説明

排気管及び排気管の製造方法

【課題】排気管において、曲げ加工が容易であり、また他部材との接続をした後にも十分な防音効果、排ガス温低下防止効果が得られるようにする。
【解決手段】本発明に係る排気管1は、排気を導く内管10と、この内管10に対して外周部に空気室13を形成させた状態で外嵌する外管11とを有し、内管10の外周面と外管11の突条12との間に断熱性を有する介在部材15が設けられ、管端部20において外管11が縮径されていて内管10に介在部材15を介して当接されている構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用エンジン等の内燃機関に対し好適に採用することのできる二重管構造を有する排気管の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンからマニホールドを介して車体後部へ排ガスを導く排気管として、特許文献1などにおいて、外管と内管との間に微少間隙(10〜150μm)を設けた二重金属管が提案されている。
この二重金属管は、エンジンの振動や排ガス圧の脈動で起こる内管の振動を前記微少間隙で減衰させ、これにより防音性を高めさせることが目的とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−180400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近の自動車にはガソリンエンジンの他に走行用の電動モータをも搭載してこれらを走行条件により使い分けるハイブリッドカーや、信号待ち時などの短い停車中にもエンジン停止をさせる車種など、いわゆるエコカーと呼ばれる自動車が開発されている。これらの自動車では、ガソリンエンジンの動作時間が減ることから排気温度も低下する傾向にある。
【0005】
しかしながら、排気管に設けられている触媒装置は、排ガスの温度(排気温)が所定温度より高温でなければその効果は薄いものとなる。それ故、排気温の低下は触媒装置の処理力低下に繋がり、排ガス規制や環境問題にとって重大な問題となる虞があった。この問題に対し、特許文献1に記載されている従来からの二重金属管は外管と内管との間隙が微少であるから、排気温度の低下を防止する作用は殆ど期待できない。すなわち、この二重金属管を排気管に使用したところで何ら解決にならないことは明かである。
【0006】
加えて、特許文献1に記載されている従来からの二重金属管は、外管と内管が同じ長さであって互いの管端が揃っており、外管と内管との間に間隙が存在し、且つこの間隙は外部に連通するものとなっていた。その結果、二重金属管として本来得られるべき断熱性が、この両管端の結合部では損なわれているという問題があった。例えば、触媒装置などの他部材との接続部などにおいて、外管と内管との間隙は他部材側と連通状態にあり、その部分を介して排気管内部からの放熱が進んだりする問題があった。
【0007】
一方、自動車は、その車種ごとに車体裏(底)の構造が種々様々な凹凸パターンを有しているという事情がある。そのため、排気管は、このような凹凸パターンを考慮しながら個々の車種に応じた曲げ加工を施して、装着させる必要がある。当然に、前述した外管と内管との間隙が微少である従来公知の二重金属管を排気管に用いる場合も、管軸方向の随所を種々の方向へ曲げることになる。
【0008】
ところが、この曲げ加工では、排気管における曲げの外側に「管軸方向の伸び」が起こったり、曲げの内側に「管軸方向の圧縮」が起こり座屈に伴う皺が発生する。そのため、これら伸びや座屈が原因で、外管の内周面と内管の外周面とが局部的に接触することが多発する。言うまでもなく、このような外管と内管との接触箇所では内管の振動がそのまま外管に伝播し、騒音が外に漏れることになる。すなわち、防音性が十分に得られないという問題となっていた。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、管端部を含んだ管全長にわたって断熱性及び防音性に優れ、しかも曲げ加工が容易であって、この曲げ加工時にも十分な断熱性及び防音性が維持されるようにした排気管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
すなわち、本発明に係る排気管は、エンジンからの排気を導く内管と、この内管の外周部に空気室を形成させた状態で外嵌する外管とを有する二重管構造の排気管であって、前記内管の外周面と外管の内周面との間には断熱性を有する介在部材が配設されていて、前記外管の管端部では、当該外管が縮径されていて前記内管に介在部材を介して当接していることを特徴とする。
【0011】
このような構成の排気管であると、内管と外管との間に配設される介在部材により、内管と外管とが直接接触しない状態に保持され、内管から外管へ向けた騒音や熱の外部への伝播を遮り、防音作用及び断熱(保温)作用を奏することになる。
前記外管の内周面には、径方向内側に突出すると共に管軸方向に連続して形成された突条が設けられ、前記突条により内管の外周部に周方向に沿った複数の空気室が形成されているものとするのが好適である。
【0012】
このようにすることで、内管と外管との間に形成される空気室(空気層)が内管から外管へ向けた騒音や熱の外部への伝播を遮り、防音作用及び保温作用を奏することになる。しかも、この排気管を曲げ加工する際に、外管に設けられた突条が曲げの外側となるようにすれば、この突条により内管と外管との間の隙間(空気室)が確実に維持される。また、前述の隙間には介在部材が設けられているため、内管と外管とは直接接触しないこととなり、内管の振動が突条を介して外管に伝播することも防止される。
【0013】
加えて、例えば触媒装置などの他部材との接続箇所では、外管が縮径されて内管に介在部材を介して当接しているので、解放隙間が存在せず断熱性(放熱の防止及び外気侵入の防止)に優れ、十分な排ガス温度の低下防止効果が得られる。
好ましくは、前記外管の管端部では、管軸方向において前記突条の長さが外管の長さよりも短くなっているとよい。
【0014】
更に好ましくは、前記突条の端部は、外管の管軸方向に沿って管端部に近づくほど、当該突条の径内突出高さが徐々に小さくなるように傾斜して形成されているとよい。
また、前記内管はステンレス製であり、前記外管はアルミ製であるとよい。
なお、ここにおいて、アルミ製とはアルミニウム又はアルミニウム合金を形成材料としていることをいう。
【0015】
一方、本発明に係る排気管の製造方法は、二重管構造を有する排気管の製造方法であって、導電性の高い外管の内側に、導電性の低い内管を介在部材を介した上で挿通し、電磁成形法により、前記外管の管端部を縮径させ且つ内管に介在部材を介して当接させることを特徴とする。
また、本発明に係る排気管の他の製造方法は、二重管構造を有する排気管の製造方法であって、管内周面から径方向内側に突出すると共に管軸方向に連続して形成された突条を備えた導電性の高い外管の内側に、導電性の低い内管を介在部材を介した上で挿通し、電磁成形法により、前記外管の管端部を縮径させ且つ内管に介在部材を介して当接させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る排気管は、管端部を含んだ管全長にわたって断熱性及び防音性に優れ、しかも曲げ加工が容易であって、この曲げ加工時にも十分な断熱性及び防音性が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る排気管の使用例を示した斜視図である。
【図2】本発明に係る排気管の使用例を示した模式図である。
【図3】本発明に係る排気管の第1実施形態を示した断面図である。
【図4】(A)〜(C)は縮径加工を施す前の外管の管端部を示した側断面図であり(D)は縮径加工後における排気管の管端部を示した側断面図である。
【図5】(A)は電磁成形による縮径加工方法を説明した側断面図であり(B)はプレス装置による縮径加工方法を説明した側断面図である。
【図6】本発明に係る排気管の第2実施形態を示しており(A)は縮径加工を施す前の外管の管端部を示した側断面図であり(B)は縮径加工後における排気管の管端部を示した側断面図である。
【図7】アルミニウム合金における温度と耐力との関係を示したグラフである。
【図8】介在部材の圧縮状態と外管の温度上昇との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1,図2に示すように、本発明に係る排気管1は、自動車用エンジン2などの内燃機関に対し、マニホールド3を介して触媒装置4,5や消音器6,7を相互に連結して、エンジン2から排出される排ガスを車体後方へ導くように使用される。
排気管1は、連結間距離の違いによって長さが種々に変更されるものであり、また自動車の車種ごとに、車体裏(底)の凹凸パターンに応じて種々の方向へ向けた曲げ加工が施される。
【0019】
なお、触媒装置4,5は、排ガス中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物等を酸化又は還元により除去する。また、消音器6,7は排ガス圧による振動を減衰させて消音させる。これら触媒装置4,5及び消音器6,7の使用数や配置などは、エンジン2の排気量や型式などに応じて適宜変更されることがある。触媒装置4,5や消音器6,7に対する排気管1の連結、或いは排気管1同士の連結は溶接などによって行われる。
【0020】
なお、図1や図2では、触媒装置4,5や消音器6,7の相互間連結を全て本発明に係る排気管1により行っている。しかし、例えばマニホールド3に直結される部分などは自動車のエンジンルーム内に配置されることもあるために、従来公知の単管や二重金属管などで代用することも可能である。
[第1実施形態]
図3は、本発明に係る排気管の第1実施形態を示している。
【0021】
この排気管1は二重管構造であり、エンジン2からの排気を導く内管10と、この内管10に外嵌された外管11とを有している。また、排気管1において、触媒装置4,5や消音器6,7などの他部材と接続する箇所(すなわち、外管11の軸方向両端部)では、外管11が縮径されて内管10に後述する介在部材15を介して当接するようになっている。
【0022】
外管11の内周面には、周方向で複数本の突条12が設けられており、内管10の外周面と外管11の内周面との間には、突条12により周方向で仕切られた複数の空気室13(空気層)が形成されている。
空気室13は、介在部材15によって充満又は若干の空隙を有した非充満状態とされている。内管10の外周面と突条12の突端との間には、介在部材15が挟まれた状態で存在している。すなわち、排気管1は、内管10、介在部材15、外管11による3層構造となっている。
【0023】
以下、各部材の詳細を説明する。
排気管1の内管10は、長尺状であって断面視で略円形の筒管である。内管10は、排ガス温度に対する耐熱性、排ガス中に含まれる物質に対する耐蝕性、排気振動や走行振動などの外力に対する機械的強度に優れた素材のなかから、曲げや切断などに対する加工性、素材コスト面での経済性、走行性能面からの軽量性などで好適とされるものが選択される。具体的にはステンレスにより形成するのが好適である。
【0024】
排気管1の外管11も、長尺状であって断面視で略円形の筒管であって、内管10を内部に挿入可能な直径を有するものとなっている。
外管11は、雨水や融雪剤などに対する耐蝕性、小石の衝突や路面との擦過等に対する機械的強度に優れた素材のなかから、突条12を一体的に付与させる意味での成形性、曲げや切断などに対する加工性、素材コスト面での経済性、走行性能面からの軽量性などで好適とされるものが選択される。具体的にはアルミ押出形材(アルミニウムやアルミニウム合金を形成材料として押出成形したもの)によって形成するのが好適である。
【0025】
この外管11の内周面には、その周方向の一部を径方向内側へ突出させた突条12が設けられている。突条12は、外管11の管軸方向に沿ってその全長に亘るように連続して形成されている。突条12は、外管11に対して一体的に押出形成されている。
突条12は、外管11の内周面に対する周方向に等分配置又は非等分配置で、複数箇所に設けられている。本実施形態では、図3に示すように、非等分配置で7箇所に配置されたものとしている。すなわち、突条12は全部で7本設けられている。
【0026】
突条12の配置は、外管11の上方側はピッチが狭く、下方側はピッチが広くなっている。ゆえに、周方向で隣接する突条12相互間に形成される空気室13の周方向の幅は、上方側が狭く、下方側は広くなっている。
突条12の断面形状は、外管11の内周面側を底辺とする二等辺三角形状であって、その頂角部が半円形にアール面取りされたものとしてある。また、この二等辺三角形の斜辺が外管11の内周面から立ち上がる裾部分では、その外角にも滑らかなアール面取りが施されたものとしてある。
【0027】
突条12の突出高さは、空気室13の層厚よりも小さくなるように形成されていて、突条12の突端部と内管10の外周面との間に「隙間」を形成できるような寸法としてある。この隙間に介在部材15が挟み込まれる。ゆえに、空気室13の層厚=突条12の突出高さ+隙間間隔(挟み込まれた介在部材15の厚み)となっている。空気室13の層厚(径方向の寸法)は、全て同じ寸法で形成されたものとなっている。
【0028】
ところで、排気管1は前述したように自動車への取り付けに際して曲げ加工が施される場合がある(図1参照)。
図3において、外管11の上部が曲げの外側となり、外管11の下部が曲げの内側となるようにして曲げを行うものと仮定して、以下に、7本の突条12が外管11の内周面に対して設けられる配置の意味合いを説明する。
【0029】
まず、突条12は、外管11において曲げの最も外側となる第1位置Aに配備されている(突条12A)。曲げ内側であって第1位置Aに径方向で対峙する位置A’には、突条12は設けられていない。
さらに、曲げ外側と曲げ内側との中間となる第3位置C(排気管1の水平方向位置、2カ所)に突条12Cが形成され、第1位置Aと第3位置Cとの中間となる第4位置D(2カ所)に突条12Dが形成されている。
【0030】
加えて、位置A’の左右両側の位置(第2位置B)に突条12Bが形成されている。突条12B,12Bは、外管11の下半分(右の第3位置C〜左の第3位置C)を3等分する位置に設けられている。
各突条12A〜12Dの役目を以下に説明する。
第1位置Aに設けられた突条12Aは、曲げのときに内管10を支持して、この支持力で曲げによる外管11の径方向への潰れを防止する(空気室13の潰れ防止をする)ように作用する。
【0031】
これに対して、第1位置Aに径方向で対向する位置A’には突条12を設けていないので、排気管1の曲げ内側に、管軸方向の圧縮を原因とした座屈を防止でき、皺を発生させないで済む。
第3位置Cに設けられた突条12Cは、排気管1の曲げに伴う管軸方向伸びや管軸方向圧縮に影響しない位置(中立軸線上)であり、曲げのときには、外管11の突条12Cと内管10とに対して管軸方向の位置ズレ防止等で有益に作用する。
【0032】
それ以外の突条12B,突条12Dは、内管10を外管11の中央部に確実に保持すると共に、曲げに伴う空気室13の潰れ可及的に抑える作用を奏する。
このように突条12A〜突条12Dが配置されることで、この排気管1に曲げ加工を施すことによっても、内管10の外周面と外管11の内周面との周間には、突条12を除くほぼ全周に空気室13が確保される。
【0033】
なお、外管11の外周面に突条12を特定できるような表示を付しておけば、排気管1を曲げる際の扱いが簡単且つ確実に行え、便利である。
介在部材15は、気孔を有する弾性部材であって、内部に空気室を保持し得る高気孔材とされる。言うまでもなく、内管10の昇温温度(排気温)に対して耐熱性を有していること、及び水分などに対する耐蝕性に優れていることは必要とされる。具体的には、グラスウールやセラミックウールを用いるのが好適とされる。
【0034】
なお、この介在部材15は、内管10と外管11との周間全周に設けるのが、保温性を高める意味などにおいて好適とされる。また、図3(A)に示すように、空気室13を充満させるように介在部材15を設けたり、図3(B)に示すように、突条12以外の箇所において外管11の内周面と介在部材15との間に隙間17が生じるように介在部材15を設けたりすることができる。
【0035】
一方、図2に示す如く、排気管1には、前述したように自動車への取り付けに際して、触媒装置4,5や消音器6,7などの他部材と接続する箇所の外管11(つまり、外管11の軸方向両端部)に直径を小さくし窄める加工(縮径加工)を施すようにする。
この縮径加工を施すことにより、外管11の管端部20は、図4(D)に示すように、径小輪部21と外面傾斜部22とを有して形成されたものとなる。
【0036】
径小輪部21は、外管11における本来の管外径を有した部分(管端部20を除く管の中央部分)よりも径小で且つ管軸方向に沿ってストレートに形成された部分である。この縮径輪部21は、内管10に介在部材15を圧縮させた状態に押し付けることにより内管10と一体化している。縮径加工は、内管10に対しては行わない。
なお、縮径輪部21において、管軸方向に沿ったストレート長さは特に限定されるものではないが、外管11と内管10との一体性をより強固にするためには、ある程度の長さを確保するのが好ましい。しかしながら、外管11と内管10との間で、防音作用及び断熱、保温作用を得るためには、縮径輪部21のストレート長さは、極端に長くしないのが好ましい。
【0037】
また外管11の縮径加工によって形成される外面傾斜部22は、外管11における本来の管外径を有した部分から前記縮径輪部21に近づくほど、径方向寸法が徐々に減少するように傾斜させた部分である。
外管11に対して縮径加工を容易に施すには、図4(A)に示すように、外管11の管端部20で突条12の端部を除去して、突条12の長さを外管11の管軸方向の長さよりも短く形成させておき、そのうえで外管11に、縮径輪部21と外面傾斜部22とを形成させような縮径力(外管11の外径を径方向内方へ押す力)を生じさせるとよい。
【0038】
突条12の端部を除去する場合、外管11の管軸方向に沿って、当該外管11の管端部20に近づくほど突条高さが徐々に小さくなるように、傾斜した形状に形成させておく(即ち、傾斜部23を形成させる)のが好適である。
この理由は次の通りである。
外管11に施す縮径加工では、外面傾斜部22を形成させることに伴い、外管11における本来の管外径を有した部分から管端部20に近づくほど縮径量(外管11における本来の管外径を径方向に減少させる量であって図4(D)に示すΔd/2)が増えるようになる。これに対し、突条12に傾斜部23を形成させることで、突条12は外管11の管端部20に近づくほど徐々に径方向の高さが減少することとなり、外管11を縮径させやすく、また外観的に綺麗な縮径形状を形成させることができるようになる。
【0039】
但し、突条12に傾斜部23を形成させることは限定されるものではなく、図4(B)に示すように、外管11の径方向(管軸に対して直交する方向)に沿って真っ直ぐな起立縁24が生じるように形成させてもよい。
或いは、図4(C)に示すように、突条12の端部を全く除去させず、管軸方向において突条12の長さが外管11の長さと同じであってもよい。
【0040】
これら図4(B)や(C)に示すような突条12の端部構造であっても、外管11に生じさせる縮径力の大きさ、外管11の肉厚、強度、外管11の加熱の有無など、加工条件を適宜選択することで外管11の縮径が問題なく行える。
ところで、外管11に縮径力を生じさせるための具体的な方法としては、図5(A)に示すように、電磁成形を採用するのが好適である。
【0041】
電磁成形は、外管11の管軸を中心として外管11のまわりにリング状コイル27を配置し、このコイル27によって交流磁場を発生させ、この磁場で外管11に渦電流を発生させ、この渦電流と交流磁場とで発生するローレンツ力を利用して外管11に縮径力を生じさせるようにするものである。
具体的な縮径加工の手順としては、外管11内に介在部材15を介して内管10を挿通させ、この状態で外管11の縮径させたい箇所(前記の外面傾斜部22及び縮径輪部21を形成させる箇所)を、電磁成形装置に備えられたリング状コイル27のリング内に挿通させる。この状態で、コイル27に交流磁場を発生させる。すると瞬時に縮径加工が実現される。
【0042】
なお、内管10をステンレスにより形成されたものとし、また外管11をアルミ押出形材により形成されたものとする場合、ステンレスである内管10は導電率が低いことから電流が殆ど流れない状態となり、アルミ押出形材である外管11は導電率が高いことから電流が流れる状態となる。そのため、電磁成形において、内管10は殆ど縮径させずに、外管11のみを容易に縮径させることができる。
【0043】
電磁成形を採用する以外の縮径加工方法としては、図5(B)に示すように、外管11の外面をプレス装置30によって圧下する方法を採用可能である。
以上、詳細に説明したとことから明かなように、本発明に係る排気管1は、内管10と外管11との間に形成される空気室13が内管10から外管11へ向けた騒音や熱の伝播を遮り、防音作用及び保温作用を奏することになる。そのため、排気騒音を抑制する効果及び触媒装置4,5の処理力低下を防止する効果が得られることになる。
【0044】
しかも、この排気管1を曲げ加工する際に、外管11の内周面に設けられた突条12が曲げの外側となるようにすれば、この突条12により、内管10と外管11との間の空気室13は、変形したり潰れたりすることなく確保される。
また、内管10の外周面と突条12との間には、弾性を有する介在部材15が挟み込まれた状態となっているので、内管10の振動が突条12を介して外管11に伝播することも防止される。
【0045】
更に、触媒装置4,5や消音器6,7などの他部材との接続箇所では、外管11が縮径されて内管10に介在部材15を介して当接しているので、外管11と内管10との間隙が外気と連通せず、断熱性(放熱の防止及び外気侵入の防止)に優れ、十分な排ガス温度の低下防止効果が得られる。
[第2実施形態]
前述した第1実施形態での排気管1が管端部20を含んだ管全長にわたって優れた断熱性を有している所以は、外管11と内管10との間に断熱性を有する介在部材15が配設され、且つ管端部20で外管11が縮径されていて、外管11と内管10との間隙が外部に非連通となっている構造にあると考えられる。つまり、突条12の存在よりも管端部20における縮径が大きな要因となっている。
【0046】
それ故、第2実施形態では、外管11の内周面に突条12が設けられていない二重管構造の排気管1を開示する。第2実施形態の排気管1も、管端部20を含んだ管全長にわたって断熱性に優れたものとなっている。
図6(B)は、本発明に係る排気管の第2実施形態を示している。
図6(B)に示すように、この排気管1は二重管構造であり、エンジン2からの排気を導く内管10と、この内管10に外嵌された外管11とを有している。また、排気管1において、触媒装置4,5や消音器6,7などの他部材と接続する箇所(すなわち、外管11の軸方向両端部)では、外管11が縮径されて内管10に後述する介在部材15を介して当接するようになっている。
【0047】
図6(A)に示すように、第2実施形態の排気管1の外管11の内周面には、第1実施形態とは異なって突条12が全く設けられていない。
第2実施形態において、内管10はステンレスにより形成されている。また外管11は、アルミ押出形材(アルミニウムやアルミニウム合金を形成材料として押出成形したもの)によって形成されている。更に、介在部材15は、グラスウールやセラミックウールなどの断熱性に優れた材料により形成するのが好適とされている。
【0048】
なお、図7に示すように、外管11を形成するアルミ押出形材(6000系アルミニウム合金)は、150℃より高温になると急激に軟化し耐力が低下するという特性を示す。しかしながら、内管10と外管11との間に断熱性を有する介在部材15を設けることにより、外管11(特に内管10と接する管端部20)での温度上昇を抑制することができ、外管11をアルミ押出形材で形成することが可能となっている。
【0049】
その理由は次の通りである。
図8は、第1実施形態で説明した排気管(突条15あり)におけるコンピュータシミュレーション結果であり、内管10の内部を850℃の排ガスが流れていると仮定した場合について、外管温度と、外管11の断面を経てその外周面から排ガスの熱量が放出されるときの通過熱量と計算した結果である。
【0050】
図8の横軸において、「熱伝導率0.35W/mK」は介在部材15の非圧縮状態での熱伝導率であり、「熱伝統率3W/mK」は介在部材15の圧縮状態での熱伝導率であり、内管10に外管11が接触した状態での熱伝導率は「熱伝導率180W/mK」である。縦軸は外管11の温度である。
図8の右側のグラフから明らかなように、突条12無しの断面位置、すなわち第2実施形態に係る排気管1の長手方向中央部に相当する部分の外管温度は、約80℃程度である。管曲げに伴い、介在部材15が圧縮状態であったとしても、外管11は100℃以下に抑えられている。
【0051】
一方、図8の左側のグラフから明らかなように、突条12有りの断面位置、すなわち第2実施形態に係る排気管1の管端部(縮径部)に相当する部分は、介在部材15が圧縮状態であり、外管11の温度は150℃以下に抑えられていることが判る。これに対し、内管10に外管11が接触した状態では、外管温度は400℃を超えていることから、外管温度を150℃以下に抑える効果が、断熱性を有する介在部材15によるものであることが明かである。
【0052】
まとめるならば、第2実施形態の排気管1においては、外管11の管端部20が縮径されていて内管10に断熱性を有する介在部材15を介して当接しているため、外管11の縮径部20が150℃を超えるような高温にはならず、外管11をアルミニウム押出形材により形成できるようになる。それ故、断熱性を維持しつつ、排気管1(特に外管11)の曲げ加工が容易であるという利点にも繋がっている。
【0053】
なお、第2実施形態の排気管1の製造方法としては、様々な手法が採用可能であるが、図6(A)→図6(B)に示すように、アルミ製の外管11の内側に、介在部材15を介して内管10を挿通し、電磁成形法により、外管11の管端部20を縮径させ且つ内管10に介在部材15を介して当接させるやり方を採用することは非常に好ましい。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0054】
例えば、外管11の管端部20を縮径するに際し、外面傾斜部22の傾斜角度(テーパ角)は限定されない。
突条12の形成本数や周方向の配置は、特に限定されるものではない。
また、本発明に係る排気管1は自動車のエンジン(内燃機関)に対して適用することが限定されるものではない。農作業機や船舶などの内燃機関等にも採用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 排気管
10 内管
11 外管
12(12A〜12E) 突条
13 空気室
15 介在部材
20 管端部
21 縮径輪部
22 外面傾斜部
23 傾斜部
24 起立縁
27 コイル
30 プレス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排気を導く内管と、この内管の外周部に空気室を形成させた状態で外嵌する外管とを有する二重管構造の排気管であって、
前記内管の外周面と外管の内周面との間には断熱性を有する介在部材が配設されていて、
前記外管の管端部では、当該外管が縮径されていて前記内管に介在部材を介して当接していることを特徴とする排気管。
【請求項2】
前記外管の内周面には、径方向内側に突出すると共に管軸方向に連続して形成された突条が設けられ、前記突条により内管の外周部に周方向に沿った複数の空気室が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排気管。
【請求項3】
前記外管の管端部では、管軸方向において前記突条の長さが外管の長さよりも短くなっていることを特徴とする請求項2に記載の排気管。
【請求項4】
前記突条の端部は、外管の管軸方向に沿って管端部に近づくほど、当該突条の径内突出高さが徐々に小さくなるように傾斜して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の排気管。
【請求項5】
前記内管はステンレス製であり、前記外管はアルミ製であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の排気管。
【請求項6】
二重管構造を有する排気管の製造方法であって、
導電性の高い外管の内側に、導電性の低い内管を介在部材を介した上で挿通し、
電磁成形法により、前記外管の管端部を縮径させ且つ内管に介在部材を介して当接させることを特徴とする排気管の製造方法。
【請求項7】
二重管構造を有する排気管の製造方法であって、
管内周面から径方向内側に突出すると共に管軸方向に連続して形成された突条を備えた導電性の高い外管の内側に、導電性の低い内管を介在部材を介した上で挿通し、
電磁成形法により、前記外管の管端部を縮径させ且つ内管に介在部材を介して当接させることを特徴とする排気管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−13038(P2012−13038A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152002(P2010−152002)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】