排気浄化フィルタの故障検知装置
【課題】短時間の故障の検知が可能でありながら、誤検知が少なくかつ電力の消費量が少ないDPFの故障検知装置を提供すること。
【解決手段】DPFの故障検知装置は、集塵電極への集塵電圧の印加を開始した後、集塵電圧を印加したまま測定電極に測定電圧を印加することでセンサ素子の静電容量を測定する。また、この静電容量の測定値CCOLが完了判定値CCOL_THを上回ったことに応じて集塵電極への集塵電圧の印加を停止する。さらに、測定電極に測定電圧を印加することでセンサ素子の静電容量を測定し、この測定値CPMに基づいて、DPFの故障を判定する。
【解決手段】DPFの故障検知装置は、集塵電極への集塵電圧の印加を開始した後、集塵電圧を印加したまま測定電極に測定電圧を印加することでセンサ素子の静電容量を測定する。また、この静電容量の測定値CCOLが完了判定値CCOL_THを上回ったことに応じて集塵電極への集塵電圧の印加を停止する。さらに、測定電極に測定電圧を印加することでセンサ素子の静電容量を測定し、この測定値CPMに基づいて、DPFの故障を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化フィルタの故障検知装置に関する。特に、静電集塵式の粒子状物質センサを用いた排気浄化フィルタの故障検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路に、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタを設け、粒子状物質の排出量を低減する技術は広く用いられている。また、排気浄化フィルタが設けられた車両には、この排気浄化フィルタの故障を検知するための装置も設けられる。このような排気浄化フィルタの故障検知装置として、従来、以下に示すようなものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、排気浄化フィルタの下流側に排気中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置を設け、この粒子状物質検出装置の出力に基づいて排気浄化フィルタの故障を検知する故障検知装置が示されている。
【0004】
特許文献2には、排気浄化フィルタの上流側と下流側にそれぞれ粒子状物質検出装置を設けた故障検知装置が示されている。この故障検知装置は、各センサからの出力に基づいて、排気浄化フィルタに流入した粒子状物質の量と排気浄化フィルタから流出した粒子状物質の量との割合を算出し、算出した割合を、フィルタが正常な状態における割合と比較することにより、排気浄化フィルタの故障を検知する。
【0005】
また、このような故障検知装置に用いられる粒子状物質検出装置としては、従来、以下に示すようなものが提案されている。
【0006】
例えば、特許文献3には、多孔質の導電性物質から構成された検出電極を備える粒子状物質検出装置が示されている。この粒子状物質検出装置は、粒子状物質が自然に付着することによる検出電極の電気抵抗値の変化を、一対の導電性電極によって測定し、この測定値から排気に含まれる粒子状物質の量を検出する。
【0007】
特許文献4には、静電集塵式の粒子状物質検出装置が提案されている。この静電集塵式の粒子状物質検出装置では、一対の電極板で構成された電極部を排気管内に設け、この電極部に所定の電圧を印加することで粒子状物質を付着させる。次に、粒子状物質が付着した電極部の静電容量等の電気的特性を測定することにより、排気管内の排気の粒子状物質の濃度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−315275号公報
【特許文献2】特開2007−132290号公報
【特許文献3】特開2006−266961号公報
【特許文献4】特開2008−139294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、特許文献3の粒子状物質検出装置は、検出電極に粒子状物質が自然に付着することによる検出電極の電気的特性の変化に基づいて、排気中の粒子状物質の量を検出する。しかしながら、粒子状物質が検出電極の表面にまばらに付着した状態では、検出電極の電気的特性に大きな変化はなく、排気中の粒子状物質を検出することは難しい。このため、検出電極に粒子状物質が付着し始めてから、検出電極の電気的特性に変化が表れるまでに長い時間がかかってしまう。より具体的には、定常運転状態にある車両では、電気的特性に変化が表れるまでに1,2時間程度かかる場合もある。したがって、このような粒子状物質検出装置を排気浄化フィルタの故障検知装置に用いた場合、実際に排気浄化フィルタの故障を検知するまでに時間がかかってしまう。
【0010】
また、特許文献4の粒子状物質検出装置は、上述の特許文献3の粒子状物質検出装置とは異なり、電極部に電圧を印加することにより、電極部に粒子状物質を積極的に付着させる。このため、この粒子状物質検出装置では、特許文献3の粒子状物質検出装置と比較して、短時間で排気中の粒子状物質を検出することができる。
【0011】
ところで、このような粒子状物質検出装置では、粒子状物質の堆積量には限度がある。すなわち、堆積量が上記限界を超えると、堆積量の変化にかかわらず電極部の電気的特性に変化が表れなくなってしまい、結果として排気中の粒子状物質を検出できなくなるおそれがある。
このため、粒子状物質の集塵を積極的に行う特許文献4の粒子状物質検出装置では、短時間で上述の堆積量の限界まで達してしまうため、長時間に亘って検出することが難しい。しかしながら、実際の測定においては、例えば、フィルタから剥がれ落ちた粒子状物質の塊が電極部に付着する等、電極部の電気的特性を短時間で大きく変動させる要因が存在する。このため、長時間に亘る検出が困難な特許文献4の粒子状物質検出装置を故障検知装置に用いた場合、上述のような不規則な変動要因を取り除くことができず、誤検知するおそれがある。
【0012】
また、堆積量の限界に達した場合、電極部の再生、すなわち、電極部に付着した粒子状物質を燃焼する等して除去する必要がある。しかしながら、上述のように粒子状物質を積極的に付着させる特許文献4の粒子状物質検出装置では、電極部の再生を行う回数が多くなってしまうため、電力の消費量が多くなってしまうおそれがある。
【0013】
本発明は、短時間の故障の検知が可能でありながら、誤検知が少なくかつ電力の消費量が少ない排気浄化フィルタの故障検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関(1)の排気通路(4)のうち、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタ(3)の下流に設けられ、排気に含まれる粒子状物質が付着するセンサ素子(12)を備える排気浄化フィルタの故障検知装置であって、前記センサ素子は、排気に含まれる粒子状物質を前記センサ素子に付着させるための集塵電圧が印加される第1電極部(123A,128A)と、前記センサ素子の電気的特性を測定するための測定電圧が印加される第2電極部(127A,127B)と、を有し、前記故障検知装置は、前記第1電極部への集塵電圧の印加を開始する電圧印加開始手段(5,17)と、前記集塵電圧の印加を開始し、前記第2電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第1測定手段(5,17)と、所定の条件が満たされたことに応じて前記第1電極部への集塵電圧の印加を停止する電圧印加停止手段(5,17)と、前記集塵電圧の印加を停止した後、前記第2電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第2測定手段(5,17)と、前記第2測定手段の測定値(CPM)に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定する故障判定手段(5,17)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記第1電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間(TCOL_MAX)が経過するまでの間に前記所定の条件が満たされなかった場合には、前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記集塵電圧は、前記測定電圧に比して大きいことを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するため請求項4に記載の発明は、内燃機関(1)の排気通路(4)のうち、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタ(3)の下流に設けられ、排気に含まれる粒子状物質が付着するセンサ素子(12)を備える排気浄化フィルタの故障検知装置であって、前記センサ素子は、排気に含まれる粒子状物質を前記センサ素子に付着させるための集塵電圧、及び、前記センサ素子の電気的特性を測定するための前記集塵電圧に比して小さい測定電圧の何れかが選択的に印加される電極部(323A,327A)を有し、前記故障検知装置は、前記電極部に所定の時間に亘って集塵電圧を印加する電圧印加手段(5,17)と、前記集塵電圧を印加した後、前記電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第1測定手段(5,17)と、所定の条件が満たされたか否かを判定する判定手段(5,17)と、前記所定の条件が満たされたと判定された後、前記電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第2測定手段(5,17)と、前記第2測定手段の測定値(CPM)に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定する故障判定手段(5,17)と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記判定手段により前記所定の条件が満たされていないと判定された場合には、前記電圧印加手段による集塵電圧の印加、及び、前記第1測定手段による測定を再び行うことを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間(TCOL_MAX)が経過するまでの間に前記所定の条件が満たされなかった場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記内燃機関の運転状態が過渡運転状態であるか否かを判定する過渡運転状態判定手段(5,17)をさらに備え、前記運転状態が過渡運転状態でない場合には、前記集塵電圧を印加しないことを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記内燃機関の運転状態に基づいて、所定の自然付着期間内における粒子状物質の排出量が所定の量より少ないか否かを判定する排出量判定手段(5,17)をさらに備え、前記自然付着期間内における粒子状物質の排出量が所定の量よりも少ないと判定された場合には、前記故障判定手段による前記排気浄化フィルタの故障の判定を行わないことを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記故障判定手段は、前記第2測定手段の測定値の、所定の自然付着期間に亘る変化量(ΔC)に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定することを特徴とする。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、粒子状物質の排出量が所定量よりも少ない運転状態で前記内燃機関が運転された時間(TIDLE)を、前記自然付着期間(TAFTER)から減算した時間を有効排出時間として、前記故障判定手段は、前記2測定手段の測定値の前記有効排出時間に亘る変化率(∠C)が、所定の判定値(∠CTH)よりも小さい場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記所定の条件は、前記第1測定手段の測定値(CCOL)又は当該測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値(CCOL_TH)を上回ることを含むことを特徴とする。
【0025】
請求項12に記載の発明は、請求項1から7、及び11の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気通路のうち、前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度を検出又は推定する上流濃度検出手段と、前記第2測定手段の測定値に基づいて、前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度を算出する下流側濃度算出手段と、をさらに備え、前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度(DF)と前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度(DR)とに基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定することを特徴とする。
【0026】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度と、前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度とに基づいて、前記排気浄化フィルタに捕集される粒子状物質の割合を算出する捕集率算出手段をさらに備え、前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタに捕集される粒子状物質の割合(X)が所定値(XTH)よりも大きい場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする。
【0027】
請求項14に記載の発明は、請求項1から13の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼除去する再生手段をさらに備え、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了した後、所定の禁止期間を経過するまで、前記故障判定手段による故障の判定を禁止することを特徴とする。
【0028】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタに流入した粒子状物質の積算量(CNT_PM)を算出する積算量算出手段をさらに備え、前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記積算量が所定量(W_END_REGEN)を超えるまでの期間であることを特徴とする。
【0029】
請求項16に記載の発明は、請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量を推定する捕集量推定手段をさらに備え、前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量が所定量を超えるまでの期間であることを特徴とする。
【0030】
請求項17に記載の発明は、請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタに流入する粒子状物質のうち捕集される粒子状物質の割合を示す捕集率を推定する捕集率推定手段をさらに備え、前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記捕集率が所定値を超えるまでの期間であることを特徴とする。
【0031】
請求項18に記載の発明は、請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してからの経過時間を計測する計時手段をさらに備え、前記禁止期間は、前記計時手段による経過時間の計測を開始してから当該経過時間が所定時間を超えるまでの期間であることを特徴とする。
【0032】
請求項19に記載の発明は、請求項1から13の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼除去する再生手段と、前記排気浄化フィルタの温度を推定又は検出するフィルタ温度検出手段と、をさらに備え、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了した後、前記排気浄化フィルタの温度(TEMP_DPF)が粒子状物質の燃焼温度(T_PM)以上である場合には、前記故障判定手段による故障の判定を禁止することを特徴とする。
【0033】
請求項20に記載の発明は、請求項1から19の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記センサ素子に付着した粒子状物質を除去する除去手段をさらに備え、前記除去手段は、前記センサ素子の電気的特性の測定値(CREG)が所定の閾値(CREG_)より大きくなったことに基づいて前記センサ素子に付着した粒子状物質を除去し、前記測定値に対する所定の閾値は、前記センサ素子の粒子状物質の付着量に対する前記センサ素子の電気的特性の変化率が所定値未満になる領域内に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
請求項1に記載の発明によれば、第1電極部に集塵電圧を印加した後、所定の条件が満たされたことに応じて、集塵電圧の印加を停止し、センサ素子の電気的特性を第2電極部に印加した測定電圧によって測定する。さらに、この電気的特性の測定値に基づいて、排気浄化フィルタの故障を判定する。
ここで、センサ素子の電気的特性には、センサ素子に十分な量の粒子状物質が付着するまでは変化しない一方、付着した粒子状物質の堆積量が過大となっても変化しないという特性がある。
これに対して本発明では、第1電極部に集塵電圧を印加することにより、十分な量の粒子状物質を短時間でセンサ素子に付着させることができ、センサ素子の電気的特性に変化が現れる状態を早期に作り出すことができる。このため、例えば30秒ほどの短時間で電気的特性に変化が現れる状態を作り出し、排気浄化フィルタの故障の判定を開始することができる。すなわち、応答性が高いため、車両運転中の任意のタイミングで、排気浄化フィルタの故障を判定することができる。
また、センサ素子の電気的特性を測定し、排気浄化フィルタの故障を判定する際には、第1電極部に対する集塵電圧の印加を行わないため、粒子状物質はゆっくりと自然にセンサ素子に付着し、センサ素子の電気的特性は緩やかに変化していくことから、長時間に亘って排気浄化フィルタの故障を判定できる。したがって、上述のような不規則な変動要因を除き、排気浄化フィルタの故障の誤検知を少なくすることができる。
また、本発明では、第1電極部と第2電極部の2つの電極部を備えるため、第1電極部に集塵電圧を印加して粒子状物質の集塵を行いつつ、第2電極部に測定電圧を印加することでセンサ素子の電気的特性を測定することができる。このため、集塵の停止時期をリアルタイムで精度良く判定できることからも、上述の効果が期待できる。
また、長時間に亘って排気浄化フィルタの故障を判定できるため、集塵、測定、再生の行程を繰り返す回数を低減でき、集塵及びヒーターへの電圧の印加に伴う電力の消費を低減できる。
【0035】
請求項2に記載の発明によれば、第1電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間が経過するまでの間に、上記所定の条件が満たされなかった場合、すなわち、第1測定手段の測定値又はこの測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値を上回らなかった場合には、排気浄化フィルタは正常であると判定する。排気浄化フィルタが正常である場合には、内燃機関から排出された粒子状物質のほとんどはこの排気浄化フィルタに捕集される。このため、排気浄化フィルタの下流に設けられたセンサ素子に流入する粒子状物質の量は非常に少なく、センサ素子の電気的特性に変化はあらわれにくい。本発明によれば、このようなセンサ素子の特性を利用して排気浄化フィルタの故障を判定することにより、排気浄化フィルタの故障の検知精度を向上することができる。
【0036】
請求項3に記載の発明によれば、測定電圧よりも大きな集塵電圧を第1電極部に印加する。これにより、集塵電圧を印加した際には、センサ素子に粒子状物質を積極的に付着させることができる。一方、測定電圧を印加した際には、センサ素子に粒子状物質が不要に付着するのを防止することができる。
【0037】
請求項4に記載の発明によれば、電極部に集塵電圧を印加した後、所定の条件が満たされたことに応じて、センサ素子の電気的特性を電極部に印加した測定電圧によって測定する。さらに、この電気的特性の測定値に基づいて、排気浄化フィルタの故障を判定する。
これにより、十分な量の粒子状物質を短時間でセンサ素子に付着させることができ、センサ素子の電気的特性に変化が現れる状態を早期に作り出すことができる。このため、例えば30秒ほどの短時間で電気的特性に変化が現れる状態を作り出し、排気浄化フィルタの故障の判定を開始することができる。すなわち、応答性が高いため、車両運転中の任意のタイミングで、排気浄化フィルタの故障を判定することができる。
また、センサ素子の電気的特性を測定し、排気浄化フィルタの故障を判定する際には、電極部に対する集塵電圧の印加を行わないため、粒子状物質はゆっくりと自然にセンサ素子に付着し、センサ素子の電気的特性は緩やかに変化していくことから、長時間に亘って排気浄化フィルタの故障を判定できる。したがって、上述のような不規則な変動要因を除き、排気浄化フィルタの故障の誤検知を少なくすることができる。
また、長時間に亘って排気浄化フィルタの故障を判定できるため、集塵、測定、再生の行程を繰り返す回数を低減でき、集塵及びヒーターへの電圧の印加に伴う電力の消費を低減できる。
【0038】
請求項5に記載の発明によれば、上記所定の条件が満たされていないと判定された場合には、集塵電圧の印加及びセンサ素子の電気的特性の測定を再び行う。ここで例えば、第1測定手段の測定値又はこの測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値を上回ることを上記所定の条件としたとする。このような条件を課した場合、本発明によれば、センサ素子の電気的特性に変化が現れる状態をより確実かつ早期に作り出すことができる。したがって、排気浄化フィルタの故障の検知にかかる時間を短縮することができる。
【0039】
請求項6に記載の発明によれば、電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間が経過するまでの間に、上記所定の条件が満たされなかった場合、すなわち、第1測定手段の測定値又はこの測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値を上回らなかった場合には、排気浄化フィルタは正常であると判定する。排気浄化フィルタが正常である場合には、内燃機関から排出された粒子状物質のほとんどはこの排気浄化フィルタに捕集される。このため、排気浄化フィルタの下流に設けられたセンサ素子に流入する粒子状物質の量は非常に少なく、センサ素子の電気的特性に変化はあらわれにくい。本発明によれば、このようなセンサ素子の特性を利用して排気浄化フィルタの故障を判定することにより、排気浄化フィルタの故障の検知精度を向上することができる。
【0040】
請求項7に記載の発明によれば、内燃機関の運転状態が過渡運転状態でない場合、すなわち、内燃機関の運転状態が定常運転状態である場合には、集塵電圧を印加しない。内燃機関が定常運転状態にある場合には、粒子状物質の排出量は非常に少ない。このため、定常運転状態にある場合には、集塵電圧を印加しても、センサ素子の電気的特性に変化が現れる程の量の粒子状物質を、短時間でセンサ素子に付着させることは難しい。したがって、このような過渡運転状態には集塵電圧を印加しないようにすることにより、集塵電圧の印加にかかる無駄な電力の消費を抑制することができる。
【0041】
請求項8に記載の発明によれば、所定の自然付着期間内における粒子状物質の排出量が所定の量よりも少ない場合には、排気浄化フィルタの故障の判定を行わない。センサ素子に粒子状物質を自然に付着させている自然付着期間において粒子状物質の排出量が少ない場合、センサ素子の電気的特性の変化は、排気浄化フィルタの状態に係わらず小さいと考えられるため、高い精度で故障を検知することができない。本発明によれば、このような自然付着期間には、故障の判定を行わないとすることにより、排気浄化フィルタの故障の検知精度が低下するのを防止することができる。
【0042】
請求項9に記載の発明によれば、センサ素子の電気的特性の測定値の自然付着期間に亘る変化量に基づいて、排気浄化フィルタの故障を判定する。排気浄化フィルタが故障している場合、内燃機関から排出された粒子状物質のうち幾らかは排気浄化フィルタを通過してしまい、センサ素子に到達する。このため、上述の自然付着期間に亘る測定値の変化量に大きな影響が現れるものと考えられる。本発明によれば、このような排気浄化フィルタの状態により大きな影響があらわれる上記変化量に基づいて故障を判定することにより、排気浄化フィルタの故障の検知精度をさらに向上することができる。
【0043】
請求項10に記載の発明によれば、粒子状物質の排出量が所定量よりも少ない運転状態で内燃機関が運転された時間を、自然付着期間から減算した時間を有効排出時間とし、この有効排出時間に亘るセンサ素子の電気的特性の測定値の変化率が、所定の判定値よりも小さい場合には、排気浄化フィルタは正常であると判定する。このように、アイドル運転状態等の粒子状物質の排出量が少ない運転状態で内燃機関が運転された時間を除いた有効排出時間に亘る電気的特性の変化率に基づいて排気浄化フィルタの故障を判定することにより、排気浄化フィルタの故障の検知精度をさらに向上することができる。
【0044】
請求項11に記載の発明によれば、第1測定手段の測定値又はこの測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値を上回ることに応じて、第1電極部への集塵電圧の印加を停止する。これにより、センサ素子の電気的特性に変化が現れる状態を、より確実に早期に作り出すことができる。したがって、排気浄化フィルタの故障の検知にかかる時間を短縮することができる。また、電気的特性に変化が現れてから集塵電圧の印加を停止することにより、余分な電力の消費を低減することができる。
【0045】
請求項12に記載の発明によれば、排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度に加えて、排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度に基づいて、排気浄化フィルタの故障を判定する。これにより、排気浄化フィルタの故障の判定精度をさらに向上することができる。例えば、低負荷運転状態やアイドル運転状態では、内燃機関から排出される粒子状物質の量が少なく、またその殆どは排気浄化フィルタに捕集されてしまうため、排気浄化フィルタの下流側に排出される粒子状物質の量は非常に少ない。このため、例えば下流側の粒子状物質の濃度のみに基づいて排気浄化フィルタの故障を判定した場合、低負荷運転状態やアイドル運転状態では粒子状物質の濃度を高い精度で検出できないため、排気浄化フィルタの故障を精度良く判定することができない。これに対して本発明では、下流側の粒子状物質の濃度に加えて、この下流側よりも高い精度で検出できる上流側の粒子状物質の濃度に基づいて排気浄化フィルタの故障を判定することにより、このような低負荷運転状態やアイドル運転状態においても排気浄化フィルタの故障を精度良く判定することができる。
【0046】
請求項13に記載の発明によれば、排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度と、排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度とに基づいて、排気浄化フィルタに捕集される粒子状物質の割合、すなわち排気浄化フィルタの捕集率を算出し、この捕集率に応じて排気浄化フィルタの故障を判定する。これにより、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0047】
排気のうち粒子状物質のみを捕集できるように無数の細孔が形成された排気浄化フィルタでは、捕集した粒子状物質を燃焼除去した後、粒子状物質がこれら細孔を埋めるまでの間は、排気浄化フィルタの状態にかかわらず捕集性能が一時的に低下する。そこで、請求項14に記載の発明によれば、排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼除去した後、所定の禁止期間が経過するまで、排気浄化フィルタの故障の判定を禁止する。これにより、上記燃焼除去後、粒子状物質が細孔を埋めるまで排気浄化フィルタの下流に排出される粒子状物質により、排気浄化フィルタが故障したと誤って判定することを防止することができる。すなわち、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0048】
再生手段により粒子状物質を燃焼除去してから、排気浄化フィルタに新たに流入した粒子状物質の積算量が所定量を超えた場合には、排気浄化フィルタの無数の細孔は粒子状物質により埋められたと考えられる。そこで、請求項15に記載の発明によれば、上記燃焼除去が終了してから、排気浄化フィルタに流入した粒子状物質の積算量が所定量を超えるまでの期間を禁止期間とすることにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0049】
再生手段により粒子状物質を燃焼除去してから、排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量が所定量を超えた場合には、排気浄化フィルタの無数の細孔は粒子状物質により埋められたと考えられる。そこで、請求項16に記載の発明によれば、上記燃焼除去が終了してから、排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量が所定量を超えるまでの期間を禁止期間とすることにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0050】
請求項17に記載の発明によれば、再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、排気浄化フィルタの捕集率が所定値を超えるまでの期間を禁止期間とすることにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0051】
再生手段により粒子状物質を燃焼除去してから、所定の時間が経過した場合には、排気浄化フィルタの無数の細孔は粒子状物質により埋められたと考えられる。そこで、請求項18に記載の発明によれば、上記燃焼除去が終了してから経過した時間が所定時間を超えるまでの期間を禁止期間とすることにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0052】
排気浄化フィルタが故障した状態であっても、再生手段により粒子状物質の燃焼除去が終了した後では、新たに流入する粒子状物質も余熱により排気浄化フィルタで燃焼してしまうため、排気浄化フィルタの下流に排出される粒子状物質の量は少ない。そこで、請求項19に記載の発明によれば、上記燃焼除去が終了した後、排気浄化フィルタの温度が粒子状物質の燃焼温度以上である場合には、故障の判定を禁止する。これにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0053】
請求項20に記載の発明によれば、センサ素子の電気的特性の測定値が所定の閾値より大きくなったことに基づいてセンサ素子に付着した粒子状物質を除去する。またこの測定値に対する閾値を、センサ素子の粒子状物質の付着量に対するセンサ素子の電気的特性の変化率が所定値未満になる領域内、つまりセンサ素子の感度が低い領域内に設定する。これにより、センサ素子を常に感度の良い領域で使用することができるので、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係るDPFの故障検知装置を含む、内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】上記実施形態に係るPMセンサの概略構成を示す図である。
【図3】上記実施形態に係るセンサ素子の斜視図である。
【図4】上記実施形態に係るセンサ素子の分解斜視図である。
【図5】上記実施形態に係るセンサ素子の集塵部内にPMが全面に付着して堆積したときの様子を模式的に示した図である。
【図6】上記実施形態に係るセンサ素子の静電容量の時間変化を示す図である。
【図7】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】上記実施形態に係るセンサ素子の集塵部にPMを自然付着させた場合におけるPMの堆積量と、集塵部の静電容量の時間変化との関係を示す図である。
【図11】静電容量の変化量に基づいてDPFの故障判定を行う方法を説明するための図である。
【図12】静電容量の変化率に基づいてDPFの故障判定を行う方法を説明するための図である。
【図13】2つの異なる運転条件の下でエンジンを運転させた場合における集塵部の静電容量の時間変化を示す図である。
【図14】2つの異なる運転条件の下での静電容量の時間変化を重ねて示した図である。
【図15】2つの異なる運転条件の下での静電容量の時間変化を重ねて示した図である。
【図16】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の制御例を示すタイムチャートである。
【図17】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の制御例を示すタイムチャートである。
【図18】本発明の第2実施形態に係るPMセンサのセンサ素子の分解斜視図である。
【図19】上記実施形態に係るセンサ素子の集塵部内にPMが全面に付着して堆積したときの様子を模式的に示した図である。
【図20】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図21】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図22】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図23】所定のPM濃度の排気の下でPMセンサを作動させた場合における、静電容量の測定値の変化を示す図である。
【図24】本発明の第3実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図25】本発明の第4実施形態に係るDPFの故障検知装置を含む、エンジン及びその制御装置の構成を示す図である。
【図26】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図27】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図28】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図29】本発明の第5実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図30】DPF再生運転を実行した後におけるDPF下流の排気のPM濃度の特徴的な振る舞いを示す図である。
【図31】本発明の第6実施形態に係るDPF故障検知処理の実行を判断する手順を示すフローチャートである。
【図32】センサ素子に堆積したPMの量と、このセンサ素子の静電容量との関係を示す図である。
【図33】本発明の第7実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図34】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図35】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図36】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、第2実施形態以後の説明において、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0056】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置を含む、内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。内燃機関(以下単に「エンジン」という)1は、各気筒内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンであり、各気筒には図示しない燃料噴射弁が設けられている。これら燃料噴射弁は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)5により電気的に接続されており、燃料噴射弁の開弁時間及び閉弁時間は、ECU5により制御される。
【0057】
エンジン1の排気が流通する排気管4には、排気浄化フィルタ(以下、「DPF(Diesel Particulate Filter)」という)3と、排気に含まれる炭素を主成分とした粒子状物質(以下、「PM(Particulate Matter)」という)を検出する粒子状物質検出装置(以下、「PMセンサ」という)11とが、上流側からこの順で設けられている。
【0058】
DPF3は、多孔質体のフィルタ壁を備え、排気がこのフィルタ壁の微細な孔を通過する際、排気に含まれるPMを、フィルタ壁の表面及びフィルタ壁中の孔に堆積させることにより、これを捕集する。フィルタ壁の構成材料としては、例えば、チタン酸アルミニウムやコージェライト等を材料とした多孔質体が使用される。
【0059】
図2は、PMセンサ11の概略構成を示す図である。
PMセンサ11は、排気管4の内部のうちDPF3の下流側に設けられたセンサ素子12と、ECU5に接続され、このセンサ素子22を制御するセンサコントローラ17と、を備える。PMセンサ11は、以下に示すように、排気管4内を流通する排気に含まれるPMが付着したセンサ素子12の電気的特性を測定し、この測定値に基づいて、排気管内を流通する排気中のPMを検出する。
【0060】
センサコントローラ17は、集塵用DC電源13と、インピーダンス測定器14と、センサ素子12の温度を制御する温度制御装置15と、を含んで構成される。
【0061】
図3は、センサ素子12の斜視図である。図3に示すように、センサ素子12は、PMを含む排気が通過する通気孔を有しており、この通気孔により集塵部120が形成される。排気中に含まれるPMは、この集塵部120の内壁に付着して堆積する。
【0062】
図4は、センサ素子12の分解斜視図である。センサ素子12は、図4に示すように、一対の電極板130,131を、板状のスペーサ125A,125Bを介装して組み合わせ、ヒーター層122,129及びアルミナプレート121で挟持することにより構成される。これにより、電極板130,131、スペーサ125A,125Bに囲まれた集塵部120が形成される。
【0063】
電極板130は、誘電体層124と、集塵電極層123とを積層することにより形成される。また、電極板131は、誘電体層126と、測定電極層127と、集塵電極層128とを積層することにより形成される。
【0064】
測定電極層127は、一対の櫛形の測定電極127A,127Bを備える。具体的には、測定電極127A,127Bは、測定電極層127の一端側の集塵部120に対応する位置に形成された一対の櫛歯部と、この櫛歯部から他端側へかけて延びる一対の櫛本体部と、を含んで構成される。より具体的には、測定電極127A,127Bは、一方の櫛形の測定電極127Aの櫛歯部と他方の櫛形の測定電極127Bの櫛歯部とが相互に挟み合うように対向配置されている。
また、一対の櫛本体部は、インピーダンス測定器14に電気的に接続されている。
【0065】
ここで、測定電極層127に櫛形の測定電極127A,127Bを備える本実施形態のPM検出メカニズムについて説明する。
図5は、本実施形態のセンサ素子12の集塵部120内にPMが全面に付着して堆積したときの様子を模式的に示した図である。図5に示すように、集塵部120に集塵されたPMは、櫛形の測定電極127A,127Bの櫛歯部上に誘電体層を介して堆積する。このとき、隣接する測定電極127A,127B間におけるもれ電界が、堆積したPMによる影響を受け、測定電極127A,127B間の電気的特性が変化する。この電気的特性の変化は、PM堆積量に相関があることから、この電気的特性の変化を測定することにより、排気に含まれるPMを検出できる。なお、以下の説明において、センサ素子12の電気的特性とは、センサ素子12のうちPM堆積量に相関のある集塵部120の電気的特性を意味する。
【0066】
集塵電極層123,128は、タングステン導体層からなる集塵電極123A,128Aを備える。この集塵電極123A,128Aは、集塵電極層123,128の一端側の集塵部120に対応する位置に略正方形状に形成された導体部と、この導体部からアルミナ基板の他端側へかけて線状に延びる導線部と、を含んで構成される。
また、集塵電極123A,128Aの導線部は、集塵用DC電源13に電気的に接続されている。
なお、集塵電極123A、128Aの導体部の一辺の長さは、約10mmである。
【0067】
ヒーター層122,129は、ヒーター配線122A,129Aを備え、これらヒーター配線122A,129Aは、温度制御装置15に電気的に接続されている。
また、アルミナプレート121は、略矩形状のアルミナ基板であり、厚みは約1mmである。
【0068】
集塵用DC電源13は、集塵電極層123,128に備えられた集塵電極123A,128Aの導線部に電気的に接続されている。集塵用DC電源13は、ECU5から送信された制御信号に基づいて動作し、後述する測定電圧よりも大きい所定の集塵電圧を集塵電極層123,128間に印加する。これにより、排気中のPMを、集塵部120に付着させる。
【0069】
インピーダンス測定器14は、測定電極層127の一対の櫛本体部に電気的に接続されている。インピーダンス測定器14は、ECU5から送信された制御信号に基づいて動作し、所定の測定電圧及び測定周期のもとで、センサ素子12の電気的特性を検出し、検出した静電容量に略比例した検出信号をECU5に出力する。なお、本実施形態では、インピーダンス測定器14により、センサ素子12の電気的特性として特に静電容量を測定するが、これに限るものではない。
【0070】
温度制御装置15は、各電極板130,131に接して設けられたヒーター層122,129のヒーター配線122A,129Aに電気的に接続されており、これらヒーター層122,129に電力を供給するヒーター用DC電源(図示せず)を含んで構成される。
ヒーター用DC電源は、ECU5から送信された制御信号に基づいて動作し、ヒーター層122,129に所定の電流を通電する。ヒーター層122,129は、ヒーター用電源から電流が供給されると発熱し、各電極板130,131を加熱する。これにより、各電極板130,131を加熱し、集塵部120に付着したPMを燃焼除去でき、センサ素子12を再生できる。
【0071】
図1に戻って、ECU5には、以上のようなPMセンサ11のセンサコントローラ17の他、警告灯6、クランク角度位置センサ7、及びアクセルセンサ8等が接続されている。
【0072】
警告灯6は、例えば、車両のメータパネルに設けられ、ECU5から送信された制御信号に基づいて点灯する。ECU5は、DPF3が故障したと判定した場合、すなわちDPFが故障した状態であることを示す後述の故障判定フラグが「1」にされた場合には、この警告灯6を点灯させる。これにより、DPF3が故障したことを運転者に報知することができる。
【0073】
クランク角度位置センサ7は、エンジン1のクランク軸の回転角度を検出し、検出信号をECU5に出力する。アクセルセンサ8は、車両のアクセルペダルの踏み込み量を検出し、検出信号をECU5に出力する。エンジン1の運転状態を示す運転状態パラメータとしてのエンジン回転数Nや燃料噴射量Wは、これらクランク角度位置センサ7及びアクセルセンサ8の出力に基づいて、ECU5により算出される。
【0074】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)とを備える。この他、ECU5は、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路と、センサコントローラ17、警告灯6、及びエンジン1の燃料噴射弁等に制御信号を出力する出力回路とを備える。
【0075】
次に、図6〜図15を参照して、DPFの故障を判定するDPF故障検知処理について説明する。
【0076】
図6は、所定の運転条件の下でエンジンを運転させた場合における、集塵部の静電容量の時間変化を示す図である。図6において、上段は車速の時間変化を示し、下段はセンサ素子の静電容量の時間変化を示す。また図6に示す例では、それぞれ破損の程度が異なる3種類のDPFを準備し、これらDPFごとに同じ運転条件の下でセンサ素子の静電容量を測定した結果を示す。
【0077】
図6に示すように、排気に含まれるPMが集塵部に徐々に堆積することにより、センサ素子の静電容量は次第に増加する。また、DPFの破損の程度が大きくなると、DPFを通過するPMの量が増加し、集塵部に付着するPMの量も増加するため、静電容量の変化量も大きくなる。後に詳述するように、本実施形態のDPF故障検知処理では、このような静電容量の変化量に基づいてDPFの故障を判定する。
【0078】
また、図6に示すように、エンジンの運転状態が過渡運転状態にある期間、特に、車速が「0」のアイドル運転状態から所定の速度まで加速する期間では、センサ素子の静電容量も増加する。これに対して、エンジンの運転状態が定常運転状態にある場合、すなわち、エンジンがアイドル運転状態にある場合、減速している状態にある場合、又は等速で走行している状態にある場合等には、静電容量の変化は小さい。これは、エンジンの運転状態が過渡運転状態にある場合には、特にPMの排出量が多いことを示す。
【0079】
後に詳述するように、本実施形態のDPF故障検知処理では、エンジンの運転状態がこのような過渡運転状態にある時期に合わせて集塵電圧を集塵電極に印加することで、センサ素子の静電容量に変化が現れるまで集塵部にPMを積極的に集塵する。また、このようにして積極的に集塵した後は、集塵電圧の印加を停止し、集塵部に自然にPMを堆積させる。なお以下では、集塵電圧を印加することで集塵部にPMを積極的に集塵することを静電集塵といい、集塵電圧を印加することなく集塵部にPMを付着させることを自然付着という。
【0080】
図7〜図9は、DPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。以下、詳述するように、このDPF故障検知処理は、PMセンサの出力に基づいてDPFが正常な状態であるか又は故障した状態であるかを判定する処理であり、エンジンの始動後、ECU5により実行される。
【0081】
このDPF故障検知処理は、主に、4つの工程に分けられる。より具体的には、DPF故障検知処理は、エンジンの運転状態を監視する運転状態監視工程(ステップS1〜S7)と、PMを静電集塵する静電集塵工程(ステップS11〜S16)と、PMを自然付着させた後、センサ素子の集塵部の静電容量を測定する測定工程(ステップS21〜S25)と、DPFの故障を判定する故障判定工程(ステップS31〜S35)と、を含んで構成される。
【0082】
運転状態監視工程(ステップS1〜S7)について説明する。
この運転状態監視工程では、エンジンの運転状態を監視し、集塵電圧の印加を開始するのに適した時期を検出する。ここで、集塵電圧の印加を開始するのに適した時期とは、集塵電圧を印加することで効率的にPMを集塵できる時期、すなわち、PMの排出量が比較的多い時期を示す。より具体的には、この集塵電圧の印加を開始するのに適した時期とは、例えば、エンジンの運転状態が、安定した状態から所定の車速まで加速している間の過渡運転状態にある時期を示す。
【0083】
ステップS1では、PMセンサの初期処理を実行する。より具体的には、この初期処理では、センサ素子を再生する他、断線及びショートの有無の検知、及びPMセンサの校正等が行われる。
【0084】
ステップS2では、監視用タイマをスタートし、運転状態を監視した時間を示す監視時間TMONの計測を開始する。
【0085】
ステップS3では、エンジン回転数N、燃料噴射量W、及び車速Vの3つの運転状態パラメータを測定し、これら測定値を事前運転状態パラメータ(回転数NPRE[T]、燃料噴射量WPRE[T]、車速VPRE[T])として記録する。
【0086】
ステップS4では、所定のアイドル判定時間TTH_IDLE以上、アイドル運転状態が継続したか否か、すなわち、アイドル判定時間TTH_IDLE以上、車速が「0」であったか否かを判定する。この判定がYESの場合にはステップS5に移り、NOの場合にはステップS3に移る。
【0087】
ステップS5では、監視時間TMONが所定の上限時間TMON_MAXよりも小さいか否かを判定する。この判定がYESの場合にはS6に移る。この判定がNOの場合には、監視時間TMONが上限時間TMON_MAXを超えたことに応じて、一旦センサ素子を再生する必要があると判断しステップS1に移る。
【0088】
ステップS6では、事前運転状態パラメータ(NPRE,WPRE,VPRE)の記録に基づいて、エンジンの運転状態が安定した状態にあるか否かを判定する。より具体的には、車速VPREが所定の速度以上にある時間が所定の時間以内であり、かつ、燃料噴射量WPREが所定の量以下である場合には、エンジンの運転状態は安定した状態にあると判定する。
【0089】
ステップS7では、車速Vが所定の判定速度VTHより大きいか否かを判定することにより、エンジンの運転状態が過渡運転状態であるか否かを判定する。この判定がYESの場合にはステップS11に移り、静電集塵工程を開始する。また、この判定がNOの場合にはステップS7に移る。
【0090】
静電集塵工程(ステップS11〜S16)について説明する。
この静電集塵工程では、所定の条件が満たされるまで集塵電極に集塵電圧を印加することにより静電集塵を行う。
【0091】
ステップS11では、集塵電極への集塵電圧の印加を開始する。すなわち、静電集塵を開始する。ここで、集塵電圧は、例えば2kVに設定される。
【0092】
ステップS12では、静電集塵用タイマをスタートし、静電集塵を行った時間を示す静電集塵時間TCOLの計測を開始する。
【0093】
ステップS13では、集塵電圧を印加したまま、測定電極に測定電圧を印加することにより集塵部の静電容量を測定し、この測定値を集塵時静電容量CCOLとして記録する。ここで、測定電圧は、上述の集塵電圧よりも十分に小さな値、例えば1Vに設定される。
【0094】
ステップS14では、静電集塵の完了を判定するために設定された所定の条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態では、測定した集塵時静電容量CCOLが所定の完了判定値CCOL_THを上回ることを、静電集塵の完了を判定する条件とする。この判定がYESの場合、すなわち集塵時静電容量CCOLが完了判定値CCOL_THよりも大きい場合にはステップS16に移る。この判定がNOの場合、すなわち集塵時静電容量CCOLが完了判定値CCOL_TH以下である場合にはステップS15に移る。なお、この条件の他、静電集塵を開始してから所定の時間が経過したことを、静電集塵の完了を判定する条件としてもよい。
【0095】
ここで、上述のように、集塵時静電容量CCOLが完了判定値CCOL_THを上回ったことに応じて静電集塵を完了する点について詳細に説明する。
図10は、センサ素子の集塵部120にPMを自然付着させた場合におけるPMの堆積量と、集塵部120の静電容量の時間変化との関係を示す図である。図10の横軸は時間を表し、縦軸は静電容量を表す。
【0096】
図10の領域Iでは、時間の経過とともに集塵部120の内壁にPMが徐々に堆積していくものの、最初は薄くまばらに堆積するだけであるため、集塵部120の電気的特性に影響は無く、静電容量の変化は見られない。
領域IIでは、時間の経過により、集塵部120の内壁全面にPMが薄く堆積し始め、集塵部120の電気的特性に影響を与えるようになる結果、静電容量が増大し始める。
さらに時間が経過した領域IIIでは、集塵部120の内壁全面にPMが密に厚く堆積し、集塵部120の電気的特性に大きく影響を及ぼすようになる結果、静電容量がさらに増大し、やがて静電容量は一定の値に収束する。すなわち、PMセンサには、測定可能な最大静電容量が存在する。
【0097】
ところで、図10に示すように、静電容量に変化が見られない領域Iの時間は非常に長い。これは、自然付着により集塵部120の内壁全面にPMが堆積して静電容量に変化が生じるまでには、相当の長時間(例えば、定常運転が維持された場合には1〜2時間)を要することを意味する。このことは、DPFの故障の判定はセンサ素子の静電容量の変化量に基づいて行う本実施形態のDPF故障検知処理では、故障の判定を開始するまでに長い時間を要することを意味する。
一方、静電容量の変化が見られた後においても、従来のように集塵電圧を印加し続けてしまうと、PMが大量に堆積する結果、短時間で測定可能な最大静電容量に到達してしまう。
このため、本実施形態のPMセンサは、集塵電圧を印加することによってPMの堆積を促進し、静電容量に変化が見られるようになったところで、すなわち、静電容量が上述の完了判定値CCOL_THを上回ったところで、集塵電圧の印加を停止して自然付着に切り換える。これにより、短時間で排気中のPMを検出可能な状態にできるとともに、長時間の検出が可能となっている。
【0098】
図8に戻って、ステップS15では、静電集塵時間TCOLが、所定の上限時間TCOL_MAXに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち、上述の上限時間TMONに亘り静電集塵を行ってもセンサ素子の静電容量CCOLが完了判定値CCOL_THを上回らなかった場合には、DPFの下流にPMが排出されていない、すなわちDPFは故障していないと判断し、ステップS34に移る。この判定がNOの場合には、ステップS13に移り、静電集塵を継続する。
【0099】
ステップS16では、静電集塵の完了を判定するための上述の条件が満たされたことに応じて、集塵電極への集塵電圧の印加を停止する。
【0100】
測定工程(ステップS21〜S25)について説明する。
この測定工程では、所定の上限時間TMEASに亘ってPMを自然付着させた後、自然付着後静電容量CPMを測定する。
【0101】
ステップS21では、自然付着用タイマをスタートし、PMを自然付着させた時間を示す自然付着時間TAFTERの計測を開始する。
【0102】
ステップS22では、運転状態パラメータ(回転数N、燃料噴射量W、車速V)を測定し、これら測定値を自然付着時運転状態パラメータ(回転数NMEAS[T]、燃料噴射量WMEAS[T]、車速VMEAS[T])として記録する。
【0103】
ステップS23では、自然付着時間TAFTERが所定の上限時間TMEASに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合にはステップS24に移り、NOの場合にはステップS22に移る。なお以下では、ステップS21において自然付着用タイマをスタートしてから、上限時間TMEASに達するまでの期間を自然付着期間とする。
【0104】
ステップS24では、測定電極に測定電圧を印加することにより集塵部の静電容量を測定し、この測定値を自然付着後静電容量CPMとして記録する。
【0105】
ステップS25では、自然付着期間内におけるPMの排出量が所定の量以上であるか否かを判定する。本実施形態では、PMの排出量が所定の量以上であるか否かの判定を、自然付着時運転状態パラメータ(NMEAS,WMEAS,VMEAS)に基づいて間接的に行う。
【0106】
より具体的には、例えば、自然付着期間内のうち車速VMEASが所定の速度を上回っていた時間が所定時間以上であり、かつ、自然付着期間内において燃料噴射量WMEASが所定の量以上に達した場合には、自然付着期間内におけるPMの排出量が所定の量以上であったと判定する。このステップにおいて、PMの排出量が所定の量以上であると判定された場合には、ステップS31に移る。また、PMの排出量が所定の量より少ないと判定された場合には、ステップS31〜S35の故障判定工程を行わずに、この処理を終了する。
【0107】
故障判定工程(ステップS31〜S35)について説明する。
この故障判定工程では、測定した自然付着後静電容量CPMに基づいて、DPFの故障を判定する。自然付着後静電容量CPMに基づいてDPFの故障判定を行う方法としては、具体的には、静電容量の変化量ΔCに基づく方法(図11参照)と、静電容量の変化率∠C(=ΔC/ΔT)に基づく方法(図12参照)との2つが挙げられる。
【0108】
図11に示すように、静電容量の変化量ΔCに基づく方法では、自然付着後静電容量CPMから、集塵開始時の静電容量CCOLを減算することにより、所定の自然付着期間ΔTに亘る静電容量の変化量ΔCを算出する。さらに、算出した変化量ΔCと、所定の故障判定値CTHとを比較する。変化量ΔCが故障判定値CTHよりも大きい場合には、DPFは故障した状態であると判定し、変化量ΔCが故障判定値CTH以下である場合には、DPFは正常な状態であると判定する。
【0109】
図12に示すように、静電容量の変化率∠Cに基づく方法では、上述と同じ手順で自然付着期間ΔTに亘る静電容量の変化量ΔCを算出する。次に、算出した変化量ΔCを自然付着期間ΔTで割ることにより、変化率∠Cを算出する。さらに、算出した変化率∠Cと所定の故障判定値∠CTHとを比較する。変化率∠Cが故障判定値∠CTHよりも大きい場合には、DPFは故障した状態であると判定し、変化率∠Cが故障判定値∠CTH以下である場合には、DPFは正常な状態であると判定する。
【0110】
本実施形態のDPF故障検知処理では、以下に示すように、以上のような2つの判定方法のうち変化率∠Cに基づく方法によりDPFの故障を判定するが、これに限るものではない。
【0111】
図9に戻って、ステップS31では、記録された自然付着時運転状態パラメータ(NMEAS,WMEAS,VMEAS)に基づいて、アイドル運転時間TIDLEを算出する。このアイドル運転時間は、自然付着期間内においてアイドル運転状態が行われた時間、すなわち速度VMEASが「0」であった時間を積算することで算出される。
【0112】
ステップS32では、自然付着期間に亘る静電容量の変化率∠Cを算出する。この静電容量変化率∠Cは、下記式(1)に示すように、自然付着期間に亘る静電容量の変化量CPM−CCOLを、PMを自然付着させていた時間TAFTERからアイドル時間TIDLEを減算した時間で割ることにより算出される。
∠C=(CPM−CCOL)/(TAFTER−TIDLE) (1)
【0113】
ステップS33では、静電容量変化率∠Cが、所定の故障判定値∠CTHより小さいか否かを判定する。この判定がYESの場合には、DPFは正常な状態であると判定するとともにステップS34に移り、故障判定フラグを「0」にした後、この処理を終了する。また、この判定がNOの場合には、DPFは故障した状態であると判定するとともにステップS35に移り、故障判定フラグを「1」にした後、この処理を終了する。なお、この故障判定フラグを「1」にすることに応じて、警告灯が点灯される。
【0114】
ここで、上記式(1)により静電容量の変化率∠Cを算出するにあたり、PMを自然付着させていた時間TAFTERからアイドル時間TIDLEを減算した理由について、図13〜図15を参照して説明する。
【0115】
図13は、2つの異なる運転条件の下でエンジンを運転させた場合におけるセンサ素子の静電容量の時間変化を示す図である。図13において、上段は運転条件Aの下でエンジンを運転させた場合における静電容量の時間変化を示し、下段は運転条件Bの下でエンジンを運転させた場合における静電容量の時間変化を示す。また、図13に示す例では、それぞれ破損の程度が異なる2種類のDPFを準備し、これらDPFごとに同じ運転条件の下で集塵部の静電容量を測定した結果を示す。図13において、ハッチングで示された期間は、車速が「0」のアイドル運転が行われた期間を示す。アイドル運転が行われていない期間は、車速が「0」でない走行期間となっている。
【0116】
図13に示すように、アイドル運転が行われた期間では、PMの排出量が少ないため、静電容量の変化は小さい。また、これら運転条件Aと運転条件Bとでは、アイドル運転が行われた期間の長さのみ異なる。
【0117】
図14及び図15は、以上のような2つの異なる運転条件A,Bの下での静電容量の時間変化を重ねて示した図である。より具体的には、図15は、静電容量の時間変化のうちアイドル運転が行われた期間を除いたものを示す。図14は、これに対して、静電容量の時間変化のうちアイドル運転が行われた期間を除いていないものを示す。また、これら図14及び図15では、運転条件Aの下での静電容量の時間変化を太線で示し、運転条件Bの下での時間変化を細線で示す。
【0118】
ここで、図14を参照して、破損の程度が小さいDPFを用い運転条件Aの下で測定した静電容量の時間変化と、破損の程度が大きいDPFを用い運転条件Bの下で測定した静電容量の時間変化とを比較する。
運転条件Aの下では、静電容量は、1回目の走行期間を経てC1に到達し、さらに2回目の走行期間を経てC2に到達する。一方運転条件Bの下では、静電容量は、1回目の走行期間を経てC2に到達し、さらに2回目の走行期間を経てC3に到達する。
このように、2つのDPFは破損の程度が異なるものの、運転条件Aと運転条件Bとの間でアイドル運転の長さが異なることに起因して、静電容量の測定値が同じC2になる時期がある。したがって、例えば、時刻T1における自然付着後静電容量CPMに基づいてDPFの故障の判定を行った場合、どちらの測定においても静電容量の変化量は同じであるため、判定の結果は同じになってしまう。これは、アイドル運転を行った期間が長くなるに従い、静電容量の変化量は見かけ上小さくなってしまうので、正常側に誤判定される傾向があることを意味する。
【0119】
これに対して、図15に示すように、自然付着させていた期間からアイドル運転が行われた期間を除き、実質的にPMが排出されていた期間のみ考慮することにより、運転状態Aの下での静電容量の時間変化と、運転状態Bの下での静電容量の時間変化とを一致させることができる。これにより、上述のような誤判定を防止することができる。
【0120】
図16は、DPF故障検知処理の制御例を示すタイムチャートである。図16において、上段は車速の時間変化を示し、下段はセンサ素子の静電容量の時間変化を示す。また、図16では、正常なDPFを用いた場合の静電容量の時間変化を破線で示し、破損したDPFを用いた場合の静電容量の時間変化を実線で示す。
【0121】
この制御例では、時刻T0から時刻T1までの間は、アイドル運転を行い、次に時刻T1から時刻T4にかけて、停止した状態から車速がVMAXになるまで加速した例を示す。なお、時刻T0におけるセンサ素子の静電容量はCINIであったとする。
【0122】
破損したDPFを用いた場合、以下の手順により、その故障が検知される。
時刻T0から時刻T1までの間において、アイドル判定時間TTH_IDLE以上、アイドル運転状態を継続したことが判定される(ステップS4)。その後、安定したエンジンの運転状態から加速し、時刻T2において車速が判定速度VTHを上回ったことにより、エンジンの運転状態が過渡運転状態になったと判定される(ステップS6,S7)。
【0123】
時刻T2では、エンジンの運転状態が過渡運転状態であると判定されたことに応じて、集塵電圧の印加が開始され(ステップS11)、集塵部にPMが徐々に集塵される。これ以降、時刻T3において集塵電圧の印加を停止するまでの間は、静電集塵期間となる。集塵電圧を印加し、集塵部にPMが堆積することにより、集塵部の静電容量が上昇し始める。
【0124】
時刻T3では、集塵部の静電容量の測定値が完了判定値CCOL_THを上回ったと判定されたことに応じて、集塵電圧の印加が停止される(ステップS14,S16)。これ以降、自然付着期間となる。時刻T5では、PMを自然付着させ始めてから上述の上限時間TMEASが経過したことに応じて、自然付着後静電容量CPMが測定される(ステップS23,S24)。また、この自然付着後静電容量CPMに基づいて、静電容量変化率∠Cが算出された後、算出した静電容量変化率∠Cと故障判定値∠CTHとが比較され、この比較に基づいてDPFの故障が判定される(ステップS32〜S35)。ここでは、静電容量変化率∠Cが故障判定値∠CTHよりも大きいと判定されたことに応じて、DPFは故障したものであると判定される。
【0125】
一方、正常なDPFを用いた場合、時刻T2から集塵電圧の印加を開始しても、センサ素子の静電容量が完了判定値CCOL_THを上回ることはない。このため、時刻T6において、静電集塵の上限時間TCOL_MAXが経過したと判定されたことに応じて、DPFは正常なものであると判定される(ステップS15,S34)。
【0126】
図17は、DPF故障検知処理の制御例を示すタイムチャートである。図17は、図16に示す制御例とは異なり、静電集塵を開始してから所定の上限時間TMAXが経過したことを、静電集塵の完了を判定する条件とした場合における制御例を示す。
【0127】
この制御例では、図16に示す例と同様に、時刻T0から時刻T1までの間は、アイドル運転を行い、次に時刻T1から時刻T4にかけて、停止した状態から車速がVMAXになるまで加速した例を示す。
【0128】
破損したDPFを用いた場合、以下の手順により、その故障が検知される。
時刻T0から時刻T1までの間において、アイドル判定時間TTH_IDLE以上、アイドル運転状態を継続したことが判定される。その後、安定したエンジンの運転状態から加速し、時刻T2において車速が判定速度VTHを上回ったことにより、エンジンの運転状態が過渡運転状態になったと判定される。
【0129】
時刻T2では、エンジンの運転状態が過渡運転状態であると判定されたことに応じて、集塵電圧の印加が開始され、集塵部にPMが徐々に集塵される。これ以降、時刻T3において集塵電圧の印加を停止するまでの間は、静電集塵期間となる。集塵電圧を印加し、集塵部にPMが堆積することにより、センサ素子の静電容量が上昇し始める。
【0130】
時刻T3では、静電集塵を開始してから上限時間TMAXが経過したことに応じて、集塵電圧の印加が停止される。これ以降、自然付着期間となる。時刻T5では、PMを自然付着させ始めてから上限時間TMEASが経過したことに応じて、自然付着後静電容量CPMが測定される。また、この自然付着後静電容量CPMに基づいて、静電容量変化率∠Cが算出された後、算出した静電容量変化率∠Cと故障判定値∠CTHとが比較され、この比較に基づいてDPFの故障が判定される。ここでは、静電容量変化率∠Cが故障判定値∠CTHよりも大きいと判定されたことに応じて、DPFは故障したものであると判定される。
【0131】
一方、正常なDPFを用いた場合、時刻T2から時刻T3まで静電集塵を行い、その後時刻T5まで自然付着させても、静電容量がCINIから大きく変化することはない。このため、時刻T5では、静電容量変化率∠Cが故障判定値∠CTHよりも小さいと判定されたことに応じて、DPFは正常なものであると判定される。
【0132】
本実施形態によれば、集塵電極123A,128Aに集塵電圧を印加することにより、十分な量のPMを短時間でセンサ素子12に付着させることができ、センサ素子12の静電容量に変化が現れる状態を早期に作り出すことができる。このため、例えば30秒ほどの短時間で電気的特性に変化が現れる状態を作り出し、DPFの故障の判定を開始することができる。すなわち、応答性が高いため、車両運転中の任意のタイミングで、DPFの故障を判定することができる。
また、センサ素子12の静電容量を測定し、DPFの故障を判定する際には、集塵電極123A,128Aに対する集塵電圧の印加を行わないため、PMはゆっくりと自然にセンサ素子12に付着し、センサ素子12の静電容量は緩やかに変化していくことから、長時間に亘ってDPFの故障を判定できる。したがって、不規則な変動要因を除き、DPFの故障の誤検知を少なくすることができる。
また、本実施形態では、集塵電極123A,128Aと測定電極127A,127Bの2つの電極を備えるため、集塵電極123A,128Aに集塵電圧を印加して粒子状物質の集塵を行いつつ、測定電極127A,127Bに測定電圧を印加することでセンサ素子12の静電容量を測定することができる。このため、集塵の停止時期をリアルタイムで精度良く判定できることからも、上述の効果が期待できる。
また、長時間に亘ってDPFの故障を判定できるため、集塵、測定、再生の行程を繰り返す回数を低減でき、集塵及びヒーターへの電圧の印加に伴う電力の消費を低減できる。
【0133】
また、本実施形態によれば、集塵電極123A,128Aへの集塵電圧の印加を開始してから所定の上限時間TCOL_MAXが経過するまでの間に、センサ素子の静電容量CCOLが完了判定値CCOL_MAXを上回らなかった場合には、DPFは正常であると判定する。DPFが正常である場合には、エンジンから排出されたPMのほとんどはこのDPFに捕集される。このため、DPFの下流に設けられたセンサ素子に流入するPMの量は非常に少なく、センサ素子の電気的特性に変化はあらわれにくい。本実施形態によれば、このようなセンサ素子の特性を利用してDPFの故障を判定することにより、DPFの故障の検知精度を向上することができる。
【0134】
また、本実施形態によれば、測定電圧よりも大きな集塵電圧を集塵電極123A,128Aに印加する。これにより、集塵電圧を印加した際には、センサ素子12にPMを積極的に付着させることができる。一方、測定電圧を印加した際には、センサ素子12にPMが不要に付着するのを防止することができる。
【0135】
また、本実施形態によれば、エンジンの運転状態が過渡運転状態でない場合、すなわち、エンジンの運転状態が定常運転状態である場合には、集塵電圧を印加しない。エンジンが定常運転状態にある場合には、PMの排出量は非常に少ない。このため、定常運転状態にある場合には、集塵電圧を印加しても、センサ素子12の電気的特性に変化が現れる程の量のPMを、短時間でセンサ素子12に付着させることは難しい。したがって、このような過渡運転状態には集塵電圧を印加しないようにすることにより、集塵電圧の印加にかかる無駄な電力の消費を抑制することができる。
【0136】
また、本実施形態によれば、自然付着期間内におけるPMの排出量が所定の量よりも少ない場合には、DPFの故障の判定を行わない。センサ素子12に粒子状物質を付着させている自然付着期間においてPMの排出量が少ない場合、DPFの状態に係わらず、センサ素子12の電気的特性の変化は小さいと考えられるため、高い精度で故障を検知することができない。本実施形態によれば、このような期間には、故障の判定を行わないとすることにより、DPFの故障の検知精度が低下するのを防止することができる。
【0137】
また、本実施形態によれば、センサ素子12の静電容量の測定値の自然付着期間に亘る変化量ΔCに基づいて、DPFの故障を判定する。DPFが故障している場合、エンジンから排出されたPMのうち幾らかはDPFを通過してしまい、センサ素子12に到達する。このため、上述の自然付着期間に亘る測定値の変化量ΔCに大きな影響が現れるものと考えられる。本実施形態によれば、このようなDPFの状態により大きな影響があらわれる上記変化量ΔCに基づいて故障を判定することにより、DPFの故障の検知精度を向上することができる。
【0138】
また、本実施形態によれば、PMの排出量が所定量よりも少ないアイドル運転状態でエンジンが運転されたアイドル運転時間TIDLEを、自然付着期間TAFTERから減算した時間を有効排出時間(TAFTER−TIDLE)とし、この有効排出時間に亘るセンサ素子12の静電容量の変化率∠Cが、所定の故障判定値∠CTHよりも小さい場合には、DPFは正常であると判定する。このように、アイドル運転状態等の粒子状物質の排出量が少ない運転状態でエンジンが運転された時間を除いた有効排出時間に亘る静電容量の変化率∠Cに基づいてDPFの故障を判定することにより、DPFの故障の検知精度をさらに向上することができる。
【0139】
また、本実施形態によれば、集塵電極123A,128Aへの集塵電圧の印加を開始してから、センサ素子12の静電容量CCOLが所定の完了判定値CCOL_THを上回ったことに応じて、集塵電極123A,128Aへの集塵電圧の印加を停止する。これにより、センサ素子12の静電容量に変化が現れる状態を、より確実に早期に作り出すことができる。したがって、DPFの故障の検知にかかる時間を短縮することができる。また、静電容量に変化が現れてから集塵電圧の印加を停止することにより、余分な電力の消費を低減することができる。
【0140】
本実施形態では、集塵電極123A,128Aが第1電極部を構成し、測定電極127A,127Bが第2電極部を構成し、ECU5、及びセンサ素子12のセンサコントローラ17が電圧印加開始手段、第1測定手段、電圧印加停止手段、第2測定手段、故障判定手段、過渡運転状態判定手段、及び排出量判定手段を構成する。
より具体的には、図8のステップS11の実行に係る手段が電圧印加開始手段を構成し、図8のステップS13の実行に係る手段が第1測定手段を構成し、図8のステップS16の実行に係る手段が電圧印加停止手段を構成し、図9のステップS24の実行に係る手段が第2測定手段を構成し、図9のステップS31〜S35の実行に係る手段が故障判定手段を構成し、図7のステップS6,S7の実行に係る手段が過渡運転状態判定手段を構成し、図9のステップS25の実行に係る手段が排出量判定手段を構成する。
【0141】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、PMセンサ31、センサコントローラ、及びECUの構成が、第1実施形態のPMセンサ11、センサコントローラ17、及びECU5と異なる。
【0142】
図18は、第2実施形態に係るPMセンサ31のセンサ素子32の分解斜視図である。
図18に示すように、センサ素子32の構成は、測定電極層が無い以外は第1実施形態に係るPMセンサ11の構成と同様である。本実施形態では、第1実施形態のように測定電極を備えておらず、集塵電極323A,327Aが集塵電極と測定電極とを兼ねる。集塵電極323A,327Aは、切換スイッチを介して集塵用DC電源とインピーダンス測定器に接続されている。
【0143】
切換スイッチは、ECUから送信された制御信号に基づいて動作し、電極板330,331に対する接続を、集塵用DC電源とインピーダンス測定器との間で選択的に切り換える。具体的には、集塵電極323A,327Aに集塵電圧を印加する場合には、集塵用DC電源と電極板330,331とを接続し、センサ素子32の静電容量を測定する場合には、インピーダンス測定器と電極板330,331とを接続する。
【0144】
図19は、本実施形態のセンサ素子32の集塵部320内にPMが集塵されたときの様子を模式的に示した図である。図19に示すように、集塵されたPMは、集塵部320内の内壁に堆積する。このとき、集塵部320の静電容量が、堆積したPMによる影響を受けて変化する。この静電容量の変化は、PM堆積量に相関があることから、この静電容量の変化に基づいて、PMの検出が可能となっている。また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、センサ素子32の電気的特性とは、センサ素子32のうちPM堆積量に相関のある集塵部320の電気的特性を意味する。
【0145】
図20〜図22は、DPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。以下、詳述するように、このDPF故障検知処理は、PMセンサの出力に基づいてDPFが正常な状態であるか又は故障した状態であるかを判定する処理であり、エンジンの始動後、ECUにより実行される。
【0146】
このDPF故障検知処理は、第1実施形態のDPF故障検知処理と同様に、運転状態監視工程(ステップS1〜S7)と、静電集塵工程(ステップS11〜S17)と、測定工程(ステップS21〜S25)と、故障判定工程(ステップS31〜S35)と、の4つの工程に分けられる。
【0147】
運転状態監視工程(ステップS1〜S7)及び故障判定工程(ステップS31〜S35)は、第1実施形態のDPF故障検知処理と同じであり、その詳細な説明を省略する。
【0148】
静電集塵工程(ステップS11〜S17)について説明する。
この静電集塵工程では、所定の条件が満たされるまで集塵電極に集塵電圧を印加することにより静電集塵を行う。
【0149】
ステップS11では、静電集塵用タイマをスタートし、静電集塵を行った時間を示す静電集塵時間TCOLの計測を開始する。
【0150】
ステップS12では、電極部への集塵電圧の印加を開始するとともに、印加時間計測用タイマをスタートし、集塵電圧を印加した時間を示す印加時間Tの計測を開始する。
【0151】
ステップS13では、集塵電圧を印加してから、所定時間TMAX以上経過したか否かを判定する。この判定がYESの場合にはステップS14に移り、NOの場合にはステップS13に移る。
【0152】
ステップS14では、電極部への集塵電圧の印加を停止するとともに、印加時間計測用タイマをリセットする。
【0153】
ステップS15では、電極部へ測定電圧を印加することにより、集塵部の静電容量を測定し、この測定値を集塵時静電容量CCOLとして記録する。
【0154】
ステップS16では、静電集塵の完了を判定するために設定された所定の条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態では、測定した集塵時静電容量CCOLが所定の完了判定値CCOL_THを上回ることを、静電集塵の完了を判定する条件とする。この判定がYESの場合、すなわち集塵時静電容量CCOLが完了判定値CCOL_THよりも大きい場合にはステップS21に移る。この判定がNOの場合、すなわち集塵時静電容量CCOLが完了判定値CCOL_TH以下である場合にはステップS17に移る。なお、この条件の他、静電集塵を開始してから所定の時間が経過したことを、静電集塵の完了を判定する条件としてもよい。
【0155】
ステップS17では、静電集塵時間TCOLが、所定の上限時間TCOL_MAXに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち、静電集塵を行っても集塵部の静電容量Cが完了判定値CCOL_THを上回らなかった場合には、DPFの下流にPMが排出されていない、すなわちDPFは故障していないと判断し、ステップS34に移る。この判定がNOの場合には、ステップS12に移り、静電集塵を継続する。
【0156】
測定工程(ステップS21〜S25)について説明する。
この測定工程では、所定の上限時間TMEASに亘ってPMを自然付着させた後、自然付着後静電容量CPMを測定する。
【0157】
ステップS21では、自然付着用タイマをスタートし、PMを自然付着させた時間を示す自然付着時間TAFTERの計測を開始する。
【0158】
ステップS22では、運転状態パラメータ(回転数N、燃料噴射量W、車速V)を測定し、これら測定値を自然付着時運転状態パラメータ(回転数NMEAS[T]、燃料噴射量WMEAS[T]、車速VMEAS[T])として記録する。
【0159】
ステップS23では、自然付着時間TAFTERが所定の上限時間TMEASに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合にはステップS24に移り、NOの場合にはステップS22に移る。
【0160】
ステップS24では、電極部に測定電圧を印加することによりセンサ素子の静電容量を測定し、この測定値を自然付着後静電容量CPMとして記録する。
【0161】
ステップS25では、自然付着期間内におけるPMの排出量が所定の量以上であるか否かを判定する。本実施形態では、PMの排出量が所定の量以上であるか否かの判定を、自然付着時運転状態パラメータ(NMEAS,WMEAS,VMEAS)に基づいて間接的に推定する。このステップにおいて、PMの排出量が所定の量以上であると判定された場合には、ステップS31に移る。また、PMの排出量が所定の量より少ないと判定された場合には、ステップS31〜S35の故障判定工程を行わずに、この処理を終了する。
【0162】
本実施形態によれば、2つの電極部を備える点を除いて、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態では、集塵電極323A,327Aが電極部を構成し、ECU、及びセンサ素子のセンサコントローラが電圧印加手段、第1測定手段、判定手段、第2測定手段、故障判定手段、過渡運転状態判定手段、及び排出量判定手段を構成する。
より具体的には、図21のステップS12,S13の実行に係る手段が電圧印加手段を構成し、図21のステップS15の実行に係る手段が第1測定手段を構成し、図21のステップS16の実行に係る手段が判定手段を構成し、図22のステップS24の実行に係る手段が第2測定手段を構成し、図22のステップS31〜S35の実行に係る手段が故障判定手段を構成し、図20のステップS6,S7の実行に係る手段が過渡運転状態判定手段を構成し、図22のステップS25の実行に係る手段が排出量判定手段を構成する。
【0163】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、ECUの構成が第1実施形態と異なる。
【0164】
第1実施形態では静電容量の測定値に基づいてDPFの故障を検知したが、本実施形態では、静電容量の測定値から排気のPM濃度を算出し、このPM濃度に基づいてDPFの故障を判定する点が第1実施形態と異なる。
【0165】
図23は、所定のPM濃度の排気の下でPMセンサを作動させた場合における、静電容量の測定値の変化を示す図である。図23は、横軸を時間tとし縦軸を静電容量ΔCとして、所定の期間にわたって集塵電圧を印加した後における静電容量ΔCの時間変化を示す図である。この図に示すように、時刻t=0において集塵電圧の印加を停止すると、その後、静電容量ΔCは所定値ΔCMAXに漸近的に近づく。
【0166】
この場合、時刻t=0以降、すなわちPMを自然付着させている期間における静電容量ΔCとPM濃度xとの間には、下記式(2)に示す関係が成立する。
ΔC=ΔCMAX(1−exp(−k(x)・t)) (2)
【0167】
なお、上記式(2)において、PM濃度xの関数k(x)は、下記式(3)に示すように、エンジン回転数N、及び燃料噴射量Wに基づいて算出される発生トルクTの所定の関数a(N,T)及びb(N,T)により記述される。
k(x)=a(N,T)x+b(N,T) (3)
【0168】
ここで、上記式(2)を時間微分すると、下記式(4)が導出される。
k(x)=(ΔCMAX/(ΔCMAX−ΔC))・dΔC/dt (4)
【0169】
したがって、ΔCMAXをセンサ素子ごとに備わる定数として、所定の時刻における静電容量ΔC及びその時間微分dΔC/dtを測定し、さらにその時刻におけるエンジン回転数N及び発生トルクTに基づいてa(N,T)及びb(N,T)を決定するマップを検索することにより、排気のPM濃度xを導出することができる。
【0170】
図24は、DPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
このDPF故障検知処理は、第1実施形態のDPF故障検知処理と同様に、運転状態監視工程(ステップS1〜S7)と、静電集塵工程(ステップS11〜S16)と、測定工程(ステップS41〜S43)と、故障判定工程(ステップS51〜S56)と、の4つの工程に分けられる。なお、運転状態監視工程及び静電集塵工程は、第1実施形態のDPF故障検知処理と同じであるため、その詳細な説明及び図示を省略する。
【0171】
測定工程(ステップS41〜S43)について説明する。
ステップS41では、自然付着用タイマをスタートし、PMを自然付着させた時間を示す自然付着時間TAFTERの計測を開始する。
【0172】
ステップS42では、自然付着時間TAFTERが所定の上限時間TMEASに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわちPMの自然付着を開始してから上限時間TMEASが経過した場合には、ステップS43に移る。一方、この判定がNOの場合には、再びステップS42を実行し、上限時間TMEASが経過するのを待つ。
【0173】
ステップS43では、測定電極に測定電圧を印加することにより集塵部の静電容量を測定し、この測定値を自然付着時静電容量CPMとして記録する。また同時に、測定値の時間変化に基づいて自然付着時静電容量CPMの時間微分値を測定し、この測定値を静電容量の微分値dCPM/dtとして記録する。
【0174】
故障判定工程(ステップS51〜S56)について説明する。
ステップS51では、上記ステップS43で測定した自然付着時静電容量CPM及びその微分値dCPM/dtと、その時におけるエンジン回転数N及び発生トルクTと、に基づいて、DPFの下流側の排気のPM濃度DRを算出する。
【0175】
ステップS52では、PM濃度DRの算出に用いた自然付着時静電容量CPMを測定した時における回転数Nや燃料噴射量Wなどのエンジンの運転状態に基づいてDPFの上流側の排気のPM濃度DFを算出する。
【0176】
ステップS53では、DPFの上流側の排気のPM濃度DF及びDPFの下流側の排気のPM濃度DRに基づいて、DPFに捕集される粒子状物質の割合を示すPM捕集率Xを算出する。このPM捕集率Xは、具体的には、下記式(5)により定義されるDPFのPM捕集率Xを算出する。
X=(DF−DR)/DF×100 (5)
【0177】
ステップS54では、算出したPM捕集率Xが所定の故障判定値XTHよりも大きいか否かを判定する。この判定がYESの場合には、DPFは正常であると判定するとともにステップS55に移り、故障判定フラグを「0」にした後、この処理を終了する。この判定がNOの場合には、DPFは故障した状態であると判定するとともにステップS56に移り、故障判定フラグを「1」にした後、この処理を終了する。
【0178】
本実施形態によれば、DPFの下流側のPM濃度DRに加えて、DPFの上流側のPM濃度DFに基づいて、DPFの故障を判定する。これにより、DPFの故障の判定精度をさらに向上することができる。例えば、低負荷運転状態やアイドル運転状態では、エンジンから排出されるPMの量が少なく、またその殆どはDPFに捕集されてしまうため、DPFの下流側に排出されるPMの量は非常に少ない。これに対して本実施形態では、下流側のPM濃度DRに加えて、この下流側よりも高い精度で検出できる上流側のPM濃度DFに基づいてDPFの故障を判定することにより、このような低負荷運転状態やアイドル運転状態においてもDPFの故障を精度良く判定することができる。
したがって、上記第1実施形態では、DPFの下流側のPMセンサにPMを自然付着させていた期間におけるPMの排出量が所定の量以上であるか否かを判定し(図9のステップS25参照)、PMの排出量が所定の量以上である場合にのみ、DPFの故障の判定を行ったが、本実施形態では、PMの排出量に関わらずDPFの故障の判定を行うことができる。
【0179】
また本実施形態によれば、DPFの上流側のPM濃度DFと、DPFの下流側のPM濃度DRとに基づいて、DPFのPM捕集率Xを算出し、このPM捕集率Xに応じてDPFの故障を判定する。これにより、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0180】
本実施形態では、図24のステップS52の実行に係る手段が上流濃度検出手段を構成し、図24のステップS51の実行に係る手段が下流側濃度算出手段を構成し、図24のステップS53の実行に係る手段が捕集率算出手段を構成し、図24のステップS51〜S56の実行に係る手段が故障判定手段を構成する。
【0181】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、ECU5Dの構成と、DPF3の下流側のPMを検出するPMセンサ11に加えて、DPF3の上流側のPMを検出するPMセンサ91Dを備える点とが、第3実施形態と異なる。
【0182】
図25は、本実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置を含む、エンジン及びその制御装置の構成を示す図である。
第3実施形態では、DPF3のPM捕集率Xを算出するにあたり、エンジンの運転状態に基づいて算出されたDPF3の上流側のPM濃度DFを用いた。本実施形態では、DPF3の上流側に設けたPMセンサ91Dの出力に基づいてDPF3の上流側のPM濃度を算出する。
【0183】
PMセンサ91Dは、排気管4の内部のうちDPFの上流側に設けられたセンサ素子92Dと、ECU5Dに接続され、このセンサ素子92Dを制御するセンサコントローラ97Dと、を備える。これらセンサ素子92D及びセンサコントローラ97Dの構成は、第1実施形態のセンサ素子12及びセンサコントローラ17の構成と略等しいので、その詳細な説明を省略する。なお本実施形態では、2つのPMセンサを明確に区別するため、DPFの上流側のPMセンサ91Dを上流側PMセンサ91Dといい、DPFの下流側のPMセンサ11を下流側PMセンサ11という。
【0184】
後に詳述するようにDPF故障検知処理では、2つの上流側PMセンサ91D及び下流側PMセンサ11を並行して使用する。しかしながら、下流側PMセンサ11が設けられたDPF3の下流側と、上流側PMセンサ91Dが設けられたDPF3の上流側とでは排気のPM濃度が大きく異なる。そこで、例えば、センサ素子92Dに流入する排気の流量を絞り、センサ素子92Dに付着するPMの単位時間当たりの量を少なくすることにより、これら2つのPMセンサ11,91Dの動作条件が略等しくなるようにすることが好ましい。また、排気の流量を絞るには、例えば保護カバーの形状を変えたり、排気の取り込み流路を制限したりすることが考えられる。
【0185】
図26〜図28は、DPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
このDPF故障検知処理は、第3実施形態のDPF故障検知処理と同様に、運転状態監視工程(ステップS1〜S7)と、静電集塵工程(ステップS61〜S77)と、測定工程(ステップS81〜S83)と、故障判定工程(ステップS91〜S96)と、の4つの工程に分けられる。なお、運転状態監視工程は、第3実施形態のDPF故障検知処理と同じであるため、その詳細な説明及び図示を省略する。
【0186】
静電集塵工程(ステップS61〜S77)について説明する。
ステップS61では、上流側PMセンサ及び下流側PMセンサのそれぞれの集塵電極への集塵電圧の印加を開始する。すなわち、静電集塵を開始する。
【0187】
ステップS62では、上流側PMセンサに対し、集塵電圧を印加したまま、測定電極に測定電圧を印加することにより上流側PMセンサの集塵部の静電容量を測定し、この測定値を上流側集塵時静電容量CCOL_Fとして記録する。
【0188】
ステップS63では、上流側PMセンサ静電集塵の完了を判定するために設定された所定の条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態では、上流側集塵時静電容量CCOL_Fが所定の完了判定値CCOL_TH_Fを上回ることを、静電集塵の完了を判定する条件とする。この判定がYESの場合、すなわち上流側集塵時静電容量CCOL_Fが完了判定値CCOL_TH_Fよりも大きい場合にはステップS66に移る。この判定がNOの場合、すなわち上流側集塵時静電容量CCOL_Fが完了判定値CCOL_TH_F以下である場合にはステップS64に移る。
【0189】
ステップS64では、下流側PMセンサに対し、集塵電圧を印加したまま、測定電極に測定電圧を印加することにより下流側PMセンサの集塵部の静電容量を測定し、この測定値を下流側集塵時静電容量CCOL_Rとして記録する。
【0190】
ステップS65では、下流側PMセンサ静電集塵の完了を判定するために設定された所定の条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態では、下流側集塵時静電容量CCOL_Rが所定の完了判定値CCOL_TH_Rを上回ることを、静電集塵の完了を判定する条件とする。この判定がYESの場合、すなわち下流側集塵時静電容量CCOL_Rが完了判定値CCOL_TH_Rよりも大きい場合にはステップS72に移る。この判定がNOの場合、すなわち下流側集塵時静電容量CCOL_Rが完了判定値CCOL_TH_R以下である場合にはステップS62に移り、上流側集塵時静電容量CCOL_Fあるいは下流側集塵時静電容量CCOL_Rの何れかがそれぞれの完了判定値を上回るまで、集塵電圧を印加し続ける。
【0191】
ステップS66では、上述のステップS63において上流側PMセンサの静電集塵の完了を判定するための上述の条件が満たされたことに応じて、上流側PMセンサの集塵電極への集塵電圧の印加を停止する。
【0192】
ステップS67では、静電集塵用タイマをスタートし、上流側PMセンサの静電集塵を完了してから、下流側PMセンサの静電集塵を余分に行った時間を示す静電集塵時間TCOL_Rの計測を開始する。
【0193】
ステップS68では、下流側PMセンサに対し、再び測定電極に測定電圧を印加することにより下流側PMセンサの集塵部の静電容量を測定し、この測定値を下流側集塵時静電容量CCOL_Rとして記録する。
【0194】
ステップS69では、下流側集塵時静電容量CCOL_Rが上述の完了判定値CCOL_TH_Rを上回ったか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち下流側集塵時静電容量CCOL_Rが完了判定値CCOL_TH_Rよりも大きい場合にはステップS71に移り、下流側PMセンサの集塵電極への集塵電圧の印加を停止し、ステップS81に移る。この判定がNOの場合、すなわち下流側集塵時静電容量CCOL_Rが完了判定値CCOL_TH_R以下である場合にはステップS70に移る。
【0195】
ステップS70では、静電集塵時間TCOL_Rが、所定の上限時間TCOL_MAX_Rに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち、上流側PMセンサの静電集塵を完了してから、上限時間TCOL_MAX_Rに亘り下流側PMセンサの静電集塵を継続したにもかかわらず下流側集塵時静電容量CCOL_Rが完了判定値CCOL_TH_Rを上回らなかった場合には、DPFの下流にPMが殆ど排出されておらずDPFは故障していないと判断し、ステップS95に移る。この判定がNOの場合には、ステップS68に移る。
【0196】
ステップS72では、上述のステップS65において下流側PMセンサの静電集塵の完了を判定するための上述の条件が満たされたことに応じて、下流側PMセンサの集塵電極への集塵電圧の印加を停止する。
【0197】
ステップS73では、静電集塵用タイマをスタートし、下流側PMセンサの静電集塵を完了してから、上流側PMセンサの静電集塵を余分に行った時間を示す静電集塵時間TCOL_Fの計測を開始する。
【0198】
ステップS74では、上流側PMセンサに対し、再び測定電極に測定電圧を印加することにより上流側PMセンサの集塵部の静電容量を測定し、この測定値を上流側集塵時静電容量CCOL_Fとして記録する。
【0199】
ステップS75では、上流側集塵時静電容量CCOL_Fが上述の完了判定値CCOL_TH_Fを上回ったか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち上流側集塵時静電容量CCOL_Fが完了判定値CCOL_TH_Fよりも大きい場合にはステップS77に移り、上流側PMセンサの集塵電極への集塵電圧の印加を停止し、ステップS81に移る。この判定がNOの場合、すなわち上流側集塵時静電容量CCOL_Fが完了判定値CCOL_TH_F以下である場合にはステップS76に移る。
【0200】
ステップS76では、静電集塵時間TCOL_Fが、所定の上限時間TCOL_MAX_Fに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち、下流側PMセンサの静電集塵を完了してから、上限時間TCOL_MAX_Fに亘り上流側PMセンサの静電集塵を継続したにもかかわらず上流側集塵時静電容量CCOL_Fが完了判定値CCOL_TH_Fを上回らなかった場合、これはDPFの上流側で検出されたPMの量が少ないに対して、DPFの下流側には比較的多くのPMが流出していることを意味するので、DPFは故障していると判断し、ステップS96に移る。この判定がNOの場合には、ステップS74に移る。
【0201】
測定工程(S81〜S83)について説明する。
ステップS81では、自然付着用タイマをスタートし、上流側PMセンサ及び下流側PMセンサに対しPMを自然付着させた時間を示す自然付着時間TAFTERの計測を開始する。
【0202】
ステップS82では、自然付着時間TAFTERが所定の上限時間TMEASに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわちPMの自然付着を開始してから上限時間TMEASが経過した場合には、ステップS83に移る。一方、この判定がNOの場合には、再びステップS82を実行し、上限時間TMEASが経過するのを待つ。
【0203】
ステップS83では、上流側PMセンサ及び下流側PMセンサに対し測定電圧を印加することによりそれぞれの集塵部の静電容量を測定し、これら測定値を上流側自然付着時静電容量CPM_F及び下流側自然付着時静電容量CPM_Rとして記録する。また同時に、各静電容量CPM_F,CPM_Rの時間微分値を測定し、これら測定値を上流側静電容量の微分値dCPM_F/dt及び下流側静電容量の微分値dCPM_R/dtとして記録する。
【0204】
故障判定工程(ステップS91〜S96)について説明する。
ステップS91では、上記ステップで測定した下流側自然付着時静電容量CPM_R及びその微分値dCPM_R/dtと、その時におけるエンジン回転数N及び発生トルクTと、に基づいて、DPFの下流側の排気のPM濃度DRを算出する。
【0205】
ステップS92では、上記ステップで測定した上流側自然付着時静電容量CPM_F及びその微分値dCPM_F/dtと、その時におけるエンジン回転数N及び発生トルクTと、に基づいて、DPFの上流側の排気のPM濃度DRを算出する。
【0206】
ステップS93では、DPFの上流側の排気のPM濃度DF及びDPFの下流側の排気のPM濃度DRに基づいて、DPFに捕集される粒子状物質の割合を示すPM捕集率Xを算出する。
【0207】
ステップS94では、算出したPM捕集率Xが所定の故障判定値XTHよりも大きいか否かを判定する。この判定がYESの場合には、DPFは正常であると判定するとともにステップS95に移り、故障判定フラグを「0」にした後、この処理を終了する。この判定がNOの場合には、DPFは故障した状態であると判定するとともにステップS96に移り、故障判定フラグを「1」にした後、この処理を終了する。
【0208】
本実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施形態では、PMセンサ91D及び図28のステップS92の実行に係る手段が上流濃度検出手段を構成し、図28のステップS91の実行に係る手段が下流側濃度算出手段を構成し、図28のステップS93の実行に係る手段が捕集率算出手段を構成し、図28のステップS91〜S96の実行に係る手段が故障判定手段を構成する。
【0209】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、ECUの構成と、DPFの下流側のPMを検出するPMセンサに加えて、DPFの上流側のPMを検出するPMセンサを備える点とが、第3実施形態と異なる。
【0210】
第3実施形態では、DPFのPM捕集率Xを算出するにあたり、エンジンの運転状態に基づいて算出されたDPFの上流側のPM濃度DFを用いた。本実施形態では、DPFの上流側に設けたPMセンサの出力により得られたPM濃度DFに基づいてDPFのPM捕集率Xを算出する。
【0211】
DPFの上流側と下流側とでは、排気のPM濃度が大きく異なる。このため、DPFの上流側のPMを検出するPMセンサには、高濃度の測定が可能な放電式のセンサか、あるいは、高濃度対応の静電集塵式のセンサを用いることが好ましい。
【0212】
図29は、DPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
このDPF故障検知処理は、第3実施形態のDPF故障検知処理と同様に、運転状態監視工程(ステップS1〜S7)と、静電集塵工程(ステップS11〜S16)と、測定工程(ステップS41〜S43)と、故障判定工程(ステップS101〜S106)と、の4つの工程に分けられる。なお、運転状態監視工程、静電集塵工程、及び測定工程は、第3実施形態のDPF故障検知処理と同じであるため、その詳細な説明及び図示を省略する。
【0213】
故障判定工程(ステップS101〜S106)について説明する。
ステップS101では、測定工程で測定した自然付着時静電容量CPM及びその微分値dCPM/dtと、その時におけるエンジン回転数N及び発生トルクTと、に基づいて、DPFの下流側の排気のPM濃度DRを算出する。
【0214】
ステップS102では、上流側のPMセンサの出力に基づいてDPFの上流側の排気のPM濃度DFを算出する。
【0215】
ステップS103では、DPFの上流側の排気のPM濃度DF及びDPFの下流側の排気のPM濃度DRに基づいて、DPFに捕集される粒子状物質の割合を示すPM捕集率Xを算出する。
【0216】
ステップS104では、算出したPM捕集率Xが所定の故障判定値XTHよりも大きいか否かを判定する。この判定がYESの場合には、DPFは正常であると判定するとともにステップS105に移り、故障判定フラグを「0」にした後、この処理を終了する。この判定がNOの場合には、DPFは故障した状態であると判定するとともにステップS106に移り、故障判定フラグを「1」にした後、この処理を終了する。
【0217】
本実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施形態では、図29のステップS102の実行に係る手段が上流濃度検出手段を構成し、図29のステップS101の実行に係る手段が下流側濃度算出手段を構成し、図29のステップS103の実行に係る手段が捕集率算出手段を構成し、図29のステップS101〜S106の実行に係る手段が故障判定手段を構成する。
【0218】
[第6実施形態]
第6実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、ECUの構成が第1実施形態と異なる。より具体的には、本実施形態では、DPFに捕集されたPMを燃焼除去するDPF再生運転の実行に合わせてDPFの故障検知処理の実行を判断する。
【0219】
図30は、DPF再生運転を実行した後におけるDPF下流の排気のPM濃度の特徴的な振る舞いを示す図である。
図30中、破線で示すDPFの温度は、以下のような振る舞いを示す。
先ず、時刻t1においてDPF再生運転を開始すると、DPFの温度が急激に上昇し、PMの燃焼温度T_PMを超えたことに応じて、DPFに捕集されていたPMの燃焼が開始する。時刻t2では、捕集されたPMの燃焼が終了したことに応じて、DPF再生運転を終了する。この時刻t2以降、DPFの温度は徐々に低下し始める。時刻t3では、DPFの温度がPMの燃焼温度T_PMを下回り、さらに時刻t4以降は、通常走行時における温度に安定する。
【0220】
これに対して、図30中、実線で示すDPF下流の排気のPM濃度は、以下のような振る舞いを示す。
先ず、時刻t1〜t2の間では、DPF再生運転を実行することにより、DPFに捕集されていたPM及びDPFに流入したPMは燃焼除去されるため、DPF下流の排気のPM濃度は低い。また、時刻t2においてDPF再生運転を終了してから、時刻t5において新たにDPFに流入したPMによりDPFの無数の細孔が埋められるまでの間は、DPFのPMの捕集性能が一時的に低下するため、PMがDPFを通過しやすい状態となる。このため、図30に示すように、時刻t2〜t5の間で、DPF下流のPM濃度が一時的に上昇する。
【0221】
より具体的には、時刻t2の直後では、DPF再生運転の終了に伴いDPFのPMの捕集性能は低下した状態であるものの、DPFの温度はDPF再生運転の予熱によりPMの燃焼温度よりも高いため、新たに流入するPMはDPFで燃焼してしまい、その下流へ排出される量は少ない。
しかしながら、DPFの温度が徐々に低下し、時刻t3においてPMの燃焼温度を下回る頃から、DPFの予熱で燃焼仕切れなかったPMがDPFを通過し始めるため、DPF下流の排気のPM濃度が上昇する。そして、時刻t4においてDPFの温度がPMの燃焼温度以下で安定する頃には、DPF下流の排気のPM濃度は最大となる。その後、DPFの細孔が新たに流入するPMにより埋められてゆくことにより、DPFの捕集性能が回復し、DPF下流のPM濃度は低下し始める。そして、時刻t5以降では、DPFの無数の細孔がPMで埋められることにより、DPF下流のPM濃度は安定する。
【0222】
本実施形態では、DPF再生運転の実行中(時刻t1〜t2)、DPF再生運転の終了直後のDPFの捕集性能が一時的に低下した期間(時刻t2〜t5)、及びDPF再生運転の終了直後のDPFの温度がPMの燃焼温度T_PMを上回っている期間(時刻t2〜t3)等の、DPFの下流側に設けられたPMセンサでDPFの故障を判定するのに適していない期間を禁止期間として定義し、この禁止期間内では、DPFの故障検知処理の実行を禁止する。
【0223】
これら3つの禁止期間のうち、特に、DPF再生運転の終了直後のDPFの捕集性能が一時的に低下した期間は、より具体的には、以下のようにして規定することができる。
【0224】
DPFの捕集性能は、DPF再生運転の終了後、新たにDPFに流入してくるPMを捕集することにより回復する。そこで本実施形態では、図30において一点鎖線で示すように、DPF再生運転の終了後、DPFに流入するPMの積算量CNT_PMを逐次算出する。そして、DPF再生運転を終了してから、PM積算量CNT_PMが所定の判定量W_END_REGENに達するまでを期間を禁止期間とする。
【0225】
図31は、以上のような概念に基づいてDPFの故障検知処理の実行を判断する手順を示すフローチャートである。
ステップS111では、DPF再生運転実行フラグFPMREGENが「1」であるか否かを判別する。このDPF再生運転実行フラグFPMREGENは、DPF再生運転の実行を指令するフラグである。このDPF再生運転実行フラグFPMREGENに「1」がセットされている間は、ECUからの指令に基づいてDPF再生運転が実行される。ステップS111の判別がYESの場合にはステップS117に移り、そして、ステップS117では、DPFに流入するPM積算量CNT_PMを値0にリセットし、DPFの故障検知処理を実行せずに本処理を終了する。一方、ステップS111の判別がNOの場合には、ステップS112に移る。
【0226】
ステップS112では、DPFの温度TEMP_DPFがPMの燃焼温度T_PMより高いか否かを判別する。このステップS112の判別がYESである場合にはステップS117に移り、そしてステップS117では、PM積算量CNT_PMを値0にリセットし、DPFの故障検知処理を実行せずに本処理を終了する。一方、ステップS112の判別がNOの場合には、ステップS113に移る。なおこのDPFの温度TEMP_DPFは、例えば、DPFの下流の排気の温度を検出する排気温度センサの出力に基づいて推定される。なお、DPFの温度TEMP_DPFは、DPFの上流の排気の温度を検出する排気温度センサの出力に基づいて推定してもよい。この他、DPFの温度を直接検出するDPF温度センサの出力を用いてもよい。
【0227】
ステップS113では、今回の制御サイクル時にエンジンから排出されたPMの量WEIGHT_PMを算出し、ステップS114に移る。このPM排出量WEIGHT_PMは、例えば、エンジン回転数N及び燃料噴射量Wに基づいて、所定のマップを検索することで算出される。
【0228】
ステップS114では、算出したPM排出量WEIGHT_PMを加算することで、PM積算量CNT_PMを更新し、ステップS115に移る。
【0229】
ステップS115では、PM積算量CNT_PMが、判定量W_END_REGENよりも小さいか否かを判別する。このステップS115の判別がYESの場合には、DPF再生運転後、DPFの捕集性能が一時的に低下した状態から回復していないと判断し、DPFの故障検知処理の実行を禁止するべく、本処理を終了する。一方、ステップS115の判別がNOの場合には、DPF再生運転後、DPFの捕集性能が一時的に低下した状態から回復する程度の量のPMが排出されたと判断し、DPFの故障検知処理を実行する。
【0230】
以上のようにして、DPF再生運転中、DPF再生運転を終了してからPM積算量CNT_PMが判定量W_END_REGENに達するまでの期間、及びDPF再生運転を終了してからDPFの温度TEMP_DPFがPMの燃焼温度T_PMを上回っている期間、の3つの禁止期間には、DPFの故障検知処理の実行が禁止される。
【0231】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、以下の効果を奏する。
DPF再生運転を実行した後、上述の禁止期間が経過するまで、DPFの故障の判定を禁止する。これにより、DPF再生運転後、PMが細孔を埋めるまでDPFの下流に排出されるPMにより、DPFが故障したと誤って判定することを防止することができる。すなわち、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0232】
DPF再生運転が終了した後、DPFの温度TEMP_DPFがPMの燃焼温度T_PM以上である場合には、故障検知処理の実行を禁止する。これにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0233】
なお、本実施形態では、エンジン回転数Nや燃料噴射量Wなどのエンジンの運転状態に基づいて、PM積算量CNT_PMを推定したが、これに限らない。例えば、DPFの上流側にもPMセンサを設け、このPMセンサの出力に基づいて、PM積算量CNT_PMを推定してもよい。この他、DPFの上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサを設け、この差圧センサの出力に基づいて、PM積算量CNT_PMを推定してもよい。
【0234】
また、本実施形態では、DPF再生運転を終了してから、DPFに流入したPMの積算量CNT_PMが所定の判定量W_END_REGENに達するまでを期間を禁止期間の1つとして規定し、DPFの故障検知処理の実行を禁止したが、これに限らない。
【0235】
例えば、DPFに捕集されたPMの量、すなわちPM捕集量を推定し、DPF再生運転を終了してから、このPM捕集量が所定量を超えるまでの期間を禁止期間としてもよい。この場合、PM捕集量は、上述のPM積算量CNT_PMと同様に、エンジンの運転状態に基づいて推定したり、DPFの上流側に設けたPMセンサの出力に基づいて推定したり、DPFの上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサの出力に基づいて推定したりすることができる。
【0236】
また、例えば、DPFに流入するPMのうち、DPFに捕集されるPMの割合を示すPM捕集率を推定し、DPF再生運転を終了してから、このPM捕集率が所定値を超えるまでの期間を禁止期間としてもよい。この場合、PM捕集率は、上述のPM積算量CNT_PMと同様に、エンジンの運転状態に基づいて推定したり、DPFの上流側に設けたPMセンサの出力に基づいて推定したり、DPFの上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサの出力に基づいて推定したりすることができる。
【0237】
また、例えば、DPF再生運転を終了してから経過した時間を計測し、この経過時間が所定時間を超えるまでの期間を禁止期間としてもよい。
【0238】
本実施形態では、ECUが再生手段、積算量算出手段、捕集量推定手段、捕集率推定手段、及び計時手段を構成し、ECU及び排気温度センサがフィルタ温度検出手段を構成する。
【0239】
[第7実施形態]
第7実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、ECUの構成が第1実施形態と異なる。本実施形態のDPFの故障検知処理では、PMセンサのセンサ素子を高感度領域に保持し、さらにエンジンの加速時を利用してDPFの故障を判定する。
【0240】
図32は、センサ素子に堆積したPMの量と、このセンサ素子の静電容量との関係を示す図である。
図32に示すように、PM堆積量に対する静電容量の変化の特性は、PM堆積量が少ない領域と多い領域とでは異なったものとなる。より具体的には、PM堆積量が少ない領域(静電容量が小さい領域)では、PM堆積量が多い領域(静電容量が大きい領域)よりも、PM堆積量に対する静電容量の変化率が大きくなっている。これは、静電容量が小さな領域は、大きな領域よりもセンサ素子の感度が高いことを意味する。
【0241】
そこで、本実施形態では、後に図33〜図36を参照して詳述するように、PM堆積量に対する静電容量の変化率が所定値未満になる領域内、すなわち低感度領域内に閾値CREG_THを設定し、センサ素子の静電容量がこの閾値CREG_THを超えた場合には、センサ素子を再生することにより、センサ素子を高感度領域内に維持する。
【0242】
図33〜図36は、本実施形態のDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。このDPF故障検知処理は、エンジンの始動後、ECUにより繰り返し実行される。
【0243】
本実施形態のDPF故障検知処理は、状態監視工程(ステップS121〜S127)と、静電集塵工程(ステップS131〜S138)と、測定工程(ステップS141〜S146)と、故障判定工程(ステップS151〜S154)と、センサ素子を再生するセンサ再生工程(ステップS161〜S163)と、の5つの工程に分けられる。
【0244】
以下、詳細に説明するように、静電集塵工程及び測定工程を行っている間はエンジンの運転状態を監視しており、車両が停止した場合などDPFの故障を高い精度で判定するのに必要な量のPMが排出されなかった場合には、この故障検知処理を中断し、状態監視工程から再開する。このように故障検知処理を再開する際には、上述のようにセンサ素子を高感度領域内に維持するためセンサ再生工程を実行する。
【0245】
なお、状態監視工程(ステップS121〜S127)は、第1実施形態の状態監視工程(ステップS1〜S7)と同じであり、静電集塵工程のステップS131,S132,S134〜S137は、それぞれ、第1実施形態の静電集塵工程のステップS11〜S16と同じであり、測定工程のステップS141,S142,S144,S145,S146は、それぞれ、第1実施形態の測定工程のステップS21〜S25と同じであり、故障判定工程(ステップS151〜S154)は、第1実施形態の故障判定工程のステップS32〜S35と同じであり、これらの詳細な説明については省略する。
【0246】
静電集塵工程(ステップS131〜S138)について説明する。
ステップS133では、運転状態パラメータ(回転数N、燃料噴射量W、車速V)を測定し、これら測定値を静電集塵時運転状態パラメータ(回転数NCOL[T]、燃料噴射量WCOL[T]、車速VCOL[T])として記録する。
【0247】
そして、ステップS137において集塵電圧の印加を停止した後、ステップS138では、測定した静電集塵時運転状態パラメータに基づいて、集塵電圧を印加していた間に、車両が停止したか否かを判別する。
【0248】
このステップS137の判別がYESの場合、すなわち静電集塵中に車両が停止した場合には、DPFの故障を高い精度で判定するにはPMの排出量が不足していると判断し、この故障検知処理を中断するべく、ステップS161のセンサ再生工程に移る。
一方、このステップS137の判別がNOの場合、すなわち静電集塵中に車両が停止しなかった場合には、DPFの故障を高い精度で判定するのに必要な量のPMが排出されたと判断し、この故障検知処理を継続するべく、ステップS141に移る。
【0249】
測定工程(ステップS141〜S146)について説明する。
ステップS143では、ステップS142で測定した自然付着時運転状態パラメータに基づいて、自然付着させている間に、車両が停止したか否かを判別する。
【0250】
このステップS143の判別がYESの場合、すなわち自然付着させている間に車両が停止した場合には、DPFの故障を高い精度で判定するにはPMの排出量が不足していると判断し、この故障検知処理を中断するべく、ステップS161のセンサ再生工程に移る。
一方、このステップS143の判別がNOの場合、すなわち自然付着させている間に車両が停止しなかった場合には、DPFの故障を高い精度で判定するのに必要な量のPMが排出されたと判断し、この故障検知処理を継続するべく、ステップS144に移る。
【0251】
センサ再生工程(ステップS161〜S163)について説明する。
ステップS161では、車両が停止した状態であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS162に移る。一方、この判別がNOの場合には、再びステップS161を実行し、車両が停止するのを待つ。
【0252】
ステップS162では、測定電極に測定電圧を印加することにより集塵部の静電容量を測定し、この測定値を再生時静電容量CREGとして記録し、ステップS163に移る。
ステップS163では、再生時静電容量CREGが上述のセンサ素子の感度を判定するために設定された閾値CREG_THより大きいか否かを判別する。この判別がYESの場合には、センサ素子が低感度領域にあると判断し、センサ素子を高感度領域にするべくセンサ素子の再生を実行した後、ステップS122へ移り、運転状態監視工程から再開する。ここで、センサ素子の再生は、例えば、ヒーター層に電流を通電し、集塵部に堆積したPMを燃焼除去することで行うが、これに限るものではない。
【0253】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、以下の効果を奏する。
センサ素子の静電容量の測定値CREGが閾値CREG_THより大きくなったことに基づいて、センサ素子を再生し、付着したPMを燃焼除去する。また、この閾値CREG_THを、センサ素子のPMの堆積量に対する静電容量の変化率が所定値未満になる領域内、つまりセンサ素子の感度が低い領域内に設定する。これにより、センサ素子を常に感度の良い領域で使用することができるので、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0254】
本実施形態では、ECU、ヒーター層122,129及び温度制御装置15が除去手段を構成する。より具体的には、図36のステップS163の実行に係る手段が除去手段を構成する。
【0255】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上述した実施形態では、センサ素子の電気的特性として、集塵部の静電容量を測定したが、これに限るものではない。集塵部の静電容量に限らず、集塵部におけるPM堆積量に相関のある物理量であればよい。
【0256】
また、上述した第3〜第5実施形態では、DPFの下流側の排気のPMを検出するPMセンサとして、集塵電極と別体の測定電極を備える第1実施形態のPMセンサを用いたが、これに限らない。例えば、DPFの下流側の排気のPMを検出するPMセンサには、測定電極を兼ねた集塵電極を備える第2実施形態のPMセンサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0257】
1…エンジン(内燃機関)
3…DPF(排気浄化フィルタ)
5,5D…ECU(電圧印加開始手段、第1測定手段、電圧印加停止手段、判定手段、第2測定手段、故障判定手段、過渡運転状態判定手段、排出量判定手段,上流濃度検出手段、下流濃度算出手段、捕集率算出手段)
11…PMセンサ
12…センサ素子
120…集塵部
123A,128A…集塵電極(第1電極部)
127A,127B…測定電極(第2電極部)
17…センサコントローラ(電圧印加開始手段、第1測定手段、電圧印加停止手段、第2測定手段、故障判定手段、過渡運転状態判定手段、排出量判定手段)
31…PMセンサ
32…センサ素子
320…集塵部
323A,327A…集塵電極(電極部)
91D…PMセンサ(上流濃度検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化フィルタの故障検知装置に関する。特に、静電集塵式の粒子状物質センサを用いた排気浄化フィルタの故障検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路に、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタを設け、粒子状物質の排出量を低減する技術は広く用いられている。また、排気浄化フィルタが設けられた車両には、この排気浄化フィルタの故障を検知するための装置も設けられる。このような排気浄化フィルタの故障検知装置として、従来、以下に示すようなものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、排気浄化フィルタの下流側に排気中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置を設け、この粒子状物質検出装置の出力に基づいて排気浄化フィルタの故障を検知する故障検知装置が示されている。
【0004】
特許文献2には、排気浄化フィルタの上流側と下流側にそれぞれ粒子状物質検出装置を設けた故障検知装置が示されている。この故障検知装置は、各センサからの出力に基づいて、排気浄化フィルタに流入した粒子状物質の量と排気浄化フィルタから流出した粒子状物質の量との割合を算出し、算出した割合を、フィルタが正常な状態における割合と比較することにより、排気浄化フィルタの故障を検知する。
【0005】
また、このような故障検知装置に用いられる粒子状物質検出装置としては、従来、以下に示すようなものが提案されている。
【0006】
例えば、特許文献3には、多孔質の導電性物質から構成された検出電極を備える粒子状物質検出装置が示されている。この粒子状物質検出装置は、粒子状物質が自然に付着することによる検出電極の電気抵抗値の変化を、一対の導電性電極によって測定し、この測定値から排気に含まれる粒子状物質の量を検出する。
【0007】
特許文献4には、静電集塵式の粒子状物質検出装置が提案されている。この静電集塵式の粒子状物質検出装置では、一対の電極板で構成された電極部を排気管内に設け、この電極部に所定の電圧を印加することで粒子状物質を付着させる。次に、粒子状物質が付着した電極部の静電容量等の電気的特性を測定することにより、排気管内の排気の粒子状物質の濃度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−315275号公報
【特許文献2】特開2007−132290号公報
【特許文献3】特開2006−266961号公報
【特許文献4】特開2008−139294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、特許文献3の粒子状物質検出装置は、検出電極に粒子状物質が自然に付着することによる検出電極の電気的特性の変化に基づいて、排気中の粒子状物質の量を検出する。しかしながら、粒子状物質が検出電極の表面にまばらに付着した状態では、検出電極の電気的特性に大きな変化はなく、排気中の粒子状物質を検出することは難しい。このため、検出電極に粒子状物質が付着し始めてから、検出電極の電気的特性に変化が表れるまでに長い時間がかかってしまう。より具体的には、定常運転状態にある車両では、電気的特性に変化が表れるまでに1,2時間程度かかる場合もある。したがって、このような粒子状物質検出装置を排気浄化フィルタの故障検知装置に用いた場合、実際に排気浄化フィルタの故障を検知するまでに時間がかかってしまう。
【0010】
また、特許文献4の粒子状物質検出装置は、上述の特許文献3の粒子状物質検出装置とは異なり、電極部に電圧を印加することにより、電極部に粒子状物質を積極的に付着させる。このため、この粒子状物質検出装置では、特許文献3の粒子状物質検出装置と比較して、短時間で排気中の粒子状物質を検出することができる。
【0011】
ところで、このような粒子状物質検出装置では、粒子状物質の堆積量には限度がある。すなわち、堆積量が上記限界を超えると、堆積量の変化にかかわらず電極部の電気的特性に変化が表れなくなってしまい、結果として排気中の粒子状物質を検出できなくなるおそれがある。
このため、粒子状物質の集塵を積極的に行う特許文献4の粒子状物質検出装置では、短時間で上述の堆積量の限界まで達してしまうため、長時間に亘って検出することが難しい。しかしながら、実際の測定においては、例えば、フィルタから剥がれ落ちた粒子状物質の塊が電極部に付着する等、電極部の電気的特性を短時間で大きく変動させる要因が存在する。このため、長時間に亘る検出が困難な特許文献4の粒子状物質検出装置を故障検知装置に用いた場合、上述のような不規則な変動要因を取り除くことができず、誤検知するおそれがある。
【0012】
また、堆積量の限界に達した場合、電極部の再生、すなわち、電極部に付着した粒子状物質を燃焼する等して除去する必要がある。しかしながら、上述のように粒子状物質を積極的に付着させる特許文献4の粒子状物質検出装置では、電極部の再生を行う回数が多くなってしまうため、電力の消費量が多くなってしまうおそれがある。
【0013】
本発明は、短時間の故障の検知が可能でありながら、誤検知が少なくかつ電力の消費量が少ない排気浄化フィルタの故障検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関(1)の排気通路(4)のうち、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタ(3)の下流に設けられ、排気に含まれる粒子状物質が付着するセンサ素子(12)を備える排気浄化フィルタの故障検知装置であって、前記センサ素子は、排気に含まれる粒子状物質を前記センサ素子に付着させるための集塵電圧が印加される第1電極部(123A,128A)と、前記センサ素子の電気的特性を測定するための測定電圧が印加される第2電極部(127A,127B)と、を有し、前記故障検知装置は、前記第1電極部への集塵電圧の印加を開始する電圧印加開始手段(5,17)と、前記集塵電圧の印加を開始し、前記第2電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第1測定手段(5,17)と、所定の条件が満たされたことに応じて前記第1電極部への集塵電圧の印加を停止する電圧印加停止手段(5,17)と、前記集塵電圧の印加を停止した後、前記第2電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第2測定手段(5,17)と、前記第2測定手段の測定値(CPM)に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定する故障判定手段(5,17)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記第1電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間(TCOL_MAX)が経過するまでの間に前記所定の条件が満たされなかった場合には、前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記集塵電圧は、前記測定電圧に比して大きいことを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成するため請求項4に記載の発明は、内燃機関(1)の排気通路(4)のうち、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタ(3)の下流に設けられ、排気に含まれる粒子状物質が付着するセンサ素子(12)を備える排気浄化フィルタの故障検知装置であって、前記センサ素子は、排気に含まれる粒子状物質を前記センサ素子に付着させるための集塵電圧、及び、前記センサ素子の電気的特性を測定するための前記集塵電圧に比して小さい測定電圧の何れかが選択的に印加される電極部(323A,327A)を有し、前記故障検知装置は、前記電極部に所定の時間に亘って集塵電圧を印加する電圧印加手段(5,17)と、前記集塵電圧を印加した後、前記電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第1測定手段(5,17)と、所定の条件が満たされたか否かを判定する判定手段(5,17)と、前記所定の条件が満たされたと判定された後、前記電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第2測定手段(5,17)と、前記第2測定手段の測定値(CPM)に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定する故障判定手段(5,17)と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記判定手段により前記所定の条件が満たされていないと判定された場合には、前記電圧印加手段による集塵電圧の印加、及び、前記第1測定手段による測定を再び行うことを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間(TCOL_MAX)が経過するまでの間に前記所定の条件が満たされなかった場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記内燃機関の運転状態が過渡運転状態であるか否かを判定する過渡運転状態判定手段(5,17)をさらに備え、前記運転状態が過渡運転状態でない場合には、前記集塵電圧を印加しないことを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記内燃機関の運転状態に基づいて、所定の自然付着期間内における粒子状物質の排出量が所定の量より少ないか否かを判定する排出量判定手段(5,17)をさらに備え、前記自然付着期間内における粒子状物質の排出量が所定の量よりも少ないと判定された場合には、前記故障判定手段による前記排気浄化フィルタの故障の判定を行わないことを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記故障判定手段は、前記第2測定手段の測定値の、所定の自然付着期間に亘る変化量(ΔC)に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定することを特徴とする。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、粒子状物質の排出量が所定量よりも少ない運転状態で前記内燃機関が運転された時間(TIDLE)を、前記自然付着期間(TAFTER)から減算した時間を有効排出時間として、前記故障判定手段は、前記2測定手段の測定値の前記有効排出時間に亘る変化率(∠C)が、所定の判定値(∠CTH)よりも小さい場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記所定の条件は、前記第1測定手段の測定値(CCOL)又は当該測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値(CCOL_TH)を上回ることを含むことを特徴とする。
【0025】
請求項12に記載の発明は、請求項1から7、及び11の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気通路のうち、前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度を検出又は推定する上流濃度検出手段と、前記第2測定手段の測定値に基づいて、前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度を算出する下流側濃度算出手段と、をさらに備え、前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度(DF)と前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度(DR)とに基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定することを特徴とする。
【0026】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度と、前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度とに基づいて、前記排気浄化フィルタに捕集される粒子状物質の割合を算出する捕集率算出手段をさらに備え、前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタに捕集される粒子状物質の割合(X)が所定値(XTH)よりも大きい場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする。
【0027】
請求項14に記載の発明は、請求項1から13の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼除去する再生手段をさらに備え、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了した後、所定の禁止期間を経過するまで、前記故障判定手段による故障の判定を禁止することを特徴とする。
【0028】
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタに流入した粒子状物質の積算量(CNT_PM)を算出する積算量算出手段をさらに備え、前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記積算量が所定量(W_END_REGEN)を超えるまでの期間であることを特徴とする。
【0029】
請求項16に記載の発明は、請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量を推定する捕集量推定手段をさらに備え、前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量が所定量を超えるまでの期間であることを特徴とする。
【0030】
請求項17に記載の発明は、請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタに流入する粒子状物質のうち捕集される粒子状物質の割合を示す捕集率を推定する捕集率推定手段をさらに備え、前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記捕集率が所定値を超えるまでの期間であることを特徴とする。
【0031】
請求項18に記載の発明は、請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してからの経過時間を計測する計時手段をさらに備え、前記禁止期間は、前記計時手段による経過時間の計測を開始してから当該経過時間が所定時間を超えるまでの期間であることを特徴とする。
【0032】
請求項19に記載の発明は、請求項1から13の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼除去する再生手段と、前記排気浄化フィルタの温度を推定又は検出するフィルタ温度検出手段と、をさらに備え、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了した後、前記排気浄化フィルタの温度(TEMP_DPF)が粒子状物質の燃焼温度(T_PM)以上である場合には、前記故障判定手段による故障の判定を禁止することを特徴とする。
【0033】
請求項20に記載の発明は、請求項1から19の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置において、前記センサ素子に付着した粒子状物質を除去する除去手段をさらに備え、前記除去手段は、前記センサ素子の電気的特性の測定値(CREG)が所定の閾値(CREG_)より大きくなったことに基づいて前記センサ素子に付着した粒子状物質を除去し、前記測定値に対する所定の閾値は、前記センサ素子の粒子状物質の付着量に対する前記センサ素子の電気的特性の変化率が所定値未満になる領域内に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
請求項1に記載の発明によれば、第1電極部に集塵電圧を印加した後、所定の条件が満たされたことに応じて、集塵電圧の印加を停止し、センサ素子の電気的特性を第2電極部に印加した測定電圧によって測定する。さらに、この電気的特性の測定値に基づいて、排気浄化フィルタの故障を判定する。
ここで、センサ素子の電気的特性には、センサ素子に十分な量の粒子状物質が付着するまでは変化しない一方、付着した粒子状物質の堆積量が過大となっても変化しないという特性がある。
これに対して本発明では、第1電極部に集塵電圧を印加することにより、十分な量の粒子状物質を短時間でセンサ素子に付着させることができ、センサ素子の電気的特性に変化が現れる状態を早期に作り出すことができる。このため、例えば30秒ほどの短時間で電気的特性に変化が現れる状態を作り出し、排気浄化フィルタの故障の判定を開始することができる。すなわち、応答性が高いため、車両運転中の任意のタイミングで、排気浄化フィルタの故障を判定することができる。
また、センサ素子の電気的特性を測定し、排気浄化フィルタの故障を判定する際には、第1電極部に対する集塵電圧の印加を行わないため、粒子状物質はゆっくりと自然にセンサ素子に付着し、センサ素子の電気的特性は緩やかに変化していくことから、長時間に亘って排気浄化フィルタの故障を判定できる。したがって、上述のような不規則な変動要因を除き、排気浄化フィルタの故障の誤検知を少なくすることができる。
また、本発明では、第1電極部と第2電極部の2つの電極部を備えるため、第1電極部に集塵電圧を印加して粒子状物質の集塵を行いつつ、第2電極部に測定電圧を印加することでセンサ素子の電気的特性を測定することができる。このため、集塵の停止時期をリアルタイムで精度良く判定できることからも、上述の効果が期待できる。
また、長時間に亘って排気浄化フィルタの故障を判定できるため、集塵、測定、再生の行程を繰り返す回数を低減でき、集塵及びヒーターへの電圧の印加に伴う電力の消費を低減できる。
【0035】
請求項2に記載の発明によれば、第1電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間が経過するまでの間に、上記所定の条件が満たされなかった場合、すなわち、第1測定手段の測定値又はこの測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値を上回らなかった場合には、排気浄化フィルタは正常であると判定する。排気浄化フィルタが正常である場合には、内燃機関から排出された粒子状物質のほとんどはこの排気浄化フィルタに捕集される。このため、排気浄化フィルタの下流に設けられたセンサ素子に流入する粒子状物質の量は非常に少なく、センサ素子の電気的特性に変化はあらわれにくい。本発明によれば、このようなセンサ素子の特性を利用して排気浄化フィルタの故障を判定することにより、排気浄化フィルタの故障の検知精度を向上することができる。
【0036】
請求項3に記載の発明によれば、測定電圧よりも大きな集塵電圧を第1電極部に印加する。これにより、集塵電圧を印加した際には、センサ素子に粒子状物質を積極的に付着させることができる。一方、測定電圧を印加した際には、センサ素子に粒子状物質が不要に付着するのを防止することができる。
【0037】
請求項4に記載の発明によれば、電極部に集塵電圧を印加した後、所定の条件が満たされたことに応じて、センサ素子の電気的特性を電極部に印加した測定電圧によって測定する。さらに、この電気的特性の測定値に基づいて、排気浄化フィルタの故障を判定する。
これにより、十分な量の粒子状物質を短時間でセンサ素子に付着させることができ、センサ素子の電気的特性に変化が現れる状態を早期に作り出すことができる。このため、例えば30秒ほどの短時間で電気的特性に変化が現れる状態を作り出し、排気浄化フィルタの故障の判定を開始することができる。すなわち、応答性が高いため、車両運転中の任意のタイミングで、排気浄化フィルタの故障を判定することができる。
また、センサ素子の電気的特性を測定し、排気浄化フィルタの故障を判定する際には、電極部に対する集塵電圧の印加を行わないため、粒子状物質はゆっくりと自然にセンサ素子に付着し、センサ素子の電気的特性は緩やかに変化していくことから、長時間に亘って排気浄化フィルタの故障を判定できる。したがって、上述のような不規則な変動要因を除き、排気浄化フィルタの故障の誤検知を少なくすることができる。
また、長時間に亘って排気浄化フィルタの故障を判定できるため、集塵、測定、再生の行程を繰り返す回数を低減でき、集塵及びヒーターへの電圧の印加に伴う電力の消費を低減できる。
【0038】
請求項5に記載の発明によれば、上記所定の条件が満たされていないと判定された場合には、集塵電圧の印加及びセンサ素子の電気的特性の測定を再び行う。ここで例えば、第1測定手段の測定値又はこの測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値を上回ることを上記所定の条件としたとする。このような条件を課した場合、本発明によれば、センサ素子の電気的特性に変化が現れる状態をより確実かつ早期に作り出すことができる。したがって、排気浄化フィルタの故障の検知にかかる時間を短縮することができる。
【0039】
請求項6に記載の発明によれば、電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間が経過するまでの間に、上記所定の条件が満たされなかった場合、すなわち、第1測定手段の測定値又はこの測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値を上回らなかった場合には、排気浄化フィルタは正常であると判定する。排気浄化フィルタが正常である場合には、内燃機関から排出された粒子状物質のほとんどはこの排気浄化フィルタに捕集される。このため、排気浄化フィルタの下流に設けられたセンサ素子に流入する粒子状物質の量は非常に少なく、センサ素子の電気的特性に変化はあらわれにくい。本発明によれば、このようなセンサ素子の特性を利用して排気浄化フィルタの故障を判定することにより、排気浄化フィルタの故障の検知精度を向上することができる。
【0040】
請求項7に記載の発明によれば、内燃機関の運転状態が過渡運転状態でない場合、すなわち、内燃機関の運転状態が定常運転状態である場合には、集塵電圧を印加しない。内燃機関が定常運転状態にある場合には、粒子状物質の排出量は非常に少ない。このため、定常運転状態にある場合には、集塵電圧を印加しても、センサ素子の電気的特性に変化が現れる程の量の粒子状物質を、短時間でセンサ素子に付着させることは難しい。したがって、このような過渡運転状態には集塵電圧を印加しないようにすることにより、集塵電圧の印加にかかる無駄な電力の消費を抑制することができる。
【0041】
請求項8に記載の発明によれば、所定の自然付着期間内における粒子状物質の排出量が所定の量よりも少ない場合には、排気浄化フィルタの故障の判定を行わない。センサ素子に粒子状物質を自然に付着させている自然付着期間において粒子状物質の排出量が少ない場合、センサ素子の電気的特性の変化は、排気浄化フィルタの状態に係わらず小さいと考えられるため、高い精度で故障を検知することができない。本発明によれば、このような自然付着期間には、故障の判定を行わないとすることにより、排気浄化フィルタの故障の検知精度が低下するのを防止することができる。
【0042】
請求項9に記載の発明によれば、センサ素子の電気的特性の測定値の自然付着期間に亘る変化量に基づいて、排気浄化フィルタの故障を判定する。排気浄化フィルタが故障している場合、内燃機関から排出された粒子状物質のうち幾らかは排気浄化フィルタを通過してしまい、センサ素子に到達する。このため、上述の自然付着期間に亘る測定値の変化量に大きな影響が現れるものと考えられる。本発明によれば、このような排気浄化フィルタの状態により大きな影響があらわれる上記変化量に基づいて故障を判定することにより、排気浄化フィルタの故障の検知精度をさらに向上することができる。
【0043】
請求項10に記載の発明によれば、粒子状物質の排出量が所定量よりも少ない運転状態で内燃機関が運転された時間を、自然付着期間から減算した時間を有効排出時間とし、この有効排出時間に亘るセンサ素子の電気的特性の測定値の変化率が、所定の判定値よりも小さい場合には、排気浄化フィルタは正常であると判定する。このように、アイドル運転状態等の粒子状物質の排出量が少ない運転状態で内燃機関が運転された時間を除いた有効排出時間に亘る電気的特性の変化率に基づいて排気浄化フィルタの故障を判定することにより、排気浄化フィルタの故障の検知精度をさらに向上することができる。
【0044】
請求項11に記載の発明によれば、第1測定手段の測定値又はこの測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値を上回ることに応じて、第1電極部への集塵電圧の印加を停止する。これにより、センサ素子の電気的特性に変化が現れる状態を、より確実に早期に作り出すことができる。したがって、排気浄化フィルタの故障の検知にかかる時間を短縮することができる。また、電気的特性に変化が現れてから集塵電圧の印加を停止することにより、余分な電力の消費を低減することができる。
【0045】
請求項12に記載の発明によれば、排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度に加えて、排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度に基づいて、排気浄化フィルタの故障を判定する。これにより、排気浄化フィルタの故障の判定精度をさらに向上することができる。例えば、低負荷運転状態やアイドル運転状態では、内燃機関から排出される粒子状物質の量が少なく、またその殆どは排気浄化フィルタに捕集されてしまうため、排気浄化フィルタの下流側に排出される粒子状物質の量は非常に少ない。このため、例えば下流側の粒子状物質の濃度のみに基づいて排気浄化フィルタの故障を判定した場合、低負荷運転状態やアイドル運転状態では粒子状物質の濃度を高い精度で検出できないため、排気浄化フィルタの故障を精度良く判定することができない。これに対して本発明では、下流側の粒子状物質の濃度に加えて、この下流側よりも高い精度で検出できる上流側の粒子状物質の濃度に基づいて排気浄化フィルタの故障を判定することにより、このような低負荷運転状態やアイドル運転状態においても排気浄化フィルタの故障を精度良く判定することができる。
【0046】
請求項13に記載の発明によれば、排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度と、排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度とに基づいて、排気浄化フィルタに捕集される粒子状物質の割合、すなわち排気浄化フィルタの捕集率を算出し、この捕集率に応じて排気浄化フィルタの故障を判定する。これにより、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0047】
排気のうち粒子状物質のみを捕集できるように無数の細孔が形成された排気浄化フィルタでは、捕集した粒子状物質を燃焼除去した後、粒子状物質がこれら細孔を埋めるまでの間は、排気浄化フィルタの状態にかかわらず捕集性能が一時的に低下する。そこで、請求項14に記載の発明によれば、排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼除去した後、所定の禁止期間が経過するまで、排気浄化フィルタの故障の判定を禁止する。これにより、上記燃焼除去後、粒子状物質が細孔を埋めるまで排気浄化フィルタの下流に排出される粒子状物質により、排気浄化フィルタが故障したと誤って判定することを防止することができる。すなわち、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0048】
再生手段により粒子状物質を燃焼除去してから、排気浄化フィルタに新たに流入した粒子状物質の積算量が所定量を超えた場合には、排気浄化フィルタの無数の細孔は粒子状物質により埋められたと考えられる。そこで、請求項15に記載の発明によれば、上記燃焼除去が終了してから、排気浄化フィルタに流入した粒子状物質の積算量が所定量を超えるまでの期間を禁止期間とすることにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0049】
再生手段により粒子状物質を燃焼除去してから、排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量が所定量を超えた場合には、排気浄化フィルタの無数の細孔は粒子状物質により埋められたと考えられる。そこで、請求項16に記載の発明によれば、上記燃焼除去が終了してから、排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量が所定量を超えるまでの期間を禁止期間とすることにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0050】
請求項17に記載の発明によれば、再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、排気浄化フィルタの捕集率が所定値を超えるまでの期間を禁止期間とすることにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0051】
再生手段により粒子状物質を燃焼除去してから、所定の時間が経過した場合には、排気浄化フィルタの無数の細孔は粒子状物質により埋められたと考えられる。そこで、請求項18に記載の発明によれば、上記燃焼除去が終了してから経過した時間が所定時間を超えるまでの期間を禁止期間とすることにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0052】
排気浄化フィルタが故障した状態であっても、再生手段により粒子状物質の燃焼除去が終了した後では、新たに流入する粒子状物質も余熱により排気浄化フィルタで燃焼してしまうため、排気浄化フィルタの下流に排出される粒子状物質の量は少ない。そこで、請求項19に記載の発明によれば、上記燃焼除去が終了した後、排気浄化フィルタの温度が粒子状物質の燃焼温度以上である場合には、故障の判定を禁止する。これにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0053】
請求項20に記載の発明によれば、センサ素子の電気的特性の測定値が所定の閾値より大きくなったことに基づいてセンサ素子に付着した粒子状物質を除去する。またこの測定値に対する閾値を、センサ素子の粒子状物質の付着量に対するセンサ素子の電気的特性の変化率が所定値未満になる領域内、つまりセンサ素子の感度が低い領域内に設定する。これにより、センサ素子を常に感度の良い領域で使用することができるので、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係るDPFの故障検知装置を含む、内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。
【図2】上記実施形態に係るPMセンサの概略構成を示す図である。
【図3】上記実施形態に係るセンサ素子の斜視図である。
【図4】上記実施形態に係るセンサ素子の分解斜視図である。
【図5】上記実施形態に係るセンサ素子の集塵部内にPMが全面に付着して堆積したときの様子を模式的に示した図である。
【図6】上記実施形態に係るセンサ素子の静電容量の時間変化を示す図である。
【図7】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】上記実施形態に係るセンサ素子の集塵部にPMを自然付着させた場合におけるPMの堆積量と、集塵部の静電容量の時間変化との関係を示す図である。
【図11】静電容量の変化量に基づいてDPFの故障判定を行う方法を説明するための図である。
【図12】静電容量の変化率に基づいてDPFの故障判定を行う方法を説明するための図である。
【図13】2つの異なる運転条件の下でエンジンを運転させた場合における集塵部の静電容量の時間変化を示す図である。
【図14】2つの異なる運転条件の下での静電容量の時間変化を重ねて示した図である。
【図15】2つの異なる運転条件の下での静電容量の時間変化を重ねて示した図である。
【図16】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の制御例を示すタイムチャートである。
【図17】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の制御例を示すタイムチャートである。
【図18】本発明の第2実施形態に係るPMセンサのセンサ素子の分解斜視図である。
【図19】上記実施形態に係るセンサ素子の集塵部内にPMが全面に付着して堆積したときの様子を模式的に示した図である。
【図20】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図21】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図22】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図23】所定のPM濃度の排気の下でPMセンサを作動させた場合における、静電容量の測定値の変化を示す図である。
【図24】本発明の第3実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図25】本発明の第4実施形態に係るDPFの故障検知装置を含む、エンジン及びその制御装置の構成を示す図である。
【図26】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図27】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図28】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図29】本発明の第5実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図30】DPF再生運転を実行した後におけるDPF下流の排気のPM濃度の特徴的な振る舞いを示す図である。
【図31】本発明の第6実施形態に係るDPF故障検知処理の実行を判断する手順を示すフローチャートである。
【図32】センサ素子に堆積したPMの量と、このセンサ素子の静電容量との関係を示す図である。
【図33】本発明の第7実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図34】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図35】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【図36】上記実施形態に係るDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、第2実施形態以後の説明において、第1実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0056】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置を含む、内燃機関及びその制御装置の構成を示す図である。内燃機関(以下単に「エンジン」という)1は、各気筒内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンであり、各気筒には図示しない燃料噴射弁が設けられている。これら燃料噴射弁は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)5により電気的に接続されており、燃料噴射弁の開弁時間及び閉弁時間は、ECU5により制御される。
【0057】
エンジン1の排気が流通する排気管4には、排気浄化フィルタ(以下、「DPF(Diesel Particulate Filter)」という)3と、排気に含まれる炭素を主成分とした粒子状物質(以下、「PM(Particulate Matter)」という)を検出する粒子状物質検出装置(以下、「PMセンサ」という)11とが、上流側からこの順で設けられている。
【0058】
DPF3は、多孔質体のフィルタ壁を備え、排気がこのフィルタ壁の微細な孔を通過する際、排気に含まれるPMを、フィルタ壁の表面及びフィルタ壁中の孔に堆積させることにより、これを捕集する。フィルタ壁の構成材料としては、例えば、チタン酸アルミニウムやコージェライト等を材料とした多孔質体が使用される。
【0059】
図2は、PMセンサ11の概略構成を示す図である。
PMセンサ11は、排気管4の内部のうちDPF3の下流側に設けられたセンサ素子12と、ECU5に接続され、このセンサ素子22を制御するセンサコントローラ17と、を備える。PMセンサ11は、以下に示すように、排気管4内を流通する排気に含まれるPMが付着したセンサ素子12の電気的特性を測定し、この測定値に基づいて、排気管内を流通する排気中のPMを検出する。
【0060】
センサコントローラ17は、集塵用DC電源13と、インピーダンス測定器14と、センサ素子12の温度を制御する温度制御装置15と、を含んで構成される。
【0061】
図3は、センサ素子12の斜視図である。図3に示すように、センサ素子12は、PMを含む排気が通過する通気孔を有しており、この通気孔により集塵部120が形成される。排気中に含まれるPMは、この集塵部120の内壁に付着して堆積する。
【0062】
図4は、センサ素子12の分解斜視図である。センサ素子12は、図4に示すように、一対の電極板130,131を、板状のスペーサ125A,125Bを介装して組み合わせ、ヒーター層122,129及びアルミナプレート121で挟持することにより構成される。これにより、電極板130,131、スペーサ125A,125Bに囲まれた集塵部120が形成される。
【0063】
電極板130は、誘電体層124と、集塵電極層123とを積層することにより形成される。また、電極板131は、誘電体層126と、測定電極層127と、集塵電極層128とを積層することにより形成される。
【0064】
測定電極層127は、一対の櫛形の測定電極127A,127Bを備える。具体的には、測定電極127A,127Bは、測定電極層127の一端側の集塵部120に対応する位置に形成された一対の櫛歯部と、この櫛歯部から他端側へかけて延びる一対の櫛本体部と、を含んで構成される。より具体的には、測定電極127A,127Bは、一方の櫛形の測定電極127Aの櫛歯部と他方の櫛形の測定電極127Bの櫛歯部とが相互に挟み合うように対向配置されている。
また、一対の櫛本体部は、インピーダンス測定器14に電気的に接続されている。
【0065】
ここで、測定電極層127に櫛形の測定電極127A,127Bを備える本実施形態のPM検出メカニズムについて説明する。
図5は、本実施形態のセンサ素子12の集塵部120内にPMが全面に付着して堆積したときの様子を模式的に示した図である。図5に示すように、集塵部120に集塵されたPMは、櫛形の測定電極127A,127Bの櫛歯部上に誘電体層を介して堆積する。このとき、隣接する測定電極127A,127B間におけるもれ電界が、堆積したPMによる影響を受け、測定電極127A,127B間の電気的特性が変化する。この電気的特性の変化は、PM堆積量に相関があることから、この電気的特性の変化を測定することにより、排気に含まれるPMを検出できる。なお、以下の説明において、センサ素子12の電気的特性とは、センサ素子12のうちPM堆積量に相関のある集塵部120の電気的特性を意味する。
【0066】
集塵電極層123,128は、タングステン導体層からなる集塵電極123A,128Aを備える。この集塵電極123A,128Aは、集塵電極層123,128の一端側の集塵部120に対応する位置に略正方形状に形成された導体部と、この導体部からアルミナ基板の他端側へかけて線状に延びる導線部と、を含んで構成される。
また、集塵電極123A,128Aの導線部は、集塵用DC電源13に電気的に接続されている。
なお、集塵電極123A、128Aの導体部の一辺の長さは、約10mmである。
【0067】
ヒーター層122,129は、ヒーター配線122A,129Aを備え、これらヒーター配線122A,129Aは、温度制御装置15に電気的に接続されている。
また、アルミナプレート121は、略矩形状のアルミナ基板であり、厚みは約1mmである。
【0068】
集塵用DC電源13は、集塵電極層123,128に備えられた集塵電極123A,128Aの導線部に電気的に接続されている。集塵用DC電源13は、ECU5から送信された制御信号に基づいて動作し、後述する測定電圧よりも大きい所定の集塵電圧を集塵電極層123,128間に印加する。これにより、排気中のPMを、集塵部120に付着させる。
【0069】
インピーダンス測定器14は、測定電極層127の一対の櫛本体部に電気的に接続されている。インピーダンス測定器14は、ECU5から送信された制御信号に基づいて動作し、所定の測定電圧及び測定周期のもとで、センサ素子12の電気的特性を検出し、検出した静電容量に略比例した検出信号をECU5に出力する。なお、本実施形態では、インピーダンス測定器14により、センサ素子12の電気的特性として特に静電容量を測定するが、これに限るものではない。
【0070】
温度制御装置15は、各電極板130,131に接して設けられたヒーター層122,129のヒーター配線122A,129Aに電気的に接続されており、これらヒーター層122,129に電力を供給するヒーター用DC電源(図示せず)を含んで構成される。
ヒーター用DC電源は、ECU5から送信された制御信号に基づいて動作し、ヒーター層122,129に所定の電流を通電する。ヒーター層122,129は、ヒーター用電源から電流が供給されると発熱し、各電極板130,131を加熱する。これにより、各電極板130,131を加熱し、集塵部120に付着したPMを燃焼除去でき、センサ素子12を再生できる。
【0071】
図1に戻って、ECU5には、以上のようなPMセンサ11のセンサコントローラ17の他、警告灯6、クランク角度位置センサ7、及びアクセルセンサ8等が接続されている。
【0072】
警告灯6は、例えば、車両のメータパネルに設けられ、ECU5から送信された制御信号に基づいて点灯する。ECU5は、DPF3が故障したと判定した場合、すなわちDPFが故障した状態であることを示す後述の故障判定フラグが「1」にされた場合には、この警告灯6を点灯させる。これにより、DPF3が故障したことを運転者に報知することができる。
【0073】
クランク角度位置センサ7は、エンジン1のクランク軸の回転角度を検出し、検出信号をECU5に出力する。アクセルセンサ8は、車両のアクセルペダルの踏み込み量を検出し、検出信号をECU5に出力する。エンジン1の運転状態を示す運転状態パラメータとしてのエンジン回転数Nや燃料噴射量Wは、これらクランク角度位置センサ7及びアクセルセンサ8の出力に基づいて、ECU5により算出される。
【0074】
ECU5は、各種センサからの入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)とを備える。この他、ECU5は、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路と、センサコントローラ17、警告灯6、及びエンジン1の燃料噴射弁等に制御信号を出力する出力回路とを備える。
【0075】
次に、図6〜図15を参照して、DPFの故障を判定するDPF故障検知処理について説明する。
【0076】
図6は、所定の運転条件の下でエンジンを運転させた場合における、集塵部の静電容量の時間変化を示す図である。図6において、上段は車速の時間変化を示し、下段はセンサ素子の静電容量の時間変化を示す。また図6に示す例では、それぞれ破損の程度が異なる3種類のDPFを準備し、これらDPFごとに同じ運転条件の下でセンサ素子の静電容量を測定した結果を示す。
【0077】
図6に示すように、排気に含まれるPMが集塵部に徐々に堆積することにより、センサ素子の静電容量は次第に増加する。また、DPFの破損の程度が大きくなると、DPFを通過するPMの量が増加し、集塵部に付着するPMの量も増加するため、静電容量の変化量も大きくなる。後に詳述するように、本実施形態のDPF故障検知処理では、このような静電容量の変化量に基づいてDPFの故障を判定する。
【0078】
また、図6に示すように、エンジンの運転状態が過渡運転状態にある期間、特に、車速が「0」のアイドル運転状態から所定の速度まで加速する期間では、センサ素子の静電容量も増加する。これに対して、エンジンの運転状態が定常運転状態にある場合、すなわち、エンジンがアイドル運転状態にある場合、減速している状態にある場合、又は等速で走行している状態にある場合等には、静電容量の変化は小さい。これは、エンジンの運転状態が過渡運転状態にある場合には、特にPMの排出量が多いことを示す。
【0079】
後に詳述するように、本実施形態のDPF故障検知処理では、エンジンの運転状態がこのような過渡運転状態にある時期に合わせて集塵電圧を集塵電極に印加することで、センサ素子の静電容量に変化が現れるまで集塵部にPMを積極的に集塵する。また、このようにして積極的に集塵した後は、集塵電圧の印加を停止し、集塵部に自然にPMを堆積させる。なお以下では、集塵電圧を印加することで集塵部にPMを積極的に集塵することを静電集塵といい、集塵電圧を印加することなく集塵部にPMを付着させることを自然付着という。
【0080】
図7〜図9は、DPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。以下、詳述するように、このDPF故障検知処理は、PMセンサの出力に基づいてDPFが正常な状態であるか又は故障した状態であるかを判定する処理であり、エンジンの始動後、ECU5により実行される。
【0081】
このDPF故障検知処理は、主に、4つの工程に分けられる。より具体的には、DPF故障検知処理は、エンジンの運転状態を監視する運転状態監視工程(ステップS1〜S7)と、PMを静電集塵する静電集塵工程(ステップS11〜S16)と、PMを自然付着させた後、センサ素子の集塵部の静電容量を測定する測定工程(ステップS21〜S25)と、DPFの故障を判定する故障判定工程(ステップS31〜S35)と、を含んで構成される。
【0082】
運転状態監視工程(ステップS1〜S7)について説明する。
この運転状態監視工程では、エンジンの運転状態を監視し、集塵電圧の印加を開始するのに適した時期を検出する。ここで、集塵電圧の印加を開始するのに適した時期とは、集塵電圧を印加することで効率的にPMを集塵できる時期、すなわち、PMの排出量が比較的多い時期を示す。より具体的には、この集塵電圧の印加を開始するのに適した時期とは、例えば、エンジンの運転状態が、安定した状態から所定の車速まで加速している間の過渡運転状態にある時期を示す。
【0083】
ステップS1では、PMセンサの初期処理を実行する。より具体的には、この初期処理では、センサ素子を再生する他、断線及びショートの有無の検知、及びPMセンサの校正等が行われる。
【0084】
ステップS2では、監視用タイマをスタートし、運転状態を監視した時間を示す監視時間TMONの計測を開始する。
【0085】
ステップS3では、エンジン回転数N、燃料噴射量W、及び車速Vの3つの運転状態パラメータを測定し、これら測定値を事前運転状態パラメータ(回転数NPRE[T]、燃料噴射量WPRE[T]、車速VPRE[T])として記録する。
【0086】
ステップS4では、所定のアイドル判定時間TTH_IDLE以上、アイドル運転状態が継続したか否か、すなわち、アイドル判定時間TTH_IDLE以上、車速が「0」であったか否かを判定する。この判定がYESの場合にはステップS5に移り、NOの場合にはステップS3に移る。
【0087】
ステップS5では、監視時間TMONが所定の上限時間TMON_MAXよりも小さいか否かを判定する。この判定がYESの場合にはS6に移る。この判定がNOの場合には、監視時間TMONが上限時間TMON_MAXを超えたことに応じて、一旦センサ素子を再生する必要があると判断しステップS1に移る。
【0088】
ステップS6では、事前運転状態パラメータ(NPRE,WPRE,VPRE)の記録に基づいて、エンジンの運転状態が安定した状態にあるか否かを判定する。より具体的には、車速VPREが所定の速度以上にある時間が所定の時間以内であり、かつ、燃料噴射量WPREが所定の量以下である場合には、エンジンの運転状態は安定した状態にあると判定する。
【0089】
ステップS7では、車速Vが所定の判定速度VTHより大きいか否かを判定することにより、エンジンの運転状態が過渡運転状態であるか否かを判定する。この判定がYESの場合にはステップS11に移り、静電集塵工程を開始する。また、この判定がNOの場合にはステップS7に移る。
【0090】
静電集塵工程(ステップS11〜S16)について説明する。
この静電集塵工程では、所定の条件が満たされるまで集塵電極に集塵電圧を印加することにより静電集塵を行う。
【0091】
ステップS11では、集塵電極への集塵電圧の印加を開始する。すなわち、静電集塵を開始する。ここで、集塵電圧は、例えば2kVに設定される。
【0092】
ステップS12では、静電集塵用タイマをスタートし、静電集塵を行った時間を示す静電集塵時間TCOLの計測を開始する。
【0093】
ステップS13では、集塵電圧を印加したまま、測定電極に測定電圧を印加することにより集塵部の静電容量を測定し、この測定値を集塵時静電容量CCOLとして記録する。ここで、測定電圧は、上述の集塵電圧よりも十分に小さな値、例えば1Vに設定される。
【0094】
ステップS14では、静電集塵の完了を判定するために設定された所定の条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態では、測定した集塵時静電容量CCOLが所定の完了判定値CCOL_THを上回ることを、静電集塵の完了を判定する条件とする。この判定がYESの場合、すなわち集塵時静電容量CCOLが完了判定値CCOL_THよりも大きい場合にはステップS16に移る。この判定がNOの場合、すなわち集塵時静電容量CCOLが完了判定値CCOL_TH以下である場合にはステップS15に移る。なお、この条件の他、静電集塵を開始してから所定の時間が経過したことを、静電集塵の完了を判定する条件としてもよい。
【0095】
ここで、上述のように、集塵時静電容量CCOLが完了判定値CCOL_THを上回ったことに応じて静電集塵を完了する点について詳細に説明する。
図10は、センサ素子の集塵部120にPMを自然付着させた場合におけるPMの堆積量と、集塵部120の静電容量の時間変化との関係を示す図である。図10の横軸は時間を表し、縦軸は静電容量を表す。
【0096】
図10の領域Iでは、時間の経過とともに集塵部120の内壁にPMが徐々に堆積していくものの、最初は薄くまばらに堆積するだけであるため、集塵部120の電気的特性に影響は無く、静電容量の変化は見られない。
領域IIでは、時間の経過により、集塵部120の内壁全面にPMが薄く堆積し始め、集塵部120の電気的特性に影響を与えるようになる結果、静電容量が増大し始める。
さらに時間が経過した領域IIIでは、集塵部120の内壁全面にPMが密に厚く堆積し、集塵部120の電気的特性に大きく影響を及ぼすようになる結果、静電容量がさらに増大し、やがて静電容量は一定の値に収束する。すなわち、PMセンサには、測定可能な最大静電容量が存在する。
【0097】
ところで、図10に示すように、静電容量に変化が見られない領域Iの時間は非常に長い。これは、自然付着により集塵部120の内壁全面にPMが堆積して静電容量に変化が生じるまでには、相当の長時間(例えば、定常運転が維持された場合には1〜2時間)を要することを意味する。このことは、DPFの故障の判定はセンサ素子の静電容量の変化量に基づいて行う本実施形態のDPF故障検知処理では、故障の判定を開始するまでに長い時間を要することを意味する。
一方、静電容量の変化が見られた後においても、従来のように集塵電圧を印加し続けてしまうと、PMが大量に堆積する結果、短時間で測定可能な最大静電容量に到達してしまう。
このため、本実施形態のPMセンサは、集塵電圧を印加することによってPMの堆積を促進し、静電容量に変化が見られるようになったところで、すなわち、静電容量が上述の完了判定値CCOL_THを上回ったところで、集塵電圧の印加を停止して自然付着に切り換える。これにより、短時間で排気中のPMを検出可能な状態にできるとともに、長時間の検出が可能となっている。
【0098】
図8に戻って、ステップS15では、静電集塵時間TCOLが、所定の上限時間TCOL_MAXに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち、上述の上限時間TMONに亘り静電集塵を行ってもセンサ素子の静電容量CCOLが完了判定値CCOL_THを上回らなかった場合には、DPFの下流にPMが排出されていない、すなわちDPFは故障していないと判断し、ステップS34に移る。この判定がNOの場合には、ステップS13に移り、静電集塵を継続する。
【0099】
ステップS16では、静電集塵の完了を判定するための上述の条件が満たされたことに応じて、集塵電極への集塵電圧の印加を停止する。
【0100】
測定工程(ステップS21〜S25)について説明する。
この測定工程では、所定の上限時間TMEASに亘ってPMを自然付着させた後、自然付着後静電容量CPMを測定する。
【0101】
ステップS21では、自然付着用タイマをスタートし、PMを自然付着させた時間を示す自然付着時間TAFTERの計測を開始する。
【0102】
ステップS22では、運転状態パラメータ(回転数N、燃料噴射量W、車速V)を測定し、これら測定値を自然付着時運転状態パラメータ(回転数NMEAS[T]、燃料噴射量WMEAS[T]、車速VMEAS[T])として記録する。
【0103】
ステップS23では、自然付着時間TAFTERが所定の上限時間TMEASに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合にはステップS24に移り、NOの場合にはステップS22に移る。なお以下では、ステップS21において自然付着用タイマをスタートしてから、上限時間TMEASに達するまでの期間を自然付着期間とする。
【0104】
ステップS24では、測定電極に測定電圧を印加することにより集塵部の静電容量を測定し、この測定値を自然付着後静電容量CPMとして記録する。
【0105】
ステップS25では、自然付着期間内におけるPMの排出量が所定の量以上であるか否かを判定する。本実施形態では、PMの排出量が所定の量以上であるか否かの判定を、自然付着時運転状態パラメータ(NMEAS,WMEAS,VMEAS)に基づいて間接的に行う。
【0106】
より具体的には、例えば、自然付着期間内のうち車速VMEASが所定の速度を上回っていた時間が所定時間以上であり、かつ、自然付着期間内において燃料噴射量WMEASが所定の量以上に達した場合には、自然付着期間内におけるPMの排出量が所定の量以上であったと判定する。このステップにおいて、PMの排出量が所定の量以上であると判定された場合には、ステップS31に移る。また、PMの排出量が所定の量より少ないと判定された場合には、ステップS31〜S35の故障判定工程を行わずに、この処理を終了する。
【0107】
故障判定工程(ステップS31〜S35)について説明する。
この故障判定工程では、測定した自然付着後静電容量CPMに基づいて、DPFの故障を判定する。自然付着後静電容量CPMに基づいてDPFの故障判定を行う方法としては、具体的には、静電容量の変化量ΔCに基づく方法(図11参照)と、静電容量の変化率∠C(=ΔC/ΔT)に基づく方法(図12参照)との2つが挙げられる。
【0108】
図11に示すように、静電容量の変化量ΔCに基づく方法では、自然付着後静電容量CPMから、集塵開始時の静電容量CCOLを減算することにより、所定の自然付着期間ΔTに亘る静電容量の変化量ΔCを算出する。さらに、算出した変化量ΔCと、所定の故障判定値CTHとを比較する。変化量ΔCが故障判定値CTHよりも大きい場合には、DPFは故障した状態であると判定し、変化量ΔCが故障判定値CTH以下である場合には、DPFは正常な状態であると判定する。
【0109】
図12に示すように、静電容量の変化率∠Cに基づく方法では、上述と同じ手順で自然付着期間ΔTに亘る静電容量の変化量ΔCを算出する。次に、算出した変化量ΔCを自然付着期間ΔTで割ることにより、変化率∠Cを算出する。さらに、算出した変化率∠Cと所定の故障判定値∠CTHとを比較する。変化率∠Cが故障判定値∠CTHよりも大きい場合には、DPFは故障した状態であると判定し、変化率∠Cが故障判定値∠CTH以下である場合には、DPFは正常な状態であると判定する。
【0110】
本実施形態のDPF故障検知処理では、以下に示すように、以上のような2つの判定方法のうち変化率∠Cに基づく方法によりDPFの故障を判定するが、これに限るものではない。
【0111】
図9に戻って、ステップS31では、記録された自然付着時運転状態パラメータ(NMEAS,WMEAS,VMEAS)に基づいて、アイドル運転時間TIDLEを算出する。このアイドル運転時間は、自然付着期間内においてアイドル運転状態が行われた時間、すなわち速度VMEASが「0」であった時間を積算することで算出される。
【0112】
ステップS32では、自然付着期間に亘る静電容量の変化率∠Cを算出する。この静電容量変化率∠Cは、下記式(1)に示すように、自然付着期間に亘る静電容量の変化量CPM−CCOLを、PMを自然付着させていた時間TAFTERからアイドル時間TIDLEを減算した時間で割ることにより算出される。
∠C=(CPM−CCOL)/(TAFTER−TIDLE) (1)
【0113】
ステップS33では、静電容量変化率∠Cが、所定の故障判定値∠CTHより小さいか否かを判定する。この判定がYESの場合には、DPFは正常な状態であると判定するとともにステップS34に移り、故障判定フラグを「0」にした後、この処理を終了する。また、この判定がNOの場合には、DPFは故障した状態であると判定するとともにステップS35に移り、故障判定フラグを「1」にした後、この処理を終了する。なお、この故障判定フラグを「1」にすることに応じて、警告灯が点灯される。
【0114】
ここで、上記式(1)により静電容量の変化率∠Cを算出するにあたり、PMを自然付着させていた時間TAFTERからアイドル時間TIDLEを減算した理由について、図13〜図15を参照して説明する。
【0115】
図13は、2つの異なる運転条件の下でエンジンを運転させた場合におけるセンサ素子の静電容量の時間変化を示す図である。図13において、上段は運転条件Aの下でエンジンを運転させた場合における静電容量の時間変化を示し、下段は運転条件Bの下でエンジンを運転させた場合における静電容量の時間変化を示す。また、図13に示す例では、それぞれ破損の程度が異なる2種類のDPFを準備し、これらDPFごとに同じ運転条件の下で集塵部の静電容量を測定した結果を示す。図13において、ハッチングで示された期間は、車速が「0」のアイドル運転が行われた期間を示す。アイドル運転が行われていない期間は、車速が「0」でない走行期間となっている。
【0116】
図13に示すように、アイドル運転が行われた期間では、PMの排出量が少ないため、静電容量の変化は小さい。また、これら運転条件Aと運転条件Bとでは、アイドル運転が行われた期間の長さのみ異なる。
【0117】
図14及び図15は、以上のような2つの異なる運転条件A,Bの下での静電容量の時間変化を重ねて示した図である。より具体的には、図15は、静電容量の時間変化のうちアイドル運転が行われた期間を除いたものを示す。図14は、これに対して、静電容量の時間変化のうちアイドル運転が行われた期間を除いていないものを示す。また、これら図14及び図15では、運転条件Aの下での静電容量の時間変化を太線で示し、運転条件Bの下での時間変化を細線で示す。
【0118】
ここで、図14を参照して、破損の程度が小さいDPFを用い運転条件Aの下で測定した静電容量の時間変化と、破損の程度が大きいDPFを用い運転条件Bの下で測定した静電容量の時間変化とを比較する。
運転条件Aの下では、静電容量は、1回目の走行期間を経てC1に到達し、さらに2回目の走行期間を経てC2に到達する。一方運転条件Bの下では、静電容量は、1回目の走行期間を経てC2に到達し、さらに2回目の走行期間を経てC3に到達する。
このように、2つのDPFは破損の程度が異なるものの、運転条件Aと運転条件Bとの間でアイドル運転の長さが異なることに起因して、静電容量の測定値が同じC2になる時期がある。したがって、例えば、時刻T1における自然付着後静電容量CPMに基づいてDPFの故障の判定を行った場合、どちらの測定においても静電容量の変化量は同じであるため、判定の結果は同じになってしまう。これは、アイドル運転を行った期間が長くなるに従い、静電容量の変化量は見かけ上小さくなってしまうので、正常側に誤判定される傾向があることを意味する。
【0119】
これに対して、図15に示すように、自然付着させていた期間からアイドル運転が行われた期間を除き、実質的にPMが排出されていた期間のみ考慮することにより、運転状態Aの下での静電容量の時間変化と、運転状態Bの下での静電容量の時間変化とを一致させることができる。これにより、上述のような誤判定を防止することができる。
【0120】
図16は、DPF故障検知処理の制御例を示すタイムチャートである。図16において、上段は車速の時間変化を示し、下段はセンサ素子の静電容量の時間変化を示す。また、図16では、正常なDPFを用いた場合の静電容量の時間変化を破線で示し、破損したDPFを用いた場合の静電容量の時間変化を実線で示す。
【0121】
この制御例では、時刻T0から時刻T1までの間は、アイドル運転を行い、次に時刻T1から時刻T4にかけて、停止した状態から車速がVMAXになるまで加速した例を示す。なお、時刻T0におけるセンサ素子の静電容量はCINIであったとする。
【0122】
破損したDPFを用いた場合、以下の手順により、その故障が検知される。
時刻T0から時刻T1までの間において、アイドル判定時間TTH_IDLE以上、アイドル運転状態を継続したことが判定される(ステップS4)。その後、安定したエンジンの運転状態から加速し、時刻T2において車速が判定速度VTHを上回ったことにより、エンジンの運転状態が過渡運転状態になったと判定される(ステップS6,S7)。
【0123】
時刻T2では、エンジンの運転状態が過渡運転状態であると判定されたことに応じて、集塵電圧の印加が開始され(ステップS11)、集塵部にPMが徐々に集塵される。これ以降、時刻T3において集塵電圧の印加を停止するまでの間は、静電集塵期間となる。集塵電圧を印加し、集塵部にPMが堆積することにより、集塵部の静電容量が上昇し始める。
【0124】
時刻T3では、集塵部の静電容量の測定値が完了判定値CCOL_THを上回ったと判定されたことに応じて、集塵電圧の印加が停止される(ステップS14,S16)。これ以降、自然付着期間となる。時刻T5では、PMを自然付着させ始めてから上述の上限時間TMEASが経過したことに応じて、自然付着後静電容量CPMが測定される(ステップS23,S24)。また、この自然付着後静電容量CPMに基づいて、静電容量変化率∠Cが算出された後、算出した静電容量変化率∠Cと故障判定値∠CTHとが比較され、この比較に基づいてDPFの故障が判定される(ステップS32〜S35)。ここでは、静電容量変化率∠Cが故障判定値∠CTHよりも大きいと判定されたことに応じて、DPFは故障したものであると判定される。
【0125】
一方、正常なDPFを用いた場合、時刻T2から集塵電圧の印加を開始しても、センサ素子の静電容量が完了判定値CCOL_THを上回ることはない。このため、時刻T6において、静電集塵の上限時間TCOL_MAXが経過したと判定されたことに応じて、DPFは正常なものであると判定される(ステップS15,S34)。
【0126】
図17は、DPF故障検知処理の制御例を示すタイムチャートである。図17は、図16に示す制御例とは異なり、静電集塵を開始してから所定の上限時間TMAXが経過したことを、静電集塵の完了を判定する条件とした場合における制御例を示す。
【0127】
この制御例では、図16に示す例と同様に、時刻T0から時刻T1までの間は、アイドル運転を行い、次に時刻T1から時刻T4にかけて、停止した状態から車速がVMAXになるまで加速した例を示す。
【0128】
破損したDPFを用いた場合、以下の手順により、その故障が検知される。
時刻T0から時刻T1までの間において、アイドル判定時間TTH_IDLE以上、アイドル運転状態を継続したことが判定される。その後、安定したエンジンの運転状態から加速し、時刻T2において車速が判定速度VTHを上回ったことにより、エンジンの運転状態が過渡運転状態になったと判定される。
【0129】
時刻T2では、エンジンの運転状態が過渡運転状態であると判定されたことに応じて、集塵電圧の印加が開始され、集塵部にPMが徐々に集塵される。これ以降、時刻T3において集塵電圧の印加を停止するまでの間は、静電集塵期間となる。集塵電圧を印加し、集塵部にPMが堆積することにより、センサ素子の静電容量が上昇し始める。
【0130】
時刻T3では、静電集塵を開始してから上限時間TMAXが経過したことに応じて、集塵電圧の印加が停止される。これ以降、自然付着期間となる。時刻T5では、PMを自然付着させ始めてから上限時間TMEASが経過したことに応じて、自然付着後静電容量CPMが測定される。また、この自然付着後静電容量CPMに基づいて、静電容量変化率∠Cが算出された後、算出した静電容量変化率∠Cと故障判定値∠CTHとが比較され、この比較に基づいてDPFの故障が判定される。ここでは、静電容量変化率∠Cが故障判定値∠CTHよりも大きいと判定されたことに応じて、DPFは故障したものであると判定される。
【0131】
一方、正常なDPFを用いた場合、時刻T2から時刻T3まで静電集塵を行い、その後時刻T5まで自然付着させても、静電容量がCINIから大きく変化することはない。このため、時刻T5では、静電容量変化率∠Cが故障判定値∠CTHよりも小さいと判定されたことに応じて、DPFは正常なものであると判定される。
【0132】
本実施形態によれば、集塵電極123A,128Aに集塵電圧を印加することにより、十分な量のPMを短時間でセンサ素子12に付着させることができ、センサ素子12の静電容量に変化が現れる状態を早期に作り出すことができる。このため、例えば30秒ほどの短時間で電気的特性に変化が現れる状態を作り出し、DPFの故障の判定を開始することができる。すなわち、応答性が高いため、車両運転中の任意のタイミングで、DPFの故障を判定することができる。
また、センサ素子12の静電容量を測定し、DPFの故障を判定する際には、集塵電極123A,128Aに対する集塵電圧の印加を行わないため、PMはゆっくりと自然にセンサ素子12に付着し、センサ素子12の静電容量は緩やかに変化していくことから、長時間に亘ってDPFの故障を判定できる。したがって、不規則な変動要因を除き、DPFの故障の誤検知を少なくすることができる。
また、本実施形態では、集塵電極123A,128Aと測定電極127A,127Bの2つの電極を備えるため、集塵電極123A,128Aに集塵電圧を印加して粒子状物質の集塵を行いつつ、測定電極127A,127Bに測定電圧を印加することでセンサ素子12の静電容量を測定することができる。このため、集塵の停止時期をリアルタイムで精度良く判定できることからも、上述の効果が期待できる。
また、長時間に亘ってDPFの故障を判定できるため、集塵、測定、再生の行程を繰り返す回数を低減でき、集塵及びヒーターへの電圧の印加に伴う電力の消費を低減できる。
【0133】
また、本実施形態によれば、集塵電極123A,128Aへの集塵電圧の印加を開始してから所定の上限時間TCOL_MAXが経過するまでの間に、センサ素子の静電容量CCOLが完了判定値CCOL_MAXを上回らなかった場合には、DPFは正常であると判定する。DPFが正常である場合には、エンジンから排出されたPMのほとんどはこのDPFに捕集される。このため、DPFの下流に設けられたセンサ素子に流入するPMの量は非常に少なく、センサ素子の電気的特性に変化はあらわれにくい。本実施形態によれば、このようなセンサ素子の特性を利用してDPFの故障を判定することにより、DPFの故障の検知精度を向上することができる。
【0134】
また、本実施形態によれば、測定電圧よりも大きな集塵電圧を集塵電極123A,128Aに印加する。これにより、集塵電圧を印加した際には、センサ素子12にPMを積極的に付着させることができる。一方、測定電圧を印加した際には、センサ素子12にPMが不要に付着するのを防止することができる。
【0135】
また、本実施形態によれば、エンジンの運転状態が過渡運転状態でない場合、すなわち、エンジンの運転状態が定常運転状態である場合には、集塵電圧を印加しない。エンジンが定常運転状態にある場合には、PMの排出量は非常に少ない。このため、定常運転状態にある場合には、集塵電圧を印加しても、センサ素子12の電気的特性に変化が現れる程の量のPMを、短時間でセンサ素子12に付着させることは難しい。したがって、このような過渡運転状態には集塵電圧を印加しないようにすることにより、集塵電圧の印加にかかる無駄な電力の消費を抑制することができる。
【0136】
また、本実施形態によれば、自然付着期間内におけるPMの排出量が所定の量よりも少ない場合には、DPFの故障の判定を行わない。センサ素子12に粒子状物質を付着させている自然付着期間においてPMの排出量が少ない場合、DPFの状態に係わらず、センサ素子12の電気的特性の変化は小さいと考えられるため、高い精度で故障を検知することができない。本実施形態によれば、このような期間には、故障の判定を行わないとすることにより、DPFの故障の検知精度が低下するのを防止することができる。
【0137】
また、本実施形態によれば、センサ素子12の静電容量の測定値の自然付着期間に亘る変化量ΔCに基づいて、DPFの故障を判定する。DPFが故障している場合、エンジンから排出されたPMのうち幾らかはDPFを通過してしまい、センサ素子12に到達する。このため、上述の自然付着期間に亘る測定値の変化量ΔCに大きな影響が現れるものと考えられる。本実施形態によれば、このようなDPFの状態により大きな影響があらわれる上記変化量ΔCに基づいて故障を判定することにより、DPFの故障の検知精度を向上することができる。
【0138】
また、本実施形態によれば、PMの排出量が所定量よりも少ないアイドル運転状態でエンジンが運転されたアイドル運転時間TIDLEを、自然付着期間TAFTERから減算した時間を有効排出時間(TAFTER−TIDLE)とし、この有効排出時間に亘るセンサ素子12の静電容量の変化率∠Cが、所定の故障判定値∠CTHよりも小さい場合には、DPFは正常であると判定する。このように、アイドル運転状態等の粒子状物質の排出量が少ない運転状態でエンジンが運転された時間を除いた有効排出時間に亘る静電容量の変化率∠Cに基づいてDPFの故障を判定することにより、DPFの故障の検知精度をさらに向上することができる。
【0139】
また、本実施形態によれば、集塵電極123A,128Aへの集塵電圧の印加を開始してから、センサ素子12の静電容量CCOLが所定の完了判定値CCOL_THを上回ったことに応じて、集塵電極123A,128Aへの集塵電圧の印加を停止する。これにより、センサ素子12の静電容量に変化が現れる状態を、より確実に早期に作り出すことができる。したがって、DPFの故障の検知にかかる時間を短縮することができる。また、静電容量に変化が現れてから集塵電圧の印加を停止することにより、余分な電力の消費を低減することができる。
【0140】
本実施形態では、集塵電極123A,128Aが第1電極部を構成し、測定電極127A,127Bが第2電極部を構成し、ECU5、及びセンサ素子12のセンサコントローラ17が電圧印加開始手段、第1測定手段、電圧印加停止手段、第2測定手段、故障判定手段、過渡運転状態判定手段、及び排出量判定手段を構成する。
より具体的には、図8のステップS11の実行に係る手段が電圧印加開始手段を構成し、図8のステップS13の実行に係る手段が第1測定手段を構成し、図8のステップS16の実行に係る手段が電圧印加停止手段を構成し、図9のステップS24の実行に係る手段が第2測定手段を構成し、図9のステップS31〜S35の実行に係る手段が故障判定手段を構成し、図7のステップS6,S7の実行に係る手段が過渡運転状態判定手段を構成し、図9のステップS25の実行に係る手段が排出量判定手段を構成する。
【0141】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、PMセンサ31、センサコントローラ、及びECUの構成が、第1実施形態のPMセンサ11、センサコントローラ17、及びECU5と異なる。
【0142】
図18は、第2実施形態に係るPMセンサ31のセンサ素子32の分解斜視図である。
図18に示すように、センサ素子32の構成は、測定電極層が無い以外は第1実施形態に係るPMセンサ11の構成と同様である。本実施形態では、第1実施形態のように測定電極を備えておらず、集塵電極323A,327Aが集塵電極と測定電極とを兼ねる。集塵電極323A,327Aは、切換スイッチを介して集塵用DC電源とインピーダンス測定器に接続されている。
【0143】
切換スイッチは、ECUから送信された制御信号に基づいて動作し、電極板330,331に対する接続を、集塵用DC電源とインピーダンス測定器との間で選択的に切り換える。具体的には、集塵電極323A,327Aに集塵電圧を印加する場合には、集塵用DC電源と電極板330,331とを接続し、センサ素子32の静電容量を測定する場合には、インピーダンス測定器と電極板330,331とを接続する。
【0144】
図19は、本実施形態のセンサ素子32の集塵部320内にPMが集塵されたときの様子を模式的に示した図である。図19に示すように、集塵されたPMは、集塵部320内の内壁に堆積する。このとき、集塵部320の静電容量が、堆積したPMによる影響を受けて変化する。この静電容量の変化は、PM堆積量に相関があることから、この静電容量の変化に基づいて、PMの検出が可能となっている。また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、センサ素子32の電気的特性とは、センサ素子32のうちPM堆積量に相関のある集塵部320の電気的特性を意味する。
【0145】
図20〜図22は、DPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。以下、詳述するように、このDPF故障検知処理は、PMセンサの出力に基づいてDPFが正常な状態であるか又は故障した状態であるかを判定する処理であり、エンジンの始動後、ECUにより実行される。
【0146】
このDPF故障検知処理は、第1実施形態のDPF故障検知処理と同様に、運転状態監視工程(ステップS1〜S7)と、静電集塵工程(ステップS11〜S17)と、測定工程(ステップS21〜S25)と、故障判定工程(ステップS31〜S35)と、の4つの工程に分けられる。
【0147】
運転状態監視工程(ステップS1〜S7)及び故障判定工程(ステップS31〜S35)は、第1実施形態のDPF故障検知処理と同じであり、その詳細な説明を省略する。
【0148】
静電集塵工程(ステップS11〜S17)について説明する。
この静電集塵工程では、所定の条件が満たされるまで集塵電極に集塵電圧を印加することにより静電集塵を行う。
【0149】
ステップS11では、静電集塵用タイマをスタートし、静電集塵を行った時間を示す静電集塵時間TCOLの計測を開始する。
【0150】
ステップS12では、電極部への集塵電圧の印加を開始するとともに、印加時間計測用タイマをスタートし、集塵電圧を印加した時間を示す印加時間Tの計測を開始する。
【0151】
ステップS13では、集塵電圧を印加してから、所定時間TMAX以上経過したか否かを判定する。この判定がYESの場合にはステップS14に移り、NOの場合にはステップS13に移る。
【0152】
ステップS14では、電極部への集塵電圧の印加を停止するとともに、印加時間計測用タイマをリセットする。
【0153】
ステップS15では、電極部へ測定電圧を印加することにより、集塵部の静電容量を測定し、この測定値を集塵時静電容量CCOLとして記録する。
【0154】
ステップS16では、静電集塵の完了を判定するために設定された所定の条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態では、測定した集塵時静電容量CCOLが所定の完了判定値CCOL_THを上回ることを、静電集塵の完了を判定する条件とする。この判定がYESの場合、すなわち集塵時静電容量CCOLが完了判定値CCOL_THよりも大きい場合にはステップS21に移る。この判定がNOの場合、すなわち集塵時静電容量CCOLが完了判定値CCOL_TH以下である場合にはステップS17に移る。なお、この条件の他、静電集塵を開始してから所定の時間が経過したことを、静電集塵の完了を判定する条件としてもよい。
【0155】
ステップS17では、静電集塵時間TCOLが、所定の上限時間TCOL_MAXに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち、静電集塵を行っても集塵部の静電容量Cが完了判定値CCOL_THを上回らなかった場合には、DPFの下流にPMが排出されていない、すなわちDPFは故障していないと判断し、ステップS34に移る。この判定がNOの場合には、ステップS12に移り、静電集塵を継続する。
【0156】
測定工程(ステップS21〜S25)について説明する。
この測定工程では、所定の上限時間TMEASに亘ってPMを自然付着させた後、自然付着後静電容量CPMを測定する。
【0157】
ステップS21では、自然付着用タイマをスタートし、PMを自然付着させた時間を示す自然付着時間TAFTERの計測を開始する。
【0158】
ステップS22では、運転状態パラメータ(回転数N、燃料噴射量W、車速V)を測定し、これら測定値を自然付着時運転状態パラメータ(回転数NMEAS[T]、燃料噴射量WMEAS[T]、車速VMEAS[T])として記録する。
【0159】
ステップS23では、自然付着時間TAFTERが所定の上限時間TMEASに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合にはステップS24に移り、NOの場合にはステップS22に移る。
【0160】
ステップS24では、電極部に測定電圧を印加することによりセンサ素子の静電容量を測定し、この測定値を自然付着後静電容量CPMとして記録する。
【0161】
ステップS25では、自然付着期間内におけるPMの排出量が所定の量以上であるか否かを判定する。本実施形態では、PMの排出量が所定の量以上であるか否かの判定を、自然付着時運転状態パラメータ(NMEAS,WMEAS,VMEAS)に基づいて間接的に推定する。このステップにおいて、PMの排出量が所定の量以上であると判定された場合には、ステップS31に移る。また、PMの排出量が所定の量より少ないと判定された場合には、ステップS31〜S35の故障判定工程を行わずに、この処理を終了する。
【0162】
本実施形態によれば、2つの電極部を備える点を除いて、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態では、集塵電極323A,327Aが電極部を構成し、ECU、及びセンサ素子のセンサコントローラが電圧印加手段、第1測定手段、判定手段、第2測定手段、故障判定手段、過渡運転状態判定手段、及び排出量判定手段を構成する。
より具体的には、図21のステップS12,S13の実行に係る手段が電圧印加手段を構成し、図21のステップS15の実行に係る手段が第1測定手段を構成し、図21のステップS16の実行に係る手段が判定手段を構成し、図22のステップS24の実行に係る手段が第2測定手段を構成し、図22のステップS31〜S35の実行に係る手段が故障判定手段を構成し、図20のステップS6,S7の実行に係る手段が過渡運転状態判定手段を構成し、図22のステップS25の実行に係る手段が排出量判定手段を構成する。
【0163】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、ECUの構成が第1実施形態と異なる。
【0164】
第1実施形態では静電容量の測定値に基づいてDPFの故障を検知したが、本実施形態では、静電容量の測定値から排気のPM濃度を算出し、このPM濃度に基づいてDPFの故障を判定する点が第1実施形態と異なる。
【0165】
図23は、所定のPM濃度の排気の下でPMセンサを作動させた場合における、静電容量の測定値の変化を示す図である。図23は、横軸を時間tとし縦軸を静電容量ΔCとして、所定の期間にわたって集塵電圧を印加した後における静電容量ΔCの時間変化を示す図である。この図に示すように、時刻t=0において集塵電圧の印加を停止すると、その後、静電容量ΔCは所定値ΔCMAXに漸近的に近づく。
【0166】
この場合、時刻t=0以降、すなわちPMを自然付着させている期間における静電容量ΔCとPM濃度xとの間には、下記式(2)に示す関係が成立する。
ΔC=ΔCMAX(1−exp(−k(x)・t)) (2)
【0167】
なお、上記式(2)において、PM濃度xの関数k(x)は、下記式(3)に示すように、エンジン回転数N、及び燃料噴射量Wに基づいて算出される発生トルクTの所定の関数a(N,T)及びb(N,T)により記述される。
k(x)=a(N,T)x+b(N,T) (3)
【0168】
ここで、上記式(2)を時間微分すると、下記式(4)が導出される。
k(x)=(ΔCMAX/(ΔCMAX−ΔC))・dΔC/dt (4)
【0169】
したがって、ΔCMAXをセンサ素子ごとに備わる定数として、所定の時刻における静電容量ΔC及びその時間微分dΔC/dtを測定し、さらにその時刻におけるエンジン回転数N及び発生トルクTに基づいてa(N,T)及びb(N,T)を決定するマップを検索することにより、排気のPM濃度xを導出することができる。
【0170】
図24は、DPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
このDPF故障検知処理は、第1実施形態のDPF故障検知処理と同様に、運転状態監視工程(ステップS1〜S7)と、静電集塵工程(ステップS11〜S16)と、測定工程(ステップS41〜S43)と、故障判定工程(ステップS51〜S56)と、の4つの工程に分けられる。なお、運転状態監視工程及び静電集塵工程は、第1実施形態のDPF故障検知処理と同じであるため、その詳細な説明及び図示を省略する。
【0171】
測定工程(ステップS41〜S43)について説明する。
ステップS41では、自然付着用タイマをスタートし、PMを自然付着させた時間を示す自然付着時間TAFTERの計測を開始する。
【0172】
ステップS42では、自然付着時間TAFTERが所定の上限時間TMEASに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわちPMの自然付着を開始してから上限時間TMEASが経過した場合には、ステップS43に移る。一方、この判定がNOの場合には、再びステップS42を実行し、上限時間TMEASが経過するのを待つ。
【0173】
ステップS43では、測定電極に測定電圧を印加することにより集塵部の静電容量を測定し、この測定値を自然付着時静電容量CPMとして記録する。また同時に、測定値の時間変化に基づいて自然付着時静電容量CPMの時間微分値を測定し、この測定値を静電容量の微分値dCPM/dtとして記録する。
【0174】
故障判定工程(ステップS51〜S56)について説明する。
ステップS51では、上記ステップS43で測定した自然付着時静電容量CPM及びその微分値dCPM/dtと、その時におけるエンジン回転数N及び発生トルクTと、に基づいて、DPFの下流側の排気のPM濃度DRを算出する。
【0175】
ステップS52では、PM濃度DRの算出に用いた自然付着時静電容量CPMを測定した時における回転数Nや燃料噴射量Wなどのエンジンの運転状態に基づいてDPFの上流側の排気のPM濃度DFを算出する。
【0176】
ステップS53では、DPFの上流側の排気のPM濃度DF及びDPFの下流側の排気のPM濃度DRに基づいて、DPFに捕集される粒子状物質の割合を示すPM捕集率Xを算出する。このPM捕集率Xは、具体的には、下記式(5)により定義されるDPFのPM捕集率Xを算出する。
X=(DF−DR)/DF×100 (5)
【0177】
ステップS54では、算出したPM捕集率Xが所定の故障判定値XTHよりも大きいか否かを判定する。この判定がYESの場合には、DPFは正常であると判定するとともにステップS55に移り、故障判定フラグを「0」にした後、この処理を終了する。この判定がNOの場合には、DPFは故障した状態であると判定するとともにステップS56に移り、故障判定フラグを「1」にした後、この処理を終了する。
【0178】
本実施形態によれば、DPFの下流側のPM濃度DRに加えて、DPFの上流側のPM濃度DFに基づいて、DPFの故障を判定する。これにより、DPFの故障の判定精度をさらに向上することができる。例えば、低負荷運転状態やアイドル運転状態では、エンジンから排出されるPMの量が少なく、またその殆どはDPFに捕集されてしまうため、DPFの下流側に排出されるPMの量は非常に少ない。これに対して本実施形態では、下流側のPM濃度DRに加えて、この下流側よりも高い精度で検出できる上流側のPM濃度DFに基づいてDPFの故障を判定することにより、このような低負荷運転状態やアイドル運転状態においてもDPFの故障を精度良く判定することができる。
したがって、上記第1実施形態では、DPFの下流側のPMセンサにPMを自然付着させていた期間におけるPMの排出量が所定の量以上であるか否かを判定し(図9のステップS25参照)、PMの排出量が所定の量以上である場合にのみ、DPFの故障の判定を行ったが、本実施形態では、PMの排出量に関わらずDPFの故障の判定を行うことができる。
【0179】
また本実施形態によれば、DPFの上流側のPM濃度DFと、DPFの下流側のPM濃度DRとに基づいて、DPFのPM捕集率Xを算出し、このPM捕集率Xに応じてDPFの故障を判定する。これにより、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0180】
本実施形態では、図24のステップS52の実行に係る手段が上流濃度検出手段を構成し、図24のステップS51の実行に係る手段が下流側濃度算出手段を構成し、図24のステップS53の実行に係る手段が捕集率算出手段を構成し、図24のステップS51〜S56の実行に係る手段が故障判定手段を構成する。
【0181】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、ECU5Dの構成と、DPF3の下流側のPMを検出するPMセンサ11に加えて、DPF3の上流側のPMを検出するPMセンサ91Dを備える点とが、第3実施形態と異なる。
【0182】
図25は、本実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置を含む、エンジン及びその制御装置の構成を示す図である。
第3実施形態では、DPF3のPM捕集率Xを算出するにあたり、エンジンの運転状態に基づいて算出されたDPF3の上流側のPM濃度DFを用いた。本実施形態では、DPF3の上流側に設けたPMセンサ91Dの出力に基づいてDPF3の上流側のPM濃度を算出する。
【0183】
PMセンサ91Dは、排気管4の内部のうちDPFの上流側に設けられたセンサ素子92Dと、ECU5Dに接続され、このセンサ素子92Dを制御するセンサコントローラ97Dと、を備える。これらセンサ素子92D及びセンサコントローラ97Dの構成は、第1実施形態のセンサ素子12及びセンサコントローラ17の構成と略等しいので、その詳細な説明を省略する。なお本実施形態では、2つのPMセンサを明確に区別するため、DPFの上流側のPMセンサ91Dを上流側PMセンサ91Dといい、DPFの下流側のPMセンサ11を下流側PMセンサ11という。
【0184】
後に詳述するようにDPF故障検知処理では、2つの上流側PMセンサ91D及び下流側PMセンサ11を並行して使用する。しかしながら、下流側PMセンサ11が設けられたDPF3の下流側と、上流側PMセンサ91Dが設けられたDPF3の上流側とでは排気のPM濃度が大きく異なる。そこで、例えば、センサ素子92Dに流入する排気の流量を絞り、センサ素子92Dに付着するPMの単位時間当たりの量を少なくすることにより、これら2つのPMセンサ11,91Dの動作条件が略等しくなるようにすることが好ましい。また、排気の流量を絞るには、例えば保護カバーの形状を変えたり、排気の取り込み流路を制限したりすることが考えられる。
【0185】
図26〜図28は、DPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
このDPF故障検知処理は、第3実施形態のDPF故障検知処理と同様に、運転状態監視工程(ステップS1〜S7)と、静電集塵工程(ステップS61〜S77)と、測定工程(ステップS81〜S83)と、故障判定工程(ステップS91〜S96)と、の4つの工程に分けられる。なお、運転状態監視工程は、第3実施形態のDPF故障検知処理と同じであるため、その詳細な説明及び図示を省略する。
【0186】
静電集塵工程(ステップS61〜S77)について説明する。
ステップS61では、上流側PMセンサ及び下流側PMセンサのそれぞれの集塵電極への集塵電圧の印加を開始する。すなわち、静電集塵を開始する。
【0187】
ステップS62では、上流側PMセンサに対し、集塵電圧を印加したまま、測定電極に測定電圧を印加することにより上流側PMセンサの集塵部の静電容量を測定し、この測定値を上流側集塵時静電容量CCOL_Fとして記録する。
【0188】
ステップS63では、上流側PMセンサ静電集塵の完了を判定するために設定された所定の条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態では、上流側集塵時静電容量CCOL_Fが所定の完了判定値CCOL_TH_Fを上回ることを、静電集塵の完了を判定する条件とする。この判定がYESの場合、すなわち上流側集塵時静電容量CCOL_Fが完了判定値CCOL_TH_Fよりも大きい場合にはステップS66に移る。この判定がNOの場合、すなわち上流側集塵時静電容量CCOL_Fが完了判定値CCOL_TH_F以下である場合にはステップS64に移る。
【0189】
ステップS64では、下流側PMセンサに対し、集塵電圧を印加したまま、測定電極に測定電圧を印加することにより下流側PMセンサの集塵部の静電容量を測定し、この測定値を下流側集塵時静電容量CCOL_Rとして記録する。
【0190】
ステップS65では、下流側PMセンサ静電集塵の完了を判定するために設定された所定の条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態では、下流側集塵時静電容量CCOL_Rが所定の完了判定値CCOL_TH_Rを上回ることを、静電集塵の完了を判定する条件とする。この判定がYESの場合、すなわち下流側集塵時静電容量CCOL_Rが完了判定値CCOL_TH_Rよりも大きい場合にはステップS72に移る。この判定がNOの場合、すなわち下流側集塵時静電容量CCOL_Rが完了判定値CCOL_TH_R以下である場合にはステップS62に移り、上流側集塵時静電容量CCOL_Fあるいは下流側集塵時静電容量CCOL_Rの何れかがそれぞれの完了判定値を上回るまで、集塵電圧を印加し続ける。
【0191】
ステップS66では、上述のステップS63において上流側PMセンサの静電集塵の完了を判定するための上述の条件が満たされたことに応じて、上流側PMセンサの集塵電極への集塵電圧の印加を停止する。
【0192】
ステップS67では、静電集塵用タイマをスタートし、上流側PMセンサの静電集塵を完了してから、下流側PMセンサの静電集塵を余分に行った時間を示す静電集塵時間TCOL_Rの計測を開始する。
【0193】
ステップS68では、下流側PMセンサに対し、再び測定電極に測定電圧を印加することにより下流側PMセンサの集塵部の静電容量を測定し、この測定値を下流側集塵時静電容量CCOL_Rとして記録する。
【0194】
ステップS69では、下流側集塵時静電容量CCOL_Rが上述の完了判定値CCOL_TH_Rを上回ったか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち下流側集塵時静電容量CCOL_Rが完了判定値CCOL_TH_Rよりも大きい場合にはステップS71に移り、下流側PMセンサの集塵電極への集塵電圧の印加を停止し、ステップS81に移る。この判定がNOの場合、すなわち下流側集塵時静電容量CCOL_Rが完了判定値CCOL_TH_R以下である場合にはステップS70に移る。
【0195】
ステップS70では、静電集塵時間TCOL_Rが、所定の上限時間TCOL_MAX_Rに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち、上流側PMセンサの静電集塵を完了してから、上限時間TCOL_MAX_Rに亘り下流側PMセンサの静電集塵を継続したにもかかわらず下流側集塵時静電容量CCOL_Rが完了判定値CCOL_TH_Rを上回らなかった場合には、DPFの下流にPMが殆ど排出されておらずDPFは故障していないと判断し、ステップS95に移る。この判定がNOの場合には、ステップS68に移る。
【0196】
ステップS72では、上述のステップS65において下流側PMセンサの静電集塵の完了を判定するための上述の条件が満たされたことに応じて、下流側PMセンサの集塵電極への集塵電圧の印加を停止する。
【0197】
ステップS73では、静電集塵用タイマをスタートし、下流側PMセンサの静電集塵を完了してから、上流側PMセンサの静電集塵を余分に行った時間を示す静電集塵時間TCOL_Fの計測を開始する。
【0198】
ステップS74では、上流側PMセンサに対し、再び測定電極に測定電圧を印加することにより上流側PMセンサの集塵部の静電容量を測定し、この測定値を上流側集塵時静電容量CCOL_Fとして記録する。
【0199】
ステップS75では、上流側集塵時静電容量CCOL_Fが上述の完了判定値CCOL_TH_Fを上回ったか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち上流側集塵時静電容量CCOL_Fが完了判定値CCOL_TH_Fよりも大きい場合にはステップS77に移り、上流側PMセンサの集塵電極への集塵電圧の印加を停止し、ステップS81に移る。この判定がNOの場合、すなわち上流側集塵時静電容量CCOL_Fが完了判定値CCOL_TH_F以下である場合にはステップS76に移る。
【0200】
ステップS76では、静電集塵時間TCOL_Fが、所定の上限時間TCOL_MAX_Fに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわち、下流側PMセンサの静電集塵を完了してから、上限時間TCOL_MAX_Fに亘り上流側PMセンサの静電集塵を継続したにもかかわらず上流側集塵時静電容量CCOL_Fが完了判定値CCOL_TH_Fを上回らなかった場合、これはDPFの上流側で検出されたPMの量が少ないに対して、DPFの下流側には比較的多くのPMが流出していることを意味するので、DPFは故障していると判断し、ステップS96に移る。この判定がNOの場合には、ステップS74に移る。
【0201】
測定工程(S81〜S83)について説明する。
ステップS81では、自然付着用タイマをスタートし、上流側PMセンサ及び下流側PMセンサに対しPMを自然付着させた時間を示す自然付着時間TAFTERの計測を開始する。
【0202】
ステップS82では、自然付着時間TAFTERが所定の上限時間TMEASに達したか否かを判定する。この判定がYESの場合、すなわちPMの自然付着を開始してから上限時間TMEASが経過した場合には、ステップS83に移る。一方、この判定がNOの場合には、再びステップS82を実行し、上限時間TMEASが経過するのを待つ。
【0203】
ステップS83では、上流側PMセンサ及び下流側PMセンサに対し測定電圧を印加することによりそれぞれの集塵部の静電容量を測定し、これら測定値を上流側自然付着時静電容量CPM_F及び下流側自然付着時静電容量CPM_Rとして記録する。また同時に、各静電容量CPM_F,CPM_Rの時間微分値を測定し、これら測定値を上流側静電容量の微分値dCPM_F/dt及び下流側静電容量の微分値dCPM_R/dtとして記録する。
【0204】
故障判定工程(ステップS91〜S96)について説明する。
ステップS91では、上記ステップで測定した下流側自然付着時静電容量CPM_R及びその微分値dCPM_R/dtと、その時におけるエンジン回転数N及び発生トルクTと、に基づいて、DPFの下流側の排気のPM濃度DRを算出する。
【0205】
ステップS92では、上記ステップで測定した上流側自然付着時静電容量CPM_F及びその微分値dCPM_F/dtと、その時におけるエンジン回転数N及び発生トルクTと、に基づいて、DPFの上流側の排気のPM濃度DRを算出する。
【0206】
ステップS93では、DPFの上流側の排気のPM濃度DF及びDPFの下流側の排気のPM濃度DRに基づいて、DPFに捕集される粒子状物質の割合を示すPM捕集率Xを算出する。
【0207】
ステップS94では、算出したPM捕集率Xが所定の故障判定値XTHよりも大きいか否かを判定する。この判定がYESの場合には、DPFは正常であると判定するとともにステップS95に移り、故障判定フラグを「0」にした後、この処理を終了する。この判定がNOの場合には、DPFは故障した状態であると判定するとともにステップS96に移り、故障判定フラグを「1」にした後、この処理を終了する。
【0208】
本実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施形態では、PMセンサ91D及び図28のステップS92の実行に係る手段が上流濃度検出手段を構成し、図28のステップS91の実行に係る手段が下流側濃度算出手段を構成し、図28のステップS93の実行に係る手段が捕集率算出手段を構成し、図28のステップS91〜S96の実行に係る手段が故障判定手段を構成する。
【0209】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、ECUの構成と、DPFの下流側のPMを検出するPMセンサに加えて、DPFの上流側のPMを検出するPMセンサを備える点とが、第3実施形態と異なる。
【0210】
第3実施形態では、DPFのPM捕集率Xを算出するにあたり、エンジンの運転状態に基づいて算出されたDPFの上流側のPM濃度DFを用いた。本実施形態では、DPFの上流側に設けたPMセンサの出力により得られたPM濃度DFに基づいてDPFのPM捕集率Xを算出する。
【0211】
DPFの上流側と下流側とでは、排気のPM濃度が大きく異なる。このため、DPFの上流側のPMを検出するPMセンサには、高濃度の測定が可能な放電式のセンサか、あるいは、高濃度対応の静電集塵式のセンサを用いることが好ましい。
【0212】
図29は、DPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。
このDPF故障検知処理は、第3実施形態のDPF故障検知処理と同様に、運転状態監視工程(ステップS1〜S7)と、静電集塵工程(ステップS11〜S16)と、測定工程(ステップS41〜S43)と、故障判定工程(ステップS101〜S106)と、の4つの工程に分けられる。なお、運転状態監視工程、静電集塵工程、及び測定工程は、第3実施形態のDPF故障検知処理と同じであるため、その詳細な説明及び図示を省略する。
【0213】
故障判定工程(ステップS101〜S106)について説明する。
ステップS101では、測定工程で測定した自然付着時静電容量CPM及びその微分値dCPM/dtと、その時におけるエンジン回転数N及び発生トルクTと、に基づいて、DPFの下流側の排気のPM濃度DRを算出する。
【0214】
ステップS102では、上流側のPMセンサの出力に基づいてDPFの上流側の排気のPM濃度DFを算出する。
【0215】
ステップS103では、DPFの上流側の排気のPM濃度DF及びDPFの下流側の排気のPM濃度DRに基づいて、DPFに捕集される粒子状物質の割合を示すPM捕集率Xを算出する。
【0216】
ステップS104では、算出したPM捕集率Xが所定の故障判定値XTHよりも大きいか否かを判定する。この判定がYESの場合には、DPFは正常であると判定するとともにステップS105に移り、故障判定フラグを「0」にした後、この処理を終了する。この判定がNOの場合には、DPFは故障した状態であると判定するとともにステップS106に移り、故障判定フラグを「1」にした後、この処理を終了する。
【0217】
本実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施形態では、図29のステップS102の実行に係る手段が上流濃度検出手段を構成し、図29のステップS101の実行に係る手段が下流側濃度算出手段を構成し、図29のステップS103の実行に係る手段が捕集率算出手段を構成し、図29のステップS101〜S106の実行に係る手段が故障判定手段を構成する。
【0218】
[第6実施形態]
第6実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、ECUの構成が第1実施形態と異なる。より具体的には、本実施形態では、DPFに捕集されたPMを燃焼除去するDPF再生運転の実行に合わせてDPFの故障検知処理の実行を判断する。
【0219】
図30は、DPF再生運転を実行した後におけるDPF下流の排気のPM濃度の特徴的な振る舞いを示す図である。
図30中、破線で示すDPFの温度は、以下のような振る舞いを示す。
先ず、時刻t1においてDPF再生運転を開始すると、DPFの温度が急激に上昇し、PMの燃焼温度T_PMを超えたことに応じて、DPFに捕集されていたPMの燃焼が開始する。時刻t2では、捕集されたPMの燃焼が終了したことに応じて、DPF再生運転を終了する。この時刻t2以降、DPFの温度は徐々に低下し始める。時刻t3では、DPFの温度がPMの燃焼温度T_PMを下回り、さらに時刻t4以降は、通常走行時における温度に安定する。
【0220】
これに対して、図30中、実線で示すDPF下流の排気のPM濃度は、以下のような振る舞いを示す。
先ず、時刻t1〜t2の間では、DPF再生運転を実行することにより、DPFに捕集されていたPM及びDPFに流入したPMは燃焼除去されるため、DPF下流の排気のPM濃度は低い。また、時刻t2においてDPF再生運転を終了してから、時刻t5において新たにDPFに流入したPMによりDPFの無数の細孔が埋められるまでの間は、DPFのPMの捕集性能が一時的に低下するため、PMがDPFを通過しやすい状態となる。このため、図30に示すように、時刻t2〜t5の間で、DPF下流のPM濃度が一時的に上昇する。
【0221】
より具体的には、時刻t2の直後では、DPF再生運転の終了に伴いDPFのPMの捕集性能は低下した状態であるものの、DPFの温度はDPF再生運転の予熱によりPMの燃焼温度よりも高いため、新たに流入するPMはDPFで燃焼してしまい、その下流へ排出される量は少ない。
しかしながら、DPFの温度が徐々に低下し、時刻t3においてPMの燃焼温度を下回る頃から、DPFの予熱で燃焼仕切れなかったPMがDPFを通過し始めるため、DPF下流の排気のPM濃度が上昇する。そして、時刻t4においてDPFの温度がPMの燃焼温度以下で安定する頃には、DPF下流の排気のPM濃度は最大となる。その後、DPFの細孔が新たに流入するPMにより埋められてゆくことにより、DPFの捕集性能が回復し、DPF下流のPM濃度は低下し始める。そして、時刻t5以降では、DPFの無数の細孔がPMで埋められることにより、DPF下流のPM濃度は安定する。
【0222】
本実施形態では、DPF再生運転の実行中(時刻t1〜t2)、DPF再生運転の終了直後のDPFの捕集性能が一時的に低下した期間(時刻t2〜t5)、及びDPF再生運転の終了直後のDPFの温度がPMの燃焼温度T_PMを上回っている期間(時刻t2〜t3)等の、DPFの下流側に設けられたPMセンサでDPFの故障を判定するのに適していない期間を禁止期間として定義し、この禁止期間内では、DPFの故障検知処理の実行を禁止する。
【0223】
これら3つの禁止期間のうち、特に、DPF再生運転の終了直後のDPFの捕集性能が一時的に低下した期間は、より具体的には、以下のようにして規定することができる。
【0224】
DPFの捕集性能は、DPF再生運転の終了後、新たにDPFに流入してくるPMを捕集することにより回復する。そこで本実施形態では、図30において一点鎖線で示すように、DPF再生運転の終了後、DPFに流入するPMの積算量CNT_PMを逐次算出する。そして、DPF再生運転を終了してから、PM積算量CNT_PMが所定の判定量W_END_REGENに達するまでを期間を禁止期間とする。
【0225】
図31は、以上のような概念に基づいてDPFの故障検知処理の実行を判断する手順を示すフローチャートである。
ステップS111では、DPF再生運転実行フラグFPMREGENが「1」であるか否かを判別する。このDPF再生運転実行フラグFPMREGENは、DPF再生運転の実行を指令するフラグである。このDPF再生運転実行フラグFPMREGENに「1」がセットされている間は、ECUからの指令に基づいてDPF再生運転が実行される。ステップS111の判別がYESの場合にはステップS117に移り、そして、ステップS117では、DPFに流入するPM積算量CNT_PMを値0にリセットし、DPFの故障検知処理を実行せずに本処理を終了する。一方、ステップS111の判別がNOの場合には、ステップS112に移る。
【0226】
ステップS112では、DPFの温度TEMP_DPFがPMの燃焼温度T_PMより高いか否かを判別する。このステップS112の判別がYESである場合にはステップS117に移り、そしてステップS117では、PM積算量CNT_PMを値0にリセットし、DPFの故障検知処理を実行せずに本処理を終了する。一方、ステップS112の判別がNOの場合には、ステップS113に移る。なおこのDPFの温度TEMP_DPFは、例えば、DPFの下流の排気の温度を検出する排気温度センサの出力に基づいて推定される。なお、DPFの温度TEMP_DPFは、DPFの上流の排気の温度を検出する排気温度センサの出力に基づいて推定してもよい。この他、DPFの温度を直接検出するDPF温度センサの出力を用いてもよい。
【0227】
ステップS113では、今回の制御サイクル時にエンジンから排出されたPMの量WEIGHT_PMを算出し、ステップS114に移る。このPM排出量WEIGHT_PMは、例えば、エンジン回転数N及び燃料噴射量Wに基づいて、所定のマップを検索することで算出される。
【0228】
ステップS114では、算出したPM排出量WEIGHT_PMを加算することで、PM積算量CNT_PMを更新し、ステップS115に移る。
【0229】
ステップS115では、PM積算量CNT_PMが、判定量W_END_REGENよりも小さいか否かを判別する。このステップS115の判別がYESの場合には、DPF再生運転後、DPFの捕集性能が一時的に低下した状態から回復していないと判断し、DPFの故障検知処理の実行を禁止するべく、本処理を終了する。一方、ステップS115の判別がNOの場合には、DPF再生運転後、DPFの捕集性能が一時的に低下した状態から回復する程度の量のPMが排出されたと判断し、DPFの故障検知処理を実行する。
【0230】
以上のようにして、DPF再生運転中、DPF再生運転を終了してからPM積算量CNT_PMが判定量W_END_REGENに達するまでの期間、及びDPF再生運転を終了してからDPFの温度TEMP_DPFがPMの燃焼温度T_PMを上回っている期間、の3つの禁止期間には、DPFの故障検知処理の実行が禁止される。
【0231】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、以下の効果を奏する。
DPF再生運転を実行した後、上述の禁止期間が経過するまで、DPFの故障の判定を禁止する。これにより、DPF再生運転後、PMが細孔を埋めるまでDPFの下流に排出されるPMにより、DPFが故障したと誤って判定することを防止することができる。すなわち、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0232】
DPF再生運転が終了した後、DPFの温度TEMP_DPFがPMの燃焼温度T_PM以上である場合には、故障検知処理の実行を禁止する。これにより、誤判定を防止し、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0233】
なお、本実施形態では、エンジン回転数Nや燃料噴射量Wなどのエンジンの運転状態に基づいて、PM積算量CNT_PMを推定したが、これに限らない。例えば、DPFの上流側にもPMセンサを設け、このPMセンサの出力に基づいて、PM積算量CNT_PMを推定してもよい。この他、DPFの上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサを設け、この差圧センサの出力に基づいて、PM積算量CNT_PMを推定してもよい。
【0234】
また、本実施形態では、DPF再生運転を終了してから、DPFに流入したPMの積算量CNT_PMが所定の判定量W_END_REGENに達するまでを期間を禁止期間の1つとして規定し、DPFの故障検知処理の実行を禁止したが、これに限らない。
【0235】
例えば、DPFに捕集されたPMの量、すなわちPM捕集量を推定し、DPF再生運転を終了してから、このPM捕集量が所定量を超えるまでの期間を禁止期間としてもよい。この場合、PM捕集量は、上述のPM積算量CNT_PMと同様に、エンジンの運転状態に基づいて推定したり、DPFの上流側に設けたPMセンサの出力に基づいて推定したり、DPFの上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサの出力に基づいて推定したりすることができる。
【0236】
また、例えば、DPFに流入するPMのうち、DPFに捕集されるPMの割合を示すPM捕集率を推定し、DPF再生運転を終了してから、このPM捕集率が所定値を超えるまでの期間を禁止期間としてもよい。この場合、PM捕集率は、上述のPM積算量CNT_PMと同様に、エンジンの運転状態に基づいて推定したり、DPFの上流側に設けたPMセンサの出力に基づいて推定したり、DPFの上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサの出力に基づいて推定したりすることができる。
【0237】
また、例えば、DPF再生運転を終了してから経過した時間を計測し、この経過時間が所定時間を超えるまでの期間を禁止期間としてもよい。
【0238】
本実施形態では、ECUが再生手段、積算量算出手段、捕集量推定手段、捕集率推定手段、及び計時手段を構成し、ECU及び排気温度センサがフィルタ温度検出手段を構成する。
【0239】
[第7実施形態]
第7実施形態に係る排気浄化フィルタの故障検知装置は、ECUの構成が第1実施形態と異なる。本実施形態のDPFの故障検知処理では、PMセンサのセンサ素子を高感度領域に保持し、さらにエンジンの加速時を利用してDPFの故障を判定する。
【0240】
図32は、センサ素子に堆積したPMの量と、このセンサ素子の静電容量との関係を示す図である。
図32に示すように、PM堆積量に対する静電容量の変化の特性は、PM堆積量が少ない領域と多い領域とでは異なったものとなる。より具体的には、PM堆積量が少ない領域(静電容量が小さい領域)では、PM堆積量が多い領域(静電容量が大きい領域)よりも、PM堆積量に対する静電容量の変化率が大きくなっている。これは、静電容量が小さな領域は、大きな領域よりもセンサ素子の感度が高いことを意味する。
【0241】
そこで、本実施形態では、後に図33〜図36を参照して詳述するように、PM堆積量に対する静電容量の変化率が所定値未満になる領域内、すなわち低感度領域内に閾値CREG_THを設定し、センサ素子の静電容量がこの閾値CREG_THを超えた場合には、センサ素子を再生することにより、センサ素子を高感度領域内に維持する。
【0242】
図33〜図36は、本実施形態のDPF故障検知処理の手順を示すフローチャートである。このDPF故障検知処理は、エンジンの始動後、ECUにより繰り返し実行される。
【0243】
本実施形態のDPF故障検知処理は、状態監視工程(ステップS121〜S127)と、静電集塵工程(ステップS131〜S138)と、測定工程(ステップS141〜S146)と、故障判定工程(ステップS151〜S154)と、センサ素子を再生するセンサ再生工程(ステップS161〜S163)と、の5つの工程に分けられる。
【0244】
以下、詳細に説明するように、静電集塵工程及び測定工程を行っている間はエンジンの運転状態を監視しており、車両が停止した場合などDPFの故障を高い精度で判定するのに必要な量のPMが排出されなかった場合には、この故障検知処理を中断し、状態監視工程から再開する。このように故障検知処理を再開する際には、上述のようにセンサ素子を高感度領域内に維持するためセンサ再生工程を実行する。
【0245】
なお、状態監視工程(ステップS121〜S127)は、第1実施形態の状態監視工程(ステップS1〜S7)と同じであり、静電集塵工程のステップS131,S132,S134〜S137は、それぞれ、第1実施形態の静電集塵工程のステップS11〜S16と同じであり、測定工程のステップS141,S142,S144,S145,S146は、それぞれ、第1実施形態の測定工程のステップS21〜S25と同じであり、故障判定工程(ステップS151〜S154)は、第1実施形態の故障判定工程のステップS32〜S35と同じであり、これらの詳細な説明については省略する。
【0246】
静電集塵工程(ステップS131〜S138)について説明する。
ステップS133では、運転状態パラメータ(回転数N、燃料噴射量W、車速V)を測定し、これら測定値を静電集塵時運転状態パラメータ(回転数NCOL[T]、燃料噴射量WCOL[T]、車速VCOL[T])として記録する。
【0247】
そして、ステップS137において集塵電圧の印加を停止した後、ステップS138では、測定した静電集塵時運転状態パラメータに基づいて、集塵電圧を印加していた間に、車両が停止したか否かを判別する。
【0248】
このステップS137の判別がYESの場合、すなわち静電集塵中に車両が停止した場合には、DPFの故障を高い精度で判定するにはPMの排出量が不足していると判断し、この故障検知処理を中断するべく、ステップS161のセンサ再生工程に移る。
一方、このステップS137の判別がNOの場合、すなわち静電集塵中に車両が停止しなかった場合には、DPFの故障を高い精度で判定するのに必要な量のPMが排出されたと判断し、この故障検知処理を継続するべく、ステップS141に移る。
【0249】
測定工程(ステップS141〜S146)について説明する。
ステップS143では、ステップS142で測定した自然付着時運転状態パラメータに基づいて、自然付着させている間に、車両が停止したか否かを判別する。
【0250】
このステップS143の判別がYESの場合、すなわち自然付着させている間に車両が停止した場合には、DPFの故障を高い精度で判定するにはPMの排出量が不足していると判断し、この故障検知処理を中断するべく、ステップS161のセンサ再生工程に移る。
一方、このステップS143の判別がNOの場合、すなわち自然付着させている間に車両が停止しなかった場合には、DPFの故障を高い精度で判定するのに必要な量のPMが排出されたと判断し、この故障検知処理を継続するべく、ステップS144に移る。
【0251】
センサ再生工程(ステップS161〜S163)について説明する。
ステップS161では、車両が停止した状態であるか否かを判別する。この判別がYESの場合にはステップS162に移る。一方、この判別がNOの場合には、再びステップS161を実行し、車両が停止するのを待つ。
【0252】
ステップS162では、測定電極に測定電圧を印加することにより集塵部の静電容量を測定し、この測定値を再生時静電容量CREGとして記録し、ステップS163に移る。
ステップS163では、再生時静電容量CREGが上述のセンサ素子の感度を判定するために設定された閾値CREG_THより大きいか否かを判別する。この判別がYESの場合には、センサ素子が低感度領域にあると判断し、センサ素子を高感度領域にするべくセンサ素子の再生を実行した後、ステップS122へ移り、運転状態監視工程から再開する。ここで、センサ素子の再生は、例えば、ヒーター層に電流を通電し、集塵部に堆積したPMを燃焼除去することで行うが、これに限るものではない。
【0253】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、以下の効果を奏する。
センサ素子の静電容量の測定値CREGが閾値CREG_THより大きくなったことに基づいて、センサ素子を再生し、付着したPMを燃焼除去する。また、この閾値CREG_THを、センサ素子のPMの堆積量に対する静電容量の変化率が所定値未満になる領域内、つまりセンサ素子の感度が低い領域内に設定する。これにより、センサ素子を常に感度の良い領域で使用することができるので、故障の判定精度をさらに向上することができる。
【0254】
本実施形態では、ECU、ヒーター層122,129及び温度制御装置15が除去手段を構成する。より具体的には、図36のステップS163の実行に係る手段が除去手段を構成する。
【0255】
なお、本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、上述した実施形態では、センサ素子の電気的特性として、集塵部の静電容量を測定したが、これに限るものではない。集塵部の静電容量に限らず、集塵部におけるPM堆積量に相関のある物理量であればよい。
【0256】
また、上述した第3〜第5実施形態では、DPFの下流側の排気のPMを検出するPMセンサとして、集塵電極と別体の測定電極を備える第1実施形態のPMセンサを用いたが、これに限らない。例えば、DPFの下流側の排気のPMを検出するPMセンサには、測定電極を兼ねた集塵電極を備える第2実施形態のPMセンサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0257】
1…エンジン(内燃機関)
3…DPF(排気浄化フィルタ)
5,5D…ECU(電圧印加開始手段、第1測定手段、電圧印加停止手段、判定手段、第2測定手段、故障判定手段、過渡運転状態判定手段、排出量判定手段,上流濃度検出手段、下流濃度算出手段、捕集率算出手段)
11…PMセンサ
12…センサ素子
120…集塵部
123A,128A…集塵電極(第1電極部)
127A,127B…測定電極(第2電極部)
17…センサコントローラ(電圧印加開始手段、第1測定手段、電圧印加停止手段、第2測定手段、故障判定手段、過渡運転状態判定手段、排出量判定手段)
31…PMセンサ
32…センサ素子
320…集塵部
323A,327A…集塵電極(電極部)
91D…PMセンサ(上流濃度検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路のうち、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタの下流に設けられ、排気に含まれる粒子状物質が付着するセンサ素子を備える排気浄化フィルタの故障検知装置であって、
前記センサ素子は、排気に含まれる粒子状物質を前記センサ素子に付着させるための集塵電圧が印加される第1電極部と、前記センサ素子の電気的特性を測定するための測定電圧が印加される第2電極部と、を有し、
前記故障検知装置は、
前記第1電極部への集塵電圧の印加を開始する電圧印加開始手段と、
前記集塵電圧の印加を開始し、前記第2電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第1測定手段と、
所定の条件が満たされたことに応じて前記第1電極部への集塵電圧の印加を停止する電圧印加停止手段と、
前記集塵電圧の印加を停止した後、前記第2電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第2測定手段と、
前記第2測定手段の測定値に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定する故障判定手段と、を備えることを特徴とする排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項2】
前記第1電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間が経過するまでの間に前記所定の条件が満たされなかった場合には、前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする請求項1に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項3】
前記集塵電圧は、前記測定電圧に比して大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項4】
内燃機関の排気通路のうち、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタの下流に設けられ、排気に含まれる粒子状物質が付着するセンサ素子を備える排気浄化フィルタの故障検知装置であって、
前記センサ素子は、排気に含まれる粒子状物質を前記センサ素子に付着させるための集塵電圧、及び、前記センサ素子の電気的特性を測定するための前記集塵電圧に比して小さい測定電圧の何れかが選択的に印加される電極部を有し、
前記故障検知装置は、
前記電極部に所定の時間に亘って集塵電圧を印加する電圧印加手段と、
前記集塵電圧を印加した後、前記電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第1測定手段と、
所定の条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、
前記所定の条件が満たされたと判定された後、前記電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第2測定手段と、
前記第2測定手段の測定値に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定する故障判定手段と、を備えることを特徴とする排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項5】
前記判定手段により前記所定の条件が満たされていないと判定された場合には、前記電圧印加手段による集塵電圧の印加、及び、前記第1測定手段による測定を再び行うことを特徴とする請求項4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項6】
前記電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間が経過するまでの間に前記所定の条件が満たされなかった場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする請求項4又は5に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項7】
前記内燃機関の運転状態が過渡運転状態であるか否かを判定する過渡運転状態判定手段をさらに備え、
前記運転状態が過渡運転状態でない場合には、前記集塵電圧を印加しないことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項8】
前記内燃機関の運転状態に基づいて、所定の自然付着期間内における粒子状物質の排出量が所定の量より少ないか否かを判定する排出量判定手段をさらに備え、
前記自然付着期間内における粒子状物質の排出量が所定の量よりも少ないと判定された場合には、前記故障判定手段による前記排気浄化フィルタの故障の判定を行わないことを特徴とする請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項9】
前記故障判定手段は、前記第2測定手段の測定値の、所定の自然付着期間に亘る変化量に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定することを特徴とする請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項10】
粒子状物質の排出量が所定量よりも少ない運転状態で前記内燃機関が運転された時間を、前記自然付着期間から減算した時間を有効排出時間として、
前記故障判定手段は、前記2測定手段の測定値の前記有効排出時間に亘る変化率が、所定の判定値よりも小さい場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする請求項9に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項11】
前記所定の条件は、前記第1測定手段の測定値又は当該測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値を上回ることを含むことを特徴とする請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項12】
前記排気通路のうち、前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度を検出又は推定する上流濃度検出手段と、
前記第2測定手段の測定値に基づいて、前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度を算出する下流側濃度算出手段と、をさらに備え、
前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度と前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度とに基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定することを特徴とする請求項1から7、及び11の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項13】
前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度と、前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度とに基づいて、前記排気浄化フィルタに捕集される粒子状物質の割合を算出する捕集率算出手段をさらに備え、
前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタに捕集される粒子状物質の割合が所定値よりも大きい場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする請求項12に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項14】
前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼除去する再生手段をさらに備え、
前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了した後、所定の禁止期間を経過するまで、前記故障判定手段による故障の判定を禁止することを特徴とする請求項1から13の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項15】
前記排気浄化フィルタに流入した粒子状物質の積算量を算出する積算量算出手段をさらに備え、
前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記積算量が所定量を超えるまでの期間であることを特徴とする請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項16】
前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量を推定する捕集量推定手段をさらに備え、
前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量が所定量を超えるまでの期間であることを特徴とする請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項17】
前記排気浄化フィルタに流入する粒子状物質のうち捕集される粒子状物質の割合を示す捕集率を推定する捕集率推定手段をさらに備え、
前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記捕集率が所定値を超えるまでの期間であることを特徴とする請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項18】
前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してからの経過時間を計測する計時手段をさらに備え、
前記禁止期間は、前記計時手段による経過時間の計測を開始してから当該経過時間が所定時間を超えるまでの期間であることを特徴とする請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項19】
前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼除去する再生手段と、
前記排気浄化フィルタの温度を推定又は検出するフィルタ温度検出手段と、をさらに備え、
前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了した後、前記排気浄化フィルタの温度が粒子状物質の燃焼温度以上である場合には、前記故障判定手段による故障の判定を禁止することを特徴とする請求項1から13の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項20】
前記センサ素子に付着した粒子状物質を除去する除去手段をさらに備え、
前記除去手段は、前記センサ素子の電気的特性の測定値が所定の閾値より大きくなったことに基づいて当該センサ素子に付着した粒子状物質を除去し、
前記測定値に対する所定の閾値は、前記センサ素子の粒子状物質の付着量に対する前記センサ素子の電気的特性の変化率が所定値未満になる領域内に設定されることを特徴とする請求項1から19の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項1】
内燃機関の排気通路のうち、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタの下流に設けられ、排気に含まれる粒子状物質が付着するセンサ素子を備える排気浄化フィルタの故障検知装置であって、
前記センサ素子は、排気に含まれる粒子状物質を前記センサ素子に付着させるための集塵電圧が印加される第1電極部と、前記センサ素子の電気的特性を測定するための測定電圧が印加される第2電極部と、を有し、
前記故障検知装置は、
前記第1電極部への集塵電圧の印加を開始する電圧印加開始手段と、
前記集塵電圧の印加を開始し、前記第2電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第1測定手段と、
所定の条件が満たされたことに応じて前記第1電極部への集塵電圧の印加を停止する電圧印加停止手段と、
前記集塵電圧の印加を停止した後、前記第2電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第2測定手段と、
前記第2測定手段の測定値に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定する故障判定手段と、を備えることを特徴とする排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項2】
前記第1電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間が経過するまでの間に前記所定の条件が満たされなかった場合には、前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする請求項1に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項3】
前記集塵電圧は、前記測定電圧に比して大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項4】
内燃機関の排気通路のうち、排気に含まれる粒子状物質を捕集する排気浄化フィルタの下流に設けられ、排気に含まれる粒子状物質が付着するセンサ素子を備える排気浄化フィルタの故障検知装置であって、
前記センサ素子は、排気に含まれる粒子状物質を前記センサ素子に付着させるための集塵電圧、及び、前記センサ素子の電気的特性を測定するための前記集塵電圧に比して小さい測定電圧の何れかが選択的に印加される電極部を有し、
前記故障検知装置は、
前記電極部に所定の時間に亘って集塵電圧を印加する電圧印加手段と、
前記集塵電圧を印加した後、前記電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第1測定手段と、
所定の条件が満たされたか否かを判定する判定手段と、
前記所定の条件が満たされたと判定された後、前記電極部に測定電圧を印加することにより前記センサ素子の電気的特性を測定する第2測定手段と、
前記第2測定手段の測定値に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定する故障判定手段と、を備えることを特徴とする排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項5】
前記判定手段により前記所定の条件が満たされていないと判定された場合には、前記電圧印加手段による集塵電圧の印加、及び、前記第1測定手段による測定を再び行うことを特徴とする請求項4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項6】
前記電極部への集塵電圧の印加を開始してから所定の時間が経過するまでの間に前記所定の条件が満たされなかった場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする請求項4又は5に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項7】
前記内燃機関の運転状態が過渡運転状態であるか否かを判定する過渡運転状態判定手段をさらに備え、
前記運転状態が過渡運転状態でない場合には、前記集塵電圧を印加しないことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項8】
前記内燃機関の運転状態に基づいて、所定の自然付着期間内における粒子状物質の排出量が所定の量より少ないか否かを判定する排出量判定手段をさらに備え、
前記自然付着期間内における粒子状物質の排出量が所定の量よりも少ないと判定された場合には、前記故障判定手段による前記排気浄化フィルタの故障の判定を行わないことを特徴とする請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項9】
前記故障判定手段は、前記第2測定手段の測定値の、所定の自然付着期間に亘る変化量に基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定することを特徴とする請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項10】
粒子状物質の排出量が所定量よりも少ない運転状態で前記内燃機関が運転された時間を、前記自然付着期間から減算した時間を有効排出時間として、
前記故障判定手段は、前記2測定手段の測定値の前記有効排出時間に亘る変化率が、所定の判定値よりも小さい場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする請求項9に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項11】
前記所定の条件は、前記第1測定手段の測定値又は当該測定値に基づいて算出されたパラメータが所定の閾値を上回ることを含むことを特徴とする請求項1又は4に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項12】
前記排気通路のうち、前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度を検出又は推定する上流濃度検出手段と、
前記第2測定手段の測定値に基づいて、前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度を算出する下流側濃度算出手段と、をさらに備え、
前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度と前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度とに基づいて、前記排気浄化フィルタの故障を判定することを特徴とする請求項1から7、及び11の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項13】
前記排気浄化フィルタの上流側の粒子状物質の濃度と、前記排気浄化フィルタの下流側の粒子状物質の濃度とに基づいて、前記排気浄化フィルタに捕集される粒子状物質の割合を算出する捕集率算出手段をさらに備え、
前記故障判定手段は、前記排気浄化フィルタに捕集される粒子状物質の割合が所定値よりも大きい場合には、前記排気浄化フィルタは正常であると判定することを特徴とする請求項12に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項14】
前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼除去する再生手段をさらに備え、
前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了した後、所定の禁止期間を経過するまで、前記故障判定手段による故障の判定を禁止することを特徴とする請求項1から13の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項15】
前記排気浄化フィルタに流入した粒子状物質の積算量を算出する積算量算出手段をさらに備え、
前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記積算量が所定量を超えるまでの期間であることを特徴とする請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項16】
前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量を推定する捕集量推定手段をさらに備え、
前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質の量が所定量を超えるまでの期間であることを特徴とする請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項17】
前記排気浄化フィルタに流入する粒子状物質のうち捕集される粒子状物質の割合を示す捕集率を推定する捕集率推定手段をさらに備え、
前記禁止期間は、前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してから、前記捕集率が所定値を超えるまでの期間であることを特徴とする請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項18】
前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了してからの経過時間を計測する計時手段をさらに備え、
前記禁止期間は、前記計時手段による経過時間の計測を開始してから当該経過時間が所定時間を超えるまでの期間であることを特徴とする請求項14に記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項19】
前記排気浄化フィルタに捕集された粒子状物質を燃焼除去する再生手段と、
前記排気浄化フィルタの温度を推定又は検出するフィルタ温度検出手段と、をさらに備え、
前記再生手段による粒子状物質の燃焼除去が終了した後、前記排気浄化フィルタの温度が粒子状物質の燃焼温度以上である場合には、前記故障判定手段による故障の判定を禁止することを特徴とする請求項1から13の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【請求項20】
前記センサ素子に付着した粒子状物質を除去する除去手段をさらに備え、
前記除去手段は、前記センサ素子の電気的特性の測定値が所定の閾値より大きくなったことに基づいて当該センサ素子に付着した粒子状物質を除去し、
前記測定値に対する所定の閾値は、前記センサ素子の粒子状物質の付着量に対する前記センサ素子の電気的特性の変化率が所定値未満になる領域内に設定されることを特徴とする請求項1から19の何れかに記載の排気浄化フィルタの故障検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
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【図23】
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【図25】
【図26】
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【図29】
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【図31】
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【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2011−21479(P2011−21479A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160151(P2009−160151)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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