説明

抵抗膜方式のタッチパネル

【課題】伝導性高分子から透明電極を形成した後、硬化剤を付加して透明電極を硬化させることにより、入力手段の圧力の大きさに応じて接触抵抗が変わらない抵抗膜方式タッチパネルを提供する。
【解決手段】本発明に係る抵抗膜方式タッチパネルは、透明基板(10)に形成され、伝導性高分子を含む透明電極(20)と、透明電極(20)に付加され、伝導性高分子との加水分解反応によって透明電極(20)を硬化させる硬化剤(30)とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜方式のタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル技術を用いるコンピュータの発達に伴い、コンピュータの補助装置も一緒に開発されており、パーソナルコンピュータ、携帯用転送装置、その他の個人専用情報処理装置などは、多様な入力装置、例えばキーボードやマウスなどを用いてテキスト処理およびグラフィック処理を行う。
【0003】
ところが、情報化社会の急速な進行に伴ってコンピュータの用途が益々拡大する趨勢にあるので、現在入力装置の役割を担当するキーボードおよびマウスのみでは効率的な製品の駆動が難しいという問題点がある。よって、簡単で誤操作が少ないうえ、誰でも容易に情報の入力が可能な機器の必要性が高まっている。
【0004】
また、入力装置に関する技術は、一般な機能を充足させるという水準を超え、信頼性、耐久性、革新性、設計および加工関連技術などに関心が移っている。このような目的を達成するために、テキストやグラフィックなどの情報の入力が可能な入力装置としてタッチパネル(Touch Panel)が開発された。
【0005】
このようなタッチパネルは、電子手帳、液晶表示装置(LCD、Liquid Crystal Display Device)、PDP(Plasma Display Panel)、El(Electroluminescence)などの平板ディスプレー装置、およびCRT(Cathode Ray Tube)といった画像表示装置の表示面に設置され、ユーザーが画像表示装置を見ながら所望の情報を選択するようにするのに用いられる道具である。
【0006】
タッチパネルの種類は、抵抗膜方式(Resistive Type)、静電容量方式(Capacitive Type)、電磁気方式(Electro−Magnetic Type)、SAW方式(Surface Acoustic Wave Type)、およびインフラレッド方式(Infrared Type)に区分される。このような各種タッチパネルは、信号増幅の問題、解像度の差異、設計および加工技術の難易度、光学的特性、電気的特性、機械的特性、耐環境特性、入力特性、耐久性および経済性を考慮して電子製品に採用されるが、現在最も広範囲な分野で使用する方式は、抵抗膜方式のタッチパネルである。
【0007】
一方、タッチ座標を認識するために、タッチパネルには、透明電極が備えられるが、従来の透明電極として最も多用される物質は、インジウムスズ酸化物(ITO、Indium Tin Oxide)である。ところが、インジウムスズ酸化物を用いて透明電極を形成する場合、過度な製造コストがかかり、且つインジウムが限られた鉱物なので供給が足りないうえ、透明電極に亀裂が発生する可能性が高いという欠点がある。
【0008】
前述した問題点を解決するために、インジウムスズ酸化物を代替することが可能な代替物に関する様々な研究が盛んに行われている。その中でも、伝導性高分子は、透明電極の製造コストを節約することができるうえ、柔軟性に優れるから、透明電極に亀裂が発生する可能性が低いという利点がある。ところが、伝導性高分子から透明電極を形成する場合、透明電極の硬度(hardness)が相対的に低いという問題点がある。したがって、対向する2つの透明電極が接触して駆動する抵抗膜方式タッチパネルの場合、伝導性高分子から透明電極を形成すると、入力手段の圧力の大きさに応じて接触抵抗が変わり、それにより抵抗膜方式タッチパネルのタッチ感度および性能が低下するという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的は、伝導性高分子から透明電極を形成した後、硬化剤を付加して透明電極を硬化させることにより、入力手段の圧力の大きさに応じて接触抵抗が変わらない抵抗膜方式タッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある観点によれば、透明基板に形成され、伝導性高分子を含む透明電極と、前記透明電極に付加され、前記伝導性高分子との加水分解反応によって前記透明電極を硬化させる下記化学式1の硬化剤とを含んでなる、 抵抗膜方式タッチパネルを提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、R、R、RまたはRはアルコキシ基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基またはリン酸基である。
【0013】
ここで、前記化学式1の硬化剤は、下記化学式2で表されることを特徴とする。
【0014】
【化2】

【0015】
また、前記化学式1の硬化剤は、下記化学式3で表されることを特徴とする。
【0016】
【化3】

【0017】
また、前記化学式1の硬化剤は、下記化学式4で表されることを特徴とする。
【0018】
【化4】

【0019】
また、前記化学式1の硬化剤は、下記化学式5で表されることを特徴とする。
【0020】
【化5】

【0021】
また、前記伝導性高分子は、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)、ポリアニリン、ポリアセチレン、またはポリフェニレンビニレンを含むことを特徴とする。
【0022】
また、前記透明電極の面抵抗を低めるイミダゾリウム塩(imidazolium solt)を含むイオン液体(ionic liquid)を、前記透明電極にさらに付加することを特徴とする。
【0023】
また、前記硬化剤は、スプレー方式で、前記透明電極に付加されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、伝導性高分子から透明電極を形成しても、透明電極に硬化剤を付加することにより、透明電極の硬度を向上させることができる。また、透明電極の硬度を向上させることにより、入力手段の圧力の大きさに応じて接触抵抗が変わるのを防止することができ、その結果、タッチ感度および性能を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好適な実施例に係る抵抗膜方式タッチパネルの断面図である。
【図2】本発明の好適な実施例を用いて製作した抵抗膜方式タッチパネルの断面図(1)である。
【図3】本発明の好適な実施例を用いて製作した抵抗膜方式タッチパネルの断面図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的、特定の利点および新規の特徴は、添付図面に連関する以下の詳細な説明と好適な実施例からさらに明白になるであろう。
【0027】
これに先立ち、本明細書および請求の範囲に使用された用語または単語は、通常的で辞典的な意味で解釈されてはならず、発明者が自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0028】
本発明において、各図面の構成要素に参照番号を付加するにおいて、同一の構成要素については、他の図面上に表示されても、出来る限り同一の番号を付することに留意すべきであろう。また、「第1」、「第2」などの用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別するために使用されるもので、構成要素を限定するものではない。なお、本発明を説明するにおいて、関連した公知の技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を無駄に乱すおそれがあると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【0030】
図1は、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施例に係る抵抗膜方式タッチパネルは、透明基板10に形成され、伝導性高分子を含む透明電極20と、透明電極20に付加され、伝導性高分子との加水分解反応によって透明電極20を硬化させる硬化剤30とを含む構成である。
【0032】
前記透明基板10は、透明電極20、電極配線が形成されるべき領域を提供する役割を果たす。ここで、透明基板10は、透明電極20と電極配線を支持することが可能な支持力、および画像表示装置から提供する画像をユーザーが認識することを可能にする透明性を備えなければならない。前述した支持力と透明性を考慮するとき、透明基板10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、環状オレフィン高分子(COC)、TAC(Triacetylcellulose)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリスチレン(PS)、二軸延伸ポリスチレン(Kレジン含有BOPS(Biaxially oriented PS))、ガラスまたは強化ガラスなどで形成することが好ましいが、これに限定されない。
【0033】
一方、透明基板10の一面を活性化させるために、高周波処理またはプライマー(primer)処理を行うことが好ましい。透明基板10の一面を活性化させることにより、透明基板10と透明電極20間の接着力を向上させることができる。
【0034】
前記透明電極20は、入力手段がタッチするときに信号を発生させてコントローラーでタッチ座標を認識することができるようにする役割を果たすもので、透明基板10に形成される。
【0035】
ここで、透明電極20は、伝導性高分子、溶媒、バインダーおよび分散安定剤などからなる組成物を用いて形成する。
【0036】
前記伝導性高分子は、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)、ポリアニリン、ポリアセチレン、またはポリフェニレンビニレンなどである。
【0037】
前記溶媒は、伝導性高分子やバインダーなどの溶質を溶かして溶液を作るもので、1種以上が使用できる。例えば、溶媒は、メタノール、エタノール、i−プロパノールおよびブタノールなどの脂肪族アルコール、アセトン、メチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン、脂肪族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸アミド、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセトニトリル、脂肪族スルホキシド、水またはこれらの混合物を使用することができる。
【0038】
前記バインダーは、組成物自体の粘度を調節し、透明電極20と透明基板10間の接着力を実現させるもので、アクリル系、エポキシ系、エステル系、ウレタン系、エーテル系、カルボキシル系、アミド系などを用いることができる。
【0039】
前記分散安定剤としては、エチレングリコールやソルビトールなどを用いることができる。
【0040】
伝導性高分子、溶媒、バインダーおよび分散安定剤などからなる組成物を製造した後、スパッタリング(Sputtering)、蒸着(Evaporation)などの乾式工程、ディップコーティング(Dip coating)、スピンコーティング(Spin coating)、ロールコーティング(Roll coating)、スプレーコーティング(Spray coating)などの湿式工程、またはスクリーン印刷法(Screen Printing)、グラビア印刷法(Gravure Printing)、インクジェット印刷法(Inkjet Printing)などのダイレクトパターニング工程によって透明基板10に透明電極20を形成することができる。その後、透明電極20が均一な伝導性、耐湿性、耐熱性、耐久性、収縮安定性を持つように、約50℃〜150℃で乾燥を行う。
【0041】
前述した工程によって、伝導性高分子を含む透明電極20を形成する場合、柔軟性に優れるうえ、コーティングを単純化することができるという利点がある。ところが、透明電極20の硬度(hardness)が相対的に低いため、向かい合う2つの透明電極20が接触するとき、入力手段の圧力の大きさに応じて透明電極20の接触抵抗が変わるという問題点がある。かかる問題点を解決するために、後述するように透明電極20に硬化剤30を付加するのである。
【0042】
前記硬化剤30は、透明電極20に付加され、透明電極20を硬化させる役割を果たす。ここで、硬化剤30は、図面上、噴射方式を介して透明電極20に付加するものと示されているが、これに限定されず、浸漬(dipping)方式などによっても硬化剤30を透明電極20に付加することができる。一方、透明電極20に付加された硬化剤30は、透明電極20内の伝導性高分子との加水分解反応およびそれによる縮合(condensation)反応によって透明電極20を硬化させる。この際、硬化剤30は、下記化学式1のシリコン化合物で形成する。
【0043】
【化6】

【0044】
式中、R、R、RまたはRはアルコキシ基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基またはリン酸基である。
【0045】
さらに具体的に、前記硬化剤30は、下記化学式2で表されるTEOS(tetraethylorthosilicate)で形成することができる。
【0046】
【化7】

【0047】
また、前記硬化剤30は、下記化学式3で表される3−メルカプトプロピル(トリメトキシ)シランで形成することができる。
【0048】
【化8】

【0049】
また、前記硬化剤30は、下記化学式4で表される3−アミノプロピル(トリメトキシ)シランで形成することができる。
【0050】
【化9】

【0051】
また、前記硬化剤30は、下記化学式5で表されるリン酸基を有するシリコン化合物で形成することができる。
【0052】
【化10】

【0053】
前述したように、硬化剤30を付加して透明電極20を硬化させた後、残存する硬化剤30との加水分解反応で生成された水を蒸発させるために、透明電極20をもう1回乾燥させることが好ましい。
【0054】
一方、前記透明電極20の面抵抗を低めるために、透明電極20にイオン液体をさらに付加することができる。この際、イオン液体は、イミダゾリウム塩を含むことが好ましい。
【0055】
本実施例に係る抵抗膜方式タッチパネルは、透明電極20に前述した硬化剤30を付加して透明電極20の硬度を向上させることにより、入力手段の圧力の大きさに応じて接触抵抗が変わるのを防止することができ、その結果、タッチ感度および性能を向上させることができるという効果がある。
【0056】
図2および図3は、本発明の好適な実施例を用いて製作した抵抗膜方式タッチパネルの断面図である。
【0057】
図2および図3に示すように、前述した工程によって、第1透明基板40と第2透明基板50の一面にそれぞれ第1透明電極60と第2透明電極70を形成した後、第1透明電極60と第2透明電極70とが向かい合うように第1透明基板40の縁部と第2透明基板50の縁部とを両面接着テープのような接着層80で接着させる。この際、第1透明電極60と第2透明電極70との間には、エアギャップ(air−gap)90が備えられる。第1透明電極60と第2透明電極70には、ドットスペーサー100を備えることができる。また、第1透明電極60および第2透明電極70の縁部には、第1透明電極60と第2透明電極70から電気的信号を受ける第1電極配線110と第2電極配線120がそれぞれ印刷される。
【0058】
入力手段130が第1透明基板40の上側に圧力を加えると(図2参照)、第1透明基板40が第2透明基板50の方向に撓みながら、第1透明電極60と第2透明電極70とは、互いに接触することになる(図3参照)。この際、第1透明電極60と第2透明電極70には、硬化剤30が付加されて硬度が向上したので、入力手段130の圧力の大きさに応じて第1透明電極60と第2透明電極70間の接触抵抗が変化しない。したがって、本発明に係る抵抗膜方式タッチパネルは、硬度が相対的に低い伝導性高分子を用いて透明電極を形成しても、優れたタッチ感度および性能を実現することができるという利点がある。
【0059】
以上、本発明を具体的な実施例によって詳細に説明したが、これは、本発明を具体的に説明するためのものに過ぎず、本発明に係る抵抗膜方式タッチパネルは、これに限定されず、当該分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内で変形または改良を加え得るのは明白である。本発明の単純な変形ないし変更は、いずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は、特許請求の範囲によって明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、入力手段の圧力の大きさに応じて接触抵抗が変わらない抵抗膜方式タッチパネルに適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 透明基板
20 透明電極
30 硬化剤
40 第1透明基板
50 第2透明基板
60 第1透明電極
70 第2透明電極
80 接着層
90 エアギャップ
100 ドットスペーサー
110 第1電極配線
120 第2電極配線
130 入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板に形成され、伝導性高分子を含む透明電極と、
前記透明電極に付加され、前記伝導性高分子との加水分解反応によって前記透明電極を硬化させる下記化学式1の硬化剤とを含んでなることを特徴とする、抵抗膜方式タッチパネル。
【化1】

(式中、R、R、RまたはRはアルコキシ基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基またはリン酸基である。)
【請求項2】
前記化学式1の硬化剤は、下記化学式2で表されることを特徴とする、請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【化2】

【請求項3】
前記化学式1の硬化剤は、下記化学式3で表されることを特徴とする、請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【化3】

【請求項4】
前記化学式1の硬化剤は、下記化学式4で表されることを特徴とする、請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【化4】

【請求項5】
前記化学式1の硬化剤は、下記化学式5で表されることを特徴とする、請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【化5】

【請求項6】
前記伝導性高分子は、ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)、ポリアニリン、ポリアセチレン、またはポリフェニレンビニレンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項7】
前記透明電極の面抵抗を低めるイミダゾリウム塩を含むイオン液体を、前記透明電極にさらに付加することを特徴とする、請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。
【請求項8】
前記硬化剤は、スプレー方式で前記透明電極に付加されることを特徴とする、請求項1に記載の抵抗膜方式タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−59685(P2012−59685A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275548(P2010−275548)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】