説明

指紋歪み検出装置を備える指紋照合装置

【課題】
本発明は、指紋照合装置に関し、特に、被認証者が故意に指紋を歪めて指紋照合を失敗させようとする場合に、故意に指紋を歪めていることを検出できるようにする。
【解決手段】
本発明は、指紋照合において、被認証者が指紋読取面に指を置いた際に、指に必要以上に大きな力を加える、指を引きずる、回転させる等の故意に指紋を歪めたことを検出する指紋歪み検出装置により、歪んだ指紋画像の入力を防ぐことができ、指紋照合率が上昇する指紋照合装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指紋照合装置に関し、特に、被認証者が故意に指紋を歪めて指紋照合を失敗させようとする場合に、被認証者が故意に指紋を歪めていることを検出する指紋歪み検出装置を備える指紋照合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各国の出入国審査は、厳密になりつつある。最近では、バイオメトリクスを用いて出入国者の厳密な審査を行う構想が提案された。この構想は、入国審査時に、入国者の指紋画像と顔画像を取得し、バイオメトリクス認証を用いて、要注意人物リストに入国者が含まれるか否かを判定するものである。また、パスポートにICチップを埋め込み、出入国者の個人情報と共に、指紋画像や顔画像等のバイオメトリクス情報を記録し、パスポート所持者が本人であるか否かを厳密に確認することも提案されている。さらに、パスポートの電子化により、機械読み込みが可能となるため、セルフサービスによる迅速な入国審査を行う構想も提案されている。セルフサービスの入国審査とは、無人の入国審査ブースで、入国者がパスポートの機械読み込み、指紋画像と顔画像のバイオメトリクス情報入力を行い、入国審査を受けるものである。このように入国審査を無人で行う場合は、バイオメトリクスによるパスポート所持者の本人確認と要注意人物リストとの照合が重要となる。
【0003】
従来から指紋照合の精度を上昇させるため様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、指紋照合装置の指紋読取面にかかる被認証者の指先の力が弱すぎたり、強すぎたりする場合は指紋の正確な検知ができないため、常に一定の力が指紋読取面にかかった時点で指紋検出を行う技術がある(特許文献1)。
【0005】
また、例えば、人体部位を読取位置に拘束した状態で生体データを読み取ることにより、被認証者が指紋照合装置の操作に不慣れな場合でも、生体データを良好に読み取る技術がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平11-225998号公報
【特許文献2】特開2003-058870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の指紋照合装置は本人確認の用途に使用されてきた。本人確認の用途では、被認証者が指紋照合を行い、何らかの理由で本人と確認されなかった場合、被認証者は再び指紋照合を行ったり、本人確認代替手段に切り替えたりしていた。指紋照合が失敗すると、その不利益を被るのは被認証者本人であるため、被認証者は指紋照合が成功するように自ら指紋照合装置の指紋読取面に指を置き直すなどの対応を取っていた。
【0007】
一方、従来の指紋照合装置を要注意人物発見の用途に使用する場合は、要注意人物リストに予め保存された指紋画像と被認証者の指紋画像が一致するか否かを確実に判定しなければならない。被認証者が要注意人物である場合、指紋照合が成功すること、つまり、要注意人物であると判定されることは、被認証者本人にとって望ましくないことである。従って、要注意人物は故意に指紋を歪めるなどの指紋照合を失敗させるための行動を取る可能性がある。しかしながら、指紋照合装置の照合性能には限界があり、被認証者が故意に指紋を歪めると指紋照合に失敗する確率が上昇する。指紋照合が失敗すれば、被認証者は要注意人物ではないと判定されてしまう。その場合、被認証者が要注意人物であるにも関わらず取り逃がしてしまうことになる。
【0008】
本発明の目的は、従来技術の課題を解決するもので、被認証者が指を指紋読取面に不適切に置いたことを検出する指紋歪み検出装置を指紋照合装置に備え付ける。この装置により、被認証者が指を指紋読取面に強く押し当て指紋を歪ませるなど、不適切に指を置いた場合に、指の置き直しを促したり、第三者に通知したりすることが可能となる。そのため、歪んだ指紋画像が指紋照合装置に流入することを防止することができ、要注意人物を発見できる確率が上昇する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、指紋センサの指紋読取面に置かれた指の指紋画像を読み取り、前記指紋画像を予め登録された指紋画像と照合する指紋照合装置において、前記指紋センサの指紋読取面に指が適切に置かれているか否かを検出する指紋歪み検出装置と、前記指紋歪み検出装置が指が適切に置かれていないことを検出した場合、第三者に通知する通知装置とを有することを特徴とする指紋照合装置である。これによれば、指紋照合装置に、被認証者の指が不適切に指紋読取面に置かれたか否かを判定する指紋歪み検出装置を取り付けたため、被認証者が指を不適切に置いた場合に、指の置き直しを促したり、第三者に通知したりすることができ、歪んだ指紋画像が指紋照合装置に流入することを防ぐことができる。また、歪んだ指紋画像が指紋照合装置に流入しないため、歪んだ指紋画像に基づいて指紋照合を行う動作を省略することができ、指紋照合装置の作業効率が上昇する。
【0010】
また、本発明は、指紋センサの指紋読取面に置かれた指の指紋画像を読み取り、前記指紋画像を予め登録された指紋画像と照合する指紋照合装置において、指とともに移動する部材に対し、指とともに移動した前記部材の変化量を検出する指紋歪み検出装置と、前記指紋歪み検出装置が、前記変化量が所定の値以上であることを検出した場合、第三者に通知する通知装置とを有することを特徴とする指紋照合装置である。これによれば、指紋照合装置に、被認証者の指が不適切に指紋読取面に置かれたか否かを判定する指紋歪み検出装置を取り付けたため、被認証者が指を不適切に置いた場合に、指の置き直しを促したり、第三者に通知したりすることができ、歪んだ指紋画像が指紋照合装置に流入することを防ぐことができる。また、歪んだ指紋画像が指紋照合装置に流入しないため、歪んだ指紋画像に基づいて指紋照合を行う動作を省略することができ、指紋照合装置の作業効率が上昇する。
【0011】
また、本発明は、指紋センサの指紋読取面に置かれた指の指紋画像を読み取り、前記指紋画像を予め登録された指紋画像と照合する指紋照合装置において、前記指紋センサの指紋読取面に指が適切に置かれているか否かを検出する指紋歪み検出装置と、要注意人物の指紋画像が登録された要注意人物指紋画像データベースと、前記指紋画像が前記要注意人物指紋画像データベースに登録された指紋画像に一致するか否かを検索する指紋検索装置と、前記指紋歪み検出装置が指が適切に置かれていないことを検出した場合、または、前記指紋画像が前記要注意人物指紋画像データベースに登録された指紋画像と一致した場合、第三者に通知する通知装置とを有することを特徴とする指紋照合装置である。これによれば、指紋照合装置に、被認証者の指が不適切に指紋読取面に置かれたか否かを判定する指紋歪み検出装置を取り付けたため、被認証者が指を不適切に置いた場合、または、被認証者の指紋画像が要注意人物指紋画像データベースに登録された指紋画像と一致した場合に、第三者に通知することができ、歪んだ指紋画像が指紋照合装置に流入せず、要注意人物を発見できる確率が上昇する。
【0012】
また、本発明は、指紋読取面に置かれた指の指紋画像を読み取る指紋センサにおいて、前記指紋センサの指紋読取面に指が適切に置かれているか否かを検出する指紋歪み検出装置を有することを特徴とする指紋センサである。これによれば、指紋センサが、被認証者の指が不適切に指紋読取面に置かれたか否かを判定する指紋歪み検出装置を有するため、指紋センサが歪んだ指紋画像を取得する確率が減少する。
【0013】
また、本発明は、前記指紋歪み検出装置が、指が適切に置かれていないことを検出した場合、検出した回数が所定回数以下か否かを判定し、前記検出した回数が所定回数以下だった場合、指の置き直しを許容することを特徴とする指紋照合装置である。これによれば、指紋照合装置の操作に慣れていない被認証者を故意に指を不適切に置いている人物と判定することを防止できる。
【0014】
また、本発明は、前記指紋歪み検出装置が、一定時間内に、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれたことを検出できなかった場合、前記指紋センサは被認証者の指の指紋画像を読み取らなくなることを特徴とする指紋照合装置である。これによれば、被認証者が指を一定時間内に適切に置かなければ、指紋照合装置は指紋画像を読み取らなくなるため、被認証者が一定時間内に指を適切に置くことを促すことができる。
【0015】
また、本発明は、前記指紋センサの指紋読取面上に配置、固定され、被認証者の指の動きを検出する歪み量検出用パターンを有する透明弾性膜を備え、前記指紋歪み検出装置は、前記歪み量検出用パターンの移動量を計測することで、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれているか否かを判定することを特徴とする指紋歪み検出装置である。これによれば、被認証者が指に必要以上に大きな力をかけたりした場合、透明弾性膜の歪み量検出用パターンが変形するため、この変形を観察することで、被認証者が適切に指を置いたか否かを判定することができる。
【0016】
また、本発明は、前記指紋センサの指紋読取面上に配置、半固定され、被認証者の指の動きを検出する移動量検出用パターンを有する透明板を備え、前記指紋歪み検出装置は前記移動量検出用パターンの移動量を計測することで、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれているか否かを判定することを特徴とする指紋歪み検出装置である。これによれば、被認証者が指に必要以上に大きな力をかけたりした場合、移動量検出用パターンが透明板とともに動くため、この移動量検出用パターンの移動量を計測することで、被認証者が適切に指を置いたか否かを判定することができる。
【0017】
また、本発明は、前記指紋センサの指紋読取面上に配置、半固定された透明板を有し、 前記指紋歪み検出装置は前記透明板に加わる圧力を計測することで、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれているか否かを判定することを特徴とする指紋歪み検出装置である。これによれば、被認証者が指に必要以上に大きな力をかけたりした場合、圧力が変化するため、この圧力変化を計測することで、被認証者が適切に指を置いたか否かを判定することができる。
【0018】
また、本発明は、前記指紋センサは、台座に半固定され、前記指紋センサは、被認証者の指の動きを検出する移動量検出用パターンを有し、前記指紋歪み検出装置は、前記移動量検出用パターンの移動量を計測することで、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に指が置かれているか否かを判定することを特徴とする指紋歪み検出装置である。これによれば、被認証者が指に必要以上に大きな力をかけたりした場合、指紋センサは弾性体の上に固定されているため動き、それとともに移動距離検出用パターンも動くため、この移動距離検出用パターンを観察することで、被認証者が適切に指を置いたか否かを判定することができる。
【0019】
また、本発明は、前記指紋センサは、台座に半固定され、前記指紋歪み検出装置は、前記指紋センサに加わる圧力を計測することで、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれているか否かを判定することを特徴とする指紋歪み検出装置である。これによれば、被認証者が指に必要以上に大きな力をかけたりした場合、圧力が変化するため、この圧力変化を計測することで、被認証者が適切に指を置いたか否かを判定することができる。
【発明の効果】
【0020】
指紋照合装置に、被認証者が指を指紋読取面に不適切に置いたことを検出する指紋歪み検出装置を備え付け、被認証者の指が不適切に置かれたことを検出した場合、指の置き直しの促しや第三者に通知することができるようにする。この装置により、歪んだ指紋画像が指紋照合装置に流入することを防止することができ、要注意人物を発見できる確率が上昇する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明の構成の一例を簡略的に示すブロック図である。本発明は、被認証者が指紋読取面に指を置いてから静止させるまでの時間を監視しているタイマ監視部1、被認証者によるパスポートの読み込みを受け付けるパスポートリーダ2、被認証者へ操作方法などの指示のメッセージを表示する表示部10と、被認証者が故意に指紋を歪めようとしているか否かを検出する指紋歪み検出装置9と、被認証者の指紋画像を取得する指紋センサ8と、取得された指紋画像と一致する指紋画像を、要注意人物の指紋画像がデータベース化された要注意人物指紋画像DB6から検索する指紋検索装置4と、指紋歪み検出装置9が被認証者が故意に指紋を歪めようとしたことを検出した場合や指紋検索装置4が取得された指紋画像と一致する指紋画像を要注意人物指紋画像DB6から検出した場合に第三者に通知する通知装置5とが、制御部3に接続されている。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施の形態における指紋照合装置の動作を図面を用いて説明する。
【0024】
パスポートリーダ2についての処理を図3を参照しつつ説明する。
【0025】
ステップS001において、パスポートリーダ2は被認証者によってパスポートが読み込まされたか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、パスポートが読み込まされたため、処理はステップS002へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS001に戻る。
【0026】
ステップS002において、パスポートリーダ2は制御部3にパスポート読み込みがあったことを通知する。処理は終了する。
【0027】
制御部3についての処理を図4を参照しつつ説明する。
【0028】
ステップS003において、制御部3はパスポートリーダ2からパスポート読み込み通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、パスポート読み込み通知があったため、処理はステップS004へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS003に戻る。
【0029】
ステップS004において、制御部3は被認証者に指を指紋読取面へ置くことを促すため、表示部10上に指示のメッセージを表示する。処理は終了する。
【0030】
ここで指紋歪み検出装置9について説明する。
【0031】
被認証者が故意に指紋を歪める時には、指先を指紋読取面に当てる際、指に必要以上に大きな力を加えて隆線を潰す、指を引きずる、回転させる等の行動を取る。被認証者の指先の皮膚が歪むと、指紋センサは歪んだ指紋画像を取得することになる。歪んだ指紋画像が流入すると、指紋照合失敗の原因となってしまう。従って、指紋照合失敗を防ぐには、指紋センサが歪んだ指紋画像を取得しないようにする必要がある。そのためには、被認証者が指先に必要以上に大きな力を加えているか否か等を判定し、故意に指紋を歪めようとする行為を検出すればよい。
【0032】
指紋歪み検出装置9の構成を図24、25を参照しつつ説明する。図24は指紋歪み検出装置を横方向から、図25は上方向から見た図である。
【0033】
図25に示すように、伸縮性のある透明透明フィルム41の四隅をフィルム固定脚42で固定する。透明フィルム41の一部領域には市松模様等のフィルム歪み量を検出するためのフィルム歪み量検出用パターン47が印刷されている。
【0034】
図24に示すように、透明フィルム41は指紋読取面に密着させるのではなく、指紋読取面との間に空間が生じるようにフィルム固定脚42で固定する。空間を生じさせるのは、被認証者が指を置いた時に透明フィルム41を歪ませることで、指の動きを検出するためである。しかし、指紋読取面と透明フィルム41の間に空間が生じていたのでは、光線の乱反射や屈折率の不整合により明瞭な指紋画像が取得できなくなる。そこで、指紋読取面と透明フィルム41の間に屈折率整合剤46を充填する。この充填によって、透明フィルム41を通過した光が透明フィルム41や指紋読取面の凹凸で乱反射されにくくなり、明瞭な指紋画像が取得できるようになる。
【0035】
フィルム歪み量検出用パターン47の直下にはフィルム歪み量検出装置43が設置されている。フィルム歪み量検出装置43は図2(a)に示すように光学レンズ系11、撮像素子12、記憶部13、演算部14、制御部15で構成される。撮像素子12は光学レンズ系11を通してフィルム歪み量検出用パターン47の画像を撮像し、撮像された画像を記憶部13に保存する。演算部14は、記憶部13に保存された画像の相関演算等の各種演算を行う。なお、これらの動作を制御部15が制御している。
【0036】
被認証者が指を指紋読取面に置くと、透明フィルム41は指紋読取面との間に空間があるため歪む。この歪みを用いて被認証者が指を指紋読取面に適切に置いているか否かを判定する。被認証者が適切に指を置いた場合、透明フィルム41は大きく歪まず、フィルム歪み量検出用パターン47も大きく変形・移動しない。これに対し、被認証者が故意に指紋を歪めようとして、指を引きずったり、回転させたりすると、指先に大きな力が加わる。このため、透明フィルム41は大きく歪み、フィルム歪み量検出用パターン47も大きく変形する。例えば、被認証者が指を指先方向に引きずる場合、透明フィルム41が指先方向に伸び、図26(a)に示すようにフィルム歪み量検出用パターン47が変形・移動する。また、被認証者が指先を回転させた場合、図26(b)に示すようにフィルム歪み量検出用パターン47が変形・移動する。
【0037】
指紋歪み検出装置9についての処理を図5を参照しつつ説明する。
【0038】
ステップS005において、撮像素子12は時刻tにおけるフィルム歪み量検出用パターンPt(x,y)を取得する。処理はステップS006へ移行する。
【0039】
ステップS006において、撮像素子12は取得したフィルム歪み量検出用パターンPt(x,y)を記憶部13へ保存する。処理はステップS007へ移行する。
【0040】
ステップS007において、演算部14は時刻t、t-1で取得されたフィルム歪み量検出用パターンPt(x,y)とPt-1(x,y)の相関演算を実施し、時刻t、t-1間におけるフィルム歪み量検出用パターンの微小移動量(ΔXt,ΔYt)を決定する。処理はステップS008へ移行する。なお、相関演算法を用いて相関演算結果からt、t-1間におけるフィルム歪み量検出用パターンの移動量を求めることができる。
【0041】
ステップS008において、演算部14はt、t-1間におけるフィルム歪み量検出用パターンの微小移動量(ΔXt,ΔYt)=(0,0)であるか否かを判定する。被認証者により指紋読取面に指が置かれた場合、フィルムが歪むため、フィルム歪み量検出用パターンが変形する。この変形により、微小移動量(ΔXt,ΔYt)の値が変化する。この値が0から変化した瞬間を被認証者が指を置いた状態と判定する。この判定が否定的であった場合は、被認証者により指が指紋読取面に置かれたため、処理はステップS009へ移行する。一方、この判定が肯定的であった場合は、処理はステップS005に戻る。
【0042】
ステップS009において、指紋歪み検出装置9は制御部3へタイマスタート通知をする。本実施例では、被認証者が指紋読取面に指を置き始めてから、指を安定させるまでに一定時間以上かかると、指紋センサは被認証者の指紋画像を読み取らなくなる。そのための時間計測を行う。処理は終了する。
【0043】
制御部3についての処理を図6を参照しつつ説明する。
【0044】
ステップS010において、制御部3は指紋歪み検出装置9からタイマスタート通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、通知があったため、処理はステップS011へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS010に戻る。
【0045】
ステップS011において、制御部3はタイマ監視部1を起動する。処理は終了する。
【0046】
タイマ監視部1についての処理を図7を参照しつつ説明する。
【0047】
ステップS012において、タイマ監視部1は制御部3から起動通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、起動通知があったため、処理はステップS013へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理者ステップS012に戻る。
【0048】
ステップS013において、タイマ監視部1は現在の時刻を取得する。処理はステップS014へ移行する。
【0049】
ステップS014において、タイマ監視部1は制御部3にタイマスタート完了通知を行う。処理は終了する。
【0050】
制御部3についての処理を図8を参照しつつ説明する。
【0051】
ステップS015において、制御部3はタイマ監視部1からタイマスタート完了通知があった否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、通知があったため、処理はステップS016へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS015に戻る。
【0052】
ステップS016において、制御部3は指紋歪み検出装置9へタイマスタートしたことを通知する。処理は終了する。
【0053】
指紋歪み検出装置9についての処理を図9を参照しつつ説明する。
【0054】
ステップS017において、指紋歪み検出装置9は、制御部3よりタイマスタート通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、通知があったため、処理はステップS018へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS017に戻る。
【0055】
ステップS018において、撮像素子12は時刻tにおけるフィルム歪み量検出用パターンPt(x,y)を取得する。処理はステップS019へ移行する。
【0056】
ステップS019において、撮像素子12は取得したフィルム歪み量検出用パターンPt(x,y)を記憶部13へ保存する。処理はステップS020へ移行する。
【0057】
ステップS020において、演算部14は時刻t、t-1で取得されたフィルム歪み量検出用パターンPt(x,y)とPt-1(x,y)の相関演算を実施し、時刻t、t-1間におけるフィルム歪み量検出用パターンの微小移動量(ΔXt,ΔYt)を決定する。処理はステップS021へ移行する。
【0058】
ステップS021において、演算部14はステップS020において決定されたフィルム歪み量検出用パターンの微小移動量(ΔXt,ΔYt)を記憶部13に保存する。処理はステップS022へ移行する。
【0059】
ステップS022において、演算部14はt、t-1間におけるフィルム歪み量検出用パターンの微小移動量(ΔXt,ΔYt)=(0,0)であるか否かを判定する。被認証者により指紋読取面に指が適切に置かれた場合、指の動きが安定するため、この値が再び0になる。この値が再び0になった瞬間を被認証者の指が適切に置かれた状態と判定している。この判定が肯定的であった場合は、被認証者により指が適切に置かれたため、処理はステップS023へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS018に戻る。
【0060】
ステップS023において、指紋歪み検出装置9は制御部3へタイマストップ通知を行う。処理は終了する。
【0061】
制御部3についての処理を図10を参照しつつ説明する。
【0062】
ステップS024において、制御部3は指紋歪み検出装置9よりタイマストップ通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、通知があったため、処理はステップS025へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS024に戻る。
【0063】
ステップS025において、制御部3はタイマ監視部1に指紋歪み検出装置9よりタイマストップ通知があったことを通知する。
【0064】
タイマ監視部1についての処理を図11を参照しつつ説明する。
【0065】
ステップS026において、タイマ監視部1は制御部3よりタイマ監視部への通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、通知があったため、処理はステップS027へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS026に戻る。
【0066】
ステップS028において、タイマ監視部1は現在の時刻を取得する。処理はステップS028へ移行する。
【0067】
ステップS027において、タイマ監視部1はステップS013において取得した時刻と、ステップS027において取得した時刻から、被認証者が一定時間内に指を安定させたか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、被認証者が一定時間内に指を安定させたため、処理はS029へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS030へ移行する。
【0068】
ステップS029において、タイマ監視部1は制御部3にタイマストップ完了通知を行う。処理は終了する。
【0069】
ステップS030において、タイマ監視部1は制御部3に被認証者により指が一定時間内に適切に置かれなかったことを通知する。処理は終了する。
【0070】
制御部3についての処理を図12を参照しつつ説明する。
【0071】
ステップS031において、制御部3はタイマ監視部1よりタイマストップ完了通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、通知があったため、処理はステップS032へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS031に戻る。
【0072】
ステップS032において、制御部3は指紋歪み検出装置9へタイマストップが完了したことを通知する。処理は終了する。
【0073】
指紋歪み検出装置9についての処理を図13を参照しつつ説明する。
【0074】
ステップS033において、指紋歪み検出装置9は、制御部3よりタイマストップ完了通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、通知があったため、処理はステップS034へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS033に戻る。
【0075】
ステップS034において、演算部14は図9のステップS018からステップS022のループにおいて保存されたフィルム歪み量検出用パターンの微小移動量(ΔXt,ΔYt)の総和を取る。処理はステップS035へ移行する。
【0076】
ステップS035において、演算部14は、被認証者が指を指紋読取面に置いてから指が安定するまでの間のフィルム歪み量検出用パターンの移動距離の総和が一定値以下か否かを判定する。つまり、図9のステップS018からステップS022のループにおいて、記憶部13に保存された歪み量検出用パターンの微小移動量(ΔXt,ΔYt)の総和が一定値以下か否かを判定する。この移動距離の総和は、被認証者が指を置いてから安定させるまでの間に指を回転させるなどの不適切な行為を行った場合、不適切な行為の分だけ値が大きくなる。そこで、ある一定値を設定しておき、この値を超えた場合、被認証者が指を安定させるまでに不適切な行為を行ったと判定する。この判定が肯定的であった場合は、被認証者により適切に指が置かれたため、処理はステップS036へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS037へ移行する。
【0077】
ステップS036において、指紋歪み検出装置9は制御部3へ指紋歪み検出が完了したことを通知する。処理は終了する。
【0078】
ステップS037において、指紋歪み検出装置9は指紋を歪めたと判定した回数を1回加算して記憶する。処理はステップS038へ移行する。
【0079】
ステップS038において、指紋歪み検出装置9は被認証者が故意に指紋を歪めたと判定された回数が所定回数(本実施例では3回)以下か否かを判定する。この判定が肯定的である場合は、被認証者が故意に指紋を歪めたと判定された回数が所定回数以下のため、処理は図5のステップS005に戻る。一方、この判定が否定的である場合は、処理はステップS039へ移行する。このように、被認証者が故意に指紋を歪めたと判定された回数に猶予を持たせているのは、例えば、指紋照合装置を初めて使用する被認証者は、指の置き方が不慣れなため、必要以上に大きな力を指先にかけてしまう場合があるからである。そこで、故意に指紋を歪めたと判定された回数が所定回数以下の場合は、被認証者に必要以上に大きな力が指先にかかっていた旨を通知する。被認証者は必要に応じて指紋読取面に指を置き直すことができる。また、このような通知をしたにも関わらず、指紋を歪めたと判定された回数が所定回数を超えた場合は、被認証者は故意に指紋を歪めたと判定する。
【0080】
ステップS039において、指紋歪み検出装置9は制御部3へ指紋歪み検出が完了したことを通知する。処理は終了する。
【0081】
制御部3についての処理を図14を参照しつつ説明する。
【0082】
ステップS040において、制御部3は指紋歪み検出装置9から指紋歪み検出完了通知があった否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、指紋歪み検出完了通知があったため、処理はステップS041へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS040に戻る。
【0083】
ステップS041において、制御部3は指紋センサ8を起動する。処理は終了する。
【0084】
指紋センサ8についての処理を図15を参照しつつ説明する。
【0085】
ステップS042において、指紋センサ8は制御部3から起動通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、起動通知があったため、処理はステップS043へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS042に戻る。
【0086】
ステップS043において、指紋センサ8は指紋画像を取得する。処理はステップS044へ移行する。
【0087】
ステップS044において、指紋センサ8は指紋画像を指紋画像記憶バッファ7に保存する。処理はステップS045へ移行する。
【0088】
ステップS045において、指紋センサ8は指紋画像保存が完了したことを制御部3へ通知する。処理は終了する。
【0089】
制御部3についての処理を図16を参照しつつ説明する。
【0090】
ステップS046において、制御部3は指紋センサ8から指紋画像保存完了通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、指紋画像保存完了通知があったため、処理はステップS047へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS046に戻る。
【0091】
ステップS047において、制御部3は指紋検索装置4を起動する。処理は終了する。
【0092】
指紋検索装置4についての処理を図17を参照しつつ説明する。
【0093】
ステップS048において、指紋検索装置4は制御部3から起動通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、起動通知があったため、処理はステップS049へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS048に戻る。
【0094】
ステップS049において、指紋検索装置4は指紋画像記憶バッファ7に保存された被認証者の指紋画像を取得する。処理はステップS050へ移行する。
【0095】
ステップS050において、指紋検索装置4はステップS049において取得した被認証者の指紋画像が要注意人物指紋画像DB6に予め保存された個々の指紋画像と一致するか否かを判定する。一致する画像がある場合は、被認証者は要注意人物と判定され、処理はステップS052へ移行する。一方、一致する画像がない場合は、処理はステップS051へ移行する。
【0096】
ステップS051において、指紋検索装置4は制御部3に指紋照合が完了したこと(一致する指紋画像がない)を通知する。処理は終了する。
【0097】
ステップS052において、指紋検索装置4は制御部3に指紋照合が完了したこと(一致する指紋がある)を通知する。処理は終了する。
【0098】
制御部3についての処理を図18を参照しつつ説明する。
【0099】
ステップS053において、制御部3は指紋検索完了通知(一致する指紋がない)があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、指紋検索完了通知があったため、処理はステップS054へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS053に戻る。
【0100】
ステップS054において、制御部3は表示部10に被認証者への通過許可を表示させる。処理は終了する。
【0101】
制御部3についての処理を図19を参照しつつ説明する。
【0102】
ステップS055において、制御部3は指紋検索完了通知(一致する指紋がある)があったか否か、または指紋歪み検出装置9より、被認証者が指紋を歪めたと判定された回数が所定回数以上であることの通知があるか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、指紋検索完了通知、または、被認証者が故意に指紋を歪めたことの通知があったため、処理はステップS056へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS055に戻る。
【0103】
ステップS056において、制御部3は通知装置を起動する。処理は終了する。
【0104】
制御部3についての処理を図20を参照しつつ説明する。
【0105】
ステップS057において、制御部3は指紋歪み検出装置9から、被認証者が一定時間内に指を安定させなかったことの通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、通知があったため、処理はステップS058へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS057に戻る。
【0106】
ステップS058において、制御部3は指紋センサを終了する。指紋センサ8の終了により、被認証者は指紋センサ8へ指紋画像を読み込ませることができなくなる。処理は終了する。
【0107】
通知装置5についての処理を図21を参照しつつ説明する。
【0108】
ステップS059において、通知装置5は、制御部3から起動通知があったか否かを判定する。この判定が肯定的であった場合は、通知があったため、処理はステップS060へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS059に戻る。
【0109】
ステップS060において、通知装置5は係員へ、被認証者が故意に指紋を歪めたため、指紋画像を取得できなかったこと、または、被認証者の指紋画像が要注意人物DB6に保存された指紋画像と一致したことを通知する。処理は終了する。
【実施例2】
【0110】
実施例1の指紋歪み検出装置9を他の構成にすることも考えられる。本実施例で用いる指紋歪み検出装置について、図27、28を参照しつつ説明する。図27は指紋歪み検出装置を横方向から、図28は上方向から見た図である。
【0111】
被認証者が故意に指紋を歪める時に行う動作は実施例1で述べた通りである。また、故意に指紋を歪めることを検出する原理は実施例1と同様である。
【0112】
図28に示すように、ガラス板48の四隅をガラス板固定脚49で半固定する。半固定とは、指紋読取面に対して、ガラス板48が僅かに水平方向に移動できるように固定することである。また、指紋読取面によって規制されるため、ガラス板48は垂直方向方向には移動しない。ガラス板の周囲には圧力検出装置52がi個取り付けられている。圧力検出装置52は図2(b)に示すように圧力センサ16、記憶部17、演算部18、制御部19で構成される。圧力センサ16はガラス板48から受ける圧力を計測し、計測した値を記憶部17に保存する。演算部18は記憶部17に保存された圧力値の差分処理等の各種演算を行う。なお、これらの動作を制御部19が制御している。
【0113】
図27に示すように、ガラス板48は指紋読取面に密着させるのではなく、指紋読取面との間に空間が生じるようにガラス板固定脚49で半固定する。空間を生じさせるのは、被認証者が指を置いた時に、ガラス板48が僅かに移動できるようにするためである。しかし、指紋読取面とガラス板49の間に空間が生じていたのでは、光線の乱反射や屈折率の不整合により、明瞭な指紋画像が取得できなくなる。そこで、指紋読取面とガラス板の間には、屈折率整合剤46を充填する。この充填によって、ガラス板48を通過した光がガラス板48や指紋読取面の凹凸で乱反射されにくくなり、明瞭な指紋画像が取得できるようになる。
【0114】
被認証者が指をガラス板48に置くと、ガラス板48は指紋読取面との間に空間があるため、僅かに移動する。ガラス板48の移動によって圧力センサ16の値が変化する。この圧力センサ16の値の変化を利用して被認証者が指を適切に置いているか否かを判定する。つまり、被認証者が、正しく指を置いた場合は、各圧力センサの値はほぼ均等になる。これに対し、被認証者が故意に指紋を歪ませようと、指先を引きずったり、回転させたりすると、ガラス板48の特定方向に大きな圧力がかかるため、各圧力センサの値は偏ったものとなる。従って、ガラス板48に取り付けられた圧力センサ16で計測された値の相互比較等を行うことで、被認証者が指紋読取面に指を適切に置いたか否かを判定することができる。
【0115】
被認証者が不適切に指を置いていることを検出する動作手順を図22を参照しつつ説明する。
【0116】
ステップS101において、圧力センサ16は各圧力センサにかかる圧力Pi,tを計測する。ここでiは圧力センサの番号、tは時刻を表す。処理はステップS102へ移行する。
【0117】
ステップS102において、制御部19はステップS101において計測された圧力センサ16の圧力Pi,tを記憶部17に保存する。処理はステップS103へ移行する。
【0118】
ステップS103において、演算部18は時刻t、t-1間で連続して計測された各圧力センサの圧力Pi,tとPi,t-1の差分値を計算する。処理はステップS104へ移行する。
【0119】
ステップS104において、演算部18はステップS103において算出された差分値が0であるか否かを判定する。被認証者により、指紋読取面に指が置かれた場合はガラス板が僅かに移動するため、各圧力センサの値が変化する。この値が変化し始めた瞬間を被認証者が指を置いた状態と判定している。この判定が肯定的であった場合は、被認証者により指紋読取面に指が置かれたため、処理はステップS105へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS101に戻る。
【0120】
ステップS105において、圧力センサ16は各圧力センサにかかる圧力Pi,tを計測する。処理はステップS106へ移行する。
【0121】
ステップS106において、制御部19はステップS105において計測された圧力センサ16の圧力Pi,tを記憶部17に保存する。
【0122】
ステップS107において、演算部18は時刻t、t-1間で連続して計測された各圧力センサの圧力Pi,tとPi,t-1の差分値を計算する。処理はステップS108へ移行する。
【0123】
ステップS108において、演算部18はステップS107において算出された差分値が0であるか否かを判定する。被認証者により指紋読取面に適切に指が置かれた場合、指の動きが安定するため、この値が再び0になる。この値が再び0になった瞬間を、被認証者の指が安定して置かれた状態と判定している。この判定が肯定的であった場合は、処理はステップS109へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS105に戻る。
【0124】
ステップS109において、演算部18は各圧力センサの圧力Pi,tの分散σを計算する。分散σは被認証者の指が安定して置かれたと判定した瞬間のPi,tを用いて算出する。この理由は、指が安定して置かれた時でも、必要以上に大きな力をかけて指紋を歪めている場合は、分散σの値がある特定の傾向を示す。そのため、指が安定に置かれていても、必要以上に大きな力がかかっていることを検出することができる。また、ステップS105からステップS108のループにおいて保存されたPi,tの全てを用いて分散を求めても良い。これらの値を用いて算出された分散σからは、指が安定して置かれたと判定されるまでに、被認証者が瞬間的に大きな力を指に加えたことを検出することができる。処理はステップS110へ移行する。
【0125】
ステップS110において、演算部18はステップS109において算出した分散σが一定値以下であるか否かを判定する。被認証者が必要以上に大きな力をかけて指紋を歪めようとしている場合は、分散σの値がある特定の傾向を示す。この判定が肯定的であった場合は、被認証者により指が適切に置かれたため、処理はステップS112へ移行する。一方、この判定が否定的であった場合は、処理はステップS111へ移行する。
【0126】
ステップS111において、指紋歪み検出装置9は、被認証者が故意に指紋を歪めたと判定した回数を1回加算して記憶する。処理はステップS113へ移行する。
【0127】
ステップS113において、指紋歪み検出装置9は、被認証者が故意に指紋を歪めたと判定された回数が所定回数(本実施例では3回)以下か否かを判定する。この判定が肯定的である場合は、被認証者が故意に指紋を歪めたと判定された回数が所定回数以下のため、処理はステップS101に戻る。一方、この判定が否定的である場合は、処理はステップS114へ移行する。このように、被認証者が故意に指紋を歪めたと判定された回数に猶予を持たせている理由は実施例1で述べた通りである。
【0128】
ステップS112において、指紋歪み検出装置9は制御部3に指紋歪み検出が完了(被認証者が適切に指を置いた)したことを通知する。処理は終了する。
【0129】
ステップS114において、指紋歪み検出装置9は制御部3に指紋歪み検出が完了(被認証者が不適切に指を置いた)したことを通知する。処理は終了する。
【0130】
また、本実施例のステップS109においてステップS105からステップS108のループにおいて保存された圧力の最大値を抽出し、ステップS110において圧力の最大値が一定値以上か否かを判定しても良い。圧力が極端に大きい場合は、被認証者が不適切に指を置いたと考えられるからである。この場合の動作手順は図23に示す。
【実施例3】
【0131】
実施例1の指紋歪み検出装置9を他の構成にすることも考えられる。
【0132】
本実施例で用いる指紋歪み検出装置について、図29、30を参照しつつ説明する。図29は指紋歪み検出装置を横方向から、図30は上方向から見た図である。
【0133】
図30に示すように、ガラス板48の四隅を弾性体固定脚56で半固定する。半固定とは実施例2で述べた通りである。ガラス板の一部領域には、市松模様等のガラス板移動量を検出するためのガラス板移動量検出用パターン60が印刷されている。
【0134】
図29に示すように、ガラス板48は指紋読取面に密着させるのではなく、指紋読取面との間に空間が生じるように弾性固定脚56で半固定する。空間を生じさせるのは、被認証者が指を置いた時に、ガラス板48が僅かに移動することで、指の動きを検出することができるからである。しかし、指紋読取面とガラス板48の間に空間が生じていたのでは、光線の乱反射や屈折率の不整合により、明瞭な指紋画像が取得できなくなる。そこで、指紋読取面とガラス板48の間には、屈折率整合剤46を充填する。充填する理由は、実施例2で述べた通りである。
【0135】
ガラス板移動量検出用パターン60の直下にはガラス板移動量検出装置55が設置されている。ガラス板移動量検出装置55は図2(c)に示すように光学レンズ系20、撮像素子21、記憶部22、演算部23、制御部24で構成される。撮像素子21は光学レンズ系20を通してガラス板移動量検出用パターン60の画像を撮像し、撮像された画像を記憶部22に保存する。演算部23は、記憶部22に保存された画像の相関演算等の各種演算を行う。なお、これらの動作を制御部24が制御している。
【0136】
被認証者が指を指紋読取面に置くと、ガラス板48は半固定状態なので僅かに移動する。この僅かな移動を利用して被認証者が指を適切に置いているか否かを判定する。被認証者が適切に指を置いた場合、ガラス板48は大きく移動せず、ガラス板移動量検出用パターン60も大きく移動しない。これに対し、被認証者が故意に指紋を歪めようとして、指を置いた際に、引きずったり、回転させたりすると、指先に大きな力が加わる。このため、ガラス板48は大きく移動し、ガラス板移動量検出用パターン60も大きく移動する。例えば、被認証者が指を指先方向に引きずれば、ガラス板48が指先方向に移動し、ガラス板移動量検出用パターン60も指先方向に移動する。
【0137】
被認証者が不適切に指を置いていることを検出する動作手順は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0138】
実施例1の指紋歪み検出装置9を他の構成にすることも考えられる。実施例1〜3で述べた指紋歪み検出装置では、指紋センサ上に透明フィルム等を配置するため、使用する指紋センサは光学式指紋センサでなければならなかった。これに対し、実施例4では、半導体式指紋センサ等、光学式でない指紋センサも使用することが可能である。
【0139】
本実施例で用いる指紋歪み検出装置について図31、32を参照しつつ説明する。図31は指紋歪み検出装置を横方向から、図32は下方向から見た図である。
【0140】
図32に示すように、指紋センサ8の一部領域には、指紋センサ8の移動量検出用パターン65が印刷されている。
【0141】
図31に示すように、台座45の上に弾性体62を介して指紋センサ8を固定する。指紋センサ移動量検出用パターン65の直下には指紋センサ移動量検出装置61が設置されている。指紋センサ移動量検出装置61の構成はフィルム歪み量検出装置43と同様である。
【0142】
被認証者が指を指紋読取面に置くと、指紋センサ8は弾性体62に固定されているため僅かに移動する。この僅かな移動を利用して被認証者が指を適切に置いているか否かを判定する。被認証者が指紋読取面に指を適切に置いた場合、指紋センサ8は大きく移動せず、指紋センサ移動量検出用パターン65も大きく移動しない。これに対し、被認証者が故意に指紋を歪めようとして、指を置いた際に、引きずったり、回転させたりすると、指先に大きな力が加わる。このため、指紋センサ8は大きく移動し、指紋センサ移動量検出用パターン65も大きく移動する。例えば、被認証者が指を指先方向に引きずれば、指紋センサ8が指先方向に移動し、指紋センサ移動量検出用パターン65も指先方向に移動する。
【0143】
被認証者が不適切に指を置いていることを検出する動作手順は実施例1と同様である。
【実施例5】
【0144】
実施例1の指紋歪み検出装置9を他の構成にすることも考えられる。実施例1〜3で述べた指紋歪み検出装置では、指紋センサ上に透明フィルム等を配置するため、使用する指紋センサは光学式指紋センサでなければならなかった。これに対し、実施例5では、半導体式指紋センサ等、光学式でない指紋センサも使用することが可能である。
【0145】
本実施例で用いる指紋歪み検出装置について図33、34を参照しつつ説明する。図33は指紋歪み検出装置を横方向から、図34は下方向から見た図である。
【0146】
図34に示すように、指紋センサ8の周囲に複数の圧力検出装置52を設ける。圧力検出装置52の構成は実施例2で述べた通りである。
【0147】
図33に示すように、台座45の上に弾性体62を介して指紋センサ8を固定する。被認証者が指を指紋センサ8の指紋読取面に置くと、指紋センサ8は弾性体62に固定されているため僅かに移動する。指紋センサ8が移動すると、圧力検出装置52の圧力センサ16の値が変化する。この値の変化を利用して被認証者が指を適切に置いているか否かを判定する。つまり、被認証者が正しく指を置いた場合は、各圧力センサの値はほぼ均等になる。これに対し、被認証者が故意に指紋を歪ませようと、指先を引きずったり、回転させたりすると、各圧力センサの値は偏ったものとなる。従って、指紋センサ8に取り付けられた圧力検出装置52で計測された値の相互比較等を行うことで、被認証者が不適切に指を置いていることが検出される。
【0148】
被認証者が不適切に指を置いていることを検出する動作手順は実施例2と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の実施の形態における指紋照合装置のハードウェア構成の一例を簡略的に説明したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における指紋歪み検出装置のハードウェア構成の一例を簡略的に説明したブロック図である。(a)はフィルム歪み量検出装置を示す。(b)は圧力検出装置を示す。(c)はガラス板移動量検出装置を示す。
【図3】本発明の実施の形態としてのパスポートリーダの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態としての制御部の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態としての指紋歪み検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態としての制御部の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態としてのタイマ監視部の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態としての制御部の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態としての指紋検索装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態としての制御部の動作を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態としてのタイマ監視部の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態としての制御部の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の実施の形態としての指紋歪み検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態としての制御部の動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態としての指紋センサの動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施の形態としての制御部の動作を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態としての指紋検索装置の動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施の形態としての制御部の動作を示すフローチャートである。
【図19】本発明の実施の形態としての制御部の動作を示すフローチャートである。
【図20】本発明の実施の形態としての制御部の動作を示すフローチャートである。
【図21】本発明の実施の形態としての通知装置の動作を示すフローチャートである。
【図22】本発明の実施の形態としての圧力検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図23】本発明の実施の形態としての圧力検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図24】本発明の実施の形態における指紋歪み装置(フィルム歪み量)を示す外観図(横方向)である。
【図25】本発明の実施の形態における指紋歪み装置(フィルム歪み量)を示す外観図(上方向)である。
【図26】本発明の実施の形態におけるフィルムを示す外観図(上方向)である。
【図27】本発明の実施の形態における指紋歪み装置(ガラス板圧力)を示す外観図(横方向)である。
【図28】本発明の実施の形態における指紋歪み装置(ガラス板圧力)を示す外観図(上方向)である。
【図29】本発明の実施の形態における指紋歪み装置(ガラス板移動量)を示す外観図(横方向)である。
【図30】本発明の実施の形態における指紋歪み装置(ガラス板移動量)を示す外観図(上方向)である。
【図31】本発明の実施の形態における指紋歪み装置(指紋センサ移動量)を示す外観図(横方向)である。
【図32】本発明の実施の形態における指紋歪み装置(指紋センサ移動量)を示す外観図(下方向)である。
【図33】本発明の実施の形態における指紋歪み装置(指紋センサ圧力)を示す外観図(横方向)である。
【図34】本発明の実施の形態における指紋歪み装置(指紋センサ圧力)を示す外観図(下方向)である。
【符号の説明】
【0150】
1 タイマ監視部、2 パスポートリーダ、3 制御部、4指紋検索装置、5 係員通知装置、6 要注意人物指紋DB、7 指紋画像記憶バッファ、8 指紋センサ、9 指紋歪み検出装置、10 表示部、11 光学レンズ系、12 撮像素子、13 記憶部、14 演算部、15 制御部、16 圧力センサ、17 記憶部、18 演算部、19 制御部、20 光学レンズ系、21 撮像素子、22 記憶部、23 演算部、24 制御部、41 透明フィルム、42 フィルム固定脚、43 フィルム歪み量検出装置、45 台座、46 屈折率整合剤、47 フィルム歪み量検出パターン、48 ガラス板、49 ガラス板固定脚、52 圧力検出装置、55 ガラス板移動量検出装置、56 弾性固定脚、60 ガラス板移動量検出用パターン、62 弾性体、65 指紋センサ移動量検出装置、66 指紋センサ移動量検出用パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指紋センサの指紋読取面に置かれた指の指紋画像を読み取り、前記指紋画像を予め登録された指紋画像と照合する指紋照合装置において、
前記指紋センサの指紋読取面に指が適切に置かれているか否かを検出する指紋歪み検出装置と、
前記指紋歪み検出装置が指が適切に置かれていないことを検出した場合、第三者に通知する通知装置とを有することを特徴とする指紋照合装置。
【請求項2】
指紋センサの指紋読取面に置かれた指の指紋画像を読み取り、前記指紋画像を予め登録された指紋画像と照合する指紋照合装置において、
指とともに移動する部材に対し、指とともに移動した前記部材の変化量を検出する指紋歪み検出装置と、
前記指紋歪み検出装置が、前記変化量が所定の値以上であることを検出した場合、第三者に通知する通知装置とを有することを特徴とする指紋照合装置。
【請求項3】
指紋センサの指紋読取面に置かれた指の指紋画像を読み取り、前記指紋画像を予め登録された指紋画像と照合する指紋照合装置において、
前記指紋センサの指紋読取面に指が適切に置かれているか否かを検出する指紋歪み検出装置と、
要注意人物の指紋画像が登録された要注意人物指紋画像データベースと、
前記指紋画像が前記要注意人物指紋画像データベースに登録された指紋画像に一致するか否かを検索する指紋検索装置と、
前記指紋歪み検出装置が指が適切に置かれていないことを検出した場合、または、前記指紋画像が前記要注意人物指紋画像データベースに登録された指紋画像と一致した場合、第三者に通知する通知装置とを有することを特徴とする指紋照合装置。
【請求項4】
指紋読取面に置かれた指の指紋画像を読み取る指紋センサにおいて、
前記指紋センサの指紋読取面に指が適切に置かれているか否かを検出する指紋歪み検出装置を有することを特徴とする指紋センサ。
【請求項5】
前記指紋歪み検出装置が、指が適切に置かれていないことを検出した場合、検出した回数が所定回数以下か否かを判定し、前記検出した回数が所定回数以下だった場合、指の置き直しを許容することを特徴とする請求項1記載の指紋照合装置。
【請求項6】
前記指紋歪み検出装置が、一定時間内に、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれたことを検出できなかった場合、前記指紋センサは被認証者の指の指紋画像を読み取らなくなることを特徴とする請求項1記載の指紋照合装置。
【請求項7】
前記指紋センサの指紋読取面上に配置、固定され、
被認証者の指の動きを検出する歪み量検出用パターンを有する透明弾性膜を備え、
前記指紋歪み検出装置は、前記歪み量検出用パターンの移動量を測定することで、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれているか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の指紋歪み検出装置。
【請求項8】
前記指紋センサの指紋読取面上に配置、半固定され、
被認証者の指の動きを検出する移動量検出用パターンを有する透明板を備え、
前記指紋歪み検出装置は前記移動量検出用パターンの移動量を測定することで、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれているか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の指紋歪み検出装置。
【請求項9】
前記指紋センサの指紋読取面上に配置、半固定された透明板を有し、
前記指紋歪み検出装置は前記透明板に加わる圧力を測定することで、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれているか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の指紋歪み検出装置。
【請求項10】
前記指紋センサは、台座に半固定され、
前記指紋センサは、被認証者の指の動きを検出する移動量検出用パターンを有し、
前記指紋歪み検出装置は、前記移動量検出用パターンの移動量を測定することで、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれているか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の指紋歪み検出装置。
【請求項11】
前記指紋センサは、台座に半固定され、
前記指紋歪み検出装置は、前記指紋センサに加わる圧力を測定することで、前記指紋センサの指紋読取面に被認証者の指が適切に置かれているか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の指紋歪み検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2007−97842(P2007−97842A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291780(P2005−291780)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】