説明

押釦スイッチ装置用導光板および押釦スイッチ装置

【課題】押釦を確実に照光できる柔軟な押釦スイッチ装置用導光板およびそれを用いた押釦スイッチ装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかる押釦スイッチ装置用導光板30は、光源24としてのLEDから発せられた光を導光する導光板30である。導光板30は、薄板状の透明ゴム成形体からなり、押釦10の直下であって、押釦10とスイッチ22との間に押釦10を照光する照光部32を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押釦を確実に照光でき、かつ、隣に設けられた押釦に影響を与えることなく独立して操作できる柔軟な押釦スイッチ装置用導光板および押釦スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機、コードレス電話機、リモートコントローラ、カーオーディオなどの機器には複数の押釦を照光させる照光式の押釦スイッチ装置が採用されている(例えば、特許文献1参照)。このような押釦スイッチ装置の光源としては、消費電力の小さなLEDなどが用いられ、LEDからの光は導光板を介して各押釦を照光する。特許文献1は、優れたクリック感を得ることを目的とし、好ましい硬度としてショアD硬度40度以上のクリック板押圧子とクリック板とが直接接触して硬質指触感を得る形状が開示され、押釦の直下には導光板が存在せず、導光板のない空間を利用して、スイッチの近傍にLEDが配置されている(特許文献1の図1〜3参照)。従って、適切な照光式押釦スイッチ装置の各部材の配置として、特許文献1の図1に示され、実施例1では、「ポリカーボネート製の導光板、LED、回路基板(クリック板の可動接点に対向する位置に固定接点を有する。)とともにケースに組込んで樹脂キートップ文字照光式押釦スイッチ装置」(0022段落)が開示され、実施例2では、「アクリルからなる導光板、LEDなどとともにケースに組込み照光式押釦スイッチ装置」(0023段落)が開示されている。
【0003】
特許文献1では、硬質の導光板を用い、押釦の直下に導光板はなく、LEDの位置も導光板の端部側面にはない。したがって、押釦は押釦の直下から照光されるのではなく、導光板によって押釦の周囲から押釦を照光させていたため、押釦を照光させる効率が低かった。また、例えば携帯電話機などの機器の薄型化もしくは小型化の要求に対応できないものであった。
【0004】
また、導光板としては、例えば液晶表示装置のエッジ式バックライトに採用されるアクリル製導光板があった(例えば、特許文献2参照)。エッジ式バックライトは、光源を液晶パネルのエッジ部(側部)に配置して、光源からの光をアクリル樹脂製導光板の一端から入射し、導光板の裏面での反射光によって液晶パネルを発光させていた。
【0005】
さらに、透光性の基板に遮光層を設け、該遮光層にレーザーマーキング加工により表示部が形成された透光式表示パネルが提案されていた(例えば、特許文献3参照)。特許文献3のレーザーマーキング加工は、単に遮光層を削り出し透光性の表示を形成するに留まっていた。
【特許文献1】特開平8−50831号公報
【特許文献2】特開2002−244575号公報
【特許文献3】特開2002−207445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、簡便な構造でありながら押釦の直下を効率よく確実に照光でき、かつ、押釦スイッチ装置として薄型化できる柔軟な押釦スイッチ装置用導光板およびそれを用いた押釦スイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の押釦スイッチ装置用導光板は、
光源から発せられた光を導光する導光板であって、
薄板状の透明ゴム成形体からなり、
押釦の直下であって、該押釦とスイッチとの間に該押釦を照光する照光部を有する。
【0008】
本発明の押釦スイッチ装置用導光板によれば、柔軟な透明ゴム成形体を用いることで、押釦の直下まで導光板を形成しても押釦がスイッチを押圧する障害にならず、押釦を押したときに隣の押釦を誤押ししない。しかも、押釦の直下に照光部を有し、複数の押釦同士の間隔を構成する押釦直下の周辺部に照光部がないので、押釦を効率よく照光することができ、押釦スイッチ装置の薄型化を達成することができる。
【0009】
本発明にかかる押釦スイッチ装置用導光板において、
前記照光部は、複数の前記押釦に対応して複数箇所に配置され、
前記光源に近い前記照光部における反射率よりも前記光源から遠い前記照光部における反射率の方が高く形成することができる。
【0010】
このような構成とすることで、透明ゴム成形体の例えば側端部に設けられた光源から遠くなるほど導光板により導光される光量が減少する傾向を補償し、各押釦を均一に照光することができ、押釦の輝度を均一にすることができる。
【0011】
本発明にかかる押釦スイッチ装置用導光板において、
前記照光部は、前記透明ゴム成形体の表面に形成された複数の凹部または凸部を有することができる。
【0012】
このような構成とすることで、従来のような反射板を用いることなく導光板単体で押釦を照光することができる。
【0013】
本発明にかかる押釦スイッチ装置用導光板において、
前記照光部は、前記透明ゴム成形体の表面に形成された複数の凹部を有し、
前記光源に近い前記照光部における前記凹部の数よりも前記光源から遠い前記照光部における凹部の数の方が多く形成されることができる。
【0014】
このような構成とすることで、複数の押釦を均一に照光できる。
【0015】
本発明にかかる押釦スイッチ装置用導光板において、
前記照光部は、前記透明ゴム成形体の表面に形成された複数の凹部を有し、
前記光源に近い前記照光部における前記凹部の総面積よりも前記光源から遠い前記照光部における凹部の総面積の方が大きく形成されることができる。
【0016】
このような構成とすることで、比較的単純な形状で照光部を形成することができ、各照光部における反射率を凹部の面積を変えることで容易に調整することができ、複数の押釦を均一な明るさに調節して照光することができる。しかも導光板からの光の取出し効率がよいので、小さな光源であっても押釦を効率よく明るく照光することができる。
【0017】
本発明にかかる押釦スイッチ装置用導光板において、
前記凹部は、レーザーマーキング加工によって形成されることができる。
【0018】
このような構成とすることで、確実かつ容易に所望の形状を透明ゴム成形体の表面の所望の場所に形成することができる。しかも、導光板からの光の取出し効率のよい加工をすることができる。
【0019】
本発明にかかる押釦スイッチ装置用導光板において、
前記透明ゴム成形体は、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。
【0020】
このような構成とすることで、光源からの光を効率よく導光することができる。
【0021】
本発明にかかる押釦スイッチ装置用導光板において、
前記透明ゴム成形体は、厚さが0.2mm〜1mmであり、かつ、デュロメータA硬さが40度〜90度であることが好ましい。
【0022】
このような構成とすることで、導光板が薄く柔軟であるため、押釦によって確実にその押釦直下のスイッチのみを押すことができ、導光板によって隣接するスイッチまで誤って押してしまうことが無く、押釦スイッチ装置の薄型化を達成することができる。
【0023】
本発明にかかる押釦スイッチ装置用導光板において、
前記透明ゴム成形体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム及びウレタン系エラストマーから選ばれた少なくとも一つの透明ゴムで成形されることができる。
【0024】
本発明にかかる押釦スイッチ装置用導光板において、
携帯電話機に用いられることができる。
【0025】
本発明の押釦スイッチ装置は、
複数の押釦と、該押釦に対応したスイッチと、該押釦と該スイッチの間に設けられ、光源から発せられた光を導光する導光板と、該導光板の側端部に設けられた光源と、を有し、
前記導光板は、透明な薄板状の透明ゴム成形体からなり、かつ、前記押釦の直下であって、該押釦とスイッチとの間に該押釦を照光する照光部が形成される。
【0026】
本発明の押釦スイッチ装置によれば、薄板状の透明ゴム成形体の導光板を用いることで、押釦の直下まで導光板を形成しても押釦がスイッチを押圧する障害にならない。しかも、導光板は押釦の直下のみに照光部を有するので、光をロスすることなく押釦を効率よく照光することができ、押釦スイッチ装置の薄型化を達成することができる。
【0027】
本発明にかかる押釦スイッチ装置において、
前記押釦は、前記光源の光によって励起する蛍光体を含むことができる。
【0028】
このような構成とすることで、導光板の照光部からの照光によって押釦を所望の色に光らせることができる。
【0029】
本発明にかかる押釦スイッチ装置において、
前記押釦は、前記照光部と接触している面に凹部または凸部が形成された導光部を有することができる。
【0030】
このような構成とすることで、押釦の導光部が照光部に接触していることで導光板の照光部から光を取り出すことができるので、導光板における押釦に対応した箇所を確実に照光させることができる。
【0031】
本発明にかかる押釦スイッチ装置において、
携帯電話機に用いられることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施形態の押釦スイッチ装置を備えた折り畳み式携帯電話機1を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態である押釦スイッチ装置8を模式的に示す部分縦断面図である。図3は、本発明の実施形態である導光板30を模式的に示す平面図である。図4は、照光部32aを説明する概略平面図である。図5は、図4の照光部32aを説明する概略B−B’断面図である。図6は、導光部16を示す縦断面図である。図7は、本発明の他の実施形態の押釦スイッチ装置を備えたカーナビゲーションシステム50を模式的に示す平面図である。図8は、カーナビゲーションシステム50に用いられる導光板64を模式的に示す平面図である。図9は、導光部材80と導光板30との組み合わせを模式的に示す縦断面図である。図10は、導光部材80の斜視図である。
【0034】
本発明の実施形態にかかる押釦スイッチ装置用導光板は、光源から発せられた光を導光する導光板であって、薄板状の透明ゴム成形体からなり、押釦の直下であって、該押釦とスイッチとの間に該押釦を照光する照光部を有する。
【0035】
本発明の実施形態にかかる押釦スイッチ装置は、複数の押釦と、該押釦に対応したスイッチと、該押釦と該スイッチの間に設けられ、光源から発せられた光を導光する導光板と、を有し、前記導光板は、薄板状の透明ゴム成形体からなり、かつ、前記押釦の直下であって、該押釦とスイッチとの間に該押釦を照光する照光部が形成される。
【0036】
1.折り畳み式携帯電話機
図1に示すように、本発明の実施形態の押釦スイッチ装置8を備えた折り畳み式携帯電話機1は、上筐体部3および下筐体部4からなり、上筐体部3の端部と下筐体部4の端部とは回転ユニット5により開閉可能に接続されている。上筐体部3の一方の面には画像を表示するLCD(液晶表示ディスプレー)2を備え、下筐体部4には押釦スイッチ装置8を内蔵し、例えばダイヤルキーや四方向キーなどの複数の押釦10が下筐体部4の一方の面に突出して設けられている。上筐体部3のLCD2と下筐体部4の押釦10とを内側にして折り畳むことができる。
【0037】
2.押釦スイッチ装置
図2は、図1の折り畳み式携帯電話機1の下筐体部4の一部の縦断面図であり、押釦スイッチ装置8を模式的に示している。下筐体部4の内部には、押釦スイッチ装置8として、複数の押釦10と、押釦10に対応したスイッチ22と、光源24から発せられた光を導光する導光板30と、を有し、導光板30は、薄板状の透明ゴム成形体からなり、かつ、押釦10の直下であって、押釦10とスイッチ22との間に押釦10を照光する照光部32が形成されている。
【0038】
下筐体部4の下方には回路基板20が設けられ、回路基板20は、光源24としてのLED(発光ダイオード)を端部に搭載し、複数の押釦10に対応した直下の位置にスイッチ22を搭載している。下筐体部4の上方には複数の押釦10が一体成形されたキーシート12が配置され、各押釦10の裏面にはキーシート12から突出した押圧子14が形成されている。キーシート12と回路基板20との間には、薄板状の透明ゴム成形体からなる導光板30が配置されている。したがって、特定の押釦10を押圧すると、押釦10の裏側の押圧子14が導光板30を介して押圧した押釦10に対応する回路基板20上のスイッチ22を押し、特定のスイッチ回路が開閉するようになっている。
【0039】
キーシート12は、透明な弾性材料である例えばシリコーンゴムやウレタン系の熱可塑性エラストマーからなり、押釦10と接合し、その反対側に押圧子14が接合している。この三部材が同質一体であってもよい。押釦10には文字や記号が印刷されている。キーシート12は押釦10を押圧した際に変形する必要があるため隣の押釦に影響しない程度の柔軟性を持つ弾性材料であることが好ましいが、押釦10や押圧子14はある程度の硬度を有する透明な樹脂成形体としてもよい。また、押釦10や押圧子14は、押釦10を所望の色で光らせるため、光源24の光によって励起する公知の蛍光体を含むことができる。
【0040】
3.導光板
導光板30は、薄板状の透明ゴム成形体であり、光源24からの光を効率よく導光するために、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、全光線透過率が90%以上であることがさらに好ましい。また、導光板30を構成する透明ゴム成形体は、側端部33から光源の光を導光できる厚さを有し、且つ、押釦10が押された際に柔軟に変形し、押圧された押釦10に対応するスイッチ22のみを押圧子14と導光板30を介して押さなければならない。つまり、導光板30が硬いと押圧された押釦10に隣接するスイッチ22まで誤って押すことになってしまうため、導光板30は所定の柔軟性を備えている必要がある。導光板30を構成する透明ゴム成形体は、充分な導光性と所定の柔軟性を備えるために、厚さが0.2mm〜1mmが好ましく、かつ、デュロメータA硬さが40度〜90度であることが好ましい。導光板30の厚さが0.2mm未満になると照光部の凹部を加工することが困難で、ハンドリング性も損うため好ましくなく、1mmを超えると押釦スイッチ装置の薄型化の点で実用的ではなく、厚みからくる剛度が増し好ましくない。また、導光板30のデュロメータA硬さは、透明ゴム成形体の透明性が得られるゴム領域であり、かつ、ハンドリング性を損わない必要があるため40度以上が好ましく、90度を超えると特定のスイッチのみが加圧され変形するフレキシビリティが損われるので90度以下が好ましい。
【0041】
本発明の透明ゴムのデュロメータA硬さを好ましく調整する方法としては、用いられる材料の分子設計を変更するほかにも加硫剤を配合したり、シリカのような透明微粒子を添加することによって、調節することができる。
【0042】
本発明の導光板30を構成する透明ゴム成形体は、隣の押釦を誤押しすることなく、特定する押釦とそれに対応するスイッチの間で変形し回復することができる柔軟性と弾性があって透明なシート形成能があるゴム質材料であれば特に限定するものでなく、スチレン系エラストマー、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。安定性、加工性などの点から、透明ゴム成形体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム及びウレタン系エラストマーから選ばれた少なくとも一つの透明ゴムで成形されることが好ましく、ウレタンゴムの中ではエーテル系ウレタンゴムが化学的安定性の点から好ましい。さらに、光源に近い照光部と遠い照光部とでも色位置が同じに値になるシリコーンゴムが好ましい。
【0043】
導光性のあるアクリル、ポリカーボネートなどのプラスチック樹脂は、弾性がある透明なシート形成能を有するが、ゴムのような柔らかさがないため、特定する押釦を押すと、隣接する押釦スイッチを誤押ししてしまい本発明には不向きである。
【0044】
導光板30は、各押釦10の直下であって、押釦10とスイッチ22との間に押圧子14を介して押釦10を照光する照光部32(図2においては32a〜32dで示す)を有する。照光部32は、透明ゴム成形体の表面に形成された複数の凹部または凸部を有することができ、本実施の形態においては凹部34が形成されている。凹部または凸部の形状については、導光板30の表面から光を効率よく反射させることのできる形状であれば特に限定されない。照光部32は、複数の押釦10に対応して複数箇所に配置され、凹部34の数や深さを変えることによって、光源24に近い照光部32aにおける反射率よりも光源24から遠い照光部32dにおける反射率の方が高くなるように形成されている。したがって、光源24から遠くなることによって導光板30によって導光される光量が減少しても、照光部32における反射率が高くなるので複数の押釦10を均一に照光することができ、押釦10の輝度をほぼ均一にすることができる。
【0045】
図3は、導光板30の概略平面図であり、本実施の形態においては、21個の押釦10に対応して21個の照光部32a〜32gを有し、凹部34は照光部32a〜32g内を横断する直線状の溝34として形成されている。なお、図3において、点線は照光部32の領域を目安として示し、矢印は光源からの光軸を示している。光源24に近い照光部32aにおける溝34の本数よりも光源24から遠い照光部32gにおける溝34の本数の方が多く形成されている。例えば、図3では、照光部32aにおける溝34は2本であり、光源24から遠い照光部になるに従って2本ずつ溝34が増え、照光部32gにおける溝34は14本形成されている。また、光源24に近い照光部32aにおける溝34の総面積よりも光源24から遠い照光部32gにおける溝34の総面積の方が広く形成されている。このように溝34の本数や面積によって照光部における反射率を適宜調整することができる。
【0046】
溝34は、レーザーマーキング加工によって形成されることができる。レーザーマーキング加工は、例えばYAGレーザーやCOレーザーを使用した一般的な各種レーザーマーキング装置を用いてレーザー光を照射することによって行うことができる。その際、予め各照光部32に合わせて所望の溝34の本数、幅、長さ、深さ(レーザー光照射時間)、角度などをレーザーマーキング装置で設定することで確実かつ容易にレーザーマーキング加工することができる。溝などの凹部や凸部を照光部に形成させる方法としては、レーザーマーキング加工がもっとも好ましい方法であるが、これに限らず、サンドブラスト加工、コロナ放電などで透明ゴム成形体の表面を掘り込む方法や、予め金型に凹部や凸部を形成しておいて透明ゴム成形体をプレス加工する際に成形する方法、あるいはスプレー印刷やスクリーン印刷などの印刷によって形成する方法などを適宜採用することができる。また、凹凸形状に限らず、例えば光の反射を利用した反射材として透明ゴム成形体に部分的に光散乱剤を埋め込む方法などを採用してもよい。
【0047】
導光板30の一方の側端部33には、回路基板20に配置された2つの光源24に当接して受光部31が2箇所形成されている。光源24から出射された光は、受光部31から導光板30へ入射し、受光部31に対向する他方の端部36に向かって導光板30内を進む。溝34は、光源24から出射された光の進行方向に対して左右に45度傾斜した直線状に導光板表面に形成され、一方の溝34aに対して他方の溝34bが直角に交差して格子パターンに形成されている。このように光源の光軸に対し溝34を斜めに配置することで、溝34に当たった光が光源24へ反射せず、他の照光部32へ導光することができ、光源24の光を効率よく利用することができる。その結果、導光板に導かれた光は溝34を刻んだ照光部32で反射することにより効率よく取り出される。
【0048】
図4および図5は、凹部34を円柱状に形成した本発明の他の実施形態の照光部32aを示す概略平面図及び概略断面図である。図4において矢印Aで示した光の進行方向に対して横方向に凹部34をずらして千鳥掛け状にドットパターンを配置することで、光を全ての凹部34に当てることができる。また、図5のように凹部34の深さを光の進む方向にそって徐々に深くしても光を効率よく利用できる。なお、凹部34の形状としては、直線状の溝、円柱状に限らず、多角形の柱状、星形柱状またはこれらの錘状であったり、略半球状でもよく、サンドブラスト加工の細かな凹凸であってもよい。
【0049】
図6は、押釦スイッチ装置8aの他の実施形態を示す縦断面図である。押釦10の裏側の押圧子14は、照光部32と接触する面に凹部または凸部が形成された導光部16を有している。例えば、図6では導光部16には凸部が形成されている。押圧子14の面の一部に凸部を設けることによって、導光板30を介して下方のスイッチ22を確実に押すことができる。
【0050】
透明ゴム成形体からなる導光板30は、他の面と密着すると密着した箇所から光を取り出すことができる。したがって、導光部16が照光部32に接触することで導光板30の照光部32から光を取り出すことができるので、導光板30における押釦10に対応した箇所を確実に照光させることができる。光源24からの押圧子14の距離によって導光部16の凸部の数や凸部と照光部32との接触面積を調節することでも、照光部32からの光の取出し量を調節できる。なお、押圧子14が導光板30に密着する部分以外の照光部32の光は、押圧子14及び押圧子14の周囲のキーシートからも透光して押釦10を照光する。
【0051】
また、本実施形態においては、光源24の発光部の幅が導光板30の厚さとほぼ同じであったが、光源24の発光部の幅の方が導光板30の厚さよりも大きい場合がある。その場合には、光源24からの光を効率よく導光板30へ入光させるために、例えば図9及び図10に示すように導光板30の受光部31と光源24の発光部との間に導光部材80を介在させてもよいし、導光板30の側端部33を光源24の発光部の幅まで厚くして受光部31を傾斜して形成してもよい。導光部材80は、例えば図9及び図10に示すように、光源24としてのLEDの発光部25が対向し密着する導光部材80の受光部82と、受光部82に対向する端部であって導光板30の受光部31と密着する密着部86と、導光部材80の受光部82から密着部86へ向かって傾斜する傾斜面84と、を有する。導光部材80の受光部82の厚さは、光源24の発光部25の幅より厚く、導光板30の受光部31に向かい傾斜面84に沿って薄くなるテーパ状である。また、導光部材80の幅は、導光部材80の受光部82側から導光板30の受光部31に向かって扇状に広がっている。密着部86は、導光部材80の薄く且つ広がった部分に形成され、導光板30の側端部33及び受光部31の上面に密着する縦断面L字状にきり欠かれて形成されている。したがって、光源24が発光した光は、導光部材80の受光部82から密着部86に導かれ、密着部86と密着する導光板30の受光部31から導光板30へと入射される。導光部材80は、導光板30の材質と同じでもよいし、他の透明な樹脂やゴムであってもよい。このような導光部材80を用いることで、光源24の幅が導光板30よりも厚い場合であっても、光源24の光を導光板30へ無駄なく入射させることができる。
【0052】
図9において、導光部材80の底面88は、導光板30と同一面に形成されており、回路基板20と並行した面に形成されたコンパクトな構造となっているが、導光板30を挟む形の上下対照の導光部材であってもよい。導光板30と回路基板20との間には、作業性の観点から、不織布、紙、多孔フィルムなど導光板30に密着しないスペーサーを配置することもできる。
【0053】
本実施形態においては、光源としてLEDを用いたが、他の発光素子例えば有機ELや蛍光灯などを光源としてもよく、用途に応じて適宜選択することができる。また、光源としてLEDを用いた場合、LEDの発光部を蛍光体を含むゴムシートで被覆したり貼付することにより、LEDの特定単色光の波長を変換してから導光板に導くことも可能である。また、本実施形態においては、折り畳み式携帯電話機1の押釦スイッチ装置8について説明したが、これに限らず、LCDと押釦が同一面に形成された携帯電話機やコードレス電話機、リモートコントローラ、カーオーディオ、カーナビゲーションシステムなどの押釦スイッチ装置を備えた機器に採用することができる。例えば、図7に示すようなカーナビゲーションシステム50の押釦スイッチ装置58にも採用することができる。カーナビゲーションシステム50は、本体53の中央に地図を表示するためのLCD52が配置され、その両側に複数の押釦55が縦に並んで配置されている。押釦スイッチ装置58は、折り畳み式携帯電話機1の押釦スイッチ装置8と基本的に同様の構成を有し、本体53の内部には、押釦スイッチ装置58として、複数の押釦55と、押釦55に対応した図示せぬスイッチと、例えば蛍光灯の光源60から発せられた光を導光する導光板64と、を有している。導光板64は、透明な薄板状の透明ゴム成形体からなり、かつ、押釦55の直下であって、押釦55と図示せぬスイッチとの間に押釦55を照光する照光部62が形成されている。図8に示すように、導光板64は、LCD52の領域を除く逆U字状をなし、LCD52の対応領域に切り欠き部70が形成され、その両側には縦方向に並んで複数の照光部62が配置されている。左右の照光部62群には、それぞれ導光板64の上端に例えば光源60としてのLEDが配置されている。なお、照光部62には、例えば図4及び図5に示したような円柱状の凹部が千鳥掛け状に配置され、光源60に近い照光部62における凹部の数よりも光源60から遠い照光部62における凹部の数の方が多く形成されることで、照光部62における反射率が調整されている。したがって、光源60から遠くなることによって導光板64によって導光される光量が減少しても、照光部62における反射率が高くなるので複数の押釦62の輝度をほぼ均一にすることができる。
【実施例1】
【0054】
図3に示すような導光板30を試作した。導光板30は、デュロメータA硬さ40度、全光線透過率が94%以上の超透明シリコーンゴムを用いてプレス加工して得られた厚さ0.4mmの成形体であって、点線で囲まれた楕円形の照光部32が3列×7行の21個形成された。照光部32の直線状の溝34は、レーザーマーキングによって加工され、深さ約5μm、溝幅0.1mmであって、光源24から光源24と対向する他の端部36へ向かって真っ直ぐに伸びる光の進行方向に対して左右に45度の傾きを持つ格子パターンに形成された。溝34の数は、照光部32aが2本、照光部32bが4本、照光部32cが6本、照光部32dが8本、照光部32eが10本、照光部32fが12本、照光部32gが14本であった。
【0055】
導光板30の受光部31に光源24として青色LEDを配置し、導光板30の端部から光を入射したところ、各照光部32の光の見え方がほぼ均一であった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態の押釦スイッチ装置を備えた折り畳み式携帯電話機1を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である押釦スイッチ装置8を模式的に示す部分縦断面図である。
【図3】本発明の実施形態である導光板30を模式的に示す平面図である。
【図4】照光部32aを説明する概略平面図である。
【図5】図4の照光部32aの概略B−B’断面図である。
【図6】導光部16を示す縦断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態の押釦スイッチ装置を備えたカーナビゲーションシステム50を模式的に示す平面図である。
【図8】カーナビゲーションシステム50に用いられる導光板64を模式的に示す平面図である。
【図9】導光部材80と導光板30との組み合わせを模式的に示す縦断面図である。
【図10】導光部材80の斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 折り畳み式携帯電話機
2 LCD
3 上筐体部
4 下筐体部
5 回転ユニット
8 押釦スイッチ装置
10 押釦
12 キーシート
14 押圧子
16 導光部
20 回路基板
22 スイッチ
24 光源(LED)
30 導光板
31 受光部
32 照光部
33 側端部
34 凹部(溝)
36 端部
50 カーナビゲーションシステム
52 LCD
53 本体
55 押釦
58 押釦スイッチ装置
60 光源
64 導光板
62 照光部
70 切り欠き部
80 導光部材
82 受光部
84 傾斜面
86 密着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発せられた光を導光する導光板であって、
薄板状の透明ゴム成形体からなり、
押釦の直下であって、該押釦とスイッチとの間に該押釦を照光する照光部を有する押釦スイッチ装置用導光板。
【請求項2】
請求項1において、
前記照光部は、複数の前記押釦に対応して複数箇所に配置され、
前記光源に近い前記照光部における反射率よりも前記光源から遠い前記照光部における反射率の方が高い押釦スイッチ装置用導光板。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記照光部は、前記透明ゴム成形体の表面に形成された複数の凹部または凸部を有する押釦スイッチ装置用導光板。
【請求項4】
請求項2において、
前記照光部は、前記透明ゴム成形体の表面に形成された複数の凹部を有し、
前記光源に近い前記照光部における前記凹部の数よりも前記光源から遠い前記照光部における前記凹部の数の方が多く形成された押釦スイッチ装置用導光板。
【請求項5】
請求項2において、
前記照光部は、前記透明ゴム成形体の表面に形成された複数の凹部を有し、
前記光源に近い前記照光部における前記凹部の総面積よりも前記光源から遠い前記照光部における前記凹部の総面積の方が大きく形成された押釦スイッチ装置用導光板。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記凹部は、レーザーマーキング加工によって形成された押釦スイッチ装置用導光板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記透明ゴム成形体は、全光線透過率が80%以上である押釦スイッチ装置用導光板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記透明ゴム成形体は、厚さが0.2mm〜1mmであり、かつ、デュロメータA硬さが40度〜90度である押釦スイッチ装置用導光板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記透明ゴム成形体は、シリコーンゴム、ウレタンゴム及びウレタン系エラストマーから選ばれた少なくとも一つの透明ゴムで成形された押釦スイッチ装置用導光板。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、
携帯電話機に用いられる押釦スイッチ装置用導光板。
【請求項11】
複数の押釦と、該押釦に対応したスイッチと、該押釦と該スイッチの間に設けられ、光源から発せられた光を導光する導光板と、該導光板の側端部に設けられた光源と、を有し、
前記導光板は、薄板状の透明ゴム成形体からなり、かつ、前記押釦の直下であって、該押釦とスイッチとの間に該押釦を照光する照光部が形成された押釦スイッチ装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記押釦は、前記光源の光によって励起する蛍光体を含む押釦スイッチ装置。
【請求項13】
請求項11または12において、
前記押釦は、前記照光部と接触している面に凹部または凸部が形成された導光部を有する押釦スイッチ装置。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれかにおいて、
携帯電話機に用いられる押釦スイッチ装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−34337(P2008−34337A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295796(P2006−295796)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】