説明

排気マニホルドガスケット

【課題】排気マニホルドガスケットのコストを低減する。
【解決手段】多目的ガスケットアセンブリは少なくとも2つのローブを含み、各々は関連する軸を備えた流体を運搬する開口部を有する。開口部のまわりのローブの各々に4つの取付け穴が形成される。ガスケットは、開口部の軸を包含する対称面について対称性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年4月19日に出願された米国仮特許出願連続番号第60/563,497号の優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
主題発明は、一般に、自動車の排気システムに用いられる排気マニホルドガスケットに関する。より具体的には、主題発明は、様々なエンジンに設置するのに適合可能な排気マニホルドガスケットに関する。
【背景技術】
【0003】
2. 関連技術の説明
エンジンのシリンダから排気ガスを運び去るために、自動車の排気システムをエンジンと接続することは公知である。より具体的には、エンジンのシリンダヘッドに排気マニホルドが取付けられ、排気ガスがシリンダヘッドを出ると排気ガスを受取る。
【0004】
排気マニホルドガスケットは当該技術で公知である。排気マニホルドガスケットは排気マニホルドをシリンダヘッドに対して封止する。排気マニホルドガスケットは、騒音を生成したり、エンジン室の構成要素に熱損傷を生じたり、かつ/または環境問題を作り出したりし得る、排気の漏れを防ぐ。排気マニホルドガスケットが高温(最大600℃以上)に耐えることを要求されることに起因して高温の静的シールとしても特徴付けられる排気マニホルドガスケットは、しばしば鋼の1つ以上の層でできている。いくつかの自動車製造業者は付加的な仕様上の要求を課する。例えば、いくつかの製造業者は、排気マニホルドガスケットの排気マニホルドに接する側に、耐熱性でもある減摩コーティングを用いるよう要求する。減摩コーティングによって、エンジンに対する排気マニホルドのわずかな動きが可能となり、排気マニホルドとシリンダヘッドとの間のシールを最適化することができる。
【0005】
V字形の構造を有するエンジンについては、シリンダの位置に起因して、エンジンの両側に2つのシリンダヘッドが配置される。したがって排気システムはエンジンの両側に2つの別個の排気マニホルドを有することが必要となり、そのため2つのそれぞれの排気マニホルドガスケットを要する。エンジンの両側の排気マニホルドについて締結具が構成され、ほぼ互いの鏡像となり、それは排気システム用の構成要素、特に排気マニホルドガスケットの製造業者にいくつかの問題を示す。例えば、さらに詳細に後述されるように、エンジンの両側に設置するためには排気マニホルドガスケットを反転させなければならず、すなわち、ガスケットの異なる表面がエンジンの両側の排気マニホルドに面する。その結果、排気マニホルドガスケットの両側ともが減摩コーティングで覆われなければならない。
【0006】
排気マニホルドガスケットは一般に一連の取付け穴を有するよう構成され、各々はエンジンの締結具を受取るためにある。図1を参照して、従来の排気マニホルドガスケットが開示される。この先行技術の排気マニホルドガスケットでは、取付け穴は排気マニホルドガスケットのそれぞれの側に対角線上に間隔をおいて配置され、エンジンの締結具の構成と一致する。より具体的には、排気マニホルドガスケットは複数の開口部を規定する。開口部は軸Aに沿って規定される。各開口部のそれぞれの側に1つの取付け穴が規定される。各開口部の取付け穴は開口部をわたって対角線に配置され、その結果取付け穴の間の軸Bが開口部の間の軸Aと垂直でない角度で交差する。相補的な孔の組は存在しないので、
エンジンの両側に適合するためには排気マニホルドガスケットを設置中、反転させなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−42295号公報
【特許文献2】特開平9−292027号公報
【特許文献3】実願昭63−30943号(実開平1−69967号)のマイクロフィルム
【特許文献4】実願昭63−140510号(実開平2−61170号)のマイクロフィルム
【特許文献5】実願昭63−139605号(実開平2−61166号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の排気マニホルドガスケットについては、V字形のエンジンの一方側では排気マニホルドガスケットの1つの表面が排気マニホルドに面し、エンジンの他方側では排気マニホルドガスケットの反対側の表面が排気マニホルドに面する。そのため、コーティングは排気マニホルドに接する表面にしか必要でないにもかかわらず、排気マニホルドガスケット全体が減摩コーティングで覆われなければならない。減摩コーティングは比較的高価である。したがって、排気マニホルドガスケットを両側ともコーティングすることは、排気マニホルドガスケットの片側のみをコーティングするよりも費用がかかる。
【0009】
したがって、関連技術の欠点を克服し、排気マニホルドガスケットのコストを低減する機会がある。
【0010】
本発明の他の利点は、それが添付の図面に関連して考慮され、以下の詳細な説明を参照することによって一層よく理解されるにつれて、容易に認識されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】先行技術の排気マニホルドガスケットの平面図である。
【図2】主題発明のエンジン、排気マニホルドおよび排気マニホルドガスケットの部分的分解斜視図である。
【図3a】排気マニホルドガスケットの第1の実施例の平面図である。
【図3b】図3aの排気マニホルドガスケットの部分の断面の側面図である。
【図4】図1の排気マニホルドガスケットの別の平面図である。
【図5】排気マニホルドガスケットの別の実施例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい実施例の詳細な説明
図を参照して、いくつかの図全体を通じて同じ数字は同じまたは対応する部品を示し、排気マニホルドガスケットは一般に10で示される。排気マニホルドガスケット10は、好ましくはV字形の構成を有するエンジン12に設置するよう適合可能である。しかしながら、排気マニホルドガスケット10は、直列形エンジンを含むがそれに限定されない様々な他の構成を有するエンジンに設置されてもよいことも理解される。
【0013】
図2を参照して、排気マニホルド16は、エンジン12のシリンダヘッド14に取付けられ、排気ガスがシリンダヘッド14を出ると排気ガスを受取る。排気マニホルド16は排気システムによって排気ガスを運ぶ。V字形のエンジン12はさらに、示されない第2のシリンダヘッドを含む。第2の排気マニホルドもさらに示されないが、第2のシリンダヘッドに取付けられる。締結具30は、排気マニホルド16および第2の排気マニホルドをエンジン12に取付けるためにエンジン12のそれぞれの側に構成される。好ましくは、締結具30は、排気マニホルドガスケット10および排気マニホルド16をエンジン12に固定するナット31を伴うボルトである。エンジン12の一方側での締結具30の構成は、エンジン12の他方側の締結具(示されない)の構成の鏡像でもよい。しかしながら、排気マニホルドガスケット10の設計に起因して、排気マニホルドガスケット10が設置されるのがエンジン12のいずれの側であるかにかかわらず、排気マニホルドガスケット10の同じ側が排気マニホルド16に面する。本発明の排気マニホルドガスケット10のこの特徴の重要性は、下記にさらに詳細に説明される。
【0014】
高温の静的シール10としても知られる排気マニホルドガスケット10は、減摩コーティング11を有する。耐熱性である減摩コーティング11は、排気マニホルドガスケット10の、排気マニホルド16に接することとなる表面13に適用されるのが好ましい。減摩コーティング11は、好ましくはモリブデンまたは二硫化モリブデンなどのモリブデンを含む化合物を含み、それは優れた耐摩擦特性を与える。しかしながら、他の減摩コーティングが用いられてもよい。
【0015】
排気マニホルドガスケット10はエンボス加工された鋼、高温繊維材料、グラファイト
、セラミック組成物、または、排気システムの排気マニホルドガスケットに一般に用いられる他の種類の材料でできていてもよい。さらに、排気マニホルドガスケット10は複数の層を含んでいてもよい。
【0016】
図3aおよび図4を参照して、排気マニホルドガスケット10は、排気ガスがシリンダヘッド14から排気マニホルド16へ通ることを可能にするために、軸21を有する開口部20を規定する。開口部20はガスケット10の軸Aに沿って位置する。排気マニホルドガスケット10は少なくとも2つのローブ18を有し、各ローブが1つの開口部20を規定するのが好ましい。しかしながら、排気マニホルドガスケット10は1つのローブ18のみを含んでもよいことが理解される。ローブ18は比較的より狭いネック領域19によって隔てられてもよい。
【0017】
図2に示されるように、2つの別個の排気マニホルドガスケット10がエンジン12に設置されてもよい。代替的には、図4に示されるように、4つの開口部20を規定する別の排気マニホルドガスケット110がエンジン12に設置されてもよい。
【0018】
各ローブ18は、排気マニホルドガスケット10のエンジン12への取付けを容易にするために、各開口部20を囲むエプロン22を含む。より具体的には、排気マニホルドガスケット10はブランクから製造される。ブランクは、好ましくは1枚の材料から打ち抜かれて外部周囲24を有し、それは、図3aに示されるように、最終的な排気マニホルドガスケット10において変わらずに残るのが好ましい。代替的には、図4で網掛けされたエプロン22の余剰部分21は、開口部20から延在するタブ26を残して、切除されてもよい。しかしながら、余剰部分21は排気マニホルドガスケット10のエンジン12への取付けに影響せず、取除くのに付加的な処理を要するので、余剰部分21が排気マニホルドガスケット10に残存するのが好ましい。
【0019】
図3bを参照して、排気マニホルドガスケット10の断面が示される。排気マニホルドガスケット10は、開口部20のまわりで分離する2つの層を有するのが好ましい。
【0020】
取付け穴28の第1の組は、各開口部20を囲むエプロン22に規定される。取付け穴28は植込ボルトまたは締結具(例えばボルト)30を受取る。取付け穴28は、開口部20のそれぞれの側に対角線上に間隔をおいて配置され、すなわち各開口部20のそれぞれの側に1つの孔28が規定される。取付け穴28は、エンジン10の一方側の植込ボルト30の構成に対応する。取付け穴28は、取付け穴28の間の線Bが開口部20間の軸Aと垂直でない角度で交差するような間隔で配置される。
【0021】
取付け穴32の第2の組も、各開口部20を囲むエプロン22に規定される。取付け穴28の第1の組のように、取付け穴32の第2の組は、開口部20のそれぞれの側に対角線上に間隔をおいて配置される。取付け穴32の第2の組は、取付け穴28の第1の組に対して開口部20の中心を通る軸Dのまわりに対称である。さらに、取付け穴32は取付け穴32の間の線Cが軸Aと垂直でない角度で交差するような間隔で配置される。取付け穴32の第2の組の位置により、排気マニホルドガスケット10の、排気マニホルド16に接する表面13がエンジン12のそれぞれの側で同じままであるように、同じ排気マニホルドガスケット10をエンジン12の他方側に設置することが可能になる。換言すれば、排気マニホルドガスケット10は、排気マニホルドガスケット10を反転させることなく、エンジン12のそれぞれの側に単純に設置することができる。そのためガスケット10は、軸を包含する長手方向の対称面についての鏡映対称性を有する。
【0022】
取付け穴28、32の2つの個別の組に起因して、また各取付け穴28、32が対角線上に間隔をおいて配置されることにも起因して、排気マニホルドガスケット10は、植込
ボルト30の構成がエンジン12の一方側と他方側で同一か鏡像かにかかわらず、表面13が排気マニホルド16に接するように設計される。その結果、比較的費用のかかる減摩コーティングは排気マニホルドガスケット10の片側13にしか必要ではなく、排気マニホルドガスケットの製造コストを減じる。さらに、排気マニホルドガスケット10をエンジン12に設置するために反転させることが要求されないので、排気マニホルドガスケット10はエンジン12に設置するのが容易になる。
【0023】
明らかに、本発明の多くの修正および変形が上記の教示に照らして可能である。本発明は、添付の請求項の範囲内で特に記載された以外のやり方で実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスケットアセンブリであって、
関連する軸を備えた開口部を各々有する少なくとも2つのローブを有するガスケット本体と、
前記ローブの各々において前記それぞれの開口部のまわりに形成される4つの取付け穴とを含み、
前記ガスケットは、前記開口部の前記軸を包含する長手方向の対称面についての鏡映対称性を有する、ガスケットアセンブリ。
【請求項2】
前記ガスケット本体は、前記少なくとも2つのローブを接続する比較的より狭いネック領域を含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記ガスケット本体は、前記ガスケット本体の1つの表面のみに適用される低摩擦材料のコーティングを含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
エンジンブロックにシールを与える方法であって、
同一の構造を有する第1のガスケットおよび第2ガスケットを準備するステップを含み、各々は流体を運搬する開口部の少なくとも一部を有し、各ガスケットは取付け穴の第1の組および取付け穴の第2の組を有し、
取付け穴の第1の組を用いて第1のガスケットをエンジンの一部分に取付けるステップと、
取付け穴の第2の組を用いて第2のガスケットをエンジンの別の部分に取付けるステップとを含む、方法。
【請求項5】
第1のガスケットを取付けるステップは第1のガスケットの取付け穴の第2の組を使用することなく、第2のガスケットを取付けるステップは第1のガスケットの取付け穴の第1の組を使用することのない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ガスケットの各々は、開口部の軸を包含する対称面を通じて対称なように形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
金属のガスケットを作り上げるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エンジンであって、流体を運搬し封止される開口部の2つのブロックと、開口部の前記ブロックのそれぞれ1つに各々関連した2つの個別の取付けボルト構成と、
同一に構成された1対のガスケットとを有し、ガスケットの各々は、前記エンジンブロックの前記流体を運搬する開口部に関連した複数の開口部を伴って形成され、ガスケットの各々は取付け穴の2つの組を有し、その一方の組は取付けボルト構成の一方に一致し、他方の組は前記取付けボルト構成の他方に一致する、エンジン。
【請求項9】
エンジンへの設置に適合可能な排気マニホルドガスケットであって、前記排気マニホルドガスケットは、
開口部を規定するローブと、
前記排気マニホルドガスケットのエンジンへの取付けを容易にするための前記開口部を囲むエプロンと、
前記エプロンに規定された取付け穴の第1の組とを含み、取付け穴の第1の組は前記開口部のそれぞれの側に対角線上に間隔をおいて配置され、エンジンの一方側に構成された締結具に対応し、さらに、
前記エプロンに規定された取付け穴の第2の組を含み、取付け穴の第2の組は前記開口
部の各側に対角線上に間隔をおいて配置され、エンジンの反対側に構成された締結具に対応する、排気マニホルドガスケット。
【請求項10】
前記排気マニホルドガスケットの一方側に減摩コーティングをさらに含む、請求項9に記載の排気マニホルドガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−74922(P2011−74922A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−249487(P2010−249487)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2007−509575(P2007−509575)の分割
【原出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】