ出力として好適に用いられる。
【0032】
センサ出力の温度依存性を十分に低減するためには、酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている抵抗要素の抵抗率を3段階以上で切り替え得ることが好ましく、複数の固定抵抗素子は、少なくとも3つの固定抵抗素子を含んでいることが好ましい。
【0033】
本発明による酸素センサは、内燃機関の空燃比を制御する空燃比制御装置に好適に用いられる。複数の固定抵抗素子は、例えば、空燃比制御装置の電子制御ユニット内に設けることができる。また、空燃比制御装置の電子制御ユニットが抵抗型酸素センサの制御部としても機能する構成を採用してもよい。
【0034】
本発明による酸素センサを備えた空燃比制御装置は、各種の輸送機器に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、センサ出力の温度依存性を簡便に低減し得る抵抗型酸素センサが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0037】
図1は、本実施形態における抵抗型酸素センサ(以下では単に「酸素センサ」とも呼ぶ。)10の構成を示す回路図である。酸素センサ10は、図1に示すように、酸素濃度検出部1と、複数の固定抵抗素子2A〜2Cと、酸素濃度検出部1と複数の固定抵抗素子2A〜2Cとの電気的な接続関係を制御する制御部3とを備えている。
【0038】
酸素濃度検出部(以下では単に「検出部」とも呼ぶ。)1は、雰囲気ガス中の酸素分圧に応じてその抵抗率が変化する。本実施形態における検出部1は、酸化物半導体から形成されている。多孔質構造を有する酸化物半導体は、雰囲気の酸素分圧に応じて酸素を放出あるいは吸収する。これにより、酸化物半導体中の酸素濃度が変化し、酸化物半導体の抵抗率が変化する。酸化物半導体としては、例えばチタニア(二酸化チタン)やセリア(酸化セリウム)を用いることができる。酸化物半導体は50wt%以上のセリアを含むことが好ましい。図2に、検出部1とその近傍の構造の一例を示す。
【0039】
検出部1は、図2に示すように、基板11によって支持されている。基板11は、アルミナやマグネシアなどの絶縁体から形成されている。基板11は、互いに対向する主面11aおよび裏面11bを有しており、主面11a上に検出部(酸化物半導体層)1が設けられている。絶縁体は、好ましくはセラミックス材料から構成される。
【0040】
また、主面11a上には、検出部1に電圧を印加するための電極12が形成されている。電極12は、導電性を有する材料から形成されており、例えば、白金や白金ロジウム合金、金などの金属材料から形成されている。
【0041】
なお、ここでは図示しないが、検出部1上には、触媒層が設けられている。触媒層は、触媒金属を含んでおり、触媒金属の触媒作用によって、検出すべきガス(つまり酸素)以外の少なくとも1種の物質を分解する。具体的には、検出部1による酸素の検出に悪影響を及ぼすガスや微粒子(例えば完全には燃焼しなかった炭化水素や炭素、窒素酸化物など)を分解し、そのようなガスや微粒子が検出部1の表面に付着するのを防止する。触媒金属としては、例えば白金が用いられる。
【0042】
基板11の裏面11b側には、検出部1を昇温させるためのヒータ13が設けられている。ヒータ13は、例えば図示しているような抵抗損失を利用して加熱を行う抵抗加熱型の素子である。抵抗加熱型のヒータ13は、白金やタングステンなどの金属材料や、酸化レニウムなどの良導体酸化物から形成されている。ヒータ13によって検出部1を昇温させることにより、検出部1を速やかに活性化させることができる。
【0043】
ヒータ13の両端は、図2に示されているように電極14a〜14dに接続されている。4つの電極14a〜14dのうち、例えば電極14aおよび14dはヒータ13に電力を供給するため(加熱のための通電)に用いられ、電極14bおよび14cはヒータ13の抵抗率を測定してヒータ13の温度を検出するために用いられる。ヒータ13と検出部1とは薄い絶縁体(基板11)を介して熱的に接触しているので、ヒータ13の温度を検出することにより、検出部1の温度も検出できる。つまり、ヒータ13は、検出部1を昇温させる「加熱素子」として用いられるだけでなく、検出部1の温度を検出する「温度検出素子」としても用いられる。なお、2つの電極(例えば電極14aおよび14d)のみを設け、これらの電極を加熱および抵抗測定の両方に兼用してもよい。電極14a〜14dは、好適にはヒータ13と一体に形成される。
【0044】
固定抵抗素子2A〜2Cは、固定された抵抗率を有する抵抗素子である。固定抵抗素子2A〜2Cのそれぞれは、検出部1に対して電気的に直列に接続され得る。固定抵抗素子2A〜2Cは、特許文献3に開示されているような温度補償部分とは異なり、検出部1に近接して配置されている(例えば同じ基板11上に設けられている)必要はない。つまり、固定抵抗素子2A〜2Cは、図2に示すような酸素センサ基板(基板11と、基板11上に設けられた検出部1、電極12などを包括的にこう呼ぶ。)の外部に設けることができる。酸素センサ10が空燃比制御装置に用いられる場合、例えば、空燃比制御装置の電子制御ユニット(ECU)内に固定抵抗素子2A〜2Cを設けておくことができる。
【0045】
制御部3は、検出部1と複数の固定抵抗素子2A〜2C(以下ではそれぞれ「第1抵抗素子」、「第2抵抗素子」、「第3抵抗素子」とも呼ぶ。)との電気的な接続関係を、検出部1の温度に応じて制御する。制御部3は、具体的には、検出部1の温度(例えば上述したようにヒータ13の抵抗率を測定することにより検出できる。)に応じて、検出部1に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる(つまり複数段階で切り替える)。
【0046】
制御部3は、より具体的には、検出部1の温度Tが第1の温度T1未満(つまりT<T1)の場合には第1抵抗素子2Aのみを、第1の温度T1以上第2の温度T2未満(つまりT1≦T<T2)の場合には第1抵抗素子2Aおよび第2抵抗素子2Bを、そして、第2の温度T2以上(T2≦T)の場合には第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cのすべてを検出部1に接続する。つまり、酸素センサ10の動作中には常に、検出部1に少なくとも1つの固定抵抗素子が電気的に直列に接続されており、検出部1の温度が高くなるにつれて、接続されている固定抵抗素子の数が多くなる。
【0047】
制御部3のこのような機能は、図1の回路には、第2抵抗素子2Bとグランドとの接続をT1≦Tの場合にオンするスイッチ4A、および、第3抵抗素子2Cとグランドとの接続をT2≦Tの場合にオンするスイッチ4Bとして模式的に示されている。第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cの一端は、いずれも検出部1に接続されている。また、第2抵抗素子2Bの他端とグランドとの間、および、第3抵抗素子2Cの他端とグランドとの間にはそれぞれスイッチ4Aおよび4Bが設けられているのに対し、第1抵抗素子2Aの他端とグランドとの間にはそのようなスイッチは設けられておらず、第1抵抗素子2Aの他端は常にグランドに接続されている。
【0048】
T<T1の場合、第2抵抗素子2Bとグランドとの接続および第3抵抗素子2Cとグランドとの接続はスイッチ4Aおよび4Bによってオフされている。そのため、複数の固定抵抗素子2A〜2Cのうちの第1抵抗素子2Aのみが検出部1に電気的に直列に接続されている。
【0049】
これに対し、T1≦T<T2の場合、第2抵抗素子2Bとグランドとの接続はスイッチ4Aによってオンされ、第3抵抗素子2Cとグランドとの接続はスイッチ4Bによってオフされている。そのため、複数の固定抵抗素子2A〜2Cのうちの第1抵抗素子2Aおよび第2抵抗素子2Bが検出部1に電気的に直列に接続されている。このとき、第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bとは互いに電気的に並列に接続されている。
【0050】
また、T2≦Tの場合、第2抵抗素子2Bとグランドとの接続および第3抵抗素子2Cとグランドとの接続はスイッチ4Aおよび4Bによってオンされている。そのため、複数の固定抵抗素子2A〜2Cのすべてが検出部1に電気的に直列に接続されている。このとき、第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cは、互いに電気的に並列に接続されている。
【0051】
このように、検出部1の温度Tに応じ、検出部1に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数が3段階で変化する。なお、制御部3がこのような切り替えを実現するためのより具体的な構成については後述する。また、図示している例では、固定抵抗素子2A〜2Cは、検出部1に同時に2つ以上の固定抵抗素子が接続されているときに、固定抵抗素子同士が電気的に並列に接続されるように設けられているが、後述するように、固定抵抗素子2A〜2Cの配置はこれに限定されるものではない。
【0052】
次に、本実施形態におけるセンサ出力を説明する。本実施形態では、酸素濃度検出部1の抵抗率そのものがセンサ出力とされるわけではない。酸素センサ10では、図3に示すように、検出部1およびこれに電気的に直列に接続されている少なくとも1つの固定抵抗素子(図3では集合的に1つの固定抵抗として示されている。)に基準電圧Vinputが印加され、少なくとも1つの固定抵抗素子にかかる電圧(つまり少なくとも1つの固定抵抗素子の合計の抵抗率と検出部1の抵抗率との比に応じて分配された電圧)Voutputが測定される。そして、分配電圧Voutput(図1中には単にVと示されている。)の基準電圧Vinput(図1中にはVrと示されている。)に対する比Voutput/Vinputがセンサ出力とされる。
【0053】
本実施形態における酸素センサ10は、上述したように、それぞれが検出部1に電気的に直列に接続され得る複数の固定抵抗素子2A〜2Cと、検出部1の温度に応じて、検出部1と複数の固定抵抗素子2A〜2Cとの電気的な接続関係を制御する制御部3とを備えており、そのことによってセンサ出力の温度依存性が低減される。以下、この理由を説明する。
【0054】
第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2B、第3抵抗素子2Cの抵抗率をそれぞれRs1、Rs2、Rs3とすると、検出部1の抵抗率Rgおよび検出部1に直列に接続されている少なくとも1つの固定抵抗素子の合計の抵抗率Rsと、検出部1の温度Tとの関係は、例えば図4に示す通りとなる。
【0055】
図4に示されているように、検出部1の抵抗率Rgは、リーン領域およびリッチ領域のそれぞれについて、温度Tが高くなるほど小さくなる。また、検出部1に直列に接続されている固定抵抗素子の合計の抵抗率Rsは、温度Tが高くなるにつれて段階的に小さくなる。具体的には、抵抗率Rsは、T<T1の場合には第1抵抗素子2Aの抵抗率Rs1であり、T1≦T<T2の場合には第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bとを並列に接続したときの抵抗率Rs1//Rs2であり、T2≦Tの場合には第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bと第3抵抗素子2Cとを並列に接続したときの抵抗率Rs1//Rs2//Rs3である。
【0056】
ここで、センサ出力Voutput/Vinputは、下記式(1)で表される。
Voutput/Vinput=Rs/(Rg+Rs)・・・(1)
【0057】
そのため、T<T1、T1≦T<T2、T2≦Tの場合におけるセンサ出力は、それぞれ下記式(2)、(3)、(4)で表される。
Voutput/Vinput=Rs1/(Rg+Rs1)・・・(2)
Voutput/Vinput=Rs1//Rs2/(Rg+Rs1//Rs2)・・・(3)
Voutput/Vinput=
Rs1//Rs2//Rs3/(Rg+Rs1//Rs2//Rs3)・・・(4)
【0058】
なお、第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bとを並列に接続したときの抵抗率Rs1//Rs2、第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bと第3抵抗素子2Cとを並列に接続したときの抵抗率Rs1//Rs2//Rs3は、それぞれ下記式(5)、(6)で表される。
Rs1//Rs2=(Rs1・Rs2)/(Rs1+Rs2)・・・(5)
Rs1//Rs2//Rs3=
(Rs1・Rs2・Rs3)/(Rs1+Rs2+Rs3)・・・(6)
【0059】
上記式(2)、(3)および(4)のように表されるセンサ出力と温度との関係をシミュレーションした結果(実施例)を図5に示す。図5には、比較のために、特許文献3に開示されているような温度補償部分を備えた酸素センサにおけるセンサ出力(比較例)も示している。
【0060】
図5に示すように、リッチ領域とリーン領域の両方について、センサ出力の温度依存性が低減されており、温度補償部分を設けた場合と同程度に広い温度範囲(例えば600℃〜900℃)で、リッチ出力とリーン出力とのギャップを確保することができる。そのため、広い温度範囲でリッチ・リーンの検出が可能となる。本実施形態の酸素センサ10においてセンサ出力の温度依存性が低減されるのは、制御部3で検出部1と複数の固定抵抗素子2A〜2Cとの電気的な接続関係を制御することにより、検出部1に直列に接続された抵抗要素の抵抗率(検出部1に直列に接続された少なくとも1つの固定抵抗素子の合計の抵抗率)に、検出部1の抵抗率の温度依存性と類似した傾向の温度依存性を持たせているからである。つまり、本実施形態の酸素センサ10では、特許文献3における温度補償部分の抵抗率のような温度依存性を、複数の固定抵抗素子2A〜2Cと制御部3との組み合わせによって擬似的につくり出しているとも言える。
【0061】
上述したように、本実施形態における酸素センサ10では、センサ出力の温度依存性が低減される。また、複数の固定抵抗素子2A〜2Cは、検出部1に近接して配置する(例えば同じ基板11上に設ける)必要はないので、特許文献3に開示されているような温度補償部分を設ける場合に比べ、製造工程数の削減や、酸素センサ10の小型化(酸素センサ基板の小型化)、低コスト化を図ることができる。さらに、温度補償部分を設けた場合のようなセンサ出力のばらつきも抑制されるため、高い信頼性が得られる。このように、本発明によれば、センサ出力の温度依存性を簡便に(つまり小型化、低コスト化、高信頼性を実現できる簡易な構成で)低減することができる。
【0062】
図6に、制御部3の具体的な構成の一例を示す。図6に示す構成では、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cは、それぞれ第1入出力ポートP1および第2入出力ポートP2を介してマイクロコンピュータ(制御部3として機能する)に接続されている。マイクロコンピュータは、例えば、空燃比制御装置のECUに搭載されている。第1入出力ポートP1および第2入出力ポートP2のそれぞれには、3ステート出力バッファOBおよび入力バッファIBが接続されている。
【0063】
出力バッファOBは、出力制御信号の論理レベルが1(OC=1)のときに出力状態となり、出力制御信号の論理レベルが0(OC=0)のときにオープン状態となる。第1入出力ポートP1の出力バッファOBには、T<T1の場合に論理レベル0の出力制御信号が入力され、T1≦Tの場合に論理レベル1の出力制御信号が入力される。これに対し、第2入出力ポートP2の出力バッファOBには、T<T2の場合に論理レベル0の出力制御信号が入力され、T2≦Tの場合に論理レベル1の出力制御信号が入力される。また、いずれの出力バッファOBにも出力信号として常に論理レベル0の信号が入力される。このような構成により、T<T1の場合には1つの固定抵抗素子2A、T1≦T<T2の場合には2つの固定抵抗素子2Aおよび2B、T2≦Tの場合には3つの固定抵抗素子2A〜2Cが検出部1に直列に接続される。
【0064】
なお、図6には、マイクロコンピュータの入出力ポートを利用して切り替えを行う構成を例示したが、勿論本発明はこれに限定されるものではない。例えば図7に示すように、マイクロコンピュータの外部に形成された半導体スイッチング素子を用いて、検出部1に接続されている固定抵抗素子の数を切り替えてもよい。
【0065】
図7に示す構成では、ソースが第2抵抗素子2Bに接続され、ドレインがグランドに接続されたMOS型トランジスタ5Aと、ソースが第3抵抗素子2Cに接続され、ドレインがグランドに接続されたMOS型トランジスタ5Bとが設けられている。前者のMOS型トランジスタ5AがT1≦Tのときに導通し、後者のMOS型トランジスタ5BがT2≦Tのときに導通することによって、検出部1に接続されている固定抵抗素子の数の切り替えが行われる。図8に、検出部1の温度Tに応じてトランジスタ5Aおよび5Bの導通・非導通(オン・オフ)を切り替えるためのより具体的な構成の一例を示す。
【0066】
図8に示す構成では、トランジスタ5Aおよび5Bのゲートがそれぞれコンパレータ6Aおよび6Bに接続されている。第2抵抗素子2Bに接続されたトランジスタ5Aに対応するコンパレータ6Aは、ヒータ13の温度を示す電圧(ヒータ温度電圧)Vhと、第1の温度T1に対応した電圧VT1とを比較し、ヒータ温度電圧Vhの方が高い場合に、トランジスタ5Aのゲートにオン電圧が供給される。また、第3抵抗素子2Cに接続されたトランジスタ5Bに対応するコンパレータ6Bは、ヒータ温度電圧Vhと、第2の温度T2に対応した電圧VT2とを比較し、ヒータ温度電圧Vhの方が高い場合に、トランジスタ5Bのゲートにオン電圧が供給される。このような構成により、検出部1の温度Tに応じてトランジスタ5Aおよび5Bの導通・非導通を切り替えることができる。
【0067】
また、ここまでは、検出部1に2つ以上の固定抵抗素子が接続されているときに固定抵抗素子同士が電気的に並列に接続される例を挙げたが、固定抵抗素子の配置はこれに限定されるものではない。図9に示すように、固定抵抗素子同士が電気的に直列に接続されてもよい。
【0068】
図9に示す構成では、制御部3は、T<T1の場合には第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cのすべてを、T1≦T<T2の場合には、第1抵抗素子2Aおよび第2抵抗素子2Bを、そしてT2≦Tの場合には第1抵抗素子2Aのみを、検出部1に電気的に直列に接続する。ただし、図1および図6〜図8に示した構成とは異なり、固定抵抗素子同士は、電気的に直列に接続される。そのため、検出部1に直列に接続されている少なくとも1つの固定抵抗素子の合計の抵抗率Rsは、T<T1の場合にはRs=Rs1+Rs2+Rs3、T1≦T<T2の場合にはRs=Rs1+Rs2、T2≦Tの場合にはRs=Rs1と表される。従って、図9の構成でも、検出部1に直列に接続された抵抗要素の抵抗率Rsを、検出部1の温度Tに応じて変化させることができる。
【0069】
図9に示した構成では、具体的には、検出部1とグランドとの間に、第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cが検出部1側からこの順で直列的に配置されている。また、第2抵抗素子2Bと第3抵抗素子2Cとの間にマイクロコンピュータの第1入出力ポートP1が接続され、第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bとの間に第2入出力ポートP2が接続されている。第1入出力ポートP1および第2入出力ポートP2には、それぞれ3ステート出力バッファOBと入力バッファIBが接続されており、出力バッファOBには、図6に示した出力バッファOBと同様に出力信号や出力制御信号が入力される。このような構成により、T<T1の場合には3つの固定抵抗素子2A〜2C、T1≦T<T2の場合には2つの固定抵抗素子2Aおよび2B、T2≦Tの場合には1つの固定抵抗素子2Aが検出部1に直列に接続される。
【0070】
なお、図9には、マイクロコンピュータの入出力ポートを利用して切り替えを行う構成を例示したが、勿論本発明はこれに限定されるものではない。例えば図10に示すように、マイクロコンピュータの外部に形成された半導体スイッチング素子を用いてもよい。
【0071】
図10に示す構成では、ソースが第2抵抗素子2Bと第3抵抗素子2Cとの間に接続され、ドレインがグランドに接続されたMOS型トランジスタ5Aと、ソースが第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bとの間に接続され、ドレインがグランドに接続されたMOS型トランジスタ5Bとが設けられている。前者のMOS型トランジスタ5AがT1≦Tのときに導通し、後者のMOS型トランジスタ5BがT2≦Tのときに導通することによって、検出部1に接続されている固定抵抗素子の数の切り替えが行われる。図11に、検出部1の温度Tに応じてトランジスタの導通・非導通(オン・オフ)を切り替えるためのより具体的な構成の一例を示す。
【0072】
図11に示す構成では、トランジスタ5Aおよび5Bのゲートがコンパレータ6Aおよび6Bに接続されている。トランジスタ5Aに対応するコンパレータ6Aは、ヒータ温度電圧Vhと、第1の温度T1に対応した電圧VT1とを比較し、ヒータ温度電圧Vhの方が高い場合に、トランジスタ5Aのゲートにオン電圧が供給される。また、トランジスタ5Bに対応するコンパレータ6Bは、ヒータ温度電圧Vhと、第2の温度T2に対応した電圧VT2とを比較し、ヒータ温度電圧Vhの方が高い場合に、トランジスタ5Bのゲートにオン電圧が供給される。このような構成により、検出部1の温度Tに応じてトランジスタ5Aおよび5Bの導通・非導通を切り替えることができる。
【0073】
図12に、ヒータ13に対し加熱のための通電と抵抗測定とを行うための具体的な構成の一例を示す。図12に示すように、ヒータ13には、抵抗−電圧変換回路7と、定電流回路8とが接続されている。
【0074】
抵抗−電圧変換回路7は、ヒータ13の抵抗率を計測し、計測した抵抗率に応じた電圧をマイクロコンピュータに出力する(抵抗−電圧変換)。ヒータ13の抵抗率は、ヒータ13に所定の大きさの電流(定電流)を供給しているときに生じるヒータ13の電圧降下として検知される。ヒータ13の抵抗率は、温度に依存するため、計測した抵抗率からヒータ13の温度を検知することができる。ヒータ13は検出部1と薄い絶縁体(基板11)を介して熱的に接触しているため、ヒータ13の温度を検知してヒータ13の温度を所定範囲内に制御すれば、検出部1の温度も適切な範囲内に制御することができる。
【0075】
ヒータ13は、スイッチ9の切り替えにより、図2に示した電極17a、17dを介して電源または定電流回路8に選択的に接続される。ヒータ13を加熱するときは、ヒータ13と電源とが接続され、ヒータ13には電源電圧VBATが印加される。これに対し、ヒータ13の温度を計測するときには、スイッチ9により、ヒータ13の接続先が電源から定電流回路8に切り替えられる。つまり、定電流回路8がヒータ13に供給する電流は、ヒータ13を加熱するための電流ではなく、ヒータ13の抵抗率を計測するために用いられる電流である。
【0076】
ヒータ13が定電流回路8に接続されると、定電流回路8から電極17a、17dを介してヒータ13に所定の大きさを有する電流が流れる。このとき、電極17b、17cに接続された抵抗−電圧変換回路7内の差動増幅回路により、ヒータ13の両端における電圧が測定される。この電圧とヒータ13の抵抗率との間には、所定の関係が存在するため、測定された電圧に基づいて、ヒータ13の温度(検出部1の温度にも対応する。)を検知することができる。
【0077】
マイクロコンピュータは、定電流回路8に入力される電圧を生成するDAコンバータ(DAC)15や、抵抗−電圧変換回路7の出力(ヒータ13の抵抗率に対応する電圧)を受け取って対応するデジタル値を生成するADコンバータ(ADC)16を含んでいる。また、マイクロコンピュータは、検出部1に電気的に直列に接続されている少なくとも1つの固定抵抗素子にかかる電圧(分配電圧)を受け取って、対応するデジタル値を生成するADC17も含んでいる。分配電圧は、直列に接続された抵抗とコンデンサとから構成されるローパスフィルタ18を介してADC17に出力される。
【0078】
なお、ここまでの説明では、酸素センサ10が3つの固定抵抗素子を有する場合を例示したが、固定抵抗素子の数は2つ以上であればよく、3つに限定されるものではない。ただし、センサ出力の温度依存性を十分に小さくするためには、検出部1に電気的に直列に接続されている抵抗要素の抵抗率を3段階以上に切り替えられることが好ましく、酸素センサ10は、少なくとも3つの固定抵抗素子を含んでいることが好ましい。複数の固定抵抗素子の抵抗率は、相互に同じであってもよいし、異なってもよく、各固定抵抗素子の抵抗率の具体的な値は、検出部1の温度依存性に応じて適宜設定すればよい。
【0079】
また、制御部3が、検出部1に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。制御部3は、検出部1の温度に応じて検出部1と複数の固定抵抗素子との電気的な接続関係を制御する機能を有していればよい。例えば、相互に抵抗率の異なる複数の固定抵抗素子を設けておき、制御部3は、検出部1の温度に応じていずれか1つの固定抵抗素子を検出部1に直列に接続してもよい。なお、検出部1に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる制御部3は、図6などに示したように比較的簡便な構成で実現される点で優れている。
【0080】
また、本実施形態では、検出部1に電気的に直列に接続されている抵抗要素(少なくとも1つの固定抵抗素子)にかかる電圧Voutputの、基準電圧Vinputに対する比Voutput/Vinputをセンサ出力としたが、これに代えて、検出部1にかかる(つまり検出部1に分配された)電圧Voutput’を測定し、この分配電圧Voutput’の基準電圧Vinputに対する比Voutput’/Vinputをセンサ出力としてもよい。いずれの比をセンサ出力として用いても、センサ出力の温度依存性を好適に低減することができる。
【0081】
次に、図13(a)、(b)および図14を参照しながら、酸素センサ10を実際に内燃機関の排気管に取り付けるための構成を説明する。
【0082】
酸素センサ10は、図13(a)および図14に示すように、その基端部において第1のハウジング20に保持されている。第1のハウジング20は、例えば、セラミックから形成されたセラミックガイドである。酸素センサ10は、さらに、第1のハウジング20ごと第2のハウジング21に保持されている。第2のハウジング21は、例えば、ステンレスから形成された金属ケースである。第2のハウジング21の表面には、ねじが切られており、第2のハウジング21は、このねじに螺合するナット22によって排気管に固定される。
【0083】
実際の使用に際しては、図13(b)に示すように、酸素センサ10を覆うように保護キャップ25が設けられる。酸素センサ10による検出結果は、検出線24を介して制御装置に出力される。第1のハウジング20内は、充填材(例えばタルク粉末)23によって気密封止がなされている。
【0084】
続いて、本実施形態における酸素センサ10を備え、内燃機関を駆動源とする車両を説明する。図15に、酸素センサ10を備えた自動二輪車300を模式的に示す。
【0085】
自動二輪車300は、図15に示すように、本体フレーム301とエンジン(内燃機関)100とを備える。本体フレーム301の前端にヘッドパイプ302が設けられている。ヘッドパイプ302にはフロントフォーク303が左右方向に揺動可能に設けられている。また、フロントフォーク303の下端に前輪304が回転可能に支持されている。ヘッドパイプ302の上端にはハンドル305が取り付けられている。
【0086】
本体フレーム301の後端上部から後方に伸びるようにシートレール306が取り付けられている。本体フレーム301の上部には燃料タンク307が設けられ、シートレール306上にメインシート308aおよびタンデムシート308bが設けられている。また、本体フレーム301の後端に後方へ伸びるリアアーム309が取り付けられている。リアアーム309の後端に後輪310が回転可能に支持されている。
【0087】
本体フレーム301の中央部にはエンジン100が保持されている。エンジン100の前部にはラジエター311が取り付けられている。エンジン100の排気ポートには排気管312が接続されている。以下において詳細に説明するように、排気管にはエンジン100に近い順に酸素センサ10、三元系触媒104および消音器106が設けられている。酸素センサ10の先端部は排気管312の排気ガスが通過する通路内に露出しており、酸素センサ10は排気ガス中の酸素を検出する。酸素センサ10には、図2などに示したヒータ13が取り付けられており、エンジン100の始動時にはヒータ13により検出部1が昇温される(例えば5秒で700℃まで昇温される)ことによって、酸化物半導体から形成された検出部1の検出感度が高められる。
【0088】
エンジン100には、変速機315が連結されており、変速機315の出力軸316は駆動スプロケット317に取り付けられている。駆動スプロケット317はチェーン318を介して後輪310の後輪スプロケット319に連結されている。
【0089】
図16は、エンジン100の制御系の主要な構成を示している。エンジン100のシリンダ101には吸気弁110、排気弁106および点火プラグ108が設けられている。またエンジンを冷却する冷却水の水温を計測する水温センサ116が設けられている。吸気弁110は、空気吸入口をもつ吸気管122に接続されている。吸気管122にはエアーフローメータ112、スロットルバルブ114、スロットルセンサ114aおよび燃料噴射装置111が設けられている。エアーフローメータ112の代わりにスロットルバルブ114と吸気弁110との間に負圧センサを設けて吸気量を測定してもよい。
【0090】
エアーフローメータ112、スロットルセンサ114a、燃料噴射装置111、水温センサ116、点火プラグ108および酸素センサ10は、ECU(電子制御ユニット)118に接続されている。ECU118には自動二輪車300の速度を示す車速信号120も入力される。
【0091】
図示しないセルモータによって、ライダーがエンジン100を始動させると、ECU118はエアーフローメータ112、スロットルセンサ114aおよび水温センサ116から得られる検出信号および車速信号120に基づき、最適な燃料量を計算し、計算結果に基づいて、燃料噴射装置111へ制御信号を出力する。燃料噴射装置111から噴射される燃料は、吸気管122から供給される空気と混合され、適切なタイミングで開閉される吸気バルブ110を介してシリンダ101へ噴出される。シリンダ101において噴出された燃料は燃焼し、排気ガスとなって排気弁106を介して排気管312へ導かれる。
【0092】
酸素センサ10は排気ガス中の酸素を検出し、検出信号をECU118へ出力する。ECU118は、酸素センサ10からの信号に基づき、空燃比が理想空燃比からどの程度ずれているかを判断する。そして、エアーフローメータ112およびスロットルセンサ114aから得られる信号によって定まる空気量に対して、理想空燃比となるように燃料噴射装置111から噴出する燃料量を制御する。このように、酸素センサ10と、酸素センサ10に接続されたECU118とを含む空燃比制御装置によって、内燃機関の空燃比が適切に制御される。
【0093】
なお、ECU118は、酸素センサ10の制御部3としても機能してもよい。つまり、図6などに示したマイクロコンピュータは、ECU118に搭載されているものであってよいし、図7や図8などに示したトランジスタ5Aおよび5Bやコンパレータ6Aおよび6Bなどは、ECU118内に設けられていてもよい。また、既に述べたように、複数の固定抵抗素子2A〜2CもECU118内に設けることができる。
【0094】
本実施形態における酸素センサ10を備えた自動二輪車300では、センサ出力の温度依存性が低減されており、広い温度範囲でリッチ・リーンの検出を高精度で行うことができる。そのため、適切な空燃比で燃料および空気を混合し、最適な条件で燃料を燃焼させることができ、排気ガス中のNOxをはじめ規制物質の濃度を低減することができる。また、燃費の向上をはかることも可能である。
【0095】
なお、ここでは自動二輪車を例示したが、本発明は四輪自動車などの他の輸送機器にも好適に用いられる。また、内燃機関はガソリンエンジンに限られず、ディーゼルエンジンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によると、センサ出力の温度依存性を簡便に低減し得る抵抗型酸素センサが提供される。本発明による酸素センサは、乗用車、バス、トラック、オートバイ、トラクター、飛行機、モーターボート、土木車両などの種々の輸送機器用の内燃機関に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の好適な実施形態における抵抗型酸素センサ10の構成を示す回路図である。
【図2】酸素センサ10が備える酸素濃度検出部およびその近傍の構造を示す分解斜視図である。
【図3】酸素センサ10のセンサ出力を説明するための図である。
【図4】酸素濃度検出部の抵抗率Rgおよび酸素濃度検出部に直列に接続されている固定抵抗素子の合計の抵抗率Rsと、酸素濃度検出部の温度Tとの関係を示すグラフである。
【図5】酸素センサ10のセンサ出力と温度との関係を示すグラフである。
【図6】酸素センサ10が備える制御部の具体的な構成の例を示す回路図である。
【図7】酸素センサ10が備える制御部の具体的な構成の例を示す回路図である。
【図8】酸素センサ10が備える制御部の具体的な構成の例を示す回路図である。
【図9】酸素センサ10の他の構成例を示す回路図である。
【図10】酸素センサ10の他の構成例を示す回路図である。
【図11】酸素センサ10の他の構成例を示す回路図である。
【図12】酸素センサ10が備えるヒータに対し加熱のための通電と抵抗測定とを行うための具体的な構成の例を示す回路図である。
【図13】(a)および(b)は、酸素センサ10を排気管に固定するための構成を模式的に示す斜視図であり、(a)は保護キャップを外した状態を示し、(b)は保護キャップを付けた状態を示している。
【図14】酸素センサ10を排気管に固定するための構成を模式的に示す断面図である。
【図15】酸素センサ10を備えた自動二輪車の例を模式的に示す図である。
【図16】図15に示す自動二輪車におけるエンジンの制御系を模式的に示す図である。
【図17】酸化物半導体層の抵抗率と温度との関係を示すグラフである。
【図18】(a)および(b)は、特許文献3に開示されている酸素センサ810を模式的に示す上面図および断面図である。
【図19】酸素センサ810の等価回路図である。
【符号の説明】
【0098】
1 酸素濃度検出部
2A 固定抵抗素子(第1抵抗素子)
2B 固定抵抗素子(第2抵抗素子)
2C 固定抵抗素子(第3抵抗素子)
3 制御部
4A、4B スイッチ
5A、5B トランジスタ
6A、6B コンパレータ
7 抵抗−電圧変換回路
8 定電流回路
10 抵抗型酸素センサ
11 基板
12 電極
13 ヒータ
14a、14b、14c、14d 電極
15 DAコンバータ
16、17 ADコンバータ
100 エンジン
118 ECU(制御部)
300 自動二輪車
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素センサに関し、特に、雰囲気ガス中の酸素分圧に応じて抵抗率が変化する酸素濃度検出部を備えた抵抗型酸素センサに関する。また、本発明は、抵抗型酸素センサを備えた空燃比制御装置や輸送機器にも関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題やエネルギー問題の観点から、内燃機関の燃費を向上させたり、内燃機関の排気ガス中に含まれる規制物質(NOxなど)の排出量を低減したりすることが求められている。このためには、常に最適な条件で燃料の燃焼が行えるよう、燃焼状態に応じて燃料と空気との比率を適切に制御する必要がある。空気と燃料との比率は空燃比(A/F)と呼ばれ、三元触媒を用いる場合、最適な空燃比は理論空燃比である。理論空燃比とは、空気と燃料とが過不足なく燃焼する空燃比である。
【0003】
理論空燃比で燃料が燃焼している場合、排気ガス中には一定の酸素が含まれる。空燃比が理論空燃比よりも小さい場合、つまり、燃料の濃度が相対的に高い場合には、排気ガス中の酸素量が、理論空燃比の場合の酸素量に比べて減少する。一方、空燃比が理論空燃比よりも大きい(燃料の濃度が相対的に低い)場合には、排気ガス中の酸素量は増加する。このため、排気ガス中の酸素量あるいは酸素濃度を計測することによって、空燃比が理論空燃比からどの程度ずれているかを推定し、空燃比を調節して最適な条件で燃料が燃焼するように制御することが可能となる。
【0004】
排気ガス中の酸素濃度を計測するための酸素センサとしては、特許文献1に開示されているような固体電解質を用いた酸素センサや、特許文献2に開示されているような抵抗型の酸素センサが知られている。
【0005】
固体電解質を用いた酸素センサは、基準極および測定極間での酸素分圧の違いを起電力として検出することによって酸素濃度を測定する。このため、この方式の酸素センサでは、測定極および基準極を排気ガスおよび空気にそれぞれ曝す必要がある。従って、酸素センサ自体の構造が複雑になるとともに、排気管に酸素センサを取り付けるための構造も複雑化してしまう。また、構造が複雑になるために、酸素センサを小型化し難いという問題も生じる。
【0006】
これに対して、抵抗型酸素センサは、排気ガスに接するように設けられた酸化物半導体層の抵抗率の変化を検出する。排気ガス中の酸素分圧が変化すると、酸化物半導体層中の酸素空孔濃度が変動するので、酸化物半導体層の抵抗率が変化する。従って、この抵抗率の変化を検出することにより、酸素濃度を測定することができる。抵抗型酸素センサは、基準極を必要としないため、酸素センサ自体の構造を簡単にすることができる。また、排気管に酸素センサを取り付けるための構造も簡単にすることができる。抵抗型酸素センサに用いられる酸化物半導体としては、耐久性や安定性の点から酸化セリウムが有望視されている。
【0007】
しかしながら、酸化物半導体層の抵抗率は、酸素分圧だけでなく、温度に対しても強い依存性を示す。図17に、酸化物半導体層の抵抗率と温度との関係の一例を示す。図17に示すように、温度が高いほど抵抗率は低くなる。例えば600℃と1000℃とで比較した場合、リッチ領域では約10倍、リーン領域では100倍以上抵抗率が異なっており、抵抗率が非常に大きな温度依存性を有していることがわかる。このように、酸化物半導体層の抵抗率が温度依存性を有しているので、従来の抵抗型酸素センサは、センサ出力の温度依存性が極めて大きいという問題を有していた。
【0008】
この問題を解決するために、特許文献3には、センサ出力の温度依存性を低減させるための温度補償機構を有する抵抗型酸素センサが提案されている。図18および図19に、特許文献3に開示されている酸素センサ810を示す。図18(a)および(b)は、酸素センサ810を模式的に示す上面図および断面図であり、図19は、酸素センサ810の等価回路図である。
【0009】
酸素センサ810は、基板801と、基板801上に設けられたガス検出部分802および温度補償部分803と、ガス検出部分802および温度補償部分803に接触するように設けられた電極804とを有している。
【0010】
酸化物半導体から形成されたガス検出部分802の抵抗率は、温度と酸素分圧の両方に依存性を有している。これに対し、酸素イオン伝導体から形成された温度補償部分803の抵抗率は、温度には依存性を有しているが、酸素分圧には依存性をほとんど有していない。ガス検出部分802の抵抗率の温度依存性と、温度補償部分803の抵抗率の温度依存性とができるだけ同じになるように、ガス検出部分802および温度補償部分803の材料が選択される。
【0011】
ガス検出部分802と温度補償部分803とは、図19に示すように、電気的に直列に接続されている。ガス検出部分802および温度補償部分803に所定の電圧Vが印加され、ガス検出部分802にかかる電圧Voutの入力電圧Vに対する比Vout/Vがセンサ出力となる。
【0012】
ガス検出部分802の抵抗率rgは、次式で表される。
rg=rg0・P1/n・exp(Eg/kT)
ここで、rg0は温度にも酸素分圧にも依存しないガス検出部分802固有の定数、Pは酸素分圧、nは4〜6の値、Egはガス検出部分802の活性化エネルギー、kはボルツマン定数、Tは温度である。
【0013】
一方、温度補償部分803の抵抗率rnは、次式で表される。
rn=rn0・exp(En/kT)
ここで、rn0は温度にも酸素分圧にも依存しない温度補償部分803固有の定数、Enは温度補償部分803の活性化エネルギーである。
【0014】
ガス検出部分802および温度補償部分803に所定の電圧Vが印加されたとき、ガス検出部分802にかかる分圧電圧Voutは、次式で表される。
Vout=rg/(rg+rn)・V
=rg0・P1/n・exp(Eg/kT)/{rg0・P1/n・exp(Eg/kT)+rn0・exp(En/kT)}・V
【0015】
ガス検出部分802の活性化エネルギーEgと温度補償部分803の活性化エネルギーEnが等しいならば、上式において温度に依存する項が消え、センサ出力Vout/Vは、次式で表される。
Vout/V=(rg0・P1/n)/(rg0・P1/n+rn0)
【0016】
このように、センサ出力は、温度に依存しない値となる。なお、ガス検出部分802の活性化エネルギーEgと温度補償部分803の活性化エネルギーEnとが異なっている場合にはセンサ出力は温度依存性を示すが、EgとEnとができるだけ一致するようにガス検出部分802と温度補償部分803の材料を選択することにより、センサ出力の温度依存性を十分に低減することができる。
【特許文献1】特開平8−114571号公報
【特許文献2】特開平5−18921号公報
【特許文献3】特開2004−85549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献3に開示されているような温度補償部分を設ける場合、温度補償部分を形成するための工程を追加する必要があり、製造時の工程数が増加してしまう。また、ガス検出部分が設けられた基板上に温度補償部分を配置する必要があるために、酸素センサの大型化を招いてしまう。酸素センサが大型化すると、電極や触媒層、ヒータなどを形成するための材料(白金などの貴金属が用いられることが多い。)の量も増加するので、製造コストも増加してしまう。さらに、ガス検出部分と温度補償部分のそれぞれの抵抗率のばらつき(製造時の寸法精度のばらつきに起因して設計値からばらつく)が、センサ出力のばらつきとして現れるため、信頼性の確保が難しい。
【0018】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサ出力の温度依存性を簡便に低減し得る抵抗型酸素センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による抵抗型酸素センサは、雰囲気ガス中の酸素分圧に応じて抵抗率が変化する酸素濃度検出部を備えた抵抗型酸素センサであって、それぞれが前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続され得る複数の固定抵抗素子と、前記酸素濃度検出部の温度に応じて、前記酸素濃度検出部と前記複数の固定抵抗素子との電気的な接続関係を制御する制御部とを備える。
【0020】
ある好適な実施形態において、前記制御部は、前記酸素濃度検出部の温度に応じて、前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる。
【0021】
ある好適な実施形態において、動作中には常に、前記酸素濃度検出部に前記複数の固定抵抗素子のうちの少なくとも1つの固定抵抗素子が電気的に直列に接続されている。
【0022】
ある好適な実施形態において、前記酸素濃度検出部および前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている前記少なくとも1つの固定抵抗素子に基準電圧が印加され、前記酸素濃度検出部または前記少なくとも1つの固定抵抗素子にかかる電圧の、前記基準電圧に対する比がセンサ出力とされる。
【0023】
ある好適な実施形態において、前記複数の固定抵抗素子は、少なくとも3つの固定抵抗素子を含んでいる。
【0024】
本発明による空燃比制御装置は、上記構成を有する抵抗型酸素センサを備えている。
【0025】
ある好適な実施形態において、本発明による空燃比制御装置は、前記抵抗型酸素センサに接続された電子制御ユニットをさらに備えており、前記複数の固定抵抗素子は、前記電子制御ユニット内に設けられている。
【0026】
ある好適な実施形態において、前記電子制御ユニットが前記抵抗型酸素センサの制御部としても機能する。
【0027】
本発明による輸送機器は、上記構成を有する空燃比制御装置を備えている。
【0028】
本発明による抵抗型酸素センサは、それぞれが酸素濃度検出部に電気的に直列に接続され得る複数の固定抵抗素子と、酸素濃度検出部の温度に応じて、酸素濃度検出部と複数の固定抵抗素子との電気的な接続関係を制御する制御部とを備えている。従って、酸素濃度検出部に直列に接続されている抵抗要素の抵抗率を、酸素濃度検出部の温度に応じて変化させることができる。そのため、上記の抵抗要素(すなわち酸素濃度検出部に直列に接続された少なくとも1つの固定抵抗素子)に、酸素濃度検出部の抵抗率の温度依存性と類似した傾向の温度依存性を持たせることができる。それ故、センサ出力の温度依存性を低減することができる。また、複数の固定抵抗素子は、酸素濃度検出部に近接して配置する(例えば同じ基板上に設ける)必要はないので、特許文献3に開示されているような温度補償部分を設ける場合に比べ、製造工程数の削減や酸素センサの小型化、低コスト化を図ることができる。さらに、温度補償部分を設けた場合のようなセンサ出力のばらつきも抑制されるため、高い信頼性が得られる。このように、本発明によれば、センサ出力の温度依存性を簡便に(つまり小型化、低コスト化、高信頼性を実現できる簡易な構成で)低減することができる。
【0029】
制御部は、例えば、酸素濃度検出部の温度に応じて、酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる(つまり複数段階で切り替える)。このような制御を行う制御部は、比較的簡易な構成で実現できる。
【0030】
本発明による抵抗型酸素センサでは、典型的には、動作中には常に、酸素濃度検出部に複数の固定抵抗素子のうちの少なくとも1つの固定抵抗素子が電気的に直列に接続されている。
【0031】
本発明による抵抗型酸素センサでは、具体的には、酸素濃度検出部および酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている少なくとも1つの固定抵抗素子に基準電圧を印加し、酸素濃度検出部または少なくとも1つの固定抵抗素子にかかる電圧(分配電圧)の、基準電圧に対する比をセンサ出力とすることが好ましい。このような電圧比は、温度依存性が低減されたセンサ出力として好適に用いられる。
【0032】
センサ出力の温度依存性を十分に低減するためには、酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている抵抗要素の抵抗率を3段階以上で切り替え得ることが好ましく、複数の固定抵抗素子は、少なくとも3つの固定抵抗素子を含んでいることが好ましい。
【0033】
本発明による酸素センサは、内燃機関の空燃比を制御する空燃比制御装置に好適に用いられる。複数の固定抵抗素子は、例えば、空燃比制御装置の電子制御ユニット内に設けることができる。また、空燃比制御装置の電子制御ユニットが抵抗型酸素センサの制御部としても機能する構成を採用してもよい。
【0034】
本発明による酸素センサを備えた空燃比制御装置は、各種の輸送機器に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、センサ出力の温度依存性を簡便に低減し得る抵抗型酸素センサが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0037】
図1は、本実施形態における抵抗型酸素センサ(以下では単に「酸素センサ」とも呼ぶ。)10の構成を示す回路図である。酸素センサ10は、図1に示すように、酸素濃度検出部1と、複数の固定抵抗素子2A〜2Cと、酸素濃度検出部1と複数の固定抵抗素子2A〜2Cとの電気的な接続関係を制御する制御部3とを備えている。
【0038】
酸素濃度検出部(以下では単に「検出部」とも呼ぶ。)1は、雰囲気ガス中の酸素分圧に応じてその抵抗率が変化する。本実施形態における検出部1は、酸化物半導体から形成されている。多孔質構造を有する酸化物半導体は、雰囲気の酸素分圧に応じて酸素を放出あるいは吸収する。これにより、酸化物半導体中の酸素濃度が変化し、酸化物半導体の抵抗率が変化する。酸化物半導体としては、例えばチタニア(二酸化チタン)やセリア(酸化セリウム)を用いることができる。酸化物半導体は50wt%以上のセリアを含むことが好ましい。図2に、検出部1とその近傍の構造の一例を示す。
【0039】
検出部1は、図2に示すように、基板11によって支持されている。基板11は、アルミナやマグネシアなどの絶縁体から形成されている。基板11は、互いに対向する主面11aおよび裏面11bを有しており、主面11a上に検出部(酸化物半導体層)1が設けられている。絶縁体は、好ましくはセラミックス材料から構成される。
【0040】
また、主面11a上には、検出部1に電圧を印加するための電極12が形成されている。電極12は、導電性を有する材料から形成されており、例えば、白金や白金ロジウム合金、金などの金属材料から形成されている。
【0041】
なお、ここでは図示しないが、検出部1上には、触媒層が設けられている。触媒層は、触媒金属を含んでおり、触媒金属の触媒作用によって、検出すべきガス(つまり酸素)以外の少なくとも1種の物質を分解する。具体的には、検出部1による酸素の検出に悪影響を及ぼすガスや微粒子(例えば完全には燃焼しなかった炭化水素や炭素、窒素酸化物など)を分解し、そのようなガスや微粒子が検出部1の表面に付着するのを防止する。触媒金属としては、例えば白金が用いられる。
【0042】
基板11の裏面11b側には、検出部1を昇温させるためのヒータ13が設けられている。ヒータ13は、例えば図示しているような抵抗損失を利用して加熱を行う抵抗加熱型の素子である。抵抗加熱型のヒータ13は、白金やタングステンなどの金属材料や、酸化レニウムなどの良導体酸化物から形成されている。ヒータ13によって検出部1を昇温させることにより、検出部1を速やかに活性化させることができる。
【0043】
ヒータ13の両端は、図2に示されているように電極14a〜14dに接続されている。4つの電極14a〜14dのうち、例えば電極14aおよび14dはヒータ13に電力を供給するため(加熱のための通電)に用いられ、電極14bおよび14cはヒータ13の抵抗率を測定してヒータ13の温度を検出するために用いられる。ヒータ13と検出部1とは薄い絶縁体(基板11)を介して熱的に接触しているので、ヒータ13の温度を検出することにより、検出部1の温度も検出できる。つまり、ヒータ13は、検出部1を昇温させる「加熱素子」として用いられるだけでなく、検出部1の温度を検出する「温度検出素子」としても用いられる。なお、2つの電極(例えば電極14aおよび14d)のみを設け、これらの電極を加熱および抵抗測定の両方に兼用してもよい。電極14a〜14dは、好適にはヒータ13と一体に形成される。
【0044】
固定抵抗素子2A〜2Cは、固定された抵抗率を有する抵抗素子である。固定抵抗素子2A〜2Cのそれぞれは、検出部1に対して電気的に直列に接続され得る。固定抵抗素子2A〜2Cは、特許文献3に開示されているような温度補償部分とは異なり、検出部1に近接して配置されている(例えば同じ基板11上に設けられている)必要はない。つまり、固定抵抗素子2A〜2Cは、図2に示すような酸素センサ基板(基板11と、基板11上に設けられた検出部1、電極12などを包括的にこう呼ぶ。)の外部に設けることができる。酸素センサ10が空燃比制御装置に用いられる場合、例えば、空燃比制御装置の電子制御ユニット(ECU)内に固定抵抗素子2A〜2Cを設けておくことができる。
【0045】
制御部3は、検出部1と複数の固定抵抗素子2A〜2C(以下ではそれぞれ「第1抵抗素子」、「第2抵抗素子」、「第3抵抗素子」とも呼ぶ。)との電気的な接続関係を、検出部1の温度に応じて制御する。制御部3は、具体的には、検出部1の温度(例えば上述したようにヒータ13の抵抗率を測定することにより検出できる。)に応じて、検出部1に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる(つまり複数段階で切り替える)。
【0046】
制御部3は、より具体的には、検出部1の温度Tが第1の温度T1未満(つまりT<T1)の場合には第1抵抗素子2Aのみを、第1の温度T1以上第2の温度T2未満(つまりT1≦T<T2)の場合には第1抵抗素子2Aおよび第2抵抗素子2Bを、そして、第2の温度T2以上(T2≦T)の場合には第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cのすべてを検出部1に接続する。つまり、酸素センサ10の動作中には常に、検出部1に少なくとも1つの固定抵抗素子が電気的に直列に接続されており、検出部1の温度が高くなるにつれて、接続されている固定抵抗素子の数が多くなる。
【0047】
制御部3のこのような機能は、図1の回路には、第2抵抗素子2Bとグランドとの接続をT1≦Tの場合にオンするスイッチ4A、および、第3抵抗素子2Cとグランドとの接続をT2≦Tの場合にオンするスイッチ4Bとして模式的に示されている。第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cの一端は、いずれも検出部1に接続されている。また、第2抵抗素子2Bの他端とグランドとの間、および、第3抵抗素子2Cの他端とグランドとの間にはそれぞれスイッチ4Aおよび4Bが設けられているのに対し、第1抵抗素子2Aの他端とグランドとの間にはそのようなスイッチは設けられておらず、第1抵抗素子2Aの他端は常にグランドに接続されている。
【0048】
T<T1の場合、第2抵抗素子2Bとグランドとの接続および第3抵抗素子2Cとグランドとの接続はスイッチ4Aおよび4Bによってオフされている。そのため、複数の固定抵抗素子2A〜2Cのうちの第1抵抗素子2Aのみが検出部1に電気的に直列に接続されている。
【0049】
これに対し、T1≦T<T2の場合、第2抵抗素子2Bとグランドとの接続はスイッチ4Aによってオンされ、第3抵抗素子2Cとグランドとの接続はスイッチ4Bによってオフされている。そのため、複数の固定抵抗素子2A〜2Cのうちの第1抵抗素子2Aおよび第2抵抗素子2Bが検出部1に電気的に直列に接続されている。このとき、第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bとは互いに電気的に並列に接続されている。
【0050】
また、T2≦Tの場合、第2抵抗素子2Bとグランドとの接続および第3抵抗素子2Cとグランドとの接続はスイッチ4Aおよび4Bによってオンされている。そのため、複数の固定抵抗素子2A〜2Cのすべてが検出部1に電気的に直列に接続されている。このとき、第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cは、互いに電気的に並列に接続されている。
【0051】
このように、検出部1の温度Tに応じ、検出部1に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数が3段階で変化する。なお、制御部3がこのような切り替えを実現するためのより具体的な構成については後述する。また、図示している例では、固定抵抗素子2A〜2Cは、検出部1に同時に2つ以上の固定抵抗素子が接続されているときに、固定抵抗素子同士が電気的に並列に接続されるように設けられているが、後述するように、固定抵抗素子2A〜2Cの配置はこれに限定されるものではない。
【0052】
次に、本実施形態におけるセンサ出力を説明する。本実施形態では、酸素濃度検出部1の抵抗率そのものがセンサ出力とされるわけではない。酸素センサ10では、図3に示すように、検出部1およびこれに電気的に直列に接続されている少なくとも1つの固定抵抗素子(図3では集合的に1つの固定抵抗として示されている。)に基準電圧Vinputが印加され、少なくとも1つの固定抵抗素子にかかる電圧(つまり少なくとも1つの固定抵抗素子の合計の抵抗率と検出部1の抵抗率との比に応じて分配された電圧)Voutputが測定される。そして、分配電圧Voutput(図1中には単にVと示されている。)の基準電圧Vinput(図1中にはVrと示されている。)に対する比Voutput/Vinputがセンサ出力とされる。
【0053】
本実施形態における酸素センサ10は、上述したように、それぞれが検出部1に電気的に直列に接続され得る複数の固定抵抗素子2A〜2Cと、検出部1の温度に応じて、検出部1と複数の固定抵抗素子2A〜2Cとの電気的な接続関係を制御する制御部3とを備えており、そのことによってセンサ出力の温度依存性が低減される。以下、この理由を説明する。
【0054】
第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2B、第3抵抗素子2Cの抵抗率をそれぞれRs1、Rs2、Rs3とすると、検出部1の抵抗率Rgおよび検出部1に直列に接続されている少なくとも1つの固定抵抗素子の合計の抵抗率Rsと、検出部1の温度Tとの関係は、例えば図4に示す通りとなる。
【0055】
図4に示されているように、検出部1の抵抗率Rgは、リーン領域およびリッチ領域のそれぞれについて、温度Tが高くなるほど小さくなる。また、検出部1に直列に接続されている固定抵抗素子の合計の抵抗率Rsは、温度Tが高くなるにつれて段階的に小さくなる。具体的には、抵抗率Rsは、T<T1の場合には第1抵抗素子2Aの抵抗率Rs1であり、T1≦T<T2の場合には第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bとを並列に接続したときの抵抗率Rs1//Rs2であり、T2≦Tの場合には第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bと第3抵抗素子2Cとを並列に接続したときの抵抗率Rs1//Rs2//Rs3である。
【0056】
ここで、センサ出力Voutput/Vinputは、下記式(1)で表される。
Voutput/Vinput=Rs/(Rg+Rs)・・・(1)
【0057】
そのため、T<T1、T1≦T<T2、T2≦Tの場合におけるセンサ出力は、それぞれ下記式(2)、(3)、(4)で表される。
Voutput/Vinput=Rs1/(Rg+Rs1)・・・(2)
Voutput/Vinput=Rs1//Rs2/(Rg+Rs1//Rs2)・・・(3)
Voutput/Vinput=
Rs1//Rs2//Rs3/(Rg+Rs1//Rs2//Rs3)・・・(4)
【0058】
なお、第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bとを並列に接続したときの抵抗率Rs1//Rs2、第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bと第3抵抗素子2Cとを並列に接続したときの抵抗率Rs1//Rs2//Rs3は、それぞれ下記式(5)、(6)で表される。
Rs1//Rs2=(Rs1・Rs2)/(Rs1+Rs2)・・・(5)
Rs1//Rs2//Rs3=
(Rs1・Rs2・Rs3)/(Rs1+Rs2+Rs3)・・・(6)
【0059】
上記式(2)、(3)および(4)のように表されるセンサ出力と温度との関係をシミュレーションした結果(実施例)を図5に示す。図5には、比較のために、特許文献3に開示されているような温度補償部分を備えた酸素センサにおけるセンサ出力(比較例)も示している。
【0060】
図5に示すように、リッチ領域とリーン領域の両方について、センサ出力の温度依存性が低減されており、温度補償部分を設けた場合と同程度に広い温度範囲(例えば600℃〜900℃)で、リッチ出力とリーン出力とのギャップを確保することができる。そのため、広い温度範囲でリッチ・リーンの検出が可能となる。本実施形態の酸素センサ10においてセンサ出力の温度依存性が低減されるのは、制御部3で検出部1と複数の固定抵抗素子2A〜2Cとの電気的な接続関係を制御することにより、検出部1に直列に接続された抵抗要素の抵抗率(検出部1に直列に接続された少なくとも1つの固定抵抗素子の合計の抵抗率)に、検出部1の抵抗率の温度依存性と類似した傾向の温度依存性を持たせているからである。つまり、本実施形態の酸素センサ10では、特許文献3における温度補償部分の抵抗率のような温度依存性を、複数の固定抵抗素子2A〜2Cと制御部3との組み合わせによって擬似的につくり出しているとも言える。
【0061】
上述したように、本実施形態における酸素センサ10では、センサ出力の温度依存性が低減される。また、複数の固定抵抗素子2A〜2Cは、検出部1に近接して配置する(例えば同じ基板11上に設ける)必要はないので、特許文献3に開示されているような温度補償部分を設ける場合に比べ、製造工程数の削減や、酸素センサ10の小型化(酸素センサ基板の小型化)、低コスト化を図ることができる。さらに、温度補償部分を設けた場合のようなセンサ出力のばらつきも抑制されるため、高い信頼性が得られる。このように、本発明によれば、センサ出力の温度依存性を簡便に(つまり小型化、低コスト化、高信頼性を実現できる簡易な構成で)低減することができる。
【0062】
図6に、制御部3の具体的な構成の一例を示す。図6に示す構成では、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cは、それぞれ第1入出力ポートP1および第2入出力ポートP2を介してマイクロコンピュータ(制御部3として機能する)に接続されている。マイクロコンピュータは、例えば、空燃比制御装置のECUに搭載されている。第1入出力ポートP1および第2入出力ポートP2のそれぞれには、3ステート出力バッファOBおよび入力バッファIBが接続されている。
【0063】
出力バッファOBは、出力制御信号の論理レベルが1(OC=1)のときに出力状態となり、出力制御信号の論理レベルが0(OC=0)のときにオープン状態となる。第1入出力ポートP1の出力バッファOBには、T<T1の場合に論理レベル0の出力制御信号が入力され、T1≦Tの場合に論理レベル1の出力制御信号が入力される。これに対し、第2入出力ポートP2の出力バッファOBには、T<T2の場合に論理レベル0の出力制御信号が入力され、T2≦Tの場合に論理レベル1の出力制御信号が入力される。また、いずれの出力バッファOBにも出力信号として常に論理レベル0の信号が入力される。このような構成により、T<T1の場合には1つの固定抵抗素子2A、T1≦T<T2の場合には2つの固定抵抗素子2Aおよび2B、T2≦Tの場合には3つの固定抵抗素子2A〜2Cが検出部1に直列に接続される。
【0064】
なお、図6には、マイクロコンピュータの入出力ポートを利用して切り替えを行う構成を例示したが、勿論本発明はこれに限定されるものではない。例えば図7に示すように、マイクロコンピュータの外部に形成された半導体スイッチング素子を用いて、検出部1に接続されている固定抵抗素子の数を切り替えてもよい。
【0065】
図7に示す構成では、ソースが第2抵抗素子2Bに接続され、ドレインがグランドに接続されたMOS型トランジスタ5Aと、ソースが第3抵抗素子2Cに接続され、ドレインがグランドに接続されたMOS型トランジスタ5Bとが設けられている。前者のMOS型トランジスタ5AがT1≦Tのときに導通し、後者のMOS型トランジスタ5BがT2≦Tのときに導通することによって、検出部1に接続されている固定抵抗素子の数の切り替えが行われる。図8に、検出部1の温度Tに応じてトランジスタ5Aおよび5Bの導通・非導通(オン・オフ)を切り替えるためのより具体的な構成の一例を示す。
【0066】
図8に示す構成では、トランジスタ5Aおよび5Bのゲートがそれぞれコンパレータ6Aおよび6Bに接続されている。第2抵抗素子2Bに接続されたトランジスタ5Aに対応するコンパレータ6Aは、ヒータ13の温度を示す電圧(ヒータ温度電圧)Vhと、第1の温度T1に対応した電圧VT1とを比較し、ヒータ温度電圧Vhの方が高い場合に、トランジスタ5Aのゲートにオン電圧が供給される。また、第3抵抗素子2Cに接続されたトランジスタ5Bに対応するコンパレータ6Bは、ヒータ温度電圧Vhと、第2の温度T2に対応した電圧VT2とを比較し、ヒータ温度電圧Vhの方が高い場合に、トランジスタ5Bのゲートにオン電圧が供給される。このような構成により、検出部1の温度Tに応じてトランジスタ5Aおよび5Bの導通・非導通を切り替えることができる。
【0067】
また、ここまでは、検出部1に2つ以上の固定抵抗素子が接続されているときに固定抵抗素子同士が電気的に並列に接続される例を挙げたが、固定抵抗素子の配置はこれに限定されるものではない。図9に示すように、固定抵抗素子同士が電気的に直列に接続されてもよい。
【0068】
図9に示す構成では、制御部3は、T<T1の場合には第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cのすべてを、T1≦T<T2の場合には、第1抵抗素子2Aおよび第2抵抗素子2Bを、そしてT2≦Tの場合には第1抵抗素子2Aのみを、検出部1に電気的に直列に接続する。ただし、図1および図6〜図8に示した構成とは異なり、固定抵抗素子同士は、電気的に直列に接続される。そのため、検出部1に直列に接続されている少なくとも1つの固定抵抗素子の合計の抵抗率Rsは、T<T1の場合にはRs=Rs1+Rs2+Rs3、T1≦T<T2の場合にはRs=Rs1+Rs2、T2≦Tの場合にはRs=Rs1と表される。従って、図9の構成でも、検出部1に直列に接続された抵抗要素の抵抗率Rsを、検出部1の温度Tに応じて変化させることができる。
【0069】
図9に示した構成では、具体的には、検出部1とグランドとの間に、第1抵抗素子2A、第2抵抗素子2Bおよび第3抵抗素子2Cが検出部1側からこの順で直列的に配置されている。また、第2抵抗素子2Bと第3抵抗素子2Cとの間にマイクロコンピュータの第1入出力ポートP1が接続され、第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bとの間に第2入出力ポートP2が接続されている。第1入出力ポートP1および第2入出力ポートP2には、それぞれ3ステート出力バッファOBと入力バッファIBが接続されており、出力バッファOBには、図6に示した出力バッファOBと同様に出力信号や出力制御信号が入力される。このような構成により、T<T1の場合には3つの固定抵抗素子2A〜2C、T1≦T<T2の場合には2つの固定抵抗素子2Aおよび2B、T2≦Tの場合には1つの固定抵抗素子2Aが検出部1に直列に接続される。
【0070】
なお、図9には、マイクロコンピュータの入出力ポートを利用して切り替えを行う構成を例示したが、勿論本発明はこれに限定されるものではない。例えば図10に示すように、マイクロコンピュータの外部に形成された半導体スイッチング素子を用いてもよい。
【0071】
図10に示す構成では、ソースが第2抵抗素子2Bと第3抵抗素子2Cとの間に接続され、ドレインがグランドに接続されたMOS型トランジスタ5Aと、ソースが第1抵抗素子2Aと第2抵抗素子2Bとの間に接続され、ドレインがグランドに接続されたMOS型トランジスタ5Bとが設けられている。前者のMOS型トランジスタ5AがT1≦Tのときに導通し、後者のMOS型トランジスタ5BがT2≦Tのときに導通することによって、検出部1に接続されている固定抵抗素子の数の切り替えが行われる。図11に、検出部1の温度Tに応じてトランジスタの導通・非導通(オン・オフ)を切り替えるためのより具体的な構成の一例を示す。
【0072】
図11に示す構成では、トランジスタ5Aおよび5Bのゲートがコンパレータ6Aおよび6Bに接続されている。トランジスタ5Aに対応するコンパレータ6Aは、ヒータ温度電圧Vhと、第1の温度T1に対応した電圧VT1とを比較し、ヒータ温度電圧Vhの方が高い場合に、トランジスタ5Aのゲートにオン電圧が供給される。また、トランジスタ5Bに対応するコンパレータ6Bは、ヒータ温度電圧Vhと、第2の温度T2に対応した電圧VT2とを比較し、ヒータ温度電圧Vhの方が高い場合に、トランジスタ5Bのゲートにオン電圧が供給される。このような構成により、検出部1の温度Tに応じてトランジスタ5Aおよび5Bの導通・非導通を切り替えることができる。
【0073】
図12に、ヒータ13に対し加熱のための通電と抵抗測定とを行うための具体的な構成の一例を示す。図12に示すように、ヒータ13には、抵抗−電圧変換回路7と、定電流回路8とが接続されている。
【0074】
抵抗−電圧変換回路7は、ヒータ13の抵抗率を計測し、計測した抵抗率に応じた電圧をマイクロコンピュータに出力する(抵抗−電圧変換)。ヒータ13の抵抗率は、ヒータ13に所定の大きさの電流(定電流)を供給しているときに生じるヒータ13の電圧降下として検知される。ヒータ13の抵抗率は、温度に依存するため、計測した抵抗率からヒータ13の温度を検知することができる。ヒータ13は検出部1と薄い絶縁体(基板11)を介して熱的に接触しているため、ヒータ13の温度を検知してヒータ13の温度を所定範囲内に制御すれば、検出部1の温度も適切な範囲内に制御することができる。
【0075】
ヒータ13は、スイッチ9の切り替えにより、図2に示した電極17a、17dを介して電源または定電流回路8に選択的に接続される。ヒータ13を加熱するときは、ヒータ13と電源とが接続され、ヒータ13には電源電圧VBATが印加される。これに対し、ヒータ13の温度を計測するときには、スイッチ9により、ヒータ13の接続先が電源から定電流回路8に切り替えられる。つまり、定電流回路8がヒータ13に供給する電流は、ヒータ13を加熱するための電流ではなく、ヒータ13の抵抗率を計測するために用いられる電流である。
【0076】
ヒータ13が定電流回路8に接続されると、定電流回路8から電極17a、17dを介してヒータ13に所定の大きさを有する電流が流れる。このとき、電極17b、17cに接続された抵抗−電圧変換回路7内の差動増幅回路により、ヒータ13の両端における電圧が測定される。この電圧とヒータ13の抵抗率との間には、所定の関係が存在するため、測定された電圧に基づいて、ヒータ13の温度(検出部1の温度にも対応する。)を検知することができる。
【0077】
マイクロコンピュータは、定電流回路8に入力される電圧を生成するDAコンバータ(DAC)15や、抵抗−電圧変換回路7の出力(ヒータ13の抵抗率に対応する電圧)を受け取って対応するデジタル値を生成するADコンバータ(ADC)16を含んでいる。また、マイクロコンピュータは、検出部1に電気的に直列に接続されている少なくとも1つの固定抵抗素子にかかる電圧(分配電圧)を受け取って、対応するデジタル値を生成するADC17も含んでいる。分配電圧は、直列に接続された抵抗とコンデンサとから構成されるローパスフィルタ18を介してADC17に出力される。
【0078】
なお、ここまでの説明では、酸素センサ10が3つの固定抵抗素子を有する場合を例示したが、固定抵抗素子の数は2つ以上であればよく、3つに限定されるものではない。ただし、センサ出力の温度依存性を十分に小さくするためには、検出部1に電気的に直列に接続されている抵抗要素の抵抗率を3段階以上に切り替えられることが好ましく、酸素センサ10は、少なくとも3つの固定抵抗素子を含んでいることが好ましい。複数の固定抵抗素子の抵抗率は、相互に同じであってもよいし、異なってもよく、各固定抵抗素子の抵抗率の具体的な値は、検出部1の温度依存性に応じて適宜設定すればよい。
【0079】
また、制御部3が、検出部1に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。制御部3は、検出部1の温度に応じて検出部1と複数の固定抵抗素子との電気的な接続関係を制御する機能を有していればよい。例えば、相互に抵抗率の異なる複数の固定抵抗素子を設けておき、制御部3は、検出部1の温度に応じていずれか1つの固定抵抗素子を検出部1に直列に接続してもよい。なお、検出部1に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる制御部3は、図6などに示したように比較的簡便な構成で実現される点で優れている。
【0080】
また、本実施形態では、検出部1に電気的に直列に接続されている抵抗要素(少なくとも1つの固定抵抗素子)にかかる電圧Voutputの、基準電圧Vinputに対する比Voutput/Vinputをセンサ出力としたが、これに代えて、検出部1にかかる(つまり検出部1に分配された)電圧Voutput’を測定し、この分配電圧Voutput’の基準電圧Vinputに対する比Voutput’/Vinputをセンサ出力としてもよい。いずれの比をセンサ出力として用いても、センサ出力の温度依存性を好適に低減することができる。
【0081】
次に、図13(a)、(b)および図14を参照しながら、酸素センサ10を実際に内燃機関の排気管に取り付けるための構成を説明する。
【0082】
酸素センサ10は、図13(a)および図14に示すように、その基端部において第1のハウジング20に保持されている。第1のハウジング20は、例えば、セラミックから形成されたセラミックガイドである。酸素センサ10は、さらに、第1のハウジング20ごと第2のハウジング21に保持されている。第2のハウジング21は、例えば、ステンレスから形成された金属ケースである。第2のハウジング21の表面には、ねじが切られており、第2のハウジング21は、このねじに螺合するナット22によって排気管に固定される。
【0083】
実際の使用に際しては、図13(b)に示すように、酸素センサ10を覆うように保護キャップ25が設けられる。酸素センサ10による検出結果は、検出線24を介して制御装置に出力される。第1のハウジング20内は、充填材(例えばタルク粉末)23によって気密封止がなされている。
【0084】
続いて、本実施形態における酸素センサ10を備え、内燃機関を駆動源とする車両を説明する。図15に、酸素センサ10を備えた自動二輪車300を模式的に示す。
【0085】
自動二輪車300は、図15に示すように、本体フレーム301とエンジン(内燃機関)100とを備える。本体フレーム301の前端にヘッドパイプ302が設けられている。ヘッドパイプ302にはフロントフォーク303が左右方向に揺動可能に設けられている。また、フロントフォーク303の下端に前輪304が回転可能に支持されている。ヘッドパイプ302の上端にはハンドル305が取り付けられている。
【0086】
本体フレーム301の後端上部から後方に伸びるようにシートレール306が取り付けられている。本体フレーム301の上部には燃料タンク307が設けられ、シートレール306上にメインシート308aおよびタンデムシート308bが設けられている。また、本体フレーム301の後端に後方へ伸びるリアアーム309が取り付けられている。リアアーム309の後端に後輪310が回転可能に支持されている。
【0087】
本体フレーム301の中央部にはエンジン100が保持されている。エンジン100の前部にはラジエター311が取り付けられている。エンジン100の排気ポートには排気管312が接続されている。以下において詳細に説明するように、排気管にはエンジン100に近い順に酸素センサ10、三元系触媒104および消音器106が設けられている。酸素センサ10の先端部は排気管312の排気ガスが通過する通路内に露出しており、酸素センサ10は排気ガス中の酸素を検出する。酸素センサ10には、図2などに示したヒータ13が取り付けられており、エンジン100の始動時にはヒータ13により検出部1が昇温される(例えば5秒で700℃まで昇温される)ことによって、酸化物半導体から形成された検出部1の検出感度が高められる。
【0088】
エンジン100には、変速機315が連結されており、変速機315の出力軸316は駆動スプロケット317に取り付けられている。駆動スプロケット317はチェーン318を介して後輪310の後輪スプロケット319に連結されている。
【0089】
図16は、エンジン100の制御系の主要な構成を示している。エンジン100のシリンダ101には吸気弁110、排気弁106および点火プラグ108が設けられている。またエンジンを冷却する冷却水の水温を計測する水温センサ116が設けられている。吸気弁110は、空気吸入口をもつ吸気管122に接続されている。吸気管122にはエアーフローメータ112、スロットルバルブ114、スロットルセンサ114aおよび燃料噴射装置111が設けられている。エアーフローメータ112の代わりにスロットルバルブ114と吸気弁110との間に負圧センサを設けて吸気量を測定してもよい。
【0090】
エアーフローメータ112、スロットルセンサ114a、燃料噴射装置111、水温センサ116、点火プラグ108および酸素センサ10は、ECU(電子制御ユニット)118に接続されている。ECU118には自動二輪車300の速度を示す車速信号120も入力される。
【0091】
図示しないセルモータによって、ライダーがエンジン100を始動させると、ECU118はエアーフローメータ112、スロットルセンサ114aおよび水温センサ116から得られる検出信号および車速信号120に基づき、最適な燃料量を計算し、計算結果に基づいて、燃料噴射装置111へ制御信号を出力する。燃料噴射装置111から噴射される燃料は、吸気管122から供給される空気と混合され、適切なタイミングで開閉される吸気バルブ110を介してシリンダ101へ噴出される。シリンダ101において噴出された燃料は燃焼し、排気ガスとなって排気弁106を介して排気管312へ導かれる。
【0092】
酸素センサ10は排気ガス中の酸素を検出し、検出信号をECU118へ出力する。ECU118は、酸素センサ10からの信号に基づき、空燃比が理想空燃比からどの程度ずれているかを判断する。そして、エアーフローメータ112およびスロットルセンサ114aから得られる信号によって定まる空気量に対して、理想空燃比となるように燃料噴射装置111から噴出する燃料量を制御する。このように、酸素センサ10と、酸素センサ10に接続されたECU118とを含む空燃比制御装置によって、内燃機関の空燃比が適切に制御される。
【0093】
なお、ECU118は、酸素センサ10の制御部3としても機能してもよい。つまり、図6などに示したマイクロコンピュータは、ECU118に搭載されているものであってよいし、図7や図8などに示したトランジスタ5Aおよび5Bやコンパレータ6Aおよび6Bなどは、ECU118内に設けられていてもよい。また、既に述べたように、複数の固定抵抗素子2A〜2CもECU118内に設けることができる。
【0094】
本実施形態における酸素センサ10を備えた自動二輪車300では、センサ出力の温度依存性が低減されており、広い温度範囲でリッチ・リーンの検出を高精度で行うことができる。そのため、適切な空燃比で燃料および空気を混合し、最適な条件で燃料を燃焼させることができ、排気ガス中のNOxをはじめ規制物質の濃度を低減することができる。また、燃費の向上をはかることも可能である。
【0095】
なお、ここでは自動二輪車を例示したが、本発明は四輪自動車などの他の輸送機器にも好適に用いられる。また、内燃機関はガソリンエンジンに限られず、ディーゼルエンジンであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によると、センサ出力の温度依存性を簡便に低減し得る抵抗型酸素センサが提供される。本発明による酸素センサは、乗用車、バス、トラック、オートバイ、トラクター、飛行機、モーターボート、土木車両などの種々の輸送機器用の内燃機関に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の好適な実施形態における抵抗型酸素センサ10の構成を示す回路図である。
【図2】酸素センサ10が備える酸素濃度検出部およびその近傍の構造を示す分解斜視図である。
【図3】酸素センサ10のセンサ出力を説明するための図である。
【図4】酸素濃度検出部の抵抗率Rgおよび酸素濃度検出部に直列に接続されている固定抵抗素子の合計の抵抗率Rsと、酸素濃度検出部の温度Tとの関係を示すグラフである。
【図5】酸素センサ10のセンサ出力と温度との関係を示すグラフである。
【図6】酸素センサ10が備える制御部の具体的な構成の例を示す回路図である。
【図7】酸素センサ10が備える制御部の具体的な構成の例を示す回路図である。
【図8】酸素センサ10が備える制御部の具体的な構成の例を示す回路図である。
【図9】酸素センサ10の他の構成例を示す回路図である。
【図10】酸素センサ10の他の構成例を示す回路図である。
【図11】酸素センサ10の他の構成例を示す回路図である。
【図12】酸素センサ10が備えるヒータに対し加熱のための通電と抵抗測定とを行うための具体的な構成の例を示す回路図である。
【図13】(a)および(b)は、酸素センサ10を排気管に固定するための構成を模式的に示す斜視図であり、(a)は保護キャップを外した状態を示し、(b)は保護キャップを付けた状態を示している。
【図14】酸素センサ10を排気管に固定するための構成を模式的に示す断面図である。
【図15】酸素センサ10を備えた自動二輪車の例を模式的に示す図である。
【図16】図15に示す自動二輪車におけるエンジンの制御系を模式的に示す図である。
【図17】酸化物半導体層の抵抗率と温度との関係を示すグラフである。
【図18】(a)および(b)は、特許文献3に開示されている酸素センサ810を模式的に示す上面図および断面図である。
【図19】酸素センサ810の等価回路図である。
【符号の説明】
【0098】
1 酸素濃度検出部
2A 固定抵抗素子(第1抵抗素子)
2B 固定抵抗素子(第2抵抗素子)
2C 固定抵抗素子(第3抵抗素子)
3 制御部
4A、4B スイッチ
5A、5B トランジスタ
6A、6B コンパレータ
7 抵抗−電圧変換回路
8 定電流回路
10 抵抗型酸素センサ
11 基板
12 電極
13 ヒータ
14a、14b、14c、14d 電極
15 DAコンバータ
16、17 ADコンバータ
100 エンジン
118 ECU(制御部)
300 自動二輪車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気ガス中の酸素分圧に応じて抵抗率が変化する酸素濃度検出部を備えた抵抗型酸素センサであって、
それぞれが前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続され得る複数の固定抵抗素子と、
前記酸素濃度検出部の温度に応じて、前記酸素濃度検出部と前記複数の固定抵抗素子との電気的な接続関係を制御する制御部と、
を備える抵抗型酸素センサ。
【請求項2】
前記制御部は、前記酸素濃度検出部の温度に応じて、前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる請求項1に記載の抵抗型酸素センサ。
【請求項3】
動作中には常に、前記酸素濃度検出部に前記複数の固定抵抗素子のうちの少なくとも1つの固定抵抗素子が電気的に直列に接続されている請求項1または2に記載の抵抗型酸素センサ。
【請求項4】
前記酸素濃度検出部および前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている前記少なくとも1つの固定抵抗素子に基準電圧が印加され、
前記酸素濃度検出部または前記少なくとも1つの固定抵抗素子にかかる電圧の、前記基準電圧に対する比がセンサ出力とされる、請求項3に記載の抵抗型酸素センサ。
【請求項5】
前記複数の固定抵抗素子は、少なくとも3つの固定抵抗素子を含んでいる、請求項1から4のいずれかに記載の抵抗型酸素センサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の抵抗型酸素センサを備えた空燃比制御装置。
【請求項7】
前記抵抗型酸素センサに接続された電子制御ユニットをさらに備え、
前記複数の固定抵抗素子は、前記電子制御ユニット内に設けられている請求項6に記載の空燃比制御装置。
【請求項8】
前記電子制御ユニットが前記抵抗型酸素センサの制御部としても機能する請求項7に記載の空燃比制御装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載の空燃比制御装置を備えた輸送機器。
【請求項1】
雰囲気ガス中の酸素分圧に応じて抵抗率が変化する酸素濃度検出部を備えた抵抗型酸素センサであって、
それぞれが前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続され得る複数の固定抵抗素子と、
前記酸素濃度検出部の温度に応じて、前記酸素濃度検出部と前記複数の固定抵抗素子との電気的な接続関係を制御する制御部と、
を備える抵抗型酸素センサ。
【請求項2】
前記制御部は、前記酸素濃度検出部の温度に応じて、前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている固定抵抗素子の数を変化させる請求項1に記載の抵抗型酸素センサ。
【請求項3】
動作中には常に、前記酸素濃度検出部に前記複数の固定抵抗素子のうちの少なくとも1つの固定抵抗素子が電気的に直列に接続されている請求項1または2に記載の抵抗型酸素センサ。
【請求項4】
前記酸素濃度検出部および前記酸素濃度検出部に電気的に直列に接続されている前記少なくとも1つの固定抵抗素子に基準電圧が印加され、
前記酸素濃度検出部または前記少なくとも1つの固定抵抗素子にかかる電圧の、前記基準電圧に対する比がセンサ出力とされる、請求項3に記載の抵抗型酸素センサ。
【請求項5】
前記複数の固定抵抗素子は、少なくとも3つの固定抵抗素子を含んでいる、請求項1から4のいずれかに記載の抵抗型酸素センサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の抵抗型酸素センサを備えた空燃比制御装置。
【請求項7】
前記抵抗型酸素センサに接続された電子制御ユニットをさらに備え、
前記複数の固定抵抗素子は、前記電子制御ユニット内に設けられている請求項6に記載の空燃比制御装置。
【請求項8】
前記電子制御ユニットが前記抵抗型酸素センサの制御部としても機能する請求項7に記載の空燃比制御装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載の空燃比制御装置を備えた輸送機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−14610(P2009−14610A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−178599(P2007−178599)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
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