説明

振動発生装置

【課題】機械振動子の固有周波数にバラツキがあっても歩留りが高く低コストで振動触覚ハプティクス効果を発揮できる振動発生装置の提供。
【解決手段】振動発生装置は、減衰比ζ<1で減衰系の機械振動子3をバネ要素Sを介して固定部Bに対し支持し、機械振動子3を非接触で振動させる動磁界を生成する電磁コイルLを備え、このコイルLに印加される駆動電圧V(t)の周波数fを機械振動子3の減衰系固有周波数fから外れた非共振周波数として機械振動子3がうなり振動を起す。うなり振動の振幅を規定するうなり波のうち駆動開始側の1番谷部から1番山部を超えた2番谷部において駆動電圧V(t)の印加を停止する強制振動制御部20を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機やタッチパネル等に内蔵可能な振動発生装置に関し、特に、瞬間振動の振動触覚ハプティクス効果を発揮する振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2008−521597に開示の振動触覚ハプティクス効果が得られる振動発生装置は共振強制振動系が採用されており、信号発生器が共振アクチュエータの固有周波数と同じ第1周波数の励振用アクチュエータ信号を生成し、共振アクチュエータを共振状態で励振して加速度を瞬間急増した後、信号発生器が第1周波数とは180度位相がずれた(波形反転した)第2周波数の制振用アクチュエータ信号を生成し、共振アクチュエータを制振して瞬間減衰させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−521597(0033,図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の共振アクチュエータはその固有振動数(共振周波数)と同じ強制振動周波数を用いた共振モードで作動させているため、加速度を急増する励振過程では瞬時励振が容易であるものの、一旦、高加速度となった共振アクチュエータを減衰させるための制振過程では、共振アクチュエータが個体毎に固有周波数のバラツキを少なからず持っていることから、制振用アクチュエータ信号の位相が励振用アクチュエータ信号に対して180度完全にずれていても、現実は共振アクチュエータの振動変位の位相に対して180度完全にずれている保証がない。この固有周波数のバラツキで不可避的に生じる進み位相差又は遅れ位相差のため、制振用アクチュエータ信号の印加終了タイミングによっては機械振動子の不完全静止や静止後の再起動が誘発されるので、不感域に入るまでには自由減衰期間を長く残し、振動減衰の切れが悪い。
【0005】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、機械振動子の振動減衰の切れが良い振動触覚ハプティクス効果を発揮する振動発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、減衰比ζ<1の減衰系で機械振動子をバネ要素を介して固定部に対し支持し、機械振動子を非接触で振動させる動磁界を生成する励磁手段を備え、この励磁手段に印加する駆動電圧の周波数fを駆動開始又は駆動途中から機械振動子の減衰系固有周波数fから外れた非共振周波数として機械振動子がうなり振動を起す振動発生装置であって、うなり振動の振幅を規定するうなり波のうち駆動開始側の1番谷部から1番山部を超えた2番谷部において駆動電圧の印加を停止制御する強制振動制御手段を有することを特徴とする。
【0007】
このように、本発明はうなり振動の発生を伴う装置であることから、振動の強まった1番山部の後に振動の弱まる2番谷部が自ずと到来し、強制振動制御手段が2番谷部において駆動電圧の印加を停止制御するので、自然減衰時間が長引かずに振動停止の切れを良好とでき、振動触覚ハプティクス効果を遜色なく発揮できる。非共振周波数の駆動電圧でうなり振動が起るため、機械振動子の固有周波数に相当のバラツキがあってもうなり振動が構わず、従って歩留りが高く低コストの振動発生装置を提供できる。そして、駆動電圧の周波数fは機械振動子の減衰系固有周波数fよりも低い周波数か或いは高い周波数かのどちらでも構わず、また駆動電圧の周波数のサイクル数は長短選択できるので、振動触覚ハプティクス効果の瞬間振動でも振動態様の多様化、ひいては振動態様に応じた記号化も可能となる。
【0008】
強制振動制御手段は2番谷部で駆動電圧の印加停止以前に当該駆動電圧の振幅を抑制することが望ましい。1番山部から2番谷部への制振優勢期間における励振期の励振作用を弱めることができるため、結果的に制動作用が相対的に強くなり、振動停止の切れが更に良好となる。別の観点からすれば、強制振動制御手段は、1番山部から2番谷部へ下る制振優勢期での駆動電圧の振幅を振動開始側の1番谷部から1番山部へ上る励振優勢期での駆動電圧の振幅よりも相対的に抑制することが望ましい。
【0009】
励磁手段に印加する駆動電圧は正弦波や交番矩形波などのゼロレベルから正負に振れる両極性波形で構わないが、ゼロレベルと正との間、ゼロレベルと負との間で振れる単極性電圧の繰り返し波形でも構わない。単極性波形駆動では振幅ゼロ期間が周期的に加わっているため、1番山部から2番谷部では減衰比ζの自然減衰期も制振作用として追加されることになり、振動停止の切れが良好となる。また、単極性波形駆動では両極性波形駆動と比べ電源電圧を単極側で使用して電圧振幅を倍増できることになるため、1番山部までの励振優勢期でパワーアップできる。
【0010】
うなり振動現象の極限を考察すると、強制振動制御手段がうなり振動のうなり波のうなり周期とうなり振動の基本波の周期とが実質上等しくなるように駆動電圧の周波数を設定して成る場合は、一方向に強い加速度(偏加速度)が顕在化する偏振動現象となる。
【0011】
<fの極限態様としては、周波数fを減衰系固有周波数fの実質上3倍とし、励磁手段に印加される駆動電圧を第1正弦半波,これに逆相の第2正弦半波,及びこの第2正弦半波に逆相の第3正弦半波から成る独立波とすることができる。第2正弦半波で生じる変位方向に顕著な偏加速度を持つ振動を生成でき、一方向指示性ないしベクトル性を持つセンサス振動装置を提供できる。この効果を顕著なものとするためには、第1正弦半波と第3正弦半波との周波数を減衰系固有周波数fの3倍以下とし、逆に、第2正弦半波の周波数を減衰系固有周波数fの3倍以上とし、また、第2正弦半波の波高値を第1正弦半波と第3正弦半波の波高値以上とすることが望ましい。
【0012】
逆に、f>fの極限態様としては、周波数fを減衰系固有周波数fの実質上1/3とし、励磁手段に印加される駆動電圧を正弦半波とすることが望ましい。斯かる場合も、一方向指示性ないしベクトル性を持つセンサス振動装置を提供できる。
【0013】
ところで、上記の振動発生装置は最初からうなり振動発生装置であるため、駆動開始から1番山部までの励振優勢期では励振期と制振期が交互に現れるので、制振期が含まれる分、共振系の場合に比べて起動パワー不足となる。そこで、強制振動制御手段としては、駆動開始から駆動信号の周波数を非共振周波数とするのではなく、最初は駆動電圧の周波数を減衰系固有周波数に合致させた共振周波数とし、一定期間後に非共振周波数に切換えることを特徴とする。減衰系といえども駆動開始から一定期間は共振状態となって加速度が確実に増加した後、非共振であるうなり振動に切り換わり、励振期と制振期を交互に繰り返す励振優勢期を経て1番山部に到達した後、制振期と励振期を繰り返す制振優勢期に入り2番谷部に落ち込んで静止する。非共振系より前に共振系となっているので、起動パワーを十分確保できる。また、うなり振動に切り換わってから1番山部が自ずと到来し、過大な振動振幅を抑制できるリミット効果もあり、機械振動子の振り切れを予防できる。
【0014】
駆動初期において共振駆動を先行するのはエネルギー損失を抑制し、振動の立ち上げを急峻にするためであるが、この共振振動が余り長すぎると、非共振振動に切り換わってから2番谷部に降下しても、共振駆動で得たエネルギーが残留し、ゼロから大きく乖離してしまう。これを防止するためには、減衰系固有周波数(共振振動数)のサイクル数は非共振周波数のサイクル数よりも少なくすることが望ましい。2番谷部のゼロからの乖離を抑制でき、振動停止の切れも保全できる。
【0015】
上記振動態様に適合する振動発生装置としては、機械振動子は第1端面と第2端面とに亘る厚さ方向に着磁された環状永久磁石を有し、バネ要素は環状永久磁石をその厚さ方向へ変位可能に固定部に対し支持する懸架バネ手段であり、電磁コイルは環状永久磁石の中央孔を貫通して固定部に支持さており、電磁コイル内を貫通するコアを備え、電磁コイルは磁化極性が反対となる第1トロイダルコイルとこれに同軸で隣接した第2トロイダルコイルを有し、第1端面に重ね合わせて内周縁が第1トロイダルコイルの外周面を囲む第1環状ポールピース及び第2端面に重ね合わせて内周縁が前記第2トロイダルコイルの外周面を囲む第2環状ポールピースを備えて成ることが望ましい。
【0016】
電磁コイルの磁化方向と環状永久磁石の着磁方向が実質的に平行で、両コイル巻線の捲き方向,両コイルへの給電の向き,両コイルの直列構造や並列構造により、両コイルの外側端同士が同磁極で内側端同士が同磁極となるため、環状永久磁石に対する磁気吸引力・反発力による往復動が作用すると共に、環状永久磁石の両面磁極からの磁束が第1及び第2の環状ポールピースの内周縁に集まって両トロイダルコイルを貫きコアを介して短絡磁路を形成するため、電磁力による往復動も作用し、起動パワーが増強する。また、環状永久磁石の外周側磁束も閉回路を形成するため、漏れ磁束を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明はうなり振動を利用した振動発生装置とできるため、機械振動子の固有周波数にバラツキがあっても歩留りが高く低コストで振動触覚ハプティクス効果を発揮できる振動発生装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る振動発生装置を示す概念図である。
【図2】(A)は同振動発生装置に用いる振動リニアアクチュエータを示す斜視図、(B)は同振動リニアアクチュエータの反転状態を示す斜視図である。
【図3】同振動リニアアクチュエータの縦断面図である。
【図4】(A)は同振動リニアアクチュエータ振動発生装置において第1及び第2トロイダルコイルへの通電態様と機械振動子の振れ方向との関係を示す概念図で、(B)は図4(A)とは逆方向への通電態様と機械振動子の振れ方向との関係を示す概念図である。
【図5】同振動発生装置が発生するうなり振動現象について−x側の基本波を+x側に折り返して示すグラフである。
【図6】同振動発生装置において駆動電圧Vの周波数fが130.83Hzの場合の機械振動子の全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図7】同振動発生装置において駆動電圧V(t)の周波数fが196.25Hzの場合において機械振動子の全エネルギーEの推移曲線を示す。
【図8】同振動発生装置において周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと4Vの5サイクル駆動と機械振動子の変位xの推移曲線を示すグラフである。
【図9】同振動発生装置において周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと4Vの5サイクル駆動と機械振動子の全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図10】同振動発生装置において周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと4Vの5サイクル駆動のときの加速度の推移を示すグラフである。
【図11】同振動発生装置において周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと4Vの5サイクル駆動のときの機械振動子の変位xと機械振動子の全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図12】同振動発生装置において周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと3.5Vの5サイクル駆動と機械振動子の変位xの推移曲線を示すグラフである。
【図13】同振動発生装置において周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと3.5Vの5サイクル駆動と機械振動子の全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図14】同振動発生装置において周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと3.5Vの5サイクル駆動のときの機械振動子の変位xと機械振動子の全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図15】同振動発生装置において周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V矩形波の5サイクル駆動と機械振動子の全エネルギーEの推移曲線を調整電圧2.75Vまたは0Vの選択駆動とした場合も含めて示すグラフである。
【図16】同振動発生装置において周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V矩形波の5サイクル駆動のときの変位xと機械振動子の全エネルギーEの推移曲線を調整電圧2.75Vまたは0Vの選択駆動とした場合も含めて示すグラフである。
【図17】(A)は同振動発生装置において471Hzの駆動電圧V(t)の1.5サイクル駆動とこれに対する全エネルギーEの推移を示すグラフで、(B)はこの1.5サイクル駆動とこれに対する変位xの推移を示すグラフである。
【図18】(A)は同振動発生装置において471Hzの駆動電圧V(t)の1.5サイクル駆動に対する速度vと全エネルギーEの推移を示すグラフで、(B)はこの駆動に対する加速度aと全エネルギーEの推移を示すグラフである。
【図19】(A)は同振動発生装置において駆動電圧V(t)の1.5サイクル変形波に対する全エネルギーEの推移を示すグラフで、(B)はこの変形波に対する変位xの推移である半波を示すグラフである。
【図20】(A)は同振動発生装置において駆動電圧V(t)の1.5サイクル変形波に対する速度vと全エネルギーEの推移を示すグラフで、(B)はこの1.5サイクル変形波に対する加速度aと全エネルギーEの推移を示すグラフである。
【図21】(A)は同振動発生装置において駆動電圧V(t)の別の1.5サイクル変形波とこれに対する全エネルギーEの推移を示すグラフで、(B)は別の1.5サイクル変形波とこの変形波に対する変位xの推移である半波を示すグラフである。
【図22】(A)は同振動発生装置において駆動電圧V(t)の別の1.5サイクル変形波に対する速度vと全エネルギーEの推移を示すグラフで、(B)はこの別の1.5サイクル変形波に対する加速度aと全エネルギーEの推移を示すグラフである。
【図23】(A)は同振動発生装置において駆動電圧V(t)の0.5サイクル波形とこの波形に対する変位xの推移を示すグラフで、(B)はその0.5サイクル波形に対する速度vと全エネルギーEを示すグラフである。
【図24】同0.5サイクル波形に対する加速度aと全エネルギーEを示すグラフである。
【図25】(A)は同振動発生装置において駆動電圧V(t)の0.5サイクル正弦変形波とこの波形に対する全エネルギーEの推移を示すグラフで(B)はその0.5サイクル変形波とこの波形に対する変位xの推移を示すグラフである。
【図26】(A)は同振動発生装置において駆動電圧V(t)の0.5サイクル正弦変形波に対する速度vと全エネルギーEの推移を示すグラフで、(B)はその0.5サイクル変形波に対する加速度aと全エネルギーEの推移を示すグラフである。
【図27】同振動発生装置において周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと3.75Vの単極性矩形波の5サイクル駆動方式とした場合及びこの場合における機械振動子3の全エネルギーEの推移を示すグラフである。
【図28】同振動発生装置において周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと3.75Vの単極性矩形波の5サイクル駆動方式とした場合及びこの場合における機械振動子3の変位xを示すグラフである。
【図29】同振動発生装置において周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと3Vの単極性矩形波の5サイクル駆動方式とした場合及びこの場合における機械振動子3の全エネルギーEの推移を示すグラフである。
【図30】同振動発生装置において周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V並びに振幅5Vと3Vの単極性矩形波の5サイクル駆動方式とした場合及びこの場合における機械振動子3の変位xを示すグラフである。
【図31】同振動発生装置において周波数fを1サイクルの157Hzのあと5サイクルの188Hzとした駆動電圧V(t)の波形とその場合の全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図32】同振動発生装置において同駆動電圧V(t)の場合の速度vと全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図33】同振動発生装置において同駆動電圧V(t)の場合の加速度aと全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図34】同振動発生装置において同駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図35】同振動発生装置において周波数fを1サイクルの157Hzのあと188Hzを繰り返した駆動電圧V(t)の場合における変位xと全エネルギーEを示すグラフである。
【図36】同振動発生装置において、5サイクルの非共振周波数196.25Hzの駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーE、1サイクルの157Hzのあと5サイクルの188Hzとした駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーE、2サイクルの157Hzのあと5サイクルの188Hzとした駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーEをぞれぞれ示すグラフである。
【図37】同振動発生装置において周波数fを1サイクルの157Hzのあと非共振周波数(>f)とする場合、その非共振周波数の値に対して2番谷部の谷底で振動停止となるサイクル数、最大加速度(GopMax)、第1山部の値、第2山部の値、第2谷部/第1山部(%)を示すグラフである。
【図38】同振動発生装置において周波数fを1サイクルの157Hzのあと非共振周波数の198Hzの4サイクルで駆動した場合の加速度aを示すグラフである。
【図39】同振動発生装置において周波数fを1サイクルの157Hzのあと3サイクルの122Hzとした駆動電圧V(t)の波形とその場合の全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図40】同振動発生装置において同駆動電圧V(t)の場合の速度vと全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図41】同振動発生装置において同駆動電圧V(t)の場合の加速度aと全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図42】同振動発生装置において同駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーEの推移曲線を示すグラフである。
【図43】同振動発生装置において周波数fを1サイクルの157Hzのあと122Hzを繰り返した駆動電圧V(t)の場合における変位xと全エネルギーEを示すグラフである。
【図44】同振動発生装置において、3サイクルの非共振周波数117.75Hzの駆動電圧V(t)の場合における変位xと全エネルギーE、1サイクルの157Hzのあと3サイクルの122Hzとした駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーE、2サイクルの157Hzのあと3サイクルの122Hzとした駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーEをそれぞれ示すグラフである。
【図45】同振動発生装置において、周波数fを1サイクルの157Hzのあと非共振周波数(<f)とする場合、その非共振周波数の値に対して2番谷部の谷底で振動停止となるサイクル数、最大加速度(GopMax)、第1山部の値、第2山部の値、第2谷部/第1山部(%)を示すグラフである。
【図46】同振動発生装置において周波数fを1サイクルの157Hzのあと非共振周波数の129.5Hzの4サイクルで駆動した場合の加速度aを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本例の振動発生装置は、図1に概念的に示す如く、バネ定数kのバネ要素Sと減衰係数cのダンパー(減衰要素)Dが互いに並列に介在して質量mの永久磁石を持つ機械振動子3を固定部Bに対し支持し、機械振動子3を非接触で往復振動させる正弦波外力Fsin(ωt)を与えるための動磁界を生成する電磁コイルLを備えた減衰系強制振動の振動リニアアクチュエータ、及び電磁コイルLに給電される交流の駆動電圧V(t)を生成する強制振動制御部20を有している。ここで、Fは定数、ωは強制(入力)角周波数、f=2π/ωは強制(入力)周波数である。ダンパーDとしては、空気ダンパー,磁性流体ダンパー,永久磁石の機械振動子3と電磁コイルLの相対運動により電磁コイルLに生じる逆起電力で当該相対運動を妨げる磁気ダンパーなどが含まれるが、機械振動子3の変位や速度が小さいので、一般にダンパーの抵抗力は速度に比例するものとして近似でき、その減衰系強制振動の運動方程式は次式で与えられる。
m・dx/dt+c・dx/dt+kx=F・sin(ωt) …(1)
xは機械振動子3の振動(応答)変位、tは時間、本例ではm=1.40×10−3(kg),k=1360(N/m),c=4.00×10−2である。
【0020】
次に、本例で用いる振動リニアアクチュエータの具体的な構造を説明する。図2及び図3に示す如く、この振動リニアアクチュエータは、第1端面3aと第2端面3bとに亘る厚さ方向に着磁された両面2極(アキシャル異方性)の円環状永久磁石の機械振動子3と、第1端面3aの内周側に接着材で固着された円環状の第1ポールピース板4と、第2端面3bの内周側に接着材で固着された円環状の第2ポールピース板5と、第1ポールピース板4に内周側吊り下げ部6aをスポット溶接や接着等の手段で固定すると共に筒状ケース9の底面に外周側吊り下げ部6bを固定した渦巻き状の第1板バネ6と、第2ポールピース板5に内周側吊り下げ部7aを固定すると共に筒状ケース9の開口側に固定した端板(エンドプレート)10に外周側吊り下げ部7bを固定した渦巻き状の第2板バネ7と、機械振動子3の中央孔を貫通して筒状ケース9の底面に固定植設した円柱状コア(鉄心)8と、端板10の裏面に貼着された印刷配線板11の上に起立して端板10の透孔から円柱状コア8に外嵌された円筒状の電磁コイルLと、印刷配線板11の上に起立して電磁コイルLに外嵌された樹脂製の保護筒体12と、機械振動子3の内周面と保護筒体12の外周面との間で第1ポールピース板4と第2ポールピース板5とに挟まれた空隙に充填された磁性流体13と、印刷配線板11上に貼着されて第2板バネ7の内周側吊り下げ部7aの印刷配線板11への激突を緩衝するゴムダンパー14と、印刷配線板11の裏面に接続された竜巻状の一対のスプリング端子S,Sと、印刷配線板11の裏面に切欠きを跨いで張り合わされており、端板10の導通突起10bに接触する軟質製の半月状導電性ゴム15と、振動リニアアクチュエータ自身の収容空間(図示せず)において密着的に収納するために印刷配線板11の裏面に張り合わされた硬質で略T字状のラバーシート16と、筒状ケース9に張り合わされた剥離紙17a付き両面テープ17とを備えている。
【0021】
円柱状コア(鉄心)8は積層鉄板で構成しても良い。第1端面3aと第2端面3bの外周側が外回りの閉磁路を形成しているが、第1端面3aの外周側は円環状の第1ポールピース板4で覆われておらず、また第2端面3bの外周側は円環状の第2ポールピース板5で覆われていない。
【0022】
本例の電磁コイルLは、印刷配線板11上の円筒状の下段トロイダルコイルLと、これに同軸で積み重ねた円筒状で逆巻き直列の上段トロイダルコイルLとから成り、下段トロイダルコイルLの端面からはみ出た第1巻線端末が印刷配線板11上の第1コイル接続パターンに半田付けされていると共に、上段トロイダルコイルLから下段トロイダルコイルLの内周側を通して下段トロイダルコイルLの端面からはみ出た第2巻線端末も印刷配線板11上の第2コイル接続パターンに半田付けされている。そして、第1ポールピース板4の内周縁と第2ポールピース板5の内周縁とは機械振動子3である円環状永久磁石の内周面よりも突出して電磁コイルLの外周面寄りに近接している。
【0023】
本例の振動リニアアクチュエータにおいては、環状永久磁石である機械振動子3の着磁方向が電磁コイルL内の円柱状コア8の方向と実質上平行で、環状永久磁石である機械振動子3の第1端面3a又は第2端面3bから出た磁束は第1ポールピース板4及び第2ポールピース板5を介してそれらの内周縁から円柱状コア8の外周面へ飛んで円柱状コア8内を経由することになるため、保護筒体12の外周面と機械振動子3の内周面との隙間に介在する磁性流体13は上記の磁束で封止状態となり、振動リニアアクチュエータの姿勢如何に拘わらず、磁性流体13の漏れを防ぐことができる。そして、この緩衝層としての磁性流体13によって衝撃外力が加わっても振動リニアアクチュエータの電磁コイルLへの激突を有効的に抑制でき、電磁コイルLの損傷を防ぐことができる。磁性流体13を用いずに電磁コイルLに保護筒体12を被覆した場合、振動リニアアクチュエータの激突から電磁コイルLの損傷を防止できる。保護筒体12があるため、環状永久磁石3とのギャップを僅少化でき、振動リニアアクチュエータの小型化に寄与する。また、僅少なギャップとなるから、低温特性に遜色のある高粘度の磁性流体13を使用せず、低温特性の良好な低粘度でしかも廉価の磁性流体13の使用で済む。なお、この保護筒体12は滑性のある材料が好ましく、金属材や樹脂材は勿論のこと、熱収縮チューブでも構わない。
【0024】
永久磁石の機械振動子3と電磁コイル(電磁石)Lの交番する両端同磁極とによる磁力吸引力・反発力が発生する外、下段トロイダルコイルLと上段トロイダルコイルLとは逆巻き直列であるため、図4(A)に示す如く、第2ポールピース板5の内周面からコア8への磁束と下段トロイダルコイルLに流れる電流とで上向きの電磁力が発生すると共に、コア8から第1ポールピース板4の内周縁への磁束と上段トロイダルコイルLに流れる電流とで上向きの電磁力が発生する。また図4(B)に示す如く、下段トロイダルコイルLと上段トロイダルコイルLとに流れる電流が逆方向となると、第2環状ポールピース板5の内周縁からコア8への磁束と下段トロイダルコイルLに流れる電流とで下向きの電磁力が発生すると共に、コア8から第1環状ポールピース板4の内周縁への磁束と上段トロイダルコイルLに流れる電流とで下向きの電磁力が発生する。このため、磁力吸引力・反発力と電磁力とで機械振動子3が往復振動する。
【0025】
電磁コイルLの磁化方向と機械振動子3の着磁方向が実質的に平行で、下段トロイダルコイルLとこれに逆巻きで直列の上段トロイダルコイルLの外側端側同士が同磁極で内側端側同士が同磁極となることから、機械振動子3が磁気吸引力・反発力により往復振動する。コイル電流の交番に伴い機械振動子3に対しその厚さ方向へ往復駆動するための往復振動磁界を生成し、厚さ方向に着磁された機械振動子3では磁気回路が閉ループ化して漏れ磁束を抑制できるので、振動強度の向上又は低消費電力化に資する。また、閉ループの磁気回路であることから、コイル電流を断つと、振動慣性によって電磁コイルLに逆起電力が生じ、反作用として機械振動子3に対する制動力が働き、振動減衰の短時間化を実現できる。
【0026】
次に、上記の振動リニアアクチュエータの駆動方式、即ち、電磁コイルLに給電される駆動電圧V(t)の信号態様について説明する。ここで上記振動リニアアクチュエータの固有周波数fの値は157Hzである。この固有周波数fは減衰要素Dを除いた非減衰系の固有周波数(=(k/m)1/2)であるが、実際、上記の振動リニアアクチュエータのような減衰要素Dを持つ減衰系の固有周波数fは、減衰比ζ(=c/2(mk)1/2)を用いると、ζ<1では一般に次式で与えられる。
=f(1−ζ1/2 …(2)
ζ=1/2Q …(3)
【0027】
ここでのQ値は実測では約25であるが、15〜40程度が好ましい。減衰比ζは計算値で0.02であり、減衰系の固有周波数fと非減衰系の固有周波数fの差は高々0.2%程度に過ぎないので、減衰系固有周波数fは非減衰系固有周波数fと実質的に等しく、f≒f=157Hzでよく近似できる。本例の振動リニアアクチュエータは、機械振動子3が筒状ケース9内を往復振動することから僅少な空気ダンパー、第1板バネ6及び第2板バネ7による僅少な機械摩擦ダンパー、磁気流体13による粘性ダンパー、及び磁気コイルLの逆起電力による磁気ダンパーなどが存在していることから、無論、減衰比(ζ>0)ではあるものの、ζを1より大きくして振動を急激に減衰させる目的で非常に強い粘性材(ζ≧1)などをダンパーとして用いている訳ではない。本例ではあくまでζ<1で、自然減衰では振動変位の変位原点を通り過ぎて反対側へも振れながら交番的に漸減的減衰をする態様を示す。
【0028】
そして、ζ<1のとき、(1)式の一般解は、減衰系の自由振動解と強制振動の特解との和として次式で与えられる。
x=exp(−ζωt){Ccos(ωt)+Csin(ωt)}
+Csin(ωt−φ) …(4)
但し、C,Cは初期条件で決まる定数、ωは強制振動の角周波数、ωは固有角周波数、ωは減衰固有角周波数である。
C=F/m{(ω−ω+(2ζωω)1/2>0
但し、tanφ=2ζωω/(ω−ω
そして本例の初期条件は、x(0)=0、dx/dt|t=0=0であるから、
=Csinφ
=C(ζωsinφ−ωcosφ)/ω
【0029】
ここで、tanθ=C/Cを用いて、(4)式の3つの波を合成すると、次式に書き換えることができる。
x=〔C+(C+C)exp(−2ζωt)+
2C(C+C1/2exp(−ζωt)cos{(ω−ω)t−(θ+φ)}〕1/2
×sin{(ω+ω)t/2+(θ−φ)/2+α(t)} …(5)
但し、tan{α(t)}=K(t)・tan{(ω−ω)t/2−(θ+φ)/2}
K(t)={sinθ−sinφ・exp(−ζωt)}
÷{sinθ+sinφ・exp(−ζωt)} …(6)
なお、K(0)=cot{(θ+φ)/2}tan{(θ−φ)/2}<1、α(0)=(φ−θ)/2、K(∞)=1、α(∞)=(ω−ω)t/2−(θ+φ)/2
【0030】
この応答変位xの振動現象の様子は図5に示す如く「うなり振動」となっている。図5は周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)の場合におけるうなり振動を示すものである。(5)式において、低い周波数の波cos{(ω−ω)t−(θ+φ)}を含む1/2乗の項がうなり波であって、高い周波数の基本波であるsin{(ω+ω)t/2+(θ−φ)/2+α(t)}の応答振幅となっており、この応答振幅がうなり周期T=2π/|ω−ω|で周期的に変化することを示す。低い周波数の波が+1を採る点から、うなり波のうち山部の頂点を結ぶ山部包絡線は、上からx=Cの漸近線へ漸近する{C+(C+C1/2exp(−ζωt)}で与えられ、また低い周波数の波が−1を採る点から、うなり波のうち谷部の谷底点を結ぶ谷部包絡線は、下からx=Cの漸近線へ漸近する{C−(C+C1/2exp(−ζωt)}で与えられる。t→∞では、応答振幅がCに収斂したfの強制振動成分{C・sin(ωt−φ)}だけが残る定常状態となる。この定常状態に至るまでの過渡状態(遷移状態)がうなり振動現象である。駆動開始t=0ではうなり波に初期位相(θ+φ)が含まれていることから、うなり波は1番谷部では厳格な意味で振幅0からのスタートではないが、基本波の位相はゼロからスタートする。このうなり振動過程においては1番山部の頂点、即ちt=(θ+φ)/|ω−ω|の時点で最大振幅となり、2番谷部の谷底点、即ちt=(θ+φ+π)/|ω−ω|の時点では振動開始時点を除いて最小振幅となる。従って、本例の振動発生装置が振動ハプティクス効果を発揮するためには2番谷部で駆動停止すれば、落差(振幅差)が最大振幅と最小振幅との差で最大となり、しかも静止までの自然減衰時間を最短化できるので振動停止の切れが良好である。
【0031】
なお、(6)式から明らかなように、時間の関数である位相α(t)は、(6)式の如く、α(0)=(φ−θ)/2から始まり、α(∞)=(ω−ω)t/2−(θ+φ)/2に収斂するように、時間と共に変化するので、基本波(変位x)の周波数は振動開始時点の平均周波数{(ω+ω)t/2}から徐々に強制振動数ω側に引き込まれて定常状態では強制振動数{(ω+ω)t/2+(ω−ω)t/2}=ωとなる。
【0032】
ここで、θ+φ=0と仮定し、或いはθ+φ=0と近似できるよう減衰比ζや駆動周波数fなどのパラメーターを適宜設定すると、f<fの場合、例えば、f=157Hzでf=130.83Hzのときでは、うなり周波数f=(f−f)は26.17Hzで、駆動開始(t=0)からうなり波の2番谷部の谷底点となる時点は、うなり周期T(=1/(f−f))後の時点、約0.038秒後である。この最小振幅において駆動電圧V(t)を停止するのが一番良い。うなり波の谷部では変位xの振幅が時間平均的に収縮してバネ要素S(第1板バネ6及び第2板バネ7)の歪みエネルギーが減少する傾向を保障しているからである。その後の非駆動期間では、残留したエネルギーを減衰比ζの自然減衰で消耗する微弱な余振となり、振動停止までの時間を短縮することができる。
【0033】
逆にf<fの場合、例えば、f=157Hzでf=196.25Hzのとき、うなり周波数fは39.25Hzで、駆動開始(t=0)からうなり波の2番谷部の谷底点となる時点は、うなり周期T=1/(f−f)後の時点、約0.025秒後である。やはり、このような最小振幅で駆動電圧V(t)を停止するのが一番良い。振動停止までの時間を短縮することができる。
【0034】
上記の2番谷部の谷底点までの時間、便宜上、0.038秒や0.025秒などのうなり周期T(=1/(f−f))の時間であり、この千分の1秒オーダーで計時するタイマー機能を強制振動制御部20に設けても構わないが、駆動電圧V(t)のサイクル自身がいわばクロック信号であることから、駆動開始から駆動停止までの駆動時間は駆動周波数fのサイクル数で測る方が構成及びソフトウエア上都合が良い。そこで、駆動電圧V(t)の周期(1/f)のサイクル数をnとすると、
n/f=1/f=1/|f−f| …(7)
が成立する。ここでf=fとし、
<fのとき、
f=nf/(n−1)…(8)
f<fのとき、
f=nf/(n+1)…(9)
nは自然数に限らず0.5の倍数でも構わない。
【0035】
=157Hzで、f<fの場合を表1に示す。
【表1】

【0036】
=157Hzで、f<fの場合を表2に示す。
【表2】

【0037】
さて、本例の駆動方式の1つの特徴としては、電磁コイルLに給電される交番の駆動電圧V(t)の周波数fが機械振動子3の固有周波数(f=157Hz)に一致させるのではなく、それから完全に外れた非共振周波数に設定し、うなり振動を出現させるところにある。このうなり振動を力学的に分析すると、後述するように励振動と制振動とが交互に繰り返している。
(両極性正弦波連続駆動方式)
【0038】
図6は、細線で示す駆動電圧V(t)の周波数fが130.83Hzの場合において機械振動子3の全エネルギーEの推移曲線を太線で示す。なお、破線は固有周波数(f=157Hz)の共振状態を仮想的に重ねて示す。縦軸は駆動電圧V(t)の電圧(V)、全エネルギーE及び変位xの最大値をすべて100%として示す。図6は駆動開始から強制振動の周波数成分(f)だけが優勢となる定常状態に遷移するまでのうなり振動の過渡状態を示したものである。なお、機械振動子3の全エネルギーE(t)は、機械振動子3の運動エネルギーT(t)とバネ要素S(第1板バネ6及び第2板バネ7)の歪みエネルギーU(t)との総和である。
E(t)=T(t)+U(t)=m(dx/dt)/2+kx/2 …(10)
【0039】
図6での駆動方法においては、固有周波数(f=157Hz)よりも2割近くかけ離れて遅い周波数(f=130.83Hz)で機械振動子3を強制的に非接触で揺さぶっているため、全エネルギーEの推移から明らかなように、電磁コイルLが発生する動磁界による正弦波外力F・sin(ωt)の機械振動子3の揺れ方向へ作用する励振動の期間(励振期A)とその力が機械振動子3の揺れ方向とは逆方向へ作用する制振動の期間(制振期Z)とが交互に繰り返して現れている。励振期Aは全エネルギーEではエネルギー上昇過程に当り、制振期Zは全エネルギーEではエネルギー下降過程に当る。後述するように、駆動電圧V(t)が強制振動周波数(f)で所定振幅の正弦波として連続する限りは、励振期Aはその時間の降順で出現し、制振期Zは逆にその時間の昇順で出現するため、励振期Aの時間が強制振動周波数(f)の1/4サイクル以上で制振期Zの時間が強制振動周波数(f)の1/4サイクル以下である励振優勢期UPと、この励振優勢期UPを過ぎた後で励振期Aの時間が強制振動周波数(f)の1/4サイクル以下で制振期Zの時間が強制振動周波数(f)の1/4サイクル以上である制振優勢期DNとが交互に繰り返す。この励振優勢期UPと制振優勢期DNとの交互繰返しの高次周期性が変位xのうなり周期Tに相当し、うなり波の谷部から谷部までの時間に対応する。相当時間が経つと、励振優勢期UPと制振優勢期DNとの周期的起伏が緩慢となって平坦化し、全エネルギーEは一定値(kC/2)へ収斂して行くと共に、強制振動成分(f=130.83Hz)だけが残る定常状態に落ち着く。そして、本例の振動発生装置が振動触覚ハプティクス効果を発揮できるようにするには、制振優勢期DNに入り自己制動が掛ってから駆動電圧V(t)を停止しようとするものである。
【0040】
図6での全エネルギーEの最大値(極大値)Mは最初の励振優勢期UPの最後の励振期Aが終了する時点、うなり波の1番山部の頂点、即ち、駆動電圧V(t)のサイクル(1/f)では約2.25サイクルの終了時点に現れている。全エネルギーEの初期を除く最小値(極小値)Nは最初の制振優勢期DNでの最後の制振期Z10が終了する時点、うなり波の2番谷部の谷底点、即ち、駆動電圧V(t)のサイクル(1/f)の5サイクル時点、また固有周波数fのサイクル(1/f)の6サイクル時点となっており、変位xのサイクル数では5.5サイクルの時点でもある。この最小値Nは最大値Mの約8%であるため、駆動電圧V(t)を駆動時間5サイクル分(38.22ms)で駆動停止すると、その後機械振動子3はこの最小値Nから短時間の自然減衰を経て静止することになる。なお、最初の制振優勢期DNでの最後で駆動停止する場合は触覚的に一番強い1拍動として感知でき、2番目の制振優勢期DNの最後で駆動停止する場合は触覚的には2拍動として感知できる。
【0041】
図7は、細線で示す駆動電圧V(t)の周波数fが196.25Hzの場合において機械振動子3の全エネルギーEの推移曲線を太線で示す。なお、破線は固有周波数(f=157Hz)の共振状態を仮想的に重ねて示す。縦軸は駆動電圧V(t)の電圧(V)、全エネルギーE及び変位xの最大値をすべて100%として示す。この駆動方式においても、駆動開始から強制周波数成分fだけが優勢となる定常状態に遷移するまでのうなり振動の過渡状態を示している。今度は、固有周波数(f=157Hz)よりも2割以上かけ離れた速い周波数(f=196.25Hz)で機械振動子3を強制的に非接触で揺さぶっているが、やはり、電磁コイルLの振動磁界による正弦波外力F・sin(ωt)の機械振動子3の揺れ方向へ作用する励振動の期間(励振期A)とその外力の揺れ方向とは逆方向へ作用する制振動の期間(制振期Z)とが交互に繰り返して現れる。励振期Aは全エネルギーEではエネルギー上昇過程に当り、制振期Zは全エネルギーEではエネルギー下降過程に当る。後述するように、駆動電圧V(t)が強制振動周波数(f)で所定振幅の正弦波として連続する限りは、励振期Aはその時間の降順で出現し、制振期Zは逆にその時間の昇順で出現するため、励振期Aの時間が強制振動周波数(f)の1/4サイクル以上で制振期Zの時間が強制振動周波数(f)の1/4サイクル以下である励振優勢期UPと、この励振優勢期UPを過ぎた後で励振期Aの時間が強制振動周波数(f)の1/4サイクル以下で制振期Zの時間が強制振動周波数(f)の1/4サイクル以上である制振優勢期DNとが交互に繰り返す。この励振優勢期UPと制振優勢期DNとの交互繰返しの高次周期性がうなり周期Tに相当し、うなり波の谷部から谷部までの時間に対応する。相当時間が経つと、励振優勢期UPと制振優勢期DNとの周期的起伏が緩慢となって平坦化し、全エネルギーEは一定値(kC/2)へ収斂して行くと共に、強制振動成分(f=196.25Hz)だけが残る定常状態に落ち着く。そして、本例の振動発生装置が振動触覚ハプティクス効果を発揮できるようにするには、制振優勢期DNに入り自己制動が掛ってから駆動電圧V(t)を停止する。
【0042】
図7での全エネルギーEの最大値(極大値)Mは最初の励振優勢期UPの最後の励振期Aが終了する時点、うなり波の1番山部の頂点、即ち、駆動電圧V(t)の周波数(f=196.25Hz)では約2.5サイクルの時点に現れる。全エネルギーEの初期は除く最小値(極小値)Nは最初の制振優勢期DNの最後の制振期Zが終了する時点に現れるが、この最初の制振優勢期DNでは最後の制振期Zの後に最後の励振期A10が入っており、この最後の励振期A10が終了する時点が5サイクル完了となって最小値(極小値)Nよりもやや高い最小の極大値Pを示す。後述するように、励振期A10が紛れ込むのは、制振期Zで微小振動となったのに駆動電圧が高いため、位相が進み過ぎて次の励振期A10が早く到来したためである。この最小の極大値Pは最大値Mの約5%であるため、駆動電圧V(t)を駆動時間5サイクル(25.48ms)で駆動停止すると、その後は極大値Pから自然減衰する。この停止時点は固有周波数fのサイクル(1/f)の4サイクル時点でもある。なお、最小の極大値Pで駆動電圧V(t)を停止するのではなく、5サイクルが完了する直前の最小値(極小値)Nで駆動電圧V(t)を停止しても構わない。最小値(極小値)Nは最大値Mの約3%であるため、この時点で不感域に入っているから、自然減衰を待つ必要がない。なお、最初の制振優勢期DNの最後で駆動停止する場合は触覚的には一番強い1拍動として感知でき、2番目の制振優勢期DNの最後で駆動停止する場合は触覚的には2拍動として感知できる。
【0043】
図6では固有周波数fが6サイクル分で駆動電圧V(t)の駆動時間が5サイクル分において変位xの初期振動現象が励振期Aと制振期Zを交互に繰り返して出現し、うなり振動を起し、最初の制振優勢期DNの最後の制振期Z10が最小値(極小値)Nで終了することを示している。入力としての±両極性の駆動電圧V(t)の極性が切り換わる交番点(ゼロクロス点)を記号「|」、応答としての変位xの振れの向きが反転する変向点(ピーク)を記号「・」、駆動開始を「<」、駆動停止を「>」で表わせば、図6の最初の制振優勢期DNまでの初期うなり振動は全エネルギーEの曲線では中央ピーク凸形モードとなっており、<A・Z|A・Z|A・Z|A・Z|A・Z|A・Z|A・Z|A・Z|A・Z|A10・Z10>として表現できる。なお、A・Zは中央ピーク凸形のピークにある半サイクル(1/2f)部分を示し、第5励振期Aと第5制振期Zの時間はそれぞれ概ね1/4サイクル(1/4f)である。第1励振期Aから第5励振期Aまでが最初の励振優勢期UPで、第5制振期Zから第10制振期Z10までが最初の制振優勢期DNである。この駆動方式のいずれの半サイクルにおいても、|A・Z|と表現したように、励振期Aにおいて機械振動子3が減速して振り増しできないところで変向を起こしてから制振期Zに入る。これを以下では「励振変向」と言う。
【0044】
一方、図7では固有周波数fが4サイクル分で駆動電圧V(t)の駆動時間が5サイクル分において変位xのうなり現象が最初の制振優勢期DNの最後の制振期Zで完了することを示している。図7の最初の制振優勢期DNまでの初期振動現象は全エネルギーEの曲線で中央ピーク凸形モードであって、<A|Z・A|Z・A|Z・A|Z・A|Z・A|Z・A|Z・A|Z・A|Z>として表現できる。この駆動方式のいずれの半サイクルにおいても、制振期Zにおいて機械振動子3に対する制動が効き過ぎて逆方向へ振り戻す変向になってから励振期Aに入る。これを以下では「制振変向」と言う。第1励振期Aから第5励振期Aまでが最初の励振優勢期UPで、第5制振期Zから第9制振期Zまでが最初の制振優勢期DNである。ただ、第9制振期Zの終点が駆動電圧V(t)の能動的な交番点ではなく、変位xの受動的な変向点であり、この変向点が5サイクルの終了時点よりも若干早く出現して不一致となっている。第9制振期Zでは既に微小振動にまで減衰しているが、それに比し駆動電圧V(t)の振幅値が高いので制振作用が強すぎるが故に変位xの変向点が早く到来することとなり、その結果、5サイクルの終了時点よりも前に次の励振期A10に入っている。5サイクルの終了時点よりも前の最小値Nの時点で駆動電圧V(t)を停止しても良いが、後述するように、最初の制振優勢期DNの最後の制振期Zでは事前に駆動電圧V(t)の振幅値を抑制し、最小値Nの時点を5サイクルの終了時点の変位原点ゼロにソフトランディングさせることが望ましい。なお、図6の最小値Nの時点は変位xの変向点ではなく駆動電圧V(t)の交番点であるため、5サイクルの終了時点よりも前に出現することはない。
【0045】
さて、ここで基本に戻り、減衰系非共振型強制振動の過度状態における励振期Aと制振期Zの振動現象(うなり振動)をさらに分析する。まず、全エネルギーE(t)の挙動を説明するため、(10)式からエネルギー増減速度、dE/dtを求めると、
dE/dt=dx/dt・(m・dx/dt+kx) …(11)
この右辺の括弧内は(1)式の運動方程式を用いて書き直すことができる。
dE/dt=(F・sin(ωt)−c・dx/dt)dx/dt …(12)
全エネルギーE(t)が極値(極大値又は極小値)を採るときは、dE/dt=0であるから、
dx/dt=0 …(13)
又は、
dx/dt=(F/c)sin(ωt) …(14)
が成立するときである。
【0046】
ここで仮に、dx/dt≠0として(14)の微分方程式を解いてみると、
x=(−F/cω)cos(ωt) …(15)
であるが、減衰系非共振型強制振動では、変位xは角周波数ωの余弦関数ではないから、(13)式の方が解として確定し、従って一つの極値は変位Xの変向点(ピーク)のときである。そして、(13)式を(12)式に代入すると、
sin(ωt)=0 …(16)
となるから、もう一つの極値は、ゼロクロス点、即ち駆動電圧V(t)の交番点のときである。
【0047】
このように、両極性を交互に交番する駆動電圧Vの交番点の時と変位xの変向点の時が全エネルギーEの極値を採ることになるが、極値には極大値と極小値とがあるので2つの場合が存在している。後述するように、f<fの場合、振動初期は<A|Z・A|Zの如く「制振変向」で推移し、駆動電圧Vの交番で生じる制振動中に変向して自己励振動となるから、駆動電圧V(t)の交番点の時が全エネルギーEの極大値で、変位xの変向点の時が全エネルギーEの極小値となる。逆に、f<fの場合、振動初期は<A・Z|A・Zの如く「励振変向」で推移し、駆動電圧V(t)の交番で生じる励振動中に変向して自己制振動となるから、変位xの変向点の時が全エネルギーEの極大値で、駆動電圧V(t)の交番点の時が全エネルギーEの極小値となる。
【0048】
まず、f<fの一例として、図8の点線は周波数f(=2π/ω)が196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの5サイクル駆動の場合において機械振動子3の変位xの推移曲線を示し、図8の実線は周波数f(=2π/ω)が196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの2.5サイクル駆動のあと振幅4Vの2.5サイクル駆動の場合において機械振動子3の変位xの推移曲線を示す。なお、固有周波数(f≒f)は157Hzである。変位xの位相は駆動電圧V(t)の位相よりも若干遅れるものだが、駆動電圧V(t)の周波数f(=196.25Hz)が固有周波数(f=157Hz)よりも速いので、尚更遅れている。駆動電圧V(t)の最初の交番点では運動エネルギーがまだ残っており、その余勢で変位xはなおも最初の振れ方向への振れ増し過程にあり、その交番点を過ぎると自己制振作用となり最初の制振期Zへ入り、変位xが最初の変向点(ピーク)にまで減速した後、第2励振期Aでは変位xは揺り戻し過程と転化して変位原点を通過し、その反動で逆方向にまで振れ増しする。この逆方向の振れ増し過程で第2の交番点が到来し、第2制振期Zに入るが、揺り戻し過程の分だけ第2励振期Aでは第1励振期Aに比べて勢いが増しているため、第2制振期Zは第1制振期Zよりも長くなる。第3励振期Aは第2励振期Aよりも短くなるが、振幅が増しているため、逆方向への振りが大きくなっている。やがて、第5制振期Zは第5励振期Aと時間が略同じになるため、振幅が増えなくなり、制振優勢期DNに入る。第1励振期Aの期間は駆動電圧V(t)の半周期(1/2f)である。変位xの変向点(ピーク)では相対的に機械振動子3に印加する往復磁界が逆向きとなり、第1制振期Zの終点となっている。次の半周期(1/2f)は第1制振期Zと第2励振期Aとの和である。図8から明らかなように、励振期A〜Aは励振時間で降順(位相差で180°〜約30°)に推移し、逆に制振期Z〜Zは制振時間で昇順(位相差で約30°〜180°)に推移し、最初の励振期Aの励振時間が半周期(1/2f)、位相差で180°であるが、制振期Zの制振時間と次の励振期Ai+1の励振期間の和が半周期(1/2f)で、位相差では180°である。なお、変位xの最大値Mは駆動電圧V(f)の2.5サイクルで現れる。
【0049】
図8から明らかな通り、最大値Mの時点は駆動電圧V(t)の2.5サイクルであるが、その後の制振優勢期DNの2.5サイクルにおいて点線の振幅5Vと実線の振幅4Vでは差異が見られる。後半の制振優勢期DNの2.5サイクルで振幅5Vから振幅4Vへ降圧した連続駆動では、強制振動周波数fの強制振動力が若干弱まる分、固有振動数fの自由振動性が若干復活するため、若干位相が遅れると共に、制振変向では制振作用が弱まる分だけ変向点が遅れて制振期間が確実に長くなり、相対的に次の励振期間が短く且つ励振作用が弱まるので、エネルギーが振幅5V駆動の場合以上に消耗する。制振優勢期DNにおいて駆動停止直前での降圧は変位xの位相を遅らす効果と励振力減退によるエネルギー消耗効果を果たす。急峻な振動触覚ハプティクス効果を得るためには、制動時間の短縮化が急務である。制振優勢期DNで機械振動子3を急速静止することは変位原点での速度がゼロとなることを意味する。5サイクル完了時点での点線の5Vはまだ速度を持っており、自然減衰で余振が尾を引いているが、実線の4V駆動ではピークが変位原点にソフトランディングし、余振が殆どない。なお、振幅電圧の降圧態様はステップ状ではなく連続的減衰でも構わない。
【0050】
図9の点線は周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの5サイクル駆動とその場合における機械振動子3の全エネルギーEの推移曲線を示し、図9の実線は周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの2.5サイクル駆動のあと振幅4Vの2.5サイクル駆動とその場合における機械振動子3の全エネルギーの推移曲線を示す。なお、固有周波数(f≒f)は157Hzである。図9から明らかな通り、駆動電圧V(t)の交番点(ゼロクロス点)と全エネルギーEの極大値とが対応している。最大値Mの時点は2.5サイクル完了時であるが、その後の制振優勢期DNの2.5サイクルの間において振幅5Vと振幅4Vでは差異が見られる。振幅4Vの方が各制振期Zにおける制振作用は若干弱く、各励振期Aにおける励振作用も弱く、全体として制振優勢期DNでは制振作用が強くなり、その終期では5Vの場合は自然減衰が長引いているが、4Vの場合は早くゼロに収斂する。
【0051】
図面には掲げていないが、制振優勢期DNの2.5サイクルにおいて、駆動電圧V(t)の振幅を6Vと昇圧して試したが、強制振動周波数fの強制振動力が若干強まる分、固有周波数fの自由振動性が若干弱まるため、若干位相が早まると共に、制振作用が強まる分だけ変向点が早まり制振期間が短くなり、相対的に次の励振期間が長くなり、且つ励振作用が強まり、振幅5V駆動の場合以上にエネルギー蓄積が起こり、逆効果であった。また別の不都合もある。励振優勢期UPでの駆動電圧V(t)は振動発生装置に許される限りの最大電圧(通常5V)として急励振させるため、特別の昇圧回路の装備がなければ、制振優勢期DNではその最大電圧以上の電圧を給電できないことである。他方、制振優勢期DNの2.5サイクルにおいて、駆動電圧Vの振幅を3Vと更に降圧して試したが、電圧が低すぎると、制振作用が非常に弱くなるため制振期間が長くなり、「制振変向」が起こらないまま交番となって「励振変向」となり、微弱な励振優勢期へ切り換わってしまい、5Vの場合よりも遅くゼロに接近する。従って、制振優勢期DNの2.5サイクルに亘って駆動電圧V(t)の振幅値を一定とする場合は、最適値が存在し、本例では励振優勢期UPの振幅値の80%、4Vが望ましい。なお、この値には実質的に多少の幅を伴うことは言うまでもない。70%ほどでも構わない。
【0052】
図10の実線は周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの5サイクル駆動のときの加速度の推移を示し、図10の点線は駆動電圧V(t)を2.5サイクル後にゼロとして自然減衰するときの加速度を示す。駆動電圧V(t)が2.5サイクル時点は全エネルギーEの極大値Mに相当しているが、ここで駆動電圧V(t)を停止すると、点線で示すように自然減衰での余振が相当長引いてしまうことから、5サイクル駆動とし、制振優勢期DNの終期で駆動電圧Vを停止する方が遥かに早く静止している。切れが良く、振動ハプティクス効果が発揮できる。加速度振動の包絡線が一拍動として感知される。なお、加速度ゼロは変位xの変曲点に対応している。
【0053】
図11の点線は周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの5サイクル駆動の場合において機械振動子3の変位xと全エネルギーEの推移曲線を示し、図11の実線は周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの2.5サイクル駆動のあと振幅4Vの2.5サイクル駆動の場合において機械振動子3の変位xと全エネルギーEの推移曲線を示す。なお、固有周波数(f≒f)は157Hzである。図11から明らかな通り、変位xの変向点(dx/dt=0)と全エネルギーEの極小値(dE/dt=0,dE/dt<0)とが対応している。最大値Mの時点は2.5サイクル完了時であるが、その後の制振優勢期DNの2.5サイクルにおいて振幅5Vと振幅4Vでの差異に関しては、全エネルギーEについては図8と同様の様子が見られるが、変位xの曲線では振幅5Vの自然減衰の長引いている様子が窺える。制振優勢期DNでの励振期Aで駆動電圧V(t)の振幅が大きいと、励振作用が強いので変位xを大きくしてしまう。5V変位(点線)と4V変位(実線)を良く見ると、4V変位(実線)の方は電圧値が低いので位相が若干遅れるものの、励振期Aでの励振作用を弱くできるので、結果的に速く静止点へ収斂する。
【0054】
今度はf<fの一例として、図12の点線は周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの5サイクル駆動の場合において機械振動子3の変位xの推移曲線を示し、実線は周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの2.5サイクル駆動のあと振幅3.5Vの2.5サイクル駆動の場合において機械振動子3の変位xの推移曲線を示す。なお、固有周波数(f≒f)は157Hzである。変位xの位相は駆動電圧V(t)の位相より若干遅れるものであるが、駆動電圧V(t)の周波数f(=130.83Hz)が固有周波数(f=157Hz)よりも遅いので、駆動電圧V(t)の最初の交番点の前に変位xは最初の振れ方向への振れ増し過程で変向点(ピーク)に達する。その変向点から制振期Zとなり、揺り戻り過程となってから最初の交番点が到来し、第2励振期Aとなる。変位xはその揺り戻しから変位原点を通過し、逆方向にまで振れ増しする。この逆方向の振れ増し過程で第2の変向点に切り換わるため、第2制振期Zに入るが、第2励振期Aでは揺り戻し過程分だけ勢いが増しているため、第2制振期Zは第1制振期Zよりも長くなる。それ故、第3励振期Aは第2励振期Aよりも短くなるが、振幅が増しているため、逆方向への振りが大きくなっている。やがて、第5制振期Zは第5励振期Aと時間が略同じになるため、振幅が増えなくなり、制振優勢期DNに入る。変位xの変向点(ピーク)では機械振動子3自身が往復磁界に対し逆向きとなり、制振期Zの始点となる。駆動電圧V(t)のゼロ点(交番点)では機械振動子3に印加する往復磁界が逆向きになっており、制振期Zの終点となっている。また図12から明らかなように、励振期A〜A10は励振時間で降順(位相差で約160°〜約20°)に推移する。図8の場合と比較すると、第1番目の励振期Aの励振期間は半周期(1/2f)に満たない。第i番目の励振期Aの励振期間と制振期Zの制振時間の和が半周期(1/2f)である。なお、変位xの最大値Mは2.25サイクルで現れる。
【0055】
図12から明らかな通り、2.25サイクル後の制振優勢期DNでは点線の振幅5Vと実線の振幅3.5Vでは差異が見られる。後半の制振優勢期DNの2.75サイクルで振幅5Vから振幅3.5Vへ降圧した連続駆動では、強制振動周波数fの強制振動力が若干弱まる分、固有周波数fの自由振動性が若干復活するため、若干位相が早まると共に、励振変向では励振作用が弱まる分だけ変向点が早まり励振期間が短くなり、しかも相対的に次の制振期間が長くなるので、エネルギーが振幅5V駆動の場合以上に消耗する。駆動停止直前での降圧は変位xの位相を早める効果と励振力減退によるエネルギー消耗効果を果たす。制振優勢期DNでの機械振動子3の急速静止は変位原点での速度がゼロを意味するが、5サイクル完了時点での点線の5Vではまだ速度を持っており、自然減衰の余振が尾を引いているが、実線の3.5Vでは速度もほぼゼロとなっている。
【0056】
後半2.5サイクルにおいて、駆動電圧V(t)の振幅を6Vとして試したが、各制振期Zにおける制振作用は強く、各励振期Aにおける励振作用も強く、全体として制振優勢期DNでは制振作用が弱くなり、その終期では5Vの場合よりも遅くゼロに接近する。また、制振優勢期DNの後半2.5サイクルにおいて、駆動電圧V(t)の振幅を3Vとして試したが、各制振期Zにおける制振作用は非常に弱く、各励振期Aにおける励振作用も非常に弱く、全体として制振優勢期DNでは制振作用が弱くなり、その終期では5Vの場合よりも遅くゼロに接近する。従って、後半2.5サイクルに亘って駆動電圧V(t)の振幅値を一定とする場合は、最適値が存在し、本例では励振優勢期UPの振幅値の70%、3.5Vが望ましい。なお、この値には実質的に多少の幅を伴うことは言うまでもない。制振優勢期DNでは70%にまで降圧するのが望ましい。
【0057】
図13の点線は周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの5サイクル駆動とその場合における機械振動子3の全エネルギーEの推移曲線を示し、図13の実線は周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの2.5サイクル駆動のあと振幅3.5Vの2.5サイクル駆動とその場合における機械振動子3の全エネルギーEの推移曲線を示す。なお、固有周波数(f≒f)は157Hzである。図13から明らかな通り、駆動電圧V(t)の交番点(ゼロ点)と全エネルギーEの極小値(dE/dt=0,dE/dt>0)とが対応している。振幅3.5vは励振期で始っているため励振作用が弱く、そのピークが低くなる分、制振期Zでも全エネルギーEが低くなっており、制振優勢期DNの終期では5Vの場合は自然減衰が長引いているが、3.5Vの場合は早くゼロに収斂する。
【0058】
図14の点線は周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの5サイクル駆動の場合において機械振動子3の変位xと全エネルギーEの推移曲線を示し、図14の実線は周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの2.5サイクル駆動のあと振幅3.5Vの2.5サイクル駆動の場合において機械振動子3の変位xと全エネルギーEの推移曲線を示す。なお、固有周波数(f≒f)は157Hzである。図14から明らかな通り、振動変位xのピーク(dx/dt=0)と全エネルギーEの極大値(dE/dt=0,dE/dt<0)とが対応している。後半2.5サイクルの終期において振幅5Vと振幅3.5Vで差異が見られる。制振優勢期DNでの励振期Aで駆動電圧V(t)の振幅が大きいと、励振作用が強いので変位xを大きくしてしまう。5Vでの変位(点線)と3.5Vでの変位(実線)を良く見ると、3.5Vでの変位(実線)の方は電圧値が低いので位相が若干遅れるものの、励振期Aでの励振作用を弱くできるので、結果的に速く静止点へ収斂する。
(両極性矩形波連続駆動方式)
【0059】
図15の点線は周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V両極性矩形波の5サイクル駆動方式とした場合及びこの場合における機械振動子3の全エネルギーEの推移曲線を示し、図15の細線は上記駆動方式における励振優勢期UPの制振期Zと制振優勢期DNの励振期Aとなるべき期間だけを調整電圧2.75Vで選択駆動とした場合及びこの場合における機械振動子3の全エネルギーEの推移曲線を示し、図15の太線は上記駆動方式における励振優勢期UPの制振期Zと制振優勢期DNの励振期Aとなるべき期間だけを調整電圧0Vの選択駆動とした場合及びこの場合における機械振動子3の全エネルギーEの推移曲線を示す。また図16の点線は周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5V交番矩形波の5サイクル駆動方式における変位xと全エネルギーEの推移曲線を示し、図16の太線は上記駆動方式における励振優勢期UPの制振期Zと制振優勢期DNの励振期Aとなるべき期間だけを調整電圧2.75Vの選択駆動とした場合の変位xと全エネルギーEの推移曲線を示し、図16の細線は上記駆動方式における励振優勢期UPの制振期Zと制振優勢期DNの励振期Aとなるべき期間だけを調整電圧0Vの選択駆動とした場合の変位xと全エネルギーEの推移曲線を示す。
【0060】
図15の駆動電圧V(t)は図8のような両極性正弦波ではなく両極性矩形波であるため、図15の全エネルギーEの点線は図9の点線よりも極値付近で滑らかさが落ち、折れ線的に推移している。励振優勢期UPの制振期Zや制振優勢期DNの励振期Aとなるべき期間での調整電圧2.75Vや0vの選択駆動は振幅5V矩形波駆動方式における制振期Z〜Zと励振期A〜Aに5Vに代えて加わるように制御しているため、図16に示す如く、点線のときと比べて変位に位相の遅れが累積的に現れている。励振優勢期UPの制振期Z〜Zでは制振力が弱まるため点線のときと比べて変位xの位相が遅れ、また制振優勢期DN1の励振期A〜Aでは励振力が弱まるため点線のときと比べてやはり変位xの位相が遅れる傾向を示す。調整電圧2.75Vでは、制振期Zでは微小振動の割りに電圧が高く制振作用が強すぎるので、変位xは変位原点に戻る前に逆方向へ励振されて位相が更に遅れ、本来、制振期Zとなるべき期間が励振期Z′となる。制振期Zでは変位原点付近で速度ゼロ点を持つため、ここで駆動停止するのが望ましい。点線の場合の極小値Nは制振期Zに存在していたが、調整電圧2.75Vでは極小値N′は制振期Zで早く出現する。調整電圧0Vでは自然減衰(フリーラン)となるため、変位xの位相が調整電圧2.75Vのときよりも更に遅れる傾向を示す。このため、本来、制振期Z,Zとなるべき期間が励振期Z′,Z′となる。従って、極小値N″は、調整電圧2.75Vのときよりも更に早く励振期Aで出現する。極小値の大きさ関係は、N≒<N′<N″であり、N″はまだ不感域に入るまで若干の自然減衰を待つ必要があるが、NやN′は不感域にある。
(偏加速度発生駆動方式)
【0061】
以上の両極性駆動方式においては、図8,図11,図12,図14及び図16に示す如く、変位xは、変位原点をクロスして正負交互に揺れ動き、1サイクル以上の交番する連続波を描くため、例えば図10のように、加速度のピークは往復振幅の正負双方向で交互に出現し、押し引き双方向の一拍動として感知される。即ち、一方向へ押す加速度と逆方向へ引く加速度が対を成し、双方向加速度振動となっている。これに対し、減衰系非共振型強制振動の遷移状態におけるうなり振動現象を利用し、一方向には強い加速度で他方向には弱い加速度でセンサス性のある単極性波形の生成方法を以下に説明する。
【0062】
前記(5)式のうなり振動の極限例として、うなり周期T=1/|f−f|と基本波の周期1/2(f+f)とが等しいときは、次の2通りである。
<fでは、f=3f
f<fでは、f=f/3
うなり波の2番谷の谷底点で駆動停止することは今までと変わりない。
【0063】
さて、f=3f≒3fの場合の例として、図17(A)は471Hzの駆動電圧V(t)の1.5サイクル駆動に対する全エネルギーEの推移を示し、図17(B)は上記駆動に対する変位xの推移である単極性波形を示す。471Hzの駆動電圧V(t)は表1のサイクル数1.5の場合に相当しており、強制振動周波数f=471Hzは固有周波数f=157Hzの3倍の非共振周波数で非常に早い。この駆動電圧V(t)の1.5サイクル波形は、負極性第1正弦半波Wと正極性第2正弦半波Wと負極性第3正弦半波Wとから成る交番波(双極性パルス)で、それぞれの波高値V〜Vはすべて絶対値で10V、第1半サイクルT,第2半サイクルT及び第3半サイクルTは471Hzの半サイクル(1/2f)で皆等しくしてある。全エネルギーEの曲線は第1励振期A,第1制振期Z,第2励振期A及び第2励振期Zとから成り、第1極大値Mと第2極大値Mとは駆動電圧V(t)のゼロ点(交番点(t,t))の時点に対応し、極小値Nは第2正弦半波Wの波高値Vの時点又は変位xの変向点(ピーク(x))の時点に対応している。第1正弦半波Wの終了までが第1励振期A、第2正弦半波Wの波高値Vまでが第1制振期Z、第2正弦半波Wの終了までが第2励振期A、第3正弦半波Wの終了までが第2制振期Zで、中央ピーク凹形モード<A|Z・A|Z>と表現でき、第1励振優勢期UPが第1励振期Aと第1制振期Zから成り、第1制振優勢期DNが第2励振期Aと第2制振期Zから成り、「制振変向」の一番シンプルなうなり振動である。
【0064】
図18(A)は471Hzの駆動電圧V(t)の1.5サイクル駆動に対する速度vと全エネルギーEの推移を示し、図18(B)は上記駆動に対する加速度aと全エネルギーEの推移を示す。加速度aの第1ピークaは第1正弦半波Wの波高値Vに対応し、第2ピークaは第2正弦半波Wの波高値Vに対応し、第3ピークaは第3正弦半波Wの波高値Vに対応している。第1ピークaと第3ピークaは中間の第2ピークaの逆方向に現れており、加速度比a/a=1.54で、第2ピークaの方が強くなっている。この中央ピーク凹形モード<A|Z・A|Z>においては、第1励振期Aで一方向へゆっくり揺れて単極性波形の立上り裾部分を形成し、第1制振期Zで第1交番点tに対応した変曲点から揺れが抑制されて立上り峰部を形成し、変向点xを過ぎた第2励振期Aで他方向へ振り戻され立下り峰部を形成し、第2制振期Zで第2交番点tに対応した変曲点から揺れが抑制されて立下がり裾部を形成して変位原点に復帰する。ここで、第1ピークaと第3ピークaの方を圧縮して第2ピークaの方を拡張するには、
,V<V 及び/又は T<T,T …(17)
の条件を満たすように駆動電圧V(t)を設定すれば良い。
【0065】
f=3f≒3fの場合の例として、図19(A)は駆動電圧V(t)の1.5サイクル変形波に対する全エネルギーEの推移を示し、図19(B)はこの1.5サイクル変形波に対する変位xの推移である単極性波形を示す。この1.5サイクル変形波において、第2正弦半波Wの波高値Vは10Vのままで、第1正弦半波Wの波高値Vと第3正弦半波Wの波高値Vは4.5Vとして下げ、fを471Hzとすれば、第1正弦半波Wの第1半サイクルT:第2正弦半波Wの第2半サイクルT:第3正弦半波Wの第3半サイクルT=3/5f:3/10f:3/5f=2:1:2で、第1正弦半波Wと第3正弦半波Wの周波数は392.5Hzに相当し、第2正弦半波Wの周波数は785Hzに相当する。
【0066】
図20(A)は駆動電圧V(t)の上記1.5サイクル変形波に対する速度vと全エネルギーEの推移を示し、図20(B)は上記1.5サイクル変形波に対する加速度aと全エネルギーEの推移を示す。加速度比a/a=3.16となり、図18(B)の場合に比して2倍の加速度比となっており、一方向加速度振動として十分感知できる。電圧比を約2倍に、周波数比を2倍にしたことから、加速度比は概ね電圧比と周波数比との積の1/2乗である。なお、この1.5サイクル変形波を間欠的に複数回生成すれば、その都度、上記一方向加速度が現れる。
【0067】
f=3f≒3fの場合の例として、図21(A)は駆動電圧V(t)の別の1.5サイクル変形波に対する全エネルギーEの推移を示し、図21(B)はこの別の1.5サイクル変形波に対する変位xの推移である単極性波形を示す。この別の1.5サイクル変形波において、第2正弦半波Wの波高値Vは14vと高め、第1正弦半波Wの波高値Vと第3正弦半波Wの波高値Vは3Vと低め、fを471Hzとすれば、第1正弦半波Wの第1半サイクルT:第2正弦半波Wの第2半サイクルT:第3正弦半波Wの第3半サイクルT=27/40f:3/20f:27/40f=9:2:9で、第1正弦半波Wと第3正弦半波Wの周波数は348.8Hzに相当し、第2正弦半波Wの周波数は1570Hzに相当する。
【0068】
図22(A)は駆動電圧V(t)の別の1.5サイクル変形波に対する速度vと全エネルギーEの推移を示し、図22(B)は上記別の1.5サイクル変形波に対する加速度aと全エネルギーEの推移を示す。加速度比a/a=6.63で、図18(B)の場合に比して4倍の加速度比となっており、一方向加速度振動として十分感知できる。なお、電圧比を約4倍に、周波数比を4倍にしたことから、やはり、加速度比は概ね電圧比と周波数比との積の1/2乗である。なお、この別の1.5サイクル変形波を間欠的に複数回生成すれば、その都度、上記一方向加速度が現れる。
【0069】
次は、f=f/3=f/3の場合の例として、図23(A)は駆動電圧V(t)の0.5サイクル正弦波形とこの波形に対する変位xの推移を示し、図23(B)はその0.5サイクル正弦波形に対する速度vと全エネルギーEを示す。図24はその0.5サイクル正弦波形に対する加速度aと全エネルギーEを示す。強制振動周波数f=52.33Hzは固有周波数f=157Hzの1/3の非共振周波数で非常に遅く、図17の場合でfとfとを入れ換えた関係(共役関係)となっている。全エネルギーEの曲線は第1励振期Aと第1制振期Zとから成る中央ピーク凸形モード<A・Z>で、第1励振期Aのみで励振優勢期と成り、また第1制振期Zのみで制振優勢期と成り、「励振変向」の一番シンプルなうなり振動である。唯一の極大値Mは変位xの変向点の時点に対応している。駆動電圧V(t)の立ち上がりの前期では速度vが負方向に増速し、立ち上がりから位相約60度で第1ピークvに達し、駆動電圧V(t)の立ち上がりの後期では速度vが減速して立ち上がりから位相90度でゼロに戻り、駆動電圧V(t)の立ち下がりの前期では速度vが正方向に増速し、立ち下がりから位相60度で第2ピークvに達し、駆動電圧V(t)の立ち下がりの後期では速度vが減速し、立り下がりから位相90度でゼロに戻る。第1ピークvまでと第2ピークvからの速度ゼロまでで、加速度aの負方向のピークがそれぞれ生じ、第1ピークvから第2ピークvまでで加速度aの正方向のピークが生じる。加速度比a/aは1.620で、図18の場合と同様な一方向に強い加速度を得ることができる。ただ、本例では0.5サイクル完了時点を過ぎた後も変位xが自然減衰で振動し、また速度vや加速度aも振動している。駆動電圧V(t)の1/4サイクル時点から制振期Zとなるが、この制振期Zの終わり頃では変位xは微小となっている割には、駆動電圧V(t)の値が高いため、0.5サイクル完了直前に次の励振期に若干入ってしまい、変位原点を若干オーバーシュートしている。
【0070】
図25(A)は駆動電圧V(t)の0.5サイクル正弦変形波とこの波形に対する全エネルギーEの推移を示し、図25(B)は0.5サイクル正弦変形波とこの波形に対する変位xの推移を示す。また、図26(A)は駆動電圧V(t)の0.5サイクル正弦変形波に対する速度vと全エネルギーEの推移を示し、図26(B)はその0.5サイクル正弦変形波に対する加速度aと全エネルギーEの推移を示す。本例の駆動電圧V(t)の0.5サイクル正弦変形波おいては、位相90°での第1励振期Aの立ち上がり側の波高値は10Vであるが、位相90°での第1制振期Zの立ち下がり側の波高値は0.5Vだけ下げ9.5Vと設定してある。第1制振期Zでの制振作用が数パーセント弱まるため、0.5サイクル完了時点では変位x及び加速度aがゼロに収斂している。そして、加速度比a/aは1.685となっている。
【0071】
上記の駆動電圧V(t)は単極性波形の正弦波であるが、一般に、駆動電圧V(t)が位相差π/2で単調増加する前縁と位相差π/2で単調減少する後縁とから成る単極性パルスでも良く、その前縁のうちの立ち上がり初期前縁の位相差が前縁のうちの立ち上がり終期前縁の位相差よりも長く、その後縁のうちの立ち下がり初期前縁の位相差が後縁のうちの立ち下がり終期後縁の位相差よりも短く設定することで、加速度比a/aは1.685に比し高くすることができる。
(単極性矩形波連続駆動方式)
【0072】
図27は周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの単極性矩形波の5サイクル駆動方式とした場合及びこの場合における機械振動子3の全エネルギーEの推移曲線を示し、特に、その5サイクル駆動のうち最後の2サイクルについては破線で示す振幅5V駆動と全エネルギーEの推移、並びに5Vの75%である実線の3.75V振幅駆動と全エネルギーEの推移を表わす。この駆動方式は周波数fが固有周波数fよりも高い単極性矩形波であるが、駆動電圧V(t)の最初の振幅5V期間(半周期1/2f)は第1励振期A、次の振幅0V期間(半周期1/2f)は第1自然減衰期Nで、2サイクル目の振幅5V期間(半周期1/2f)では最短の第1制振期Zの後に第2励振期Aが起こり、制振期Zの前に半周期1/2fの自然減衰期Nが間挿されている。
【0073】
図28は周波数fが196.25Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの単極性矩形波の5サイクル駆動方式とした場合及びこの場合における機械振動子3の変位xを示し、特に、その5サイクル駆動のうち最後の2サイクルについては破線で示す振幅5V駆動と変位x、並びに5Vの75%である実線の3.75V振幅駆動と変位xの推移を表わす。第1自然減衰期Nでは駆動電圧V(t)の振幅0Vへの立下りから変位xの最初の変向点を過ぎてから駆動電圧V(t)の振幅5Vへの立ち上がりまで推移する。ここで、駆動電圧V(t)の振幅0Vへの立下り又は振幅0Vからの立ち上がりを「‖」で表わせば、5サイクルすべて振幅5V駆動での非共振強制振動(うなり振動)は、中央ピーク凹形モード<A‖N・N‖Z・A‖N・N‖Z・A‖N・N‖Z・A‖N・N‖Z・A>として表わされ、また最後の2サイクルが振幅3.75V駆動では、…‖Z′・A′‖N′・N′‖Z′>として表わされる。なお、制振期の時間はZ<Z<Z<Zで、励振期の時間はA<A<A<A<A=1/2fである。自然減衰での励振変向と制振変向とを交互に繰り返しているが、5サイクル完了時に近づくにつれ制振期が長くなるため、制振作用が強まり、全エネルギーEがゼロ近傍となる。最後の5サイクル目も振幅5V駆動の場合、第4制振期Zの制振作用が強すぎるため、変位xの変向を起こし、次の第5励振期Aへ入ってしまうが、振幅3.75Vの場合は第4制振期Z′での制振作用を緩和でき、その期間を延ばせるため、第4制振期Z′で5サイクル目を完了でき、駆動停止での全エネルギーを最小化できる。
【0074】
本例においては、両極性波形駆動ではなく、単極性波形駆動で振幅ゼロ期間が周期的に加わっているため、制振優勢期DNでは制振期Z,Z(Z′,Z′)のほか自然減衰期N,N(N′,N′)も制振作用として追加されることになり、振動停止の切れが良く、急峻なハプティクス効果を発揮する。
【0075】
図29は周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの単極性矩形波の5サイクル駆動方式とした場合及びこの場合における機械振動子3の全エネルギーEの推移曲線を示し、特に、その5サイクル駆動のうち最後の2サイクルについては破線で示す振幅5V駆動と全エネルギーEの推移、並びに5Vの60%である実線の3V振幅駆動と全エネルギーEの推移を表わす。この駆動方式は周波数fが固有周波数fよりも低い単極性矩形波であるが、駆動電圧V(t)の最初の振幅5V期間(半周期1/2f)では第1励振期Aと最短の第1制振期Zとが起こり、次の振幅0V期間(半周期1/2f)は第1自然減衰期Nとなり、2サイクル目の振幅5V期間(半周期1/2f)では第2励振期Aと第2制振期Zが起こる。励振期Aの前に半周期1/2fの自然減衰期Nが間挿されている。
【0076】
図30は周波数fが130.83Hzの駆動電圧V(t)で振幅5Vの単極性矩形波の5サイクル駆動方式とした場合及びこの場合における機械振動子3の変位xを示し、特に、その5サイクル駆動のうち最後の2サイクルについては破線で示す振幅5V駆動と変位x、並びに5Vの60%である実線の3V振幅駆動と変位xの推移を表わす。変位xの最初の変向点を過ぎてから駆動電圧V(t)が振幅0Vへ立ち下がるが、第1自然減衰期Nはその立下りから変位xの第2番目の変向点を過ぎてから駆動電圧V(t)の振幅5Vへの立ち上がりまで推移する。5サイクルすべて振幅5V駆動での非共振強制振動(うなり振動)は、中央ピーク凸形モード<A・Z‖N・N‖A・Z‖N・N‖A・Z‖N・N‖A・Z‖N・N‖A・Z>として表わされ、また最後の2サイクルが振幅3V駆動では、…‖A′・Z′‖N′・N′‖A′・Z′>として表わされる。なお、制振期の時間はZ<Z<Z<Zで、励振期の時間はA<A<A<Aである。励振変向と自然減衰での変向とを交互に繰り返しているが、5サイクル完了時に近づくにつれ制振期が長く全エネルギーEがゼロ近傍となる。最後の5サイクル目も振幅5V駆動の場合、第5励振期Aの励振作用が強すぎるため、まだ高いエネルギーで変位xの変向を起こしてから第5制振期Zへ入るが、振幅3Vの場合は第5励振期A′の励振作用が弱く、その分、第5制振期Z′の制振作用が活きるので第5制振期Z′で5サイクル目を完了でき、駆動停止での全エネルギーを最小化できる。
【0077】
本例においても、両極性波形駆動ではなく、単極性波形駆動で振幅ゼロ期間が周期的に加わっているため、制振優勢期DNでは制振期Z,Z(Z′,Z′)のほか自然減衰期N,N(N′,N′)も制振作用として追加されることになり、振動停止の切れが良く、急峻なハプティクス効果を発揮する。また、単極性波形駆動では両極性波形駆動と比べ電源電圧を単極側で使用して駆動電圧V(t)を倍増できることになるため、励振優勢期でパワーアップできる。
【0078】
以上が本例の駆動方式であるが、減衰系(ζ<1)でしかも励振優勢期UPでも制振期Zが励振期Aと交互に現れるため、共振系の場合に比べて起動パワーの増強が必要となる。ところが、図2及び図3に示す振動リニアアクチュエータにおいては、機械振動子3は第1端面3aと第2端面3bとに亘る厚さ方向に着磁された環状永久磁石だけであり、バネ要素Sは環状永久磁石3をその厚さ方向へ往復変位可能に固定部Bに対し支持する第1板バネ6及び第2板バネ7であり、電磁コイルLは環状永久磁石3の中央孔を貫通して固定部Bに支持されており、電磁コイルL内を貫通する円柱状コア(鉄心)8を備え、電磁コイルLは磁化極性が反対となる下段トロイダルコイルLとこれに同軸で隣接した上段トロイダルコイルLを有し、第1端面3aに重ね合わせて内周縁が上段トロイダルコイルLの外周面を囲む第1環状ポールピース板4及び第2端面3bに重ね合わせて内周縁が下段トロイダルコイルLの外周面を囲む第2環状ポールピース板5を備えて成る。
【0079】
電磁コイルLの磁化方向と機械振動子(環状永久磁石)3の着磁方向が実質的に平行で、両コイル巻線の捲き方向,両コイルへの給電の向き,両コイルの直列構造や並列構造により、両コイルの外側端同士が同磁極で内側端同士が同磁極となるため、環状永久磁石3に対する磁気吸引力・反発力による往復動が作用すると共に、環状永久磁石3の両面磁極からの磁束が第1及び第2環状ポールピース板4,5の内周縁に集まってトロイダルコイルL,Lを貫き円柱状コア8を介して短絡磁路を形成するため、電磁力による往復動も作用し、起動パワーが増強する。また環状永久磁石3の外周側磁束も閉回路を形成するため、漏れ磁束を抑制できる。
【0080】
両コイルL,Lに磁束を貫かせるための第1及び第2環状ポールピース板4,5を備えているので、磁気吸引力・反発力よりも電磁力の方が強くなっており、起動パワーの増強に寄与する。
(共振/非共振の切換駆動方式)
【0081】
上記の両極性正弦波駆動方式,両極性矩形波連続駆動方式,偏加速度発生駆動方式,及び単極性矩形波連続駆動方式においては、1番谷部が必ず到来することにより、振動停止の切れが改善されているものの、駆動開始の最初から非共振駆動のうなり振動発生装置となっているため、駆動開始から1番山部までの励振優勢期では励振期と制振期が交互に現れるので、制振期が顕著に含まれている分、共振系の場合に比べて起動パワー不足となり易い。そこで、以下は、駆動開始から駆動信号の周波数をいきなり非共振周波数とするのではなく、最初は駆動電圧の周波数を減衰系固有周波数に合致させた共振周波数としてスタートし、一定期間後に非共振周波数に切換えると言う共振/非共振の切換駆動方式について説明する
【0082】
図31は駆動周波数fを1サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと5サイクルの188Hz(非共振周波数)とした駆動電圧V(t)の波形とその場合の全エネルギーEの推移曲線を示し、図32は同駆動電圧V(t)の場合における速度vと全エネルギーEの推移曲線を示し、図33は同駆動電圧V(t)の場合における加速度aと全エネルギーEの推移曲線を示し、図34は同駆動電圧V(t)の場合における変位xと全エネルギーEの推移曲線を示す。この減衰系(減衰比ζ<1)での初期共振振動においては、非減衰系の共振振動(減衰比ζ=0)とは異なり、変位xの位相が固有振動数157Hzの駆動電圧V(t)よりもやや遅れ、早晩、遅れ位相差は90°へ収斂するものであるから、図34から明らかなように、157Hzの1サイクル分の周波数切換時点では変位xは270°近くとなっている。この90°近くの位相差が存在するため、157Hzの初期共振駆動でも励振期Aの後に短い制振期Zと励振期Aの後に短い制振期Zが生じており、A,Z,A,Zと推移するが、制振期Z,Zは短期間であり、うなり振動の場合のような全エネルギーEを一時的でも消耗させるものではなく、実質上、全エネルギーEを時間の二乗に比例して増強している。そして、157Hzの1サイクル分の周波数切換時点では変位xの位相が駆動電圧V(t)のそれよりも90°近く遅れているため、188Hzの非共振駆動は制振期Zから始まり、励振優勢期UPの励振期Aを経て188Hzの2サイクル分で1番山部に到達した後、3サイクル分の制振優勢期DNの制振期Z12まで続き、2番谷部の谷底で全エネルギーEはほぼゼロにまで落ちる。
【0083】
このように、非共振系(=f>f)より前に共振系(f)が先行しているので、起動パワーを十分確保できる。また、うなり振動に切り換わってから1番山部が自ずと到来し、過大な振動振幅を抑制できるリミット効果もあり、機械振動子の振り切れを予防できる。
【0084】
図35は駆動周波数fを1サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと188Hz(非共振周波数)を繰り返した駆動電圧V(t)の場合における変位xと全エネルギーEを示す。2番谷部以降がうなり振動を繰り返しているため、1番山部のピークより低い2番山部のピーク、2番山部のピークよりも低い3番山部のピークが現れていると共に、2番谷部の谷底よりも高い3番谷部の谷底が現れている。図36の細線G1は5サイクルの非共振周波数196.25Hzの駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーEを示し、中線G2は1サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと5サイクルの188Hz(非共振周波数)とした駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーEを示し、太線G3は2サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと5サイクルの188Hz(非共振周波数)とした駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーEを示す。細線G1は最初からうなり振動で励振優勢期UPに強い制振期を伴っているため、1番山部のピークは低い。中線G2は予め1サイクルの157Hz(固有周波数f)で駆動してから188Hz(非共振周波数)に切換えているため、1番山部のピークが細線G1のそれに比して約2倍と高くなっている。太線G3は2サイクル分の共振初期駆動が先行しているため、1番山部のピークが中線G2のそれに比して約2倍近く高くなっている。なお、共振周波数のサイクル数はその後の非共振周波数のそれよりも少なくするのが好ましい。2番谷部のゼロからの乖離を抑制でき、振動停止の切れも保全できるからである。
【0085】
表3は、駆動周波数fを1サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと非共振周波数(>f)とする場合、その非共振周波数の値に対して2番谷部の谷底で振動停止となるサイクル数、最大加速度(GopMax)、第1山部のピーク値、第2山部のピーク値、第2谷部の谷底値/第1山部のピーク値(%)を示し、この表を描いたグラフが図37である。なお、表3中、例えば「4.63E−04」の表記は4.63×10−4の略記である。
【表3】

【0086】
図37から明らかなように、固有周波数fよりも高い非共振周波数へ切換える場合、非共振周波数が高くなるほど、最大加速度(GopMax)は単調減少するので、157Hz(固有周波数f)からかけ離れた過度に高い非共振周波数を選定するのは好ましくないが、第2谷部/第1山部(%)がゼロ近傍の極小値となる最適な非共振周波数が存在していことが分かった。その数値はあくまでも本例の振動リニアアクチュエータの場合での数値であるが、下限値の188Hzの5サイクルと上限値198Hzの4サイクルとその中間値の192Hzの4.5サイクルであった。なお、参考までに、図38は駆動周波数fを1サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと非共振周波数の198Hzの4サイクルで駆動した場合の加速度aを示す。
【0087】
図39は駆動周波数fを1サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと3サイクルの122Hz(非共振周波数)とした駆動電圧V(t)の波形とその場合の全エネルギーEの推移曲線を示し、図40は同駆動電圧V(t)の場合の速度vと全エネルギーEの推移曲線を示し、図41は同駆動電圧V(t)の場合の加速度aと全エネルギーEの推移曲線を示し、図42は同駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーEの推移曲線を示す。この減衰系(減衰比ζ<1)の共振振動においても、非減衰系の共振振動とは異なり、変位xの位相が固有振動数157Hzの駆動電圧V(t)よりもやや遅れ、遅れ位相差は90°へ収斂するものであるから、図42から明らかなように、157Hzの1サイクル分の周波数切換時点では変位xは270°近くとなっている。この位相差が存在するため、157Hzの初期共振駆動でも励振期Aの後に弱い制振期Zと励振期Aの後に弱い制振期Zが生じており、A,Z,A,Zと推移するが、制振期Z,Zは短期間であり、うなり振動の場合のような全エネルギーEを一時的にも消耗させるものではなく、全エネルギーEを時間の二乗に比例して増強している。そして、157Hzの1サイクル分の周波数切換時点では変位xの位相が駆動電圧V(t)のそれよりも90°近く遅れているため、122Hzの非共振駆動は制振期Zから始まり、励振優勢期UPの励振期A6を経て188Hzの2サイクル分で1番山部に到達した後、3サイクル分の制振優勢期DNの制振期Zまで続き、2番谷部の谷底で全エネルギーEはほぼゼロにまで落ちる。
【0088】
このように、非共振系(=f<f)より前に共振系(f)となっているので、起動パワーを十分確保できる。また、うなり振動に切り換わってから1番山部が自ずと到来し、過大な振動振幅を抑制できるリミット効果もあり、機械振動子の振り切れを予防できる。
【0089】
図43は駆動周波数fを1サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと122Hz(非共振周波数)を繰り返した駆動電圧V(t)の場合における変位xと全エネルギーEを示す。2番谷部以降がうなり振動を繰り返しているため、1番山部のピークより低い2番山部のピーク、2番山部のピークよりも低い3番山部のピークが現れていると共に、2番谷部の谷底よりも高い3番谷部の谷底が現れている。図44の細線G1は3サイクルの非共振周波数117.75Hzの駆動電圧V(t)の場合における変位xと全エネルギーEを示し、中線G2は1サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと3サイクルの1122Hz(非共振周波数)とした駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーEを示し、太線G3は2サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと3サイクルの122Hz(非共振周波数)とした駆動電圧V(t)の場合の変位xと全エネルギーEを示す。細線G1は最初からうなり振動で励振優勢期に強い制振期が先行しているため、1番山部のピークは低い。中線G2は予め1サイクルの157Hz(固有周波数f)で駆動してから122Hz(非共振周波数)に切換えているため、1番山部のピークが細線G1のそに比して約2倍と高くなっている。太線G3は2サイクル分の共振初期駆動を伴っているため、1番山部のピークが中線G2のそれに比して約2倍近く高くなっている。なお、共振周波数のサイクル数はその後の非共振周波数のそれよりも少なくするのが好ましい。2番谷部のゼロからの乖離を抑制でき、振動停止の切れも保全できるからである。
【0090】
表4は、駆動周波数fを1サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと非共振周波数(<f)とする場合、その非共振周波数の値に対して2番谷部の谷底で振動停止となるサイクル数、最大加速度(GopMax)、第1山部のピーク値、第2山部のピーク値、第2谷部の谷底値/第1山部のピーク値(%)を示し、このグラフが図45である。なお、表4中、例えば「1.31E−04」の表記は1.31×10−4の略記である。
【表4】

【0091】
図45から明らかなように、固有周波数fよりも低い非共振周波数へ切換える場合、非共振周波数が低くなるほど、最大加速度(GopMax)は単調減少するので、157Hz(固有周波数f)からかけ離れた過度に低い非共振周波数を選定するのは好ましくないが、第2谷部/第1山部(%)がゼロ近傍の極小値になる非共振周波数が存在していた。その数値はあくまでも本例の振動リニアアクチュエータの値であるが、下限値122Hzの3サイクルと上限値129.5Hzの4サイクルと中間値の127Hzの3.5サイクルある。なお、参考までに、図46は駆動周波数fを1サイクルの157Hz(固有周波数f)のあと非共振周波数の129.5Hzの4サイクルで駆動した場合の加速度aを示す。
【0092】
なお、上記の共振/非共振の切換駆動方式においては両極性正弦波連続駆動としてあるが、本発明は両極性矩形波連続駆動でも単極性矩形波連続駆動でも構わず、種々のバリエーションを採用できる。
【符号の説明】
【0093】
3…機械振動子(円環状永久磁石)
3a…第1端面
3b…第2端面
4…第1ポールピース板
5…第2ポールピース板
6…第1板バネ
6a,7a…内周側吊り下げ部
6b,7b…外周側吊り下げ部
7…第2板バネ
8…円柱状コア(鉄心)
9…筒状ケース
10…端板(エンドプレート)
10b…導通突起
11…印刷配線板
12…保護筒体
13…磁性流体
14…ゴムダンパー
15…半月状導電性ゴム
16…ラバーシート
17…両面テープ
17a…剥離紙
20…強制振動制御部
〜A12,A′,A′,Z′,Z′…励振期
a…加速度
〜a…ピーク
B…固定部
c…減衰係数
,C,F…定数
D…ダンパー(減衰要素)
DN,DN,DN,DN…制振優勢期
E…機械振動子の全エネルギー
f…強制振動周波数
…固有周波数
k…バネ定数
L…電磁コイル
…下段トロイダルコイル
…上段トロイダルコイル
M,M,M…最大値(極大値)
m…質量
N,N′,N″…最小値(極小値)
〜N,N′,N′…自然減衰期
P…最小の極大値
S…バネ要素
,S…スプリング端子
…第1半サイクル
…第2半サイクル
…第3半サイクル
t…時間
…第1交番点
…第2交番点
UP,UP,UP,UP…励振優勢期
V(t)…駆動電圧
〜V…波高値
v…速度
…第1ピーク
…第2ピーク
〜W…正弦半波
x…変位
…変向点
〜Z12,Z′,Z′,Z′…制振期
ω…強制振動の角周波数
ω…固有角周波数
ω…減衰固有角周波数
ζ…減衰比

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減衰比ζ<1の減衰系で機械振動子をバネ要素を介して固定部に対し支持し、前記機械振動子を非接触で振動させる動磁界を生成する励磁手段を備え、この励磁手段に印加する駆動電圧の周波数を駆動開始又は駆動途中から前記機械振動子の減衰系固有周波数から外れた非共振周波数として前記機械振動子がうなり振動を起す振動発生装置であって、前記うなり振動の振幅を規定するうなり波のうち駆動開始側から1番山部を超えた2番谷部において前記駆動電圧の印加を停止制御する強制振動制御手段を有することを特徴とする振動発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動発生装置において、前記強制振動制御手段は、前記2番谷部で前記駆動電圧の印加停止以前に当該駆動電圧の振幅を抑制することを特徴とする振動発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の振動発生装置において、前記強制振動制御手段は、前記1番山部から前記2番谷部へ下る期間の前記駆動電圧の振幅を前記1番谷部から前記1番山部へ上る前記駆動電圧の振幅よりも抑制することを特徴とする振動発生装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の振動発生装置において、前記励磁手段に印加する駆動電圧は単極性電圧の繰り返し波形であることを特徴とする振動発生装置。
【請求項5】
請求項1に記載の振動発生装置において、前記強制振動制御手段は、前記うなり振動のうなり波のうなり周期と前記うなり振動の基本波の周期とが実質上等しくなるように前記駆動電圧の周波数を設定して成ることを特徴とする振動発生装置。
【請求項6】
請求項1に記載の振動発生装置において、前記駆動電圧の周波数が前記減衰系固有周波数の実質上3倍であって、前記励磁手段に印加される前記駆動電圧は、第1正弦半波,これに逆相の第2正弦半波,及びこの第2正弦半波に逆相の第3正弦半波から成る独立波であることを特徴とする振動発生装置。
【請求項7】
請求項6に記載の振動発生装置において、前記第1正弦半波と前記第3正弦半波との周波数は前記減衰系固有周波数の3倍以下であって、前記第2正弦半波の周波数は前記減衰系固有周波数の3倍以上であることを特徴とする振動発生装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の振動発生装置において、前記第2正弦半波の波高値は、前記第1正弦半波と前記第3正弦半波の波高値以上であることを特徴とする振動発生装置。
【請求項9】
請求項1に記載の振動発生装置において、前記駆動電圧の周波数が前記減衰系固有周波数の実質上1/3であって、前記励磁手段に印加される前記駆動電圧が正弦半波であることを特徴とする振動発生装置。
【請求項10】
請求項1に記載の振動発生装置において、前記強制振動制御手段は、前記駆動開始から一定期間に亘り前記駆動電圧の周波数を前記減衰系固有周波数に合致させた共振周波数として出力した後、前記非共振周波数に切換えることを特徴とする振動発生装置。
【請求項11】
請求項10に記載の振動発生装置において、前記減衰系固有周波数のサイクル数は前記非共振周波数のサイクル数よりも少ないことを特徴とする振動発生装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の振動発生装置において、前記機械振動子は第1端面と第2端面とに亘る厚さ方向に着磁された環状永久磁石を有し、前記バネ要素は前記環状永久磁石を前記厚さ方向へ変位可能に前記固定部に対し支持する懸架バネ手段であり、前記電磁コイルは前記環状永久磁石の中央孔を貫通して前記固定部に支持さており、前記電磁コイル内を貫通するコアを備え、前記電磁コイルは磁化極性が反対となる第1トロイダルコイルとこれに同軸で隣接した第2トロイダルコイルを有し、前記第1端面に重ね合わせて内周縁が前記第1トロイダルコイルの外周面を囲む第1環状ポールピース及び前記第2端面に重ね合わせて内周縁が前記第2トロイダルコイルの外周面を囲む第2環状ポールピースを備えて成ることを特徴とする振動発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2012−125135(P2012−125135A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150975(P2011−150975)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000177151)日本電産セイミツ株式会社 (143)
【Fターム(参考)】