指静脈認証装置および情報処理装置
【解決課題】携帯電話などの小型情報処理装置に適用可能な指静脈認証装置およびこれを用いた情報処理装置を提供する。
【解決手段】指向けて光を射出する光源と、指からの透過光を撮像する撮像素子と、透過光を前記撮像素子に結像するレンズ装置と、撮像された画像を処理する画像処理部と、を備える指静脈認証装置であって、レンズ装置33は短焦点広画角レンズユニット38を備え、画像処理部は撮像された画像の歪を補正して指の静脈パターンを抽出する。
【解決手段】指向けて光を射出する光源と、指からの透過光を撮像する撮像素子と、透過光を前記撮像素子に結像するレンズ装置と、撮像された画像を処理する画像処理部と、を備える指静脈認証装置であって、レンズ装置33は短焦点広画角レンズユニット38を備え、画像処理部は撮像された画像の歪を補正して指の静脈パターンを抽出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は指静脈認証装置およびこれを用いた情報処理装置に係わり、特に、指静脈認証装置を小型化するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
さまざまなセキュリティ技術の中でも、指静脈は高精度な認証を実現できるものとして知られている。指静脈認証は、身体内部の指静脈パターンを使用するために優れた認証精度を実現し、かつ指紋認証に比べて偽造・改ざんが困難であることにより高度なセキュリティを実現できる。
【0003】
この種の指静脈認証の従来例として、例えば、特開2006−155575号公報に記載の生体認証装置が知られている。この生体認証装置は、指を通過する光を照射する光源と、上記指を透過した光を撮像する撮像部と、上記指が所定位置に存在することを検知する指検知手段と、上記撮像部によって撮影された画像の中から上記指の占める領域を抽出する指領域抽出手段と、上記抽出された領域内部の特定部位の画質により上記撮像部における撮像素子の増幅率を変化させる利得変化手段と、を備えている。
【特許文献1】特開2006−155575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指静脈認証は掌静脈認証に比較して認証装置を小型化できる利点がある。しかしながら、近年では、携帯電話などの小型情報装置を利用した電子商取引やオンラインバンクの普及により、指静脈認証装置をさらに小型化して小型情報装置に適用できるようにすることが望まれる。
【0005】
特開2006−155575号公報に記載の生体認証装置は、透過光による指静脈パターンの撮像において、外部環境の違いがあっても、それに影響されることなく、常に最適な静脈パターンの品質が得られる撮像方式であるものの、認証装置を小型化することについては記載されていない。
【0006】
そこで、本発明は、携帯電話などの小型装置に適用可能な指静脈認証装置及びこれを備える情報処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る指静脈認証装置は、指を載置させる筐体と、前記指に向けて光を射出する光源と、前記光によって前記指の内部を撮像する撮像素子と、前記指からの前記光を前記撮像素子に結像するレンズユニットを備えるレンズ装置と、前記撮像素子によって撮像された画像から前記指の静脈パターンを抽出するパターン抽出部と、画像の歪を補正する画像補正部と、を有する画像処理装置と、を備える指静脈認証装置であって、前記レンズユニットの焦点距離が、0.15mm以上0.5mm以下、その物側最大画角が100°以上、その近軸倍率が、0.04以上0.1以下、そして、その光学歪みが、−60%〜+50%であり、前記指と前記撮像素子との間の距離が5mm以上12mm以下、である、ことを特徴とするものである。
【0008】
さらに、本発明に係る情報処理装置は、前記指静脈認証装置と、当該指静脈認証装置から出力された前記静脈パターンに基づいて個人認証を行う個人認証装置と、を備え、当該個人認証装置での認証結果に基づいて電子取引処理を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、携帯電話などの小型装置に適用可能な指静脈認証装置及びこれを備える情報処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
携帯電話などの小型装置への搭載に好適な指静脈認証装置について説明する。この指静脈認証装置では、指の下方(指腹側)に設けられたLED(Light Emitting Diode)などの光源から光を指内に照射し、指内部で拡散した光のうち静脈を透過するか又は静脈から反射する等して、指の静脈の形態(静脈パターン)を含む指の内部環境の影響を受けて指外部に放出される光(以下、この光を「透過光」という。)に基づく画像を撮像し、この画像から静脈パターンを抽出して本人認証を行なう。
【0011】
指静脈認証装置の撮像部が指静脈パターンの画像を鮮明に撮像するためには、以下の光学的な条件を満たすことが望まれる。一つは、指の皮膚の表面で反射した赤外光を撮像部が撮像しないことである。この条件を満たさないと、指静脈パターンの画像が、指の皮膚の表面のしわなどの不要な情報を含んでしまい、不鮮明になってしまう。
【0012】
もう一つは、指静脈の存在する深さまで到達せずに散乱した赤外光を撮像部が撮像しないことである。この条件を満たさないと指静脈パターンの情報を含まない赤外光が、指静脈パターンのコントラストを低下させてしまう。
【0013】
図1は指静脈認証装置の一例を示す斜視図であり、全体が立方体状に形成された筐体10を持って構成されている。この筐体10の平面側には、図2に示すように指が載せ置かれるための指ガイド部11が備えられている。この指ガイド部11は、壁16、小突部18および小片22から構成されている。
【0014】
また、筐体10の平面側には、焦点距離を確保するために、認証対象の指と後述の光学系とを離間させるための溝部12が設けられている。なお、後述のように、本例では光学系に短焦点・広画角のレンズユニットを適用することにより、溝部12の深さを低減できる結果、指静脈認証装置のサイズを厚さ方向に小型化できる。
【0015】
溝部12の幅は、指幅よりも狭くなっている。ユーザは図2に示すように溝部12を全て覆うように指を置く。これにより、指側面に設置されている光照射口14から放出された光や外光が、溝部12上の指の腹側表面へ直接照射されるのを防ぐことができる。指腹の表面などで反射して溝部12の下方にある光学系へ行く光を無くすことができるために、鮮明な静脈画像を撮影することができる。
【0016】
照射口14は、筐体10の内部に配置されたLEDなどの光源から発生した光を指ガイド部11に載置されたユーザの指の側面に向けて射出するように、指ガイド部11の外側に設けられている。なお、本例では、照射口14の形状は円形になっているが、これに限定するものではなく、楕円形や四角形などの多角形であってもよい。
【0017】
溝部12の底面24には、指から透過光を取り込むために例えば矩形(長方形)の透過光取込口20が設けられている。この透過光取込口20にはIRフィルタが敷設されている。IRフィルタは太陽光や蛍光灯の光など、認証に不要な外光を遮断する。また、埃・水滴などが認証装置内部に進入するのを防ぐ。底面24の下に配置されたレンズ装置や撮像素子により、透過光取込口20から取り込まれた透過光に基づく画像が撮像される。
【0018】
壁16は比較的短い高さを持って指側に突出し、指の両側で指の長手方向に沿って短冊状に形成される。また、一対形成された壁16は互いに平行に向き合っているために、指が筐体10の平面に載せられた際に指の両側面を支持する機能を備えており、指を筐体10に載せて指静脈を撮影する際に、指が左右方向にずれるのを防ぐことができる。
【0019】
さらにこの壁16は、赤外光に対して不透明な素材で作成されている。これにより筐体の平面部の外縁側に複数配列された光の射出口14からの放出光を指底よりも指の側面に誘導する機能を持っている。
【0020】
壁16が指の側面から光を指内に入射させると、撮影したい静脈パターンに対し指の深部に到達する光量が増加し、これに伴い上述のような画質を低下させる指腹の表面などからの反射光成分が減少するため、鮮明な透過光で指静脈パターンを撮影することが可能となる。さらに、壁16は、光を指の腹より高い位置の指の側面に照射することができるために、指静脈認証装置は、鮮明な静脈画像を撮像することが可能となる。
【0021】
図16に示すように、指の側面からではなく指の底面から光が指内に進入すると、指の表皮や指内組織などの散乱物質84の影響を受けて光が矢示82に示すように散乱し、撮影すべき静脈パターン80に到達しない光が撮像素子30側に反射する。これにより静脈の情報を持たない光が撮像素子に集中し、静脈に対応する画像に対するコントラストを低下させるという欠点がある。
【0022】
これに対して、指静脈認証装置が指の側面から光を入射させることにより、既述のコントラストを低下させる反射光成分がレンズ装置33に到達することを避けつつ、指の深部に到達し、指の静脈を透過するか、又は静脈から反射するなどして静脈パターンの情報を持った透過光86がレンズ装置33に到達する割合を増加させることができる。
【0023】
また、壁16の長手方向のほぼ中心には、短矩形状で指側に突出する小突部18が存在する。この小突部は指の第一関節を指し示す役割を担っており、ユーザは指の第一関節が一対の小突部18に当たるように、指を筐体に載せることにより、後述のレンズユニット及び撮像素子が指の第一関節に付近にある静脈パターンを取り込むことができる。指の関節部分は、その前後の部位に比べて窪んでいるため、その窪んだに小突部18がうまく嵌り易い。
【0024】
指静脈認証では、指の第一関節付近の静脈パターンが高精度の生体識別に有用である。そのため、透過光取込口20は指の第一関節付近の画像を取り込める面積を持った矩形、例えば、長辺が10mm〜20mm、短辺が5mm〜10mmの矩形であることが好ましく、さらに、指静脈認証装置の小型化のためには、長辺が5mm〜12mmで短辺が3mm〜7mmの矩形であることが好ましい。透過光取込口20をこの大きさにすると、被写体としての指の撮影可能な領域の大きさが6〜14mm×10〜24mmになる。
【0025】
指の第一関節付近の静脈パターンが高精度の生体識別に有用であることは、関節付近は皮膚が薄く静脈が透けて見えやすいためである。
【0026】
小突部18は第一関節の位置だけでなく、指先を置く位置に設置してもよい。さらに、指を複数の点に触れて位置決めすることによって、指の提示位置を安定にする。また、小突起18にタッチセンサを設置してもよい。これにより、指が確実に筐体10へ置かれたことを検知でき、指の提示位置が毎回安定すると共に、指が装置から離れた状態で指静脈を撮影することを防ぐことができる。
【0027】
指の第二関節周辺に関しても、同じ理由で静脈が透けて見えやすい。したがって、小突部18を第二関節の位置合わせ用に流用して認証に供することも可能である。但し、第二関節で位置合わせした場合、指が認証装置から指先側に大きくはみ出す形となり、認証装置を設置する場合に、指先側に対してより広い開放空間が必要になる。認証装置をコンパクトに構成し、或いはこれをコンパクトに使用するためには、第一関節を撮影することの方が好ましい。
【0028】
なお、小突部18のかわりに、指の第一関節が置かれる位置を示す標識やマークなど、他の指示手段を用いてもよい。
【0029】
図19(1)は図2の筐体10を指先側から見たときの光源3の筐体10における設置位置を示す断面図である。光照射口14の内部には赤外光源3が埋め込まれている。光源3には例えばLEDを用いることができる。これは、図19(1)に示すような砲弾型LEDを用いてもよいし、上面が平面状のLEDでもよい。
【0030】
以下、光源3の設置位置について説明する。光源3は指の腹側に設置されている。従来の指静脈認証装置では光源を指の上側、又は側面に設置していたため、指の上側や側面側にも筐体を延長させて光源を支えることが必要となるため、装置の厚さが増さざるを得なかった。光源を指の腹側に設置すると、指の上側や側面へ筐体を延長することを避けることができるために筐体を薄くできる。さらに、後述するように指表面のしわの影響を軽減するために光源3を指の側面側に設置した。
【0031】
指表面には指紋や関節のしわが多数存在する。認証のための精度を向上するには、しわの影響を抑えて静脈を鮮明に撮影しなければならない。しわの影響を抑えるために、しわの向きを考慮して光源を筐体に配置する。
【0032】
例えば、しわの向きが指の長手方向と垂直の向きになっている場合、光源を指の側面に設置する。これにより光源から照射された光の進路と、しわの向きとが平行になる。従って、光がしわの壁に衝突せずに撮像素子へ到達するため、撮像素子はしわの影響を抑えた画像を撮影できる。
【0033】
指の第一関節周辺のしわは指の長手方向に対し垂直の向きのものが多くを占めるために、光源を指の側面側に設置した。
【0034】
指静脈を認証するため、画像処理装置は画像中の各画素の輝度値を調べ、周囲の画素よりも輝度が低い画素を静脈である判定して、画像から静脈パターンを抽出する。高精度に静脈パターンを抽出するために、指全体に均一な光量となるように光を照射し、撮像素子が輝度むらの少ない画像を撮影することが重要である。もし、光の照射に偏りがあり、一部の領域のみが暗く撮影されると、画像処理を行なった際に、その領域を誤って血管として抽出してしまう。
【0035】
図20は、静脈認証装置が輝度むらの少ない画像を得る為の光源3及び光照射口14の筐体に対する配置の例を示す。図20の(1)〜(6)は筐体10の平面を示す摸式図である。
【0036】
光源3は、十分な明るさで指を照射できれば筐体の左右に一対あれば少なくともよいが、静脈パターン像の画質を向上させるために、図20(1)や図20(2)のように、光源を指の長手方向に沿って筐体に対して複数の対になるように配置することが好ましい。
【0037】
この場合、筐体の左右それぞれの側で、光源の間隔が均等になるようにして、指先側から指根元側までを均一な明るさで照射できるようにすることが好ましい。
【0038】
さらに、左右にある複数の光源の光量を独立に制御するできることが好ましい。さらに、指の側面側の光源だけでは、指先と指根元側に十分な光が届かない場合、図20(3)のように、指先と指根元側にも光源3を設けて指に照射される光量を補助してもよい。
【0039】
光源3を複数配置する場合は全ての光源3を完全な等間隔に設置するのではなく、図20(4)乃至(6)のように筐体の中央付近を避けて指先及び根元側に光源を配置してもよい。指の第一関節は皮膚が薄いため他の部位より少ない光量でも静脈を撮影することができるためであり、第一関節以外の部位に強い光が当たり、第一関節にはやや弱い光が当たるようにして、指の画像全体に光量を均一にできる。
【0040】
光源を筐体に最適に配置するための態様は、撮影に用いる光学部品の特性によっても変化する。指静脈認証装置の筐体を小型化するためには短焦点のレンズユニットを用いることが有効である。しかし、短焦点レンズは画像の周辺に行くほど感度が低下しやすい欠点がある。したがって、この種のレンズで指を撮影すると、画像の中心から遠い領域ほど、すなわち指先側、指根元側の画像の領域の感度が低くなってしまう。
【0041】
そこで、図20(4)や図20(5)のように光源3を筐体の前端寄り、そして後端寄りに配置する。これにより指を筐体に提示すると、指先側の側面と指根元側の側面により強く光が光源より照射される。よって、撮影される画像は、全体の輝度が均一になる。
【0042】
図20(4)及び(5) に示す如く、光源を指先、根元側になるように筐体に配置すると、光源から照射された光が、指先と指根元の腹側に回り込んでしまう。
【0043】
既述のとおり、撮影画像に対して散乱物質84による散乱光を目立たせないためには、指の側面からの光を照射することが有用であり、指先そして指の根元の腹側へ光が回り込むのを抑制することが必要である。
【0044】
そこで、図1で説明した壁を、図20(4)のようにコの字型にして筐体に設置するか、図20(5) のように壁16を指の長手方向に沿って十分長くなるように筐体に設置する。これによって指先、指根元の側面に主に光を照射できる。
【0045】
図19(1)で示す通り、光源3は指の左右側に、筐体10に対してほぼ垂直に設置される。指は指先側から見ると丸い形状をしているため、光源3を指の両側で筐体に設置し、筐体から上方へ光を照射すると、光は壁16に遮られて指の高い位置に到達する。これによって、静脈の画像においてコントラストが高くなる。
【0046】
なお、図19(1)では、光源3が指の輪郭よりも外側に存在するが、光源3は指の輪郭よりも筐体の内側(溝部12に近い側)に設置してもよい。これにより筐体の幅を小さくできる。
【0047】
既述のとおり、光源3は溝部12から離れるように筐体に設置して、指の底面に回りこむ光を抑えることがより好ましいのであるが、本発明者が検討したところ、溝部12の縁と光源3との間の距離(図19(1)のC1)が少なくとも2mmあればよい事が分かった。
【0048】
光源3の上端を、図19(2)のようにやや筐体の内側に向かって傾斜させてもよい。これにより、指が細くても、光源が計測に足る光量を指へ照射できる。また、それぞれ傾斜する角度が違う複数の光源3を筐体に設置して、指の太さ毎に点灯させるべき光源3を切り替えてもよい。さらに、光源の角度を制御できるようにしてもよい。
【0049】
図1に戻り説明を続けると、小片22は、筐体10の指先側略端部と腕側略端部において、一対の壁部16からそれぞれから筐体中心に向かって突出する。図3は、図1に係る指静脈認証装置の長手方向に沿って筐体10を眺めた小片22の正面図の一例である。図3の例では、小片22は筐体10の中心側に行くにしたがって高さが低くなるテーパ面22aを備えている。
【0050】
指を筐体10の平面側に載せると、指がこのテーパ面22Aにしたがって筐体の底面方向に誘導され指が筐体に、より密着するようになる。したがって、外光が指と筐体10との隙間から撮像ユニットに進入することを防ぐことができる。
【0051】
図4は、図1に示す指静脈認証装置の内部構成および指との位置関係の一例を示す概略図である。
【0052】
レンズ装置33は透過光を撮像素子30に結像するものであって、指側の第1レンズ34と撮像素子側の第2レンズ36とからなるレンズユニット38がレンズ筐体39に支持固定された構成を備えている。符号32は撮像素子を保護する透明層である。第1レンズ34と第2レンズ36とは互いに光軸41に沿って対向するようにレンズ筐体39内に収納されている。
【0053】
第1レンズ34及び第2レンズ36は有効直径(図4のD)が約2mm以下、好ましくは1mm〜1.5mmの極小径レンズであり、第1レンズ34は撮像素子30側が凹状に形成され、全体が負のパワーを有する凹レンズであり、第2レンズは指側及び撮像素子30側が凸状に形成され、全体が正のパワーを有する凸レンズである。
【0054】
溝部12の底面24に形成された透過光取込口20はIRフィルタ40によって閉じられている。符号28は、筐体10の底面部26に支持される基板を示している。基板28上には、CCDあるいはCMOSからなる撮像素子30が固定され、撮像素子30の周辺回路が設けられている。
【0055】
レンズ筐体39はレンズユニット38を収容できるように中空円筒状に形成されている。レンズ筐体39は、支持部材70によって基板28に支持されている。
【0056】
レンズユニット38は凹凸レンズを組み合わせることにより、短焦点で広画角を持ったレンズとしての特性を有している。このことにより、レンズユニットを被写体である指に近づけることができ、かつ、レンズユニットを指に近づけても広い範囲の画像を撮像素子に取り込むことができる。
【0057】
この結果、指底46と撮像素子30との間の距離(共役距離)L1を低減でき、本願の発明者が検証したところ、共役距離を5.0mm〜12.0mmの範囲に収めることができる。したがって、筐体10の厚さを低減できる。これにより、例えば図5に示すような折畳型の携帯電話の一方の筐体52に指静脈認証装置50を搭載した場合であっても、携帯電話が大型化されることを抑制することができる。
【0058】
共役距離をより小さい値にするためには、屈折率が高いレンズを用いることが必要であり、反面、物側画角が大きくなり、認証に必要な範囲で静脈の画像を撮像素子30に取り込むことが難しくなる。そこで、共役距離を5.0mm以上とした。なお、レンズの材質や形状を改良することによって画角を拡大できる場合には、共役距離の下限を5mmに限定するものではない。
【0059】
近年、厚さを極力薄くすることが望まれている携帯電話、電子手帳、スマートキーなどの電子カードなどの携帯型電子装置に生体認証装置を適用するためには、共役距離を8.0mm以下にすることが好ましい。
【0060】
なお、図5は一例であって、指静脈認証装置50を、キー操作部53が搭載されている、他方の筐体の側に配置してもよい。
【0061】
図4において、符号48はジャストピント位置を示し、符号L2は指内のジャストピント位置と撮像素子30との間のジャストピント長である。指内にジャストピント位置48が来るように、レンズ装置33を撮像素子30に対して進退させて、レンズユニット38と撮像素子30の間隔が調整される。
【0062】
指底46と撮像素子30との間の距離(共役距離)L1が低減されても、ジャストピント位置を指内に設定することができるために、撮像素子30は指内の静脈パターンに対応する映像を作り出すことができる。
【0063】
既述のとおり、レンズユニットの光学特性を短焦点、広画角として説明したが、好ましくは、その焦点距離が0.15mm以上0.5mm以下、さらに好ましくは、0.15mm以上0.20mm以下であり、その物側最大画角が100°以上である。焦点距離が0.15mm未満であるとレンズユニットの製造が難しく、焦点距離が0.5mmを越えると図4の距離L1を十分小さな値にすることができない。
【0064】
さらに、物側最大画角が100°以上であると、指の第一関節の前後10mm範囲の静脈パターンを取得することができる。静脈認証を精度良く行なうためには、この範囲の静脈パターンを取得することが望ましい。
【0065】
さらに、レンズユニットは近軸倍率が0.04以上0.1以下、好ましくは0.04以上0.06以下である。近軸倍率が0.04未満であると解像度が劣化し、近軸倍率が0.1を超えると静脈パターンの認証に必要な撮影エリアを確保できないおそれがある。
【0066】
短焦点・高画角のレンズユニットを用いると、既述のとおり認証装置をその高さ方向に小型化できる半面、撮像素子30で得られた画像が歪んでしまい、画像から静脈パターンを正確に抽出できないおそれがある。
【0067】
そこで、静脈認証装置は画像の歪みを補正する画像処理機能・手段を備えている。本発明者がレンズユニットの特性を種々変えて具体的に検討したところ、画像の光学歪みが−60%から+50%の範囲内であれば画像の歪みを補正できることを確認した。
【0068】
本発明者が検討したところ、レンズユニットの焦点距離を0.15mm以上0.20mm以下にすると、レンズユニットの光学歪を−2%〜+50%の範囲に抑えることができるために画像の歪みの補正をより高精度に行うことができる。
【0069】
なお、図4の例では、レンズユニット39は2枚のレンズから構成されているが、これに限定するものではなく、要求されるレンズ特性を持つ限り、1枚のレンズ、あるいは3枚以上のレンズからレンズユニットが構成されてもよい。
【0070】
図6は、撮像素子30で得られた補正前の画像であり、図7は歪み補正後の画像の例である。図6の画像は、1mm間隔の碁盤目からなる画像が印刷された基準印刷物を、図1の筐体10の平面側に載置して撮像素子30によって得られた画像である。歪を補正すると、図6に示すように、例えば、周辺に行くにしたがって形状が歪んでいた画像が、図7に示すようにほぼ均等な碁盤目からなる画像に補正ないしは矯正された。歪補正の制御方法については後述する。
【0071】
図8は、歪特性を示すグラフである。図8に示す物高とは画像の中心点(光軸:図4の41)から画像の端部までの相対位置を意味し、例えば、物高が“1.0”とは画像の最端部の位置を表し、物高が“0.6”とは中心点から60%の位置(端部から40%)であることを表している。
【0072】
図8において、800は第1のレンズユニットの特性であり、802は第2のレンズユニットの特性である。歪み特性がマイナスであるとは画素が画像の中心側に歪み、歪み特性がプラスであるとは、画素が画像の中心から離れる方向に歪んでいることを示している。
【0073】
歪み(%)は、画素の本来の位置(中心からの距離“T”)と歪んだ後の画素の位置(中心からの距離“S”)に対して、“T/S”に相当する値である。本発明者が鋭意検討したところ、光学歪が−60%よりマイナス側に大きいと、周辺部での解像度が急に劣化し、後述する画像の歪み補正を行っても画像を完全に修復することが出来ないことが判明した。
【0074】
また、光学歪が+50%を超えると、広い範囲の画像を処理する必要があり、処理時間に問題が生ずることが分かった。従って、第1の特性(800)と第2の特性(802)との間に歪が制限されている限り、すなわち、光学歪みが−60%から+50%の範囲内に収まっているかぎり、画像処理部で歪を補正することができる。
【0075】
レンズユニットの特性として、さらに物側最大画角での感度比が10%以上65%以下であることが好ましく、さらに好ましくは当該感度が40%以上65%以下である。短焦点、広画角のレンズユニットでは、図9に示すように、画像の周辺に行くにしたがって、感度が低下する。
【0076】
図9において、900は第1のレンズユニットの感度比特性であり、902は第2のレンズユニットの感度比特性である。例えば、感度比が“0.4”とは、画像の中心での輝度を“1.0”とすると、輝度が4割になっていることを示す。短焦点・高画角レンズユニットの係る感度の低下は図1に示すように、光の出口を筐体10の周辺領域に配置して、指の側面から光を照射することによって補うことができる。感度比を輝度比と言い換えてもよい。
【0077】
前記感度比が10%未満であると、画像の周辺部の輝度が低下して静脈パターンの正確な像を撮像素子で得ることができない。一方、前記感度比が65%を超えると、画像の周辺部の輝度が高くなることによって同様に静脈パターンの正確な像を撮像素子で得ることができない。本発明者が鋭意検討したところ、物側最大画角(物高が“1.0”)での感度比が第1のレンズユニットの特性(900)と第2のレンズユニットの特性(902)との間、即ち、感度比が10%以上40%以下の範囲にあれば、感度の低下を補償できることを確認した。
【0078】
本発明者がさらに検討したところ、焦点距離が0.15mm以上0.2mm以下、物側最大画角が100°、近軸倍率が0.04以上0.06以下、指の認証領域のサイズを幅方向に10mm、指の長さ方向に15mm〜18mmになるように複数のレンズの組み合わせを変えてレンズユニットを構成しその感度比を検証したところ、図25に示すように、物側最大画角での感度比を40%以上65%以下にできることを確認した。さらに、図26に示すように、物高と光学歪との関係について検証したところ、光学歪を−2%〜+50%の範囲に抑えることができた。
【0079】
既述のように、共役距離を5.0mm以上8.0mm以下にするためには、焦点距離が0.15mm以上0.20mm以下の短焦点レンズユニットを用いるが、一方で、光学歪および感度比の悪化が生じると画像の歪みを補正することができなかったり、静脈画像を正確に取得できないおそれがある。
【0080】
そこで、レンズユニットの光学歪を−2%〜+50%、近軸倍率を0.04以上0.06以下、物側最大画角での感度比を40%以上65%以下になるように、レンズユニットを構成することによって、この欠点を無くすことができる。
【0081】
以上により、撮像素子30は、レンズユニットの物側最大画角の領域からでも指内の静脈パターンを精度良く取り込むことができる。
【0082】
次に、指静脈認証装置の画像処理および認証機能について説明する。図10は、指静脈認証装置の画像処理装置に関する構成例を示すブロック図である。画像処理装置は、撮像素子によって撮像された画像から指の静脈パターンを抽出するパターン抽出部と、画像の歪を補正する画像補正部とを備えている。
【0083】
CPU(Central Processing Unit)60は、ユーザの操作に基づき、メモリ64に記録された画像処理プログラムをスタートし、DSP(Digital Signal Processor)62に撮像素子30から画像を取り込むよう指令する。CPU60は、撮像素子30の各画素の輝度データを、DSP62から取り込み、筐体10に指が載せられているか否かを判定する。
【0084】
筐体10に指が載っていない場合には、外光が撮像素子30に至り、所定以上に画素の輝度が上がるために、CPU60は筐体10に指が載っていないと判定する。
【0085】
CPU60が筐体10に指が載っていると判定すると、撮像素子30で得られた画像の各画素の輝度をチェックして、輝度が各画素で均一になるように、複数の照射口14から放出される光量を個別に制御する。具体的には、各照射口14に対応して配置された各光源に供給される駆動信号を制御して、光源の発光量を補正することにより、照射口14から放出される光量を制御する。
【0086】
以下、光量制御について詳しく説明する。適切な光量は指静脈認証装置に提示される指の幅や厚みによって異なるため、鮮明な指静脈画像を撮影するためには指の特徴ごとに光源の光量を調整する必要がある。
【0087】
例えば、指の厚みが薄い場合は、厚い指と比較して輝度が高くなる傾向にあるので、光量を少なくする。また、幅の細い指は幅の太い指と比較して光照射口から指までの距離が遠くなるため、光が届きにくい。十分な量の光を指に照射するために、光照射口14から出る光量を強くする必要がある。
【0088】
また、同一の指でも、指先側と指根元側で幅は違うため、適切な光量値が異なる。よって、指先側と指根元側の光量値はそれぞれ独立に制御する。または、指は指先が細く指根元ほど太くなるという特徴を利用し、指先側の光量が強くなるように予め光量を調整し、指先側、指根元側の光量を同時に制御してもよい。
【0089】
なお、各光源から同じ光量を指に照射せざるを得ないような場合には、光源の位置を指先ほど近く、根元側ほど遠くに配置するとよい。さらに、指の形状の左右の非対称性、指を筐体に載せた際の左右の位置ずれも考慮し、左右の光量値も独立に制御することが好ましい。複数の画素間における輝度が均一化しないことに基づいてCPU60は指の形状の非対称性、指の左右方向の位置ずれ、指の厚み等を判定し、指の左右の側面側、指先・根元側の光源を独立に制御する。
【0090】
CPU60は光量の補正の終了を判定すると、DSP62に撮像素子30で撮影された画像について歪補正を行なうように指令する。歪補正は既述の歪特性に基づく演算によって行なわれる。したがって、指静脈認証装置の出荷前に、予めレンズユニット38の歪特性を求めて、メモリ64に歪特性を保存しておく。DSP62はこの歪特性を参照して、撮像素子30で得られた画像の各画素について歪補正を行なう。
【0091】
歪がX%であると、画像中の補正対象画素に補正値(100/X)が乗じられて、画像中心(光軸)に対する画素位置が演算結果に基づいて補正される。歪がプラスである場合には、画素位置が光軸側に補正され、歪がマイナスである場合には画素位置が光軸から離間する方向に補正される。この結果、例えば図6及び図7に示すように、歪んだ画像を補正することができる。
【0092】
CPU60は歪補正後の画像をメモリ64に記憶し、CPU60は補正後のモノクロ画像の各画素について濃淡を判定し、補正後の画像から静脈パターンを抽出する(特徴点抽出)。
【0093】
光源から指に照射された近赤外光は静脈中のヘモグロビンに吸収される一方、他の組織によって様々な方向に拡散するので、静脈パターンに対応した透過光がレンズユニット38を介して撮像素子30に至る。静脈パターンに相当する画素領域では透過光が吸収によって弱められるので、静脈パターンに相当する領域が暗くなったモノクロ画像が撮像素子30によって得られる。
【0094】
CPU60は、このモノクロ画像から静脈パターンを検出し、検出した静脈パターンを用いて生体認証を行なう。具体的には、このように指静脈認証装置で抽出された静脈パターンをメモリ64に登録し、登録された静脈パターンと新たに抽出された静脈パターンが一致するか、又は不一致であるかの判定を行って本人認証の合否を決定する。
【0095】
指静脈認証装置が携帯電話等の情報処理装置に搭載されている場合や、外部装置に有線または無線で接続されている場合、CPU60は、本人認証の結果を情報処理装置や外部装置に通知し、この通知を用いて情報処理装置等は電子商取引、ネットバンキングの各種サービスをユーザに対して提供する。
【0096】
図27は、焦点距離が0.15mm以上0.20mm以下の短焦点レンズユニットであって、光学歪が−2%〜+50%、近軸倍率が0.04以上0.06以下、物側最大画角での感度比が40%以上で共役距離が8mm以下のレンズユニットを用いて、図6と同様の条件の下で撮像素子で得た画像である。図27から分かるように、撮像素子30で得られた画像の中心部の回りで画像に歪が生じているために、この歪を無くすように画像処理装置が歪を補正する。
【0097】
画像処理装置が画像を補正処理するに際して、本願発明者は、撮像素子で前記基準印刷物の画像を取得し、取得した画像を画像処理プログラムに取り込んだ。次に、画像処理プログラムを利用して補正前の画像の全ピクセルについてそれぞれ既述の補正値を決定し、これをパラメータとしてメモリに保存した。
【0098】
レンズユニットのサイズや特性の相違、そして、筐体10のサイズ(溝部12の透過光取込口20のサイズ)の相違がある場合には、各形態のものについてそれぞれパラメータを決定する。決定されたパラメータは、画像処理装置のメモリ64に予め設定記憶させておく。DSP62はメモリ64からパラメータを読み込んで、画像の補正を行う。
【0099】
以上の説明では、歪補正を行なった後に特徴点抽出処理を行ったが、特徴点抽出処理により静脈パターンを画像から抽出した後に歪補正を行なってもよい。
【0100】
この場合は、歪補正の対象となる画素数を静脈パターンに相当する画素数に制限できるために、DSP62が歪補正に必要な処理時間を低減できる利点がある。全画素について歪補正を行った場合に比較して、特徴点抽出後に歪補正を行なうことによって、補正が必要な画素数を約1/8に減少させることができる。
【0101】
なお、図10の例では、CPU60、DSP62及びメモリ64がそれぞれ別に構成されているが、これに限定するものではなく、これらの一部または全部を1つの処理部として構成するようにしてもよい。
【0102】
また、指静脈認証装置を携帯電話等の情報処理装置に搭載する場合には、認証装置内にCPU60等を設ける代わりに、情報処理装置のCPU等を用いて、画像処理および認証を行なうようにしてもよい。
【0103】
また、画像処理及び認証機能の一部又は全部を、情報処理装置からサーバ側に移してもよい。またさらに、指静脈認証装置や情報処理装置に静脈パターンデータを記憶する代わりに、サーバにパターンデータを登録するようにしてもよい。なお、静脈パターンを指静脈認証装置や情報処理装置等に登録する場合には他人に読み取られないように、静脈パターンに暗号化を施した上で登録する。
【0104】
次に指静脈認証装置を携帯電話に適用した実施形態について詳しく説明する。以上説明した指静脈認証装置では指底と撮像素子間の距離を短くできるために、携帯電話などの小型の情報処理装置であっても、装置の大型化を抑制しつつ、指静脈認証装置を情報処理装置に搭載することができる。
【0105】
図11(1)は携帯電話の筐体52の平面図、図11(2)はその右側面図であり、(3)はその正面図である。本例では、携帯電話のヒンジよりに静脈認証装置50が搭載されている。ユーザに静脈認証装置50の存在を分かり易くするために、静脈認証装置50の筐体10が僅かに携帯電話の筐体52の表面より突出している。
【0106】
図12に示すように、ユーザは、片手だけで携帯電話を握りながら人差し指の第一関節付近を静脈認証装置50上におくことができる。片手で安定した状態で携帯電話50を握りながら、認証対象の指の第一関節付近を静脈認証装置に合わせることができるように、静脈認証装置50の先端を携帯電話の先端端部から約3cmの位置に設けることが好ましい。
【0107】
また、図13に示すように、静脈認証装置50を携帯電話の開放端寄りに設けてもよい。この場合、認証装置の基端を携帯電話の開放端から指先から第一関節間の距離にほぼ対応する約3cmの位置に設けるとよい。このような位置に配置することにより、静脈認証装置50に指を置いた場合に、指の第2関節が自然に緩やかに曲がり、指が静脈認証装置50に押し付けすぎになることを防止することができる。
【0108】
図5や図11等の例では、携帯電話の筐体52の平面部に設けているが、これに限るものではなく、筐体52の表面であれば、例えば側面に指静脈認証装置を設けるようにしてもよい。
【0109】
以上、指静脈認証装置を携帯電話に搭載した例について説明したが、指静脈認証装置が適用される対象は携帯電話に限らず、PDA、ノートパソコンなど各種情報処理装置でもよいことは勿論である。また、情報処理装置に限らず、本発明に係わる指静脈認証装置を車や入出管理装置などに搭載するようにしてもよい。
【0110】
図14は図1のA−A断面図例であって、図15はそのB−B断面図例である。指静脈認証装置が携帯電話52内に携帯電話と一体になって収納されている様子が図14及び図15に示されている。即ち、筐体10が携帯電話の筐体を兼ねている。なお、既述の図面と同一の符号は同一の部材であることを意味し、説明を省略する。
【0111】
携帯電話52の筐体内には、光源であるLED72が埋設されている。LED72の頭頂部からLEDの幅方向に対して直角方向に筐体10に貫通孔74が形成され、この貫通孔74は照射口14に繋がっている。LED72から射出された近赤外光は、貫通孔74を通過して照射口14から指に向けて進行する。指底付近には指の長手方向に沿って壁16が設けられているために、LDE72から照射された光は壁16を越えて指の側面から指内に進入する。
【0112】
指の側面から進入した光は指の内部で拡散すると共に一部は静脈を透過して撮像素子30側に到達し、レンズユニット38は透過光から静脈パターンに相当する画像を撮像素子30上に結像する。
【0113】
図17に、指静脈認証装置の内部構成の他の例を示す。図14の例では、照射口14から光が効率的に射出されるように、照射口14の中心とLED72の中心がほぼ一致するように配置されている。照射口14は壁16の外側に設けられているため、このように、LED72を照射口14の中心とあわせて配置すると、指静脈認証装置の幅が大きくなる。
【0114】
これに対して、図17に示す例では、LED72から発生した光を照射口14まで誘導するライトガイド90を設けることにより、幅を狭くしている。
【0115】
ライトガイド90は、照射口14に近づくにつれて筐体10の外周側向かって傾斜するテーパ面92を備えている。LED72からライトガイド90の底面に進入した放射光はテーパ面92に沿って誘導され、照射口14から指の側面に向かって射出される。
【0116】
これにより、照射口14から光が効率的に射出されるように保ちつつ、LED72の中心が、照射口14の中心よりも内側に設けることができるため、指静脈認証装置の幅を狭くすることができる。
【0117】
また、このライトガイド90は、各照射口14に対応して配置されたLED72ごとに設けるようにしてもよいし、左側および右側に設けられた複数のLED72に対して、それぞれ1つのライトガイドを設けるようにしてもよい。
【0118】
なお、左側および右側にそれぞれ1つのライトガイドを設ける場合、複数の照射口を備えるかわりに、壁16に沿って矩形や楕円形の照射口をそれぞれ1つ設けるようにしてもよい。このような照射口を設けることにより、ライトガイドを複数のLEDに対して共通化できるとともに、指の側面に均一に光を照射することができる。また、左右方向だけでなく、上下方向にも矩形等の形状を有する照射口を設けるようにしてもよい。
【0119】
図18に、筐体10の左右および上下方向に、矩形状の照射口14Aを設けた例を示す。なお、本例では、指の第一関節の設置位置を指示する突起18Aが筐体10の幅方向内側に向かって突出するように構成され、指を溝側に向かって誘導する小片22Aが指の外周形状に合わせてテーパ面がR状に形成されている。
【0120】
次に、既述の壁16の形状について詳細に説明する。図19(1)は既述の図1に示す認証装置を指先側から見た図である。図21と図22は壁16の他の形態を示す。
【0121】
図19(1)で示す通り、壁16の幅は、光照射口14の筐体内側の端縁と溝部16の筐体外側の端縁との間の距離とほぼ同じである。壁16を図21で示すように、図19(1)よりも幅を狭くし、光照射口12側に寄せて筐体に設置してもよい。これにより、指を支える支点が指の外側に移動して、指を筐体に対してより低い位置に置くことができる。そのため、指に対する壁16の高さが相対的に高くなり、光源3が指の高い位置のみに光を照射できる。
【0122】
さらに、壁16を図22に示すように、指の外周形状に合わせてR状にしてもよい。これにより、指と壁16の触れる面積が増えるため、壁16は、指の底面へ回りこむ光を遮断する効果を向上できる。壁16は指の側面の形状に合致するために、壁16は筐体に対して指を安定して支持できる。
【0123】
光源3は光源3の上端が筐体10の平面の位置と同じ高さ、または、それより若干低くなるように筐体に設置して、光源が筐体の平面から突出することを避ける。
【0124】
光源から十分な光量を指へ照射することができれば、光源3の上端の一部が壁16や筐体10によって覆われていてもよい。例えば、図23のように、光源3の一部が壁16の下に隠れるように配置すると、光源3を装置の内側(溝部12側)へ近づけて設置することができる。これにより、認証装置の幅を短縮できる。
【0125】
図24は領域によって光の減光率が異なるフィルタ230を筐体に設置した指静脈認証装置である。図24(1)は装置の断面図、図24(2)は平面図である。図24(3)はフィルタ230である。フィルタの色が濃い領域ほど光の減光率が高く、薄い領域ほど光の減光率が低いことを示す。
【0126】
図24(2)のように指の側面側に光源を設置した認証装置で静脈を撮影すると、撮影された画像は、光源に近い領域ほど輝度値が高く、画像の中央領域ほど輝度値が低くなる。そこで、図24(1)で示すように指と撮像素子30の間にフィルタ230を設置する。これにより撮像素子30に届く光の量は、指左右領域と中央領域で均等になり、画像全体が均一の明るさの静脈画像を撮影することが可能となる。また、フィルタ230を設置せずに、画像処理装置が、撮像素子30で画素毎にゲインやシャッタースピード等の感度制御を行なってもよい。光源側の画素ほど感度を低くし、中央の画素の感度を高くすることで、フィルタ230を設置した場合と同等の効果を得ることができる。
【0127】
さらに、既述の形態のライトガイドとは異なる形態を持ったライトガイドを備えた指静脈認証装置について説明する。このライトガイドは図28に示すように、ライトガイド90の装置側側面280が重力方向に沿っており、この側面に対向する側の側面282が重力方向に対して、装置の上方になるにしたがって装置側に傾斜するテーパになっている。
【0128】
ライトガイドをこのような形状にすることによって、ライトガイドから射出される光線の方向を指の側面に向けることができ、好ましくは図28に示すように光線の方向284を指24に対する接線方向にすることができる。
【0129】
本発明者が検討したところ、平均的な人の指のサイズが直径14mmであることを考慮すると、ライトガイドから重力方向に対して、約18°から28°の角度(θ)を持った光を指の側面に向けて射出すれば、画面全体に渡って輝度レベルの均一性が極めて良好な画像が得られる事が判った。
【0130】
なお、ライトガイドをこのように構成することによって、壁16が無くても光源72からの光を指42の側面に誘導することが可能であって、既述の壁16を筐体10から省くことができ、あるいは、壁16の高さを低減することもでき筐体の厚さをその分低減できる。なお、図28に 破線で示すように、低い高さの壁16を、ライトガイド90より指側(筐体10の中心軸側)に配置しても良い(図17参照)。
【0131】
図29乃至図31にライトガイド全体の斜視図を示す。ライトガイド90は、筐体10の長さ方向に沿ったパネル状に構成されている。符号72はライトガイドの下端に設けられる光源としてのLEDであり、符号73はLED72の制御基板である。LEDはライトガイドの長さ方向の端部に合計2箇所設けられている。
【0132】
図30の(1)はライトガイド他の例を示す斜視図であり、5個のLED光源がライトガイドの長さ方向に沿って配置されている。LED72の個数を増せば画面全体に渡って輝度レベルの均一性が良好な画像が得られ。LED72の個数は特に限定するものではないが、消費電力の点からは少ない方が良い。なお、図30の(2)に示すように、ライトガイドの高さHがライトガイドを収容する、筐体10の溝部90Jの高さより短く、ライトガイドの終端面90Hが光射出口14より下方で終わっていても良い。
【0133】
図31はライトガイドのさらに他の例を示す斜視図であり、ライトガイドを筐体の厚さ方向で2分割したことを示している。
【0134】
なお、ライトガイドをこのように2分割した構造において、分割部にある2基のライトガイド(90A,90B)の二つの端面を若干離間させ、かつ最初にLEDからの光が供給される第1のライトガイド90Bの端面91を第2のライトガイド90Aの端面93に対して球面状あるいは、非球面形状に形成することによって、LED72から第1のライトガイド90Bに供給された光を平行光にして第2のライトガイド90Aに導くことができる。これによって、第2のライトガイド90Aから射出される光の方向を既述のとおり指の側面にさらに優位に導くことができる。
【0135】
ライトガイドの指側の終端面は、図29乃至図31ではいずれも平坦として描かれているが、これを球面形状あるいはR状などの環状、ないしは、筐体10の外側から内側に向けて高さが低く、あるいはその高さが逆に高くなるテーパ状(ナイフエッジ状)など、波状、あるいはマイクロレンズアレイなどの非環状の形状にすること事でもよい。
【0136】
ライトガイドは透明のガラス又は透明の樹脂から構成される。ライトガイドには、珪素、アルミニウムなどの光拡散材を入れてもよい。
【0137】
図32は、左右のライトガイド90が筐体10に対して非対称な形状に構成されていることを示す模式図である。静脈認証装置を携帯電話などの電子機器に搭載する際に、電子機器本来の部品を避けるように静脈認証装置の構成を設計しなければならない。
【0138】
図32はその一例であって、向かって右側のライトガイドに光を供給するLED72を筐体の上方側に移動させ、このLED72に向かってライトガイド90の終端付近に向かって直角に曲げていることを示している。
【0139】
さらに、ライトガイド90が臨む光の射出口14(図19参照)の筐体10における高さ位置、あるいはライトガイド90の高さを図33に示すように、指先側に比べて掌側で徐々に高くなるテーパ状になるように筐体10を調整することが良い。図33において、符号90Lは、ライトガイドの上端部を示している。
【0140】
これは、指の第1関節付近においても指先側で指の径が指根元側での指の径より小さいためである。すなわち、指の側面の中心に光を誘導するために、このように射出口の位置を変えている。射出口の位置が変わることによって、ライトガイドの高さや指側端面の形状も適宜変更される。
【0141】
既述の実施形態では、レンズユニットを2郡2枚のレンズから構成したが、要求されるレンズ特性を持つ限り、1枚のレンズ、あるいは3枚以上のレンズからレンズユニットが構成されてもよい。
【0142】
また、本発明に係わる静脈認証装置が適用される対象は携帯電話に限らず、PDA、ノートパソコンなど各種情報処理装置でもよいことは勿論である。また、情報処理装置に限らず、本指静脈認証装置を車や入出管理装置などに搭載してもよい。
【0143】
また、前記筐体には指の第一関節が置かれる位置を指示する指示手段として突出部を設けたが、これに限らず指の第一関節が置かれる位置を示す標識、マークなど、他の指示手段を用いてもよい。
【0144】
また、既述の実施形態では指静脈認証装置を携帯電話の平面に設けているが、指静脈認証装置を携帯電話の底面、携帯電話の側面、正面、或いは底面に設けてもよい。
【0145】
また、既述の実施形態では指の腹側を筐体10に提示し、指腹側の静脈を撮影するが、指の側面や甲側を筐体10に提示し、指側面や甲側の静脈を利用して認証を行なってもよい。特に指の甲側を撮影する場合は指を屈曲した状態で撮影を実施すると鮮明な静脈の撮影が可能となる。
【0146】
また、既述の実施形態では指の第一関節周辺を撮影したが、指の第二関節周辺や関節以外の部位を認証に用いてもよい。
【0147】
以上説明した実施形態は一例であって、本発明が既述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】指静脈認証装置の一例を示す斜視図である。
【図2】指静脈認証装置に指が載せ置かれている状態を示す斜視図である。
【図3】指静脈認証装置の小片の正面図の一例である。
【図4】指静脈認証装置の内部構成および指との位置関係の一例を示す概略図である。
【図5】指静脈認証装置が搭載された携帯電話の一例を示す斜視図である。
【図6】撮像素子で得られた画像(歪あり)例を示す。
【図7】撮像素子で得られた画像に歪補正書を施した後の補正画像例を示す。
【図8】物高と歪(%)との関係の一例を示す特性図である。
【図9】物高とレンズユニットの感度比との関係の一例を示す特性図である。
【図10】指静脈認証装置の画像処理機能に関する構成例を示すブロック図である。
【図11】指静脈認証装置が搭載された携帯電話の一例を示す平面図、右側面図および正面図である。
【図12】ユーザが携帯電話を片手で把持している状態例を示す斜視図である。
【図13】ユーザが携帯電話を片手で把持している状態例を示す斜視図である。
【図14】図1に示す指静脈認証装置のA−A断面の一例を示す図である。
【図15】図1に示す指静脈認証装置のB−B断面の一例を示す図である。
【図16】指静脈認証に係わる光学モデルを説明する図である。
【図17】ライトガイドを有する指静脈認証装置の内部構成の一例を示す断面図である。
【図18】指静脈認証装置の一例を示す斜視図である。
【図19】図2の指静脈認証装置を指先側から見た状態の断面図である。
【図20】静脈脈認証装置に光源を配置する際の複数の形態を説明するための、筐体の平面図である。
【図21】(1)は遮光壁の他の実施形態を備えた筐体の平面図であり、(2)この筐体を指先側から見た断面図である。
【図22】(1)は遮光壁のさらに他の実施形態を備えた筐体の平面図であり、(2)この筐体を指先側から見た断面図である。
【図23】(1)は遮光壁のさらに他の実施形態を備えた筐体の平面図であり、(2)この筐体を指先側から見た断面図である。
【図24】(1)は減光フィルタを設置した指静脈認証装置の筐体を指先部から見た状態の断面図であり、(2)その平面図であり、(3)は減光フィルタの平面図である。
【図25】共役距離を5mmから8mmにするレンズユニットの物高と周辺感度比との関係を表す特性図である。
【図26】共役距離を5mmから8mmにするレンズユニットの物高と光学歪との関係を表す特性図である。
【図27】焦点距離が0.15mm以上0.20mm以下の短焦点レンズユニットであって、光学歪が−2%〜+50%、近軸倍率が0.04以上0.06以下、物側最大画角での感度比が40%以上で共役距離が8mm以下のレンズユニットを用いて、図6と同様の条件の下で撮像素子で得た画像である。
【図28】図17とは異なる形態を持ったライトガイドを備える指静脈認証装置の幅方向の断面図である。
【図29】ライトガイドの一例を示すライトガイド全体の斜視図である。
【図30】(1)はライトガイドの他の例を示すライトガイド全体の斜視図であり、(2)はライトガイドの溝内における形状の概要を示す。
【図31】ライトガイドのさらに他の例を示すライトガイド全体の斜視図である。
【図32】指静脈認証装置の左右に存在するライトガイドが、非対称の形状に形成されている状態の概要を示す断面図である。
【図33】ライトガイドの筐体に対する高さが指先側から掌側に向かって徐々に高さが高くなっている様子の概要を示す、筐体の側面図である。
【符号の説明】
【0149】
10 筐体(指静脈認証装置)、11 指ガイド部、12 溝部、14 照射口、16 壁、18 突出部、20 透過光取込口、28 基板、30 撮像素子、33 レンズ装置、34 第1レンズ、36 第2レンズ、38 レンズユニット、40 IRフィルタ、39 レンズ筐体、90 ライトガイド。
【技術分野】
【0001】
本発明は指静脈認証装置およびこれを用いた情報処理装置に係わり、特に、指静脈認証装置を小型化するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
さまざまなセキュリティ技術の中でも、指静脈は高精度な認証を実現できるものとして知られている。指静脈認証は、身体内部の指静脈パターンを使用するために優れた認証精度を実現し、かつ指紋認証に比べて偽造・改ざんが困難であることにより高度なセキュリティを実現できる。
【0003】
この種の指静脈認証の従来例として、例えば、特開2006−155575号公報に記載の生体認証装置が知られている。この生体認証装置は、指を通過する光を照射する光源と、上記指を透過した光を撮像する撮像部と、上記指が所定位置に存在することを検知する指検知手段と、上記撮像部によって撮影された画像の中から上記指の占める領域を抽出する指領域抽出手段と、上記抽出された領域内部の特定部位の画質により上記撮像部における撮像素子の増幅率を変化させる利得変化手段と、を備えている。
【特許文献1】特開2006−155575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指静脈認証は掌静脈認証に比較して認証装置を小型化できる利点がある。しかしながら、近年では、携帯電話などの小型情報装置を利用した電子商取引やオンラインバンクの普及により、指静脈認証装置をさらに小型化して小型情報装置に適用できるようにすることが望まれる。
【0005】
特開2006−155575号公報に記載の生体認証装置は、透過光による指静脈パターンの撮像において、外部環境の違いがあっても、それに影響されることなく、常に最適な静脈パターンの品質が得られる撮像方式であるものの、認証装置を小型化することについては記載されていない。
【0006】
そこで、本発明は、携帯電話などの小型装置に適用可能な指静脈認証装置及びこれを備える情報処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る指静脈認証装置は、指を載置させる筐体と、前記指に向けて光を射出する光源と、前記光によって前記指の内部を撮像する撮像素子と、前記指からの前記光を前記撮像素子に結像するレンズユニットを備えるレンズ装置と、前記撮像素子によって撮像された画像から前記指の静脈パターンを抽出するパターン抽出部と、画像の歪を補正する画像補正部と、を有する画像処理装置と、を備える指静脈認証装置であって、前記レンズユニットの焦点距離が、0.15mm以上0.5mm以下、その物側最大画角が100°以上、その近軸倍率が、0.04以上0.1以下、そして、その光学歪みが、−60%〜+50%であり、前記指と前記撮像素子との間の距離が5mm以上12mm以下、である、ことを特徴とするものである。
【0008】
さらに、本発明に係る情報処理装置は、前記指静脈認証装置と、当該指静脈認証装置から出力された前記静脈パターンに基づいて個人認証を行う個人認証装置と、を備え、当該個人認証装置での認証結果に基づいて電子取引処理を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、携帯電話などの小型装置に適用可能な指静脈認証装置及びこれを備える情報処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
携帯電話などの小型装置への搭載に好適な指静脈認証装置について説明する。この指静脈認証装置では、指の下方(指腹側)に設けられたLED(Light Emitting Diode)などの光源から光を指内に照射し、指内部で拡散した光のうち静脈を透過するか又は静脈から反射する等して、指の静脈の形態(静脈パターン)を含む指の内部環境の影響を受けて指外部に放出される光(以下、この光を「透過光」という。)に基づく画像を撮像し、この画像から静脈パターンを抽出して本人認証を行なう。
【0011】
指静脈認証装置の撮像部が指静脈パターンの画像を鮮明に撮像するためには、以下の光学的な条件を満たすことが望まれる。一つは、指の皮膚の表面で反射した赤外光を撮像部が撮像しないことである。この条件を満たさないと、指静脈パターンの画像が、指の皮膚の表面のしわなどの不要な情報を含んでしまい、不鮮明になってしまう。
【0012】
もう一つは、指静脈の存在する深さまで到達せずに散乱した赤外光を撮像部が撮像しないことである。この条件を満たさないと指静脈パターンの情報を含まない赤外光が、指静脈パターンのコントラストを低下させてしまう。
【0013】
図1は指静脈認証装置の一例を示す斜視図であり、全体が立方体状に形成された筐体10を持って構成されている。この筐体10の平面側には、図2に示すように指が載せ置かれるための指ガイド部11が備えられている。この指ガイド部11は、壁16、小突部18および小片22から構成されている。
【0014】
また、筐体10の平面側には、焦点距離を確保するために、認証対象の指と後述の光学系とを離間させるための溝部12が設けられている。なお、後述のように、本例では光学系に短焦点・広画角のレンズユニットを適用することにより、溝部12の深さを低減できる結果、指静脈認証装置のサイズを厚さ方向に小型化できる。
【0015】
溝部12の幅は、指幅よりも狭くなっている。ユーザは図2に示すように溝部12を全て覆うように指を置く。これにより、指側面に設置されている光照射口14から放出された光や外光が、溝部12上の指の腹側表面へ直接照射されるのを防ぐことができる。指腹の表面などで反射して溝部12の下方にある光学系へ行く光を無くすことができるために、鮮明な静脈画像を撮影することができる。
【0016】
照射口14は、筐体10の内部に配置されたLEDなどの光源から発生した光を指ガイド部11に載置されたユーザの指の側面に向けて射出するように、指ガイド部11の外側に設けられている。なお、本例では、照射口14の形状は円形になっているが、これに限定するものではなく、楕円形や四角形などの多角形であってもよい。
【0017】
溝部12の底面24には、指から透過光を取り込むために例えば矩形(長方形)の透過光取込口20が設けられている。この透過光取込口20にはIRフィルタが敷設されている。IRフィルタは太陽光や蛍光灯の光など、認証に不要な外光を遮断する。また、埃・水滴などが認証装置内部に進入するのを防ぐ。底面24の下に配置されたレンズ装置や撮像素子により、透過光取込口20から取り込まれた透過光に基づく画像が撮像される。
【0018】
壁16は比較的短い高さを持って指側に突出し、指の両側で指の長手方向に沿って短冊状に形成される。また、一対形成された壁16は互いに平行に向き合っているために、指が筐体10の平面に載せられた際に指の両側面を支持する機能を備えており、指を筐体10に載せて指静脈を撮影する際に、指が左右方向にずれるのを防ぐことができる。
【0019】
さらにこの壁16は、赤外光に対して不透明な素材で作成されている。これにより筐体の平面部の外縁側に複数配列された光の射出口14からの放出光を指底よりも指の側面に誘導する機能を持っている。
【0020】
壁16が指の側面から光を指内に入射させると、撮影したい静脈パターンに対し指の深部に到達する光量が増加し、これに伴い上述のような画質を低下させる指腹の表面などからの反射光成分が減少するため、鮮明な透過光で指静脈パターンを撮影することが可能となる。さらに、壁16は、光を指の腹より高い位置の指の側面に照射することができるために、指静脈認証装置は、鮮明な静脈画像を撮像することが可能となる。
【0021】
図16に示すように、指の側面からではなく指の底面から光が指内に進入すると、指の表皮や指内組織などの散乱物質84の影響を受けて光が矢示82に示すように散乱し、撮影すべき静脈パターン80に到達しない光が撮像素子30側に反射する。これにより静脈の情報を持たない光が撮像素子に集中し、静脈に対応する画像に対するコントラストを低下させるという欠点がある。
【0022】
これに対して、指静脈認証装置が指の側面から光を入射させることにより、既述のコントラストを低下させる反射光成分がレンズ装置33に到達することを避けつつ、指の深部に到達し、指の静脈を透過するか、又は静脈から反射するなどして静脈パターンの情報を持った透過光86がレンズ装置33に到達する割合を増加させることができる。
【0023】
また、壁16の長手方向のほぼ中心には、短矩形状で指側に突出する小突部18が存在する。この小突部は指の第一関節を指し示す役割を担っており、ユーザは指の第一関節が一対の小突部18に当たるように、指を筐体に載せることにより、後述のレンズユニット及び撮像素子が指の第一関節に付近にある静脈パターンを取り込むことができる。指の関節部分は、その前後の部位に比べて窪んでいるため、その窪んだに小突部18がうまく嵌り易い。
【0024】
指静脈認証では、指の第一関節付近の静脈パターンが高精度の生体識別に有用である。そのため、透過光取込口20は指の第一関節付近の画像を取り込める面積を持った矩形、例えば、長辺が10mm〜20mm、短辺が5mm〜10mmの矩形であることが好ましく、さらに、指静脈認証装置の小型化のためには、長辺が5mm〜12mmで短辺が3mm〜7mmの矩形であることが好ましい。透過光取込口20をこの大きさにすると、被写体としての指の撮影可能な領域の大きさが6〜14mm×10〜24mmになる。
【0025】
指の第一関節付近の静脈パターンが高精度の生体識別に有用であることは、関節付近は皮膚が薄く静脈が透けて見えやすいためである。
【0026】
小突部18は第一関節の位置だけでなく、指先を置く位置に設置してもよい。さらに、指を複数の点に触れて位置決めすることによって、指の提示位置を安定にする。また、小突起18にタッチセンサを設置してもよい。これにより、指が確実に筐体10へ置かれたことを検知でき、指の提示位置が毎回安定すると共に、指が装置から離れた状態で指静脈を撮影することを防ぐことができる。
【0027】
指の第二関節周辺に関しても、同じ理由で静脈が透けて見えやすい。したがって、小突部18を第二関節の位置合わせ用に流用して認証に供することも可能である。但し、第二関節で位置合わせした場合、指が認証装置から指先側に大きくはみ出す形となり、認証装置を設置する場合に、指先側に対してより広い開放空間が必要になる。認証装置をコンパクトに構成し、或いはこれをコンパクトに使用するためには、第一関節を撮影することの方が好ましい。
【0028】
なお、小突部18のかわりに、指の第一関節が置かれる位置を示す標識やマークなど、他の指示手段を用いてもよい。
【0029】
図19(1)は図2の筐体10を指先側から見たときの光源3の筐体10における設置位置を示す断面図である。光照射口14の内部には赤外光源3が埋め込まれている。光源3には例えばLEDを用いることができる。これは、図19(1)に示すような砲弾型LEDを用いてもよいし、上面が平面状のLEDでもよい。
【0030】
以下、光源3の設置位置について説明する。光源3は指の腹側に設置されている。従来の指静脈認証装置では光源を指の上側、又は側面に設置していたため、指の上側や側面側にも筐体を延長させて光源を支えることが必要となるため、装置の厚さが増さざるを得なかった。光源を指の腹側に設置すると、指の上側や側面へ筐体を延長することを避けることができるために筐体を薄くできる。さらに、後述するように指表面のしわの影響を軽減するために光源3を指の側面側に設置した。
【0031】
指表面には指紋や関節のしわが多数存在する。認証のための精度を向上するには、しわの影響を抑えて静脈を鮮明に撮影しなければならない。しわの影響を抑えるために、しわの向きを考慮して光源を筐体に配置する。
【0032】
例えば、しわの向きが指の長手方向と垂直の向きになっている場合、光源を指の側面に設置する。これにより光源から照射された光の進路と、しわの向きとが平行になる。従って、光がしわの壁に衝突せずに撮像素子へ到達するため、撮像素子はしわの影響を抑えた画像を撮影できる。
【0033】
指の第一関節周辺のしわは指の長手方向に対し垂直の向きのものが多くを占めるために、光源を指の側面側に設置した。
【0034】
指静脈を認証するため、画像処理装置は画像中の各画素の輝度値を調べ、周囲の画素よりも輝度が低い画素を静脈である判定して、画像から静脈パターンを抽出する。高精度に静脈パターンを抽出するために、指全体に均一な光量となるように光を照射し、撮像素子が輝度むらの少ない画像を撮影することが重要である。もし、光の照射に偏りがあり、一部の領域のみが暗く撮影されると、画像処理を行なった際に、その領域を誤って血管として抽出してしまう。
【0035】
図20は、静脈認証装置が輝度むらの少ない画像を得る為の光源3及び光照射口14の筐体に対する配置の例を示す。図20の(1)〜(6)は筐体10の平面を示す摸式図である。
【0036】
光源3は、十分な明るさで指を照射できれば筐体の左右に一対あれば少なくともよいが、静脈パターン像の画質を向上させるために、図20(1)や図20(2)のように、光源を指の長手方向に沿って筐体に対して複数の対になるように配置することが好ましい。
【0037】
この場合、筐体の左右それぞれの側で、光源の間隔が均等になるようにして、指先側から指根元側までを均一な明るさで照射できるようにすることが好ましい。
【0038】
さらに、左右にある複数の光源の光量を独立に制御するできることが好ましい。さらに、指の側面側の光源だけでは、指先と指根元側に十分な光が届かない場合、図20(3)のように、指先と指根元側にも光源3を設けて指に照射される光量を補助してもよい。
【0039】
光源3を複数配置する場合は全ての光源3を完全な等間隔に設置するのではなく、図20(4)乃至(6)のように筐体の中央付近を避けて指先及び根元側に光源を配置してもよい。指の第一関節は皮膚が薄いため他の部位より少ない光量でも静脈を撮影することができるためであり、第一関節以外の部位に強い光が当たり、第一関節にはやや弱い光が当たるようにして、指の画像全体に光量を均一にできる。
【0040】
光源を筐体に最適に配置するための態様は、撮影に用いる光学部品の特性によっても変化する。指静脈認証装置の筐体を小型化するためには短焦点のレンズユニットを用いることが有効である。しかし、短焦点レンズは画像の周辺に行くほど感度が低下しやすい欠点がある。したがって、この種のレンズで指を撮影すると、画像の中心から遠い領域ほど、すなわち指先側、指根元側の画像の領域の感度が低くなってしまう。
【0041】
そこで、図20(4)や図20(5)のように光源3を筐体の前端寄り、そして後端寄りに配置する。これにより指を筐体に提示すると、指先側の側面と指根元側の側面により強く光が光源より照射される。よって、撮影される画像は、全体の輝度が均一になる。
【0042】
図20(4)及び(5) に示す如く、光源を指先、根元側になるように筐体に配置すると、光源から照射された光が、指先と指根元の腹側に回り込んでしまう。
【0043】
既述のとおり、撮影画像に対して散乱物質84による散乱光を目立たせないためには、指の側面からの光を照射することが有用であり、指先そして指の根元の腹側へ光が回り込むのを抑制することが必要である。
【0044】
そこで、図1で説明した壁を、図20(4)のようにコの字型にして筐体に設置するか、図20(5) のように壁16を指の長手方向に沿って十分長くなるように筐体に設置する。これによって指先、指根元の側面に主に光を照射できる。
【0045】
図19(1)で示す通り、光源3は指の左右側に、筐体10に対してほぼ垂直に設置される。指は指先側から見ると丸い形状をしているため、光源3を指の両側で筐体に設置し、筐体から上方へ光を照射すると、光は壁16に遮られて指の高い位置に到達する。これによって、静脈の画像においてコントラストが高くなる。
【0046】
なお、図19(1)では、光源3が指の輪郭よりも外側に存在するが、光源3は指の輪郭よりも筐体の内側(溝部12に近い側)に設置してもよい。これにより筐体の幅を小さくできる。
【0047】
既述のとおり、光源3は溝部12から離れるように筐体に設置して、指の底面に回りこむ光を抑えることがより好ましいのであるが、本発明者が検討したところ、溝部12の縁と光源3との間の距離(図19(1)のC1)が少なくとも2mmあればよい事が分かった。
【0048】
光源3の上端を、図19(2)のようにやや筐体の内側に向かって傾斜させてもよい。これにより、指が細くても、光源が計測に足る光量を指へ照射できる。また、それぞれ傾斜する角度が違う複数の光源3を筐体に設置して、指の太さ毎に点灯させるべき光源3を切り替えてもよい。さらに、光源の角度を制御できるようにしてもよい。
【0049】
図1に戻り説明を続けると、小片22は、筐体10の指先側略端部と腕側略端部において、一対の壁部16からそれぞれから筐体中心に向かって突出する。図3は、図1に係る指静脈認証装置の長手方向に沿って筐体10を眺めた小片22の正面図の一例である。図3の例では、小片22は筐体10の中心側に行くにしたがって高さが低くなるテーパ面22aを備えている。
【0050】
指を筐体10の平面側に載せると、指がこのテーパ面22Aにしたがって筐体の底面方向に誘導され指が筐体に、より密着するようになる。したがって、外光が指と筐体10との隙間から撮像ユニットに進入することを防ぐことができる。
【0051】
図4は、図1に示す指静脈認証装置の内部構成および指との位置関係の一例を示す概略図である。
【0052】
レンズ装置33は透過光を撮像素子30に結像するものであって、指側の第1レンズ34と撮像素子側の第2レンズ36とからなるレンズユニット38がレンズ筐体39に支持固定された構成を備えている。符号32は撮像素子を保護する透明層である。第1レンズ34と第2レンズ36とは互いに光軸41に沿って対向するようにレンズ筐体39内に収納されている。
【0053】
第1レンズ34及び第2レンズ36は有効直径(図4のD)が約2mm以下、好ましくは1mm〜1.5mmの極小径レンズであり、第1レンズ34は撮像素子30側が凹状に形成され、全体が負のパワーを有する凹レンズであり、第2レンズは指側及び撮像素子30側が凸状に形成され、全体が正のパワーを有する凸レンズである。
【0054】
溝部12の底面24に形成された透過光取込口20はIRフィルタ40によって閉じられている。符号28は、筐体10の底面部26に支持される基板を示している。基板28上には、CCDあるいはCMOSからなる撮像素子30が固定され、撮像素子30の周辺回路が設けられている。
【0055】
レンズ筐体39はレンズユニット38を収容できるように中空円筒状に形成されている。レンズ筐体39は、支持部材70によって基板28に支持されている。
【0056】
レンズユニット38は凹凸レンズを組み合わせることにより、短焦点で広画角を持ったレンズとしての特性を有している。このことにより、レンズユニットを被写体である指に近づけることができ、かつ、レンズユニットを指に近づけても広い範囲の画像を撮像素子に取り込むことができる。
【0057】
この結果、指底46と撮像素子30との間の距離(共役距離)L1を低減でき、本願の発明者が検証したところ、共役距離を5.0mm〜12.0mmの範囲に収めることができる。したがって、筐体10の厚さを低減できる。これにより、例えば図5に示すような折畳型の携帯電話の一方の筐体52に指静脈認証装置50を搭載した場合であっても、携帯電話が大型化されることを抑制することができる。
【0058】
共役距離をより小さい値にするためには、屈折率が高いレンズを用いることが必要であり、反面、物側画角が大きくなり、認証に必要な範囲で静脈の画像を撮像素子30に取り込むことが難しくなる。そこで、共役距離を5.0mm以上とした。なお、レンズの材質や形状を改良することによって画角を拡大できる場合には、共役距離の下限を5mmに限定するものではない。
【0059】
近年、厚さを極力薄くすることが望まれている携帯電話、電子手帳、スマートキーなどの電子カードなどの携帯型電子装置に生体認証装置を適用するためには、共役距離を8.0mm以下にすることが好ましい。
【0060】
なお、図5は一例であって、指静脈認証装置50を、キー操作部53が搭載されている、他方の筐体の側に配置してもよい。
【0061】
図4において、符号48はジャストピント位置を示し、符号L2は指内のジャストピント位置と撮像素子30との間のジャストピント長である。指内にジャストピント位置48が来るように、レンズ装置33を撮像素子30に対して進退させて、レンズユニット38と撮像素子30の間隔が調整される。
【0062】
指底46と撮像素子30との間の距離(共役距離)L1が低減されても、ジャストピント位置を指内に設定することができるために、撮像素子30は指内の静脈パターンに対応する映像を作り出すことができる。
【0063】
既述のとおり、レンズユニットの光学特性を短焦点、広画角として説明したが、好ましくは、その焦点距離が0.15mm以上0.5mm以下、さらに好ましくは、0.15mm以上0.20mm以下であり、その物側最大画角が100°以上である。焦点距離が0.15mm未満であるとレンズユニットの製造が難しく、焦点距離が0.5mmを越えると図4の距離L1を十分小さな値にすることができない。
【0064】
さらに、物側最大画角が100°以上であると、指の第一関節の前後10mm範囲の静脈パターンを取得することができる。静脈認証を精度良く行なうためには、この範囲の静脈パターンを取得することが望ましい。
【0065】
さらに、レンズユニットは近軸倍率が0.04以上0.1以下、好ましくは0.04以上0.06以下である。近軸倍率が0.04未満であると解像度が劣化し、近軸倍率が0.1を超えると静脈パターンの認証に必要な撮影エリアを確保できないおそれがある。
【0066】
短焦点・高画角のレンズユニットを用いると、既述のとおり認証装置をその高さ方向に小型化できる半面、撮像素子30で得られた画像が歪んでしまい、画像から静脈パターンを正確に抽出できないおそれがある。
【0067】
そこで、静脈認証装置は画像の歪みを補正する画像処理機能・手段を備えている。本発明者がレンズユニットの特性を種々変えて具体的に検討したところ、画像の光学歪みが−60%から+50%の範囲内であれば画像の歪みを補正できることを確認した。
【0068】
本発明者が検討したところ、レンズユニットの焦点距離を0.15mm以上0.20mm以下にすると、レンズユニットの光学歪を−2%〜+50%の範囲に抑えることができるために画像の歪みの補正をより高精度に行うことができる。
【0069】
なお、図4の例では、レンズユニット39は2枚のレンズから構成されているが、これに限定するものではなく、要求されるレンズ特性を持つ限り、1枚のレンズ、あるいは3枚以上のレンズからレンズユニットが構成されてもよい。
【0070】
図6は、撮像素子30で得られた補正前の画像であり、図7は歪み補正後の画像の例である。図6の画像は、1mm間隔の碁盤目からなる画像が印刷された基準印刷物を、図1の筐体10の平面側に載置して撮像素子30によって得られた画像である。歪を補正すると、図6に示すように、例えば、周辺に行くにしたがって形状が歪んでいた画像が、図7に示すようにほぼ均等な碁盤目からなる画像に補正ないしは矯正された。歪補正の制御方法については後述する。
【0071】
図8は、歪特性を示すグラフである。図8に示す物高とは画像の中心点(光軸:図4の41)から画像の端部までの相対位置を意味し、例えば、物高が“1.0”とは画像の最端部の位置を表し、物高が“0.6”とは中心点から60%の位置(端部から40%)であることを表している。
【0072】
図8において、800は第1のレンズユニットの特性であり、802は第2のレンズユニットの特性である。歪み特性がマイナスであるとは画素が画像の中心側に歪み、歪み特性がプラスであるとは、画素が画像の中心から離れる方向に歪んでいることを示している。
【0073】
歪み(%)は、画素の本来の位置(中心からの距離“T”)と歪んだ後の画素の位置(中心からの距離“S”)に対して、“T/S”に相当する値である。本発明者が鋭意検討したところ、光学歪が−60%よりマイナス側に大きいと、周辺部での解像度が急に劣化し、後述する画像の歪み補正を行っても画像を完全に修復することが出来ないことが判明した。
【0074】
また、光学歪が+50%を超えると、広い範囲の画像を処理する必要があり、処理時間に問題が生ずることが分かった。従って、第1の特性(800)と第2の特性(802)との間に歪が制限されている限り、すなわち、光学歪みが−60%から+50%の範囲内に収まっているかぎり、画像処理部で歪を補正することができる。
【0075】
レンズユニットの特性として、さらに物側最大画角での感度比が10%以上65%以下であることが好ましく、さらに好ましくは当該感度が40%以上65%以下である。短焦点、広画角のレンズユニットでは、図9に示すように、画像の周辺に行くにしたがって、感度が低下する。
【0076】
図9において、900は第1のレンズユニットの感度比特性であり、902は第2のレンズユニットの感度比特性である。例えば、感度比が“0.4”とは、画像の中心での輝度を“1.0”とすると、輝度が4割になっていることを示す。短焦点・高画角レンズユニットの係る感度の低下は図1に示すように、光の出口を筐体10の周辺領域に配置して、指の側面から光を照射することによって補うことができる。感度比を輝度比と言い換えてもよい。
【0077】
前記感度比が10%未満であると、画像の周辺部の輝度が低下して静脈パターンの正確な像を撮像素子で得ることができない。一方、前記感度比が65%を超えると、画像の周辺部の輝度が高くなることによって同様に静脈パターンの正確な像を撮像素子で得ることができない。本発明者が鋭意検討したところ、物側最大画角(物高が“1.0”)での感度比が第1のレンズユニットの特性(900)と第2のレンズユニットの特性(902)との間、即ち、感度比が10%以上40%以下の範囲にあれば、感度の低下を補償できることを確認した。
【0078】
本発明者がさらに検討したところ、焦点距離が0.15mm以上0.2mm以下、物側最大画角が100°、近軸倍率が0.04以上0.06以下、指の認証領域のサイズを幅方向に10mm、指の長さ方向に15mm〜18mmになるように複数のレンズの組み合わせを変えてレンズユニットを構成しその感度比を検証したところ、図25に示すように、物側最大画角での感度比を40%以上65%以下にできることを確認した。さらに、図26に示すように、物高と光学歪との関係について検証したところ、光学歪を−2%〜+50%の範囲に抑えることができた。
【0079】
既述のように、共役距離を5.0mm以上8.0mm以下にするためには、焦点距離が0.15mm以上0.20mm以下の短焦点レンズユニットを用いるが、一方で、光学歪および感度比の悪化が生じると画像の歪みを補正することができなかったり、静脈画像を正確に取得できないおそれがある。
【0080】
そこで、レンズユニットの光学歪を−2%〜+50%、近軸倍率を0.04以上0.06以下、物側最大画角での感度比を40%以上65%以下になるように、レンズユニットを構成することによって、この欠点を無くすことができる。
【0081】
以上により、撮像素子30は、レンズユニットの物側最大画角の領域からでも指内の静脈パターンを精度良く取り込むことができる。
【0082】
次に、指静脈認証装置の画像処理および認証機能について説明する。図10は、指静脈認証装置の画像処理装置に関する構成例を示すブロック図である。画像処理装置は、撮像素子によって撮像された画像から指の静脈パターンを抽出するパターン抽出部と、画像の歪を補正する画像補正部とを備えている。
【0083】
CPU(Central Processing Unit)60は、ユーザの操作に基づき、メモリ64に記録された画像処理プログラムをスタートし、DSP(Digital Signal Processor)62に撮像素子30から画像を取り込むよう指令する。CPU60は、撮像素子30の各画素の輝度データを、DSP62から取り込み、筐体10に指が載せられているか否かを判定する。
【0084】
筐体10に指が載っていない場合には、外光が撮像素子30に至り、所定以上に画素の輝度が上がるために、CPU60は筐体10に指が載っていないと判定する。
【0085】
CPU60が筐体10に指が載っていると判定すると、撮像素子30で得られた画像の各画素の輝度をチェックして、輝度が各画素で均一になるように、複数の照射口14から放出される光量を個別に制御する。具体的には、各照射口14に対応して配置された各光源に供給される駆動信号を制御して、光源の発光量を補正することにより、照射口14から放出される光量を制御する。
【0086】
以下、光量制御について詳しく説明する。適切な光量は指静脈認証装置に提示される指の幅や厚みによって異なるため、鮮明な指静脈画像を撮影するためには指の特徴ごとに光源の光量を調整する必要がある。
【0087】
例えば、指の厚みが薄い場合は、厚い指と比較して輝度が高くなる傾向にあるので、光量を少なくする。また、幅の細い指は幅の太い指と比較して光照射口から指までの距離が遠くなるため、光が届きにくい。十分な量の光を指に照射するために、光照射口14から出る光量を強くする必要がある。
【0088】
また、同一の指でも、指先側と指根元側で幅は違うため、適切な光量値が異なる。よって、指先側と指根元側の光量値はそれぞれ独立に制御する。または、指は指先が細く指根元ほど太くなるという特徴を利用し、指先側の光量が強くなるように予め光量を調整し、指先側、指根元側の光量を同時に制御してもよい。
【0089】
なお、各光源から同じ光量を指に照射せざるを得ないような場合には、光源の位置を指先ほど近く、根元側ほど遠くに配置するとよい。さらに、指の形状の左右の非対称性、指を筐体に載せた際の左右の位置ずれも考慮し、左右の光量値も独立に制御することが好ましい。複数の画素間における輝度が均一化しないことに基づいてCPU60は指の形状の非対称性、指の左右方向の位置ずれ、指の厚み等を判定し、指の左右の側面側、指先・根元側の光源を独立に制御する。
【0090】
CPU60は光量の補正の終了を判定すると、DSP62に撮像素子30で撮影された画像について歪補正を行なうように指令する。歪補正は既述の歪特性に基づく演算によって行なわれる。したがって、指静脈認証装置の出荷前に、予めレンズユニット38の歪特性を求めて、メモリ64に歪特性を保存しておく。DSP62はこの歪特性を参照して、撮像素子30で得られた画像の各画素について歪補正を行なう。
【0091】
歪がX%であると、画像中の補正対象画素に補正値(100/X)が乗じられて、画像中心(光軸)に対する画素位置が演算結果に基づいて補正される。歪がプラスである場合には、画素位置が光軸側に補正され、歪がマイナスである場合には画素位置が光軸から離間する方向に補正される。この結果、例えば図6及び図7に示すように、歪んだ画像を補正することができる。
【0092】
CPU60は歪補正後の画像をメモリ64に記憶し、CPU60は補正後のモノクロ画像の各画素について濃淡を判定し、補正後の画像から静脈パターンを抽出する(特徴点抽出)。
【0093】
光源から指に照射された近赤外光は静脈中のヘモグロビンに吸収される一方、他の組織によって様々な方向に拡散するので、静脈パターンに対応した透過光がレンズユニット38を介して撮像素子30に至る。静脈パターンに相当する画素領域では透過光が吸収によって弱められるので、静脈パターンに相当する領域が暗くなったモノクロ画像が撮像素子30によって得られる。
【0094】
CPU60は、このモノクロ画像から静脈パターンを検出し、検出した静脈パターンを用いて生体認証を行なう。具体的には、このように指静脈認証装置で抽出された静脈パターンをメモリ64に登録し、登録された静脈パターンと新たに抽出された静脈パターンが一致するか、又は不一致であるかの判定を行って本人認証の合否を決定する。
【0095】
指静脈認証装置が携帯電話等の情報処理装置に搭載されている場合や、外部装置に有線または無線で接続されている場合、CPU60は、本人認証の結果を情報処理装置や外部装置に通知し、この通知を用いて情報処理装置等は電子商取引、ネットバンキングの各種サービスをユーザに対して提供する。
【0096】
図27は、焦点距離が0.15mm以上0.20mm以下の短焦点レンズユニットであって、光学歪が−2%〜+50%、近軸倍率が0.04以上0.06以下、物側最大画角での感度比が40%以上で共役距離が8mm以下のレンズユニットを用いて、図6と同様の条件の下で撮像素子で得た画像である。図27から分かるように、撮像素子30で得られた画像の中心部の回りで画像に歪が生じているために、この歪を無くすように画像処理装置が歪を補正する。
【0097】
画像処理装置が画像を補正処理するに際して、本願発明者は、撮像素子で前記基準印刷物の画像を取得し、取得した画像を画像処理プログラムに取り込んだ。次に、画像処理プログラムを利用して補正前の画像の全ピクセルについてそれぞれ既述の補正値を決定し、これをパラメータとしてメモリに保存した。
【0098】
レンズユニットのサイズや特性の相違、そして、筐体10のサイズ(溝部12の透過光取込口20のサイズ)の相違がある場合には、各形態のものについてそれぞれパラメータを決定する。決定されたパラメータは、画像処理装置のメモリ64に予め設定記憶させておく。DSP62はメモリ64からパラメータを読み込んで、画像の補正を行う。
【0099】
以上の説明では、歪補正を行なった後に特徴点抽出処理を行ったが、特徴点抽出処理により静脈パターンを画像から抽出した後に歪補正を行なってもよい。
【0100】
この場合は、歪補正の対象となる画素数を静脈パターンに相当する画素数に制限できるために、DSP62が歪補正に必要な処理時間を低減できる利点がある。全画素について歪補正を行った場合に比較して、特徴点抽出後に歪補正を行なうことによって、補正が必要な画素数を約1/8に減少させることができる。
【0101】
なお、図10の例では、CPU60、DSP62及びメモリ64がそれぞれ別に構成されているが、これに限定するものではなく、これらの一部または全部を1つの処理部として構成するようにしてもよい。
【0102】
また、指静脈認証装置を携帯電話等の情報処理装置に搭載する場合には、認証装置内にCPU60等を設ける代わりに、情報処理装置のCPU等を用いて、画像処理および認証を行なうようにしてもよい。
【0103】
また、画像処理及び認証機能の一部又は全部を、情報処理装置からサーバ側に移してもよい。またさらに、指静脈認証装置や情報処理装置に静脈パターンデータを記憶する代わりに、サーバにパターンデータを登録するようにしてもよい。なお、静脈パターンを指静脈認証装置や情報処理装置等に登録する場合には他人に読み取られないように、静脈パターンに暗号化を施した上で登録する。
【0104】
次に指静脈認証装置を携帯電話に適用した実施形態について詳しく説明する。以上説明した指静脈認証装置では指底と撮像素子間の距離を短くできるために、携帯電話などの小型の情報処理装置であっても、装置の大型化を抑制しつつ、指静脈認証装置を情報処理装置に搭載することができる。
【0105】
図11(1)は携帯電話の筐体52の平面図、図11(2)はその右側面図であり、(3)はその正面図である。本例では、携帯電話のヒンジよりに静脈認証装置50が搭載されている。ユーザに静脈認証装置50の存在を分かり易くするために、静脈認証装置50の筐体10が僅かに携帯電話の筐体52の表面より突出している。
【0106】
図12に示すように、ユーザは、片手だけで携帯電話を握りながら人差し指の第一関節付近を静脈認証装置50上におくことができる。片手で安定した状態で携帯電話50を握りながら、認証対象の指の第一関節付近を静脈認証装置に合わせることができるように、静脈認証装置50の先端を携帯電話の先端端部から約3cmの位置に設けることが好ましい。
【0107】
また、図13に示すように、静脈認証装置50を携帯電話の開放端寄りに設けてもよい。この場合、認証装置の基端を携帯電話の開放端から指先から第一関節間の距離にほぼ対応する約3cmの位置に設けるとよい。このような位置に配置することにより、静脈認証装置50に指を置いた場合に、指の第2関節が自然に緩やかに曲がり、指が静脈認証装置50に押し付けすぎになることを防止することができる。
【0108】
図5や図11等の例では、携帯電話の筐体52の平面部に設けているが、これに限るものではなく、筐体52の表面であれば、例えば側面に指静脈認証装置を設けるようにしてもよい。
【0109】
以上、指静脈認証装置を携帯電話に搭載した例について説明したが、指静脈認証装置が適用される対象は携帯電話に限らず、PDA、ノートパソコンなど各種情報処理装置でもよいことは勿論である。また、情報処理装置に限らず、本発明に係わる指静脈認証装置を車や入出管理装置などに搭載するようにしてもよい。
【0110】
図14は図1のA−A断面図例であって、図15はそのB−B断面図例である。指静脈認証装置が携帯電話52内に携帯電話と一体になって収納されている様子が図14及び図15に示されている。即ち、筐体10が携帯電話の筐体を兼ねている。なお、既述の図面と同一の符号は同一の部材であることを意味し、説明を省略する。
【0111】
携帯電話52の筐体内には、光源であるLED72が埋設されている。LED72の頭頂部からLEDの幅方向に対して直角方向に筐体10に貫通孔74が形成され、この貫通孔74は照射口14に繋がっている。LED72から射出された近赤外光は、貫通孔74を通過して照射口14から指に向けて進行する。指底付近には指の長手方向に沿って壁16が設けられているために、LDE72から照射された光は壁16を越えて指の側面から指内に進入する。
【0112】
指の側面から進入した光は指の内部で拡散すると共に一部は静脈を透過して撮像素子30側に到達し、レンズユニット38は透過光から静脈パターンに相当する画像を撮像素子30上に結像する。
【0113】
図17に、指静脈認証装置の内部構成の他の例を示す。図14の例では、照射口14から光が効率的に射出されるように、照射口14の中心とLED72の中心がほぼ一致するように配置されている。照射口14は壁16の外側に設けられているため、このように、LED72を照射口14の中心とあわせて配置すると、指静脈認証装置の幅が大きくなる。
【0114】
これに対して、図17に示す例では、LED72から発生した光を照射口14まで誘導するライトガイド90を設けることにより、幅を狭くしている。
【0115】
ライトガイド90は、照射口14に近づくにつれて筐体10の外周側向かって傾斜するテーパ面92を備えている。LED72からライトガイド90の底面に進入した放射光はテーパ面92に沿って誘導され、照射口14から指の側面に向かって射出される。
【0116】
これにより、照射口14から光が効率的に射出されるように保ちつつ、LED72の中心が、照射口14の中心よりも内側に設けることができるため、指静脈認証装置の幅を狭くすることができる。
【0117】
また、このライトガイド90は、各照射口14に対応して配置されたLED72ごとに設けるようにしてもよいし、左側および右側に設けられた複数のLED72に対して、それぞれ1つのライトガイドを設けるようにしてもよい。
【0118】
なお、左側および右側にそれぞれ1つのライトガイドを設ける場合、複数の照射口を備えるかわりに、壁16に沿って矩形や楕円形の照射口をそれぞれ1つ設けるようにしてもよい。このような照射口を設けることにより、ライトガイドを複数のLEDに対して共通化できるとともに、指の側面に均一に光を照射することができる。また、左右方向だけでなく、上下方向にも矩形等の形状を有する照射口を設けるようにしてもよい。
【0119】
図18に、筐体10の左右および上下方向に、矩形状の照射口14Aを設けた例を示す。なお、本例では、指の第一関節の設置位置を指示する突起18Aが筐体10の幅方向内側に向かって突出するように構成され、指を溝側に向かって誘導する小片22Aが指の外周形状に合わせてテーパ面がR状に形成されている。
【0120】
次に、既述の壁16の形状について詳細に説明する。図19(1)は既述の図1に示す認証装置を指先側から見た図である。図21と図22は壁16の他の形態を示す。
【0121】
図19(1)で示す通り、壁16の幅は、光照射口14の筐体内側の端縁と溝部16の筐体外側の端縁との間の距離とほぼ同じである。壁16を図21で示すように、図19(1)よりも幅を狭くし、光照射口12側に寄せて筐体に設置してもよい。これにより、指を支える支点が指の外側に移動して、指を筐体に対してより低い位置に置くことができる。そのため、指に対する壁16の高さが相対的に高くなり、光源3が指の高い位置のみに光を照射できる。
【0122】
さらに、壁16を図22に示すように、指の外周形状に合わせてR状にしてもよい。これにより、指と壁16の触れる面積が増えるため、壁16は、指の底面へ回りこむ光を遮断する効果を向上できる。壁16は指の側面の形状に合致するために、壁16は筐体に対して指を安定して支持できる。
【0123】
光源3は光源3の上端が筐体10の平面の位置と同じ高さ、または、それより若干低くなるように筐体に設置して、光源が筐体の平面から突出することを避ける。
【0124】
光源から十分な光量を指へ照射することができれば、光源3の上端の一部が壁16や筐体10によって覆われていてもよい。例えば、図23のように、光源3の一部が壁16の下に隠れるように配置すると、光源3を装置の内側(溝部12側)へ近づけて設置することができる。これにより、認証装置の幅を短縮できる。
【0125】
図24は領域によって光の減光率が異なるフィルタ230を筐体に設置した指静脈認証装置である。図24(1)は装置の断面図、図24(2)は平面図である。図24(3)はフィルタ230である。フィルタの色が濃い領域ほど光の減光率が高く、薄い領域ほど光の減光率が低いことを示す。
【0126】
図24(2)のように指の側面側に光源を設置した認証装置で静脈を撮影すると、撮影された画像は、光源に近い領域ほど輝度値が高く、画像の中央領域ほど輝度値が低くなる。そこで、図24(1)で示すように指と撮像素子30の間にフィルタ230を設置する。これにより撮像素子30に届く光の量は、指左右領域と中央領域で均等になり、画像全体が均一の明るさの静脈画像を撮影することが可能となる。また、フィルタ230を設置せずに、画像処理装置が、撮像素子30で画素毎にゲインやシャッタースピード等の感度制御を行なってもよい。光源側の画素ほど感度を低くし、中央の画素の感度を高くすることで、フィルタ230を設置した場合と同等の効果を得ることができる。
【0127】
さらに、既述の形態のライトガイドとは異なる形態を持ったライトガイドを備えた指静脈認証装置について説明する。このライトガイドは図28に示すように、ライトガイド90の装置側側面280が重力方向に沿っており、この側面に対向する側の側面282が重力方向に対して、装置の上方になるにしたがって装置側に傾斜するテーパになっている。
【0128】
ライトガイドをこのような形状にすることによって、ライトガイドから射出される光線の方向を指の側面に向けることができ、好ましくは図28に示すように光線の方向284を指24に対する接線方向にすることができる。
【0129】
本発明者が検討したところ、平均的な人の指のサイズが直径14mmであることを考慮すると、ライトガイドから重力方向に対して、約18°から28°の角度(θ)を持った光を指の側面に向けて射出すれば、画面全体に渡って輝度レベルの均一性が極めて良好な画像が得られる事が判った。
【0130】
なお、ライトガイドをこのように構成することによって、壁16が無くても光源72からの光を指42の側面に誘導することが可能であって、既述の壁16を筐体10から省くことができ、あるいは、壁16の高さを低減することもでき筐体の厚さをその分低減できる。なお、図28に 破線で示すように、低い高さの壁16を、ライトガイド90より指側(筐体10の中心軸側)に配置しても良い(図17参照)。
【0131】
図29乃至図31にライトガイド全体の斜視図を示す。ライトガイド90は、筐体10の長さ方向に沿ったパネル状に構成されている。符号72はライトガイドの下端に設けられる光源としてのLEDであり、符号73はLED72の制御基板である。LEDはライトガイドの長さ方向の端部に合計2箇所設けられている。
【0132】
図30の(1)はライトガイド他の例を示す斜視図であり、5個のLED光源がライトガイドの長さ方向に沿って配置されている。LED72の個数を増せば画面全体に渡って輝度レベルの均一性が良好な画像が得られ。LED72の個数は特に限定するものではないが、消費電力の点からは少ない方が良い。なお、図30の(2)に示すように、ライトガイドの高さHがライトガイドを収容する、筐体10の溝部90Jの高さより短く、ライトガイドの終端面90Hが光射出口14より下方で終わっていても良い。
【0133】
図31はライトガイドのさらに他の例を示す斜視図であり、ライトガイドを筐体の厚さ方向で2分割したことを示している。
【0134】
なお、ライトガイドをこのように2分割した構造において、分割部にある2基のライトガイド(90A,90B)の二つの端面を若干離間させ、かつ最初にLEDからの光が供給される第1のライトガイド90Bの端面91を第2のライトガイド90Aの端面93に対して球面状あるいは、非球面形状に形成することによって、LED72から第1のライトガイド90Bに供給された光を平行光にして第2のライトガイド90Aに導くことができる。これによって、第2のライトガイド90Aから射出される光の方向を既述のとおり指の側面にさらに優位に導くことができる。
【0135】
ライトガイドの指側の終端面は、図29乃至図31ではいずれも平坦として描かれているが、これを球面形状あるいはR状などの環状、ないしは、筐体10の外側から内側に向けて高さが低く、あるいはその高さが逆に高くなるテーパ状(ナイフエッジ状)など、波状、あるいはマイクロレンズアレイなどの非環状の形状にすること事でもよい。
【0136】
ライトガイドは透明のガラス又は透明の樹脂から構成される。ライトガイドには、珪素、アルミニウムなどの光拡散材を入れてもよい。
【0137】
図32は、左右のライトガイド90が筐体10に対して非対称な形状に構成されていることを示す模式図である。静脈認証装置を携帯電話などの電子機器に搭載する際に、電子機器本来の部品を避けるように静脈認証装置の構成を設計しなければならない。
【0138】
図32はその一例であって、向かって右側のライトガイドに光を供給するLED72を筐体の上方側に移動させ、このLED72に向かってライトガイド90の終端付近に向かって直角に曲げていることを示している。
【0139】
さらに、ライトガイド90が臨む光の射出口14(図19参照)の筐体10における高さ位置、あるいはライトガイド90の高さを図33に示すように、指先側に比べて掌側で徐々に高くなるテーパ状になるように筐体10を調整することが良い。図33において、符号90Lは、ライトガイドの上端部を示している。
【0140】
これは、指の第1関節付近においても指先側で指の径が指根元側での指の径より小さいためである。すなわち、指の側面の中心に光を誘導するために、このように射出口の位置を変えている。射出口の位置が変わることによって、ライトガイドの高さや指側端面の形状も適宜変更される。
【0141】
既述の実施形態では、レンズユニットを2郡2枚のレンズから構成したが、要求されるレンズ特性を持つ限り、1枚のレンズ、あるいは3枚以上のレンズからレンズユニットが構成されてもよい。
【0142】
また、本発明に係わる静脈認証装置が適用される対象は携帯電話に限らず、PDA、ノートパソコンなど各種情報処理装置でもよいことは勿論である。また、情報処理装置に限らず、本指静脈認証装置を車や入出管理装置などに搭載してもよい。
【0143】
また、前記筐体には指の第一関節が置かれる位置を指示する指示手段として突出部を設けたが、これに限らず指の第一関節が置かれる位置を示す標識、マークなど、他の指示手段を用いてもよい。
【0144】
また、既述の実施形態では指静脈認証装置を携帯電話の平面に設けているが、指静脈認証装置を携帯電話の底面、携帯電話の側面、正面、或いは底面に設けてもよい。
【0145】
また、既述の実施形態では指の腹側を筐体10に提示し、指腹側の静脈を撮影するが、指の側面や甲側を筐体10に提示し、指側面や甲側の静脈を利用して認証を行なってもよい。特に指の甲側を撮影する場合は指を屈曲した状態で撮影を実施すると鮮明な静脈の撮影が可能となる。
【0146】
また、既述の実施形態では指の第一関節周辺を撮影したが、指の第二関節周辺や関節以外の部位を認証に用いてもよい。
【0147】
以上説明した実施形態は一例であって、本発明が既述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】指静脈認証装置の一例を示す斜視図である。
【図2】指静脈認証装置に指が載せ置かれている状態を示す斜視図である。
【図3】指静脈認証装置の小片の正面図の一例である。
【図4】指静脈認証装置の内部構成および指との位置関係の一例を示す概略図である。
【図5】指静脈認証装置が搭載された携帯電話の一例を示す斜視図である。
【図6】撮像素子で得られた画像(歪あり)例を示す。
【図7】撮像素子で得られた画像に歪補正書を施した後の補正画像例を示す。
【図8】物高と歪(%)との関係の一例を示す特性図である。
【図9】物高とレンズユニットの感度比との関係の一例を示す特性図である。
【図10】指静脈認証装置の画像処理機能に関する構成例を示すブロック図である。
【図11】指静脈認証装置が搭載された携帯電話の一例を示す平面図、右側面図および正面図である。
【図12】ユーザが携帯電話を片手で把持している状態例を示す斜視図である。
【図13】ユーザが携帯電話を片手で把持している状態例を示す斜視図である。
【図14】図1に示す指静脈認証装置のA−A断面の一例を示す図である。
【図15】図1に示す指静脈認証装置のB−B断面の一例を示す図である。
【図16】指静脈認証に係わる光学モデルを説明する図である。
【図17】ライトガイドを有する指静脈認証装置の内部構成の一例を示す断面図である。
【図18】指静脈認証装置の一例を示す斜視図である。
【図19】図2の指静脈認証装置を指先側から見た状態の断面図である。
【図20】静脈脈認証装置に光源を配置する際の複数の形態を説明するための、筐体の平面図である。
【図21】(1)は遮光壁の他の実施形態を備えた筐体の平面図であり、(2)この筐体を指先側から見た断面図である。
【図22】(1)は遮光壁のさらに他の実施形態を備えた筐体の平面図であり、(2)この筐体を指先側から見た断面図である。
【図23】(1)は遮光壁のさらに他の実施形態を備えた筐体の平面図であり、(2)この筐体を指先側から見た断面図である。
【図24】(1)は減光フィルタを設置した指静脈認証装置の筐体を指先部から見た状態の断面図であり、(2)その平面図であり、(3)は減光フィルタの平面図である。
【図25】共役距離を5mmから8mmにするレンズユニットの物高と周辺感度比との関係を表す特性図である。
【図26】共役距離を5mmから8mmにするレンズユニットの物高と光学歪との関係を表す特性図である。
【図27】焦点距離が0.15mm以上0.20mm以下の短焦点レンズユニットであって、光学歪が−2%〜+50%、近軸倍率が0.04以上0.06以下、物側最大画角での感度比が40%以上で共役距離が8mm以下のレンズユニットを用いて、図6と同様の条件の下で撮像素子で得た画像である。
【図28】図17とは異なる形態を持ったライトガイドを備える指静脈認証装置の幅方向の断面図である。
【図29】ライトガイドの一例を示すライトガイド全体の斜視図である。
【図30】(1)はライトガイドの他の例を示すライトガイド全体の斜視図であり、(2)はライトガイドの溝内における形状の概要を示す。
【図31】ライトガイドのさらに他の例を示すライトガイド全体の斜視図である。
【図32】指静脈認証装置の左右に存在するライトガイドが、非対称の形状に形成されている状態の概要を示す断面図である。
【図33】ライトガイドの筐体に対する高さが指先側から掌側に向かって徐々に高さが高くなっている様子の概要を示す、筐体の側面図である。
【符号の説明】
【0149】
10 筐体(指静脈認証装置)、11 指ガイド部、12 溝部、14 照射口、16 壁、18 突出部、20 透過光取込口、28 基板、30 撮像素子、33 レンズ装置、34 第1レンズ、36 第2レンズ、38 レンズユニット、40 IRフィルタ、39 レンズ筐体、90 ライトガイド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指を載置させる筐体と、
前記指に向けて光を射出する光源と、
前記光によって前記指の内部を撮像する撮像素子と、
前記指からの前記光を前記撮像素子に結像するレンズユニットを備えるレンズ装置と、
前記撮像素子によって撮像された画像から前記指の静脈パターンを抽出するパターン抽出部と、画像の歪を補正する画像補正部と、を有する画像処理装置と、
を備える指静脈認証装置であって、
前記レンズユニットの焦点距離が、0.15mm以上0.5mm以下であり、
その物側最大画角が100°以上であり、
その近軸倍率が、0.04以上0.1以下であり、そして、
その光学歪みが、−60%〜+50%であり、
さらに、前記指と前記撮像素子との間の距離が5mm以上12mm以下、である指静脈認証装置。
【請求項2】
前記レンズユニットの前記最大画角での感度比が10%以上65%以下である請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項3】
前記レンズユニットの焦点距離が、0.15mm以上0.20mm以下であり、
その近軸倍率が、0.04以上0.06以下であり、そして、
その光学歪みが、−2%〜+50%であり、
さらに、前記指と前記撮像素子との間の距離が8mm以下、
である、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項4】
前記レンズユニットの前記最大画角での感度比が40%以上65%以下である請求項3記載の指静脈認証装置。
【請求項5】
前記光源が指の側面から近赤外光を照射するように構成されている、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項6】
前記レンズユニットは、凹レンズと凸レンズから構成されてなる、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項7】
前記画像補正部が前記撮像素子で撮像された画像の歪みを補正した後、前記パターン抽出部が前記補正された画像から前記静脈パターンを抽出する、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項8】
前記パターン抽出部が前記撮像された画像から前記静脈パターンを抽出した後、前記画像補正部が前記抽出された静脈パターンの歪みを補正する、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項9】
前記光源から発生した光を前記筐体に設けられた前記光の照射口まで誘導するライトガイドを備える、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項10】
前記光の射出口は前記指の長手方向側面近傍の前記筐体に設けられている、請求項9記載の指静脈認証装置。
【請求項11】
前記ライトガイドは、前記光源からの光を前記指の側面に向けて射出するものである請求項9記載の指静脈認証装置。
【請求項12】
前記ライトガイドは、前記指の側面の接線方向に沿って前記射出口から光を射出する、請求項11記載の指静脈認証装置。
【請求項13】
指を載置させる筐体と、
前記指に向けて光を射出する光源と、
前記光によって前記指の内部を撮像する撮像素子と、
前記指からの前記光を前記撮像素子に結像するレンズユニットを備えるレンズ装置と、
前記撮像素子によって撮像された画像から前記指の静脈パターンを抽出するパターン抽出部と、画像の歪を補正する画像補正部と、を有する画像処理装置と、
光源から発生した光を前記筐体に設けられた前記光の照射口まで誘導するライトガイドと、
を備え、
前記光の射出口は前記指の長手方向側面近傍の前記筐体に設けられ、
前記ライトガイドは、前記光源からの光を前記指の側面に向けて射出するものである指静脈認証装置。
【請求項14】
前記ライトガイドは、前記指の側面の接線方向に(側面最上端に接する方向に)沿って前記射出口から光を射出する、請求項13記載の指静脈認証装置。
【請求項15】
請求項1又は13記載の前記指静脈認証装置と、当該指静脈認証装置から出力された前記歪みが補正された静脈パターンの画像に基づいて個人認証を行う個人認証装置と、を備え、当該個人認証装置での認証結果に基づいて電子的処理を行う情報処理装置。
【請求項1】
指を載置させる筐体と、
前記指に向けて光を射出する光源と、
前記光によって前記指の内部を撮像する撮像素子と、
前記指からの前記光を前記撮像素子に結像するレンズユニットを備えるレンズ装置と、
前記撮像素子によって撮像された画像から前記指の静脈パターンを抽出するパターン抽出部と、画像の歪を補正する画像補正部と、を有する画像処理装置と、
を備える指静脈認証装置であって、
前記レンズユニットの焦点距離が、0.15mm以上0.5mm以下であり、
その物側最大画角が100°以上であり、
その近軸倍率が、0.04以上0.1以下であり、そして、
その光学歪みが、−60%〜+50%であり、
さらに、前記指と前記撮像素子との間の距離が5mm以上12mm以下、である指静脈認証装置。
【請求項2】
前記レンズユニットの前記最大画角での感度比が10%以上65%以下である請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項3】
前記レンズユニットの焦点距離が、0.15mm以上0.20mm以下であり、
その近軸倍率が、0.04以上0.06以下であり、そして、
その光学歪みが、−2%〜+50%であり、
さらに、前記指と前記撮像素子との間の距離が8mm以下、
である、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項4】
前記レンズユニットの前記最大画角での感度比が40%以上65%以下である請求項3記載の指静脈認証装置。
【請求項5】
前記光源が指の側面から近赤外光を照射するように構成されている、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項6】
前記レンズユニットは、凹レンズと凸レンズから構成されてなる、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項7】
前記画像補正部が前記撮像素子で撮像された画像の歪みを補正した後、前記パターン抽出部が前記補正された画像から前記静脈パターンを抽出する、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項8】
前記パターン抽出部が前記撮像された画像から前記静脈パターンを抽出した後、前記画像補正部が前記抽出された静脈パターンの歪みを補正する、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項9】
前記光源から発生した光を前記筐体に設けられた前記光の照射口まで誘導するライトガイドを備える、請求項1記載の指静脈認証装置。
【請求項10】
前記光の射出口は前記指の長手方向側面近傍の前記筐体に設けられている、請求項9記載の指静脈認証装置。
【請求項11】
前記ライトガイドは、前記光源からの光を前記指の側面に向けて射出するものである請求項9記載の指静脈認証装置。
【請求項12】
前記ライトガイドは、前記指の側面の接線方向に沿って前記射出口から光を射出する、請求項11記載の指静脈認証装置。
【請求項13】
指を載置させる筐体と、
前記指に向けて光を射出する光源と、
前記光によって前記指の内部を撮像する撮像素子と、
前記指からの前記光を前記撮像素子に結像するレンズユニットを備えるレンズ装置と、
前記撮像素子によって撮像された画像から前記指の静脈パターンを抽出するパターン抽出部と、画像の歪を補正する画像補正部と、を有する画像処理装置と、
光源から発生した光を前記筐体に設けられた前記光の照射口まで誘導するライトガイドと、
を備え、
前記光の射出口は前記指の長手方向側面近傍の前記筐体に設けられ、
前記ライトガイドは、前記光源からの光を前記指の側面に向けて射出するものである指静脈認証装置。
【請求項14】
前記ライトガイドは、前記指の側面の接線方向に(側面最上端に接する方向に)沿って前記射出口から光を射出する、請求項13記載の指静脈認証装置。
【請求項15】
請求項1又は13記載の前記指静脈認証装置と、当該指静脈認証装置から出力された前記歪みが補正された静脈パターンの画像に基づいて個人認証を行う個人認証装置と、を備え、当該個人認証装置での認証結果に基づいて電子的処理を行う情報処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2009−87263(P2009−87263A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259169(P2007−259169)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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