説明

排水処理方法および排水処理装置

【課題】 有機物含有排水の処理効率を向上できると共にコンパクト化とランニングコスト低減を実現できる排水処理方法及び排水処理装置を提供する。
【解決手段】 この排水処理装置は、マイクロナノバブル反応槽3で有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理してから、曝気槽7に導入する。これにより、曝気槽7での微生物の活性を高めて処理する前に、有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理し、排水中の有機物をマイクロナノバブルで一部酸化し、有機物負荷を低減した後、液中膜17によって微生物濃度が高濃度に存在している曝気槽7に処理水を導入して効果的に有機物を処理できる。曝気槽7の小型化を図れて装置全体の規模の縮小化を図れ、イニシャルコストの削減を図れる。また、曝気槽7の後段の光触媒槽22では、光触媒板24による酸化処理によって微生物処理だけでは不可能な微量の有機物の高度な酸化処理を行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機物含有排水を処理する排水処理方法および排水処理装置に関し、例えば、液中膜を用いた高濃度微生物処理、マイクロナノバブル処理、光触媒処理等が可能で、コンパクト化および処理水質の向上が可能な排水処理装置および排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な微生物処理システムでは、曝気槽の容量が大きく、設置場所が少なくなった工場では、曝気槽の設置を確保することが困難であった。このため、全体の排水処理装置の設置面積が小さく性能の良い排水処理方法や排水処理装置が求められている。
【0003】
また、液中膜を利用した高濃度微生物処理システムでは、時間の経過とともに、液中膜の詰まりによる透過水量の減少が問題となっていた。このため、液中膜の目詰まりが発生しても、目詰まりの原因である液中膜表面の油脂分を効果的に洗浄できる方法が求められている。
【0004】
また、高濃度微生物処理だけのシステムの場合、さらなる高度処理を必要とする場合、活性炭吸着処理を追加することもあるが、この場合、有機物吸着後の活性炭の取換え等によりランニングコストが高くなる問題があった。このため、液中膜の目詰まりが発生しても、目詰まりの原因である液中膜表面の油脂分を効果的に洗浄できる方法が求められている。
【0005】
一方、別の従来技術として、ナノバブルを利用した処理方法および処理装置が、特許文献1(特開2004−121962号公報)に記載されている。
【0006】
この従来技術は、ナノバブルが有する浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、静電分極の実現による界面活性作用と殺菌作用などの特性を活用したものである。より具体的には、上記従来技術では、それらの特性が相互に関連することによって、汚れ成分の吸着機能、物体表面の高速洗浄機能、殺菌機能を発揮して、各種物体を高機能かつ低環境負荷で洗浄することができ、汚濁水の浄化を行うことができることを開示している。
【0007】
また、今一つの従来技術として、特許文献2(特開2003−334548号公報)で開示されている技術では、ナノ気泡の生成方法が記載されている。
【0008】
この従来技術によるナノ気泡の生成方法では、液体中において、(1)液体の一部を分解ガス化する工程、(2) 液体中で超音波を印加する工程、または、(3)液体の一部を分解ガス化する工程および超音波を印加する工程を有することを開示している。
【0009】
しかし、上記2つの従来技術では、ナノバブルを利用した汚濁水の浄化あるいはナノバブルを利用して固体表面の汚れを除去することを開示しているが、有機物含有排水を微生物で処理する場合の微生物の活性を高めて処理効率や処理水質を向上させる技術については開示していない。
【特許文献1】特開2004−121962号公報
【特許文献2】特開2003−334548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の課題は、有機物含有排水の処理効率を向上できると共に、コンパクト化とランニングコスト低減を実現できる排水処理方法および排水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の排水処理方法は、有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理するマイクロナノバブル処理工程と、
上記有機物含有排水を上記マイクロナノバブル処理工程で処理して得た処理水を、液中膜を用いて微生物処理する微生物処理工程と、
上記微生物処理後の処理水を光触媒処理する光触媒処理工程とを備える。
【0012】
この発明の排水処理方法では、マイクロナノバブル処理工程により、有機物含有排水中の有機物をマイクロナノバブルで前処理した処理水を、微生物処理工程により、微生物処理する。したがって、上記マイクロナノバブルによる前処理の効果により、その後の微生物処理における有機物負荷を低減できたり、又は微生物の活性を高める事ができ、かつ、微生物処理のための装置を小型化することが可能となる。
【0013】
さらに、上記微生物処理工程による微生物処理後の処理水を光触媒処理することによって、処理水中に残存している微量の有機物が光触媒処理され、微生物処理による処理の限界を越えた高度処理が可能となる。
【0014】
また、一実施形態の排水処理装置は、有機物含有排水が導入されると共に上記有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理するマイクロナノバブル反応槽と、
上記マイクロナノバブル反応槽からの被処理水が導入されると共に液中膜を有し、上記被処理水を微生物処理する曝気槽と、
上記曝気槽からの被処理水が導入されると共に上記被処理水を光触媒処理する光触媒槽とを備える。
【0015】
この実施形態の排水処理装置では、マイクロナノバブル反応槽で有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理してから、液中膜を有する曝気槽に導入する。つまり、この実施形態では、曝気槽での微生物処理の前に、有機物含有排水をマイクロナノバブル反応槽においてマイクロナノバブルで処理する。したがって、排水中の有機物をマイクロナノバブルで酸化して有機物負荷を低減した後、液中膜によって微生物濃度が高濃度に存在している曝気槽に被処理水を導入して効果的に有機物を処理できる。よって、曝気槽の小型化を図れ、装置全体の規模の縮小化を図れ、イニシャルコストの削減を図れる。また、また、曝気槽の後段の光触媒槽では、光触媒による酸化処理によって、微生物処理だけでは不可能な微量の有機物の高度な酸化処理を行うことができる。
【0016】
また、一実施形態の排水処理装置は、上記マイクロナノバブル反応槽の前段に配置されると共に上記有機物含有排水が導入され、上記有機物含有排水の水質と水量を調整する調整槽を有し、
上記マイクロナノバブル反応槽は、上記調整槽で水質と水量が調整された有機物含有排水が導入される。
【0017】
この実施形態の排水処理装置では、調整槽で有機物含有排水の水質と水量を調整した後に、マイクロナノバブル反応槽に導入するから、マイクロナノバブルによる有機物の酸化処理を効率よく行える。
【0018】
また、一実施形態の排水処理装置は、上記マイクロナノバブル反応槽はマイクロナノバブル発生機を有し、
上記曝気槽から上記液中膜を経由して被処理水を上記マイクロナノバブル発生機に送水する送水部を有する。
【0019】
この実施形態の排水処理装置では、送水部は、被処理水を上記曝気槽から上記液中膜を経由して、マイクロナノバブル反応槽が有するマイクロナノバブル発生機に送水する。つまり、液中膜を利用した高濃度微生物装置となる曝気槽からの液中膜被処理水(電解質を含んだ水)をマイクロナノバブル発生機に送水する。これにより、このマイクロナノバブル発生機は、マイクロナノバブル反応槽において、極めて微小な気泡を安定して供給できる。
【0020】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記曝気槽は、マイクロナノバブルを発生して上記液中膜を洗浄するマイクロナノバブル洗浄部を有する。
【0021】
この排水処理装置では、マイクロナノバブル洗浄部は発生したマイクロナノバブルによって、液中膜を洗浄して液中膜が閉塞する原因である油脂分を効果的に洗浄できる。
【0022】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記曝気槽は、上記液中膜に空気を吐出して上記液中膜を洗浄する散気管を有し、上記マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと上記散気管が吐出する空気とが混合された混合バブルでもって上記液中膜を洗浄する。
【0023】
この実施形態の排水処理装置によれば、マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと散気管が吐出する大きな空気の気泡との2種類のバブルを混合して、上記曝気槽の液中膜を洗浄できる。したがって、この2種類のバブルのそれぞれの特徴を発揮して、2種類のバブルによる相乗効果を期待でき、液中膜をより確実に洗浄できる。すなわち、散気管からの空気の気泡が液中膜に向かって移動することによって、洗浄効果が優れたマイクロナノバブルを上記液中膜に導くことができる。
【0024】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記散気管は上記液中膜の下方に配置されていると共に、上記マイクロナノバブル洗浄部は、上記液中膜と上記散気管との間に配置されており、
上記散気管に取り付けられて上記散気管が吐出する空気を上記マイクロナノバブル洗浄部に案内する第1のガイドと、
上記液中膜に取り付けられて上記マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと上記散気管が吐出する空気とを上記液中膜に導く第2のガイドとを有する。
【0025】
この実施形態の排水処理装置によれば、上記第1のガイドと第2のガイドによって、マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと散気管が発生する気泡とを無駄なく液中膜に接触させることができ、液中膜をより確実に洗浄できる。
【0026】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記曝気槽は、上下方向に2段以上に配置された複数の液中膜を有する。
【0027】
この実施形態の排水処理装置によれば、曝気槽において、複数の液中膜を上下方向に2段以上に配置したので、曝気槽の設置床面積を低減でき、省スペースな装置とすることができる。
【0028】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記光触媒槽は、上記紫外線照射部と、上記処理水に接触すると共に上記紫外線照射部からの紫外線が照射されるスパッタ薄膜を含む光触媒板とを有する。
【0029】
この実施形態の排水処理装置によれば、光触媒槽では、紫外線照射部が光触媒板に紫外線を照射することにより、光触媒板の光触媒の効果を助長することができる。また、光触媒板が含むスパッタ薄膜は、光触媒として強い硬度で緻密な薄膜とすることができるので、強い水流が当っても磨耗や剥離の心配がない。なお、上記紫外線照射部は、上記被処理水が到達しない箇所に設置することが望ましい。また、上記紫外線照射部は水銀ランプ等で構成できる。
【0030】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記光触媒槽は、
発光ダイオードランプと、
上記被処理水に接触すると共に上記発光ダイオードランプからの光線が照射されるスパッタ薄膜を含む光触媒板とを有する。
【0031】
この実施形態の排水処理装置によれば、上記被処理水に対して非接触である発光ダイオードランプからの光線を光触媒板に照射することによって、光触媒板の光触媒の効果を助長できる。また、発光ダイオードランプは、紫外線ランプの様な水銀を含むことがないので、環境上安全なランプとすることができる。なお、上記発光ダイオードランプは被処理水が到達しない箇所に配置することが望ましい。
【0032】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記光触媒基板は、上記スパッタ薄膜と基板を含み、この基板がガラスまたは石英板である。
【0033】
この実施形態の排水処理装置によれば、上記光触媒基板が含む基板をガラスまたは石英板で構成するので、安価、かつ、製造が容易である。
【0034】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記光触媒槽は、マイクロナノバブル発生機を有する。
【0035】
この実施形態によれば、光触媒槽は、マイクロナノバブル発生機でマイクロナノバブルを発生させることで、処理水と光触媒板との接触の効率を向上できる。その上、マイクロナノバブルによる酸化と光触媒による酸化の2つの酸化によって、処理水に残存する有機物を短時間で酸化処理できる。
【0036】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記曝気槽は、生物処理された処理水または生物処理後に発生した汚泥が導入される。
【0037】
この実施形態の排水処理装置によれば、曝気槽に、生物処理された処理水または生物処理後に発生した汚泥が導入されるので、曝気槽における微生物活性を増強できる。すなわち、高濃度に微生物を培養するには、生物処理された処理水または生物処理後に発生した汚泥中のミネラルを要する。このミネラルが不足すると、微生物の活性の不足を招く。また、電解質イオンの元となる生物処理された処理水または生物処理後に発生した汚泥を曝気槽に投入することによって、電解質が豊富な処理水とすることができる。
【0038】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記光触媒槽は、透明な外壁を有する。
【0039】
この実施形態の排水処理装置によれば、上記光触媒槽は透明な外壁を有するので、透明な外壁を透過して内部に照射してくる外光によって、光触媒板の光触媒作用を向上でき、光触媒作用による処理水の処理効率を向上できる。なお、上記外壁の全面を透明にすれば、上、下、横の全面から入射する光によって、より光触媒作用を向上できる。
【発明の効果】
【0040】
この発明の排水処理方法によれば、マイクロナノバブル処理工程により、有機物含有排水中の有機物をマイクロナノバブルで前処理した被処理水を、微生物処理工程により、微生物処理する。したがって、上記マイクロナノバブルによる前処理の効果により、その後の微生物の活性を高めた処理により、有機物負荷を低減でき、かつ、微生物処理のための装置を小型化することが可能となる。さらに、上記微生物処理工程による微生物処理後の処理水を光触媒処理することによって、処理水中に残存している微量の有機物を光触媒処理でき、微生物処理による処理の限界を越えた高度処理が可能となる。
【0041】
したがって、この発明の排水処理方法によれば、有機物含有排水の処理効率を向上できると共に、排水処理装置の規模の縮小とランニングコスト低減を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0043】
(第1の実施の形態)
図1に、この発明の排水処理装置の第1実施形態を模式的に示す。この第1実施形態は、調整槽1と、マイクロナノバブル反応槽3と、曝気槽7と、光触媒槽22を備える。
【0044】
上記調整槽1には、有機物含有排水が導入され、この調整槽1において、有機物含有排水の水量と水質が調整される。なお、この調整槽1に導入される排水としては、各種の有機物含有排水が挙げられ、一例として、食品工場の排水や半導体工場からの有機アルカリ排水等が挙げられ、また、生活排水も有機物を含んでいるので有機物含有排水に該当する。この調整槽1で有機物含有排水は水量と水質が調整され、処理水として調整槽ポンプ2によって、マイクロナノバブル反応槽3に導入される。
【0045】
このマイクロナノバブル反応槽3は、その内部に、マイクロナノバブル発生機4が設置されている。このマイクロナノバブル発生機4には、空気吸い込み管5と送水配管29が接続されている。この空気吸い込み管5は、マイクロナノバブル発生機4に空気を導入し、上記送水配管29は、曝気槽7内に配置された液中膜17から送水ポンプ19で送水された処理水をマイクロナノバブル発生機4に供給する。これにより、このマイクロナノバブル発生機4はマイクロナノバブルを発生する。
【0046】
なお、上記送水配管29と送水ポンプ19とが送水部を構成している。また、このマイクロナノバブル発生機4は、市販されているものならば、メーカーを限定するものではなく、具体的一例としては、株式会社ナノプラネット研究所のものを採用できる。また、マイクロナノバブル発生機の他の商品としては、一例として、西華産業株式会社のマイクロバブル水製造装置を選定してもよい。
【0047】
このマイクロナノバブル反応槽3においては、有機物含有排水中の有機物が、マイクロナノバブルにより一部酸化される。そして、マイクロナノバブル反応槽3のマイクロナノバブル発生機4から発生したマイクロナノバブルにより、一部酸化された被処理水は、次に曝気槽7に導入される。
【0048】
この曝気槽7に付属して、循環ポンプ6が配置されている。この循環ポンプ6は、曝気槽7内の被処理水を含む汚泥を循環配管L1を通して、マイクロナノバブル反応槽3に導入する。このマイクロナノバブル反応槽3に導入された上記被処理水を含む汚泥は、マイクロナノバブル発生機4で発生したマイクロナノバブルによって処理された後、再び曝気槽7に戻る。
【0049】
すなわち、上記被処理水を含む汚泥は、曝気槽7とマイクロナノバブル反応槽3との間を循環ポンプ6によって循環することとなる。この循環ポンプ6によって循環することによって、被処理水をマイクロナノバブルによって酸化すると共に、処理水へマイクロナノバブルによって酸素供給することができる。特に、ナノバブルは、水中にいつまでも存在して、溶存酸素濃度を上昇させることが分かってきた。
【0050】
ここで、3種類のバブルについて説明する。
【0051】
(i) 通常のバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。
【0052】
(ii) マイクロバブルは、直径が50ミクロン(μm)以下の微細気泡で、水中で縮小していき、ついには消滅(完全溶解)してしまう。
【0053】
(iii) ナノバブルは、マイクロバブルよりもさらに小さいバブルで直径が数100nm以下(例えば直径が100〜200nm)で、いつまでも水の中に存在することが可能なバブルと言われている。
【0054】
したがって、ここでは、マイクロナノバブルとは、上記マイクロバブルとナノバブルとが混合したバブルと説明できる。
【0055】
よって、曝気槽7の液中膜17から送水配管29を経由して循環ポンプ6によってマイクロナノバブル反応槽3のマイクロナノバブル発生機4に導入された循環水は、マイクロナノバブルによって酸素が補給されることとなる。このマイクロナノバブルが含むナノバブルは、長期間にわたって曝気槽7の処理水中に滞留し、曝気槽7内の溶存酸素を長時間維持できる。
【0056】
したがって、従来のようにマイクロナノバブルで酸素が供給されることのない曝気槽では、曝気用のブロワーが24時間連続運転していたのに対して、この実施形態では、曝気槽7は、間欠運転される間欠運転ブロワー9から空気配管10を経由して散気管8から吐出される空気の気泡で間欠的に曝気される。このブロワー9を間欠運転することで、連続運転する場合に比べてエネルギーを節約できる。
【0057】
図1に示すように、液中膜17に接続された送水先の異なる3つの送水ポンプ19、20、21が、曝気槽7に付属して設置されている。
【0058】
上記送水ポンプ19は、前述の如く、被処理水を液中膜17からマイクロナノバブル反応槽3に送水する。また、送水ポンプ20は、液中膜17からの被処理水を、送水配管13を経由して、液中膜17を洗浄するためのマイクロナノバブル発生機15に送水する。なお、このマイクロナノバブル発生機15には空気吸い込み管14が接続され、この空気吸い込み管14からマイクロナノバブル発生機15に空気が導入される。
【0059】
さらに、送水ポンプ21は、液中膜17から送水配管27を経由して後段の光触媒槽22内に設置されたマイクロナノバブル発生機25に被処理水を送水する。なお、このマイクロナノバブル発生機25には空気吸い込み管26が接続され、この空気吸い込み管26からマイクロナノバブル発生機25に空気が導入される。
【0060】
また、上記液中膜17には、第2のガイドとして液中膜カバー16が取り付けられている。この液中膜カバー16は、マイクロナノバブル発生機15の下方に設置されている散気管11から吐出する空気が上昇する際、マイクロナノバブル発生機15が発生した超微細のマイクロナノバブルを、上記散気管11の吐出空気と共に液中膜17に導いて、液中膜17に効果的に接触させる役目を果たす。
【0061】
そして、ブロワー28に接続された散気管11にも、第1のガイドとして散気管カバー12が取り付けられている。この散気管カバー12は、散気管11が吐出する空気を効率よくマイクロナノバブル発生機15に導く役目を果たす。上記ブロワー28から散気管11へ空気が供給されるが、このブロワー28は24時間連続運転である。その理由は、液中膜17の空気洗浄は24時間の稼動が必要であることによる。
【0062】
一方、マイクロナノバブル発生機15の運転は液中膜17の詰まり具合と関係づけて運転時間を決定すればよい。つまり、一般に、被処理水が油脂分を多く含有する場合には、マイクロナノバブル発生機15の運転時間が比較的長くなる。ブロワー28から散気管11に供給される空気が、散気管11から吐出して、液中膜17の膜表面を洗浄するが、この散気管11からの吐出空気とマイクロナノバブルとの混合バブルの方が液中膜17の洗浄効果が高いのは勿論である。
【0063】
一方、曝気槽7には、配管L2を経由して、生物処理された処理水または生物処理された汚泥が導入されている。この曝気槽7に、生物処理された処理水または生物処理された汚泥が導入されることによって、生物処理された処理水または生物処理後に発生した汚泥に含まれるリン、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の微量要素が、曝気槽7内全ての微生物の活性を促進できる。特に、曝気槽7の液中膜17による高濃度微生物処理では、上記微量要素が処理水に含有されていないと、微生物の活性がなく、処理が安定しない。なお、この曝気槽7内の微生物濃度はMLSS(混合液懸濁物質(Mixed Liquor Suspended Solid))で10000ppm以上で運転する。この液中膜17から出た処理水は重力配管18−Aを通って、光触媒槽22に導入される。重力配管18−Aは水頭差を利用して被処理水を導き出すことが可能な配管である。
【0064】
この光触媒槽22は、最上部に紫外線照射部としての紫外線ランプ23が設置されており、紫外線ランプ23に被処理水が到達しないようにしている。また、この光触媒槽22の内部には、マイクロナノバブル発生機25が設置されている。また、紫外線ランプ23とマイクロナノバブル発生機25との間に光触媒板24が設置されている。この光触媒板24は、被処理水に接触するが、上記紫外線ランプ23は上記被処理水に接触しない。
【0065】
上記光触媒槽22では、マイクロナノバブル発生機25から発生するマイクロナノバブルで光触媒板24の光触媒と被処理水とを混合撹拌すると共に、上記マイクロナノバブルによって被処理水を酸化処理する。この光触媒板24は具体的には、ガラス板にスパッタ法でスパッタ薄膜を形成して作製した。なお、一般に、紫外線ランプ23は有害な水銀を含むので、紫外線ランプ23に替えて環境上安全な発光ダイオードランプを採用することも可能である。また、マイクロナノバブル発生機25への供給水は、液中膜17と接続している送水ポンプ21より、送水配管27を介して供給される被処理水である。
【0066】
そして、この光触媒槽22の出口から処理水が得られる。この第1実施形態の排水処理装置によれば、マイクロナノバブル反応槽3で有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理してから、液中膜17を有する曝気槽7に導入する。これにより、マイクロナノバブルによる微生物の活性を高めて処理すると同時に曝気槽7での微生物処理の前に、有機物含有排水をマイクロナノバブル反応槽3においてマイクロナノバブルで処理するので、曝気槽7の小型化を図れ、装置全体の規模の縮小化を図れ、イニシャルコストの削減を図れる。また、排水中の有機物をマイクロナノバブルで酸化したことで、有機物負荷を低減した後、液中膜17によって微生物濃度が高濃度に存在している曝気槽7に被処理水を導入して効果的に有機物を処理できる。また、曝気槽7の後段の光触媒槽22では、光触媒による酸化処理によって、微生物処理だけでは不可能な微量の有機物の高度な酸化処理を行うことができる。
【0067】
また、この実施形態によれば、光触媒槽22は、マイクロナノバブル発生機25でマイクロナノバブルを発生させることで、被処理水と光触媒板24との接触の効率を向上できる。その上、マイクロナノバブルによる酸化と光触媒による酸化の2つの酸化によって、処理水に残存する有機物を短時間に酸化処理できる。
【0068】
したがって、この第1実施形態によれば、有機物含有排水の処理効率を向上できると共に、排水処理装置の規模の縮小とランニングコスト低減を実現できる。
【0069】
また、この第1実施形態では、送水部をなす送水ポンプ19,送水配管29が、被処理水を上記曝気槽7から上記液中膜17を経由して、マイクロナノバブル反応槽3が有するマイクロナノバブル発生機4に送水する。つまり、液中膜17を利用した高濃度微生物装置である曝気槽7から、電解質を含んだ液中膜被処理水をマイクロナノバブル発生機4に送水する。これにより、このマイクロナノバブル発生機4は、マイクロナノバブル反応槽3において、極めて微小な気泡を安定して供給できる。
【0070】
(第2の実施の形態)
次に、この発明の排水処理装置の第2実施形態を図2に示す。この第2実施形態は、曝気槽7Nに設置された液中膜17の上段にもう1つの液中膜117を備えた点だけが前述の第1実施形態と異なる。よって、この第2実施形態では、第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を説明する。
【0071】
図2に示すように、この第2実施形態は、液中膜17の上段に液中膜117が配置され、2つの液中膜17と117とが立体的に設置されている。よって、曝気槽7の設置床面積を増大させることなく、液中膜17と117の下方から上昇してくるマイクロナノバブルや洗浄用空気を立体的に有効に利用できるメリットがある。
【0072】
(第3の実施の形態)
次に、図3に、この発明の排水処理装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態は、曝気槽7V内に塩化ビニリデン充填物30が充填されている点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第3実施形態では、第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0073】
この第3実施形態では、曝気槽7V内に塩化ビニリデン充填物30を充填したから、曝気槽7Vの全体を平均すると、上記充填物30がない場合に比べて、微生物濃度を高濃度とすることができる。しかも、塩化ビニリデン充填物30に微生物が付着繁殖するので、充填物がない場合に比べて、微生物がより安定化し、有機物含有排水中の有機物を処理する能力が向上する。
【0074】
なお、塩化ビニリデン充填物30を水槽7Vの全体に配置することが好ましい。この場合、微生物濃度が曝気槽7Vの全体に高濃度となる。
【0075】
この第3実施形態では、装置の試運転から時間の経過とともに塩化ビニリデン充填物30には微生物が繁殖する。この塩化ビニリデン充填物30の表面の微生物濃度は30000ppm以上となり、有機物の処理効率のアップにつながる。この塩化ビニリデン充填物30の材質は、強固で化学物質に侵されない塩化ビニリデンであり、半永久的に使用できる。この塩化ビニリデン充填物30としては、バイオコード、リングレース、バイオマルチリーフ、バイオモジュール等の商品があるが、排水の性状に合わせて選定すれば良い。なお、この第3実施形態を、前述の第2実施形態と組み合わせても良い。
【0076】
(第4の実施の形態)
次に、図4に、この発明の排水処理装置の第4実施形態を示す。この第4実施形態は、曝気槽7Zの略中央付近に、縦方向(上下方向)に延びる仕切板31を配置した点だけが前述の第1実施形態と異なる。よって、この第4実施形態では、上述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0077】
この第4実施形態では、ブロワー28により供給されて散気管11から吐出される空気が上記曝気槽7Z内で上昇水流32Aを生じさせ、この上昇水流32Aは、上記略中央の仕切板31を越えて、散気管11とは反対側に移動し、下降水流32Bとなる。これにより、曝気槽7Z内が充分撹拌されるから、処理水中の有機物の微生物分解を促進できる。なお、この第4実施形態を、前述の第2,第3実施形態と組み合わせても良い。
【0078】
(実験例)
図1に示す第1実施形態の排水処理装置と同じ構造の実験装置を製作した。この実験装置における調整槽1の容量は50リットル、マイクロナノバブル反応槽3の容量は20リットル、曝気槽7の容量は200リットルである。この実験装置における約2ケ月間に亘る微生物の訓養終了後、微生物濃度を約14000ppmとした。そして、工場から排水される有機物含有排水中の有機物濃度を全有機炭素量(TOC=total organic carbon)として測定したところ860ppmであった排水を、調整槽1に連続的に導入した。その後、1ケ間水質が安定するのを待って、重力配管18−Bの出口から得られる処理水の全有機炭素量を測定したところ、12ppmであった。
【0079】
なお、図5Aに上記有機物含有排水の全有機炭素量濃度が800ppmの場合の第1〜第4実施形態におけるタイムチャートの一例を示し、図5Bに上記有機物含有排水の全有機炭素量濃度が1600ppmの場合の第1〜第4実施形態におけるタイムチャートの一例を示す。また、上記第1〜第4実施形態において、上記光触媒槽22の外壁を透明にすれば、透明な外壁を透過して内部に照射してくる外光によって、光触媒板24の光触媒作用を向上でき、光触媒作用による処理水の処理効率を向上できる。特に、上記外壁の全面を透明にすれば、上、下、横の全面から入射する光によって、より光触媒作用を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明の排水処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【図2】この発明の排水処理装置の第2実施形態を模式的に示す図である。
【図3】この発明の排水処理装置の第3実施形態を模式的に示す図である。
【図4】この発明の排水処理装置の第4実施形態を模式的に示す図である。
【図5A】上記第1〜第4実施形態における有機物含有排水の全有機炭素量濃度が800ppmの場合のタイムチャートである。
【図5B】上記第1〜第4実施形態における有機物含有排水の全有機炭素量濃度が1600ppmの場合のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 調整槽
2 調整槽ポンプ
3 マイクロナノバブル反応槽
4 マイクロナノバブル発生機
5、14、26 空気吸い込み管
6 循環ポンプ
7、7N、7V、7Z 曝気槽
8、11 散気管
9 間欠運転ブロワー
10 空気配管
12 散気管カバー
13、27、29 送水配管
15 マイクロナノバブル発生機
16 液中膜カバー
17 液中膜
18 重力配管
19、20、21 送水ポンプ
22 光触媒槽
23 紫外線ランプ
24 光触媒板
25 マイクロナノバブル発生機
28 ブロワー
30 塩化ビニリデン充填物
31 仕切り板
32A 上昇水流
32B 下降水流
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有機物含有排水を処理する排水処理方法および排水処理装置に関し、例えば、液中膜を用いた高濃度微生物処理、マイクロナノバブル処理、光触媒処理等が可能で、コンパクト化および処理水質の向上が可能な排水処理装置および排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な微生物処理システムでは、曝気槽の容量が大きく、設置場所が少なくなった工場では、曝気槽の設置を確保することが困難であった。このため、全体の排水処理装置の設置面積が小さく性能の良い排水処理方法や排水処理装置が求められている。
【0003】
また、液中膜を利用した高濃度微生物処理システムでは、時間の経過とともに、液中膜の詰まりによる透過水量の減少が問題となっていた。このため、液中膜の目詰まりが発生しても、目詰まりの原因である液中膜表面の油脂分を効果的に洗浄できる方法が求められている。
【0004】
また、高濃度微生物処理だけのシステムの場合、さらなる高度処理を必要とする場合、活性炭吸着処理を追加することもあるが、この場合、有機物吸着後の活性炭の取換え等によりランニングコストが高くなる問題があった。このため、液中膜の目詰まりが発生しても、目詰まりの原因である液中膜表面の油脂分を効果的に洗浄できる方法が求められている。
【0005】
一方、別の従来技術として、ナノバブルを利用した処理方法および処理装置が、特許文献1(特開2004−121962号公報)に記載されている。
【0006】
この従来技術は、ナノバブルが有する浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、静電分極の実現による界面活性作用と殺菌作用などの特性を活用したものである。より具体的には、上記従来技術では、それらの特性が相互に関連することによって、汚れ成分の吸着機能、物体表面の高速洗浄機能、殺菌機能を発揮して、各種物体を高機能かつ低環境負荷で洗浄することができ、汚濁水の浄化を行うことができることを開示している。
【0007】
また、今一つの従来技術として、特許文献2(特開2003−334548号公報)で開示されている技術では、ナノ気泡の生成方法が記載されている。
【0008】
この従来技術によるナノ気泡の生成方法では、液体中において、(1)液体の一部を分解ガス化する工程、(2) 液体中で超音波を印加する工程、または、(3)液体の一部を分解ガス化する工程および超音波を印加する工程を有することを開示している。
【0009】
しかし、上記2つの従来技術では、ナノバブルを利用した汚濁水の浄化あるいはナノバブルを利用して固体表面の汚れを除去することを開示しているが、有機物含有排水を微生物で処理する場合の微生物の活性を高めて処理効率や処理水質を向上させる技術については開示していない。
【特許文献1】特開2004−121962号公報
【特許文献2】特開2003−334548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の課題は、有機物含有排水の処理効率を向上できると共に、コンパクト化とランニングコスト低減を実現できる排水処理方法および排水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明の排水処理方法は、有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理するマイクロナノバブル処理工程と、
上記有機物含有排水を上記マイクロナノバブル処理工程で処理して得た処理水を、液中膜を用いて微生物処理する微生物処理工程と、
上記微生物処理後の処理水を光触媒処理する光触媒処理工程とを備え、
上記マイクロナノバブル処理工程では、上記微生物処理工程で用いる上記液中膜による処理水を用いてマイクロナノバブルを発生させることを特徴としている。
【0012】
この発明の排水処理方法では、マイクロナノバブル処理工程により、有機物含有排水中の有機物をマイクロナノバブルで前処理した処理水を、微生物処理工程により、微生物処理する。したがって、上記マイクロナノバブルによる前処理の効果により、その後の微生物処理における有機物負荷を低減できたり、又は微生物の活性を高める事ができ、かつ、微生物処理のための装置を小型化することが可能となる。
【0013】
さらに、上記微生物処理工程による微生物処理後の処理水を光触媒処理することによって、処理水中に残存している微量の有機物が光触媒処理され、微生物処理による処理の限界を越えた高度処理が可能となる。
【0014】
また、一実施形態の排水処理装置は、有機物含有排水が導入されると共に上記有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理するマイクロナノバブル反応槽と、
上記マイクロナノバブル反応槽からの処理水が導入されると共に液中膜を有し、上記処理水を微生物処理する曝気槽と、
上記曝気槽からの処理水が導入されると共に上記処理水を光触媒処理する光触媒槽と、
上記曝気槽が有する上記液中膜の処理水を上記マイクロナノバブル反応槽へ返送する配管とを備え、
上記マイクロナノバブル反応槽では、上記曝気槽が有する上記液中膜からの処理水を用いてマイクロナノバブルを発生させる。
【0015】
この実施形態の排水処理装置では、マイクロナノバブル反応槽で有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理してから、液中膜を有する曝気槽に導入する。つまり、この実施形態では、曝気槽での微生物処理の前に、有機物含有排水をマイクロナノバブル反応槽においてマイクロナノバブルで処理する。したがって、排水中の有機物をマイクロナノバブルで酸化して有機物負荷を低減した後、液中膜によって微生物濃度が高濃度に存在している曝気槽に被処理水を導入して効果的に有機物を処理できる。よって、曝気槽の小型化を図れ、装置全体の規模の縮小化を図れ、イニシャルコストの削減を図れる。また、また、曝気槽の後段の光触媒槽では、光触媒による酸化処理によって、微生物処理だけでは不可能な微量の有機物の高度な酸化処理を行うことができる。
【0016】
また、一実施形態の排水処理装置は、上記マイクロナノバブル反応槽の前段に配置されると共に上記有機物含有排水が導入され、上記有機物含有排水の水質と水量を調整する調整槽を有し、
上記マイクロナノバブル反応槽は、上記調整槽で水質と水量が調整された有機物含有排水が導入される。
【0017】
この実施形態の排水処理装置では、調整槽で有機物含有排水の水質と水量を調整した後に、マイクロナノバブル反応槽に導入するから、マイクロナノバブルによる有機物の酸化処理を効率よく行える。
【0018】
また、一実施形態の排水処理装置は、上記マイクロナノバブル反応槽はマイクロナノバブル発生機を有し、
上記曝気槽から上記液中膜を経由して被処理水を上記マイクロナノバブル発生機に送水する送水部を有する。
【0019】
この実施形態の排水処理装置では、送水部は、被処理水を上記曝気槽から上記液中膜を経由して、マイクロナノバブル反応槽が有するマイクロナノバブル発生機に送水する。つまり、液中膜を利用した高濃度微生物装置となる曝気槽からの液中膜被処理水(電解質を含んだ水)をマイクロナノバブル発生機に送水する。これにより、このマイクロナノバブル発生機は、マイクロナノバブル反応槽において、極めて微小な気泡を安定して供給できる。
【0020】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記曝気槽は、マイクロナノバブルを発生して上記液中膜を洗浄するマイクロナノバブル洗浄部を有する。
【0021】
この排水処理装置では、マイクロナノバブル洗浄部は発生したマイクロナノバブルによって、液中膜を洗浄して液中膜が閉塞する原因である油脂分を効果的に洗浄できる。
【0022】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記曝気槽は、上記液中膜に空気を吐出して上記液中膜を洗浄する散気管を有し、上記マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと上記散気管が吐出する空気とが混合された混合バブルでもって上記液中膜を洗浄する。
【0023】
この実施形態の排水処理装置によれば、マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと散気管が吐出する大きな空気の気泡との2種類のバブルを混合して、上記曝気槽の液中膜を洗浄できる。したがって、この2種類のバブルのそれぞれの特徴を発揮して、2種類のバブルによる相乗効果を期待でき、液中膜をより確実に洗浄できる。すなわち、散気管からの空気の気泡が液中膜に向かって移動することによって、洗浄効果が優れたマイクロナノバブルを上記液中膜に導くことができる。
【0024】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記散気管は上記液中膜の下方に配置されていると共に、上記マイクロナノバブル洗浄部は、上記液中膜と上記散気管との間に配置されており、
上記散気管に取り付けられて上記散気管が吐出する空気を上記マイクロナノバブル洗浄部に案内する第1のガイドと、
上記液中膜に取り付けられて上記マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと上記散気管が吐出する空気とを上記液中膜に導く第2のガイドとを有する。
【0025】
この実施形態の排水処理装置によれば、上記第1のガイドと第2のガイドによって、マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと散気管が発生する気泡とを無駄なく液中膜に接触させることができ、液中膜をより確実に洗浄できる。
【0026】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記曝気槽は、上下方向に2段以上に配置された複数の液中膜を有する。
【0027】
この実施形態の排水処理装置によれば、曝気槽において、複数の液中膜を上下方向に2段以上に配置したので、曝気槽の設置床面積を低減でき、省スペースな装置とすることができる。
【0028】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記光触媒槽は、上記紫外線照射部と、上記処理水に接触すると共に上記紫外線照射部からの紫外線が照射されるスパッタ薄膜を含む光触媒板とを有する。
【0029】
この実施形態の排水処理装置によれば、光触媒槽では、紫外線照射部が光触媒板に紫外線を照射することにより、光触媒板の光触媒の効果を助長することができる。また、光触媒板が含むスパッタ薄膜は、光触媒として強い硬度で緻密な薄膜とすることができるので、強い水流が当っても磨耗や剥離の心配がない。なお、上記紫外線照射部は、上記被処理水が到達しない箇所に設置することが望ましい。また、上記紫外線照射部は水銀ランプ等で構成できる。
【0030】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記光触媒槽は、
発光ダイオードランプと、
上記被処理水に接触すると共に上記発光ダイオードランプからの光線が照射されるスパッタ薄膜を含む光触媒板とを有する。
【0031】
この実施形態の排水処理装置によれば、上記被処理水に対して非接触である発光ダイオードランプからの光線を光触媒板に照射することによって、光触媒板の光触媒の効果を助長できる。また、発光ダイオードランプは、紫外線ランプの様な水銀を含むことがないので、環境上安全なランプとすることができる。なお、上記発光ダイオードランプは被処理水が到達しない箇所に配置することが望ましい。
【0032】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記光触媒基板は、上記スパッタ薄膜と基板を含み、この基板がガラスまたは石英板である。
【0033】
この実施形態の排水処理装置によれば、上記光触媒基板が含む基板をガラスまたは石英板で構成するので、安価、かつ、製造が容易である。
【0034】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記光触媒槽は、マイクロナノバブル発生機を有する。
【0035】
この実施形態によれば、光触媒槽は、マイクロナノバブル発生機でマイクロナノバブルを発生させることで、処理水と光触媒板との接触の効率を向上できる。その上、マイクロナノバブルによる酸化と光触媒による酸化の2つの酸化によって、処理水に残存する有機物を短時間で酸化処理できる。
【0036】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記曝気槽は、
生物処理されたミネラルを含む処理水または生物処理後に発生したミネラルを含む汚泥が、別の系統から導入される。
【0037】
この実施形態の排水処理装置によれば、曝気槽に、生物処理された処理水または生物処理後に発生した汚泥が導入されるので、曝気槽における微生物活性を増強できる。すなわち、高濃度に微生物を培養するには、生物処理された処理水または生物処理後に発生した汚泥中のミネラルを要する。このミネラルが不足すると、微生物の活性の不足を招く。また、電解質イオンの元となる生物処理された処理水または生物処理後に発生した汚泥を曝気槽に投入することによって、電解質が豊富な処理水とすることができる。
【0038】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記光触媒槽は、マイクロナノバブル発生機を有すると共に、透明な外壁を有する。
【0039】
この実施形態の排水処理装置によれば、上記光触媒槽は透明な外壁を有するので、透明な外壁を透過して内部に照射してくる外光によって、光触媒板の光触媒作用を向上でき、光触媒作用による処理水の処理効率を向上できる。なお、上記外壁の全面を透明にすれば、上、下、横の全面から入射する光によって、より光触媒作用を向上できる。
【発明の効果】
【0040】
この発明の排水処理方法によれば、マイクロナノバブル処理工程により、有機物含有排水中の有機物をマイクロナノバブルで前処理した被処理水を、微生物処理工程により、微生物処理する。したがって、上記マイクロナノバブルによる前処理の効果により、その後の微生物の活性を高めた処理により、有機物負荷を低減でき、かつ、微生物処理のための装置を小型化することが可能となる。さらに、上記微生物処理工程による微生物処理後の処理水を光触媒処理することによって、処理水中に残存している微量の有機物を光触媒処理でき、微生物処理による処理の限界を越えた高度処理が可能となる。
【0041】
したがって、この発明の排水処理方法によれば、有機物含有排水の処理効率を向上できると共に、排水処理装置の規模の縮小とランニングコスト低減を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0043】
(第1の実施の形態)
図1に、この発明の排水処理装置の第1実施形態を模式的に示す。この第1実施形態は、調整槽1と、マイクロナノバブル反応槽3と、曝気槽7と、光触媒槽22を備える。
【0044】
上記調整槽1には、有機物含有排水が導入され、この調整槽1において、有機物含有排水の水量と水質が調整される。なお、この調整槽1に導入される排水としては、各種の有機物含有排水が挙げられ、一例として、食品工場の排水や半導体工場からの有機アルカリ排水等が挙げられ、また、生活排水も有機物を含んでいるので有機物含有排水に該当する。この調整槽1で有機物含有排水は水量と水質が調整され、処理水として調整槽ポンプ2によって、マイクロナノバブル反応槽3に導入される。
【0045】
このマイクロナノバブル反応槽3は、その内部に、マイクロナノバブル発生機4が設置されている。このマイクロナノバブル発生機4には、空気吸い込み管5と送水配管29が接続されている。この空気吸い込み管5は、マイクロナノバブル発生機4に空気を導入し、上記送水配管29は、曝気槽7内に配置された液中膜17から送水ポンプ19で送水された処理水をマイクロナノバブル発生機4に供給する。これにより、このマイクロナノバブル発生機4はマイクロナノバブルを発生する。
【0046】
なお、上記送水配管29と送水ポンプ19とが送水部を構成している。また、このマイクロナノバブル発生機4は、市販されているものならば、メーカーを限定するものではなく、具体的一例としては、株式会社ナノプラネット研究所のものを採用できる。また、マイクロナノバブル発生機の他の商品としては、一例として、西華産業株式会社のマイクロバブル水製造装置を選定してもよい。
【0047】
このマイクロナノバブル反応槽3においては、有機物含有排水中の有機物が、マイクロナノバブルにより一部酸化される。そして、マイクロナノバブル反応槽3のマイクロナノバブル発生機4から発生したマイクロナノバブルにより、一部酸化された被処理水は、次に曝気槽7に導入される。
【0048】
この曝気槽7に付属して、循環ポンプ6が配置されている。この循環ポンプ6は、曝気槽7内の被処理水を含む汚泥を循環配管L1を通して、マイクロナノバブル反応槽3に導入する。このマイクロナノバブル反応槽3に導入された上記被処理水を含む汚泥は、マイクロナノバブル発生機4で発生したマイクロナノバブルによって処理された後、再び曝気槽7に戻る。
【0049】
すなわち、上記被処理水を含む汚泥は、曝気槽7とマイクロナノバブル反応槽3との間を循環ポンプ6によって循環することとなる。この循環ポンプ6によって循環することによって、被処理水をマイクロナノバブルによって酸化すると共に、処理水へマイクロナノバブルによって酸素供給することができる。特に、ナノバブルは、水中にいつまでも存在して、溶存酸素濃度を上昇させることが分かってきた。
【0050】
ここで、3種類のバブルについて説明する。
【0051】
(i) 通常のバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。
【0052】
(ii) マイクロバブルは、直径が50ミクロン(μm)以下の微細気泡で、水中で縮小していき、ついには消滅(完全溶解)してしまう。
【0053】
(iii) ナノバブルは、マイクロバブルよりもさらに小さいバブルで直径が数100nm以下(例えば直径が100〜200nm)で、いつまでも水の中に存在することが可能なバブルと言われている。
【0054】
したがって、ここでは、マイクロナノバブルとは、上記マイクロバブルとナノバブルとが混合したバブルと説明できる。
【0055】
よって、曝気槽7の液中膜17から送水配管29を経由して循環ポンプ6によってマイクロナノバブル反応槽3のマイクロナノバブル発生機4に導入された循環水は、マイクロナノバブルによって酸素が補給されることとなる。このマイクロナノバブルが含むナノバブルは、長期間にわたって曝気槽7の処理水中に滞留し、曝気槽7内の溶存酸素を長時間維持できる。
【0056】
したがって、従来のようにマイクロナノバブルで酸素が供給されることのない曝気槽では、曝気用のブロワーが24時間連続運転していたのに対して、この実施形態では、曝気槽7は、間欠運転される間欠運転ブロワー9から空気配管10を経由して散気管8から吐出される空気の気泡で間欠的に曝気される。このブロワー9を間欠運転することで、連続運転する場合に比べてエネルギーを節約できる。
【0057】
図1に示すように、液中膜17に接続された送水先の異なる3つの送水ポンプ19、20、21が、曝気槽7に付属して設置されている。
【0058】
上記送水ポンプ19は、前述の如く、被処理水を液中膜17からマイクロナノバブル反応槽3に送水する。また、送水ポンプ20は、液中膜17からの被処理水を、送水配管13を経由して、液中膜17を洗浄するためのマイクロナノバブル発生機15に送水する。なお、このマイクロナノバブル発生機15には空気吸い込み管14が接続され、この空気吸い込み管14からマイクロナノバブル発生機15に空気が導入される。
【0059】
さらに、送水ポンプ21は、液中膜17から送水配管27を経由して後段の光触媒槽22内に設置されたマイクロナノバブル発生機25に被処理水を送水する。なお、このマイクロナノバブル発生機25には空気吸い込み管26が接続され、この空気吸い込み管26からマイクロナノバブル発生機25に空気が導入される。
【0060】
また、上記液中膜17には、第2のガイドとして液中膜カバー16が取り付けられている。この液中膜カバー16は、マイクロナノバブル発生機15の下方に設置されている散気管11から吐出する空気が上昇する際、マイクロナノバブル発生機15が発生した超微細のマイクロナノバブルを、上記散気管11の吐出空気と共に液中膜17に導いて、液中膜17に効果的に接触させる役目を果たす。
【0061】
そして、ブロワー28に接続された散気管11にも、第1のガイドとして散気管カバー12が取り付けられている。この散気管カバー12は、散気管11が吐出する空気を効率よくマイクロナノバブル発生機15に導く役目を果たす。上記ブロワー28から散気管11へ空気が供給されるが、このブロワー28は24時間連続運転である。その理由は、液中膜17の空気洗浄は24時間の稼動が必要であることによる。
【0062】
一方、マイクロナノバブル発生機15の運転は液中膜17の詰まり具合と関係づけて運転時間を決定すればよい。つまり、一般に、被処理水が油脂分を多く含有する場合には、マイクロナノバブル発生機15の運転時間が比較的長くなる。ブロワー28から散気管11に供給される空気が、散気管11から吐出して、液中膜17の膜表面を洗浄するが、この散気管11からの吐出空気とマイクロナノバブルとの混合バブルの方が液中膜17の洗浄効果が高いのは勿論である。
【0063】
一方、曝気槽7には、配管L2を経由して、生物処理された処理水または生物処理された汚泥が導入されている。この曝気槽7に、生物処理された処理水または生物処理された汚泥が導入されることによって、生物処理された処理水または生物処理後に発生した汚泥に含まれるリン、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の微量要素が、曝気槽7内全ての微生物の活性を促進できる。特に、曝気槽7の液中膜17による高濃度微生物処理では、上記微量要素が処理水に含有されていないと、微生物の活性がなく、処理が安定しない。なお、この曝気槽7内の微生物濃度はMLSS(混合液懸濁物質(Mixed Liquor Suspended Solid))で10000ppm以上で運転する。この液中膜17から出た処理水は重力配管18−Aを通って、光触媒槽22に導入される。重力配管18−Aは水頭差を利用して被処理水を導き出すことが可能な配管である。
【0064】
この光触媒槽22は、最上部に紫外線照射部としての紫外線ランプ23が設置されており、紫外線ランプ23に被処理水が到達しないようにしている。また、この光触媒槽22の内部には、マイクロナノバブル発生機25が設置されている。また、紫外線ランプ23とマイクロナノバブル発生機25との間に光触媒板24が設置されている。この光触媒板24は、被処理水に接触するが、上記紫外線ランプ23は上記被処理水に接触しない。
【0065】
上記光触媒槽22では、マイクロナノバブル発生機25から発生するマイクロナノバブルで光触媒板24の光触媒と被処理水とを混合撹拌すると共に、上記マイクロナノバブルによって被処理水を酸化処理する。この光触媒板24は具体的には、ガラス板にスパッタ法でスパッタ薄膜を形成して作製した。なお、一般に、紫外線ランプ23は有害な水銀を含むので、紫外線ランプ23に替えて環境上安全な発光ダイオードランプを採用することも可能である。また、マイクロナノバブル発生機25への供給水は、液中膜17と接続している送水ポンプ21より、送水配管27を介して供給される被処理水である。
【0066】
そして、この光触媒槽22の出口から処理水が得られる。この第1実施形態の排水処理装置によれば、マイクロナノバブル反応槽3で有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理してから、液中膜17を有する曝気槽7に導入する。これにより、マイクロナノバブルによる微生物の活性を高めて処理すると同時に曝気槽7での微生物処理の前に、有機物含有排水をマイクロナノバブル反応槽3においてマイクロナノバブルで処理するので、曝気槽7の小型化を図れ、装置全体の規模の縮小化を図れ、イニシャルコストの削減を図れる。また、排水中の有機物をマイクロナノバブルで酸化したことで、有機物負荷を低減した後、液中膜17によって微生物濃度が高濃度に存在している曝気槽7に被処理水を導入して効果的に有機物を処理できる。また、曝気槽7の後段の光触媒槽22では、光触媒による酸化処理によって、微生物処理だけでは不可能な微量の有機物の高度な酸化処理を行うことができる。
【0067】
また、この実施形態によれば、光触媒槽22は、マイクロナノバブル発生機25でマイクロナノバブルを発生させることで、被処理水と光触媒板24との接触の効率を向上できる。その上、マイクロナノバブルによる酸化と光触媒による酸化の2つの酸化によって、処理水に残存する有機物を短時間に酸化処理できる。
【0068】
したがって、この第1実施形態によれば、有機物含有排水の処理効率を向上できると共に、排水処理装置の規模の縮小とランニングコスト低減を実現できる。
【0069】
また、この第1実施形態では、送水部をなす送水ポンプ19,送水配管29が、被処理水を上記曝気槽7から上記液中膜17を経由して、マイクロナノバブル反応槽3が有するマイクロナノバブル発生機4に送水する。つまり、液中膜17を利用した高濃度微生物装置である曝気槽7から、電解質を含んだ液中膜被処理水をマイクロナノバブル発生機4に送水する。これにより、このマイクロナノバブル発生機4は、マイクロナノバブル反応槽3において、極めて微小な気泡を安定して供給できる。
【0070】
(第2の実施の形態)
次に、この発明の排水処理装置の第2実施形態を図2に示す。この第2実施形態は、曝気槽7Nに設置された液中膜17の上段にもう1つの液中膜117を備えた点だけが前述の第1実施形態と異なる。よって、この第2実施形態では、第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を説明する。
【0071】
図2に示すように、この第2実施形態は、液中膜17の上段に液中膜117が配置され、2つの液中膜17と117とが立体的に設置されている。よって、曝気槽7の設置床面積を増大させることなく、液中膜17と117の下方から上昇してくるマイクロナノバブルや洗浄用空気を立体的に有効に利用できるメリットがある。
【0072】
(第3の実施の形態)
次に、図3に、この発明の排水処理装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態は、曝気槽7V内に塩化ビニリデン充填物30が充填されている点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第3実施形態では、第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0073】
この第3実施形態では、曝気槽7V内に塩化ビニリデン充填物30を充填したから、曝気槽7Vの全体を平均すると、上記充填物30がない場合に比べて、微生物濃度を高濃度とすることができる。しかも、塩化ビニリデン充填物30に微生物が付着繁殖するので、充填物がない場合に比べて、微生物がより安定化し、有機物含有排水中の有機物を処理する能力が向上する。
【0074】
なお、塩化ビニリデン充填物30を水槽7Vの全体に配置することが好ましい。この場合、微生物濃度が曝気槽7Vの全体に高濃度となる。
【0075】
この第3実施形態では、装置の試運転から時間の経過とともに塩化ビニリデン充填物30には微生物が繁殖する。この塩化ビニリデン充填物30の表面の微生物濃度は30000ppm以上となり、有機物の処理効率のアップにつながる。この塩化ビニリデン充填物30の材質は、強固で化学物質に侵されない塩化ビニリデンであり、半永久的に使用できる。この塩化ビニリデン充填物30としては、バイオコード、リングレース、バイオマルチリーフ、バイオモジュール等の商品があるが、排水の性状に合わせて選定すれば良い。なお、この第3実施形態を、前述の第2実施形態と組み合わせても良い。
【0076】
(第4の実施の形態)
次に、図4に、この発明の排水処理装置の第4実施形態を示す。この第4実施形態は、曝気槽7Zの略中央付近に、縦方向(上下方向)に延びる仕切板31を配置した点だけが前述の第1実施形態と異なる。よって、この第4実施形態では、上述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0077】
この第4実施形態では、ブロワー28により供給されて散気管11から吐出される空気が上記曝気槽7Z内で上昇水流32Aを生じさせ、この上昇水流32Aは、上記略中央の仕切板31を越えて、散気管11とは反対側に移動し、下降水流32Bとなる。これにより、曝気槽7Z内が充分撹拌されるから、処理水中の有機物の微生物分解を促進できる。なお、この第4実施形態を、前述の第2,第3実施形態と組み合わせても良い。
【0078】
(実験例)
図1に示す第1実施形態の排水処理装置と同じ構造の実験装置を製作した。この実験装置における調整槽1の容量は50リットル、マイクロナノバブル反応槽3の容量は20リットル、曝気槽7の容量は200リットルである。この実験装置における約2ケ月間に亘る微生物の訓養終了後、微生物濃度を約14000ppmとした。そして、工場から排水される有機物含有排水中の有機物濃度を全有機炭素量(TOC=total organic carbon)として測定したところ860ppmであった排水を、調整槽1に連続的に導入した。その後、1ケ間水質が安定するのを待って、重力配管18−Bの出口から得られる処理水の全有機炭素量を測定したところ、12ppmであった。
【0079】
なお、図5Aに上記有機物含有排水の全有機炭素量濃度が800ppmの場合の第1〜第4実施形態におけるタイムチャートの一例を示し、図5Bに上記有機物含有排水の全有機炭素量濃度が1600ppmの場合の第1〜第4実施形態におけるタイムチャートの一例を示す。また、上記第1〜第4実施形態において、上記光触媒槽22の外壁を透明にすれば、透明な外壁を透過して内部に照射してくる外光によって、光触媒板24の光触媒作用を向上でき、光触媒作用による処理水の処理効率を向上できる。特に、上記外壁の全面を透明にすれば、上、下、横の全面から入射する光によって、より光触媒作用を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】この発明の排水処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【図2】この発明の排水処理装置の第2実施形態を模式的に示す図である。
【図3】この発明の排水処理装置の第3実施形態を模式的に示す図である。
【図4】この発明の排水処理装置の第4実施形態を模式的に示す図である。
【図5A】上記第1〜第4実施形態における有機物含有排水の全有機炭素量濃度が800ppmの場合のタイムチャートである。
【図5B】上記第1〜第4実施形態における有機物含有排水の全有機炭素量濃度が1600ppmの場合のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 調整槽
2 調整槽ポンプ
3 マイクロナノバブル反応槽
4 マイクロナノバブル発生機
5、14、26 空気吸い込み管
6 循環ポンプ
7、7N、7V、7Z 曝気槽
8、11 散気管
9 間欠運転ブロワー
10 空気配管
12 散気管カバー
13、27、29 送水配管
15 マイクロナノバブル発生機
16 液中膜カバー
17 液中膜
18 重力配管
19、20、21 送水ポンプ
22 光触媒槽
23 紫外線ランプ
24 光触媒板
25 マイクロナノバブル発生機
28 ブロワー
30 塩化ビニリデン充填物
31 仕切り板
32A 上昇水流
32B 下降水流


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理するマイクロナノバブル処理工程と、
上記有機物含有排水を上記マイクロナノバブル処理工程で処理して得た処理水を、液中膜を用いて微生物処理する微生物処理工程と、
上記微生物処理後の処理水を光触媒処理する光触媒処理工程とを備えることを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
有機物含有排水が導入されると共に上記有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理するマイクロナノバブル反応槽と、
上記マイクロナノバブル反応槽からの処理水が導入されると共に液中膜を有し、上記処理水を微生物処理する曝気槽と、
上記曝気槽からの処理水が導入されると共に上記処理水を光触媒処理する光触媒槽とを備えることを特徴とする排水処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記マイクロナノバブル反応槽の前段に配置されると共に上記有機物含有排水が導入され、上記有機物含有排水の水質と水量を調整する調整槽を有し、
上記マイクロナノバブル反応槽は、上記調整槽で水質と水量が調整された有機物含有排水が導入されることを特徴とする排水処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記マイクロナノバブル反応槽はマイクロナノバブル発生機を有し、
上記曝気槽から上記液中膜を経由して被処理水を上記マイクロナノバブル発生機に送水する送水部を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記曝気槽は、
マイクロナノバブルを発生して上記液中膜を洗浄するマイクロナノバブル洗浄部を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の排水処理装置において、
上記曝気槽は、
上記液中膜に空気を吐出して上記液中膜を洗浄する散気管を有し、
上記マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと上記散気管が吐出する空気とが混合された混合バブルでもって上記液中膜を洗浄することを特徴とする排水処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の排水処理装置において、
上記散気管は上記液中膜の下方に配置されていると共に、上記マイクロナノバブル洗浄部は、上記液中膜と上記散気管との間に配置されており、
上記散気管に取り付けられて上記散気管が吐出する空気を上記マイクロナノバブル洗浄部に案内する第1のガイドと、
上記液中膜に取り付けられて上記マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと上記散気管が吐出する空気とを上記液中膜に導く第2のガイドとを有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項8】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記曝気槽は、
上下方向に2段以上に配置された複数の液中膜を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項9】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記光触媒槽は、
紫外線照射部と、
上記処理水に接触すると共に上記紫外線照射部からの紫外線が照射されるスパッタ薄膜を含む光触媒板とを有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項10】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記光触媒槽は、
発光ダイオードランプと、
上記処理水に接触すると共に上記発光ダイオードランプからの光線が照射されるスパッタ薄膜を含む光触媒板とを有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の排水処理装置において、
上記光触媒基板は、
上記スパッタ薄膜と基板を含み、この基板がガラスまたは石英板であることを特徴とする排水処理装置。
【請求項12】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記光触媒槽は、マイクロナノバブル発生機を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項13】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記曝気槽は、
生物処理された処理水または生物処理後に発生した汚泥が導入されることを特徴とする排水処理装置。
【請求項14】
請求項9または10に記載の排水処理装置において、
上記光触媒槽は、
周囲を透明な外壁で構成し、周囲に紫外線照射部が配置されていることを特徴とする排水処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理するマイクロナノバブル処理工程と、
上記有機物含有排水を上記マイクロナノバブル処理工程で処理して得た処理水を、液中膜を用いて微生物処理する微生物処理工程と、
上記微生物処理後の処理水を光触媒処理する光触媒処理工程とを備え、
上記マイクロナノバブル処理工程では、上記微生物処理工程で用いる上記液中膜による処理水を用いてマイクロナノバブルを発生させることを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
有機物含有排水が導入されると共に上記有機物含有排水をマイクロナノバブルで処理するマイクロナノバブル反応槽と、
上記マイクロナノバブル反応槽からの処理水が導入されると共に液中膜を有し、上記処理水を微生物処理する曝気槽と、
上記曝気槽からの処理水が導入されると共に上記処理水を光触媒処理する光触媒槽と、
上記曝気槽が有する上記液中膜の処理水を上記マイクロナノバブル反応槽へ返送する配管とを備え、
上記マイクロナノバブル反応槽では、上記曝気槽が有する上記液中膜からの処理水を用いてマイクロナノバブルを発生させることを特徴とする排水処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記マイクロナノバブル反応槽の前段に配置されると共に上記有機物含有排水が導入され、上記有機物含有排水の水質と水量を調整する調整槽を有し、
上記マイクロナノバブル反応槽は、上記調整槽で水質と水量が調整された有機物含有排水が導入されることを特徴とする排水処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記マイクロナノバブル反応槽はマイクロナノバブル発生機を有し、
上記曝気槽から上記液中膜を経由して被処理水を上記マイクロナノバブル発生機に送水する送水部を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記曝気槽は、
マイクロナノバブルを発生して上記液中膜を洗浄するマイクロナノバブル洗浄部を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の排水処理装置において、
上記曝気槽は、
上記液中膜に空気を吐出して上記液中膜を洗浄する散気管を有し、
上記マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと上記散気管が吐出する空気とが混合された混合バブルでもって上記液中膜を洗浄することを特徴とする排水処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の排水処理装置において、
上記散気管は上記液中膜の下方に配置されていると共に、上記マイクロナノバブル洗浄部は、上記液中膜と上記散気管との間に配置されており、
上記散気管に取り付けられて上記散気管が吐出する空気を上記マイクロナノバブル洗浄部に案内する第1のガイドと、
上記液中膜に取り付けられて上記マイクロナノバブル洗浄部が発生するマイクロナノバブルと上記散気管が吐出する空気とを上記液中膜に導く第2のガイドとを有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項8】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記曝気槽は、
上下方向に2段以上に配置された複数の液中膜を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項9】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記光触媒槽は、
紫外線照射部と、
上記処理水に接触すると共に上記紫外線照射部からの紫外線が照射されるスパッタ薄膜を含む光触媒板とを有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項10】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記光触媒槽は、
発光ダイオードランプと、
上記処理水に接触すると共に上記発光ダイオードランプからの光線が照射されるスパッタ薄膜を含む光触媒板とを有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の排水処理装置において、
上記光触媒基板は、
上記スパッタ薄膜と基板を含み、この基板がガラスまたは石英板であることを特徴とする排水処理装置。
【請求項12】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記光触媒槽は、マイクロナノバブル発生機を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項13】
請求項2に記載の排水処理装置において、
上記曝気槽は、
生物処理されたミネラルを含む処理水または生物処理後に発生したミネラルを含む汚泥が、別の系統から導入されることを特徴とする排水処理装置。
【請求項14】
請求項9または10に記載の排水処理装置において、
上記光触媒槽は、
マイクロナノバブル発生機を有すると共に、透明な外壁を有することを特徴とする排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2006−239613(P2006−239613A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60613(P2005−60613)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】