説明

排ガス浄化用繊維フィルタ、ディーゼルエンジン用排ガス浄化システム及びガソリンエンジン用排ガス浄化システム

【課題】ディーゼルパティキュレートフィルタの再生インターバルを長くし得る排ガス浄化用繊維フィルタ、これを用いたディーゼルエンジン用排ガス浄化システム、低温域におけるガソリン排ガス中のPMの浄化率を向上し得る排ガス浄化用繊維フィルタ、これを用いたガソリンエンジン用排ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】排ガス浄化用繊維フィルタ4は、空隙率が70〜90%であり、且つ厚みが0.5〜6mmであるものである。排ガス浄化用繊維フィルタ4は、繊維4aによって構成されている。
ディーゼルエンジン用排ガス浄化システム1は、ディーゼルエンジン8の排ガス流路8aに配設されるディーゼルパティキュレートフィルタ2と、ディーゼルパティキュレートフィルタ2より上流側の排ガス流路8aに配設される上記排ガス浄化用繊維フィルタ4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用繊維フィルタ、ディーゼルエンジン用排ガス浄化システム及びガソリンエンジン用排ガス浄化システムに関する。
更に詳細には、本発明は、所定の構造を有する排ガス浄化用繊維フィルタ、所定の構造を有する排ガス浄化用繊維フィルタを所定の位置に配設したディーゼルエンジン用排ガス浄化システム及びガソリンエンジン用排ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの排ガス浄化システムにおいては、排ガス流路にディーゼルパティキュレートフィルタを配設して、排ガス中のパティキュレートマター(PM)を捕集し、燃焼させ、ディーゼルパティキュレートフィルタを再生するとともに、パティキュレートマター(PM)を浄化していた(特許文献1参照。)。
【0003】
また、従来、ガソリンエンジンの排ガス浄化システムにおいては、排ガス流路に触媒を配設して、ガソリン排ガス中のパティキュレートマター(PM)である炭化水素(HC)を燃焼させて、浄化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−125206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のディーゼルエンジンの排ガス浄化システムにあっては、ディーゼルパティキュレートフィルタにおいてPMを捕集すると、排圧が上昇して圧力損失が高くなるため、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生を頻繁に行う必要があり、これが燃費の悪化につながるという問題点があった。
【0006】
また、従来のガソリンエンジンの排ガス浄化システムにあっては、高温域においてはガソリン排ガス中のPMの浄化は十分であったが、低温域におけるガソリン排ガス中のPMの浄化は十分なものではないという問題点があった。
【0007】
つまり、双方の排ガス浄化システムは、環境負荷を更に低減しなければならないという問題点があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。
そして、第1の目的とするところは、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生インターバルを長くし得る排ガス浄化用繊維フィルタ、これを用いたディーゼルエンジン用排ガス浄化システムを提供することにある。
また、第2の目的とするところは、低温域におけるガソリン排ガス中のPMの浄化率を向上し得る排ガス浄化用繊維フィルタ、これを用いたガソリンエンジン用排ガス浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた。そして、その結果、下記(1)〜(3)に記載の構成とすることなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1):排ガス浄化用繊維フィルタが所定の構造を有する。
(2):ディーゼルエンジンの排ガス流路に配設されるディーゼルパティキュレートフィルタと、その上流側の排ガス流路に配設される所定の構造を有する排ガス浄化用繊維フィルタとを有する。
(3):ガソリンエンジンの排ガス流路に配設される触媒と、その上流側の排ガス流路に配設される所定の構造を有する排ガス浄化用繊維フィルタとを有する。
【0010】
すなわち、本発明の排ガス浄化用繊維フィルタは、空隙率が70〜90%であり、且つ厚みが0.5〜6mmであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムは、ディーゼルエンジンの排ガス流路に配設されるディーゼルパティキュレートフィルタと、該ディーゼルパティキュレートフィルタより上流側の該排ガス流路に配設され、空隙率が70〜90%であり、且つ厚みが0.5〜6mmである排ガス浄化用繊維フィルタとを有することを特徴とする。
【0012】
更に、本発明のガソリンエンジン用排ガス浄化システムは、ガソリンエンジンの排ガス流路に配設される触媒と、該触媒より上流側の該排ガス流路に配設され、空隙率が70〜90%であり、且つ厚みが0.5〜6mmである排ガス浄化用繊維フィルタとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記(1)〜(3)に記載の構成としたため、ディーゼルパティキュレートフィルタの再生インターバルを長くし得る排ガス浄化用繊維フィルタ、これを用いたディーゼルエンジン用排ガス浄化システム、低温域におけるガソリン排ガス中のPMの浄化率を向上し得る排ガス浄化用繊維フィルタ、これを用いたガソリンエンジン用排ガス浄化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態の排ガス浄化用繊維フィルタの概略的な構成を示す斜視図(a)及び拡大図(b)である。
【図2】第2の実施形態の排ガス浄化用繊維フィルタの概略的な構成を示す斜視図(a)及び拡大図(b)である。
【図3】第1の実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムの構成を示す説明図である。
【図4】従来のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムの構成を示す説明図である。
【図5】従来の形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システム及び第1の実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムにおけるディーゼルパティキュレートフィルタ再生インターバルとパティキュレートマター堆積量との関係を示す説明図である。
【図6】第2の実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムの構成を示す説明図である。
【図7】第1の実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システムの構成を示す説明図である。
【図8】従来のガソリンエンジン用排ガス浄化システムにいわゆるディーゼルパティキュレートフィルタを適用した構成を示す説明図である。
【図9】第2の実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システムの構成を示す説明図である。
【図10】各例の繊維フィルタのPM酸化率を示すグラフである。
【図11】各例の繊維フィルタの圧力損失を示すグラフである。
【図12】各例の繊維フィルタのPM酸化率を示すグラフである。
【図13】各例の繊維フィルタのPM酸化率を示すグラフである。
【図14】各例の繊維フィルタの圧力損失を示すグラフである。
【図15】各例の繊維フィルタのPM酸化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る排ガス浄化用繊維フィルタ、ディーゼルエンジン用排ガス浄化システム及びガソリンエンジン用排ガス浄化システムについて詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係る排ガス浄化用繊維フィルタについて説明する。
本実施形態の排ガス浄化用繊維フィルタは、空隙率が70〜90%であり、且つ排ガス流れ方向の厚みが0.5〜6mmであるものである。
【0017】
排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率が70%未満であると、PM捕集効率は向上するが圧力損失が悪化する一方、排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率が90%を超えると、圧力損失は低下するがPM捕集効率が悪化する。
また、排ガス浄化用繊維フィルタの厚みが0.5mm未満であると、圧力損失は低下するがPM捕集効率が悪化する一方、排ガス浄化用繊維フィルタの厚みが6mmを超えると、PM捕集効率は向上するが圧力損失が悪化する。
【0018】
また、本実施形態の排ガス浄化用繊維フィルタは、少なくとも表面に触媒成分を含有する繊維からなる排ガス浄化用繊維フィルタであることが望ましい。
表面に触媒成分を含有する繊維からなる排ガス浄化用繊維フィルタとすることによって、PMを効率的に浄化することができ、排ガス浄化用繊維フィルタの上述したPM浄化性能をより向上させることができる。
【0019】
更に、本実施形態においては、繊維が、金属繊維及び無機繊維のいずれか一方又は双方であることが望ましい。
金属繊維や無機繊維としては、1000℃以下において安定である耐熱性を有しているものが望ましく、例えば金属繊維としてはフェライト系ステンレス鋼繊維を挙げることができ、無機繊維としてはアルミナ繊維やシリカ繊維を挙げることができる。
【0020】
また、本実施形態においては、触媒成分が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ガリウム(Ga)、マンガン(Mn)若しくはイットリウム(Y)又はこれらの任意の組み合わで含有する触媒成分であることが望ましい。その中でも、セリウムプラセオジム酸化物、セリウム酸化物、白金を好適例として挙げることができる。
このような触媒成分は、PMの浄化性能を有し、排ガス浄化用繊維フィルタの上述したPM浄化性能をより向上させることができる。
【0021】
更に、上記繊維は、表面に凹凸を有することが望ましく、繊維経が5〜50μmであることが望ましく、10〜35μmであることがより望ましい。表面に凹凸を有すると、例えば表面に触媒層を形成する場合に、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。更に、繊維径が5〜50μm、望ましくは10〜35μmであると、PMの捕集性を向上させることも可能である。
【0022】
以下、本実施形態の排ガス浄化用繊維フィルタについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、第1の実施形態の排ガス浄化用繊維フィルタの概略的な構成を示す斜視図(a)及び拡大図(b)である。
同図に示すように、円形の排ガス浄化用繊維フィルタ4は、繊維4aによって構成されている。
なお、この排ガス浄化用繊維フィルタは、空隙率が70〜90%であり、且つ厚みが0.5〜6mmであることは言うまでもない。
【0024】
図2は、第2の実施形態の排ガス浄化用繊維フィルタの概略的な構成を示す斜視図(a)及び拡大図(b)である。
同図に示すように、円形の排ガス浄化用繊維フィルタ4は、少なくとも表面に触媒成分4bを含有する繊維4aによって構成されている。
なお、この排ガス浄化用繊維フィルタも、空隙率が70〜90%であり、且つ厚みが0.5〜6mmであることは言うまでもない。
【0025】
上記排ガス浄化用繊維フィルタの製造方法について詳細に説明する。
排ガス浄化用繊維フィルタが金属繊維からなる場合の排ガス浄化用繊維フィルタの製造方法の一例について説明する。
少なくともアルミニウムを含有する金属繊維(処理前金属繊維)をアルコール系溶剤又は炭化水素系溶剤に浸漬しつつ、超音波処理又はマイクロ波処理を行うことにより、金属繊維の表面に凹凸を形成することができる。
ここで、処理前金属繊維としては、アルミニウムを含有することを要するが、他の成分については特に限定されるものではなく、例えばフェライト系ステンレス鋼を用いることができる。
【0026】
このように金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、例えば表面に触媒層を形成する場合に、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
なお、現時点においては、アルコール系溶剤などと金属繊維との間で酸化・還元反応が起こり、表面部にアルミニウムが析出する際に、金属繊維表面に存在する気泡を取り除くことができ、金属繊維表面全体にアルコール系溶剤等を行き渡らせることが可能となると共に、超音波処理等によるキャビテーションによって熱処理をしたときのような高温状態の場を作り出せるためと推測している。
【0027】
また、用いるアルコール系溶剤としては、親水性アルコールである又はこれを含有するものであることが望ましい。このような親水性アルコールは、処理前金属繊維に対して作用して、金属繊維の表面部の全体に亘ってアルミニウムを析出させ、金属繊維の表面全体に複数の凹部や凸部を均一に形成することができ、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、親水性アルコールを用いると還元効果によって、より均一に金属繊維の表面上に触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
ここで、「親水性アルコール」とは、水と混合した際に、全体が均一に混ざるものをいう。
【0028】
更に、アルコール系溶剤としては、親水性アルコールを70〜99質量%含有するものであることが好ましく、90〜99質量%含有するものであることが更に好ましい。
親水性アルコールの含有量が70〜99質量%の範囲であると、金属繊維の表面全体に複数の凹部や凸部を特に均一に形成することができ、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を均一に形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。なお、親水性アルコールの含有量が70質量%未満の場合には、均一に金属繊維の表面上に触媒層を形成することができなくなることがある。
なお、他の含有成分としては、典型的には水を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、例えばエチレンやヘキサン、イソプロピルアルコールなどが含まれていてもよい。
【0029】
このような親水性アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1‐プロパノール又は2‐プロパノール、及びこれらの任意の組合わせに係る混合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。即ち、エチレン、ヘキサン、エチレングリコール、グリセリンなどの炭化水素系溶剤も使用可能である。
【0030】
また、特に限定されるものではないが、超音波処理やマイクロ波処理を行うに当たり、アルミニウムの析出量より鉄やクロムの析出量が少ない時間を処理時間とすることが好ましい。
このような処理時間とすることにより、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
【0031】
更に、超音波処理又はマイクロ波処理を行った後に、更に焼成を行うことが望ましい。
このようにすると、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
焼成条件は適宜設定することができ、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気中であっても空気などの酸化雰囲気中であってもよく、焼成温度は例えば300〜500℃程度とすればよく、焼成時間は例えば0.5〜1.0時間程度とすればよい。
また、800℃以上且つ少なくともアルミニウムを含有する金属繊維(処理前遷移金属)の融点温度×0.9℃以下の温度を焼成温度とすることも好ましい。このようにしても、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
【0032】
次に、本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジン用排ガス浄化システムについて説明する。
本実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムは、ディーゼルエンジンの排ガス流路に配設されるディーゼルパティキュレートフィルタと、ディーゼルパティキュレートフィルタより上流側の排ガス流路に配設される排ガス浄化用繊維フィルタとを有するものである。
そして、この排ガス浄化用繊維フィルタは、空隙率が70〜90%であり、且つ排ガス流れ方向の厚みが0.5〜6mmであるものである。
ここで、ディーゼルパティキュレートフィルタは、一端が閉塞した複数個のセルを有し、これらセルの閉塞端と開放端とが交互に配置された端面を有するものであって、チェッカードハニカム、ウォールフローモノリスなどと呼ばれるものである。
【0033】
排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率が70%未満であると、PM捕集効率は向上するが圧力損失が悪化する一方、排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率が90%を超えると、圧力損失は低下するがPM捕集効率が悪化する。
また、排ガス浄化用繊維フィルタの厚みが0.5mm未満であると、圧力損失は低下するがPM捕集効率が悪化する一方、排ガス浄化用繊維フィルタの厚みが6mmを超えると、PM捕集効率は向上するが圧力損失が悪化する。
【0034】
また、本実施形態においては、排ガス浄化用繊維フィルタは、排ガス流路において最も高温となる位置に配設されることが望ましい。
排ガス浄化用繊維フィルタは、その下流側に配設されるディーゼルパティキュレートフィルタにおけるPMの浄化をアシストする機能を有するものであるため、排ガス浄化用繊維フィルタを最も高温となる位置に配設することによって、そのアシスト性能をより効果的に発揮することができる。
このような位置としては、ディーゼルエンジンから流出した排ガスが直接流入する位置を挙げることができ、具体例には、いわゆるエキゾーストマニホールド出口に配置される触媒の上流側を挙げることができる。ここでの排ガス温度は200〜500℃(但し、エンジンや排気量・走行時条件により異なる。)であり、通常は最も高温となる。また、ディーゼルパティキュレートフィルタより上流側に配設された触媒から流出した排ガスが直接流入する位置を挙げることもできる。かかる触媒において昇温された排ガスの温度がディーゼルエンジンから流出した排ガスの温度より高くなることもあるからである。ここでの排ガス温度は150〜400℃(但し、エンジンや排気量・走行時条件により異なる。)となることがある。
【0035】
更に、本実施形態においては、排ガス浄化用繊維フィルタは、少なくとも表面に触媒成分を含有する繊維からなる排ガス浄化用繊維フィルタであることが望ましい。
表面に触媒成分を含有する繊維からなる排ガス浄化用繊維フィルタとすることによって、PMを効率的に浄化することができ、排ガス浄化用繊維フィルタの上述したアシスト性能をより向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態においては、繊維が、金属繊維及び無機繊維のいずれか一方又は双方であることが望ましい。
金属繊維や無機繊維としては、1000℃以下において安定である耐熱性を有しているものが望ましく、例えば金属繊維としてはフェライト系ステンレス鋼繊維を挙げることができ、無機繊維としてはアルミナ繊維やシリカ繊維を挙げることができる。
【0037】
更に、本実施形態においては、触媒成分が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ガリウム(Ga)、マンガン(Mn)若しくはイットリウム(Y)又はこれらの任意の組み合わで含有する触媒成分であることが望ましい。
このような触媒成分は、PMの浄化性能を有し、排ガス浄化用繊維フィルタの上述したアシスト性能をより向上させることができる。
【0038】
更に、上記繊維は、表面に凹凸を有することが望ましく、繊維経が5〜50μmであることが望ましく、10〜35μmであることがより望ましい。表面に凹凸を有すると、例えば表面に触媒層を形成する場合に、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。更に、繊維径が5〜50μm、望ましくは10〜35μmであると、PMの捕集性を向上させることも可能である。
【0039】
上記実施形態に適用する排ガス浄化用繊維フィルタの製造方法について詳細に説明する。
排ガス浄化用繊維フィルタが金属繊維からなる場合の排ガス浄化用繊維フィルタの製造方法の一例について説明する。
少なくともアルミニウムを含有する金属繊維(処理前金属繊維)をアルコール系溶剤又は炭化水素系溶剤に浸漬しつつ、超音波処理又はマイクロ波処理を行うことにより、金属繊維の表面に凹凸を形成することができる。
ここで、処理前金属繊維としては、アルミニウムを含有することを要するが、他の成分については特に限定されるものではなく、例えばフェライト系ステンレス鋼を用いることができる。
【0040】
このように金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、例えば表面に触媒層を形成する場合に、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
なお、現時点においては、アルコール系溶剤などと金属繊維との間で酸化・還元反応が起こり、表面部にアルミニウムが析出する際に、金属繊維表面に存在する気泡を取り除くことができ、金属繊維表面全体にアルコール系溶剤等を行き渡らせることが可能となると共に、超音波処理等によるキャビテーションによって熱処理をしたときのような高温状態の場を作り出せるためと推測している。
【0041】
また、用いるアルコール系溶剤としては、親水性アルコールである又はこれを含有するものであることが望ましい。このような親水性アルコールは、処理前金属繊維に対して作用して、金属繊維の表面部の全体に亘ってアルミニウムを析出させ、金属繊維の表面全体に複数の凹部や凸部を均一に形成することができ、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、親水性アルコールを用いると還元効果によって、より均一に金属繊維の表面上に触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
ここで、「親水性アルコール」とは、水と混合した際に、全体が均一に混ざるものをいう。
【0042】
更に、アルコール系溶剤としては、親水性アルコールを70〜99質量%含有するものであることが好ましく、90〜99質量%含有するものであることが更に好ましい。
親水性アルコールの含有量が70〜99質量%の範囲であると、金属繊維の表面全体に複数の凹部や凸部を特に均一に形成することができ、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を均一に形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。なお、親水性アルコールの含有量が70質量%未満の場合には、均一に金属繊維の表面上に触媒層を形成することができなくなることがある。
なお、他の含有成分としては、典型的には水を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、例えばエチレンやヘキサン、イソプロピルアルコールなどが含まれていてもよい。
【0043】
このような親水性アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1‐プロパノール又は2‐プロパノール、及びこれらの任意の組合わせに係る混合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。即ち、エチレン、ヘキサン、エチレングリコール、グリセリンなどの炭化水素系溶剤も使用可能である。
【0044】
また、特に限定されるものではないが、超音波処理やマイクロ波処理を行うに当たり、アルミニウムの析出量より鉄やクロムの析出量が少ない時間を処理時間とすることが好ましい。
このような処理時間とすることにより、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
【0045】
更に、超音波処理又はマイクロ波処理を行った後に、更に焼成を行うことが望ましい。
このようにすると、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
焼成条件は適宜設定することができ、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気中であっても空気などの酸化雰囲気中であってもよく、焼成温度は例えば300〜500℃程度とすればよく、焼成時間は例えば0.5〜1.0時間程度とすればよい。
また、800℃以上且つ少なくともアルミニウムを含有する金属繊維(処理前遷移金属)の融点温度×0.9℃以下の温度を焼成温度とすることも好ましい。このようにしても、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
【0046】
更にまた、本実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムは、排ガス浄化用繊維フィルタより上流側の排ガス流路、及び排ガス浄化用繊維フィルタより下流側であってディーゼルパティキュレートフィルタより上流側の排ガス流路の一方又は双方に配設される触媒を有するものとすることができる。
このような触媒としては、例えば一体構造型担体のセル内壁に酸化触媒や三元触媒を含む触媒層形成したものを用いることができる。
ここで、一体構造型担体としては、例えばコーディエライトなどのセラミックスやフェライト系ステンレスなどの金属等の耐熱性材料から成るモノリス担体やハニカム担体が用いられる。
【0047】
以下、本実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0048】
図3は、第1の実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムの構成を示す説明図である。
同図に示すように、本実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システム1は、ディーゼルエンジン8の排ガス流路8aに配設されるディーゼルパティキュレートフィルタ2と、ディーゼルパティキュレートフィルタ2より上流側の排ガス流路8aに配設される排ガス浄化用繊維フィルタ4と、排ガス浄化用繊維フィルタ4より下流側であってディーゼルパティキュレートフィルタ2より上流側の排ガス流路8aに配設される一体構造型三元触媒6とを有する。
そして、この排ガス浄化用繊維フィルタ4は、空隙率が70〜90%であり、且つ排ガス流れ方向の厚みが0.5〜6mmである。また、この排ガス浄化用繊維フィルタのPMの捕集率は40%である。
ここで、排ガス浄化用繊維フィルタの捕集率は、例えば排ガス浄化用繊維フィルタの出入口におけるPMの分布を例えば粒子カウンター装置(東京ダイレック株式会社製 SMPSモデル3936)などにより測定し、算出することができる。
なお、排ガス浄化用繊維フィルタ4及び一体構造型三元触媒6はケース8bに配設されており、ディーゼルパティキュレートフィルタ2もケース8bに配設されている。
【0049】
図4は、従来の形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムの構成を示す説明図である。
同図に示すように、従来の形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システム10は、ディーゼルエンジン8の排ガス流路8aに配設されるディーゼルパティキュレートフィルタ2と、ディーゼルパティキュレートフィルタ2より上流側の排ガス流路8aに配設される一体構造型三元触媒6とを有する。
なお、一体構造型三元触媒6及びディーゼルパティキュレートフィルタ2はケース8bに配設されている。
【0050】
図5は、従来の形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システム及び第1の実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムにおけるディーゼルパティキュレートフィルタ再生インターバルとパティキュレートマター堆積量との関係を示す説明図である。
同図に示すように、排ガス浄化用繊維フィルタにおけるPMの捕集率が40%であると、従来のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムにおけるパティキュレートフィルタ再生インターバルに対して、第1の実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムにおけるデーゼルパティキュレートフィルタ再生インターバルを40%増加させることができる。
このように本実施形態の一例であるディーゼルエンジン用排ガス浄化システムは、燃費を向上させることができる。また、換言すれば、ディーゼルパティキュレートフィルタを小型化することができ、コストを低減することができる。これにより、排気系のレイアウトの自由度が向上する。更に、PMを低減することができるため、よりNOxを低減させる運転をすることができ、排ガス浄化率を向上させることができる。
【0051】
図6は、第2の実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムの構成を示す説明図である。
同図に示すように、本実施形態のディーゼルエンジン用排ガス浄化システム1’は、ディーゼルエンジン8の排ガス流路8aに配設されるディーゼルパティキュレートフィルタ2と、ディーゼルパティキュレートフィルタ2より上流側の排ガス流路8aに配設される排ガス浄化用繊維フィルタ4と、排ガス浄化用繊維フィルタ4より上流側の排ガス流路8aに配設される一体構造型三元触媒6とを有する。
そして、この排ガス浄化用繊維フィルタ4は、空隙率が70〜90%であり、且つ排ガス流れ方向の厚みが0.5〜6mmである。
【0052】
このようなディーゼルエンジン用排ガス浄化システムであっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、このような構成は、特に一体構造型三元触媒から流出する排ガスの温度がディーゼルエンジンから流出する排ガスの温度より高い場合に有効である。
【0053】
次に、本発明の一実施形態に係るガソリンエンジン用排ガス浄化システムについて説明する。
本実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システムは、ガソリンエンジンの排ガス流路に配設される触媒と、触媒より上流側の排ガス流路に配設される排ガス浄化用繊維フィルタとを有するものである。
そして、この排ガス浄化用繊維フィルタは、空隙率が70〜90%であり、且つ排ガス流れ方向の厚みが0.5〜6mmであるものである。
ここで、触媒としては、例えば一体構造型担体のセル内壁に酸化触媒や三元触媒を含む触媒層形成したものを挙げることができる。
また、一体構造型担体としては、例えばコーディエライトなどのセラミックスやフェライト系ステンレスなどの金属等の耐熱性材料から成るモノリス担体やハニカム担体が用いられる。
【0054】
排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率が70%未満であると、PM捕集効率は向上するが圧力損失が悪化する一方、排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率が90%を超えると、圧力損失は低下するがPM捕集効率が悪化する。
また、排ガス浄化用繊維フィルタの厚みが0.5mm未満であると、圧力損失は低下するがPM捕集効率が悪化する一方、排ガス浄化用繊維フィルタの厚みが6mmを超えると、PM捕集効率は向上するが圧力損失が悪化する。
なお、ガソリン排ガス中のPMはパラフィンやオレフィン、ナフテンなどの酸化しやすいものであるが、このような所定の排ガス浄化用繊維フィルタを配設することによる、低温域におけるガソリン排ガス中のPMの浄化向上効果は著しいものである。
また、このようなガソリンエンジン用排ガス浄化システムは、コストやレイアウトの観点において著しく優れている。つまり、チェッカードハニカムやウォールフローモノリスなどと呼ばれるいわゆるディーゼルパティキュレートフィルタをガソリンエンジンの排ガス流路に配設する場合には、圧力損失が著しく高くなる虞があり、更に捕集したPMを燃焼させる必要があり、それらを制御するためにコストが増加してしまう。また、耐熱性を考慮する必要があり、レイアウトの自由度が低下してしまう。
【0055】
また、本実施形態においては、排ガス浄化用繊維フィルタは、排ガス流路において最も高温となる位置に配設されることが望ましい。
排ガス浄化用繊維フィルタは、低温域におけるガソリン排ガス中のPMの浄化率を向上させるものであるが、排ガス浄化用繊維フィルタを最も高温となる位置に配設することによって、そのPM浄化性能をより効果的に発揮することができ、いわゆる連続再生とすることも可能である。
このような位置としては、ガソリンエンジンから流出した排ガスが直接流入する位置(排気最上流)を挙げることができ、具体例には、いわゆるエキゾーストマニホールド出口に配置される触媒の上流側を挙げることができる。ここでの排ガス温度は200〜500℃(但し、エンジンや排気量・走行時条件により異なる。)であり、通常は最も高温となる。
【0056】
更に、本実施形態においては、排ガス浄化用繊維フィルタは、少なくとも表面に触媒成分を含有する繊維からなる排ガス浄化用繊維フィルタであることが望ましい。
表面に触媒成分を含有する繊維からなる排ガス浄化用繊維フィルタとすることによって、PMを効率的に浄化することができ、排ガス浄化用繊維フィルタの上述したPM浄化性能をより向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態においては、繊維が、金属繊維及び無機繊維のいずれか一方又は双方であることが望ましい。
金属繊維や無機繊維としては、1000℃以下において安定である耐熱性を有しているものが望ましく、例えば金属繊維としてはフェライト系ステンレス鋼繊維を挙げることができ、無機繊維としてはアルミナ繊維やシリカ繊維を挙げることができる。
【0058】
更に、本実施形態においては、触媒成分が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ガリウム(Ga)、マンガン(Mn)若しくはイットリウム(Y)又はこれらの任意の組み合わで含有する触媒成分であることが望ましい。その中でも、セリウムプラセオジム酸化物、セリウム酸化物、白金を好適例として挙げることができる。
このような触媒成分は、PMの浄化性能を有し、排ガス浄化用繊維フィルタの上述したPM浄化性能をより向上させることができる。
【0059】
更に、上記繊維は、表面に凹凸を有することが望ましく、繊維経が5〜50μmであることが望ましく、10〜35μmであることがより望ましい。表面に凹凸を有すると、例えば表面に触媒層を形成する場合に、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。更に、繊維径が5〜50μm、望ましくは10〜35μmであると、PMの捕集性を向上させることも可能である。
【0060】
上記実施形態に適用する排ガス浄化用繊維フィルタの製造方法について詳細に説明する。
排ガス浄化用繊維フィルタが金属繊維からなる場合の排ガス浄化用繊維フィルタの製造方法の一例について説明する。
少なくともアルミニウムを含有する金属繊維(処理前金属繊維)をアルコール系溶剤又は炭化水素系溶剤に浸漬しつつ、超音波処理又はマイクロ波処理を行うことにより、金属繊維の表面に凹凸を形成することができる。
ここで、処理前金属繊維としては、アルミニウムを含有することを要するが、他の成分については特に限定されるものではなく、例えばフェライト系ステンレス鋼を用いることができる。
【0061】
このように金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、例えば表面に触媒層を形成する場合に、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
なお、現時点においては、アルコール系溶剤などと金属繊維との間で酸化・還元反応が起こり、表面部にアルミニウムが析出する際に、金属繊維表面に存在する気泡を取り除くことができ、金属繊維表面全体にアルコール系溶剤等を行き渡らせることが可能となると共に、超音波処理等によるキャビテーションによって熱処理をしたときのような高温状態の場を作り出せるためと推測している。
【0062】
また、用いるアルコール系溶剤としては、親水性アルコールである又はこれを含有するものであることが望ましい。このような親水性アルコールは、処理前金属繊維に対して作用して、金属繊維の表面部の全体に亘ってアルミニウムを析出させ、金属繊維の表面全体に複数の凹部や凸部を均一に形成することができ、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、親水性アルコールを用いると還元効果によって、より均一に金属繊維の表面上に触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
ここで、「親水性アルコール」とは、水と混合した際に、全体が均一に混ざるものをいう。
【0063】
更に、アルコール系溶剤としては、親水性アルコールを70〜99質量%含有するものであることが好ましく、90〜99質量%含有するものであることが更に好ましい。
親水性アルコールの含有量が70〜99質量%の範囲であると、金属繊維の表面全体に複数の凹部や凸部を特に均一に形成することができ、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を均一に形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。なお、親水性アルコールの含有量が70質量%未満の場合には、均一に金属繊維の表面上に触媒層を形成することができなくなることがある。
なお、他の含有成分としては、典型的には水を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、例えばエチレンやヘキサン、イソプロピルアルコールなどが含まれていてもよい。
【0064】
このような親水性アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1‐プロパノール又は2‐プロパノール、及びこれらの任意の組合わせに係る混合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。即ち、エチレン、ヘキサン、エチレングリコール、グリセリンなどの炭化水素系溶剤も使用可能である。
【0065】
また、特に限定されるものではないが、超音波処理やマイクロ波処理を行うに当たり、アルミニウムの析出量より鉄やクロムの析出量が少ない時間を処理時間とすることが好ましい。
このような処理時間とすることにより、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
【0066】
更に、超音波処理又はマイクロ波処理を行った後に、更に焼成を行うことが望ましい。
このようにすると、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
焼成条件は適宜設定することができ、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気中であっても空気などの酸化雰囲気中であってもよく、焼成温度は例えば300〜500℃程度とすればよく、焼成時間は例えば0.5〜1.0時間程度とすればよい。
また、800℃以上且つ少なくともアルミニウムを含有する金属繊維(処理前遷移金属)の融点温度×0.9℃以下の温度を焼成温度とすることも好ましい。このようにしても、触媒層形成用スラリーとの密着性が向上し、所望の触媒層を形成することができる。また、金属繊維の表面に凹凸を形成することにより、PMの捕集性を向上させることも可能である。
【0067】
以下、本実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0068】
図7は、第1の実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システムの構成を示す説明図である。
同図に示すように、本実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム1’’は、ガソリンエンジン8’の排ガス流路8aのエキゾーストマニホール出口に配設される一体構造型三元触媒6と、一体構造型三元触媒6より上流側の排ガス流路8aに配設される排ガス浄化用繊維フィルタ4とを有する。
そして、この排ガス浄化用繊維フィルタ4は、空隙率が70〜90%であり、且つ排ガス流れ方向の厚みが0.5〜6mmである。また、この排ガス浄化用繊維フィルタのPMの捕集率は40%である。
ここで、排ガス浄化用繊維フィルタの捕集率は、例えば排ガス浄化用繊維フィルタの出入口におけるPMの分布を例えば粒子カウンター装置(東京ダイレック株式会社製 SMPSモデル3936)などにより測定し、算出することができる。
なお、一体構造型三元触媒6及び排ガス浄化用繊維フィルタ4はケース8bに配設されている。
【0069】
図8は、従来のガソリンエンジン用排ガス浄化システムにいわゆるディーゼルパティキュレートフィルタを適用した構成を示す説明図である。
同図に示すように、ガソリンエンジン用排ガス浄化システム10’は、ガソリンエンジン8’の排ガス流路8aに配設されるいわゆるディーゼルパティキュレートフィルタ2と、ディーゼルパティキュレートフィルタ2より上流側の排ガス流路8aのエキゾーストマニホール出口に配設される一体構造型三元触媒6とを有する。
なお、ディーゼルパティキュレートフィルタ2及び一体構造型三元触媒6はそれぞれケース8bに配設されている。
また、このディーゼルパティキュレートフィルタのPMの捕集率はほぼ100%である。
【0070】
図9は、第2の実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システムの構成を示す説明図である。
同図に示すように、本実施形態のガソリンエンジン用排ガス浄化システム1’’’は、ガソリンエンジン8’の排ガス流路8aに配設される2つの一体構造型三元触媒6、6’と、一体構造型三元触媒6より上流側の排ガス流路8aに配設される排ガス浄化用繊維フィルタ4とを有する。排ガス浄化用繊維フィルタ4と共に配設される一体構造型三元触媒6は、排ガス流路8aのエキゾーストマニホール出口に位置している。
そして、この排ガス浄化用繊維フィルタ4は、空隙率が70〜90%であり、且つ排ガス流れ方向の厚みが0.5〜6mmである。また、この排ガス浄化用繊維フィルタのPMの捕集率は40%である。
なお、一体構造型三元触媒6及び排ガス浄化用繊維フィルタ4と一体構造型三元触媒6’とはそれぞれケース8bに配設されている。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
(実施例1−1−1)
<排ガス浄化用繊維フィルタの作製>
金属繊維(材質:フェライト系ステンレス鋼)を用い、抄造よって、不織布を作製した。
得られた不織布を、アルコール系溶剤の一例であるエタノール(濃度:99質量%)に浸漬させながら、超音波処理を15分間行い、一昼夜自然乾燥し、更に130℃で1時間乾燥し、しかる後、大気中、400℃で30分間焼成して、排ガス浄化用繊維フィルタを作製した。
得られた排ガス浄化用繊維フィルタにセリウム(Ce)を含む触媒層形成スラリーを塗布し、余分なスラリーを除去し、乾燥・焼成して、本例の排ガス浄化用繊維フィルタを得た。
得られた排ガス浄化用繊維フィルタは、空隙率が70%、厚みが3mmであった。また、排ガス浄化用繊維フィルタを構成する繊維は、繊維径が35μmであった。
【0073】
(実施例1−1−2〜1−1−16)
表1に示すように触媒成分を代えたこと以外は、実施例1−1−1と同様の操作を繰り返して、各例の排ガス浄化用繊維フィルタを得た。
【0074】
【表1】

【0075】
[PM酸化性能]
各例の排ガス浄化用繊維フィルタのPM酸化率を下記の要領で算出した。得られた結果を表1に併記する。
まず、実施例1−1−1で得られた排ガス浄化用繊維フィルタをディーゼルエンジン(排気量:2500cc、日産自動車株式会社製)の排ガス流路において繊維フィルタ入口温度が350℃となるように配設し、パティキュレートマターを堆積させた。堆積前後の質量差からパティキュレートマター堆積量(BPM)を測定した。
次いで、パティキュレートマターを堆積させた排ガス浄化用繊維フィルタより上流側の排ガス流路にパティキュレートマター回収用のディーゼルパティキュレートフィルタを配設し、排ガス浄化用繊維フィルタ入口温度が480℃となるようにし、堆積させたパティキュレートマターを酸化処理し、残りのパティキュレートマター堆積量(APM)を測定した。
PM酸化率は下記の式(1)より算出した。
【0076】
PM酸化率(%)=(BPM−APM)/BPM…(1)
【0077】
実施例1−1−2〜1−1−16についても同様の操作によりPM酸化率を算出した。
【0078】
(実施例1−2−1〜1−2−8、比較例1−2−1〜1−2−3)
排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率及び排ガス浄化用繊維フィルタの厚みをそれぞれ(実施例1−2−1:70%、1.5mm、実施例1−2−2:70%、0.5mm、実施例1−2−3:85%、3mm、実施例1−2−4:85%、1.5mm、実施例1−2−5:85%、0.5mm、実施例1−2−6:90%、6mm、実施例1−2−7:90%、3mm、実施例1−2−8:90%、1.5mm、比較例1−2−1:50%、3mm、比較例1−2−2:50%、1.5mm、比較例1−2−3:50%、0.5mm)に変えたこと以外は、実施例1−1−3と同様の操作を繰り返して、各例の排ガス浄化用繊維フィルタを得た。
各例の排ガス浄化用繊維フィルタのPM酸化率を実施例1−1−1と同様の要領で算出した。得られた結果(実施例1−1−3を含む。)を図10に示す。
【0079】
[圧力損失]
各例の排ガス浄化用繊維フィルタの圧力損失を下記の要領で算出した。得られた結果(実施例1−1−3を含む。)を図11に示す。
まず、実施例1−2−1で得られた排ガス浄化用繊維フィルタをディーゼルエンジン(排気量:2500cc、日産自動車株式会社製)の排ガス流路に配設し、排ガス浄化用繊維フィルタの出入口の圧力を測定して、圧力損失の値を求めた。なお、圧力損失の値は、120分経過時におけるものとした。
実施例1−2−2〜1−2−8、比較例1−2−1〜1−2−3及び実施例1−1−3についても同様の操作により圧力損失を算出した。
【0080】
(実施例1−3−1〜1−3−6、比較例1−3−1〜1−3−3)
排ガス浄化用繊維フィルタを構成する繊維の繊維径、排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率及び排ガス浄化用繊維フィルタの厚みをそれぞれ(実施例1−3−1:50μm、70%、3mm、実施例1−3−2:50μm、70%、1.5mm、実施例1−3−3:50μm、70%、0.5mm、実施例1−3−4:50μm、90%、6mm、実施例1−3−5:50μm、90%、3mm、実施例1−3−6:50μm、90%、1.5mm、比較例1−3−1:50μm、50%、3mm、比較例1−3−2:50μm、50%、1.5mm、比較例1−3−3:50μm、50%、0.5mm)に変えたこと以外は、実施例1−1−3と同様の操作を繰り返して、各例の排ガス浄化用繊維フィルタを得た。
各例の排ガス浄化用繊維フィルタのPM酸化率を実施例1−1−1と同様の要領で算出した。得られた結果を図12に示す。
【0081】
図10及び図11から、本発明の範囲に属する排ガス浄化用繊維フィルタは、本発明外の排ガス浄化用繊維フィルタに比べて再生インターバルを長くし得ることが分かる。
【0082】
(実施例2−1−1)
<排ガス浄化用繊維フィルタの作製>
金属繊維(材質:フェライト系ステンレス鋼)を用い、抄造よって、不織布を作製した。
得られた不織布を、アルコール系溶剤の一例であるエタノール(濃度:99質量%)に浸漬させながら、超音波処理を15分間行い、一昼夜自然乾燥し、更に130℃で1時間乾燥し、しかる後、大気中、400℃で30分間焼成して、排ガス浄化用繊維フィルタを作製した。
得られた排ガス浄化用繊維フィルタにセリウム(Ce)を含む触媒層形成スラリーを塗布し、余分なスラリーを除去し、乾燥・焼成して、本例に用いた排ガス浄化用繊維フィルタを得た。
得られた排ガス浄化用繊維フィルタは、空隙率が70%、厚みが3mmであった。また、排ガス浄化用繊維フィルタを構成する繊維は、繊維径が35μmであった。
【0083】
<三元触媒の作製>
本例に用いた三元触媒は、Pd及びRh担持触媒であり、触媒ハニカム容量は、0.94L、Pt及びRhの担持量は3.5g、PtとRhの担持重量比率はPt:Rh=11:1であった。
【0084】
<ディーゼルパティキュレートフィルタの作製>
本例に用いたパティキュレートフィルターは、Ptを担持したものであり、触媒ハニカム容量は、2.5L、Ptの担持量は2.5gであった。
【0085】
<排気ガス浄化システムの構築>
上記作製した排ガス浄化用繊維フィルタ、三元触媒及びディーゼルパティキュレートフィルタを図3に示すように、ディーゼルエンジンの排ガス流路に配設して、本例のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムを構築した。
【0086】
(実施例2−1−2〜2−1−16)
排ガス浄化用繊維フィルタの作製において、表1に示すように触媒成分を代えたこと以外は、実施例2−1−1と同様の操作を繰り返して、各例のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムを構築した。
【0087】
(実施例2−2−1〜2−2−8、比較例2−2−1〜2−2−3)
排ガス浄化用繊維フィルタの作製において、排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率及び排ガス浄化用繊維フィルタの厚みをそれぞれ(実施例2−2−1:70%、1.5mm、実施例2−2−2:70%、0.5mm、実施例2−2−3:85%、3mm、実施例2−2−4:85%、1.5mm、実施例2−2−5:85%、0.5mm、実施例2−2−6:90%、6mm、実施例2−2−7:90%、3mm、実施例2−2−8:90%、1.5mm、比較例2−2−1:50%、3mm、比較例2−2−2:50%、1.5mm、比較例2−2−3:50%、0.5mm)に変えたこと以外は、実施例2−1−3と同様の操作を繰り返して、各例のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムを構築した。
【0088】
(実施例2−3−1〜2−3−6、比較例2−3−1〜2−3−3)
排ガス浄化用繊維フィルタの作製において、排ガス浄化用繊維フィルタを構成する繊維の繊維径、排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率及び排ガス浄化用繊維フィルタの厚みをそれぞれ(実施例2−3−1:50μm、70%、3mm、実施例2−3−2:50μm、70%、1.5mm、実施例2−3−3:50μm、70%、0.5mm、実施例2−3−4:50μm、90%、6mm、実施例2−3−5:50μm、90%、3mm、実施例2−3−6:50μm、90%、1.5mm、比較例2−3−1:50μm、50%、3mm、比較例2−3−2:50μm、50%、1.5mm、比較例2−3−3:50μm、50%、0.5mm)に変えたこと以外は、実施例2−1−3と同様の操作を繰り返して、各例のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムを構築した。
【0089】
図10及び図11から、本発明の範囲に属するディーゼルエンジン用排ガス浄化システムは、本発明外のディーゼルエンジン用排ガス浄化システムに比べて再生インターバルを長くし得ることが分かる。
また、図3に示すように、ディーゼルエンジンから流出した排ガスが直接流入する位置に排ガス浄化用繊維フィルタを配設することによって、より優れたPMの浄化性能を発揮することができることが分かる。
更に、少なくとも表面に所定の触媒成分を含有する繊維からなる排ガス浄化用繊維フィルタを適用することによって、より優れたPMの浄化性能を発揮することができることが分かる。
更にまた、排ガス浄化用繊維フィルタを構成する繊維としては、優れた耐熱性を金属繊維や無機繊維を好適に適用できることが分かる。
【0090】
(実施例3−1−1)
<排ガス浄化用繊維フィルタの作製>
金属繊維(材質:フェライト系ステンレス鋼)を用い、抄造よって、不織布を作製した。
得られた不織布を、アルコール系溶剤の一例であるエタノール(濃度:99質量%)に浸漬させながら、超音波処理を15分間行い、一昼夜自然乾燥し、更に130℃で1時間乾燥し、しかる後、大気中、400℃で30分間焼成して、排ガス浄化用繊維フィルタを作製した。
得られた排ガス浄化用繊維フィルタにセリウム(Ce)を含む触媒層形成スラリーを塗布し、余分なスラリーを除去し、乾燥・焼成して、本例の排ガス浄化用繊維フィルタを得た。
得られた排ガス浄化用繊維フィルタは、空隙率が70%、厚みが3mmであった。また、排ガス浄化用繊維フィルタを構成する繊維は、繊維径が35μmであった。
【0091】
(実施例3−1−2〜3−1−16)
表2に示すように触媒成分を代えたこと以外は、実施例3−1−1と同様の操作を繰り返して、各例の排ガス浄化用繊維フィルタを得た。
【0092】
【表2】

【0093】
[PM酸化性能]
各例の排ガス浄化用繊維フィルタのPM酸化率を下記の要領で算出した。得られた結果を表2に併記する。
まず、実施例3−1−1で得られた排ガス浄化用繊維フィルタをガソリンエンジン(排気量:2500cc、日産自動車株式会社製)の排ガス流路において排ガス浄化用繊維フィルタ入口温度が350℃となるように配設し、パティキュレートマターを堆積させた。堆積前後の質量差からパティキュレートマター堆積量(BPM)を測定した。
次いで、パティキュレートマターを堆積させた排ガス浄化用繊維フィルタより上流側の排ガス流路にパティキュレートマター回収用のディーゼルパティキュレートフィルタを配設し、繊維フィルタ入口温度が480℃となるようにし、堆積させたパティキュレートマターを酸化処理し、残りのパティキュレートマター堆積量(APM)を測定した。
PM酸化率は下記の式(2)より算出した。
【0094】
PM酸化率(%)=(BPM−APM)/BPM…(2)
【0095】
実施例3−1−2〜3−1−16についても同様の操作によりPM酸化率を算出した。
【0096】
(実施例3−2−1〜3−2−8、比較例3−2−1〜3−2−3)
排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率及び排ガス浄化用繊維フィルタの厚みをそれぞれ(実施例3−2−1:70%、1.5mm、実施例3−2−2:70%、0.5mm、実施例3−2−3:85%、3mm、実施例3−2−4:85%、1.5mm、実施例3−2−5:85%、0.5mm、実施例3−2−6:90%、6mm、実施例3−2−7:90%、3mm、実施例3−2−8:90%、1.5mm、比較例3−2−1:50%、3mm、比較例3−2−2:50%、1.5mm、比較例3−2−3:50%、0.5mm)に変えたこと以外は、実施例3−1−3と同様の操作を繰り返して、各例の排ガス浄化用繊維フィルタを得た。
各例の排ガス浄化用繊維フィルタのPM酸化率を実施例3−1−1と同様の要領で算出した。得られた結果(実施例3−1−3を含む。)を図13に示す。
【0097】
[圧力損失]
各例の排ガス浄化用繊維フィルタの圧力損失を下記の要領で算出した。得られた結果(実施例3−1−3を含む。)を図14に示す。
まず、実施例3−2−1で得られた排ガス浄化用繊維フィルタをガソリンエンジン(排気量:2500cc、日産自動車株式会社製)の排ガス流路に配設し、排ガス浄化用繊維フィルタの出入口の圧力を測定して、圧力損失の値を求めた。なお、圧力損失の値は、120分経過時におけるものとした。
実施例3−2−2〜3−2−8、比較例3−2−1〜3−2−3及び実施例3−1−3についても同様の操作により圧力損失を算出した。
【0098】
(実施例3−3−1〜3−3−6、比較例3−3−1〜3−3−3)
排ガス浄化用繊維フィルタを構成する繊維の繊維径、排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率及び排ガス浄化用繊維フィルタの厚みをそれぞれ(実施例3−3−1:50μm、70%、3mm、実施例3−3−2:50μm、70%、1.5mm、実施例3−3−3:50μm、70%、0.5mm、実施例3−3−4:50μm、90%、6mm、実施例3−3−5:50μm、90%、3mm、実施例3−3−6:50μm、90%、1.5mm、比較例3−3−1:50μm、50%、3mm、比較例3−3−2:50μm、50%、1.5mm、比較例3−3−3:50μm、50%、0.5mm)に変えたこと以外は、実施例3−1−3と同様の操作を繰り返して、各例の排ガス浄化用繊維フィルタを得た。
各例の排ガス浄化用繊維フィルタのPM酸化率を実施例3−1−1と同様の要領で算出した。得られた結果を図15に示す。
【0099】
図13及び図14から、本発明の範囲に属する排ガス浄化用繊維フィルタは、コールドPM浄化性能を向上させ得ることが分かる。
【0100】
(実施例4−1−1)
<排ガス浄化用繊維フィルタの作製>
金属繊維(材質:フェライト系ステンレス鋼)を用い、抄造よって、不織布を作製した。
得られた不織布を、アルコール系溶剤の一例であるエタノール(濃度:99質量%)に浸漬させながら、超音波処理を15分間行い、一昼夜自然乾燥し、更に130℃で1時間乾燥し、しかる後、大気中、400℃で30分間焼成して、排ガス浄化用繊維フィルタを作製した。
得られた排ガス浄化用繊維フィルタにセリウム(Ce)を含む触媒層形成スラリーを塗布し、余分なスラリーを除去し、乾燥・焼成して、本例に用いた排ガス浄化用繊維フィルタを得た。
得られた排ガス浄化用繊維フィルタは、空隙率が70%、厚みが3mmであった。また、排ガス浄化用繊維フィルタを構成する繊維は、繊維径が35μmであった。
【0101】
<三元触媒の作製>
本例に用いた三元触媒は、Pd及びRh担持触媒であり、触媒ハニカム容量は、0.94L、Pt及びRhの担持量は3.5g、PtとRhの担持重量比率はPt:Rh=11:1であった。
【0102】
<排気ガス浄化システムの構築>
上記作製した排ガス浄化用繊維フィルタ及び三元触媒を図7に示すように、ガソリンエンジンの排ガス流路に配設して、本例のガソリンエンジン用排ガス浄化システムを構築した。
【0103】
(実施例4−1−2〜4−1−16)
排ガス浄化用繊維フィルタの作製において、表1に示すように触媒成分を代えたこと以外は、実施例4−1−1と同様の操作を繰り返して、各例のガソリンエンジン用排ガス浄化システムを構築した。
【0104】
(比較例4−1−1)
<パティキュレートフィルタの作製>
本例に用いたパティキュレートフィルターは、Ptを担持したものであり、触媒ハニカム容量は、2.5L、Ptの担持量は2.5gであった。
【0105】
<排気ガス浄化システムの構築>
上記作製したパティキュレートフィルタ及び三元触媒を図8に示すように、ガソリンエンジンの排ガス流路に配設して、本例のガソリンエンジン用排ガス浄化システムを構築した。
【0106】
(実施例4−2−1〜4−2−8、比較例4−2−1〜4−2−3)
排ガス浄化用繊維フィルタの作製において、排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率及び排ガス浄化用繊維フィルタの厚みをそれぞれ(実施例4−2−1:70%、1.5mm、実施例4−2−2:70%、0.5mm、実施例4−2−3:85%、3mm、実施例4−2−4:85%、1.5mm、実施例4−2−5:85%、0.5mm、実施例4−2−6:90%、6mm、実施例4−2−7:90%、3mm、実施例4−2−8:90%、1.5mm、比較例4−2−1:50%、3mm、比較例4−2−2:50%、1.5mm、比較例4−2−3:50%、0.5mm)に変えたこと以外は、実施例4−1−3と同様の操作を繰り返して、各例のガソリンエンジン用排ガス浄化システムを構築した。
【0107】
(実施例4−3−1〜4−3−6、比較例4−3−1〜4−3−3)
排ガス浄化用繊維フィルタの作製において、排ガス浄化用繊維フィルタを構成する繊維の繊維径、排ガス浄化用繊維フィルタの空隙率及び排ガス浄化用繊維フィルタの厚みをそれぞれ(実施例4−3−1:50μm、70%、3mm、実施例4−3−2:50μm、70%、1.5mm、実施例4−3−3:50μm、70%、0.5mm、実施例4−3−4:50μm、90%、6mm、実施例4−3−5:50μm、90%、3mm、実施例4−3−6:50μm、90%、1.5mm、比較例4−3−1:50μm、50%、3mm、比較例4−3−2:50μm、50%、1.5mm、比較例4−3−3:50μm、50%、0.5mm)に変えたこと以外は、実施例4−1−3と同様の操作を繰り返して、各例のガソリンエンジン用排ガス浄化システムを構築した。
【0108】
[低温域におけるPM浄化性能]
各例のガソリンエンジン用排ガス浄化システムにおいて、下記の測定方法により、低温域におけるPM浄化性能を測定した。得られた結果を表3に示す。各システムの仕様の一部及び用いた排ガス浄化用繊維フィルタの圧力損失の値も表3に併記する。なお、圧力損失の値は、120分経過時におけるものとした。
【0109】
(測定方法)
LA4評価における0〜300秒までのPM浄化率を求めて、低温域におけるPM浄化性能として評価した。なお、触媒入口の温度は平均で300℃であった。
【0110】
【表3】

【0111】
表3より、本発明の範囲に属する各実施例は、本発明外の各比較例に対して、コールドPM浄化性能が優れていることが分かる。また、比較例4−2−1は、実施例4−2−1と比較して、圧力損失が著しく高くなった。
また、図7に示すように、ガソリンエンジンから流出した排ガスが直接流入する位置に排ガス浄化用繊維フィルタを配設することによって、より優れたPMの浄化性能を発揮することができることが分かる。
更に、少なくとも表面に所定の触媒成分を含有する繊維からなる排ガス浄化用繊維フィルタを適用することによって、より優れたPMの浄化性能を発揮することができることが分かる。
更にまた、排ガス浄化用繊維フィルタを構成する繊維としては、優れた耐熱性を金属繊維や無機繊維を好適に適用できることが分かる。
【0112】
以上、本発明を若干の実施形態及び実施例によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0113】
例えば、上記のガソリンエンジン用排ガス浄化システムにおける実施形態では、2個の触媒を備える場合の例として、2個の一体構造型三元触媒を備える場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、酸化触媒、三元触媒、NOx浄化触媒など各種の触媒を適宜組み合わせることができる。更には、3個以上の触媒を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1、1’、10 ディーゼルエンジン用排ガス浄化システム
1’’、1’’’、10’ ガソリンエンジン用排ガス浄化システム
2 ディーゼルパティキュレートフィルタ
4 排ガス浄化用繊維フィルタ
4a 繊維
4b 触媒成分
6、6’ 一体構造型三元触媒
8 ディーゼルエンジン
8’ ガソリンエンジン
8a 排ガス流路
8b ケース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙率が70〜90%であり、且つ厚みが0.5〜6mmであることを特徴とする排ガス浄化用繊維フィルタ。
【請求項2】
ディーゼルエンジンの排ガス流路に配設されるディーゼルパティキュレートフィルタと、
上記ディーゼルパティキュレートフィルタより上流側の上記排ガス流路に配設され、空隙率が70〜90%であり、且つ厚みが0.5〜6mmである排ガス浄化用繊維フィルタと、を有する、ことを特徴とするディーゼルエンジン用排ガス浄化システム。
【請求項3】
上記排ガス浄化用繊維フィルタが、上記排ガス流路において最も高温となる位置に配設されることを特徴とする請求項2に記載のディーゼルエンジン用排ガス浄化システム。
【請求項4】
上記排ガス浄化用繊維フィルタが、少なくとも表面に触媒成分を含有する繊維からなる排ガス浄化用繊維フィルタであることを特徴とする請求項2又は3に記載のディーゼルエンジン用排ガス浄化システム。
【請求項5】
上記繊維が、金属繊維及び/又は無機繊維であることを特徴とする請求項4に記載のディーゼルエンジン用排ガス浄化システム。
【請求項6】
上記触媒成分が、白金、パラジウム、ロジウム、セリウム、プラセオジム、ガリウム、マンガン及びイットリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を含有する触媒成分であることを特徴とする請求項4又は5に記載のディーゼルエンジン用排ガス浄化システム。
【請求項7】
上記排ガス浄化用繊維フィルタより上流側の上記排ガス流路、及び上記排ガス浄化用繊維フィルタより下流側であって上記ディーゼルパティキュレートフィルタより上流側の上記排ガス流路の少なくとも一方に配設される触媒を更に有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1つの項に記載のディーゼルエンジン用排ガス浄化システム。
【請求項8】
ガソリンエンジンの排ガス流路に配設される触媒と、
上記触媒より上流側の上記排ガス流路に配設され、空隙率が70〜90%であり、且つ厚みが0.5〜6mmである排ガス浄化用繊維フィルタと、を有する、ことを特徴とするガソリンエンジン用排ガス浄化システム。
【請求項9】
上記排ガス浄化用繊維フィルタが、上記排ガス流路において最も高温となる位置に配設されることを特徴とする請求項8に記載のガソリンエンジン用排ガス浄化システム。
【請求項10】
上記排ガス浄化用繊維フィルタが、少なくとも表面に触媒成分を含有する繊維からなる繊維フィルタであることを特徴とする請求項8又は9に記載のガソリンエンジン用排ガス浄化システム。
【請求項11】
上記繊維が、金属繊維及び/又は無機繊維であることを特徴とする請求項10に記載のガソリンエンジン用排ガス浄化システム。
【請求項12】
上記触媒成分が、白金、パラジウム、ロジウム、セリウム、プラセオジム、ガリウム、マンガン及びイットリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種を含有する触媒成分であることを特徴とする請求項10又は11に記載のガソリンエンジン用排ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−255615(P2010−255615A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216331(P2009−216331)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】