説明

排気浄化装置

【課題】選択還元触媒による窒素酸化物除去と微粒子物質捕集の両機能を加えた排気浄化装置のコンパクト化を図る。
【解決手段】本発明の排気浄化装置は、排気入口11から排気出口12へ至る排気経路が少なくとも一回折り返されるように内部を仕切ったケーシング10と、液体還元剤を排気経路の排気中に噴射するノズル2と、排気経路におけるノズル2よりも排気下流に配置され、液体還元剤により窒素酸化物を還元浄化する還元触媒21と、排気経路におけるノズル2よりも排気上流に配置され、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタ23と、を含んで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を除去する排気浄化装置に係り、特に、選択還元触媒(SCR)を採用した排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気に含まれるNOxを除去する排気浄化装置として、特許文献1に開示されたようなSCR式の排気浄化装置が提案されている。
この排気浄化装置は、排気系に還元触媒を配設し、該還元触媒の排気上流にノズルから還元剤を噴射して添加することにより、排気中のNOxと還元剤とを触媒還元反応させて、NOxを無害成分に浄化処理するものである。その還元反応は、NOxと反応性が良好なアンモニアを用いるものであり、このための還元剤としては、排気熱及び排気中の水蒸気により加水分解してアンモニアを容易に発生する尿素水溶液やアンモニア水溶液又はHC系などの液体還元剤が用いられる。
【特許文献1】特開2000−27627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなSCR式排気浄化装置においては、還元触媒(NOx浄化触媒)と、この還元触媒の排気上流に液体還元剤を噴射するノズルと、を直列配置しており、これに加えて、排気中の粒子状物質(PM)を捕集するためのフィルタを配置しなければならないとすると、排気系において排気浄化装置の占める長さ方向の寸法が長くなってレイアウトが難しくなる。すなわち、今後の排出ガス規制強化を視野に入れて、NOx除去に加えてPM捕集の機能も備えたSCR式の排気浄化装置を実現しようとした場合、ノズル及び還元触媒に粒子状物質捕集フィルタを加えたレイアウトを工夫して小型化を図る必要がある。
【0004】
本発明はこの点に着目し、SCRによるNOx除去とPM捕集の両機能を加えた排気浄化装置のコンパクト化を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る排気浄化装置は、排気入口から排気出口へ至る排気経路が少なくとも一回折り返されるように内部を仕切ったケーシングと、液体還元剤を前記排気経路の排気中に噴射するノズルと、前記排気経路における前記ノズルよりも排気下流に配置され、前記液体還元剤によりNOxを還元浄化する還元触媒と、前記排気経路における前記ノズルよりも排気上流又は前記還元触媒よりも排気下流に配置され、排気中のPMを捕集するフィルタと、を含んで構成されることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る排気浄化装置は、前記ノズルが、前記排気経路の折返部位の上流寄りに配置されていることを特徴とする。
請求項3に係る排気浄化装置は、前記排気経路における前記ノズルよりも排気上流に配置され、排気中のNOをNOに酸化する酸化触媒をさらに含むことを特徴とする。
請求項4に係る排気浄化装置は、前記フィルタが、前記排気経路における前記ノズルよりも排気上流に配置され、排気中のNOをNOに酸化する酸化触媒物質を担持していることを特徴とする。
【0007】
請求項5に係る排気浄化装置は、前記排気経路における前記還元触媒よりも排気下流に配置され、排気中のアンモニアを酸化するアンモニア酸化触媒をさらに含むことを特徴とする。
請求項6に係る排気浄化装置は、前記フィルタが、前記排気経路における前記還元触媒よりも排気下流に配置され、排気中のアンモニアを酸化するアンモニア酸化触媒物質を担持していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る排気浄化装置によれば、ケーシング内で少なくとも一回折り返した排気経路にノズル、還元触媒、フィルタを配置しているので、その排気経路の折り返しにより、排気系において排気浄化装置の占める長さ方向の寸法を縮めることができる。
請求項2に係る排気浄化装置によれば、排気経路の折返部位の上流寄りにノズルを配置することにより、これよりも下流側に配置される還元触媒との間の距離を稼ぐことが可能となり、ノズルから排気中へ噴射される液体還元剤が還元触媒へ到達するまでの排気中均一拡散、加水分解に最適な距離、時間を確保することが実現される。
【0009】
請求項3に係る排気浄化装置によれば、酸化触媒によるNOの酸化作用により、還元触媒における還元効率を向上させることができる。
請求項4に係る排気浄化装置によれば、粒子状物質を捕集するためのフィルタにNOの酸化触媒の機能を兼備させることができ、部品点数の低減を図ることができる。
請求項5に係る排気浄化装置によれば、アンモニア酸化触媒によるアンモニアの酸化作用により、還元触媒での還元浄化後に排気中に残留し得るアンモニアの排出を防止することができる。
【0010】
請求項6に係る排気浄化装置によれば、粒子状物質を捕集するためのフィルタにアンモニア酸化触媒の機能を兼備させることができ、部品点数の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1から図5に、本発明の実施形態を各種例示している。
各実施形態に係るSCR式の排気浄化装置は、尿素水溶液等の液体還元剤を貯蔵したタンク1から適量の液体還元剤をノズル2へ供給するための添加装置3と、排気温度やエンジン4のECU5から得られるエンジン回転速度等に応じて添加装置3の供給制御を行うECU6と、を備えている。また、タンク1内における測定に適した位置、たとえばタンク底面近傍には液体還元剤の濃度センサ7が垂下され、ECU6へ測定信号を出力している。
【0012】
ケーシング10は、各実施形態とも、角を丸めた(Rを付けた)角形の箱で縦置きとされ、エンジン4からの排気管8に連通した排気入口11から排気が流入し、該排気入口11と同じ側面に設けられた排気出口12から排出される。そして、その排気入口11から排気出口12へ至る排気経路が一回折り返されるように、ケーシング10の内部を仕切壁13が仕切っている。すなわち仕切壁13は、ケーシング10の内部を、排気入口11の側と排気出口12の側との二室に区切り、当該二室が折返部位14でのみ連通するように仕切っている。したがって排気は、矢印Aで示すように、排気入口11から入って折返部位14で折り返された後、排気出口12から排出される。なお、仕切壁13による折返部位14は、図示の例の場合1箇所であるが、仕切壁をラビリンス状に設けるなどして折返部位を増やし、排気経路を折り返す回数を多くすることもできる。
【0013】
このように、排気経路が仕切壁13により折り返されていることによって、排気系において排気浄化装置の占める長さ方向の寸法L(図1参照)が従来構造の約半分程度にコンパクト化される。このような効果に加えて、ケーシング10は、縦置きや横置き等、取付箇所の都合に合わせて設置の向きを自在に決めることができるので、より設計の自由度を上げることができる。
【0014】
各実施形態の排気浄化装置では、排気中のNOをNOに酸化して還元効率を向上させるための酸化触媒20が、ケーシング10内の排気経路における最も上流に配置され、この酸化触媒20を通った後の排気中にノズル2から液体還元剤を噴射し、該液体還元剤を添加した排気を還元触媒(NOx浄化触媒)21に通してNOxを還元浄化する構成をもつ。そして、還元触媒21を経た排気中に含まれ得るアンモニアの排出を防止するため、アンモニアを酸化するアンモニア酸化触媒22が還元触媒21よりも排気下流に配置される。各実施形態においてはさらに、これらの触媒に加えてPM捕集のためのフィルタ23が、適当な位置に追加される。
【0015】
ただし、酸化触媒20はNOx除去性能を向上させるための要素であり、アンモニア酸化触媒22はアンモニアの排出を防止するための要素であるので、NOx除去とPM捕集の機能に必須要素という訳ではない。したがって、最低限、ノズル2及び還元触媒21とフィルタ23がケーシング10に分配配置されていれば良い。
これら、触媒20〜22とフィルタ23を配置するバリエーションにつき図1〜図5に示している。図示のケーシング10は縦置きされており、排気入口11のある排気上流側が上段、排気出口12のある排気下流側が下段となっている。なお、図示の例では排気入口11と排気出口12とを上下段に離して配置してあるが、車載レイアウトを考慮した場合、排気入口11と排気出口12とを近接させて配置することも可能である。たとえば、図示のケーシング10の下段側に排気入口11及び排気出口12の両方を近接させて配置し、該下段側の排気入口11から上段へ排気を導いて触媒に流入させる構造、あるいは、図示のケーシング10の上段側に排気入口11及び排気出口12の両方を近接させて配置し、上段から触媒を通って下段へ流れた排気を上段側の排気出口12へ導いて排出する構造とすることが可能である。
【0016】
図1に示す第1実施形態のケーシング10では、仕切壁13による折返部位14よりも上流側の排気経路15に、上流から下流へ順に酸化触媒20とフィルタ23が直列配置されている。また、仕切壁13による折返部位14よりも下流側の排気経路16には、上流から下流へ順に還元触媒21とアンモニア酸化触媒22が直列配置されている。そして、この第1実施形態の場合のノズル2は、折返部位14の上流寄りに配設されて、還元触媒21の排気上流に液体還元剤を噴射する。
【0017】
上段から下段への折返通路となる折返部位14は、ケーシング10の略高さ相当の長さをもつので、この折返部位14の上流寄りにノズル2を設置することで、ノズル2と還元触媒21との間の距離を稼ぐことができ、ノズル2から排気中へ噴射された液体還元剤の均一な拡散、加水分解に最適な距離、時間を確保することが可能となる。そして、仕切壁13により排気経路が折り返されているので、排気系において排気浄化装置の占める長さ方向の寸法を従来の半分程度に抑えることができている。
【0018】
図2に示す第2実施形態のケーシング10では、折返部位14よりも上流側の排気経路15に、上流から下流へ順に酸化触媒20と還元触媒21が直列配置されている。また、折返部位14よりも下流側の排気経路16には、上流から下流へ順にフィルタ23とアンモニア酸化触媒22が直列配置されている。そしてノズル2は、上流側の排気経路15における酸化触媒20と還元触媒21との間に配設されている。
【0019】
この第2実施形態の場合は、第1実施形態のようにノズル2と還元触媒21との間の距離を稼ぐことができないが、排気系において排気浄化装置の占める長さ方向の寸法については、第1実施形態同様の効果を得ることができる。
図3に示す第3実施形態のケーシング10では、折返部位14よりも上流側の排気経路15に、上流から下流へ順に酸化触媒20と還元触媒21が直列配置され、また、折返部位14よりも下流側の排気経路16に、上流から下流へ順にアンモニア酸化触媒22とフィルタ23が直列配置されている。そしてノズル2は、上流側の排気経路15における酸化触媒20と還元触媒21との間に配設されている。
【0020】
この第3実施形態は、アンモニア酸化触媒22とフィルタ23の位置関係を第2実施形態と逆にしたもので、第2実施形態と同様の利点をもつ。
図4に示す第4実施形態のケーシング10は、NOを酸化する酸化触媒の機能を兼ねたフィルタ24を用いた例である。酸化触媒兼備フィルタ24は、粒子状物質捕集フィルタの表面に酸化触媒物質を担持させることで形成することができる。この第4実施形態では、酸化触媒兼用フィルタ24が折返部位14よりも上流側の排気経路15に配置され、折返部位14よりも下流側の排気経路16には、上流から下流へ順に還元触媒21とアンモニア酸化触媒22が直列配置されている。そして、ノズル2は、折返部位14の上流寄りに配設されて、還元触媒21の排気上流に液体還元剤を噴射する。
【0021】
第4実施形態ではノズル2を折返部位14に設置しているので、第1実施形態同様の利点を得ることができる。加えて、酸化触媒兼用のフィルタ24を使用することにより、部品点数の低減を図ることができる。
図5に示す第5実施形態のケーシング10は、アンモニア酸化触媒の機能を持たせたフィルタ25を用いた例である。アンモニア酸化触媒兼用フィルタ24は、粒子状物質捕集フィルタの表面にアンモニア酸化触媒物質を担持させることで形成することができる。この第5実施形態では、折返部位14よりも上流側の排気経路15に、上流から下流へ順に酸化触媒20と還元触媒21が直列配置され、折返部位14よりも下流側の排気経路16に、アンモニア酸化触媒兼備フィルタ25が配置されている。そして、ノズル2は上流側の排気経路15における酸化触媒20と還元触媒21との間に配設されている。
【0022】
第5実施形態の場合は、第2実施形態と同様の利点に加えて、アンモニア酸化触媒兼用のフィルタ25を使用することにより、部品点数の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る排気浄化装置の第1実施形態を示す概略図。
【図2】本発明に係る排気浄化装置の第2実施形態を示す概略図。
【図3】本発明に係る排気浄化装置の第3実施形態を示す概略図。
【図4】本発明に係る排気浄化装置の第4実施形態を示す概略図。
【図5】本発明に係る排気浄化装置の第5実施形態を示す概略図。
【符号の説明】
【0024】
10 ケーシング
11 排気入口
12 排気出口
13 仕切壁
14 折返部位
15 上流側の排気経路
16 下流側の排気経路
20 酸化触媒
21 還元触媒
22 アンモニア酸化触媒
23 粒子状物質捕集用のフィルタ
24 酸化触媒兼用フィルタ
25 アンモニア酸化触媒兼用フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気入口から排気出口へ至る排気経路が少なくとも一回折り返されるように内部を仕切ったケーシングと、
液体還元剤を前記排気経路の排気中に噴射するノズルと、
前記排気経路における前記ノズルよりも排気下流に配置され、前記液体還元剤により窒素酸化物を還元浄化する還元触媒と、
前記排気経路における前記ノズルよりも排気上流又は前記還元触媒よりも排気下流に配置され、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
を含んで構成されることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記排気経路の折返部位の上流寄りに配置されていることを特徴とする請求項1記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記排気経路における前記ノズルよりも排気上流に配置され、排気中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化する酸化触媒をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記フィルタが、前記排気経路における前記ノズルよりも排気上流に配置され、排気中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化する酸化触媒物質を担持していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の排気浄化装置。
【請求項5】
前記排気経路における前記還元触媒よりも排気下流に配置され、排気中のアンモニアを酸化するアンモニア酸化触媒をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気浄化装置。
【請求項6】
前記フィルタが、前記排気経路における前記還元触媒よりも排気下流に配置され、排気中のアンモニアを酸化するアンモニア酸化触媒物質を担持していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−85247(P2007−85247A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274832(P2005−274832)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】