説明

排気ターボチャージャを備えた内燃機関

【課題】排気エネルギの利用を改良することである。
【解決手段】排気ターボチャージャ(4)から流出する排気を、短絡管路(6)を迂回させた後にパワータービン(9)へと迂回させるように、第1の弁(8)が排気ターボチャージャ(4)の下流側の排気管路区分(7)に配置されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関であって、排気マニホールドを備えており、排気管路を備えており、内燃機関のための燃焼用空気の過給のために設けられているコンプレッサを駆動する排気ターボチャージャを備えており、排気管路から分岐した、パワータービンが配置されているバイパス管路を備えており、バイパス管路から短絡管路は分岐して、排気ターボチャージャの下流側の排気管路区分に開口している内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の外部点火式の内燃機関におけるエンジンダウンサイジングは、特にターボ過給によって達成される。これにより燃料消費は特に部分負荷運転サイクルにおいて減じることができる。この種のコンセプトにおいてはターボチャージャの遅いレスポンス挙動、いわゆるターボラグが欠点である。遅いレスポンス挙動の場合には負荷要求時のトルク上昇は遅れてもたらされる。DE3729117C1号明細書には、排気ターボチャージャとパワータービンとを備えた内燃機関が記載されており、パワータービンはバイパス管路内に配置されている。バイパス管路と排気ターボチャージャの下流の排気管路区分との間に短絡管路が配置されており、短絡管路内には絞りが設けられている。さらに、WO2008/075130A1号明細書において、排気管路内に2つのターボチャージャが設けられている内燃機関が公知になっている。第1の排気ターボチャージャによってコンプレッサは運転され、第2の排気ターボチャージャによって電気機械が駆動される。内燃機関の運転状態に応じて電気機械はモータとして運転される。さらに、DE3807372A1号明細書には二段式の排気ターボチャージャを備えた内燃機関が記載されている。分岐された排気管路内にはパワータービンが設けられており、パワータービンにジェネレータが接続されている。全排気流は全負荷運転状態においては、第1の排気ターボチャージャを通った後、パワータービンを通り第2の排気ターボチャージャに案内される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE3729117C1
【特許文献2】WO2008/075130A1
【特許文献3】DE3807372A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、冒頭で述べた形式の内燃機関を改良して、排気エネルギの利用を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、排気ターボチャージャから流出する排気が短絡管路内に迂回させられた後、パワータービンへと迂回させられるように、第1の弁が排気ターボチャージャの下流側の排気管路区分に配置されていることにより達成される。
【0006】
好ましくは、パワータービンは電気機械に接続されている。
【0007】
好ましくは、電気機械は内燃機関の運転点に応じてジェネレータとして又はモータとして運転される。
【0008】
好ましくは、排気管路及び/又はバイパス管路内には、少なくとも1つの第2の弁が配置されており、第2の弁によってバイパス管路を通じて迂回させられる排気量が調節可能である。
【0009】
好ましくは、排気ターボチャージャから流出する排気の短絡管路への迂回時に、排気管路とバイパス管路との接続は第2の弁により閉鎖される。
【0010】
好ましくは、排気ターボチャージャから流出する排気の短絡管路への迂回は、低回転数及び中回転数の場合に行われる。
【0011】
好ましくは、排気ターボチャージャから流出する排気の短絡管路への迂回時に、電気機械は電気モータとして運転される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る内燃機関は、排気ターボチャージャの下流側の排気管路区分において、排気ターボチャージャから流出する排気を部分的に又は完全に短絡管路へと迂回させ、次いでパワータービン(Nutzturbine)へと迂回させるように第1の弁が配置されていることを特徴とする。有利には、第1の弁は制御可能な遮断弁として、例えばフラップ又は3方向制御弁の形式において構成されている。有利には、弁は短絡管路の端部において、全排気量を短絡管路に迂回させることができるように配置されている。有利には、パワータービンは電気機械に接続されている。電気機械は内燃機関の運転点に応じて又は排気貫流量に応じてジェネレータとして又はモータとして運転可能である。
【0013】
本発明に係る回路により、排気ターボチャージャから流出する排気流の、短絡管路に次いでパワータービンへの迂回が可能になる。このような運転状態において、排気ターボチャージャの下流側の排気管路区分において負圧を形成するために、パワータービンは電気機械により駆動される。これによりターボラグの発生は防がれる。したがって、排気ターボチャージャのレスポンス挙動は、低回転数の場合でも明らかに改良される。
【0014】
本発明の別の構成によれば、排気管路内及び/又はバイパス管路内に、少なくとも1つの第2の弁が配置されている。第2の弁によってバイパス管路を通って迂回させられる排気量を調節可能である。有利には、第2の弁は制御可能な弁として、例えばフラップ弁又は3方向制御弁として構成されている。第2の弁の配置により、例えば全負荷時に排気量の一部をパワータービンに迂回することができる。したがって、電気機械は電流形成のためにパワータービンにより駆動される。ここで得られた電流はバッテリに貯えることができ、且つ/又は電気的な補機への供給のために使用することができる。
【0015】
本発明のさらに別の構成によれば、排気ターボチャージャから流れる排気の短絡管路への迂回時には、排気管路とバイパス管路との間の接続は第2の弁により閉鎖される。排気ターボチャージャから流出する排気の短絡管路への完全な迂回は、本発明によれば低回転数及び中回転数の場合に行われる。この場合に有利には、電気機械は電気モータとして運転される。これにより、排気ターボチャージャのレスポンス挙動は排気ターボチャージャの下流側の排気管路区分において形成された負圧に基づき改良される。
【0016】
上記特徴及び以下で説明される特徴は、それぞれ記載の組合せにおいてのみ使用可能なのではなく、本発明の範囲を越えることなく別の組合せにおいて又は単独でも使用可能である。
【0017】
別の特徴及び特徴の組合せは以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】排気ターボチャージャとパワータービンとを備えた内燃機関の概略構成図である。
【図2】全負荷状態における図1に記載の内燃機関を示した図である。
【図3】暖機運転中の図1に記載の内燃機関を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の具体的な実施の形態を図面に略示して、以下詳細に説明する。
【0020】
図1において、シリンダヘッド17に排気マニホールド2が配置されている内燃機関1を概略的に示す。排気マニホールド2において各燃焼室19からの排気が集められ排気管路3に案内される。排気管路3内には排気ターボチャージャ4が配置されている。排気ターボチャージャ4は軸20によりコンプレッサ12に結合されている。本発明は、外部点火式の内燃機関にも圧縮点火式の内燃機関にも適している。排気ターボチャージャ4は内燃機関の運転中に規定の排気流によって力が加えられる。これにより駆動軸20、ひいてはコンプレッサ12も駆動される。コンプレッサ12によって燃焼用空気は吸気管路14を通じて吸引され、圧縮され、過給空気管路15を通じて内燃機関1に送られる。吸気管路14と過給空気管路15との間に介在管路16が設けられている。介在管路16内には、有利には再循環空気フラップ13の形式において制御可能な遮断手段が配置されている。再循環空気フラップ13は主に過給空気を絞るために、特に内燃機関1の部分負荷中に働き、再循環空気フラップ13が開放された状態にある場合にはコンプレッサ12を循環するバイパスが存在する。これにより内燃機関1に必要とされない大量の燃焼用空気流を再び吸気管路14に案内することができる。
【0021】
本発明によれば、排気マニホールド2と排気ターボチャージャ4との間の排気管路区分にはバイパス管路5が設けられている。バイパス管路5により排気は排気ターボチャージャ4を迂回することができる。バイパス管路5内には、電気機械10に接続されているパワータービン9が配置されている。電気機械10は運転状態に応じて若しくは必要に応じて、ジェネレータとして又は電気モータとして運転することができる。さらに、バイパス管路5から短絡管路6が分岐している。短絡管路6は排気ターボチャージャ4の下流側において排気管路区分7に開口している。開口区分には、有利には制御可能なフラップとして形成されている弁8が配置されている。弁8を択一的には複数の切換えフラップから形成することができる。これらの切換えフラップは、排気ターボチャージャ4から流出する排気流を部分的に又は完全に短絡管路6を通じて迂回させ、次いでバイパス管路5ひいてはパワータービン9を通るように迂回させるために働く。
【0022】
さらに、排気管路3とバイパス管路5との間の分岐区分には、有利には制御可能なフラップとして形成されている他のフラップ11が配置されている。フラップ11によって、排気マニホールド2から流出する排気流を、部分的に又は完全にバイパス管路5へと迂回させることができる。したがって、弁11はウエストゲートフラップの機能を担う。ウエストゲートフラップは、図2に記載されている特に高負荷及び高回転数の場合、排気の一部を、排気ターボチャージャ4を迂回するようにバイパス管路5内に分けて案内する。このような運転状態、つまり高負荷及び高回転数の場合において、排気の一部はバイパス管路5を通過してパワータービン9にまで流れる。弁8は図2に示したように短絡管路6を閉鎖する。排気エネルギはパワータービン9により直接に電気エネルギに変換され、有利にはバッテリ(図示せず)に貯えられる。択一的にはハイブリッド駆動装置における内燃機関1の使用時において発電運転させられる電気機械10によって得られた電流は、ハイブリッドバッテリの充電に使用される。ジェネレータ10において得られた電流は、ハイブリッド駆動装置における電気的な補機の駆動のために使用することができる、ということも考慮可能である。
【0023】
図1に記載の部分負荷領域においては、排気ターボチャージャから流出する排気を完全に短絡管路6に迂回させ、次いでパワータービン9に迂回するように弁8は調節される。この運転状態においては弁11によってバイパス管路5は閉鎖され、その結果、全排気流は排気ターボチャージャ4に圧送される。この状態において電気機械10はモータ式に運転される。これにより、排気ターボチャージャ4の下流側の排気管路区分7に負圧が形成される。したがって、排気ターボチャージャ4のレスポンス挙動は改善される。通常、ターボエンジンにおける遅いトルク形成の理由は、排気ターボチャージャ4の緩慢なレスポンスである。トルク形成のために排気ターボチャージャ4の回転数を促進する必要があり、コンプレッサ12は必要な過給圧をコンプレッサ側において形成する。排気エネルギの主成分は、慣性の克服のために、ターボチャージャの立ち上がりのために使用される。したがって、ターボチャージャの立ち上がり時における慣性の克服に対する要望は極めて高い。過給圧の形成に必要な熱力学的な排気エネルギは、ターボチャージャの立ち上がり後に減じられる。電気機械10のモータ式の運転によって、排気管路区分7には負圧が形成されるので、慣性に基づく排気ターボチャージャ4の抵抗は減じられる。ターボチャージャ4の抵抗のさらなる減少を達成するために、コンプレッサ側においてフラップ弁13が開放される。
【0024】
さらに、本発明に係る内燃機関1には二次空気通路18が設けられている。二次空気通路18を通って排気マニホールド2へと、触媒(図示せず)を加熱(Aufheizen)するために二次空気が内燃機関1のコールドスタートの段階においてもたらされる。本発明によれば図3に記載されているように、内燃機関1のコールドスタートの段階において、全排気量が排気ターボチャージャ4を迂回してバイパス管路5を通って案内される。この運転状態において電気機械10は電気モータとして運転され、排気マニホールド2内に負圧が形成される。これにより、触媒の加熱のために所望の後反応を調節するために、二次空気通路18を介して二次空気を排気マニホールド2内に吸引することができる。
【0025】
本発明によれば、各弁8,11,13の状態は制御ユニット(図示せず)によって制御されるか若しくは調節される。弁8,11,13の各状態及び電気機械10の運転は、内燃機関1の運転パラメータに基づいて制御される。
【符号の説明】
【0026】
1 内燃機関、 2 排気マニホールド、 3 排気管路、 4 排気ターボチャージャ、 5 バイパス管路、 6 短絡管路、 7 排気管路区分、 8 弁、 9 パワータービン、 10 電気機械、 11 弁、 12 コンプレッサ、 13 再循環空気フラップ、 14 吸気管路、 15 過給空気管路、 16 介在管路、 17 シリンダヘッド、 18 二次空気通路、 19 燃焼室、 20 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)であって、排気マニホールド(2)と、排気管路(3)と、内燃機関(1)のための燃焼用空気の過給のために設けられているコンプレッサを駆動する排気ターボチャージャ(4)と、排気管路(3)から分岐した、パワータービン(9)が配置されているバイパス管路(5)とを備えており、短絡管路(6)がバイパス管路(5)から分岐して、排気ターボチャージャ(4)の下流側の排気管路区分(7)に開口している内燃機関において、
排気ターボチャージャ(4)から流出する排気を、短絡管路(6)内に迂回させた後にパワータービン(9)へと迂回させるように、第1の弁(8)が排気ターボチャージャ(4)の下流側の排気管路区分(7)に配置されていることを特徴とする、内燃機関。
【請求項2】
パワータービン(9)は電気機械(10)に接続されていることを特徴とする、請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
電気機械(10)は内燃機関(1)の運転点に応じてジェネレータとして又はモータとして運転されることを特徴とする、請求項1又は2記載の内燃機関。
【請求項4】
排気管路(3)及び/又はバイパス管路(5)内には、少なくとも1つの第2の弁(11)が配置されており、該第2の弁(11)によってバイパス管路(5)を通じて迂回させられる排気量が調節可能であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載の内燃機関。
【請求項5】
排気ターボチャージャ(4)から流出する排気の短絡管路(6)への迂回時に、排気管路(3)とバイパス管路(5)との接続は第2の弁(11)により閉鎖されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項記載の内燃機関。
【請求項6】
排気ターボチャージャ(4)から流出する排気の短絡管路(6)への迂回は、低回転数及び中回転数の場合に行われることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項記載の内燃機関。
【請求項7】
排気ターボチャージャ(4)から流出する排気の短絡管路(6)への迂回時に、電気機械(10)は電気モータとして運転されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−144731(P2010−144731A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287216(P2009−287216)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】