振動絶縁装置
【課題】初期設計が容易で、サージングの恐れもない振動絶縁装置とする。
【解決手段】振動抑制構造体に固定されるフランジ11、11の間に筒状ゴム製ばね12が介在され、そのゴム製ばね12内の空間Sにコイルばね13と鋼球15とが設けられた振動絶縁装置である。ゴム製ばね及びコイルばねによる伸縮でもって振動を吸収する際、各鋼球は、その伸縮に伴う振動でもって相互間での接触・微振動を繰り返し、その摩擦によって、振動エネルギーが熱エネルギーとして散逸されて、減衰効果が発揮される。このとき、鋼球は、コイルばね表面及びゴム製ばね内面にも触れ、その摩擦によっても減衰効果を発揮する。このように、ばね要素以外の要素により、系の固有振動数での損失係数を増大させて、系の固有振動数での共振ピークもできるだけ抑える。また、コイルばねは鋼球の充填層内に埋設された状態となるため、コイルばねのサージングの恐れも少ない。
【解決手段】振動抑制構造体に固定されるフランジ11、11の間に筒状ゴム製ばね12が介在され、そのゴム製ばね12内の空間Sにコイルばね13と鋼球15とが設けられた振動絶縁装置である。ゴム製ばね及びコイルばねによる伸縮でもって振動を吸収する際、各鋼球は、その伸縮に伴う振動でもって相互間での接触・微振動を繰り返し、その摩擦によって、振動エネルギーが熱エネルギーとして散逸されて、減衰効果が発揮される。このとき、鋼球は、コイルばね表面及びゴム製ばね内面にも触れ、その摩擦によっても減衰効果を発揮する。このように、ばね要素以外の要素により、系の固有振動数での損失係数を増大させて、系の固有振動数での共振ピークもできるだけ抑える。また、コイルばねは鋼球の充填層内に埋設された状態となるため、コイルばねのサージングの恐れも少ない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業機械、例えば、屋上の風力発電機、小型発電機、ガスヒートポンプ(エコ給湯機等)におけるその架台と機械本体等の一方の構造体と他方の構造体の間に介在されて、一方の構造体の振動がその一方の構造体から他方の構造体に伝播することを抑制する振動絶縁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の防止装置として、例えば、図16、図17に示すように、一方の構造体と他方の構造体にそれぞれ固定されて対向する対のフランジ1、1と、その両フランジ1、1の間に介在された筒状ゴム製ばね2と、そのゴム製ばね2内に設けられたコイルばね3とから成るものがある。このとき、コイルばね3をゴム製ばね2内の空間S内に設けた並列型(図3 特許文献1 図1参照)と、コイルばね3をゴム製ばね2内に埋設した一体型(図4 特許文献2 図7参照)がある。
【0003】
この筒状ゴム製ばね2とコイルばね3とからなる振動絶縁装置(ハイブリット型振動絶縁装置)は、ゴム製ばね2では適応が難しかった固有振動数:10Hz以下の振動域での防振に対応できる。筒状ゴム製ばね2によって、その軸心方向への撓み(伸縮)が担保され、コイルばね3によって、荷重は主に担われるからである。
また、このハイブリット型振動絶縁装置は、温度変化によるばね特性の変化が極めて小さく、幅広い温度領域で安定した性能を維持できる。
因みに、ゴム製ばね2のみからなる防振ばね(防振ゴム)であると、荷重によるクリープにより撓み量に限界があって、固有振動数を10Hz以下に設定できない。一方、コイルばね3のみからなる防振ばねであると、10Hz以下の固有振動数を確保できるが、共振点における減衰が非常に少なく、大きな揺れが発生し、十分な防振作用を得ることができない。
【0004】
さらに、振動絶縁装置としては、容器内に粒状体を充填し、その粒状体間の摩擦によって振動を吸収するものもある(特許文献3図4、特許文献4図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−302642号公報
【特許文献2】特開2002−115744号公報
【特許文献3】特開2000−213595号公報
【特許文献4】特開2001−355672号公報
【0006】
また、図16、図17に示すように、一方のフランジにオリフィス用通気孔4を設けたものもある。この振動絶縁装置は、通常、振動源の振動数と振動装置(防振材)の固有振動数が一致すると共振して、大きな振幅で振動する場合があるが、このとき、通気孔(オリフィス)4から空気を吸排し、その通過空気抵抗による減衰効果で、共振時の振幅を最小限に抑える作用がなされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図16に示す並列型の振動絶縁装置は、一体型に比べて大型にはなるが、初期設計が比較的に簡単であり、コイルばね3の仕様を適宜に選択することによって、幅広いばね定数の複合ばねとしてその特性を容易に得ることができる。
しかし、コイルばね3を採用しているため、中・高周波数帯域において、コイルばね3自体の弾性振動の固有振動数と加振振動数が一致すると、コイルばね3が共振するサージングが発生し、弾性支持系の振動絶縁(抑制)効果を大きく低下させるとともに、騒音発生の恐れもある(図5参照)。
【0008】
一方、図17に示す複合一体型の振動絶縁装置は、コンパクト化を図ることができるとともに(図16と図17の対比参照)、ゴム製ばね2中にコイルばね3が埋設されているため、上記サージングの発生はないが、ゴムの非線形性等を考慮したばね設計が必要である(複合ばねとしての初期設計が容易でない)上に、ゴム製ばね2中へのコイルばね3の埋設工程がある等から、製造し難く、高コストとなり、コイルばね3とゴム製ばね2との剥離(セパレーション)の恐れ、及び重量アップ等の問題がある。このため、実用面で必ずしも使い易いものではない。
【0009】
この発明は、上記の実情の下、初期設計が容易で、サージングの恐れも少ない振動絶縁装置とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、この発明は、第1の手段として、上記並列型の振動絶縁装置において、ゴム製ばね内の空間内に粒状体を充填したのである。
このようにすれば、ゴム製ばね及びコイルばねでもって振動を吸収する際、その伸縮に伴う振動によって、各粒状体は相互間での接触・微振動を繰り返すこととなる。この接触・振動による各粒状体の摩擦によって、振動エネルギーが熱エネルギーとして散逸されて、減衰効果が発揮される。このとき、粒状体は、コイルばね表面及びゴム製ばね内面にも触れ、その摩擦によっても減衰効果を発揮する。
【0011】
このように、ばね要素以外の要素でもって、系の固有振動数での損失係数を増大させることによって、系の固有振動数での共振ピークもできるだけ抑えることができる。
また、コイルばねは粒状体の充填層内にその多くが埋設された状態となるため、複合一体型に近似した構造となって、コイルばねのサージングの恐れも少なくなる。
【0012】
以上の作用により、ゴム製ばね内の空間内に粒状体を充填した並列型の振動絶縁装置は、その系での固有振動数での共振ピークを極力抑えたものとなる。
因みに、通常、ばね要素の損失係数を増大させると、共振ピークは抑えられるが、防振域は悪化する(防振域が狭くなる)傾向がある。これに対し、ばね要素でない粒状体によってばね要素の損失係数を増大させるため、その防振域は狭くならない。
【0013】
この発明の構成としては、一方の構造体と他方の構造体の間に介在されて、一方の構造体の振動がその一方の構造体から他方の構造体に伝播することを抑制する振動絶縁装置において、前記一方の構造体と他方の構造体にそれぞれ固定されて対向する対のフランジと、その両フランジの間に介在された筒状ゴム製ばねと、そのゴム製ばね内の空間に設けられたコイルばねと、同じく、そのゴム製ばね内の空間に充填された粒状体とからなり、前記ゴム製ばねとコイルばねは、その軸心が前記一方のフランジから他方のフランジに向かう方向の同一軸となっているとともに、前記粒状体は、前記ゴム製ばね内の空間に空隙ができてその空隙でもって前記ゴム製ばねとコイルばねがその軸心方向に撓み得る程度に充填されている構成を採用することができる。
【0014】
上記空隙を設けたのは、粒状体がゴム製ばね内に一杯に充填されると、ゴム製ばね及びコイルばねの円滑な縮小の妨げとなるからである。このため、粒状体の充填量は、ゴム製ばね内の空間に空隙ができてその空隙でもって前記ゴム製ばねとコイルばねがその軸心方向に撓み得る程度としたのである。その程度は、実験などによって、この発明の効果を得ることができるように適宜に設定する。例えば、ゴム製ばね内の空間の容積に対して30〜80%とする。好ましくは、50%程度とする(下記試験例参照)。
【0015】
その粒状体としては、上記の作用を発揮し得るものであれれば、何れでも良いが、その材質は、鉄、亜鉛、砂、ガラス等を採用でき、形状も、球状のものが好ましいが、それ以外の、例えば、三角錐、四角錐、不均一形状、角状、片状等と任意である。また、使用済ショットブラスト材を再使用することもできる。
さらに、その大きさ(粒径)は、コイルばねの線間に粒状体(粒子)が詰まってコイルばねの撓みを阻害しない範囲で適宜に設定すればよいが、粒状体がその線間に2つ並ぶと、その粒状体は固定されて容易に崩れず、3つ以上並ぶと容易に崩れるため、例えば、線(コイル)間の1/3以下の寸法のものとする。
【0016】
上記構成において、従来と同様に、上記フランジに上記ゴム製ばね内の空間に通じるオリフィス用通気孔を形成することができるが、その際、通気孔を上記粒状体が通り抜け得ない大きさの孔を有する多孔シートで覆って、その通気孔から粒状体が出るのを防止することが好ましい。
【0017】
また、上記課題を達成するために、この発明は、第2の手段として、上記並列型の振動絶縁装置において、ゴム製ばね内にクッション材又はそのクッション材に加えて硬い塊を装填したのである。
このようにすれば、ゴム製ばね及びコイルばねでもって振動を吸収する際、その伸縮に伴う振動によって、上記粒状体と同様に、クッション材はその組織要素が空気の吸排に伴う相互間の接触や微振動を繰り返し、塊はコイルばねとの接触や微振動を繰り返すこととなる。この接触・振動による組織要素等の摩擦によって、振動エネルギーが熱エネルギーとして散逸されて、減衰効果が発揮されて、ばね要素以外の要素でもって、系の固有振動数での損失係数を増大させることによって、系の固有振動数での共振ピークもできるだけ抑えることができ、また、コイルばねはクッション材又はそのクッション材と塊に擬似的に埋設された(一体となった)状態となるため(図4(a)〜(c)参照)、複合一体型に近似した構造となって、コイルばねのサージングの恐れも少なくなる。
【0018】
この発明の構成としては、同様に、一方の構造体と他方の構造体の間に介在されて、一方の構造体の振動がその一方の構造体から他方の構造体に伝播することを抑制する振動絶縁装置であって、前記一方の構造体と他方の構造体にそれぞれ固定されて対向する対のフランジと、その両フランジの間に介在された筒状ゴム製ばねと、前記両フランジの間の前記ゴム製ばね内の空間に設けられたコイルばねと、同じく、前記両フランジの間の前記ゴム製ばね内の空間に装填されたクッション材又はそのクッション材に加えて硬い塊とからなり、前記ゴム製ばねとコイルばねは、その軸心が前記一方のフランジから他方のフランジに向かう方向の同一軸となっているとともに、前記クッション材は、前記対のフランジの接離に伴って伸縮するように装填されている構成を採用することができる。
【0019】
この構成において、上記「クッション材は対のフランジの接離に伴って伸縮するように装填されている」とは、クッション材が一方のフランジから他方のフランジまで詰まっている状態(図4(b)参照)のみならず、クッション材がその途中まで装填され、そのクッション材とフランジの間にフランジの移動をクッション材に伝える上記塊等の伝達材が詰められている場合(図4(a)参照)等のように、対のフランジの接離に伴ってクッション材が伸縮するように装填されている態様を言う。
なお、従来と同様に、上記フランジに上記ゴム製ばね内の空間に通じるオリフィス用通気孔を形成することができる。上記硬い塊は、粒状ではない大きさの鉄球(鋼球)等(図4(a)参照)を言い、コイルばねに接するようにする。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、以上のように、ゴム製ばね内の空間内に粒状体を充填した、又はクッション材等を装填した並列型の振動絶縁装置としたので、初期設計が容易で、サージングの恐れもなく、その系での固有振動数での共振ピークを極力抑えたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は切断正面図
【図2】同実施形態の一取付態様図であって、(a)は概略斜視図、(b)は同要部拡大正面図
【図3】試験器の概略斜視図
【図4】他の各実施形態の切断正面図
【図5】この発明の一実施例の各態様における上記試験器による各測定図
【図6】同各測定図
【図7】同各測定図
【図8】同各測定図
【図9】同各測定図
【図10】同各測定図
【図11】同各測定図
【図12】同各測定図
【図13】同各測定図
【図14】同各測定図
【図15】クッション材の斜視図
【図16】従来例の切断正面図
【図17】従来例の切断正面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
一実施形態を図1に示し、この実施形態の振動絶縁装置は、従来と同様に、対向する対(上下)の金属製フランジ11、11と、その両フランジ11、11の間に介在された円筒状ゴム製ばね12と、そのゴム製ばね12内に設けられたコイルばね13とから成る並列型である。フランジ11の形状は、円形、四角形が一般的であるが、取付ける構造体に応じて適宜に決める。上フランジ11とゴム製ばね12との接合は、ゴム製ばね12を加硫接着して行う。下フランジ11は、補助フランジ11aをゴム製ばね12に加硫接着し、その補助フランジ11aをビス14によりねじ止めすることによってゴム製ばね12に固定する。
【0023】
ゴム製ばね12内の空間Sには、コイルばね13とともに、粒状体15が充填されている。
下フランジ11の中央にはオリフィスとなる通気孔16が形成されている。その通気孔16はポリエチレン繊維等からなるフィルター17によって覆われており、このフィルター17によって、空間S(ゴム製ばね12内)からの粒状体15の流逸を防止する。
図中、11’は取付け用ボルト孔である。
【0024】
この実施形態の振動絶縁装置Aは、種々の取付け態様が考えられるが、例えば、図2に示す風力発電機Gの架台Hに設けるものであって、下のフランジ11を架台Hにボルト止めし、上フランジ11を風力発電機(機械本体)Gにボルト止めして、風力発電機Gからの振動が架台H側に伝達されるのを、ゴム製ばね12及びコイルばね13の伸縮とそれに伴う粒状球15の移動によって抑制する。
【0025】
この振動絶縁装置Aにおいて、両フランジ11、11aに鉄板、ゴム製ばね12に、外径L1:45mm、厚さ:3.65mm、ばね定数:20N/mmのもの、コイルばね13に、コイル内径L2:19mm、コイル線径:3mm、コイル線間t(図1(b)参照):4mm、ばね定数:10N/mm,両フランジ間H:50mmのものを使用し、図3に示す試験機Dによる各種の条件下の試験結果を図5〜図14に示す。この試験機は、振動板18を振動機19によって、周波数範囲:5〜500Hz、加速度:4.9m/s2(0.5G)で振動させ、その振動をFFTアナライザー(図示せず)でもって測定した。図中、20は1.8kgの重りである。
【0026】
図5は、粒状体を充填しない場合(ハイブリットオリジナル)であって、(a)は通気孔16を設けた場合、(b)は通気孔16が無い場合である。
【0027】
図6は、φ0.3mmのショットブラスト用鋼球(以下、「鋼球」と称する。)15を充填し、通気孔16を設けて、その鋼球15の空間Sの容積に対しての充填量を変えたもの(ハイブリット)であり、(a)は「5%(12.6g)」、(b)は「10%(25.2g)」、(c)は「15%(37.8g)」、(d)は「20%(50.4g)」、(e)は「25%(63g)」、(f)は「30%(75.6g)」、(g)は「50%(126g)」、(h)は「80%(201.6g)」、(i)は「90%(226.8g)」である。
【0028】
図7は、φ0.8mmの鋼球15を充填し、通気孔16を設けて、その鋼球15の充填量を変えたものであり、(a)は「5%(13g)」、(b)は「10%(26g)」、(c)は「15%(39g)」、(d)は「20%(52g)」、(e)は「25%(65g)」、(f)は「30%(78g)」、(g)は「50%(130g)」、(h)は「80%(208g)」、(i)は「90%(234g)」である。
【0029】
図8は、φ0.3mmの鋼球15を充填し、通気孔16を設けず、その鋼球15の充填量を変えたものであり、(a)は「30%(75.6g)」、(b)は「50%(126g)」、(c)は「80%(201.6g)」である。
【0030】
図9は、φ0.8mmの鋼球15を充填し、通気孔16を設けず、その鋼球15の充填量を変えたものであり、(a)は「30%(78g)」、(b)は「50%(130g)」、(c)は「80%(208g)」である。
【0031】
図10は、φ16.7mmの鋼球15を2個封入し、通気孔16を設けた場合(a)と、設けない場合(b)である。
【0032】
図11は、φ16.7mmの鋼球15を1個封入し、通気孔16を設けた場合(a)と、設けない場合(b)である。
【0033】
図12は、φ16.7mmの鋼球15’を2個とPET(ポリエチレンテレフタレート)性不織布(図15参照)からなる高さ:15mmの直方体15’’をコイルばね13内に一個封入し(図4(a)参照)、通気孔16を設けた場合(a)と、設けない場合(b)である。
【0034】
図13は、φ0.6mmの亜鉛球15を充填し、通気孔16を設けて、その亜鉛球15の充填量を変えたものであり、(a)は「30%(70g)」、(b)は「50%(116.3g)」、(c)は「80%(186.2g)」である。
【0035】
図14は、φ0.6mmの亜鉛球15を充填し、通気孔16を設けず、その亜鉛球15の充填量を変えたものであり、(a)は「30%(70g)」、(b)は「50%(116.3g)」、(c)は「80%(186.2g)」である。
【0036】
これらの試験結果において、300〜400Hzで大きなサージング現象が生じているのは、図5の粒状体15を充填していない場合、同充填量が少ない場合(図6(a)、(b)、図7(a)、(b)、図10(a)、(b)、図11(a)、(b))であり、また、同充填量が多くなれば、そのサージング現象が生じ難くなっている(図6(a)〜(i)、図7(a)〜(i))。さらに、通気孔16の有無に関係なく、粒状体15の充填量が増せば、サージング現象が生じ難くなっている(図6(a)〜(i)、図7(a)〜(i)と図8(a)〜(c)、図9(a)〜(c)の対比))。
【0037】
このことから、粒状体15の充填によって、サージング現象が抑制され、充填量30%になれば、その現象はほぼ無くなっている(図6(f)、図7(f)、図8(a)、図9(a)参照)。しかし、充填量が30%以下でも、サージング現象の抑制が認められるため(図6(c)〜(e)、図7(c)〜(e)参照)、費用対効果でもってその充填量は適宜に決定すれば良い。
一方、粒状体15の充填量が50%を越えると、その充填量の増加に伴う、サージング現象の抑制効果も少なくなっている。このことから、充填量50%程度で十分であり、充填量80%以上は費用対効果から好ましくないことが窺える。
【0038】
さらに、この系の固有振動数は30Hzであり、その領域における共振ピークの損失係数は、図5、図10、図11に比べれば、図6〜図9、図12〜図14は小さくなっている(変位量が少なくなっている)。
【0039】
以上から、この発明は、固有振動数での共振ピークを極力抑えたものであり、かつ、サージング現象も少ない、安定した防振作用を行うものであることが分かる。
なお、各実施形態において、通気孔16は上フランジ11に形成することもでき、また、その上フランジ11のみに通気孔16を形成することもできる。
【0040】
粒状体15には、鋼球が費用などの点から好ましいが、図12〜図14から、他の素材においても、同様な効果を得ることができることが窺える。特に、図12においては、φ1mm程度の粒状体ではなく、φ10mmを越える塊15’、15’’ (特に、塊15’)をコイルばね13内面に接するように封入しても、サージング現象の抑制効果が認められることから、不織布15’’の塊と鋼球などの硬い塊15’との組み合わせにおいても、サージングの恐れもなく、その系での固有振動数での共振ピークを極力抑えたものとなし得ることが分る。このとき、塊15’、15’’の大きさ、数等はこの発明の作用効果を得ることができる限りにおいて任意であり、実験などにおいて適宜に設定する。
【0041】
この点に基づき、粒状体15に代えて、不織布、ゴム等からなるクッション材15’’をコイルばね13内全長に装填したり(図4(b))、その同(b)において、同(c)に示すようにコイルばね13の外側全周に装填したりしても同様な作用効果を得ることが窺える。同(a)においてもコイルばね13の外側全周にクッション材15’’を装填し得る。
【符号の説明】
【0042】
1、11 フランジ
2、12 ゴム製ばね
3、13 コイルばね
4、16 通気孔(オリフィス)
15 鋼球(粒状体)
15’ 鋼球(塊)
15’’クッション材
17 フィルター
A 振動絶縁装置
G 風力発電機(一方の構造体)
H 架台(他方の構造体)
S ゴム製ばね内の空間
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業機械、例えば、屋上の風力発電機、小型発電機、ガスヒートポンプ(エコ給湯機等)におけるその架台と機械本体等の一方の構造体と他方の構造体の間に介在されて、一方の構造体の振動がその一方の構造体から他方の構造体に伝播することを抑制する振動絶縁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の防止装置として、例えば、図16、図17に示すように、一方の構造体と他方の構造体にそれぞれ固定されて対向する対のフランジ1、1と、その両フランジ1、1の間に介在された筒状ゴム製ばね2と、そのゴム製ばね2内に設けられたコイルばね3とから成るものがある。このとき、コイルばね3をゴム製ばね2内の空間S内に設けた並列型(図3 特許文献1 図1参照)と、コイルばね3をゴム製ばね2内に埋設した一体型(図4 特許文献2 図7参照)がある。
【0003】
この筒状ゴム製ばね2とコイルばね3とからなる振動絶縁装置(ハイブリット型振動絶縁装置)は、ゴム製ばね2では適応が難しかった固有振動数:10Hz以下の振動域での防振に対応できる。筒状ゴム製ばね2によって、その軸心方向への撓み(伸縮)が担保され、コイルばね3によって、荷重は主に担われるからである。
また、このハイブリット型振動絶縁装置は、温度変化によるばね特性の変化が極めて小さく、幅広い温度領域で安定した性能を維持できる。
因みに、ゴム製ばね2のみからなる防振ばね(防振ゴム)であると、荷重によるクリープにより撓み量に限界があって、固有振動数を10Hz以下に設定できない。一方、コイルばね3のみからなる防振ばねであると、10Hz以下の固有振動数を確保できるが、共振点における減衰が非常に少なく、大きな揺れが発生し、十分な防振作用を得ることができない。
【0004】
さらに、振動絶縁装置としては、容器内に粒状体を充填し、その粒状体間の摩擦によって振動を吸収するものもある(特許文献3図4、特許文献4図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−302642号公報
【特許文献2】特開2002−115744号公報
【特許文献3】特開2000−213595号公報
【特許文献4】特開2001−355672号公報
【0006】
また、図16、図17に示すように、一方のフランジにオリフィス用通気孔4を設けたものもある。この振動絶縁装置は、通常、振動源の振動数と振動装置(防振材)の固有振動数が一致すると共振して、大きな振幅で振動する場合があるが、このとき、通気孔(オリフィス)4から空気を吸排し、その通過空気抵抗による減衰効果で、共振時の振幅を最小限に抑える作用がなされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図16に示す並列型の振動絶縁装置は、一体型に比べて大型にはなるが、初期設計が比較的に簡単であり、コイルばね3の仕様を適宜に選択することによって、幅広いばね定数の複合ばねとしてその特性を容易に得ることができる。
しかし、コイルばね3を採用しているため、中・高周波数帯域において、コイルばね3自体の弾性振動の固有振動数と加振振動数が一致すると、コイルばね3が共振するサージングが発生し、弾性支持系の振動絶縁(抑制)効果を大きく低下させるとともに、騒音発生の恐れもある(図5参照)。
【0008】
一方、図17に示す複合一体型の振動絶縁装置は、コンパクト化を図ることができるとともに(図16と図17の対比参照)、ゴム製ばね2中にコイルばね3が埋設されているため、上記サージングの発生はないが、ゴムの非線形性等を考慮したばね設計が必要である(複合ばねとしての初期設計が容易でない)上に、ゴム製ばね2中へのコイルばね3の埋設工程がある等から、製造し難く、高コストとなり、コイルばね3とゴム製ばね2との剥離(セパレーション)の恐れ、及び重量アップ等の問題がある。このため、実用面で必ずしも使い易いものではない。
【0009】
この発明は、上記の実情の下、初期設計が容易で、サージングの恐れも少ない振動絶縁装置とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、この発明は、第1の手段として、上記並列型の振動絶縁装置において、ゴム製ばね内の空間内に粒状体を充填したのである。
このようにすれば、ゴム製ばね及びコイルばねでもって振動を吸収する際、その伸縮に伴う振動によって、各粒状体は相互間での接触・微振動を繰り返すこととなる。この接触・振動による各粒状体の摩擦によって、振動エネルギーが熱エネルギーとして散逸されて、減衰効果が発揮される。このとき、粒状体は、コイルばね表面及びゴム製ばね内面にも触れ、その摩擦によっても減衰効果を発揮する。
【0011】
このように、ばね要素以外の要素でもって、系の固有振動数での損失係数を増大させることによって、系の固有振動数での共振ピークもできるだけ抑えることができる。
また、コイルばねは粒状体の充填層内にその多くが埋設された状態となるため、複合一体型に近似した構造となって、コイルばねのサージングの恐れも少なくなる。
【0012】
以上の作用により、ゴム製ばね内の空間内に粒状体を充填した並列型の振動絶縁装置は、その系での固有振動数での共振ピークを極力抑えたものとなる。
因みに、通常、ばね要素の損失係数を増大させると、共振ピークは抑えられるが、防振域は悪化する(防振域が狭くなる)傾向がある。これに対し、ばね要素でない粒状体によってばね要素の損失係数を増大させるため、その防振域は狭くならない。
【0013】
この発明の構成としては、一方の構造体と他方の構造体の間に介在されて、一方の構造体の振動がその一方の構造体から他方の構造体に伝播することを抑制する振動絶縁装置において、前記一方の構造体と他方の構造体にそれぞれ固定されて対向する対のフランジと、その両フランジの間に介在された筒状ゴム製ばねと、そのゴム製ばね内の空間に設けられたコイルばねと、同じく、そのゴム製ばね内の空間に充填された粒状体とからなり、前記ゴム製ばねとコイルばねは、その軸心が前記一方のフランジから他方のフランジに向かう方向の同一軸となっているとともに、前記粒状体は、前記ゴム製ばね内の空間に空隙ができてその空隙でもって前記ゴム製ばねとコイルばねがその軸心方向に撓み得る程度に充填されている構成を採用することができる。
【0014】
上記空隙を設けたのは、粒状体がゴム製ばね内に一杯に充填されると、ゴム製ばね及びコイルばねの円滑な縮小の妨げとなるからである。このため、粒状体の充填量は、ゴム製ばね内の空間に空隙ができてその空隙でもって前記ゴム製ばねとコイルばねがその軸心方向に撓み得る程度としたのである。その程度は、実験などによって、この発明の効果を得ることができるように適宜に設定する。例えば、ゴム製ばね内の空間の容積に対して30〜80%とする。好ましくは、50%程度とする(下記試験例参照)。
【0015】
その粒状体としては、上記の作用を発揮し得るものであれれば、何れでも良いが、その材質は、鉄、亜鉛、砂、ガラス等を採用でき、形状も、球状のものが好ましいが、それ以外の、例えば、三角錐、四角錐、不均一形状、角状、片状等と任意である。また、使用済ショットブラスト材を再使用することもできる。
さらに、その大きさ(粒径)は、コイルばねの線間に粒状体(粒子)が詰まってコイルばねの撓みを阻害しない範囲で適宜に設定すればよいが、粒状体がその線間に2つ並ぶと、その粒状体は固定されて容易に崩れず、3つ以上並ぶと容易に崩れるため、例えば、線(コイル)間の1/3以下の寸法のものとする。
【0016】
上記構成において、従来と同様に、上記フランジに上記ゴム製ばね内の空間に通じるオリフィス用通気孔を形成することができるが、その際、通気孔を上記粒状体が通り抜け得ない大きさの孔を有する多孔シートで覆って、その通気孔から粒状体が出るのを防止することが好ましい。
【0017】
また、上記課題を達成するために、この発明は、第2の手段として、上記並列型の振動絶縁装置において、ゴム製ばね内にクッション材又はそのクッション材に加えて硬い塊を装填したのである。
このようにすれば、ゴム製ばね及びコイルばねでもって振動を吸収する際、その伸縮に伴う振動によって、上記粒状体と同様に、クッション材はその組織要素が空気の吸排に伴う相互間の接触や微振動を繰り返し、塊はコイルばねとの接触や微振動を繰り返すこととなる。この接触・振動による組織要素等の摩擦によって、振動エネルギーが熱エネルギーとして散逸されて、減衰効果が発揮されて、ばね要素以外の要素でもって、系の固有振動数での損失係数を増大させることによって、系の固有振動数での共振ピークもできるだけ抑えることができ、また、コイルばねはクッション材又はそのクッション材と塊に擬似的に埋設された(一体となった)状態となるため(図4(a)〜(c)参照)、複合一体型に近似した構造となって、コイルばねのサージングの恐れも少なくなる。
【0018】
この発明の構成としては、同様に、一方の構造体と他方の構造体の間に介在されて、一方の構造体の振動がその一方の構造体から他方の構造体に伝播することを抑制する振動絶縁装置であって、前記一方の構造体と他方の構造体にそれぞれ固定されて対向する対のフランジと、その両フランジの間に介在された筒状ゴム製ばねと、前記両フランジの間の前記ゴム製ばね内の空間に設けられたコイルばねと、同じく、前記両フランジの間の前記ゴム製ばね内の空間に装填されたクッション材又はそのクッション材に加えて硬い塊とからなり、前記ゴム製ばねとコイルばねは、その軸心が前記一方のフランジから他方のフランジに向かう方向の同一軸となっているとともに、前記クッション材は、前記対のフランジの接離に伴って伸縮するように装填されている構成を採用することができる。
【0019】
この構成において、上記「クッション材は対のフランジの接離に伴って伸縮するように装填されている」とは、クッション材が一方のフランジから他方のフランジまで詰まっている状態(図4(b)参照)のみならず、クッション材がその途中まで装填され、そのクッション材とフランジの間にフランジの移動をクッション材に伝える上記塊等の伝達材が詰められている場合(図4(a)参照)等のように、対のフランジの接離に伴ってクッション材が伸縮するように装填されている態様を言う。
なお、従来と同様に、上記フランジに上記ゴム製ばね内の空間に通じるオリフィス用通気孔を形成することができる。上記硬い塊は、粒状ではない大きさの鉄球(鋼球)等(図4(a)参照)を言い、コイルばねに接するようにする。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、以上のように、ゴム製ばね内の空間内に粒状体を充填した、又はクッション材等を装填した並列型の振動絶縁装置としたので、初期設計が容易で、サージングの恐れもなく、その系での固有振動数での共振ピークを極力抑えたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は切断正面図
【図2】同実施形態の一取付態様図であって、(a)は概略斜視図、(b)は同要部拡大正面図
【図3】試験器の概略斜視図
【図4】他の各実施形態の切断正面図
【図5】この発明の一実施例の各態様における上記試験器による各測定図
【図6】同各測定図
【図7】同各測定図
【図8】同各測定図
【図9】同各測定図
【図10】同各測定図
【図11】同各測定図
【図12】同各測定図
【図13】同各測定図
【図14】同各測定図
【図15】クッション材の斜視図
【図16】従来例の切断正面図
【図17】従来例の切断正面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
一実施形態を図1に示し、この実施形態の振動絶縁装置は、従来と同様に、対向する対(上下)の金属製フランジ11、11と、その両フランジ11、11の間に介在された円筒状ゴム製ばね12と、そのゴム製ばね12内に設けられたコイルばね13とから成る並列型である。フランジ11の形状は、円形、四角形が一般的であるが、取付ける構造体に応じて適宜に決める。上フランジ11とゴム製ばね12との接合は、ゴム製ばね12を加硫接着して行う。下フランジ11は、補助フランジ11aをゴム製ばね12に加硫接着し、その補助フランジ11aをビス14によりねじ止めすることによってゴム製ばね12に固定する。
【0023】
ゴム製ばね12内の空間Sには、コイルばね13とともに、粒状体15が充填されている。
下フランジ11の中央にはオリフィスとなる通気孔16が形成されている。その通気孔16はポリエチレン繊維等からなるフィルター17によって覆われており、このフィルター17によって、空間S(ゴム製ばね12内)からの粒状体15の流逸を防止する。
図中、11’は取付け用ボルト孔である。
【0024】
この実施形態の振動絶縁装置Aは、種々の取付け態様が考えられるが、例えば、図2に示す風力発電機Gの架台Hに設けるものであって、下のフランジ11を架台Hにボルト止めし、上フランジ11を風力発電機(機械本体)Gにボルト止めして、風力発電機Gからの振動が架台H側に伝達されるのを、ゴム製ばね12及びコイルばね13の伸縮とそれに伴う粒状球15の移動によって抑制する。
【0025】
この振動絶縁装置Aにおいて、両フランジ11、11aに鉄板、ゴム製ばね12に、外径L1:45mm、厚さ:3.65mm、ばね定数:20N/mmのもの、コイルばね13に、コイル内径L2:19mm、コイル線径:3mm、コイル線間t(図1(b)参照):4mm、ばね定数:10N/mm,両フランジ間H:50mmのものを使用し、図3に示す試験機Dによる各種の条件下の試験結果を図5〜図14に示す。この試験機は、振動板18を振動機19によって、周波数範囲:5〜500Hz、加速度:4.9m/s2(0.5G)で振動させ、その振動をFFTアナライザー(図示せず)でもって測定した。図中、20は1.8kgの重りである。
【0026】
図5は、粒状体を充填しない場合(ハイブリットオリジナル)であって、(a)は通気孔16を設けた場合、(b)は通気孔16が無い場合である。
【0027】
図6は、φ0.3mmのショットブラスト用鋼球(以下、「鋼球」と称する。)15を充填し、通気孔16を設けて、その鋼球15の空間Sの容積に対しての充填量を変えたもの(ハイブリット)であり、(a)は「5%(12.6g)」、(b)は「10%(25.2g)」、(c)は「15%(37.8g)」、(d)は「20%(50.4g)」、(e)は「25%(63g)」、(f)は「30%(75.6g)」、(g)は「50%(126g)」、(h)は「80%(201.6g)」、(i)は「90%(226.8g)」である。
【0028】
図7は、φ0.8mmの鋼球15を充填し、通気孔16を設けて、その鋼球15の充填量を変えたものであり、(a)は「5%(13g)」、(b)は「10%(26g)」、(c)は「15%(39g)」、(d)は「20%(52g)」、(e)は「25%(65g)」、(f)は「30%(78g)」、(g)は「50%(130g)」、(h)は「80%(208g)」、(i)は「90%(234g)」である。
【0029】
図8は、φ0.3mmの鋼球15を充填し、通気孔16を設けず、その鋼球15の充填量を変えたものであり、(a)は「30%(75.6g)」、(b)は「50%(126g)」、(c)は「80%(201.6g)」である。
【0030】
図9は、φ0.8mmの鋼球15を充填し、通気孔16を設けず、その鋼球15の充填量を変えたものであり、(a)は「30%(78g)」、(b)は「50%(130g)」、(c)は「80%(208g)」である。
【0031】
図10は、φ16.7mmの鋼球15を2個封入し、通気孔16を設けた場合(a)と、設けない場合(b)である。
【0032】
図11は、φ16.7mmの鋼球15を1個封入し、通気孔16を設けた場合(a)と、設けない場合(b)である。
【0033】
図12は、φ16.7mmの鋼球15’を2個とPET(ポリエチレンテレフタレート)性不織布(図15参照)からなる高さ:15mmの直方体15’’をコイルばね13内に一個封入し(図4(a)参照)、通気孔16を設けた場合(a)と、設けない場合(b)である。
【0034】
図13は、φ0.6mmの亜鉛球15を充填し、通気孔16を設けて、その亜鉛球15の充填量を変えたものであり、(a)は「30%(70g)」、(b)は「50%(116.3g)」、(c)は「80%(186.2g)」である。
【0035】
図14は、φ0.6mmの亜鉛球15を充填し、通気孔16を設けず、その亜鉛球15の充填量を変えたものであり、(a)は「30%(70g)」、(b)は「50%(116.3g)」、(c)は「80%(186.2g)」である。
【0036】
これらの試験結果において、300〜400Hzで大きなサージング現象が生じているのは、図5の粒状体15を充填していない場合、同充填量が少ない場合(図6(a)、(b)、図7(a)、(b)、図10(a)、(b)、図11(a)、(b))であり、また、同充填量が多くなれば、そのサージング現象が生じ難くなっている(図6(a)〜(i)、図7(a)〜(i))。さらに、通気孔16の有無に関係なく、粒状体15の充填量が増せば、サージング現象が生じ難くなっている(図6(a)〜(i)、図7(a)〜(i)と図8(a)〜(c)、図9(a)〜(c)の対比))。
【0037】
このことから、粒状体15の充填によって、サージング現象が抑制され、充填量30%になれば、その現象はほぼ無くなっている(図6(f)、図7(f)、図8(a)、図9(a)参照)。しかし、充填量が30%以下でも、サージング現象の抑制が認められるため(図6(c)〜(e)、図7(c)〜(e)参照)、費用対効果でもってその充填量は適宜に決定すれば良い。
一方、粒状体15の充填量が50%を越えると、その充填量の増加に伴う、サージング現象の抑制効果も少なくなっている。このことから、充填量50%程度で十分であり、充填量80%以上は費用対効果から好ましくないことが窺える。
【0038】
さらに、この系の固有振動数は30Hzであり、その領域における共振ピークの損失係数は、図5、図10、図11に比べれば、図6〜図9、図12〜図14は小さくなっている(変位量が少なくなっている)。
【0039】
以上から、この発明は、固有振動数での共振ピークを極力抑えたものであり、かつ、サージング現象も少ない、安定した防振作用を行うものであることが分かる。
なお、各実施形態において、通気孔16は上フランジ11に形成することもでき、また、その上フランジ11のみに通気孔16を形成することもできる。
【0040】
粒状体15には、鋼球が費用などの点から好ましいが、図12〜図14から、他の素材においても、同様な効果を得ることができることが窺える。特に、図12においては、φ1mm程度の粒状体ではなく、φ10mmを越える塊15’、15’’ (特に、塊15’)をコイルばね13内面に接するように封入しても、サージング現象の抑制効果が認められることから、不織布15’’の塊と鋼球などの硬い塊15’との組み合わせにおいても、サージングの恐れもなく、その系での固有振動数での共振ピークを極力抑えたものとなし得ることが分る。このとき、塊15’、15’’の大きさ、数等はこの発明の作用効果を得ることができる限りにおいて任意であり、実験などにおいて適宜に設定する。
【0041】
この点に基づき、粒状体15に代えて、不織布、ゴム等からなるクッション材15’’をコイルばね13内全長に装填したり(図4(b))、その同(b)において、同(c)に示すようにコイルばね13の外側全周に装填したりしても同様な作用効果を得ることが窺える。同(a)においてもコイルばね13の外側全周にクッション材15’’を装填し得る。
【符号の説明】
【0042】
1、11 フランジ
2、12 ゴム製ばね
3、13 コイルばね
4、16 通気孔(オリフィス)
15 鋼球(粒状体)
15’ 鋼球(塊)
15’’クッション材
17 フィルター
A 振動絶縁装置
G 風力発電機(一方の構造体)
H 架台(他方の構造体)
S ゴム製ばね内の空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の構造体(G)と他方の構造体(H)の間に介在されて、一方の構造体(G)の振動がその一方の構造体(G)から他方の構造体(H)に伝播することを抑制する振動絶縁装置(A)であって、
上記一方の構造体(G)と他方の構造体(H)にそれぞれ固定されて対向する対のフランジ(11、11)と、その両フランジ(11、11)の間に介在された筒状ゴム製ばね(12)と、前記両フランジ(11、11)の間の前記ゴム製ばね(12)内の空間(S)に設けられたコイルばね(13)と、同じく、前記両フランジ(11、11)の間の前記ゴム製ばね(12)内の空間(S)に充填された粒状体(15)とからなり、前記ゴム製ばね(12)とコイルばね(13)は、その軸心が前記一方のフランジ(11)から他方のフランジ(11)に向かう方向の同一軸となっているとともに、前記粒状体(15)は、前記ゴム製ばね(12)内の空間(S)に空隙ができてその空隙でもって前記ゴム製ばね(12)とコイルばね(13)がその軸心方向に撓み得る程度に充填されていることを特徴とする振動絶縁装置。
【請求項2】
上記粒状体(15)の上記ゴム製ばね(12)内の空間(S)への充填量を、その空間(S)の容積に対して30〜80%としたことを特徴とする請求項1に記載の振動絶縁装置。
【請求項3】
上記粒状体(15)の粒径を、上記コイルばね(13)のコイル間隔(t)の1/3以下としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の振動絶縁装置。
【請求項4】
上記フランジ(11)に上記ゴム製ばね(12)内の空間(S)に通じるオリフィス用通気孔(16)を形成し、その通気孔(16)を上記粒状体(15)が通り抜け得ない大きさの孔を有する多孔シート(17)で覆ったことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の振動絶縁装置。
【請求項1】
一方の構造体(G)と他方の構造体(H)の間に介在されて、一方の構造体(G)の振動がその一方の構造体(G)から他方の構造体(H)に伝播することを抑制する振動絶縁装置(A)であって、
上記一方の構造体(G)と他方の構造体(H)にそれぞれ固定されて対向する対のフランジ(11、11)と、その両フランジ(11、11)の間に介在された筒状ゴム製ばね(12)と、前記両フランジ(11、11)の間の前記ゴム製ばね(12)内の空間(S)に設けられたコイルばね(13)と、同じく、前記両フランジ(11、11)の間の前記ゴム製ばね(12)内の空間(S)に充填された粒状体(15)とからなり、前記ゴム製ばね(12)とコイルばね(13)は、その軸心が前記一方のフランジ(11)から他方のフランジ(11)に向かう方向の同一軸となっているとともに、前記粒状体(15)は、前記ゴム製ばね(12)内の空間(S)に空隙ができてその空隙でもって前記ゴム製ばね(12)とコイルばね(13)がその軸心方向に撓み得る程度に充填されていることを特徴とする振動絶縁装置。
【請求項2】
上記粒状体(15)の上記ゴム製ばね(12)内の空間(S)への充填量を、その空間(S)の容積に対して30〜80%としたことを特徴とする請求項1に記載の振動絶縁装置。
【請求項3】
上記粒状体(15)の粒径を、上記コイルばね(13)のコイル間隔(t)の1/3以下としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の振動絶縁装置。
【請求項4】
上記フランジ(11)に上記ゴム製ばね(12)内の空間(S)に通じるオリフィス用通気孔(16)を形成し、その通気孔(16)を上記粒状体(15)が通り抜け得ない大きさの孔を有する多孔シート(17)で覆ったことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の振動絶縁装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図15】
【公開番号】特開2010−255717(P2010−255717A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105274(P2009−105274)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(595122187)ブリヂストンケービージー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(595122187)ブリヂストンケービージー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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