説明

指紋認証機能付きデータ記憶装置

【課題】外部記憶機能と指紋読取り及び認証機能を一体化することにより、電子データの安全な携行とそれによるデータ処理のシームレスな作業環境を実現することを課題とする。
【解決手段】特定使用者の指紋データを予め装置内部に記録する手段9と、使用者の指紋画像を読取る手段5と、読み取った指紋画像と前記予め装置内部に記録されている特定使用者の指紋情報とを照合する手段8と、その照合の結果に従い、装置内部に記憶されているデータ閲覧または更新の正当な権利保有者であることが確認された場合のみ接続された各種電子機器とのデータ通信を可能にし、逆に照合の結果該使用者の正当性が確認されない場合、データ通信路を遮断する接続手段10を有する指紋認証機能附きデータ記憶装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、指紋認証を利用して機密性を高めるようにしたデータ記憶装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及するインターネットの利用により、コンピュータ自身の普及も目覚ましい。コンピュータを始めとして多くの情報端末がモバイル化する傾向もあるが、一方で、必要な情報、データのみを携行して、訪問先のコンピュータで必要な処理を行うと言った動きもみられ、携行型外部記憶装置の販売台数は、数百万台に上っている。しかし、このような外部記憶装置は、第三者からのデータ保護に関しては無防備である。
【0003】
我が国での個人情報保護法の成立にも見られるように、重要機密データの漏洩や流出が、企業の存亡にも繋がる事態を招来しかねないとして注目を集めている。その為、電子データの社外への持ち出しを禁止している企業も多い。
【0004】
これに対する一方策として、必要な電子データを本人の指紋情報により暗号化して携行型外部記憶装置に記録し、出先で用意されたコンピュータを使用して「指紋による本人確認を実施」し、「データの複合を実施」することにより電子データの安全を確保しようとする試みも成されている(特開2003−345759)。
【特許文献1】特開2003−345759
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法の場合、携行型外部記憶装置と指紋読取デバイスの両方を携帯する必要が生じるし、更には、出先で提供されるパソコンに該外部記憶装置及び指紋読取り装置の両方が利用可能とならしめるためのソフトウェアーが予めインストールされているとは限らず、利用は制限される。
【0006】
そこで、この発明では外部記憶機能と指紋読取り及び認証機能を一体化することにより、電子データの安全な携行とそれによるデータ処理のシームレスな作業環境を実現することを課題とする。
【0007】
また、この発明では前記装置を使用するに当たり、利用対象となる電子機器へのソフトウェアーのインストールを不要とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記実情に鑑み、特定使用者の指紋データを予め装置内部に記録する手段と、使用者の指紋画像を読取る手段と、読み取った指紋画像と前記予め装置内部に記録されている特定使用者の指紋情報とを照合する手段と、その照合の結果に従い、装置内部に記憶されているデータ閲覧または更新の正当な権利保有者であることが確認された場合のみ接続された各種電子機器とのデータ通信を可能にし、逆に照合の結果該使用者の正当性が確認されない場合、データ通信路を遮断する接続手段を有する指紋認証機能附きデータ記憶装置を提案するものである。
【発明の効果】
【0009】
以上この発明によれば、高い機密性の要求される電子データへのアクセスが、指紋認証により正当な権利者に制限される前提で、安全な電子データの保管場所としての外部記憶装置が実現される。
【0010】
しかも、本考案のデータ記憶装置には、指紋の読取り機能、認証機能、データの暗号化複合化機能並びに記録・伝送手段が、装置内部に全て具備されていることから、電子機器側に専用のソフトウェアーを必要とせず、通常の接続・通信手段(例えばUSBポート)を有するあらゆる電子機器での利用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
各種電子機器と接続するUSB(UNIVERSAL SERIAL BUS)通信機能を具備し、指紋照合の結果を受信して接続された電子機器へのデータ通信路の開閉が可能なUSB制御インタフェースを具備する指紋認証機能附きデータ記憶装置。
【0012】
USB制御インタフェースは各種電子機器と接続されて始めて該USB経由で電源投入され起動し、一連の指紋照合の処理を経て、装置内部に記憶されているデータ閲覧または更新の正当な権利保有者であることが確認されるまで、USBのデータピン(D+/−)を制御して記憶装置の物理的な接続が該電子機器に認識されず、論理的に非接続と認識されるように制御する。
【0013】
また、USB制御インタフェースは各種電子機器と接続され電源供給を受けて起動した後、装置内部に記憶されているデータ閲覧または更新の正当な権利保有者であることが確認されて始めて、USBのデータピン(D+/−)を制御して該電子機器にデータ記憶装置として認識されるようにUSB制御インタフェースを制御する。
【実施例1】
【0014】
以下、この発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明すると、図1はこの発明に係る指紋認証機能附きデータ記憶装置のブロック図である。
【0015】
データ記憶装置は、全体の制御領域としてCPU1、読み取り・読み出し作業領域としてRAM2、登録指紋乃至機密データの記憶保持領域として書き換え可能な不揮発メモリー3が設けられる。
【0016】
なお、登録指紋情報及び機密データ等のデータがワンタイムメモリー9と不揮発メモリー3にそれぞれ記憶保持されるが、データ記憶装置には、データを必要に応じて暗号化乃至復号化する領域4が設けられ、これらのデータは予め暗号化領域4で暗号化してから記録保持することにより安全性を高めることができる。
【0017】
不揮発メモリー3に暗号化されて記録保持されたデータは使用される際には復号化領域4で復号化処理して使用される。
【0018】
また、この発明に係るデータ記憶装置には、指紋センサー5、指紋センサー制御部6、指紋画像処理領域7、指紋照合領域8が設けられる。
【0019】
使用者は指紋センサー5、指紋センサー制御部6で指紋の読み取りを実施し、更に指紋画像処理領域7で指紋画像を画像処理する。
【0020】
一方、書換え不能なワンタイムメモリー9に書かれた正当な使用者として登録済みの指紋データを読込み、指紋照合領域8で指紋照合を実施する。
【0021】
なお、ワンタイムメモリー9はCPU1の制御下に置き保護することも可能であるが、9aに示すように指紋照合処理領域8に埋め込むことにより安全性を高めることも可能である。
【0022】
更に、この発明に係るデータ記憶装置には各種電子機器と接続するUSB通信機能を具備し、指紋照合の結果を受信して接続された電子機器へのデータ通信路の開閉が可能なUSB制御インタフェース10を具備する。
【0023】
USB通信機能としては、図2に電子機器に付設されたUSBプラグのピン端子を示すものであり、1番及び2番ピンは電源ピン11、3番及び4番ピンはデータピン12(それぞれD+、D−と呼ばれ、その詳細は特集:最新USB機器&デバイスドライバーの作成法インタフェース(CQ出版社)1998年11月号、特集:作るオリジナルUSBアダプタトランジスタ技術(CQ出版社) 2000年6月号、USB Organization(USB規格協会)に記載される。
【0024】
このデータピン12の制御はデータ記憶装置の起動後、CPU1によりUSB制御インタフェース10を制御することにより行われる。
【0025】
具体的には、USB制御インタフェース10は各種電子機器と接続されて始めて該USB経由で電源投入され起動し、一連の指紋照合の処理を経て、装置内部に記憶されているデータ閲覧または更新の正当な権利保有者であることが確認されるまで、USBのデータピン12を制御して記憶装置の物理的な接続が該電子機器に認識されず、論理的に非接続と認識されるように制御する。
【0026】
また、USB制御インタフェース10は各種電子機器と接続され電源供給を受けて起動した後、装置内部に記憶されているデータ閲覧または更新の正当な権利保有者であることが確認されて始めて、USBのデータピン12を制御して該電子機器にデータ記憶装置として認識されるようにUSB制御インタフェースを制御する。
【0027】
次に、該データ記憶装置とそれに接続される電子機器間のUSBプロトコルを確立するまでの処理のフローチャート(図3)を参照しながら説明する。
【0028】
図3の実施例では簡単の為に、電子機器30としてUSBポートを備えたパソコンや各種携帯端末を想定した場合について説明する。
【0029】
なお、一般に市販されているUSBポートを装備した電子機器は、USBメモリーとの通信のためのソフトウェアーを標準で保持しているので、別途インストールする必要はない。
【0030】
電子機器30のUSBポートにデータ記憶装置のUSBプラグを挿入すると(図3の31参照)、該データ記憶装置は、電子機器30より電源供給され、起動する(図3の32参照)。
【0031】
該データ記憶装置は、起動後、CPU1によりUSB制御インタフェース10(具体的にはD+、D−)を制御し(図3の34参照)、非接続状態を維持し(図3の35)、データピン12をアイドル状態にする(図3の33参照)。
【0032】
すなわち、電子機器30は、データピン12をアイドル状態から遷移させない限り、USBバス接続を検出できない(図3の38参照)。
【0033】
この状態に於いて、該データ記憶装置側では、使用者の指紋読取りを実施し(図3の36参照)、指紋画像を画像、指紋画像を画像処理し(図3の37参照)、ワンタイムメモリー9から正当な使用者として登録済みの指紋データを読込み(図3の39参照)、指紋照合を実施する(図3の40参照)。
【0034】
これにより指紋の提供者が本人と確認されると、USB制御インタフェース10を接続に設定し(図3の41参照)、電子機器30にUSBバス接続を検出せしめる。
【0035】
これ以後は、通常のUSBメモリーとしてのプロトコルが確立され、フレームの送受信が実施される(ステップ42)。
【0036】
更に、該データ記憶装置内の不揮発メモリー(3)のデータを電子機器に送出する際は、前述のように複合化を施し、平文データに戻されて電子機器30に送られる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上この発明によれば、高い機密性の要求される電子データへのアクセスが、指紋認証により正当な権利者に制限される前提で、安全な電子データの保管場所としての外部記憶装置が実現される。
【0038】
しかも、この発明のデータ記憶装置には、指紋の読取り機能、認証機能、データの暗号化複合化機能並びに記録・伝送手段が、装置内部に全て具備されていることから、電子機器側に専用のソフトウェアーを必要とせず、通常の接続・通信手段(例えばUSBポート)を有するあらゆる電子機器での利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施例を示す指紋認証機能附きデータ記憶装置のブロック図。
【図2】この発明の実施例を示す指紋認証機能附きデータ記憶装置に付帯されるUSBプラグ(タイプAの例)のピン・アサインであって、(a)は断面図、(b)は上面図。
【図3】この発明の実施例を示す指紋認証機能附きデータ記憶装置とそれに接続される電子機器間の処理のフローチャート。
【符号の説明】
【0040】
1はCPU
2は読み取り・読み出し作業領域としてRAM
3は書き換え可能な不揮発メモリー
4は暗号化乃至復号化する領域
5は指紋センサー
6は指紋センサー制御部
7は指紋画像処理領域
8は指紋照合領域
9、9aはワンタイムメモリー
10はUSB制御インタフェース
11は電源ピン
12はデータピン
30は電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定使用者の指紋データを予め装置内部に記録する手段と、使用者の指紋画像を読取る手段と、読み取った指紋画像と前記予め装置内部に記録されている特定使用者の指紋情報とを照合する手段と、その照合の結果に従い、装置内部に記憶されているデータ閲覧または更新の正当な権利保有者であることが確認された場合のみ接続された各種電子機器とのデータ通信を可能にし、逆に照合の結果該使用者の正当性が確認されない場合、データ通信路を遮断する接続手段を有することを特徴とする指紋認証機能附きデータ記憶装置。
【請求項2】
各種電子機器と接続するUSB通信機能を具備し、指紋照合の結果を受信して接続された電子機器へのデータ通信路の開閉が可能なUSB制御インタフェースを具備することを特徴とする請求項1記載の指紋認証機能附きデータ記憶装置。
【請求項3】
各種電子機器と接続されて始めて該USB経由で電源投入され起動し、一連の指紋照合の処理を経て、装置内部に記憶されているデータ閲覧または更新の正当な権利保有者であることが確認されるまで、本記憶装置の物理的な接続が該電子機器に認識されず、論理的に非接続と認識されるように制御することが可能なUSB制御インタフェースを具備することを特徴とする請求項2記載の指紋認証機能附きデータ記憶装置。
【請求項4】
各種電子機器と接続され電源供給を受けて起動した後、装置内部に記憶されているデータ閲覧または更新の正当な権利保有者であることが確認されて始めて、該電子機器にデータ記憶装置として認識されるようなUSB制御インタフェースを具備することを特徴とする請求項2記載の指紋認証機能附きデータ記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−65705(P2006−65705A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249421(P2004−249421)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(598045276)有限会社イオネットワーク (4)
【出願人】(504329230)
【Fターム(参考)】