説明

排水機能付き地盤打込み部材及びその施工方法、地中壁及び栓保護部材

【課題】排水機能付き地盤打込み部材及びその施工方法、地中壁及び栓保護部材を提供することにある。
【解決手段】地盤打込み部材本体6の長手方向に沿った排水路を形成する排水用部材5を地盤打込み部材本体6に備え、該排水用部材5には多数の孔を有し、軸方向に貫通孔を有し該貫通孔内にフィルターを有する栓12をそれぞれ前記孔に取り付けた排水機能付き地盤打込み部材本体6において、排水用部材5におけるフィルターを有する多数の栓12の前面側を覆うように、フィルター機能を確保するための栓保護部材3が配置されていると共に、栓保護部材3は地盤打込み部材本体6に係止されている。地盤打込み部材本体6と共に栓保護部材3を地盤に貫入させた後、栓保護部材3を引き抜き撤去するか、若干上昇させて位置保持する。板状又は形鋼等の鋼材により製作された栓保護部材3を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化の恐れのある地盤に構造物等を構築する場合等に利用される栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材及びその施工方法、地中壁及び栓保護部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状化対策が必要な地盤に貫入された矢板の場合、地震時に地盤の液状化により、地盤は矢板の支持機能を失うため、矢板近傍の地盤の液状化対策として、例えば、図51(a)(b)に示すような排水機能付き鋼矢板50を地盤に貫入させたり、あるいは軟弱地盤の圧密のために、排水機能付き鋼矢板を用いることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
この排水機能付き鋼矢板50は、土砂侵入防止用のフィルターを備えた栓12を、間隔をおいて貫通孔を設けた排水用部材5に嵌合固定すると共に、排水用部材5を鋼矢板51の片面または両面に固定した構造である。
また、図51(b)に示すように、フィルター16の損傷を防止するために、通水性のフィルター防護部材17を設ける構造の栓12を備えた排水用部材5を備えた排水機能付き鋼矢板50も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02−225712号公報
【特許文献2】特開平04−289315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の技術の場合は、下記(1)(2)のような課題があった。
【0005】
(1)前記従来の場合は、排水用部材5の貫通孔から、栓12の取り付け部が突出部13として突出させる形態となるために、排水機能付き鋼矢板50を地盤に打設中に、取り付け部の突出部13などが土(砂)との摩擦で損耗し、離脱することがあった。
液状化対策が必要な地盤は、砂層のみからなる地盤だけでなく、砂層と粘土層が交互に存在する地盤もある。このような地盤では、粘土等微細土粒子が、フィルター16やフィルター防護部材17の目詰まりを起こしたり、土粒子の形状(大きさ、角張り具合)によっては、フィルター16やフィルター防護部材17に損傷を与えることがあった。
このように、フィルター16やフィルター防護部材17部分の目詰まりや、フィルター16やフィルター防護部材17が損傷した状態になると、図51(b)に矢印Xで示す土水中の集水作用に関して集水不能になったり、排水用部材5と鋼矢板51間に形成されている排水路52に微細土粒子が侵入・堆積し、排水路の機能を発揮できなくなるという問題があった。
この微細土粒子の侵入・堆積現象は、ウォータージェット併用工法で排水機能付き地盤打込み部材を施工した場合にも発生し、排水路の機能を発揮できなくなるという問題があった。
【0006】
(2)地盤の土層構成が砂質系土だけでなく粘性系土との互層の場合、フィルター16を有する栓12が粘性系土を通過する際に、粘着力を有する粘性系土によりフィルターの通水部が塞がれることがある。
このような状態になると、地震時に土中水(間隙水)の水圧が上昇しても、上昇水圧がフィルター16の通水部を通して排水路に逃げることができなくなるため、地震時における液状化現象の原因となる土中水の過剰間隙水圧を軽減することができないという問題があった。
本発明は、前記の課題を有利に解消することができる排水機能付き地盤打込み部材及びその施工方法、地中壁及び栓保護部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造では、地盤打込み部材本体の長手方向に沿った排水路を形成する排水用部材を前記地盤打込み部材本体に備え、該排水用部材には多数の孔を有し、軸方向に貫通孔を有し該貫通孔内にフィルターを有する栓をそれぞれ前記孔に取り付けた排水機能付き地盤打込み部材において、前記排水用部材におけるフィルターを有する多数の栓の前面側を覆うように、フィルター機能を確保するための栓保護部材が配置されていると共に、前記栓保護部材は地盤打込み部材に係止されていることを特徴とする。
第2発明では、第1発明の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造において、栓保護部材は、排水用部材の下方部に突出するように設けられた下方部ストッパーおよび排水用部材の上方部に突出するように設けられた上方部ストッパーにより上下方向の移動が拘束されていることを特徴とする。
第3発明では、第2発明の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造において、前記上方部ストッパーは、地盤打込み部材に着脱可能に設けられていることを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかの排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造において、栓保護部材は、その周囲に配置されて地盤打込み部材に固定されたぶれ防止部材により、前後方向及び/又は左右方向のぶれを防止していることを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造において、栓保護部材が、鋼板又は形鋼などの鋼製部材であることを特徴とする。
第6発明では、第1発明〜第5発明のいずれかの排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造において、栓保護部材には、排水用部材側に設けられた多数の栓の配置間隔と同じ配置間隔で、貫通する孔が設けられていることを特徴とする。
第7発明では、第6発明の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造において、多数の貫通する孔が設けられた栓保護部材における孔と、排水用部材側に設けられた栓の位置とは、上下方向で位置がずらされて配置されていることを特徴とする。
第8発明では、第1発明〜第7発明のいずれかの排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造において、排水用部材又はこれに対向配置される栓保護部材の少なくともいずれか一方に、栓保護部材が排水用部材側の栓と干渉しないようにするために、連続して又は断続してスペーサーが設けられ、栓保護部材の板厚方向の前記スペーサーの張り出し高さは、少なくとも栓の係止部の高さ寸法とされていることを特徴とする。
第9発明の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材では、第1発明〜第8発明のいずれかの排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造を、溝形鋼矢板、ハット形鋼矢板、鋼管矢板、直線型鋼矢板等の鋼製矢板、又は鋼管杭等の鋼杭のいずれかの地盤打込み部材に備えていることを特徴とする。
第10発明の栓保護部材では、第9発明の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材に用いられる栓保護部材であって、前記栓保護部材が、鋼板又は形鋼などの鋼製部材であることを特徴とする。
第11発明では、第10発明の栓保護部材において、栓保護部材には、排水用部材に設けられた多数の栓に対応するように多数の孔が設けられていることを特徴とする。
第12発明の排水機能付き地盤打込み部材の施工方法においては、第9発明の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材の施工方法であって、排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材を、液状化対策や圧密排水対策が必要な地盤に貫入させた後、前記栓保護部材を引き抜くことを特徴とする。
第13発明の排水機能付き地盤打込み部材の施工方法においては、第7発明又は第8発明の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材の施工方法であって、排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材を、液状化対策や圧密排水対策が必要な地盤に貫入させた後、前記栓保護部材を若干引き上げて、栓保護部材側の貫通する多数の孔と、排水用部材側の多数の栓とを、それぞれ同レベルで対向させることを特徴とする。
第14発明では、第13発明の排水機能付き地盤打込み部材の施工方法において、前記栓保護部材は、若干引き上げられた後、地盤打込み部材と栓保護部材とを連結部材により連結することを特徴とする。
第15発明では、第12〜第14発明の排水機能付き地盤打込み部材の施工方法において、第9発明の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材を構成する部品の内、地盤打ち込み部材本体に取り付ける仮止めストッパー、排水用部材、先端保護部材、横ぶれ防止部材及び前方ぶれ防止部材、若しくは横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材を、前記地盤打ち込み部材本体に現場で取り付けることを特徴とする。
第16発明の排水機能付き地中壁の施工方法では、第12発明〜第15発明のいずれかの排水機能付き地盤打込み部材の施工方法により、複数の排水機能付き地盤打込み部材を横方向に連続して又は断続して貫入して排水機能付き地中壁を構築することを特徴とする。
第17発明の排水機能付き地中壁では、第16発明の排水機能付き地中壁の施工方法によって構築されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明の排水用部材の保護構造によると、地盤打込み部材本体の長手方向に沿った排水路を形成する排水用部材を前記地盤打込み部材本体に備え、該排水用部材には多数の孔を有し、軸方向に貫通孔を有し該貫通孔内にフィルターを有する栓をそれぞれ前記孔に取り付けた排水機能付き地盤打込み部材において、前記排水用部材におけるフィルターを有する多数の栓の前面側を覆うように、フィルター機能を確保するための栓保護部材が配置されていると共に、前記栓保護部材は地盤打込み部材に係止されているので、排水機能付き地盤打込み部材を液状化対策が必要な地盤に貫入させるときに、栓保護部材により栓と地中の土砂が直接強く接触することがないので、栓保護部材により栓を保護することができ、また、栓保護部材により栓の目詰まりを防止することができ、栓のフィルター機能を確保しながら地盤に地盤打込み部材を貫入させることが可能な排水機能付き地盤打込み部材とすることができる等の効果が得られる。また、栓保護部材を地盤打込み部材に係止するだけであるので、簡単な保護構造である等の効果がえられる。
また、排水機能付き地盤打込み部材を貫入させる時に地盤に、砂質層又は粘土層あるいはこれらが存在していても、栓保護部材により栓を確実に保護することができる。
第2発明によると、栓保護部材は、排水用部材の下方部に突出するように設けられた下方部ストッパーおよび排水用部材の上方部に突出するように設けられた上方部ストッパーにより上下方向の移動が拘束されているので、栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材を液状化対策が必要な地盤に貫入させた時に、地盤と栓保護部材との摩擦により、栓保護部材が取り残される恐れを排除し、確実に栓保護部材を地盤打込み部材と共に地盤に貫入させることができる等の効果が得られる。また、栓保護部材の上下方向の移動を拘束する構造が簡単である等の効果が得られる。
第3発明によると、前記上方部ストッパーは、地盤打込み部材に着脱可能に設けられているので、栓保護部材を地盤から引き抜いたり若干引き上げる場合に、上方部ストッパーを栓保護部材と干渉しないように撤去した状態で、栓保護部材を上昇させて、地盤から引き抜くことができる等の効果が得られる。
第4発明によると、栓保護部材は、その周囲に配置されて地盤打込み部材に固定されたぶれ防止部材により、前後方向及び/又は左右方向のぶれを防止しているので、栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材を液状化対策が必要な地盤に貫入させる場合に、栓保護部材が地盤に貫入させる時に、栓保護部材が地盤から地盤打込み部材から前方あるいは左右方向に大きくずれる恐れを排除することができ、確実に排水用部材に設けられた栓を保護しながら、地盤打込み部材を液状化対策が必要な地盤に貫入させることができる等の効果が得られる。
第5発明によると、栓保護部材が、鋼板又は形鋼などの鋼製部材であるので、安価な市販の鋼材を用いて、安価な栓保護部材とすることができる等の効果が得られる。
第6発明によると、栓保護部材には、排水用部材側に設けられた多数の栓の配置間隔と同じ配置間隔で、貫通する孔が設けられているので、排水用部材側の栓に対して栓保護部材側の孔間の部分を対応させて配置して栓を微細土粒子に直接接触しないようにすることができ、地盤貫入後は、栓保護部材を若干引き上げるように上昇させて、栓保護部材側の孔を排水用部材側の栓にそれぞれ対応させて、栓前方を栓保護部材の孔間壁から開放させることができる等の効果が得られる。
第7発明によると、多数の貫通する孔が設けられた栓保護部材における孔と、排水用部材側に設けられた栓の位置とは、上下方向で位置がずらされて配置されているので、単に、栓保護部材側の孔と排水用部材側の孔を上下方向で位置をずらすだけで、排水用部材側の栓に対して栓保護部材側の孔間の部分を対応させて配置して栓を微細土粒子に直接接触しないようにすることができ、地盤貫入後は、栓保護部材を若干引き上げるように上昇させて、栓保護部材側の孔を排水用部材側の栓に一致するように対応させることができる等の効果が得られる。
第8発明によると、排水用部材又はこれに対向配置される栓保護部材の少なくともいずれか一方に、栓保護部材が排水用部材側の栓と干渉しないようにするために、連続して又は断続してスペーサーが設けられ、栓保護部材の板厚方向の前記スペーサーの張り出し高さは、少なくとも栓の係止部の高さ寸法とされているので、スペーサーを排水用部材側に設けたり、或いは栓保護部材側に設けたり、或いは排水用部材と栓保護部材との両方にスペーサを設けて、栓保護部材が排水用部材側の栓と干渉して、栓が損傷するのを防止することができる等の効果が得られる。
第9発明によると、第1発明〜第8発明のいずれかの排水用部材の保護構造を、溝形鋼矢板、ハット形鋼矢板、鋼管矢板、直線型鋼矢板等の鋼製矢板、又は鋼管杭等の鋼杭のいずれかの地盤打込み部材に備えているので、市販の安価な地盤打込み部材を用いた排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材とすることができる等の効果が得られる。
第10発明によると、第9発明の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材に用いられる栓保護部材であって、前記栓保護部材が、鋼板又は形鋼などの鋼製部材であるので、市販の安価な鋼材を用いて栓保護部材を製作することができる等の効果が得られる。
第11発明によると、栓保護部材には、排水用部材に設けられた多数の栓に対応するように多数の孔が設けられているので、排水用部材側の栓に対して栓保護部材側の孔間の部分を対応させて配置して栓を微細土粒子に直接接触しないようにすることができ、地盤貫入後は、栓保護部材を若干引き上げるように上昇させて、栓保護部材側の孔を排水用部材側の栓にそれぞれ対応させて、栓前方を栓保護部材の孔間壁から開放させることができる等の効果が得られる。
第12発明によると、第9発明の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材の施工方法であって、排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材を、液状化対策や圧密排水対策が必要な地盤に貫入させた後、前記栓保護部材を引き抜くので、簡単な方法により、排水用部材における多数の栓を保護しながら液状化対策が必要地盤中に、排水機能を備えた地盤貫入部材を貫入させることができる等の効果が得られる。
第13発明によると、排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材を、液状化対策や圧密排水対策が必要な地盤に貫入させた後、前記栓保護部材を若干引き上げて、栓保護部材側の貫通する多数の孔と、排水用部材側の多数の栓とを、それぞれ同レベルで対向させるので、栓保護部材を若干引き上げるように上昇させて、栓保護部材側の孔を排水用部材側の栓のレベルに一致するように対応させる簡単な方法により、栓保護部材及び排水用部材を備えた地盤打込み部材を容易に地盤に貫入させて、排水用部材における栓が所定の透水機能を発揮できるように栓保護部材を所定の位置に配置することができる等の効果が得られる。
第14発明によると、前記栓保護部材は、若干引き上げられた後、地盤打込み部材と栓保護部材とを連結部材により連結するので、若干引き上げた後の栓保護部材を、地盤中の所定の位置に保持しておくことができ、また、栓保護部材が存在していても、排水用部材における栓が所定の透水機能を発揮できる等の効果が得られる。
第15発明によると、第9発明の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材を構成する地盤打ち込み部材本体以外の部品の内、地盤打ち込み部材本体に取り付ける仮止めストッパー、排水用部材、先端保護部材、横ぶれ防止部材及び前方ぶれ防止部材、若しくは横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材を、前記地盤打ち込み部材本体に現場で取り付けるので、排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材全体を組立て搬送する場合に比べて、工場等から地盤打込み部材を搬送するときに、嵩張らないような状態で搬送することも可能になり、搬送効率を向上させることができると共に現場での組み立てが容易に正確に組み立てることができる等の効果が得られる。
第16発明によると、第12発明〜第15発明のいずれかの排水機能付き地盤打込み部材の施工方法により、地中に複数の排水機能付き地盤打込み部材を横方向に連続して又は断続して貫入して排水機能付き地中壁を構築するので、排水用部材における栓を確実に保護された状態で施工された透水性能を確実に発揮することができる排水機能付き地盤打込み部材による排水機能付き地中壁を容易に施工することができる等の効果が得られる。
第17発明によると、第16発明の排水機能付き地中壁の施工方法によって構築されているので、排水用部材における栓を確実に保護された状態で施工された透水性能を確実に発揮することができる排水機能付き地盤打込み部材による排水機能付き地中壁とすることができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(矢板)を示す一部切り欠き正面図である。
【図2】図1のa−a線断面図である。
【図3】(a)は図1のb−b線断面図、(b)は一部を拡大して示す横断平面図である。
【図4】地盤打込み部材を軟弱地盤に貫入させた後、図1の状態から仮抜け止め部材を取り外した状態を示す正面図である。
【図5】図4の状態から栓保護部材を、引き抜き、フィルター付き栓の前面側を開放させた状態を示す正面図である。
【図6】図5の縦断側面図である。
【図7】図5の横断平面図である。
【図8】図5の全体を示し、排水機能付き地盤打込み部材(矢板)の正面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(矢板)を示す一部切り欠き正面図である。
【図10】図9のc−c線断面図である。
【図11】図9のd−d線断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(矢板)を示す一部切り欠き正面図である。
【図13】図12のe−e線断面図である。
【図14】図12のf−f線断面図である。
【図15】仮止めストッパー(上方部ストッパー)を取り外した状態を示す縦断側面図である。
【図16】排水用部材の脚部に開先加工を施して、排水用部材を地盤打込み部材に溶接した形態を示す形態を示す横断平面図である。
【図17】排水用部材又は栓保護部材のいずれか一方に複数のスペーサーを設けた形態を示す横断平面図である。
【図18】帯板状の栓保護部材を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図19】スペーサーを備えた帯板状の栓保護部材を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図20】スペーサーを備えた帯板状の栓保護部材の他の形態を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図21】本発明の第4実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(矢板)を示す一部切り欠き正面図である。
【図22】図21のg−g線断面図である。
【図23】図21のh−h線断面図である。
【図24】栓保護部材を引き抜いた状態を示す横断平面図である。
【図25】栓保護部材を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図26】(a)は本発明の第5実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(矢板)の上部を示す正面図、(b)は縦断側面図である。
【図27】本発明の第6実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(矢板)を示す一部切り欠き正面図である。
【図28】図27のi−i線断面図である。
【図29】図27のj−j線断面図である。
【図30】仮止めストッパーを取り外した状態を示す縦断側面図である。
【図31】排水用部材の栓に栓保護部材の孔が合致するように栓保護部材を引き上げた後、地盤打込み部材に、仮止めストッパーを位置保持部材として取り付けて、その位置保持部材を栓保護部材に溶接等により固定して、栓保護部材を所定の位置に保持した状態を示す一部切り欠き正面図である。
【図32】(a)は排水機能付き地盤打込み部材(矢板)の排水用部材付近を示す平面図と正面図、(b)は栓保護部材の平面図と正面図である。
【図33】(a)は排水機能付き地盤打込み部材(矢板)の他の形態の排水用部材付近を示す平面図と正面図、(b)は栓保護部材の他の形態の平面図と正面図である。
【図34】栓保護部材のさらに他の形態を示すものであって、(a)は正面図、(b)平面図である。
【図35】図34あるいは図35に示す排水用部材又は栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材(矢板)の全体を示す正面図である。
【図36】本発明の第7実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(鋼管矢板)の代表形態を示す横断平面図である。
【図37】本発明の第7実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(鋼管矢板)の代表形態を示す一部切り欠き正面図である。
【図38】図37のk−k線断面図である。
【図39】図36の状態から栓保護部材を取り外した状態を示す横断平面図である。
【図40】栓保護部材を取り外した状態の本発明の第7実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(鋼管矢板)を示す一部切り欠き正面図である。
【図41】図40のl−l線断面図である。
【図42】本発明の第8実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(鋼管杭)を示す横断平面図である。
【図43】本発明の第8実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(鋼管杭)を示す一部切り欠き正面図である。
【図44】図43のm−m線断面図である。
【図45】栓保護部材を取り外した状態の本発明の第8実施形態の排水機能付き地盤打込み部材(鋼管杭)を示す一部切り欠き正面図である。
【図46】図45のn−n線断面図である。
【図47】図36又は図42の一部を拡大して示す横断平面図である。
【図48】他の形態の栓保護部材を配置した排水機能付き地盤打込み部材(鋼管矢板又は鋼管杭)を示す横断平面図である。
【図49】排水機能付き地盤打込み部材(鋼管矢板)を用いて地中連続壁を構築した状態を示す横断平面図である。
【図50】排水機能付き地盤打込み部材(鋼管杭)を用いて地中杭列を構築した状態を示す横断平面図である。
【図51】(a)は従来の排水機能付き地盤打込み部材の一部を示す斜視図、(b)はフィルターを有する栓付近を拡大して示す縦断側面図である。
【図52】排水機能付き地盤打込み部材(鋼矢板)を用いて地中連続壁を構築した状態を示す横断平面図である。
【図53】地盤の上層部に砂礫などからなる集排水層を設けた形態を示す一部切り欠き正面図である。
【図54】図53の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1〜図3には、本発明の第1実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1が示されている。図1〜図3に示されている状態は、液状化対策が必要な地盤25あるいは軟弱地盤25(以下単に地盤25ともいう)に打込まれる直前または直後の状態である。図4には、図1〜図3に示されている排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き矢板1における上方部ストッパーとしての仮止めストッパー2が取り外されて、前記栓保護部材3に吊り上げ用ロープ4等が係止されて、前記栓保護部材3を引く抜く直前の状態が示され、図5〜図7には、栓保護部材3を引き抜いて、排水用部材5の外周側面が露出した状態が示されている。
【0012】
先ず、本発明の第1実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1の構造について説明すると、地盤打込み部材本体6としては、接続用フランジの両側に一体に屈曲連接したウェブの側端部に継手を備えた断面溝形の溝形鋼矢板、接続用フランジの両側に一体に屈曲連接したウェブに接続し、接続用フランジに平行に設けられたアーム部と前記アーム部の端部に継手を備えた断面ハット形のハット形鋼矢板、あるいは接続用ウェブの両側部に張り出し方向が対称に異なるフランジを一体に備えた断面Z形の鋼矢板、帯状鋼板からなる矢板本体の両側縁部に一体に継手を備えた直線型鋼矢板あるいはその他の断面形態の鋼製矢板、あるいは鋼管を用いた継手付きの鋼管矢板等の矢板類あるいは鋼管杭等の鋼杭類等、地盤に打込まれる鋼製部材を対象に用いることができる。
【0013】
図1〜図3に示されている構造では、溝形鋼矢板からなる地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7とその両側のウェブ8とにより形成された溝側で、前記接続用フランジ7の溝側前面に、フランジ巾方向の中間部に、矢板の長手方向に連続するように、断面溝形の鋼製排水用部材5における両側面板からなる脚部9が溶接により鋼矢板の接続用フランジ7に固定されている。
【0014】
前記の排水用部材5の前面側には、巾方向の中央部に、排水用部材5の長手方向に延長するように、丸鋼等の鋼棒からなるスペーサー10が溶接により固定されている。図3(b)に示すように、前記のスペーサー10の直径寸法Dは、排水用部材5の前面板11から突出する栓12の係止部としての取り付け突出部13の高さ寸法hと少なくとも同じか、これよりも大きくなるようにされている。このようにすることにより、栓保護部材3が直接、栓12における前記突出部13に強く接触しないようにされている。
前記のスペーサー10は、図示の形態のように排水用部材5側に固定してもよく、栓保護部材3側(背面側)に固定してもよく、排水用部材5あるいは栓保護部材3の巾方向に間隔をおいて複数設けてもよく、あるいは後記の実施形態のように、スペーサー10を省略してもよい。前記のように排水用部材5側にスペーサー10を設けた場合に、これに対向するように配置される栓保護部材3の代表的な一例が図18(a)(b)に示されている。図18に示す形態では、平坦な帯状鋼板が用いられ、上端部に吊り上げるための貫通孔からなる連結部14が設けられている。前記の連結部14に代えて、栓保護部材3の上端部に把持用の鋼板を溶接等により固定することで、把持用の鋼板をバイブロハンマに付属させた油圧クランプにより把持して、施工機により、栓保護部材3に振動を与えて引き上げるための連結部とすることもできる。
【0015】
前記の排水用部材5の前面板11には、その巾方向に間隔を置くと共に長手方向に間隔をおいて、多数の貫通孔15が設けられ、各貫通孔15には、土砂侵入防止用のフィルター16を備えた複数の栓12が取り付けられ、前記栓12における貫通する横孔内には、通水性のフィルター防護部材17を設けて、そのフィルター防護部材17にフィルター16を沿わせるように設置している。
【0016】
また、排水用部材5の両側の脚部9の矢板長手方向の先端側には、図2に示すように、脚部9を矢板長手方向に延長するように、直角三角形状等の三角形状の鋼板からなる先端側部閉塞板18がそれぞれ配置されて溶接等により前記脚部9と地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7に固定され、各先端側部閉塞板18の前面と、接続用フランジ7に当接するように正面長方形状の鋼板からなる先端保護部材19が配置されて溶接により固定されている。<従来技術説明
前記の先端保護部材19の上端部は、排水用部材5の下端部よりも上部に位置していると共に、排水用部材5の前面側よりも傾斜して上昇するように前方に位置して、下方部ストッパー24を兼ねた係止部20を形成している。前記の係止部20は、傾斜して上昇するように設けられているので、先端保護部材19の先端部の下方向へのずれ移動が、下方部ストッパー24としての係止部20の背面(排水部材5側の面)により拘束され、先端保護部材19の先端部の前後方向のずれ移動は、排水部材5の前面側と係止部20の背面(排水部材5側の面)とにより形成される側面V字状の溝21により、拘束されている。
排水用部材5の先端部の前面側と、前記の先端保護部材19の上端部の係止部20との間により側面V字状の溝21が形成され、長尺帯状鋼板からなる栓保護部材3の先端部が、先端保護部材19の前記係止部20内側に係合(すなわち下方部ストッパー24に係合)することにより、栓保護部材3の先端部の位置決めが可能にされて係止(保持)されていると共に、地盤打込み時において、栓保護部材3の先端部が保護され、また、先端側部閉塞板18間の前面側及び排水用部材5の先端前面側が閉塞されて保護されている。
前記の先端保護部材19の上端部の係止部20の内側面は、下方に向かって排水用部材5側に接近するように傾斜した内側傾斜面とされていることから、栓保護部材3を地上においてセットする時に、栓保護部材3の下端部が排水用部材5側にガイドされて、栓保護部材3の下端部を所定の位置に配置可能にされている。
前記の栓保護部材3の横巾寸法は、ほぼ排水用部材5の横幅寸法と同様な寸法とされている。
【0017】
排水用部材5の両側の脚部9に近接して間隔をおいて、地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7の上下方向に間隔をおいて複数の鋼製の横ぶれ防止部材22が、前記接続用フランジ7に溶接により固定され、また、前記の排水用部材5の前面板11から所定の間隔をおいて平行に、地盤打込み部材本体6における両ウェブ8に亘って、前方ぶれ防止部材23が配置されて、前方ぶれ防止部材23の両端部がウェブ8に溶接により固定されている。
前記の横ぶれ防止部材22及び前方ぶれ防止部材23は、少なくとも排水用部材5の上下両端付近の地盤打込み部材本体6に設置されると共に、地盤打込み部材本体6の長手方向に間隔をおいて複数設けられている。
前記の先端保護部材19を固定した後、栓保護部材3を排水用部材5上に載置し、横ぶれ防止部材22と、前方ぶれ防止部材23が取り付けられる。また、地盤打込み時に、栓保護部材3が地盤との摩擦により残される恐れがあるので、栓保護部材3の上端側の地盤打込み部材本体6に、栓保護部材3の上端面に近接して対向するように、仮止めストッパー2が配置され、前記仮止めストッパー2の基端部は地盤打込み部材本体6に溶接等により仮止め固定されて、栓保護部材3の上方への抜け出しが防止されるように係止(保持)して、栓保護部材3の上下方向の移動が拘束されている。
前記の仮止めストッパー2の固定にあったては、溶接長の短い溶接とされて、ハンマー等の打撃により、栓保護部材3と干渉しない位置まで、地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7側に曲げ変形したり、溶接部を破壊したりあるいは溶断等により容易に取り外し可能にされている。
前記の仮止めストッパー2は、後記の実施形態に示すように、地盤打込み部材本体6に着脱可能に取り付ける形態としてもよい。
前記の先端保護部材19あるいは地盤打込み部材本体6に付属する一部(部品)は、現場において取り付けるようにすると、地盤打込み部材本体6の現場への搬送が嵩張らず、効率よく搬送することができ、搬送コストの低減を図ることができ、また施工コストの低減を図ることができる。地盤打込み部材本体6を横長状態で桟材上に載置した状態で、排水用部材5あるいはぶれ防止部材等を含む付属部品が取り付けられる。なお、工場において栓保護部材3を含む栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1の完成状態まで組立てて、現場まで搬送してもよい。
【0018】
前記のように、栓保護部材3は、上下方向の位置が所定の位置に保持されていると共に、左右方向の横ぶれが左右の横ぶれ防止部材22により防止され、前方へのぶれが前方ぶれ防止部材23により、後方へのぶれが排水用部材5により防止されて、栓保護部材3は、前後方向あるいは左右方向に大きくぶれるのを防止している。
なお、前記の第1実施形態における、前方ぶれ防止部材23を平面コ字状の鋼材により構成して、地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7に溶接等により固定するようにして横ぶれ防止部材を兼ねるようにしてもよい。このように、排水用部材5と横ぶれ防止部材22あるいは前方ぶれ防止部材23を、地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7等の面板に固定する形態では、後記の実施形態を第1実施形態に適用することも可能になる。
【0019】
前記のようにして、地盤打込み部材本体6に各種部品を取り付けて構成された排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1を、図1に2点鎖線で示すように、振動工法等の施工機械により、地盤25に貫入させる。
この場合、排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1を、液状化対策が必要な地盤25あるいは軟弱地盤25等の地盤25に貫入させて行くときには、先端保護部材19により、全ての栓12は地山側(この形態では前面側)が覆われているから、下側から地山側の土砂が排水用部材の栓に強制的に接触することを栓保護部材3により防止され、土砂は栓保護部材3の前面側に沿って相対的に上方に移動することになる。
また、栓保護部材3は、地盤打込み部材本体6に対して所定の位置に保持されるから、排水用部材5の全ての栓12の前面側は保護されて、土砂により損傷を受けることはない。
次いで、図4に示すように、仮止めストッパー2にハンマー等により打撃を加えて、地盤打込み部材本体6から取り外して、栓保護部材3の上端の孔に吊り上げ用ロープ4等の吊り金具係止して、クレーン等により吊り上げて、図5に示すように撤去する。又は、図示を省略するが、栓保護部材3の上端部に鋼板等を溶接により固定し、その鋼板をバイブロハンマにおける油圧クランプにより把持した状態で引き抜くことでもよい。
前記の栓保護部材3を引き上げる場合に、排水用部材5の前面側にスペーサー10を設けているので、この形態では、栓保護部材3が、排水用部材5における栓12の突出部13と強く擦れて、栓12が損傷するのを防止することができ、軟弱地盤等に打設施工された排水機能付き地盤打込み部材本体6の栓等の排水設備についての損傷を受ける恐れがないため、排水機能を確実に発揮することができる。
図4〜図7には、栓保護部材3が引き抜き撤去された状態が示され、また、図8には、排水用部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材本体6の全長が示されている。
【0020】
前記実施形態の場合は、地盤打込み部材本体6の片面に1条の排水部材5を設けた形態を示したが、地盤打込み部材本体6の表裏両面に排水部材5を1条または複数条設けた形態としてもよく、このような場合では、排水部材5の数に応じて、栓保護部材3等を設けるようにすればよい。
なお、図5に2点鎖線で及び図52に示すように、継手37相互を噛み合わせて、地盤打込み部材本体6を地盤25に貫入すると排水機能付きの地中鋼矢板壁46が構築される。
【0021】
(第2実施形態)
図9〜図11には、本発明の第2実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1が示されている。この第2実施形態では、前方ぶれ防止部材23が広巾寸法の部材とされ、また、上下に間隔をおいた板状の横ぶれ防止部材22間に、さらにスタッドからなる棒状の横ぶれ防止部材22を設けた点が、前記第1実施形態と相違しているので、相違する部分を主に説明し、前記第1実施形態と同様な部分については、同様な符号を付している(以下の実施形態でも同様である。)
棒状の横ぶれ防止部材22は、板状の横ぶれ防止部材22と同様な突出高さに設けられ、鋼棒あるいはスタッドボルト等の棒状部材が、スタッド溶接等により設けられる。
なお、前記の板状の横ぶれ防止部材を棒状の横ぶれ防止部材に置き換えるようにしても、棒状の横ぶれ防止部材を板状の横ぶれ防止部材に置き換えてもよく、栓保護部材3の横ぶれを防止することができればよいので、設計により適宜、設定される。
【0022】
(第3実施形態)
図12から図15には、本発明の第3実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1が示されている。この第3実施形態では、前方ぶれ防止部材23を平面コ字状にして、地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7に固定している構造として横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材26とし、また、仮止めストッパー2を接続用フランジ7に着脱可能な構造としている点で、前記第1実施形態と相違しているので、相違している部分を主に説明する。
この形態の横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材26は、帯状鋼板の前面帯板27の両側部に側板28を溶接組立等により一体に設け、各側板28を排水用部材5の側面板からなる脚部9に近い位置に間隔をおいて配置して、各側板28の先端部を接続用フランジ7に溶接により固定している。側板28の高さ寸法は、排水用部材5の側面板29の巾寸法と前面板側のスペーサー10の高さ寸法Dに、栓保護部材3の板厚寸法に加えて、栓保護部材3と前面帯板27との間の僅かな間隙が生じるように設定される。
また、仮止めストッパー2は、頭付きボルト30と長ナット31を地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7に固定することで構成されている。図示の形態では、地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7に貫通孔32が設けられ、頭付きボルト30の軸部を挿通して長ナット31を前記頭付きボルト30にねじ込むことで、着脱可能な仮止めストッパー2とされている。
図16に示すように、横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材26における側板28の先端部に開先加工を施して、溶け込み溶接により固定してもよく、あるいは、図17に示すように隅肉溶接により固定するようにしてもよい。また、図17に示すように、排水用部材5の前面板11の巾方向の両側部にそれぞれスペーサー10を、上下方向に連続するように設けるようにしてもよい。
図17に示すように、排水用部材5における前面板11の前面の巾方向の両側部にそれぞれ丸鋼等からなる棒状鋼材のスペーサー10を設けた場合には、左右のスペーサー10と栓保護部材3により横方向からの土砂の浸入が抑制できるため、一層、栓12の目詰まり或いは損傷等を防止することができる。スペーサー10は、排水用部材5に対して、連続または断続した溶接により固定され、棒状鋼材の両側を千鳥状に断続して溶接により固定するようにしてもよい。
【0023】
図19には、栓保護部材3の背面側の巾方向中央部に、上下方向に連続して、丸鋼からなるスペーサー10を固定した形態である。このような栓保護部材3では、図9に示すような排水用部材5の前面板11に、スペーサー10を設けない形態の排水用部材5に適用することもでき、あるいは排水用部材5の前面板11の巾方向の両側にスペーサー10を備えた形態の場合にも適用することもできる。排水用部材5における前面板11の巾方向両側と、栓保護部材3の巾方向の中央部とに、それぞれスペーサー10を設けた場合には、スペーサー10同士が干渉することなく、栓保護部材3の剛性を高めることができる。また、栓保護部材3の巾方向両側と、排水用部材5における前面板11の巾方向の中央部とに、それぞれスペーサー10を設けた場合には、栓保護部材3の剛性を高めることができ、場合によっては、栓保護部材3の板厚を薄くすることもできる。
栓保護部材3は、横ぶれ防止部材22により、排水用部材5における前面板11の巾方向の位置が規制されるため、当然、栓保護部材3の背面側にスペーサー10を設けた場合には、そのスペーサー10の位置は、栓12に干渉しない位置に予め取り付けられる。したがって、例えば、図14を参照して説明すると、横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材26における側板28間と栓保護部材3の巾寸法との差の1/2分の寸法分、栓保護部材3は、左右方向に移動可能であるから、排水用部材5の前面板11に取り付けられている左右の栓12端部間の1/2の寸法の方を、前記差の1/2分の寸法分より少なくとも大きい寸法としておくことにより、栓保護部材3側のスペーサー10が、排水用部材5側の栓12の突出部13に干渉して、前記突出部13が、栓保護部材3側のスペーサー10により損傷を受けるのを抑制又は防止することができる。
栓保護部材3に対するスペーサー10を設ける位置として、板状の巾方向両端であってよく、帯板の巾方向中央または両端部を、冷間又は熱間加工により曲げ起し等により突出して、スペーサーを一体に形成するようにしてもよい。
【0024】
図20には、栓保護部材3の背面で、その巾方向の両側部に、丸鋼からなるスペーサー10を溶接により固定した形態が示されている。
この栓保護部材3のような形態と、図示のような排水用部材5を組み合わせる場合には、スペーサー10の巾方向の1/2分の寸法分の横移動を拘束するように、横ぶれ防止部材22及び前方ぶれ防止部材23を設けるようにすることでもよい。
排水用部材5のコーナー部は、断面円弧状角部でも角形の角部としてもよい。
【0025】
(第4実施形態)
図21から図25には、本発明の第4実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1が示されている。この第4実施形態では、栓保護部材3を平面コ字状にして、栓保護部材3を地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7に接触している構造とし、また、仮止めストッパー2を接続用フランジ7に着脱可能な構造としている点で、前記第1実施形態と相違しているので、相違している部分を主に説明する。なお、仮止めストッパー2については、前記した形態と同様であるので、ここでは、栓保護部材3の形態について主に説明する。
この形態では、図25(a)(b)に示すように、断面溝形の栓保護部材3とされ、前記栓保護部材3は、前面板33とその巾方向の両側部に、それぞれ前後方向の間隔保持用の側面板34を備えている。
このような形態の栓保護部材3では、冷間加工による溝形鋼又は熱間加工による圧延による溝形鋼等の形鋼あるいは溶接組立形の溝形鋼(図示の場合)を用いることもできる。各側板の内側が、排水用部材5における側面板9に近接して対向配置され、側面板34間の寸法は、排水用部材5における側面板29外側間の寸法とその溶接部を見込んだ寸法よりも僅かに大きくなるようにされている。
この形態では、排水用部材5は、確実に栓保護部材3により、横方向が閉塞された状態で、地盤に貫入されることになるため、排水用部材5側に土砂が進入するのを確実に抑制することができる。
また、両側部に側面板34を設けるだけで、栓保護部材3の曲げ剛性を格段に向上するから、栓保護部材3の自立性が向上し、栓保護部材3の取り扱い性が、帯板状の栓保護部材の場合に比べて向上させることができ、搬送撤去作業が、容易になる。
尤も、この形態の栓保護部材3では、排水用部材5の側面板29にも、貫通孔を設けて栓12を設ける形態に対応することができる。このように排水用部材5における側面板29に栓を設ける場合には、栓保護部材3における前面板33の巾寸法を広くした形態の栓保護部材3とすればよく、先端保護部材19とその係止部20に接続するように側面先端保護部材及び側面係止部を設けて、栓保護部材3の側面先端部を保護するようにしてもよい。
図24には、図22の状態から、適宜、仮止めストッパー2が取り外された後、栓保護部材を吊り上げて、鋼矢板本体から撤去された状態が示されている。
【0026】
(第5実施形態)
図26には、本発明の第5実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1が示されている。この第5実施形態では、仮止めストッパー2が板状鋼板でもよいことを示すための代表形態である。仮止めストッパー2は、台形形状の鋼板が用いられ、仮止めストッパー2は地盤打込み部材本体6の板部に垂直に配置されて、仮止めストッパー2の基端部片側が、地盤打込み部材本体6における接続用フランジ7に溶接長の短い溶接等により固定され、仮止めストッパー2の先端部は、栓保護部材3の上面に対向して栓保護部材3よりも前方に僅かに突出する長さ寸法の仮止めストッパー2とされている。
このような板状の仮止めストッパー2を用いると、ハンマー等により仮止めストッパー2を左右方向に打撃して、仮止めストッパー2を容易に曲げて栓保護部材3と干渉しない位置に湾曲させたり、溶接部を破壊したりすることにより、取り外すことができ、栓保護部材3を引き抜く作業も容易になる。また、板状の仮止めストッパー2であると安価な部材になる。
【0027】
(第6実施形態)
図27〜図29には、本発明の第6実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1が示されている。この第6実施形態では、栓保護部材3を引き抜いて撤去しないで、僅かに引き上げることで、栓保護部材3側の各貫通孔からなる通水孔41を、排水用部材5側に設けられている多数の栓12に対向配置可能にした代表形態である。
なお、排水用部材5の側面に多数の栓を設ける場合には、栓保護部材3の側板に多数の通水孔を同じ間隔で設ければよい。
この第6実施形態では、図32又は図33に示すように、排水用部材5側に設けられている多数の栓12(又は栓の横孔)の配置間隔と同じ間隔で、板状等の栓保護部材3にその巾方向及び上下方向に間隔をおいて通水孔41を設けると共に、上下に隣り合う通水孔41間の板部を、栓保護部35として機能させてもよいことを示すための代表形態である。
この形態では、栓保護部材3の各通水孔41は、これに対応する排水用部材5側の栓12よりも下位に位置を、ずれピッチPだけ、ずらして設けてあり、図27〜図29に示す初期時においては、通水孔41間の栓保護部35が排水用部材5側の栓12に対向している。上下に隣り合う通水孔41間の寸法は、通水孔41の直径よりも大きく、また、栓12の正面外径寸法よりも大きな寸法とされている。
なお、図示を省略するが、栓保護部材3と通水孔41中心と排水用部材5の栓12の中心間のずれ量を、栓保護部材3又は排水用部材5或いは地盤打込み部材本体6の上端部に、適宜ずれ表示線として表示し、栓保護部材3の上端部(又はずれ表示線)等が、排水用部材5或いは地盤打込み部材本体6側のずれ表示線と一致するようにして、栓保護部材3と通水孔41中心と排水用部材5の栓12の中心を上下方向で合致させることができる。
このような排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1を地盤に貫入させる時は、栓保護部35が排水用部材5側の栓12を保護しながら、地盤に貫入される。排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1を地盤に貫入させた後、図30に示すように、仮止めストッパー2を撤去し、図31に示すように、栓保護部材3全体を施工機械により、ずれピッチPだけ、若干引き上げることで、各通水孔41を排水用部材5側の栓12の横孔に対向させ、撤去した仮止めストッパーまたは適宜の連結部材を位置保持部材36として用いて、前記位置保持部材36を地盤打込み部材本体6と、栓保護部材3の両方に、溶接等により固定して連結し、栓保護部材3のレベルを地盤打込み部材本体6により一定に位置保持して、排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1の施工を完了する。
このような形態であると、栓保護部材3の孔明け作業が必要になるが、栓保護部材3の撤去搬送コストがなくなるため、また、栓保護部材3の完全引き抜き作業がなくなるため、施工が簡単で容易になる。
排水用部材5に設ける栓12の上下方向の間隔と、栓保護部材3に設ける通水孔41の間隔は、図32に示すように、一定である必要はなく、図33に示すように、上下方向で、配置間隔に差を設けるようにしてもよく、上部を密の間隔で、上部以外の下側を粗い間隔の形態でもよい。液状化対策が必要な地盤あるいは軟弱地盤では、図53及び図54に示すように、上層部に砂礫53などからなる集排水層54を設け、集中的に集排水するため、栓保護部材3の上部の通水孔41の配置間隔を、栓保護部35を介して密に設け、これに対応するように、排水用部材5の上部の栓12の配置間隔を設定するようにすればよい。
【0028】
図34には、板状鋼板を備えた栓保護部材3に、左右方向の両側部に丸鋼等からなる棒状のスペーサー10を溶接により固定して形態が示されている。このような栓保護部材3では、排水用部材5側にスペーサーを設けない場合あるいはスペーサーを設けても、巾方向の中央部側(巾方向の栓間の中央)にスペーサーを備えた形態の排水用部材5に適用可能な形態とされている。
この変形形態として、栓保護部材3の左右方向の中央部に丸鋼等からなる棒状のスペーサー10を溶接により固定した形態としてもよく、この場合には、排水用部材5側にスペーサーを設けなくてもよいため、排水用部材5側の構造が簡単になると共に、栓保護部材3側に設けることで、スペーサー10を栓保護部材3と共に回収したり、再利用することができる利点がある。
【0029】
(第7実施形態)
図36〜図38には、本発明の第7実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1が示されている。この第7実施形態は、前記実施形態の排水用部材5あるいは栓保護部材3を利用して、地盤打込み部材本体6として、両側部に継手37を備えた鋼管矢板38でもよいことを示すための代表形態である。継手37としては、他の公知の継手に置き換えるようにしてもよい。
この第7実施形態では、鋼管からなる地盤打込み部材本体6における横断面円弧状の周側面板39の前部及び後部に、図21〜図23に示す形態と同様な構造の部材が設けられている。排水用部材5と栓保護部材3と横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材26等の構造は、図21〜図23に示す形態と同様である。先端保護部材19は、鋼管の円弧状周側面板39に対応して、先端保護部材19は円弧状に湾曲させと共に円弧状に凹部を設けることで、鋼管40の外周面に溶接により固定される。
図39〜図41には、図36〜図38の状態から、着脱可能な形態の仮止め用ストッパー2を取り外すと共に栓保護部材3を引き抜いた状態が示されている。
【0030】
(第8実施形態)
図42〜図44及び図47には、本発明の第8実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1が示されている。この第8実施形態は、前記実施形態の排水用部材5あるいは栓保護部材3を利用して、地盤打込み部材本体6として、鋼管杭42でもよいことを示すための代表形態である。
この第8実施形態では、前記第7実施形態と同様に、鋼管からなる地盤打込み部材本体6における横断面円弧状の周側面板39の前部及び後部に、図21〜図23に示す形態と同様な構造の部材が設けられている。排水用部材5と栓保護部材3と横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材26等の構造は、図21〜図23に示す形態と同様である。先端保護部材19は、鋼管の円弧状周側面板39に対応して、先端保護部材19は円弧状に湾曲させと共に円弧状に凹部を設けることで、鋼管40の外周面に溶接により固定される。
図45〜図46には、図43〜図44の状態から、着脱可能な形態の仮止め用ストッパー2を取り外すと共に栓保護部材3を引き抜いた状態が示されている。
【0031】
図48には、栓保護部材3の前面板33の背面と、排水用部材5の栓12との間に間隙43が形成可能になるように、栓保護部材3の両側部の側面板34の巾寸法を広くして、地盤打込み部材本体6の横断面円弧状の周側壁に対応可能にした形態である。
また、同様に、横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材26における横ぶれ防止部としての側板28の長さ寸法を長くして、地盤打込み部材本体6の横断面円弧状の周側壁に対応可能にした形態である。
【0032】
図49には、前記第7実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1を多数、継手相互を噛み合わせて液状化対策が必要な地盤あるいは軟弱地盤に貫入させると共に、栓保護部材3を引き抜き撤去して、排水機能付きの地中連続壁44を構築した平面形態が示されている。このように、排水機能付きの地中連続壁44を構築すると、前方の地盤中の地下水を排水ドレンして、地盤改良することができる。
【0033】
図50には、前記第8実施形態の排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材1を多数、間隔おいて液状化対策が必要な地盤あるいは軟弱地盤に貫入させると共に、栓保護部材3を引き抜き撤去して、排水機能付きの杭列45を構築した平面形態が示されている。このように、排水機能付きの杭列45を、直線状あるいは千鳥状配置あるいはその他の公知の配置形態で構築すると、前方の地盤中の地下水を排水ドレンして、地盤改良することができる。
【0034】
前記実施形態では、断面溝形の排水用部材5の前面側に、多数の栓12を設ける形態を示したが、発明を実施する場合、排水用部材5の側面側にのみ、多数の栓12を設ける形態とする場合にも、断面溝形の栓保護部材3を用いることで対応することができ、また、栓保護部材3を若干引き上げる形態とする場合には、断面溝形の栓保護部材3とすると共に、栓保護部材3における側面板に、栓間隔に対応した貫通した横孔を設けるようにすればよい。
【0035】
前記実施形態では、断面溝形の排水用部材5を地盤打込み部材本体6に設ける形態を示したが、本発明を実施する場合、排水用部材5としては、断面溝形以外にも、断面矩形、円形等の形態であってもよく、この場合には、フィルターを備えた栓のフィルター機能を確保するための栓保護部材3を、前記の排水用部材5の断面矩形、円形等の形態に対応して、断面溝形、断面半円状等の形態とすればよい。
前記の排水用部材は、その断面が溝形断面あるいは半円状断面等の開断面である場合には、地盤打込み部材本体6に排水用部材5の両側部を連続した溶接により固定すると、排水用部材5両側部の液密な固定となるため、排水用部材5の両側部と地盤打込み部材本体6との隙間がなくなるから、排水用部材5の両側部からの水の侵入がなくなるために、土砂の侵入により排水用部材5内の空間が狭くなることはない。
排水用部材5は、平断面が矩形状あるいは円形状等の閉鎖断面の形態でもよく、例えば、矩形断面あるいは円形断面等の場合には、地盤打込み部材本体6に排水用部材5を長手方向に、間隔をおいて千鳥状等の断続した溶接あるいはボルト等により固定したり、また、上方ストッパーや横ぶれ防止部材・前方ぶれ防止部材の拘束効果に期待して無溶接にするようにしてもよい。
【0036】
前記実施形態では、栓保護部材3の上端部に、貫通した横孔からなる連結部14を設けた形態を示したが、本発明を実施する場合、栓保護部材3の上端部に、図示を省略するが、鋼板の上端部を栓保護部材3の上端部から突出するように重ね、現場溶接により鋼板の下端部を栓保護部材3に固定し、前記鋼板の上端部を、振動式矢板打込み機における油圧ジャッキを備えた液圧クランプにより把持した状態で、栓保護部材3を引き抜くようにしてもよい。
【0037】
なお、前記各実施形態において、栓12は合成樹脂製材料等ある程度柔軟性のある材料により製作され、フィルター防護部材は、ナイロン製フィルター等のフィルターを排水機能付地盤打込み部材本体6の運搬時等に損傷しないようするために設けられ、例えば、フィルター防護部材17は栓12と一体に製造するか、ねじ接合として栓に取り付けてもよい。栓の材料としては、例えば塩化ビニール樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂等合成樹脂あるいは硬質ゴム等のゴム製でもよい。
【0038】
また、前記のフィルター防護部材17には、小孔が設けられて通水性があり、円形、角形などの小孔とされる。また、フィルター16はフィルター防護部材17により保護され、粒径の比較的大きい砂(荒砂)との摩擦によって極力破損しないようにされ、フィルター防護部材17の小孔の径、メッシュは対象とする荒砂の大きさより小さく設定される。フィルター防護部材の材料としては、例えば、塩化ビニール樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂、硬質ゴムのゴム製でよい。
【0039】
フィルター16としては、ステンレス製フィルター或いは合成繊維樹脂製フィルターのものや合成樹脂製フィルターのものを用いてもよい。例えば、ナイロン製、ポリエチレンモノフィラメント製、ポリエステル製などの経編布や、ポリプロピレン製、ポリエステル繊維製などの不織布などを用いることができる。また、合成繊維どうし、合成樹脂どうし、あるいは合成繊維と合成樹脂を組合わせたり、重ね合せたりして、フィルターとしてもよい。
【0040】
フィルターとしての不織布、またはステンレス製フィルターなどのメッシュまたは間隙は、液状化の可能性のある地盤で、土の粒径が特別大きく、比較的均一に分布している地盤では1〜3mm程度に大きく設定することも可能であるが、こうした地盤は少なく、液状化の可能性のある一般的な地盤では1〜3mm程度より小さく設定するのがよい。また、フィルターは目詰まり防止のためには一般に薄い方が望ましい。
なお、ステンレス製フィルターを用いる場合には、異種金属接触腐食対策を施す必要がある。
【符号の説明】
【0041】
1 排水用部材及び栓保護部材を備えた排水機能付き地盤打込み部材
2 仮止めストッパー(上方部ストッパー)
3 栓保護部材
4 吊り上げ用ロープ
5 排水用部材
6 地盤打込み部材本体
7 接続用フランジ
8 ウェブ
9 脚部(排水用部材)
10 スペーサー
11 前面板(排水用部材)
12 栓
13 突出部
14 連結部
15 貫通孔(排水用部材)
16 フィルター
17 フィルター防護部材
18 先端側部閉塞板
19 先端保護部材
20 係止部
21 溝
22 横ぶれ防止部材
23 前方ぶれ防止部材
24 下方部ストッパー
25 地盤
26 横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材
27 前面帯板
28 側板
30 頭付きボルト
31 長ナット
32 貫通孔
33 前面板(栓保護部材)
34 側面板(栓保護部材)
35 栓保護部
36 位置保持部材
37 継手
38 鋼管矢板
39 周側面板
40 鋼管
41 通水孔
42 鋼管杭
43 間隙
44 排水機能付きの地中連続壁
45 排水機能付きの杭列
46 排水機能付きの地中鋼矢板壁
50 排水機能付き鋼矢板
51 鋼矢板
52 排水路
53 砂礫
54 集排水層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤打込み部材本体の長手方向に沿った排水路を形成する排水用部材を前記地盤打込み部材本体に備え、該排水用部材には多数の孔を有し、軸方向に貫通孔を有し該貫通孔内にフィルターを有する栓をそれぞれ前記孔に取り付けた排水機能付き地盤打込み部材において、前記排水用部材におけるフィルターを有する多数の栓の前面側を覆うように、フィルター機能を確保するための栓保護部材が配置されていると共に、前記栓保護部材は地盤打込み部材に係止されていることを特徴とする排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造。
【請求項2】
栓保護部材は、排水用部材の下方部に突出するように設けられた下方部ストッパーおよび排水用部材の上方部に突出するように設けられた上方部ストッパーにより上下方向の移動が拘束されていることを特徴とする請求項1に記載の排水用部材の保護構造。
【請求項3】
前記上方部ストッパーは、地盤打込み部材に着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造。
【請求項4】
栓保護部材は、その周囲に配置されて地盤打込み部材に固定されたぶれ防止部材により、前後方向及び/又は左右方向のぶれを防止していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造。
【請求項5】
栓保護部材が、鋼板又は形鋼などの鋼製部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造。
【請求項6】
栓保護部材には、排水用部材側に設けられた多数の栓の配置間隔と同じ配置間隔で、貫通する孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造。
【請求項7】
多数の貫通する孔が設けられた栓保護部材における孔と、排水用部材側に設けられた栓の位置とは、上下方向で位置がずらされて配置されていることを特徴とする請求項6に記載の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造。
【請求項8】
排水用部材又はこれに対向配置される栓保護部材の少なくともいずれか一方に、栓保護部材が排水用部材側の栓と干渉しないようにするために、連続して又は断続してスペーサーが設けられ、栓保護部材の板厚方向の前記スペーサーの張り出し高さは、少なくとも栓の係止部の高さ寸法とされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の排水機能付き地盤打込み部材における排水用部材の保護構造を、溝形鋼矢板、ハット形鋼矢板、鋼管矢板、直線型鋼矢板等の鋼製矢板、又は鋼管杭等の鋼杭のいずれかの地盤打込み部材に備えていることを特徴とする排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材。
【請求項10】
請求項9の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材に用いられる栓保護部材であって、前記栓保護部材が、鋼板又は形鋼などの鋼製部材であることを特徴とする栓保護部材。
【請求項11】
栓保護部材には、排水用部材に設けられた多数の栓に対応するように多数の孔が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の栓保護部材。
【請求項12】
請求項9に記載の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材の施工方法であって、排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材を、液状化対策や圧密排水対策が必要な地盤に貫入させた後、前記栓保護部材を引き抜くことを特徴とする排水機能付き地盤打込み部材の施工方法。
【請求項13】
請求項7又は8に記載の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材の施工方法であって、排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材を、液状化対策や圧密排水対策が必要な地盤に貫入させた後、前記栓保護部材を若干引き上げて、栓保護部材側の貫通する多数の孔と、排水用部材側の多数の栓とを、それぞれ同レベルで対向させることを特徴とする排水機能付き地盤打込み部材の施工方法。
【請求項14】
前記栓保護部材は、若干引き上げられた後、地盤打込み部材と栓保護部材とを連結部材により連結することを特徴とする請求項13に記載の排水機能付き地盤打込み部材の施工方法。
【請求項15】
請求項9の排水用部材の保護構造を備えた排水機能付き地盤打込み部材を構成する部品の内、地盤打ち込み部材本体に取り付ける仮止めストッパー、排水用部材、先端保護部材、横ぶれ防止部材及び前方ぶれ防止部材、若しくは横ぶれ及び前方ぶれ兼用防止部材を、前記地盤打ち込み部材本体に現場で取り付けることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の排水機能付き地盤打込み部材の施工方法。
【請求項16】
請求項12〜請求項15のいずれか1項に記載の排水機能付き地盤打込み部材の施工方法により、複数の排水機能付き地盤打込み部材を横方向に連続して又は断続して貫入して排水機能付き地中壁を構築することを特徴とする排水機能付き地中壁の施工方法。
【請求項17】
請求項16の排水機能付き地中壁の施工方法によって構築されていることを特徴とする排水機能付き地中壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【公開番号】特開2011−219987(P2011−219987A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90143(P2010−90143)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】