説明

排気ガス浄化設備の温度管理のための方法及び装置

【課題】排気ガスダクトの中に或いは排気ガス浄化設備に少なくとも一つの熱電ジェネレータが取付けられている、内燃機関の排気ガスダクトの中の排気ガス浄化設備の温度管理のための方法を提供し、排気ガス浄化設備の効率と温度管理を改善し又燃費を引き下げる。
【解決手段】熱電ジェネレータの作動様態が、排気ガス浄化設備の温度管理に取り入れられ、熱電ジェネレータの達成可能な加熱出力或いは冷却出力並びに熱電ジェネレータの冷却のためのその追加コンポーネントの冷却出力が、排気ガスダクトの中の排気ガス流の制御の際に或いは排気ガス浄化設備の制御のために評価される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスダクトの中の排気ガス浄化設備の温度管理のための方法及び装置に関しており、この排気ガスダクトの中或いは排気ガス浄化設備には、少なくとも一つの熱電ジェネレータが取付けられている。
本発明は更に、この方法を実施する、対応の装置に関している。
【背景技術】
【0002】
自動車のための燃料のエネルギー利用の改善という枠組みの中で、熱い排気ガスに含まれているエネルギーの利用が務められている。一つのオプションとして、内燃機関の排気ガスダクト中の構成部品に取付けられる熱電ジェネレータ(TEG: thermoelektrischer Generator)がある。熱電ジェネレータは、BiTe、PbTe、SiGe、BiSb、FeSi等の半導体材料のゼーベック効果に基づいて、この様な半導体材料から成る物体の二つの領域が、異なる温度を有する時の温度差の発生を利用している。その際、温度差が予め定められている場合には、電圧差が材料のゼーベック係数に依存しており、このゼーベック係数に対して、半導体材料のドーピングによって影響を与えることができる。実際に利用可能な電圧を達成するために、熱電ジェネレータの熱電エレメントは、直列に接続される。その場合、電圧が加算されるように、エレメントには交互にp−ドープされた材料とn−ドープされた材料が用いられる。熱電エレメントで発生する電圧は、その両端の間の温度差にほぼ比例している。他方、熱電材料に電流を流すことによって熱を発生させることができ(ペルチエ効果)、これによってヒートポンプ作動を実現することができるということが知られている。
自動車の分野におけるそのような熱電ジェネレータのプロトタイプ的な利用並びに排気ガスダクトのための熱管理システムへのその可能な付加的組込みについては、とりわけ専門誌MTZ(2009年4月発行)或いはATZ(2010年4月発行)に記載されている。
排気ガス後処理の従来技術は、オットーエンジンの場合、均質のλ=1で運転されるエンジンの場合には三元触媒であり、希薄(λ>1)運転されるエンジンの場合にはNOx吸蔵型触媒である。三元触媒は、始動温度から連続的に働き且つ組込み場所(エンジン近く或いはエンジンから遠く)によっては場合により冷却措置によって過熱から保護されなければならないのに対して、吸蔵型触媒は、不連続的な動作様態(NOx吸蔵と、脱NOx再生或いは脱SOx再生との交替)によって特徴づけられている。この運転の様々な段階は、その原理的或いは最適な機能様態に対して異なる熱的要求をする。例えば、過濃な混合気条件の近くでの二つの種類の再生には最低の温度さえも要求されるのに対して、良好な効率の下での希薄運転の際のNOxの吸蔵は、およそ250℃から400℃までの中間的温度領域内で行われる。他方、この吸蔵型触媒は、別の限界温度を超えると、熱による老化の影響も受ける。この影響はしかるべく回避されるべきである。希薄運転は、均質運転よりも燃費的に有利なので、吸蔵型触媒によって十分に排出物を減らしながら希薄運転領域を拡大することに努力が向けられている。
今日のディーゼルエンジンの場合には、要求の点で三元触媒と同等の酸化触媒と、オットーエンジンの場合に既に述べられたNOx吸蔵型触媒とが用いられている。ディーゼルエンジンは、脱NOx再生/脱SOx再生を除いて、希薄運転でしか有利に運転できないので、吸蔵領域の最適化は、排出物の観点からは割に合わない目標である。
【0003】
ディーゼルエンジンの場合には、NOx排出の低減のために、NOx吸蔵型触媒の代わりにSCR触媒(SCR:Selektive katalytische Reduktion選択接触還元)が用いられるようになって来ている。この触媒は、定められた温度領域内でも、排気ガスに含まれているNOxの連続的還元が行われるようにするために、SCR触媒の手前の排気ガスダクトの中への還元剤、一般に尿素/水の混合液の注入を必要とする。その際には、SCR触媒の作動の最適化のために、追加として、定められたNOx対NOの比率が、上流に配置されている酸化触媒の中でも対応する温度の下で調節可能であるということが有利である。熱的制約は、SCRシステムの場合には更に、排気ガス中での尿素/水の混合液の調製の境界条件からも生じる。排気ガス温度が低い時には、壁面塗料による難溶解性の堆積の危険があるために、注入は最低温度を越えてから初めて行うことができる。また、堆積物の分解も一定の温度領域内で行われることが好ましい。
【0004】
ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)は、多くの自動車市場で既に数年前から標準となっており、また不連続的な動作様態(フィルタリング/再生)も持っており、その際、特に再生は、一定の境界条件(すすの焼却のための最低温度や熱による損傷の回避)の下で行われなければならない。再生の連続的形態のためには、NOの生成の際の酸化触媒との協働作用が重要であり、このNOの生成もまた、或る温度領域内で行われることが有利である。
【0005】
オットーエンジンとディーゼルエンジンの排気ガス後処理に対するこのような様々な要求を満たすために、例えば(後)噴射方式、混合気の過濃化、チョーキング或いは排気ガス再循環(AGR)等のように、混合気形成のために、また熱的境界条件の調節(冷却或いは加熱)のために、広範囲にわたるエンジン制御措置が自動車応用の技術水準として導入されている。また、加熱措置の一部は、排気ガスシステム中の追加装置(バーナー、電気ヒーター)によっても具現される。しかしながら、従来技術の中には、熱電ジェネレータの利用に関係しているものは全くないか、或いは例えあったとしても排気ガス後処理装置の動作技術の中に僅かに見られるだけである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、熱電ジェネレータを用いて完全に排気ガス後処理設備の熱管理の中に取り込むことのできる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本方法に係わる課題は、請求項記載のメルクマールによって解決される。
【0008】
本発明の装置に係わる課題は、内燃機関のエンジン制御装置或いは別の制御装置で、熱電ジェネレータ(TEG)の作動様態が排気ガス浄化設備の熱管理に取り込まれることができ、その際、熱電ジェネレータの達成可能な加熱出力或いは冷却出力並びにその追加コンポーネントの冷却出力は、排気ガスダクトの中の排気ガス流の制御の際の熱電ジェネレータの冷却のために、或いは排気ガス浄化設備の制御のために、評価することができ、また、熱電ジェネレータ並びにその追加コンポーネントの作動様態は、冷却のために予め定めておくことができる、ということによって解決される。
本発明に基づく方法では、熱電ジェネレータの作動様態が排気ガス浄化設備の温度管理に取り込まれ、その際、熱電ジェネレータの達成可能な加熱出力或いは冷却出力並びにその追加コンポーネントの冷却出力は、排気ガスダクトの中の排気ガス流の制御の際の熱電ジェネレータの冷却のために或いは排気ガス浄化設備の制御のために、考慮される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に基づく方法により、またそれに対応する装置を用いると、とりわけ、排気ガス浄化設備のコンポーネントに対する熱電ジェネレータの最適な取付け位置を実現することのできる排気ガス浄化設備の全システム構成に関して、また、全ての排気ガス後処理設備コンポーネントの熱管理への熱電ジェネレータの全ての作動可能性の完全な取り込みに関して、改良の可能性が生まれる。それによって、TEG動作様態の完全な取り込みのお陰で排気ガス浄化設備の機能が同じ場合でも燃費効率を高くすることができ、或いは排出物の低減に関する排気ガス後処理システムの性能を高めることができる、という利点が生まれる。このような改良によって、場合によっては加熱/冷却のための追加装置を全て省略することができる。
【0010】
例えば、熱電ジェネレータのジェネレータ作動の際の熱電ジェネレータの冷却出力が意図的に温度の引下げのために、或いは内燃機関の特定の運転様態の下での排気ガスダクトの中の定められた最高許容温度レベルの保持のために用いられると、エンジンの特定の運転様態のもとで、排気ガス温度を、同じ走行条件のもとにおけるTEG無しのシステムの場合よりもより低いレベルに保持することができる。それによって、例えば、NOx吸蔵型触媒の吸蔵領域をより高い負荷領域へ拡張することができ、それによって排出物の点で有利となり、またオットーエンジンの場合には希薄運転の領域が広がることによって、燃費の点でも有利となる。同様に、触媒をコートされた排気ガス設備コンポーネントは、熱による損傷から守られる。オットーエンジンの場合には、場合によっては冷却のための混合気過濃化を抑制し或いは全く止めてしまうことができる。これによって、燃費上の利点が生まれる。間接的には、熱的保護の改善によって排気ガス浄化設備の使用寿命を越えて排出の改善が得られる。
【0011】
他方、熱電ジェネレータのヒートポンプ作動の際の熱電ジェネレータの加熱出力も、意図的に温度の上昇のために、或いは、例えば排気ガス中で一定の最低温度を達成するために、内燃機関の特定の運転様態の下で排気ガスダクトの中の定められた最低許容温度レベルを保持するために用いることができる。
【0012】
熱電ジェネレータのジェネレータ作動とヒートポンプ作動との交替は、有利な手法によれば、例えば粒子フィルタ或いはNOx吸蔵型触媒の場合に、再生作動様態の制御のために利用され、それによって、一定の温度領域を保持することができる。熱電ジェネレータのこの支援された熱管理部分によって、再生運転を走行運転とは独立に保持することができる。再生のより確実でより完全な実行は、排気ガス設備の何度にもわたる加熱の回避による燃費上の利点と、新たな吸蔵段階のために不連続的に作動するシステムの作動準備をより早く整えることによって得られる排出物上の利点とをもたらす。反応開始温度により早く到達するようにするための排気ガス後処理設備のコンポーネント、例えば三元触媒などの加熱のためのTEGの純粋なヒートポンプ作動は、既に文献の中で提案されている。提案されている拡張された作動方式の利点は、TEGの交互的加熱措置とバイパス作動の燃費悪化のための基準が作られているので、最適な方式を運転状況やその他の境界条件に応じて選択することができるという点にある。
【0013】
バイパス作動のために熱電ジェネレータの追加コンポーネントとしてバイパス弁が備えられているが、これは、熱電ジェネレータに対して並列に排気ガスダクトの中に配置されており、この弁によって、必要の際には熱過ぎる排気ガス流が電気ジェネレータの傍を通して導かれる。これに加えて或いは代わりとして、別の追加コンポーネントとして、熱電ジェネレータを必要によりその効率或いはその電気的性能の最適化のために冷却することのできる冷却回路が備えられていることがあり、この回路が排気ガス浄化設備の温度調節のために制御可能である。TEGのために存在しているこの冷却回路は、代わりとして或いは追加として、排気ガス温度管理の更なる可能性を獲得するために、直接排気ガス流の中に配置される熱交換器一つだけ拡張されることもある。
【0014】
熱電ジェネレータと排気ガス後処理の内蔵作動方式は、排気ガス浄化設備の少なくとも一つのコンポーネントが通常の自動車運転の際に一部は割り込まれ、また一部はオーバーされることのあり得る最適な温度帯を要求している時に、とりわけ有利であるが、この作動方式では、最適化された作動方式のもとでの熱電ジェネレータの作動の際の排気ガス浄化設備の温度管理のために、次の諸基準の中の少なくとも一つが利用される。それ等の基準は次の通りである。
【0015】
− 熱電ジェネレータのジェネレータ作動或いはヒートポンプ作動によるエネルギー利得或いはエネルギー消費、
− 熱電ジェネレータのジェネレータ作動或いはヒートポンプ作動による排気ガス熱の減少或いは増加、
− 冷却回路の冷却出力の利用による排気ガス温度の低下、
− 温度に応じた排気ガス浄化設備の排出物の低減、
− 熱電ジェネレータのヒートポンプ作動(排気ガス加熱)による燃費悪化、
− 代替的エンジンの中の及び/又は追加の排気ガス加熱措置(例えば、バーナー)による燃費悪化、
− 不連続的に作動する排気ガス浄化設備の再生作動の中断による燃費悪化、及び
− 加熱措置或いは冷却措置による、燃費的に有利なエンジン作動様態の延長による燃費向上。
【0016】
本方法の別の変形では、複数の排気ガス浄化設備の場合或いは複数の熱電ジェネレータの場合には、排気ガス浄化設備及び/又は熱電ジェネレータ及びそれ等の追加コンポーネントの幾つかのコンポーネントのための基準を、別々に測定し且つ評価するということも考えられている。この場合、それ等の基準には、シーケンス制御を用いて加重値が与えられ且つ総合評価に基づいて熱電ジェネレータと排気ガス後処理設備のコンポーネントの作動方式が選択されるものとする。
【0017】
従って、本装置の或る好ましい変形では、エンジン制御装置或いは別の制御装置に、コンポーネントとして、信号測定ユニット、演算ユニット、評価ユニット、制御ユニット、及び制御信号出力器を含んでいるシーケンス制御装置が実装されている。その際、信号測定ユニットを用いて、エンジンブロックに取付けられているセンサからの、熱電ジェネレータ並びにその負荷コンポーネントからの、並びに排気ガス浄化設備に取付けられているセンサからの測定信号を測定することができ、且つ制御信号出力器を用いてエンジンブロックの中の、熱電ジェネレータの、及びその追加コンポーネント(冷却回路、バイパス=弁)の並びに排気ガス浄化設備のアクチュエータを制御することができる。その際、作動基準の演算は演算ユニットで行われ、その場合、センサ信号から又追加として、排出物、排気ガス温度、及び燃費等の予測的運転値の計算のためのモデルを用いて、上述の基準を形成することができる。評価ユニットで行われる評価は、エンジンの又少なくとも一つの熱電ジェネレータの又少なくとも一つの排気ガス後処理設備のコンポーネントの作動基準を含むことができる。基準に対する加重値の付与、従って評価は、走行状況、コンポーネントの劣化状態、及びバッテリーの充電レベル等の他の境界条件に依存していることがある。制御ユニットで定められる、熱電ジェネレータ、冷却回路、バイパス弁、及び排気ガス後処理設備のための制御方式は、加重値を付与された作動基準の評価から導き出すことができ、燃費と排出物とを同時に最適化すること目標としている。その際、先に記載されたそれ等の機能ユニットによるシーケンス制御の機能は、ハードウェアとして及び/またはソフトウェアとして、制御装置に或いはその上位に置かれているエンジン制御装置に実装されることができる。更に、個々の機能ユニットは、より複雑なユニットに纏められていることもある。
【0018】
TEGは、そのジェネレータ作動でその熱電材料の温度差が大きくなればなる程、より高い出力を有するようになる。従って、本装置の或る好ましい変形では、熱電ジェネレータは、排気ガスダクトの中の排気ガスの流れの方向に見て排気ガス浄化設備の手前に、即ちエンジン近くに配置されている。熱電ジェネレータが排気ガスシステムの排出物低減用コンポーネントの手前に組込まれると、排気ガスからの熱の取出しの効果を有するジェネレータの作動は、自動車/エンジンの作動領域内でのこれ等のコンポーネントの排出物の低減或いはその熱的安定性が最高許容排気ガス温度の到達によって制限されているか或いは排出物の点でより有利な作動様態が制限温度までしか維持されないという場合には、二重に有利となる。このことは、例えば、三元触媒、酸化触媒及びNOx吸蔵型触媒の場合のように、限界温度への到達以後、溶融によって触媒として働く表面の損傷を受ける触媒のコーティングの場合に当てはまる。コーティング材料に依存している最高温度が希薄運転の下でのNOx吸蔵型触媒の吸蔵の際に或いは過濃運転の下でのNOx吸蔵型触媒の再生の際にオーバーされると、これ等の作動様態は終了されなければならない。それによって、例えば、燃費的に不利な運転へ切換えられなければならなくなる。再生の早期中断とその後の再開によって燃費の悪化が生じ、或いは、吸蔵型触媒の再生が不十分な場合には、排気ガスシステムが一時的に排出物の低減のために十分に利用されることができない。ジェネレータ作動の際のTEGの最大冷却能力が単独では不十分である時には、場合によっては、TEGの冷却回路に接続されたTEGと排気ガス後処理設備のコンポーネントとの間の排気ガス流の中の熱交換器の支援装置が有利となり得る。
【0019】
その時々の排気物質テストで、排出物の低減が反応開始温度への到達に大きく依存している排気ガスシステム内のコンポーネントの場合には、熱電ジェネレータが、排気ガスダクトの中の排気ガスの流れの方向に見て、排気ガス浄化設備の後方に配置されているか或いは、エンジンブロックと排気ガス浄化設備との間追加コンポーネントとしての排気ガス浄化設備の手前に配置されている場合には、熱電ジェネレータに対して並列に配置された制御可能のバイパス弁を備えていると、有利である。もう一つの可能性は、排気ガス設備の加熱作動でのヒートポンプとしてのTEGの作動である。三元触媒(反応開始温度)或いは或る温度領域内での最適なNOx吸蔵型触媒の吸蔵効率が再びその例となる。
【0020】
排気ガスシステムの多くの排出物低減用コンポーネントは、それ等の最適な作動のために下側と上側の両方の温度限界を有している。この場合、TEGと排気ガス後処理設備の利用の最適化のために、ぜひともこのコンポーネントの手前のTEGの取付け位置、TEGのフレキシブルな作動方式(ジェネレータ及びヒートポンプ)及びバイパス制御が必要となる。
【0021】
従って、本発明に基づく装置は、粒子フィルタ、三元触媒として或いは酸化窒素吸蔵型触媒として作られた排気ガス浄化設備のために特に適している。
【0022】
本方法の変形を含めた本方法の、既に述べられたような好ましい利用は、オットーエンジン或いはディーゼルエンジンでの使用を意図している。
本発明は、以下に図示されている実施例に基づいて、より詳しく説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、内燃機関の排気ガスダクトの中の熱電ジェネレータの概略図を示す。
【図2】図2は、排気ガスダクトの中の代替の装置における熱電ジェネレータを示す。
【図3】図3は、最適温度領域への到達のための追加のコンポーネントを備えた熱電ジェネレータを示す。
【図4】図4は、内燃機関のコンポーネントとの相互作用の中の主機能ユニットを有する制御装置の概略図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、エンジンブロック10と、排気ガスダクト20の中に配置された排気ガス浄化設備40と有する内燃機関1を略示している。排気ガス浄化設備40には、排気ガスの流れの方向に見て排気ガス浄化設備40の手前に、熱電ジェネレータ30は、一方の側が熱い排気ガスによって加熱され、もう一方の側が外側に向けられ且つより低い温度を有するように、取付けられている。これによって、冒頭に記載されていたように、排気ガスの中に含まれている熱エネルギーから電気エネルギーを獲得することができる。この装置は、熱電ジェネレータ30がジェネレータ作動の状態で作動され且つそれによって排気ガスから熱エネルギーが取出される時には、とりわけ排気ガス浄化設備(排気ガス後処理設備)40を高過ぎる温度から、従って可能な熱的損傷から保護するために適している。
【0025】
図2にも装置が略示されているが、この装置の場合には、熱電ジェネレータ30が、図1の場合とは反対に、排気ガスの流れの方向に見て排気ガスダクト20の中の排気ガス浄化設備40の後方に配置されている。この配置は、排気ガス浄化設備40のため下側の限界温度(反応開始温度)に到達することができるという点で有利である、何故なら、ジェネレータ作動の際に、熱の取出しが排気ガス浄化設備40の手前の排気ガス温度に対して影響を与えることが無いからである。
【0026】
図3には、装置の変形が示されているが、この変形の場合には、図1に示されているように、熱電ジェネレータ30が、排気ガスの流れの方向に見て排気ガスダクト20の中の排気ガス浄化設備40の手前に配置されており、その際、追加として熱電ジェネレータ30の冷却のためのコンポーネントが取付けられている。追加コンポーネントの中の一つは、制御可能なバイパス弁60であり、この弁は、エンジンブロック10と排気ガス浄化設備40との間に熱電ジェネレータ30に対して並列に配置され且つ熱電ジェネレータ30の保護のために用いられる。排気ガス温度が高過ぎる場合には、この弁が少なくとも部分的に開かれ、それによって熱電ジェネレータ30の熱負荷を引き下げることができる。
【0027】
熱電ジェネレータ30を保護するための並びに効率を向上させるためのもう一つのコンポーネントは、冷却回路50である。冷却回路は、一方ではジェネレータ作動の下でより大きな温度差をもたらし且つそれによってより高いジェネレータ電圧をもたらすために役立つ。他方、この回路によって得られる冷却能力によって排気ガスの温度が引き下げられ、このことは、排気ガス浄化設備40の特定の作動様態の際に、プラスの影響をもたらすことがある。
【0028】
しかしながら、排気ガス浄化設備40の手前の排気ガス温度の引き上げのためには、バイパス弁60が開かれ且つ熱電ジェネレータ30が更にヒートポンプとして作動するか、或いはバイパス弁60だけが開かれるということも考えられる。これによって、例えば非常に迅速に最低温度(反応開始温度)に到達することができるが、これは、例えば再生作動の下での粒子フィルタ(DPF)の場合に必要である。
【0029】
この複雑な作動モードを制御するために、本発明によれば、図3に記載されている装置と関連して図4に略示されているように、制御装置70が備えられている。
【0030】
制御装置70によって、熱電ジェネレータ30の作動様態が排気ガス浄化設備40の温度管理に取り入れることができ、その際、熱電ジェネレータ30の達成可能な加熱性能或いは冷却性能並びに熱電ジェネレータ30の冷却のための追加コンポーネントの冷却性能は、排気ガスダクト20の中の排気ガス流の制御の際に或いは排気ガス浄化設備40の制御のために評価することができ、また熱電ジェネレータ30並びにその追加コンポーネントの作動様態は予め冷却用に定めて置くことができる。
【0031】
制御装置70にはシーケンス制御が実装されており、このシーケンス制御には、構成要素として、信号測定ユニット71、演算ユニット72、評価ユニット73、制御ユニット74、及び制御信号出力器75が含まれている。信号測定ユニット71を用いてエンジンブロック10からの、熱電ジェネレータ30並びにその追加コンポーネントからの、並びに排気ガス浄化設備40からの測定信号を決定することができる。制御信号出力器75を用いて、エンジンブロック10の、熱電ジェネレータ30の及びその追加コンポーネントの、並びに排気ガス浄化設備40のアクチュエータを制御することができ、これによって、排気ガス後処理設備40を含めた熱電ジェネレータ30の内蔵作動方式を実現することができる。
【0032】
シーケンス制御の機能は、ソフトウェアとして或いはハードウェアとして、制御装置70に実装されることができる。更にシーケンス制御の機能を、上位に配置されたエンジン制御装置或いは車両制御装置に実装するということも考えることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 内燃機関
10 エンジンブロック
20 排気ガスダクト
30 熱電ジェネレータ
40 排気ガス浄化設備或いは排気ガス後処理設備
50 冷却回路
60 バイパス弁
70 制御装置
71 信号測定ユニット
72 演算ユニット
73 評価ユニット
74 制御ユニット
75 制御信号出力器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスダクト(20)の中に或いは排気ガス浄化設備(40)に、少なくとも一つの熱電ジェネレータ(30)が取付けられている、内燃機関(1)の排気ガスダクト(20)の中の排気ガス浄化設備(40)の温度管理のための方法において、
熱電ジェネレータ(30)の作動様態が、排気ガス浄化設備(40)の温度管理に取り入れられ、熱電ジェネレータ(30)の達成可能な加熱出力或いは冷却出力並びに熱電ジェネレータ(30)の冷却のためのその追加コンポーネントの冷却出力が、排気ガスダクト(20)の中の排気ガス流の制御の際に或いは排気ガス浄化設備(40)の制御のために考慮されることを特徴とする排気ガス浄化設備の温度管理のための方法。
【請求項2】
熱電ジェネレータ(30)のジェネレータ作動の際の熱電ジェネレータ(30)の冷却出力が、意図的に温度の引下げのために、或いは内燃機関(1)の特定の運転様態の下での排気ガスダクト(20)の中の定められた最高許容温度レベルの保持のために、用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱電ジェネレータ(30)のヒートポンプ作動の際の熱電ジェネレータ(30)の加熱出力が、意図的に温度の引き上げのために、或いは内燃機関(1)の特定の運転様態の下で排気ガスダクト(20)の中の定められた最低温度レベルの保持のために、用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
熱電ジェネレータ(30)のジェネレータ作動とヒートポンプ作動との交替が、再生作動様態の制御のために利用され、それによって定められた温度領域が保持されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
熱電ジェネレータ(30)の追加コンポーネントとして、バイパス弁(60)が備えられており、この弁は、熱電ジェネレータ(30)に対して並列に排気ガスダクト(20)の中に配置されており、この弁によって、必要の際には熱過ぎる排気ガス流が電気ジェネレータ(30)の傍を通して導かれ、及び/または熱電ジェネレータ(30)を必要により冷却する冷却回路(50)が排気ガス浄化設備(40)の温度調節のために制御されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
熱電ジェネレータ(30)作動方式の際の排気ガス浄化設備(40)の温度管理のために、以下の基準、即ち
− 熱電ジェネレータ(30)のジェネレータ作動或いはヒートポンプ作動によるエネルギー利得或いはエネルギー消費、
− 熱電ジェネレータ(30)のジェネレータ作動或いはヒートポンプ作動による排気ガス熱の減少或いは増加、
− 冷却回路(50)の冷却出力の利用による排気ガス温度の低下、
− 温度に応じた排気ガス浄化設備(40)の排出物の低減、
− 熱電ジェネレータ(30)のヒートポンプ作動(排気ガス加熱)による燃費悪化、
− 代替的エンジンの中及び追加の少なくともいずれかの排気ガス加熱措置による燃費悪化、
− 不連続的に作動する排気ガス浄化設備(40)の再生作動様態の中断による燃費悪化、
− 加熱措置或いは冷却措置による燃費的に有利なエンジン作動様態の延長による燃費向上、
の中の少なくとも一つが用いられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
複数の排気ガス浄化設備(40)の場合或いは複数の熱電ジェネレータ(30)の場合には、排気ガス浄化設備(40)及び熱電ジェネレータ(30)の少なくともいずれか、及びそれ等の追加コンポーネントの幾つかのコンポーネントのための基準が、別々に決定され且つ評価されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
オットーエンジン或いはディーゼルエンジンの場合に利用される請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
排気ガスダクト(20)の中に或いは排気ガス浄化設備(40)に少なくとも一つの熱電ジェネレータ(30)が取付けられており、
内燃機関(1)の作動状態及び排気ガス浄化設備(40)の作動状態のデータがエンジン制御装置のセンサを用いて評価され、エンジン内の措置或いは追加措置が排気ガスの温度調節のために導入される、
内燃機関(1)の排気ガスダクト(20)の中の排気ガス浄化設備(40)の温度管理のための装置において、
エンジン制御装置の中或いは別の制御装置(70)の中で熱電ジェネレータ(30)の作動様態を排気ガス浄化設備(40)の温度管理の中に取り入れることができ、
熱電ジェネレータ(30)の達成可能な加熱出力或いは冷却出力並びに熱電ジェネレータ(30)の冷却のためのその追加コンポーネントの冷却出力を、排気ガスダクト(20)の中の排気ガス流の制御の際に或いは排気ガス浄化設備(40)の制御のために評価することができ、
熱電ジェネレータ(30)並びにその追加コンポーネントの作動様態を予め冷却のために定めることができることを特徴とする排気ガス浄化設備の温度管理のための装置。
【請求項10】
エンジン制御装置或いは制御装置(70)に、構成要素として、信号測定ユニット(71)、演算ユニット(72)、評価ユニット(73)、制御ユニット(74)、及び制御信号出力器(75)を含んでいるシーケンス制御が実装されており、
信号測定ユニット(71)を用いてエンジンブロック(10)からの、熱電ジェネレータ(30)並びにその追加コンポーネントからの、並びに排気ガス浄化設備(40)からの測定信号を決定することができ、
制御信号出力器(75)を用いて、エンジンブロック(10)の、熱電ジェネレータ(30)の及びその追加コンポーネントの、並びに排気ガス浄化設備(40)のアクチュエータを制御することができることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
熱電ジェネレータ(30)が、排気ガスダクト(20)の中の、排気ガスの流れの方向に見て排気ガス浄化設備(40)の手前に配置されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
熱電ジェネレータ(30)が、排気ガスダクト(20)の中の、排気ガスの流れの方向に見て排気ガス浄化設備(40)の後方に配置されているか、或いはエンジンブロック(10)と排気ガス浄化設備(40)との間に追加コンポーネントとして排気ガス浄化設備(40)の手前に配置される場合には、熱電ジェネレータ(30)に対して並列に配置された制御可能のバイパス弁(60)を備えていることを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項13】
排気ガス浄化設備(40)が、粒子フィルタ、三元触媒、SCR触媒として、或いは酸化窒素吸蔵触媒として作られていることを特徴とする請求項9ないし12のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−82828(P2012−82828A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222140(P2011−222140)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】