説明

排水処理方法および排水処理装置

【課題】有機物(例えば有機フッ素化合物等)を効率よく分解できる排水処理方法および排水処理装置を提供する。
【解決手段】この排水処理装置では、有機フッ素化合物を含有する有機排水に対して、第1微生物槽9,第2微生物槽23,活性炭吸着塔38によって、3段階の微生物処理を行うと共に、第1微生物槽9,第2微生物槽23,活性炭吸着塔38のそれぞれに第1,第2,第3のマイクロナノバブル発生槽3,17,32からマイクロナノバブルを含有する排水を導入する。よって、第1微生物槽9,第2微生物槽23,活性炭吸着塔38のそれぞれにマイクロナノバブルを十分に補給して微生物を十分に活性化することで、有機フッ素化合物を微生物分解することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排水処理方法および排水処理装置に関し、例えば、半導体工場や液晶工場で発生する有機フッ素化合物等の有機物を含有する排水を処理する排水処理方法および排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水に含まれる有機物の一例である有機フッ素化合物は、化学的に安定な物質である。この有機フッ素化合物は、特に、耐熱性および耐薬品性の観点から優れた性質を有することから、界面活性剤や反射防止膜等の産業用材料として広く用いられている。
【0003】
しかしながら、この有機フッ素化合物は、化学的に安定な物質であるが故に微生物分解がし難いので、環境中に放出されると環境汚染の問題を招くこととなる。例えば、上記有機フッ素化合物としてのパーフルオロオクタスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は、生態系での分解が進まないことから生態系への影響が懸念されている。
【0004】
すなわち、上記パーフルオロオクタスルホン酸(PFOS)やパーフルオロオクタン酸(PFOA)は化学的に安定なので、熱分解させるためには、約1000℃以上の高温を必要とする。すなわち、このパーフルオロオクタスルホン酸やパーフルオロオクタン酸は、従来の微生物や光触媒等による処理では分解が極めて困難なのである。
【0005】
ところで、従来技術として、ナノバブルの利用方法および装置が、特許文献1(特開2004−121962号公報)に記載されている。この従来技術は、ナノバブルが有する浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、静電分極の実現という現象による界面活性作用と殺菌作用などの特性を活用したものである。この従来技術では、より具体的には、それらが相互に関連することによって、汚れ成分の吸着機能、物体表面の高速洗浄機能、殺菌機能によって各種物体を高機能、低環境負荷で洗浄することができ、汚濁水の浄化を行うことができるとされている。
【0006】
また、別の従来技術として、ナノ気泡の生成方法が、特許文献2(特開2003−334548号公報)に記載されている。この従来技術は、液体中において、(i)液体の一部を分解ガス化する工程、(ii)液体中で超音波を印加する工程、または、(iii)液体の一部を分解ガス化する工程および超音波を印加する工程から構成されている。
【0007】
さらに、別の従来技術として、オゾンマイクロバブルを利用する廃液の処理装置が、特許文献3(特開2004−321959号公報)に記載されている。この従来技術では、マイクロバブル発生装置にオゾン発生装置より生成されたオゾンガスと処理槽の下部から抜き出された廃液を加圧ポンプを介して供給している。また、この従来技術では、生成されたオゾンマイクロバブルをガス吹き出しパイプの開口部より処理槽内の廃液中に通気している。
【0008】
しかし、上述のマイクロバブルやナノバブルを利用する従来の排水処理装置では、化学的に安定な物質である有機フッ素系化合物等の有機物を含有する排水を低コストで効率よく分解することができなかった。
【特許文献1】特開2004‐121962号公報
【特許文献2】特開2003‐334548号公報
【特許文献3】特開2004‐321959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明の課題は、有機物(例えば有機フッ素化合物等)を効率よく分解できる排水処理方法および排水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の排水処理方法は、第1のマイクロナノバブル発生槽に排水を導入して、この排水にマイクロナノバブルを含有させる工程と、
上記第1のマイクロナノバブル発生槽から第1の微生物処理設備に上記マイクロナノバブルを含有する排水を導入して、この排水を微生物処理する工程と、
上記第1の微生物処理設備から第2のマイクロナノバブル発生槽にマイクロナノバブルを含有する排水を導入して、この排水にマイクロナノバブルを含有させる工程と、
上記第2のマイクロナノバブル発生槽から第2の微生物処理設備に上記マイクロナノバブルを含有する排水を導入して、この排水を微生物処理する工程と、
上記第2の微生物処理設備から第3のマイクロナノバブル発生槽に排水を導入して、この排水にマイクロナノバブルを含有させる工程と、
上記第3のマイクロナノバブル発生槽から第3の微生物処理設備に上記マイクロナノバブルを含有する排水を導入して、この排水を微生物処理する工程とを備えることを特徴としている。
【0011】
この発明の排水処理方法によれば、排水に対して、第1,第2,第3の微生物処理設備によって3段階の微生物処理を行うと共に、3段階の各微生物処理設備に第1,第2,第3のマイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを含有する排水を導入する。したがって、各微生物処理設備において、排水中のマイクロナノバブルが好気性微生物によって消費されても、その都度、各微生物処理設備に各マイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを補給できる。したがって、各微生物処理設備において、マイクロナノバブルを有効に利用でき、それぞれの微生物処理設備で繁殖している微生物を活性化できる。したがって、この発明の排水処理方法によれば、有機物(例えば有機フッ素化合物等)を効率よく微生物分解できる。
【0012】
また、一実施形態の排水処理方法では、上記排水は、有機フッ素化合物を含有する有機排水である。
【0013】
この実施形態の排水処理方法によれば、有機排水が含有する有機フッ素化合物を効率よく微生物分解できる。
【0014】
また、一実施形態の排水処理方法では、上記有機排水は、パーフルオロオクタスルホン酸、またはパーフルオロオクタン酸の少なくとも一方を含有する。
【0015】
この実施形態の排水処理方法によれば、有機排水が含有するパーフルオロオクタスルホン酸(PFOS)、またはパーフルオロオクタン酸(PFOA)を効率よく微生物分解できる。
【0016】
また、一実施形態の排水処理装置では、排水が導入されると共にこの排水にマイクロナノバブルを含有させる第1のマイクロナノバブル発生槽と、
上記第1のマイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを含有する排水が導入されると共に上記マイクロナノバブルを含有する排水を微生物処理する第1の微生物処理設備と、
上記第1の微生物処理設備からの排水が導入されると共にこの排水にマイクロナノバブルを含有させる第2のマイクロナノバブル発生槽と、
上記第2のマイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを含有する排水が導入されると共に上記マイクロナノバブルを含有する排水を微生物処理する第3の微生物処理設備と、
上記第3の微生物処理設備からの排水が導入されると共にこの排水にマイクロナノバブルを含有させる第3のマイクロナノバブル発生槽と、
上記第3のマイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを含有する排水が導入されると共に上記マイクロナノバブルを含有する排水を微生物処理する第3の微生物処理設備とを備える。
【0017】
この実施形態の排水処理装置によれば、排水に対して、第1,第2,第3の微生物処理設備によって3段階の微生物処理を行うと共に、3段階の各微生物処理設備に第1,第2,第3のマイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを含有する排水を導入する。したがって、各微生物処理設備において、排水中のマイクロナノバブルが好気性微生物によって消費されても、その都度、各微生物処理設備に各マイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを補給できる。したがって、各微生物処理設備において、マイクロナノバブルを有効に利用でき、それぞれの微生物処理設備で繁殖している微生物を活性化できる。したがって、この実施形態の排水処理装置によれば、有機物(例えば有機フッ素化合物等)を効率よく微生物分解できる。
【0018】
また、一実施形態の排水処理装置は、上記排水は、有機フッ素化合物を含有する有機排水である。
【0019】
この実施形態の排水処理装置によれば、有機排水が含有する有機フッ素化合物を効率よく微生物分解できる。
【0020】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記有機排水は、
パーフルオロオクタスルホン酸、またはパーフルオロオクタン酸の少なくとも一方を含有する。
【0021】
この実施形態の排水処理装置によれば、有機排水が含有するパーフルオロオクタスルホン酸、またはパーフルオロオクタン酸を効率よく微生物分解できる。
【0022】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記第1の微生物処理設備は、槽内の排水を撹拌し循環させるエアーリフトポンプを有する第1の微生物槽であり、
上記第2の微生物処理設備は、槽内の排水を撹拌し循環させるエアーリフトポンプを有する第2の微生物槽であり、
上記第3の微生物処理設備は、活性炭吸着塔である。
【0023】
この実施形態の排水処理装置によれば、第1、第2の微生物槽内の排水をエアーリフトポンプで撹拌し循環させるので、通常の曝気方式で撹拌を行う場合と比較して省エネルギーを図ることができる。また、最終段階の第3の微生物処理設備が活性炭吸着塔であるので、排水が含有する有機フッ素化合物等の有機物を確実に微生物分解処理することが可能となる。
【0024】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記第1の微生物槽は、
被処理水と微生物とを固液分離する液中膜を有する。
【0025】
この実施形態の排水処理装置によれば、液中膜によって、第1の微生物槽内の微生物濃度を高めることができ、微生物処理の安定化が可能となる。ここで、液中膜とは、液体の中に設置されている膜を言い、この膜としては例えば各種限外濾過膜を採用可能である。
【0026】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記第2の微生物槽は、上記エアーリフトポンプから槽内の被処理水が導入されると共にこの被処理水を下方に散水する散水槽部と、
上記散水槽部によって被処理水が散水されると共に活性炭を有する散水部と、
上記散水部の下方に配置されると共に上記散水部を通過した被処理水が導入され、かつ、上記被処理水に浸漬される活性炭を有する浸漬部とを備える。
【0027】
この実施形態の排水処理装置によれば、第2の微生物槽では、散水槽部から被処理水が散水部,浸漬部に順次導入され、散水部,浸漬部の活性炭に繁殖した活性化微生物によって、被処理水に含まれる有機フッ素化合物等の有機物を分解できる。すなわち、散水部および浸漬部が有する活性炭が、有機フッ素化合物等の有機物を合理的に吸着し、この吸着の後、活性炭に繁殖した活性化微生物が上記有機フッ素化合物等の有機物を分解できる。
【0028】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記第2の微生物処理設備の後段、かつ、上記第3のマイクロナノバブル発生槽の前段に設置された急速ろ過塔を有する。
【0029】
この実施形態の排水処理装置によれば、上記急速ろ過塔によって、被処理水に含まれる浮遊物質を物理的に濾過して除去でき、後段の活性炭吸着塔の活性炭に浮遊物質が付着することを防いで、活性炭吸着塔による活性炭吸着処理の性能が劣化することを防げる。よって、活性炭吸着塔は、排水中の有機フッ素化合物等の有機物を活性炭に吸着し、この活性炭に繁殖すると共にマイクロナノバブルで活性化された微生物によって、有機フッ素化合物等の有機物を効率よく微生物分解できる。
【0030】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記第1の微生物槽の上記液中膜から排出された被処理水の一部を上記第1のマイクロナノバブル発生槽に返送する返送部を有する。
【0031】
この実施形態の排水処理装置によれば、返送部は、第1の微生物槽から第1のマイクロナノバブル発生槽に被処理水を返送することで、被処理水にマイクロナノバブルを追加できると同時に、被処理水を第1の微生物槽で再度処理できる。したがって、第1の微生物槽内の被処理水が含有するマイクロナノバブルが微生物で消費されて第1の微生物槽での微生物による処理性能が劣化した場合に、上記返送部を稼動することで、第1の微生物槽での微生物処理性能を回復させることができ、有機排水の微生物処理能力を向上できる。ここで、液中膜とは、液体の中に設置されている膜を言い、この膜としては各種濾過膜を採用可能である。
【0032】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記第2の微生物槽の被処理水の一部を上記第1のマイクロナノバブル発生槽に返送する返送部を有する。
【0033】
この実施形態の排水処理装置によれば、返送部が第2の微生物槽の被処理水の一部を第1のマイクロナノバブル発生槽に返送することで、被処理水にマイクロナノバブルを追加できると同時に、被処理水を第1,第2の微生物槽で再度微生物処理できる。したがって、第1、第2の微生物槽において、被処理水のマイクロナノバブルが微生物で消費されて、第1、第2の微生物槽での微生物処理性能が劣化した場合に、上記返送部を稼動させることで、第1、第2の微生物槽での微生物処理性能を回復させることができる。
【0034】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記第1の微生物槽は、上記第1のマイクロナノバブル発生槽からの排水が順次導入される複数段の微生物処理部を備え、最終段の微生物処理部が上記液中膜を有し、さらに、上記最終段の微生物処理部から第1段目の微生物処理部に微生物汚泥を返送する返送部を備えた。
【0035】
この実施形態の排水処理装置によれば、第1の微生物槽が複数の微生物処理部を有し、最終段の微生物処理部では液中膜で微生物濃度を高めることができ、かつ、最終段の微生物処理部の高濃度の微生物汚泥を1段目の微生物処理部に返送する。これにより、マイクロナノバブルを含有した高濃度の微生物汚泥を複数段の微生物処理部に循環,撹拌させることができ、有機物の微生物処理能力を格段に向上できる。
【0036】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記活性炭吸着塔は、ひも状型塩化ビニリデン充填物を有する上部と、活性炭層を有する下部とを有する。
【0037】
この実施形態の排水処理装置によれば、活性炭吸着塔は、上部のひも状型塩化ビニリデン充填物に微生物を多量に繁殖させ、この繁殖の後に、ひも状型塩化ビニリデン充填物から微生物を剥離させて、次段となる下部の活性炭層の活性炭に微生物を多量に繁殖させて、有機フッ素化合物等の有機物を確実に処理できる。
【0038】
また、一実施形態の排水処理装置では、上記活性炭吸着塔は、リング型塩化ビニリデン充填物を有する上部と、活性炭層を有する下部とを有する。
【0039】
この実施形態の排水処理装置によれば、活性炭吸着塔は、上部のリング型塩化ビニリデン充填物に微生物を多量に繁殖させ、この繁殖の後に、リング型塩化ビニリデン充填物から微生物を剥離させて、次段となる下部の活性炭層の活性炭に微生物を多量に繁殖させて、有機フッ素化合物等の有機物を確実に処理できる。
【発明の効果】
【0040】
この発明の排水処理方法によれば、排水に対して、第1,第2,第3の微生物処理設備によって3段階の微生物処理を行うと共に、3段階の各微生物処理設備に第1,第2,第3のマイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを含有する排水を導入する。したがって、各微生物処理設備において、排水中のマイクロナノバブルが好気性微生物によって消費されても、その都度、各微生物処理設備に各マイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを補給できる。したがって、各微生物処理設備において、マイクロナノバブルを有効に利用でき、それぞれの微生物処理設備で繁殖している微生物を活性化できる。したがって、この発明によれば、有機物(例えば有機フッ素化合物等)を効率よく微生物分解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0042】
(第1の実施の形態)
図1に、この発明の排水処理装置の第1実施形態を模式的に示す。この第1実施形態は、原水槽1、第1のマイクロナノバブル発生槽3、第1微生物槽9、第2のマイクロナノバブル発生槽17、第2微生物処理槽23、急速ろ過塔31、第3のマイクロナノバブル発生槽32、活性炭吸着塔38、および処理水槽41を備える。第1、第2微生物槽9はそれぞれ第1、第2の微生物処理設備をなし、活性炭吸着塔38は第3の微生物処理設備をなす。
【0043】
原水槽1には、処理するべき排水として、有機フッ素化合物含有・有機排水が導入される。ここで、有機フッ素化合物含有・有機排水とは有機フッ素含有排水と一般的な有機排水が混合された排水を意味する。この原水槽1には、原水槽ポンプ2Aが設置されており、バルブ2Bで流量が調整された後、第1マイクロナノバブル発生槽3に導入される。
【0044】
第1マイクロナノバブル発生槽3は、槽内にマイクロナノバブル発生機4が設置されると共にマイクロナノバブル発生機4に関係する機器等が設置されている。このマイクロナノバブル発生機4は、吐出する微細な泡(マイクロナノバブル)により水流5(マイクロナノバブル流)を発生している。この水流5が、第1マイクロナノバブル発生槽3内の循環水流となって槽内を撹拌している。マイクロナノバブル発生機4はマイクロナノバブル流を発生させて、被処理水としての有機フッ素化合物含有・有機排水とマイクロナノバブルとを混合する。なお、マイクロナノバブル発生機4への循環水の必要量の供給は、循環ポンプ8で実施し、必要な空気は空気吸い込み管7とバルブ6により調整されてマイクロナノバブル発生機4へ供給される。これにより、マイクロナノバブル発生機4は最適なマイクロナノバブルを発生することとなる。
【0045】
第1マイクロナノバブル発生槽3を出たマイクロナノバブルを含有する被処理水は、次段の第1微生物槽9の下部に導入される。この第1微生物槽9は、第1微生物部53、第2微生物部54、第3微生物部55、第4微生物部56から構成されている。この第1微生物部53、第2微生物部54、第3微生物部55、第4微生物部56は仕切り壁10A,10B,10Cでそれぞれが分割されている。この第4微生物部56には、エアーリフトポンプ12と液中膜14とその付属品である液中膜ポンプ15が設置されている。なお、この液中膜14は、液体の中に設置されている膜を言い、この膜としては例えば各種限外濾過膜を採用可能である。また、ブロワー16から配管で接続している散気管13は、液中膜14を空気洗浄するための散気管である。
【0046】
また、エアーリフトポンプ12では、ブロワー16からの空気をパイプP1途中から吐出させて、第4微生物部56内にある多量の微生物汚泥を、少ないエネルギーで第1微生物部53の下部に移動させている。したがって、第1微生物部53、第2微生物部54、第3微生物部55、第4微生物部56内に汚泥流57(水流11)が発生して、第1微生物槽9の槽内撹拌が可能となる。このエアーリフトポンプ12では、パイプP1からエアーと排水とがバブリングされながらパイプP2内を流れて行く。この流れがパイプP3に達した際に、エアーはパイプP3の上部開口部P3-1から排出される一方、排水はパイプP3に沿って下方に流れて行くこととなる。
【0047】
また、第1マイクロナノバブル発生槽3で、被処理水にマイクロナノバブルが混合されているので、好気状態が、第4微生物部56まで持続する。このことにより、通常のブロワーと散気管との組み合わせによる曝気が不必要となり、大幅な省エネルギーが達成可能となる。
【0048】
この第1微生物槽9では、マイクロナノバブルで活性化された微生物によって、有機フッ素化合物含有・有機排水における被処理水中に含まれる有機物の大部分と、有機フッ素化合物の一部が分解処理される。
【0049】
次に、被処理水は、液中膜ポンプ15に接続した配管L1を通って、第1微生物槽9から第2マイクロナノバブル発生槽17に導入される。第2マイクロナノバブル発生槽17には、内部にマイクロナノバブル発生機18とそれに関係する機器等が設置されている。マイクロナノバブル発生機18から吐出する微細な泡(マイクロナノバブル)により水流19が発生している。この水流19が、第2マイクロナノバブル発生槽17内の循環水流となって、槽内を撹拌している。つまり、マイクロナノバブル発生機18はマイクロナノバブル流19を発生させて、被処理水を撹拌する。マイクロナノバブル発生機18への循環水の必要量の供給は循環ポンプ22で実施し、必要空気は空気吸い込み管21とバルブ20により調整されて、最適なマイクロナノバブルがマイクロナノバブル発生機18から発生する。
【0050】
次に、被処理水は、第2マイクロナノバブル発生槽17から第2微生物槽23に導入される。この第2微生物槽23は、水槽の上部をなす散水槽部としての散水槽29、中間部をなす散水部48、下部の浸漬部49から構成されている。この浸漬部49に設置されている網袋27に収容されている活性炭28は、常に被処理水に浸漬されている。一方、散水部48に設置されている網袋27に収容されている活性炭28は常に浸漬されておらず、散水槽29からの被処理水が散水されている状態において被処理水に接触している。
【0051】
散水部48と浸漬部49の両方において、網袋27に収容されている活性炭28は縦方向の仕切り板25と底部の水平方向の多孔板26とで囲われた領域に充填されている。
【0052】
第2微生物槽23の下部の被処理水は、エアーリフトポンプ24によって、上部の散水槽29に移送されて、次に自然流下で散水部48に散水され、さらに、浸漬部49に移動される。エアーリフトポンプ24はブロワー16からエアが供給されている。
【0053】
この散水部48,浸漬部49では、活性炭28に吸着された後に活性炭28に繁殖していると共にマイクロナノバブルにより活性化した微生物により、被処理水中の有機フッ素化合物等の有機物が分解処理される。すなわち、この第2微生物槽23では、活性炭28が多量に充填されているので、被処理水中の有機フッ素化合物が活性炭28に吸着された後、繁殖し活性化した微生物によって分解される。
【0054】
そして、この第2微生物槽23に残存している有機フッ素化合物を含む被処理水は、第2微生物槽23の最下部まで上下に延在している配管L5に接続した第2微生物ポンプ30によって、急速ろ過塔31、第3マイクロナノバブル発生槽32、活性炭吸着塔38に、順次、移送導入される。この急速ろ過塔31には、石炭系のアンスラサイトが充填されており、主として被処理水中の浮遊物質を物理的にろ過する。
【0055】
また、第3マイクロナノバブル発生槽32は密閉構造であり、急速ろ過塔31と活性炭吸着塔38の間の配管途中に設置されている。第3マイクロナノバブル発生槽32をコンパクトに設計して、配管途中に設置すれば、省スペースで設置可能となる。この第3マイクロナノバブル発生槽32は、内部にマイクロナノバブル発生機33とそれに関係する機器等が設置されている。マイクロナノバブル発生機33は、吐出する微細な泡(マイクロナノバブル)により水流34を発生している。この水流34が、第3マイクロナノバブル発生槽32内の循環水流となって槽内を撹拌している。すなわち、マイクロナノバブル発生機33はマイクロナノバブル流34を発生させて、被処理水を撹拌する。マイクロナノバブル発生機33への循環水の必要量の供給は循環ポンプ37で実施し、必要空気は空気吸い込み管36とバルブ35により調整されて、最適なマイクロナノバブルがマイクロナノバブル発生機33から発生する。
【0056】
次に、第3マイクロナノバブル発生槽32でマイクロナノバブルを含有した被処理水は、活性炭吸着塔38に移送され、活性炭吸着塔38内の活性炭に有機フッ素化合物の大部分が吸着される。そして、活性炭に繁殖し活性化した微生物によって吸着された有機フッ素化合物の大部分を分解することとなる。
【0057】
このように、この第1実施形態の排水処理装置によれば、排水に対して、第1,第2,第3の微生物処理設備をなす第1微生物槽9,第2微生物槽23,活性炭吸着塔38によって3段階の微生物処理を行うと共に、3段階の各微生物処理設備に第1,第2,第3のマイクロナノバブル発生槽3,17,32からマイクロナノバブルを含有する排水を導入する。よって、各微生物処理設備9,23,38において、排水中のマイクロナノバブルが好気性微生物によって消費されても、その都度、各微生物処理設備9,23,38に各マイクロナノバブル発生槽3,17,32からマイクロナノバブルを補給できる。したがって、各微生物処理設備9,23,38において、マイクロナノバブルを有効に利用でき、それぞれの微生物処理設備9,23,38で繁殖している微生物を活性化できる。したがって、この実施形態の排水処理装置によれば、有機フッ素化合物を含有する有機排水を効率よく微生物分解できる。
【0058】
次に、活性炭吸着塔38を出た処理水は、その処理が十分な場合は、バルブ39を閉としバルブ40を開として、処理水槽41に移送される。一方、活性炭吸着塔38を出た処理水は、その処理が不完全な場合は、バルブ39を開とし、バルブ40を閉として、第2微生物槽23の散水槽29に返送されて再度処理される。なお、バルブ39が半分開、バルブ40も半分開の状態として、第2微生物槽23と活性炭吸着塔38の間を循環させながら被処理水を処理してもよい。なお、バルブ39,40の開閉並びに開度は、活性炭吸着塔38の出口での処理水質のデータに応じて設定し、運転方法を決定すればよい。
【0059】
なお、 ここで、3種類のバブルについて説明する。
【0060】
(i) 通常のバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。
【0061】
(ii) マイクロバブルは、直径が10(μm)〜数10(μm)以下の微細気泡で、水中で縮小していき、ついには消滅(完全溶解)してしまう。
【0062】
(iii) ナノバブルは、マイクロバブルよりさらに小さいバブル(直径が1(μm)以下の100〜200nm)でいつまでも水の中に存在することが可能なバブルといわれている。マイクロナノバブルとは、マイクロバブルとナノバブルとが混合したバブルと説明できる。
【0063】
なお、上記実施形態では、原水槽1に導入される排水が有機化合物として有機フッ素化合物を含有したが、上記排水が有機フッ素化合物以外の揮発性有機化合物等の他の有機化合物もしくは有機物を含有していてもよい。また、上記実施形態では、第2微生物槽23に活性炭28を設置したが、活性炭以外の炭を設置してもよい。また、3段階の微生物処理設備9,23,38だけでなく、4段目以降の微生物処理設備を設置してもよいことは勿論である。
【0064】
(第2の実施の形態)
次に、図2に、この発明の排水処理装置の第2実施形態を示す。この第2実施形態は、図1の第1微生物槽9の第1,第2,第3微生物部53,54,55にそれぞれ充填材として、ひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物42を充填している点だけが前述の第1実施形態と異なる。よって、この第2実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0065】
図2に示すように、この第2実施形態では、第1微生物槽9Eの第1,第2,第3微生物部53E,54E,55Eにそれぞれ充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物42を充填している。このひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物42には、マイクロナノバブルによって活性化した微生物が多量に繁殖する。この充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物42に高濃度に繁殖した微生物は、有機フッ素化合物含有・有機排水中の比較的分解し易い有機物を最初に微生物分解することとなる。
【0066】
そして、有機フッ素化合物含有・有機排水中の有機フッ素化合物については、前述の第1実施形態と同様に、第2微生物槽23と活性炭吸着塔38において、活性化した微生物によって分解されることとなる。
【0067】
(第3の実施の形態)
次に、図3に、この発明の排水処理装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態は、図1の第3マイクロナノバブル発生槽32の中に充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物43を充填している点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第3実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0068】
図3に示すように、この第3実施形態では、第3マイクロナノバブル発生槽32Fの中に充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物43を充填している。したがって、この第3実施形態では、第3マイクロナノバブル発生槽32F内で発生したマイクロナノバブルによって活性化した微生物が、充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物43に多量に繁殖する。
【0069】
また、充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物43に高濃度に繁殖した微生物は、一部がひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物43から剥離して活性炭吸着塔38に移行して、活性炭吸着塔38内の活性炭にも多量に繁殖することになる。
【0070】
被処理水に含有される有機フッ素化合物は、活性炭に吸着させて、その後活性化した微生物によって分解できることを見出した。よって、第3マイクロナノバブル発生槽32F内のひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物43に微生物を多量に繁殖させた後、自然剥離させて、この多量の活性化微生物を活性炭吸着塔38内に移動させる。この活性炭吸着塔38では、活性炭が吸着した有機フッ素化合物を多量の活性化微生物によって確実に分解処理することになる。
【0071】
(第4の実施の形態)
次に、図4に、この発明の排水処理装置の第4実施形態を示す。この第4実施形態は、図1の第1微生物槽9の第4微生物部56の液中膜14に接続された液中膜ポンプ15に接続された配管L1が第2マイクロナノバブル発生槽17に向かう分岐管L2と第1マイクロナノバブル発生槽3に向かう分岐管L3とを有する点だけが、前述の第1実施形態と異なる。分岐管L3が返送部を構成している。よって、この第4実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0072】
図4に示すように、この第4実施形態は、液中膜ポンプ15に接続された配管L1が分岐管L2と分岐管L3とに分岐している。この分岐管L2,L3には、それぞれ、バルブ44,45を設置している。したがって、この第4実施形態では、液中膜ポンプ15の出口の被処理水を配管L1および分岐管L2,L3を経由して、第2マイクロナノバブル発生槽17と第1マイクロナノバブル発生槽3の両方に移送している。
【0073】
したがって、この第4実施形態によれば、返送部としての分岐管L3は、第1微生物槽9から第1のマイクロナノバブル発生槽3に被処理水を返送することで、被処理水にマイクロナノバブルを追加できると同時に、被処理水を第1微生物槽で再度処理できる。したがって、第1微生物槽9内の被処理水が含有するマイクロナノバブルが微生物で消費されて第1微生物槽9での微生物による処理性能が劣化した場合に、バルブ44だけでなく上記バルブ45を開けて返送部を稼動することで、第1微生物槽9での微生物処理性能を回復させることができ、有機排水の微生物処理能力を向上できる。なお、ここで、液中膜14とは液体の中に設置されている膜を言い、この膜としては例えば各種限外濾過膜を採用可能である。
【0074】
すなわち、この第4実施形態では、第1微生物槽9でマイクロナノバブル量が不足し、微生物による処理効率が悪い場合は、第1マイクロナノバブル発生槽3と第1微生物槽9との間で被処理水を何度も循環処理することが可能になるので、微生物処理の性能を向上できる。
【0075】
(第5の実施の形態)
次に、図5に、この発明の排水処理装置の第5実施形態を示す。この第5実施形態は、図1の第2微生物槽ポンプ30に急速ろ過塔31に接続する配管L7だけでなく、第1のマイクロナノバブル発生槽3に向かう分岐管L8が接続されている点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第5実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0076】
図5に示すように、この第5実施形態では、第2微生物槽23からの被処理水を第2微生物槽ポンプ30と配管L7を経由して、急速ろ過塔31に供給するだけでなく、返送部をなす配管L8を経由して、第1第1マイクロナノバブル発生槽3に返送できる。配管L7にはバルブ46が設置され、配管L8にはバルブ47が設置されている。
【0077】
この第5実施形態では、第2微生物槽23からの被処理水を第1マイクロナノバブル発生槽3に返送することによって、被処理水にマイクロナノバブルを追加できると同時に、被処理水を第1,第2の微生物槽9,23で再度処理できる。したがって、第1、第2の微生物槽9,23において、被処理水のマイクロナノバブルが微生物で消費されて、第1、第2の微生物槽9,23でのマイクロナノバブル量が不足し微生物処理性能が劣化した場合に、バルブ47を開くことで、第1,第2の微生物槽9,23での微生物処理性能を回復させることができる。また、被処理水が第1マイクロナノバブル発生槽3と第1,第2微生物槽9,23との間で何度も循環処理することになるので、微生物による処理性能を向上できる。
【0078】
この第5実施形態では、バルブ46とバルブ47の両方を開いて、配管L8を通して、被処理水の一部を第1,第2微生物槽9,23に循環させつつ、残りの被処理水を配管L7を通して急速ろ過塔31に移送することができる。ここで、バルブ46の開度およびバルブ47の開度は、第1,第2微生物槽9,23および活性炭吸着塔38での運転条件に応じて、設定すればよい。
【0079】
(第6の実施の形態)
次に、図6に、この発明の排水処理装置の第6実施形態を示す。この第6実施形態は、図1の第1微生物槽9の最終段の第4微生物部56の下部の微生物汚泥を第1段目の第1微生物部53に返送する返送部としての返送汚泥ポンプ58,返送配管L10を備える点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第6実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0080】
図6に示すように、この第6実施形態では、第1微生物槽9の第4微生物部56の下部の微生物汚泥を返送汚泥ポンプ58で返送配管L10を経由して第1微生物部53に返送している。よって、この第6実施形態では、前述のエアーリフトポンプ12による循環と合わせて、返送配管L10を経由する微生物汚泥の返送を行うことで、第1微生物槽9における高濃度の微生物汚泥の循環回数が増加する。
【0081】
第1微生物槽9でのエアーリフトポンプ12による循環では、空気による好気性が維持されるので、好気性微生物には好都合となるが嫌気性微生物には適合しない。一方、第1微生物槽9では、深槽の微生物槽とした場合、特に嫌気性微生物も多く発生するが、この嫌気性微生物は返送ポンプ58と返送配管L10によって、第1微生物部53へ返送するのが適している。この返送ポンプ58による返送により、嫌気性微生物による汚泥の消化と窒素の脱窒が期待できる。
【0082】
(第7の実施の形態)
次に、図7に、この発明の排水処理装置の第7実施形態を示す。この第7実施形態は、図1の活性炭吸着塔38に替えて、活性炭吸着塔38Gを備えた点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第7実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0083】
図7に示すように、この第7実施形態では、活性炭吸着塔38Gは、内部の上部に充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物51を充填し、内部の下部に活性炭層50を充填している。したがって、この活性炭吸着塔38Gでは、マイクロナノバブルによって活性化した微生物が充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物51に多量に繁殖する。また、充填材としてのひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物51に高濃度に繁殖した微生物は、一部がひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物51から剥離して活性炭層50に移行して、活性炭吸着塔38G内の活性炭層50にも多量に繁殖することになる。
【0084】
これにより、活性炭吸着塔38Gは、被処理水が含有する有機フッ素化合物等の有機物を活性炭に吸着させて、その後活性化した微生物によって、有機フッ素化合物等の有機物を分解できることを見出した。つまり、活性炭吸着塔38G内のひも状型ポリ塩化ビニリデン充填物51に微生物を多量繁殖させた後、自然剥離させて、上記多量の活性化微生物を活性炭層50に移動させて、活性炭が吸着した有機フッ素化合物を確実に分解処理することになる。
【0085】
(第8の実施の形態)
次に、図8に、この発明の排水処理装置の第8実施形態を示す。この第8実施形態は、図1の活性炭吸着塔38に替えて、活性炭吸着塔38Hを備えた点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第8実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0086】
図8に示すように、この第8実施形態では、活性炭吸着塔38Hは、内部の上部に充填材としてのリング型ポリ塩化ビニリデン充填物52を充填し、内部の下部に活性炭層50を充填している。したがって、この活性炭吸着塔38Hでは、マイクロナノバブルによって活性化した微生物が充填材としてのリング型ポリ塩化ビニリデン充填物52に多量に繁殖する。また、充填材としてのリング型ポリ塩化ビニリデン充填物52に高濃度に繁殖した微生物は、一部がリング型ポリ塩化ビニリデン充填物52から剥離して活性炭層50に移行して、活性炭吸着塔38H内の活性炭層50にも多量に繁殖することになる。
【0087】
これにより、活性炭吸着塔38Hは、被処理水が含有する有機フッ素化合物等の有機物を活性炭に吸着させて、その後活性化した微生物によって、有機フッ素化合物等の有機物を分解できることを見出した。つまり、活性炭吸着塔38H内のリング型ポリ塩化ビニリデン充填物52に微生物を多量繁殖させた後、自然剥離させて、上記多量の活性化微生物を活性炭層50に移動させて、活性炭が吸着した有機フッ素化合物を確実に分解処理することになる。
【0088】
(実験例)
図1に示す第1実施形態の排水処理装置に対応する実験装置を製作した。この実験装置では、原水槽1の容量を約5mとし、第1マイクロナノバブル発生槽3の容量を約1mとし、第1微生物槽9の容量を約20mとし、第2マイクロナノバブル発生槽17の容量を約1mとし、第2微生物槽23の容量を約10mとした。また、急速ろ過塔31の容量を1mとし、第3マイクロナノバブル発生槽32の容量を約1mとし、活性炭吸着塔38の容量を3mとした。この実験装置に、有機フッ素化合物含有・有機排水を導入して約2ケ月間、試運転を行った。
【0089】
この試運転後、原水槽1への入口での排水のPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)の濃度と活性炭吸着塔38の出口での処理水のPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)の濃度を測定し、PFOSの除去率を測定したところ、98%であった。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】この発明の排水処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【図2】この発明の排水処理装置の第2実施形態を模式的に示す図である。
【図3】この発明の排水処理装置の第3実施形態を模式的に示す図である。
【図4】この発明の排水処理装置の第4実施形態を模式的に示す図である。
【図5】この発明の排水処理装置の第5実施形態を模式的に示す図である。
【図6】この発明の排水処理装置の第6実施形態を模式的に示す図である。
【図7】この発明の排水処理装置の第7実施形態を模式的に示す図である。
【図8】この発明の排水処理装置の第8実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 原水槽
2 原水槽ポンプ
3 第1マイクロナノバブル発生槽
4 マイクロナノバブル発生機
5 水流
6 バルブ
7 空気吸い込み管
8 循環ポンプ
9、9E 第1微生物槽
10A〜10C 仕切り壁
11 水流
12 エアーリフトポンプ
13 散気管
14 液中膜
15 液中膜ポンプ
16 ブロワー
17 第2マイクロナノバブル発生槽
18 マイクロナノバブル発生機
19 水流
20 バルブ
21 空気吸い込み管
22 循環ポンプ
23 第2微生物槽
24 エアーリフトポンプ
25 仕切り板
26 多孔板
27 網袋
28 活性炭
29 散水槽
30 第2微生物槽ポンプ
31 急速ろ過塔
32、32F 第3マイクロナノバブル発生槽
33 マイクロナノバブル発生機
34 水流
35 バルブ
36 空気吸い込み管
37 循環ポンプ
38、38G、38H 活性炭吸着塔
39 バルブ
40 バルブ
41 処理水槽
42 ひも状型ポリ塩化ビニリデン充填材
43 ひも状型ポリ塩化ビニリデン充填材
44〜47 バルブ
48 散水部
49 浸漬部
50 活性炭層
51 ひも状型ポリ塩化ビニリデン充填材
52 リング型ポリ塩化ビニリデン充填物
53、53E 第1微生物部
54、54E 第2微生物部
55、55E 第3微生物部
56 第4微生物部
57 汚泥流
58 返送汚泥ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマイクロナノバブル発生槽に排水を導入して、この排水にマイクロナノバブルを含有させる工程と、
上記第1のマイクロナノバブル発生槽から第1の微生物処理設備に上記マイクロナノバブルを含有する排水を導入して、この排水を微生物処理する工程と、
上記第1の微生物処理設備から第2のマイクロナノバブル発生槽にマイクロナノバブルを含有する排水を導入して、この排水にマイクロナノバブルを含有させる工程と、
上記第2のマイクロナノバブル発生槽から第2の微生物処理設備に上記マイクロナノバブルを含有する排水を導入して、この排水を微生物処理する工程と、
上記第2の微生物処理設備から第3のマイクロナノバブル発生槽に排水を導入して、この排水にマイクロナノバブルを含有させる工程と、
上記第3のマイクロナノバブル発生槽から第3の微生物処理設備に上記マイクロナノバブルを含有する排水を導入して、この排水を微生物処理する工程とを備えることを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理方法において、
上記排水は、有機フッ素化合物を含有する有機排水であることを特徴とする排水処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の排水処理方法において、
上記有機排水は、
パーフルオロオクタスルホン酸、またはパーフルオロオクタン酸の少なくとも一方を含有することを特徴とする排水処理方法。
【請求項4】
排水が導入されると共にこの排水にマイクロナノバブルを含有させる第1のマイクロナノバブル発生槽と、
上記第1のマイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを含有する排水が導入されると共に上記マイクロナノバブルを含有する排水を微生物処理する第1の微生物処理設備と、
上記第1の微生物処理設備からの排水が導入されると共にこの排水にマイクロナノバブルを含有させる第2のマイクロナノバブル発生槽と、
上記第2のマイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを含有する排水が導入されると共に上記マイクロナノバブルを含有する排水を微生物処理する第3の微生物処理設備と、
上記第3の微生物処理設備からの排水が導入されると共にこの排水にマイクロナノバブルを含有させる第3のマイクロナノバブル発生槽と、
上記第3のマイクロナノバブル発生槽からマイクロナノバブルを含有する排水が導入されると共に上記マイクロナノバブルを含有する排水を微生物処理する第3の微生物処理設備とを備えることを特徴とする排水処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の排水処理装置において、
上記排水は、有機フッ素化合物を含有する有機排水であることを特徴とする排水処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の排水処理装置において、
上記有機排水は、
パーフルオロオクタスルホン酸、またはパーフルオロオクタン酸の少なくとも一方を含有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項7】
請求項4に記載の排水処理装置において、
上記第1の微生物処理設備は、槽内の排水を撹拌し循環させるエアーリフトポンプを有する第1の微生物槽であり、
上記第2の微生物処理設備は、槽内の排水を撹拌し循環させるエアーリフトポンプを有する第2の微生物槽であり、
上記第3の微生物処理設備は、活性炭吸着塔であることを特徴とする排水処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の排水処理装置において、
上記第1の微生物槽は、
被処理水と微生物とを固液分離する液中膜を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載の排水処理装置において、
上記第2の微生物槽は、
上記エアーリフトポンプから槽内の被処理水が導入されると共にこの被処理水を下方に散水する散水槽部と、
上記散水槽部によって被処理水が散水されると共に活性炭を有する散水部と、
上記散水部の下方に配置されると共に上記散水部を通過した被処理水が導入され、かつ、上記被処理水に浸漬される活性炭を有する浸漬部とを備えることを特徴とする排水処理装置。
【請求項10】
請求項7に記載の排水処理装置において、
上記第2の微生物処理設備の後段、かつ、上記第3のマイクロナノバブル発生槽の前段に設置された急速ろ過塔を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項11】
請求項8に記載の排水処理装置において、
上記第1の微生物槽の上記液中膜から排出された被処理水の一部を上記第1のマイクロナノバブル発生槽に返送する返送部を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項12】
請求項7に記載の排水処理装置において、
上記第2の微生物槽の被処理水の一部を上記第1のマイクロナノバブル発生槽に返送する返送部を有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項13】
請求項8に記載の排水処理装置において、
上記第1の微生物槽は、
上記第1のマイクロナノバブル発生槽からの排水が順次導入される複数段の微生物処理部を備え、
最終段の微生物処理部が上記液中膜を有し、
さらに、上記最終段の微生物処理部から第1段目の微生物処理部に微生物汚泥を返送する返送部を備えたことを特徴とする排水処理装置。
【請求項14】
請求項7に記載の排水処理装置において、
上記活性炭吸着塔は、
ひも状型塩化ビニリデン充填物を有する上部と、
活性炭層を有する下部とを有することを特徴とする排水処理装置。
【請求項15】
請求項7に記載の排水処理装置において、
上記活性炭吸着塔は、
リング型塩化ビニリデン充填物を有する上部と、
活性炭層を有する下部とを有することを特徴とする排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−253012(P2007−253012A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78346(P2006−78346)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】