説明

掘進装置及び推進工法

【課題】 煩雑な作業を伴わず、ジャッキ等の機材を有効利用しつつ、急曲線施工を正確に行うこと。
【解決手段】 先頭に掘削手段15を設け複数の殻体12からなる掘削マシン10と、コンクリート管体41とクッション材42とを交互に接続して形成したフレキシブル推進管40と、の間に曲線造形装置20を接続する。曲線造形装置20は、長さL2が殻体12よりも短い筒体21を直列に複数配設して有し、隣接する筒体21、21間に複数の押圧ジャッキ22を、目開きを押開け自在に設けると共に、これら押圧ジャッキ22は筒体21の周面に沿って環状に配置する。曲線造形装置20とフレキシブル推進管40とは着脱自在に接続する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地中に管を推進させる推進工法において、長距離急曲線の施工を好適に行うことのできる掘進装置及びその推進工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】推進工法とは、発進立坑より出発し地盤を掘削する掘削マシンを先頭にして、ヒューム管等の複数の推進管を順次後ろから直列に継ぎ足し、その最後尾を前記立坑内の元押しジャッキで押し込むことにより、上記複数の推進管を地中に敷設する工法である。この推進工法では、複数の推進管を、その管軸に直角な端面どうしを真っ直ぐに当接させながら直列に継ぎ足し推進させる「直線押し」が基本である。しかし今日では、推進工法による曲線施工の要求が高まり、その技術への取り組みも進みつつある。
【0003】曲線施工では、曲線に沿って屈曲した状態の隣接する推進管の端面が、平面視で楔状に目開きする。このままでは推進管の端面に応力集中が発生して管破壊を起こしたり、推力伝達方向が定まらず予想外の不正確な曲率曲線などが発生しやすい。従来の曲線施工ではこのような問題を様々な工夫により解決努力してきた。以下、従来の曲線施工を簡単に説明する。
【0004】■目開き部キャンパー挿入工法曲線に沿って屈曲した状態の隣接する推進管の端面の目開き部(隙間)に小型ジャッキまたは小木片等のキャンパーを差し込み、このキャンバーを介して所定の目開きを保持し、かつ推力を伝達させる方法である。しかし、この方法は以前から試みられて来た方法ではあるが、施工の煩雑さ、不確実さ等の理由から、今日では陳腐化した工法となっている。また、カーブ全長に亘って油圧ジャッキ(ラムジャッキ)を装着する方式は、推力伝達や適切な目開き確保に合理的であるが、高価な装置によるコストアップ及び施工の煩雑さ等の欠点がある。
【0005】■クッション材挿入工法(センプラカーブシステム)
隣接する推進管の管端面間にクッション材を挿入しておき、カーブでは掘削マシンが掘進した軌跡上(掘進孔)を後続の推進管が追随する。カーブでは隣接する推進管相互間の屈曲角に応じてクッション材が変形し、推力伝達面積を確保している。掘削マシンの方向制御は側方地盤の反力を利用して行うので、多くの場合、掘削マシン側方の地盤に反力を得るため、薬液注入などを施して地盤の強度を補強している。このクッション材挿入工法は単純な構造で手間がかからないことから、今日の主流工法となっている。しかしながら、緩曲線施工には有効であり合理的ではあるものの、急曲線施工では推力伝達面積を確保できず、管が破壊したり目開きの大きさがばらついたりする。また、X、Y両軸のカーブ施工が困難である。
【0006】■ユニットカーブ工法特公平1−56240号等に開示されている工法である。この工法では隣接する推進管の間に複数の開口調整部材(方向修正ジャッキ)を管周方向に並べて配設している。曲線の築造は、複数の開口調整部材のストローク長さに差を付けて、隣接する推進管どうしの間を屈曲させることにより行う。この推進管の屈曲により掘削マシンの方向が制御される。この工法は上記■の工法に比べて急曲線施工にある程度対応でき、X、Y両軸のカーブも施工可能である。しかし、多数のジャッキを使用しなければならない等の問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は上記事情に鑑み、煩雑な作業を伴わず、ジャッキ等の機材を有効利用しつつ、急曲線施工を正確かつ経済的に行うことができる、掘進装置及び推進工法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明のうち請求項1は、推進方向直列に配設された1個以上の殻体(12)及び、推進方向先頭の前記殻体に設けられ前方の地盤を掘削自在な掘削手段(15)を有した掘削マシン(10)と、コンクリート管体(41)と可撓性環材(42)とを推進方向直列に交互に接続して形成し、前記掘削マシンの後方に配置されたフレキシブル推進管(40)と、を備えた掘進装置(1)において、前記掘削マシンの後方に方向安定装置(20)を接続し、前記方向安定装置は、推進方向における長さ(L2)が前記殻体に比べて短いか又は等しい筒体(21)を、推進方向直列に複数配設して有し、推進方向に隣接する前記筒体間に複数のジャッキ手段(22)を、これら各ジャッキ手段により前記筒体間を押開け自在に設けると共に、推進方向に隣接する前記筒体間の複数のジャッキ手段は該筒体の周面に沿って配置し、前記方向安定装置の後方に前記フレキシブル推進管を着脱自在に接続して構成したことを特徴とする。
【0009】また本発明のうち請求項2は、前記方向安定装置の推進方向における長さ(L3)は前記推進方向先頭の殻体よりも長いことを特徴とする。
【0010】また本発明のうち請求項3は、前記ジャッキ手段は油圧ジャッキであり、前記油圧ジャッキに作用する圧力を計測する圧力計測部(60)を設け、前記圧力計測部における計測結果に基づいて掘進状態に関する情報を出力する情報出力部(61、62)を設けたことを特徴とする。
【0011】また本発明のうち請求項4は、推進方向に隣接する前記筒体間に、これら筒体間の隙間を覆う形で筒状のカラー部材(21b)を設け、前記カラー部材を可撓性材料で形成したことを特徴とする。
【0012】また本発明のうち請求項5は、前記ジャッキ手段は油圧ジャッキであり、前記複数のジャッキ手段のうち2個以上のジャッキ手段相互間に、これらジャッキ手段相互間で作動油を移動自在に流通させる作動油流通手段(100)を接続したことを特徴とする。
【0013】また本発明のうち請求項6は、推進方向前方の地盤を掘削自在な掘削マシンの後方より推進管(40、50)を順次継ぎ足し押し込むことにより、前記掘削マシンによる地盤掘削と、該掘削マシンに後続する前記推進管の地盤への敷設とを行う推進工法において、前記掘削マシンと前記推進管との間に、推進方向に複数の関節を有する屈曲自在な筒状の方向安定装置を接続しておき、前記掘削マシンにより曲線掘削を行う際には、前記方向安定装置を前記掘削すべき曲線の曲率に合わせて屈曲させることにより、該方向安定装置をガイドとして前記掘削マシンの姿勢を前記曲率に合わせるようにすることを特徴とする推進工法である。
【0014】また本発明のうち請求項7は、請求項6の推進工法において、コンクリート管体と可撓性環材とを推進方向直列に交互に接続して形成したフレキシブル推進管を、前記方向安定装置の後方に接続しておき、前記掘削マシンにより曲線掘削を行う際には、既に曲線掘削された掘削孔(r)に前記フレキシブル推進管を屈曲導入させ、該フレキシブル推進管の姿勢を前記掘削孔に合わせて保持させることで、前記掘削すべき曲線の曲率に合わせて姿勢を保持した前記掘削マシン及び前記方向安定装置及び前記フレキシブル推進管の3者により前記掘削マシンによる掘削方向の安定を図るようにすることを特徴とする。
【0015】また本発明のうち請求項8は、推進方向前方の地盤を掘削手段(15)により掘削しつつ、その後方より推進管(50)を順次継ぎ足し押し込むことにより、前記推進管の地盤への推進及び敷設を行う推進工法において、前記掘削手段と前記推進管との間に、複数の関節を推進方向に配した筒状の方向安定装置(20)を設置しておき、前記掘削手段により曲線掘削を行う際には、掘削すべき曲線の外周側位置において前記関節を推力伝達可能に接続すると共に、掘削すべき曲線の内周側位置において前記関節を収縮可能に設定することにより、掘削すべき曲線の外周側位置において伝達される推力と、前記掘削手段が地盤より受ける反力とで偶力を発生させ、該偶力により前記掘削手段の掘削推進方向を曲線外側の地盤反力に頼らず前記掘削すべき曲線の曲率に合わせて変更させることを特徴とする推進工法である。
【0016】また本発明のうち請求項9は、請求項8の推進工法において、前記関節には、推進方向にラム(22a)を駆動自在なジャッキ手段(22)を、前記掘削すべき曲線の外周側位置及び内周側位置にそれぞれ配設しておき、前記掘削手段により曲線掘削を行う際には、掘削すべき曲線の外周側位置において前記ジャッキ手段のラムを突出させて前記関節を推力伝達可能に接続すると共に、掘削すべき曲線の内周側位置において前記ジャッキ手段のラムを後退させて前記関節を収縮可能に設定することを特徴とする。
【0017】また本発明のうち請求項10は、請求項9の推進工法において、前記掘削手段により曲線掘削を行う際には、掘削すべき曲線の外周側位置において前記ジャッキ手段のラムの先端を前記関節における隣接部位に当接させると共に、掘削すべき曲線の内周側位置において前記ジャッキ手段のラムの先端と前記関節における隣接部位との間にクリアランスを形成することを特徴とする。
【0018】なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【0019】
【発明の効果】上記構成により本発明のうち請求項1及び6では、掘削マシンにより曲線掘削を行う際に、ジャッキ手段を介して方向安定装置を掘削すべき計画曲線の曲率に合わせて屈曲させることにより、該方向安定装置をガイドとして前記掘削マシンの姿勢を前記曲率に合わせるようにする。複数の筒体で構成された多関節の方向安定装置が屈曲することで、該方向安定装置は計画曲線に沿って形成された掘削孔における地山壁面に密着でき、該曲線に好適に追従する。これは筒体の長さが殻体よりも短いことにより特に効果的となる。このように、方向安定装置が計画曲線に沿って安定して推進されるので、該方向安定装置を介して推力が伝達される掘削マシンの姿勢、従って掘削方向は安定し、計画曲線から不用意に外れるようなことは防止される。即ち、本発明によると長距離急曲線の施工を正確に行うことができる。
【0020】更に上記請求項1及び7では、方向安定装置に後続させるフレキシブル推進管は、計画曲線に沿って正確に掘削された掘削孔に適宜屈曲しながら導入されるので、キャンバー等の設置をする必要がなく煩雑な作業を伴わない。更にフレキシブル推進管は計画曲線において、コンクリート管体どうしの屈曲角に応じて可撓性環材が変形する。可撓性環材は計画曲線内周側が主に圧縮され、続いて厚さの薄い部分の圧縮が収束し、そこを始点として計画曲線外周側が伸びる。このように推力伝達位置の移動が完了した状態になると、フレキシブル推進管は不用意に姿勢を崩すことなく、推力の伝達位置はバランスし、計画曲線の外周側等に膨れるといった挙動もない。つまり、このようなフレキシブル推進管の性質により、曲線施工においては、掘削マシンと方向安定装置とフレキシブル推進管とが3者一体となり計画曲線に合わせて姿勢を保持し、正確な推力伝達により安定した掘削方向を維持することができる。
【0021】また本発明のうち請求項1では、着脱自在の方向安定装置を、推進工事の完了後に推進管から取り外して回収し、これを別の施工現場で再利用することができるので、ジャッキ等を含めた機材が無駄にならず有効利用でき、低コストの施工が実現する。
【0022】また本発明のうち請求項2では、方向安定装置の長さが掘削の先頭にある殻体よりも長いので、該殻体に対する方向制御反力を得るための壁面接触面積を方向安定装置において得ることができ、曲線施工において正確な掘削方向を実現することができる。
【0023】また本発明のうち請求項3では以下の効果を奏する。即ち、もし掘削マシンが計画曲線より外れた場合には、計画曲線とは異なる曲率の掘削孔が形成され、後続の方向安定装置が該掘削孔に導入される。方向安定装置の屈曲状態は計画曲線の曲率に合わせられているので、該掘削孔導入時に方向安定装置の各ジャッキ手段には地山から受ける力による圧力が作用する。従って、該圧力を計測し、この計測結果に基づいて掘進状態に関する情報、即ち計画曲線から外れて掘進しているという情報を出力することにより、計画曲線からのズレをいち早く発見し、掘進方向の修正などの対応をとることができるので好都合である。
【0024】また本発明のうち請求項4では、カラー部材が可撓性材料で形成されているので、筒体間が屈曲しても筒体接続部の変形に追従し跳ね上がらない。そして地山と接触しない。これにより推進時の抵抗になりにくく、曲線施工時にもスムーズに推進できる。勿論、該カラー部材により土砂の進入が防止され、止水効果も得られる。
【0025】また本発明のうち請求項5では、油圧ユニットで発生した作動油(圧力油)を1切替弁から2個以上のジャッキ手段に並列供給を行う。従って、隣接する筒体間の目開きを設定するに当たり、作動油流通手段で接続されたジャッキ手段に発生する反力の確実な同調性を図ることができる。
【0026】また本発明のうち請求項8では、掘削すべき曲線の外周側位置において伝達される推力と、掘削手段が地盤より受ける反力とで偶力を発生させ、該偶力により掘削手段の掘削推進方向を曲線外側の地盤反力に頼らず掘削すべき曲線の曲率に合わせて容易に(自然に)変更させることができるので、急曲線施工を容易かつ正確に行うことができる。
【0027】また本発明のうち請求項9及び10では、ジャッキ手段によるラムの突出後退を利用して掘削推進方向のコントロールを容易に行うことができる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1は本発明による掘進装置の一例を示した斜視図である。推進工法において使用される掘進装置1は、図1に示すように、先頭(図1紙面左側)より、掘削マシン10、曲線造形装置20、管周混合装置30、フレキシブル推進管40がこの順で推進方向(図1の矢印X方向)に直列に接続されて構成されている。また掘進装置1の後端、従ってフレキシブル推進管40の後端には、複数のヒューム管50が直列に接続されている。
【0029】本実施形態での掘削マシン10は、従来より使用されている中折れ分割胴型の掘削マシンと同様のもの(例えば、セミシールドマシンφ1500など)となっている。即ち掘削マシン10は、図1に示すように複数(本実施形態では4つであるが幾つでもよい)のユニット11(11A、11B、11C、11D)を推進方向直列に接続して構成されており、各ユニット11は略同じ長さL1(推進方向の長さ)からなる円筒状の殻体12を有している。但し、各ユニット11の長さが互いに異なるものを採用しても差し支えない。
【0030】先頭のユニット11Aは殻体12の前部(図1の紙面左側)に、前方の地盤を掘削自在なカッタ等を有した掘削手段15を有している。ユニット11A、11B、11Cの殻体12内には複数の中折れジャッキ13が該殻体12の周面に沿って環状に複数設けられており、これら中折れジャッキ13のラム側は後側に隣接するユニット11の殻体12を推進方向に押圧自在に配置されている。即ち、これら中折れジャッキ13のストロークを適宜調節することにより、複数のユニット11相互の屈曲状態を調節することができる。
【0031】図2は曲線造形装置20の平面図(一部断面図)である。所望の曲線を容易に造形するための曲線造形装置であると共に、曲線造形後に該曲線に沿った掘削方向を安定させるための方向安定装置でもある曲線造形装置20は、図1及び図2に示すように、上述した掘削マシン10の最後尾のユニット11Dに接続されており、推進方向に直列に配設された複数のユニット25(25A、25B、25C、25D)を有している。各ユニット25は、鋼製の円筒体である筒体21を有しており、筒体21の先端側(図2の紙面左側)は挿入部21a、後端側(図2の紙面右側)はカラー部21bとなっている。即ち、各筒体21の挿入部21aは前方に隣接する筒体21のカラー部21b内に挿入されており、各筒体21のカラー部21b内には後方に隣接する筒体21の挿入部21aが挿入されている。
【0032】前記筒体21は鋼製であるため、該筒体21の推進方向の長さをできるだけ短くして曲線造形装置20を形成することが可能となっている(短くしてもコンクリート製に比べて破損に強い)。後述するように、筒体21の長さをできるだけ短くすることで、急曲線にも対応できる曲線造形装置20が提供されることになる。但し、強度等の問題をクリアできれば筒体21を、鋼製以外に、プラスチックやコンクリート等で形成してもよい。
【0033】図2等に示す本実施形態では円筒状のカラー部21bが筒体21と一体型のようになっている。しかしこのカラー部21bを筒体21とは別体とし、該カラー部21bをゴム等の可撓性材料で形成することも可能である。
【0034】図3は筒体内での押圧ジャッキの配置状態を示す図である。各ユニット25は、図2及び図3に示すように油圧ジャッキからなる複数の押圧ジャッキ22を、その筒体21の周面に沿って環状に配設した形で有しており、各押圧ジャッキ22はシリンダ側が該筒体21に固定されている。また、各押圧ジャッキ22のラム22aは、該押圧ジャッキ22が固定されている筒体21の先端側に向けて配置され、軸方向に突出後退駆動自在になっている。各筒体21内には、推進方向に対して直角な壁面が後方に向けて形成された受圧壁23が該筒体21の内周に沿って設けられており、該筒体21の後方に隣接する筒体21に設けられた押圧ジャッキ22のラム22aがこの受圧壁23の壁面に当接自在になっている。
【0035】なお本実施形態では図3に示すように、各筒体21の押圧ジャッキ22は8個であり(8個以上でもよい。勿論、施工する曲線がきつくない場合には押圧ジャッキ22が8個未満、例えば4個であってもよい。)、これら押圧ジャッキ22は該筒体21の中心軸CTを中心に対称配置されている。また、本実施形態では押圧ジャッキ22はラムa側を前方に向けて配置しているが、押圧ジャッキ22は前後に隣接する筒体21間を押開け自在に設置されればよいので、ラム22a側を後方に向けて配置してもかまわない。
【0036】更に押圧ジャッキ22には、図2に示すように、その油圧を計測する圧力計測部60が設けられており、該圧力計測部60には、その計測結果について所定の演算を行う演算部61が接続されている。また該演算部61には、その演算結果を表示出力するモニタ等の表示手段62が接続されている。なお、圧力計測部60は油圧計測以外の方法で押圧ジャッキ22に作用する圧力を計測するようになっていてもよい。
【0037】なお図2の例で示す曲線造形装置20には、上述した構成をもつユニット25が6個あり、これらは機能的に2種類のユニット25A、25Bに区別されている。即ち、図2の紙面左から、2番目、3番目、5番目、6番目のユニット25がユニット25A、図2の紙面左から、4番目、7番目のユニット25がユニット25Bとなっている。ユニット25A、25Bの筒体21の推進方向の長さL2は上記掘削マシン10の殻体12の長さL1よりも十分に小さく(L2はL1の約半分)なっている(但し、筒体21の長さL2を殻体12の長さL1と等しくすることも可能である。)。
【0038】なお図2の紙面左から1番目(先頭)のユニット25は特殊なユニット25Cとなっており、このユニット25Cは掘削マシン10との接続用であるため、押圧ジャッキ22が設けられておらず、先端側が掘削マシン10のユニット11D内に挿入している。また、図2の紙面左から8番目(最後尾)のユニット25も特殊なユニット25Dとなっており、このユニット25Dは後述する管周混合装置30との接続用であるため、カラー部21bには管周混合装置30の管体31の先端側が挿入されている。
【0039】上述したユニット25Aは、ユニット25D以外のどのユニット25の後方にでも接続可能となっており、該ユニット25Aの後方にはユニット25A又はユニット25Bが接続可能となっている。またユニット25Bは、ユニット25Aの後方にだけ接続可能となっており、該ユニット25Bの後方にはユニット25A又はユニット25Dが接続可能となっている。これにより図2の例では、図2の紙面左から、2、3、4番目のユニット25A、25A、25Bにより1つのセット27が、また図2の紙面左から、5、6、7番目のユニット25A、25A、25Bにより別の1つのセット27が構成されている。つまり、ユニット25C、25Dの間に1つ以上で任意の個数のセット27を状況に合わせて接続することにより、曲線造形装置の推進方向長さL3(図1参照)を容易に調整できるようになっている。なお本実施形態での曲線造形装置20の長さL3は上記掘削マシン10の各殻体12の長さL1よりも十分に長くなっている(長さL3は施工すべき曲線の曲率に応じて決定するが、本実施形態では2〜4mを想定する)。但し、土質条件等により曲線造形装置20の長さL3を殻体12の長さL1以下にすることも可能である。
【0040】一方、管周混合装置30は、図1に示すように従来より使用されている管周混合装置と同様のものとなっている。即ち、管周混合装置30は上記曲線造形装置20の最後尾のユニット25Dと接続された円筒状の管体31を有しており、該管体31には、該管体31の管壁内外を連通する多数の注入孔32が全周に亘って形成されている。管体31の内側には、地上に設置された図示しない滑材注入プラントより供給されて来た滑材を前記注入孔32を介して管体31の外部に地山に対して注入自在な注入管等の図示しない滑材供給手段が設けられている。従ってこの管周混合装置30は、多数の注入孔32よりベントナイト液等の滑材を管体31と地山との間に注入することができ、これにより該管周混合装置30に後続するフレキシブル推進管40或いはヒューム管50と地山との間の摩擦力を低減させることができる。
【0041】なお、管周混合装置30には、実開平7−12594号(実願平5−47151号)等に開示されているように、管体の外周に滑材注入テールボイドを切削することのできるビットを備えた回動切削体が所定の回動角度をもって正逆回動自在に設けられた「摩擦低減装置」を利用することも有効である。これにより地山との摩擦抵抗がより一層低減される。
【0042】図4はフレキシブル推進管を示した図であり、(a)はその側方斜視図、(b)は管壁部についての平断面図、(c)はクッション材だけを示した斜視図である。フレキシブル推進管40は、図1及び図4に示すように公知のSR推進管(曲線推進管)と同様のものとなっている。例えばこのSR推進管は、Vol.13,No.8, 1999の「月刊推進技術」における「現場リポート、いろいろな分野で活躍する下水道推進技術、大中口径用急曲線推進管の開発」等で詳細に説明されている。即ち、本実施形態のフレキシブル推進管40は、図1及び図4(a)に示すように、環状のコンクリート管体41と環状のクッション材42とが推進方向に交互に配置される形で多数接続されて構成されている。コンクリート管体41の推進方向の長さL4は上記掘削マシン10の各殻体12の長さL1よりも十分小さくなっている。
【0043】クッション材42は硬質ポリ塩化ビニル樹脂等により形成された可撓性を有する部材となっている。また、図4(b)、(c)に示すように、クッション材42の厚さWは上下に比べて左右が厚くなっている(図1及び図4(a)は簡略表示であるため実際とは異なる)。つまり、左右において大きく変形できるようになっている。また、クッション材42を介して隣接するコンクリート管体41、41の間には、該クッション材42が露出しないように鋼製で円筒状のカラー43(鋼製のカラーの代わりに可撓性部材のものを採用することも可能)が設置されている(図1及び図4(a)は簡略表示であるためカラー43は省略)。但し、カラー43と各コンクリート管体41との間には、各コンクリート管体41の外周に沿って設けられた可撓ゴム45が介在している。つまり、カラー43と可撓ゴム45により、隣接するコンクリート管体41、41が適度な曲げ剛性を発揮できるようになっている。
【0044】なお本実施形態でのフレキシブル推進管40は、図示しない発進立坑より順次継ぎ足して推進させることのできる所定の長さのユニット46に複数分割されているものとし、例えば図1に示すものは2つのユニット46、46からなる例である。フレキシブル推進管40が何個のユニット46から構成されるかは施工する曲線部分の長さ等により異なる。施工完了状態で、少なくとも曲線部分にはフレキシブル推進管40を配置できるようにユニット46の個数を選択する。
【0045】上記掘進装置1のフレキシブル推進管40の後端には、図1に示すように、従来より推進管として使用されている複数のヒューム管50が、推進方向に推進力を伝達し得る形で直列に配置されている。各ヒューム管50の推進方向の長さL5は上記掘削マシン10の各殻体12の長さL1と略同じで、方向安定装置2の各筒体21の長さL2やフレキシブル推進管40のコンクリート管体41の長さL4に比べて十分に長くなっている。
【0046】掘進装置1及びこれに後続するヒューム管50等は以上のように構成されているので、長距離急曲線を含む管敷設工事を上記掘進装置1を用いて推進工法により行うと以下のようになる。図6乃至図9は急曲線施工の手順を示した模式図である。
【0047】まず、図示しない発進立坑から掘削マシン10を、図示しない元押しジャッキにより地盤に向けて水平に押し込む。この際、掘削マシン10の先端側では掘削手段15を介して前方の地盤を掘削するので、該掘削マシン10は地盤中に推進される。続けて、該掘削マシン10の後端に曲線造形装置20を接続すると共に、これを図示しない元押しジャッキにより地盤に向けて押圧し推進させる。続けて、管周混合装置30を接続し、更に続けてフレキシブル推進管40の各ユニット46を順次継ぎ足しながら地盤に推進させていく。所定の個数のユニット46を継ぎ足してフレキシブル推進管40全体を推進させると共に、これに続けてヒューム管50を順次継ぎ足しながら地盤に推進させる。
【0048】この状態ではまだ直線状の推進だけであるので、掘削マシン10、曲線造形装置20、フレキシブル推進管40は、いずれも全体に亘って直線状となっている(図1の状態と同じ)。続けて、図示しない発進立坑よりヒューム管50を順次継ぎ足しながら地盤に推進させることにより、図6に示すように掘進装置1を、掘削マシン10の先端が変化点Pに到達するまで推進させる。この変化点Pは長距離急曲線である計画曲線Rの始点である。なお、管周混合装置30の多数の注入孔32からは滑材が地山側に注入されているので、これに後続するフレキシブル推進管40及びヒューム管50は地山との摩擦が低減されてスムーズに推進される。
【0049】図6の状態より更に、図示しない発進立坑からヒューム管50を継ぎ足し押し込んで掘進装置1を前方に推進させる。この推進時に掘削マシン10においては、計画曲線Rに入ろうとするユニット11の複数の中折れジャッキ13のストロークを、例えば外周側のストロークを内周側のストロークより大きくするようにして調節し、該ユニット11を後続のユニット11に対して屈曲させるようにする。これにより掘削マシン10の各ユニット11は順次屈曲して推進し、その結果、図7に示すように掘削マシン10全体が計画曲線Rに沿って推進する。
【0050】図7の状態では曲線造形装置20の先端が変化点Pに到達しており、この図7の状態より更に、図示しない発進立坑からヒューム管50を継ぎ足し押し込んで掘進装置1を前方に推進させる。この推進時に曲線造形装置20においては、計画曲線Rに入ろうとする各ユニット25の後側に隣接するユニット25において、複数の押圧ジャッキ22のストロークを調整する。なお、掘削マシン10に関しては計画曲線R上に完全に移行しているので、各中折れジャッキ13のストロークは変化させず、隣接するユニット11、11間の屈曲状態をこのまま保持する。
【0051】図5は方向安定装置における隣接する筒体間の状態を説明した平断面図である。曲線造形装置20については、例えば図5に示すように、計画曲線Rに入ろうとするユニット25の後側のユニット25において、各押圧ジャッキ22を駆動してラム22aを突出させる。突出させたラム22aは前記計画曲線Rに入ろうとするユニット25の受圧壁23に当接しこれを押圧する。ここで、計画曲線Rの内周側の押圧ジャッキ22のストロークより計画曲線Rの外周側の押圧ジャッキ22のストロークを大きくする(例えば内周側の押圧ジャッキ22はラム22aを完全に引戻した状態にする。)。図5では外周側の押圧ジャッキ22の様子が示されている。
【0052】このストロークの差により、前記計画曲線Rに入ろうとするユニット25は、該計画曲線Rの内周側よりも外周側が前方に進められる形で後側のユニット25に対して屈曲させられ、計画曲線Rに沿った姿勢に移行する。このように曲線造形装置20の各ユニット25は順次屈曲して推進し、その結果、掘削マシン10及び曲線造形装置20全体が計画曲線Rに沿って推進する(図8参照)。以降、曲線造形装置20に関しては計画曲線R上に完全に移行しているので、各押圧ジャッキ22のストロークは変化させず、隣接するユニット25、25間の屈曲状態をこのまま保持する。掘削マシン10についても上述した通りである。
【0053】更に、図示しない発進立坑からヒューム管50を継ぎ足し押し込むことにより、図8に示すように掘進装置1を前方に推進させる。掘削マシン10及び曲線造形装置20全体が前方への推進力を受けて計画曲線Rに沿った状態で推進する。この曲線造形装置20に後続する管周混合装置30は推進方向の長さがそれ程長くないので、既に計画曲線Rに沿っている掘削マシン10及び曲線造形装置20に続きスムーズに計画曲線Rに移行していく。また、該管周混合装置30に後続するフレキシブル推進管40も同様に該管周混合装置30に続きスムーズに計画曲線Rに移行していく。
【0054】即ち、フレキシブル推進管40は計画曲線Rにおいて、コンクリート管体41、41どうしの屈曲角に応じてクッション材42が変形する。クッション材42は計画曲線Rの内周側(図4(c)の左右いずれかの部分)が主に圧縮され、続いて厚さWの薄い部分(図4R>4(c)の上下の部分)の圧縮が収束すると、そこを始点として計画曲線Rの外周側(図4(c)の左右いずれかの部分)が伸びる。このように推力伝達位置の移動が完了した状態(即ちコンクリート管体41が完全に計画曲線R上に移行した状態)になると、推力の伝達位置はバランスし、計画曲線Rの外周側等に膨れるといった挙動はない。主に圧縮されるのは厚さWが厚くなっている図4(c)の左右の部分であるため、応力集中が生じず、推力の好適な伝達が保証される。
【0055】また、上述したようにフレキシブル推進管40は計画曲線Rに沿って掘削された掘削孔r(図8参照)に適宜屈曲しながら導入されるので、ヒューム管等を曲線部で推進させる際に行っていたようなキャンバー等の設置作業が不要となり煩雑な作業から解放される。また水平方向(左右方向)へのカーブだけでなく上下方向のカーブにも対応可能である。なお、正確な曲線を構築することは管路構築の基本であり、可能な限り正確に行う必要はあるが、地質条件等により不本意にズレることもある。このような場合に、掘削マシン10や曲線造形装置20等による掘削孔の曲線が不正確であっても、フレキシブル推進管40は不正確曲線孔に沿って滑動することになり、フレキシブル推進管40自体に無理な応力は発生させない。これにより管の破損などが防止される。
【0056】なお、「従来技術」で説明した■クッション材挿入工法(センプラカーブシステム)の場合ではクッション材が上下部分のみ貼られており、しかもその厚みが一様であることから、曲線に入った当初では本実施形態のフレキシブル推進管40と同じように力点の移動と共にクッション材が圧縮され目開きが開口しはじめる。しかし、圧縮が収束した後にも、外側の地山からの側圧により更に開口する。従って、目開きの開口長は側圧による影響を受け、バラツキが生じたり、掘進途中で変化したりするといった不都合が生じていた。これに対して本実施形態で採用したフレキシブル推進管40は既に説明したように上記不都合が解消されており、掘削マシン10等に対して好適に推力を伝達でき、掘削マシン10の方向制御に有利となる。
【0057】図8の状態より、図示しない発進立坑からヒューム管50を更に継ぎ足し押し込むことにより、掘進装置1を図示しない到着立坑まで推進させる。これにより掘削マシン10及び曲線造形装置20及び管周混合装置30は前記到着立坑において回収され、次の施工に再利用される。これは、管周混合装置30の後端部とフレキシブル推進管40の先端部とが着脱自在となっている(つまり曲線造形装置20側とフレキシブル推進管40側とが着脱自在である)ので実現されている。特に曲線造形装置20が回収・再利用可能なことにより、ジャッキ等を含めた機材が無駄にならず有効利用でき、低コストの施工が実現する。
【0058】以上のようにフレキシブル推進管40は、図9に示すように、前記図示しない到着立坑から計画曲線Rの変化点Pまでに亘って敷設され、該変化点Pから図示しない発進立坑までに亘ってはヒューム管50が直線状に敷設された。これらフレキシブル推進管40及びヒューム管50は下水道等として利用される。
【0059】上述したように本実施形態では、掘削マシン10により計画曲線Rの掘削を行う際に、曲線造形装置20を該計画曲線Rの曲率に合わせて屈曲させることにより、該曲線造形装置20をガイドとして掘削マシン10の姿勢を計画曲線Rの曲率に合わせるようにした。複数の筒体21で構成された多関節の曲線造形装置20が屈曲することで、該曲線造形装置20は計画曲線Rに沿って形成された掘削孔r(図8)における地山壁面に密着でき、支圧面積が確保でき、該曲線Rに好適に追従する。これは筒体21の長さL2が殻体12の長さL1等よりも十分に短いことに起因する。このように、曲線造形装置20が計画曲線Rに沿って安定して推進されるので、該曲線造形装置20を介して推力が伝達される掘削マシン10の姿勢、従って掘削方向は安定し、計画曲線Rから不用意に外れるようなことは防止される。よって、本実施形態で例示したような長距離急曲線の施工を正確に行うことができる。
【0060】また、曲線造形装置20全体の長さL3が掘削マシン10の先頭の殻体12の長さL1よりも長いので、該殻体12に対する方向制御反力を得るための壁面接触面積を方向安定装置において得ることができ、曲線施工において正確な掘削方向を実現することができる。
【0061】更に、曲線造形装置20の複数の押圧ジャッキ22に作用する圧力(油圧)が圧力計測部60により随時計測されており、この計測結果が演算部61に逐次伝送されている。ところで演算部61には、曲線造形装置20が現在推進している直線経路或いは計画曲線Rにおいて、正確な経路で推進すると仮定した場合の該曲線造形装置20の各押圧ジャッキ22に作用する圧力の予測値が予め計算され保存されている。そして演算部61は、この予測値と上記伝送されてきた計測結果とを比較してその差等を掘進状態に関する情報としてモニタ等の表示手段62を介して出力する。
【0062】例えば、もし掘削マシン10が計画曲線Rより外れて進んでいる場合には、本来の計画曲線Rとは異なる曲率の掘削孔rが形成され、後続の曲線造形装置20が該掘削孔rに強制的に導入されることになる。曲線造形装置20の屈曲状態は本来の計画曲線Rの曲率に合わせられているので、該掘削孔rに導入されると曲線造形装置20の各押圧ジャッキ22には地山から受ける力による本来発生するはずのない圧力が作用する(こね現象)。上述した演算部61で演算した予測値と計測結果との差は、前記本来発生するはずのない圧力を表すものであり、掘削マシン10の掘削方向がズレているという掘進状態を示すものとなる。従って、このような掘進状態に関する情報を逐次出力することにより、計画曲線Rからのズレ等をいち早く発見し、ズレが大きくなる前に掘進方向の修正などの対応を迅速にとることができるので好都合である。但し、各押圧ジャッキ22に対して単に圧力計だけを設けておき、該圧力計で計測される圧力を作業員が読み取り、読み取った圧力に基づいて作業員自らが掘進状態等を判断することも可能である。なお、このような掘進状態に関する情報を出力する機能の有無は本発明の構成において任意であるので、掘進状態に関する情報を出力する機能を持たずに本発明を構成することも可能である。
【0063】また、曲線造形装置20のカラー部21bが鋼製等の可撓性のない部材で形成されていると、曲線施工時には隣接する筒体21、21が屈曲して目開きを形成するため、カラー部21bが外周側に跳ね上がる。そのため、跳ね上がりによりできた隙間に土砂が流入し、例えば直線又は逆カーブ施工時に目開きを解消しようとしても、土砂を噛み込んだ状態であるため目開き解消が不可能となる。その結果として、正確なカーブ形成に不都合が生じる可能性がある。また、カラー部21bには止水用ゴム輪を装着するが、上記跳ね上がりにより止水性機能も阻害される。しかし、曲線造形装置20のカラー部21bをゴム等の可撓性材料で形成した場合には、筒体21、21間が屈曲してもカラー部21bが筒体接続部の変形に追従し跳ね上がらない。そして地山と接触しない。これにより推進時の抵抗になりにくく、曲線施工時にもスムーズに推進できる。また、跳ね上がりが解消されるので土砂の進入が防止され、止水効果も確保されることになる。また本構造は比較的省スペースで連接部が構成できるため、小断面管においても適用できる利点がある。
【0064】なお掘削マシン10に関しては、繰り返し再利用する観点から止水性および屈曲構造は高度な加工を行っている。折れ曲がり部に土砂の噛み込みが発生することは避けられないが、強力な中折れジャッキ13での屈曲の繰り返し動作を行いながら噛み込みを解除している。しかし急曲線施工においては、この問題を解決する必要はある。急曲線施工用の掘削マシン10では屈曲部の箇所を増やすことにより殻体12、12間の開きは小さくなるが、掘削マシン10の構造上、屈曲部を増やすには限界があり、またコストアップにつながる。そのため掘削マシン10の屈曲箇所は本実施形態のように最大3〜4箇所程度であろう。基本的な対策としては、上述したような曲線造形装置20の可撓性材料によるカラー部21bと同様のもの(ゴムカバー)を掘削マシン10の連接部である殻体12、12間に設置して正確なカーブ形成を行うことが可能である。
【0065】また、曲線造形装置20の押圧ジャッキ22は各筒体21毎に8個であった(図3参照)。これにより、ローリングが発生した場合にカーブ設定に最適な位置でのジャッキ配置を選定することを可能とした。また、図示しない油圧ユニットで発生した圧力油を1切替弁から2本の押圧ジャッキ22(複数本)に並列供給を行い、筒体21、21間の目開きを設定するに当たり、2本の押圧ジャッキ22に発生する反力の確実な同調性を図るようにすると効果的である(連通管油圧回路)。この具体例として例えば図3の二点鎖線で示すように、8個の押圧ジャッキ22のうち、上2個の押圧ジャッキ22、22相互間、下2個の押圧ジャッキ22、22相互間に、これら押圧ジャッキ22、22相互間で作動油を移動自在に流通させる作動油連通パイプ100(作動油流通手段)をそれぞれ接続する。これにより作動油連通パイプ100で接続された押圧ジャッキ22、22は、作動油の自由な流通により、外力等に応じてストロークが自動的に適宜調整されることになる。なお、1本ジャッキでは、そのジャッキ能力は大きなものが必要となるが、複数本の使用により小能力で済むという利点がある。また、ジャッキ反力点が分散できることからジャッキ反力構造材に支圧応力集中が発生しないという利点もある。例えば4本ジャッキ配置等では、カーブ形成時(開口)の偶力発生作用に効率的でない。8本ジャッキ配置は管端部に配置できることから開口偶力に合理性がある。なお、このような連通管油圧回路等の作動油流通手段の有無は本発明の構成において任意であるので、作動油流通手段を持たずに本発明を構成することも可能である。
【0066】[マシンコントロール原理の説明]上述した実施形態により曲線造形装置20を含む掘削装置1の構成及び作用・効果等を説明したが、本発明の特徴でもある曲線造形装置(方向安定装置)を利用したマシンコントロール原理を簡単な例により補足説明する。
【0067】図10は、掘削マシン10と曲線造形装置20との関係を模式的に示した図である。図10では理解しやすい例とするため、中折れの無いタイプの掘削マシン10を採用した。また、曲線造形装置20については複数のユニット25を一体のように図示した(実際は複数のユニット25からなる)。最も先頭位置にある押圧ジャッキ22のラム22aだけを示し、このラム22aは掘削マシン10の後端部を押圧自在に配置した。
【0068】図10に示すように変化点P(曲線始点部)において、曲線造形装置20の推力作用位置を強制的に曲線外側にする。例えば、予め押圧ジャッキ22のラム22aを全て伸ばして関節における隣接部位(受圧壁23)にラム22aの先端を当接しておき、図10の状態になった時点で計画曲線Rの内側(図10の紙面下側)の押圧ジャッキ22だけラム22aを縮める。計画曲線Rの内側の押圧ジャッキ22のラム22aの先端と関節における隣接部位との間にはクリアランスが形成される。この時、掘削マシン10前面の反力FC(マシン面板に作用する土圧)はマシン軸心CTに作用し、曲線造形装置20からの推力FDは曲線外周側のラム22aを介して掘削マシン10に作用する。これにより掘削マシン10には、曲線内側に回転させる偶力MTが発生し、掘削マシン10は容易に(自然に)曲線内側に向きを変えて計画曲線Rに沿って進んでいく。
【0069】図11は、掘削マシン10と曲線造形装置20に関する状態変化を示した図である。図11では掘進装置1における状態変化と力の関係を模式的に示している。図11(a)の状態は上記図10の状態に対応する。即ち、変化点Pにおいて曲線造形装置20の推力作用位置を強制的に曲線外側にして、掘削マシン10に偶力MTを発生させ、掘削マシン10の向きを曲線内側に変えた。なお、図11ではカーブする方向が図10とは左右逆であるが、これは作図都合上の差異であり技術的に異なるものを示している訳ではない。また、曲線造形装置20については複数のユニット25を大きく2部分に分けて図示した。図11では管周混合装置30を備えないタイプの例であり、曲線造形装置20の押圧ジャッキ22やフレキシブル推進管40のクッション材42等は図示を省略した。図中の矢印は推力或いは地山からの反力を示している。
【0070】更に推進を進めて、図11(b)のように掘削マシン10が計画曲線Rの中に入っても、曲線造形装置20内の各ユニット25どうしにおける推力FDの作用位置を強制的に曲線外側にすることで、上記図11(a)と同様に、先行するユニット25に曲線内側に回転させる偶力MTを発生させ、曲線造形装置20の各ユニット25は容易に(自然に)曲線内側に向きを変えて計画曲線Rに沿って進んでいく。
【0071】更に推進を進めて、図11(c)のように掘削マシン10からフレキシブル推進管40までが完全に計画曲線R内に入った状態では、曲線造形装置20内の押圧ジャッキ22で強制的に適正な開口長(ユニット25間の目開き)を保持することで、掘削マシン10と曲線造形装置20がきれいな曲線をなす一体の剛体となる。そうなることで曲線の方向を安定させることができ、掘削マシン10は続けてきれいな曲線を掘削することができる。また、追従するフレキシブル推進管40は掘削孔がきれいな曲線であるため、よけいな側圧が作用しないので好都合である。
【0072】従来のように曲線造形装置を利用しない場合には、掘削マシンの方向修正ジャッキ(中折れジャッキ)によりマシン先端側の方向を強制的に変更していた。しかしこれでは、マシン軸心に作用する地山からの反力と、後続の管からの推力との作用により、掘削マシンが曲線外側に回転する偶力を受けていた。その結果、掘削マシンは計画曲線外側の側方地盤から反力を受けて掘削方向を変更することになり、計画通りのきれいな曲線が造形できなかった。しかし、上記実施形態では、曲線造形装置20を利用することにより、掘削マシン10の方向を無理なく容易に(自然に)変更することができ、計画曲線に入った後にはガイドとして安定的に掘削マシン10を推進させることができる。
【0073】なお本発明の技術思想に基づく掘進装置は、少なくとも曲線造形装置を備えて構成される。例えば掘進装置は、上記実施形態で説明した、掘削マシン10と、曲線造形装置20と、管周混合装置30と、フレキシブル推進管40とのうち、管周混合装置30だけが無い構成或いは管周混合装置30とフレキシブル推進管40とが無い構成などをとることができる。また、掘進装置は、掘削マシンをもたず曲線造形装置だけで構成することもできる。この場合、曲線造形装置の先端部にカッタ等の掘削手段を直接設置する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による掘進装置の一例を示した斜視図。
【図2】曲線造形装置の平面図(一部断面図)。
【図3】筒体内での押圧ジャッキの配置状態を示す図。
【図4】フレキシブル推進管を示した図。
【図5】曲線造形装置における隣接する筒体間の状態を説明した平断面図。
【図6】急曲線施工の手順を示した模式図。
【図7】急曲線施工の手順を示した模式図。
【図8】急曲線施工の手順を示した模式図。
【図9】急曲線施工の手順を示した模式図。
【図10】掘削マシンと曲線造形装置との関係を模式的に示した図。
【図11】掘削マシンと曲線造形装置とに関する状態変化を示した図。
【符号の説明】
1 掘進装置
10 掘削マシン
12 殻体
15 掘削手段
20 方向安定装置(曲線造形装置)
21 筒体
21b カラー部材(カラー部)
22 ジャッキ手段(押圧ジャッキ)
30 滑材注入手段(管周混合装置)
40 フレキシブル推進管
41 コンクリート管体
42 可撓性環材(クッション材)
50 ヒューム管(推進管)
60 圧力計測部
61 情報出力部(演算部)
62 情報出力部(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】推進方向直列に配設された1個以上の殻体及び、推進方向先頭の前記殻体に設けられ前方の地盤を掘削自在な掘削手段を有した掘削マシンと、コンクリート管体と可撓性環材とを推進方向直列に交互に接続して形成し、前記掘削マシンの後方に配置されたフレキシブル推進管と、を備えた掘進装置において、前記掘削マシンの後方に方向安定装置を接続し、前記方向安定装置は、推進方向における長さが前記殻体に比べて短いか又は等しい筒体を、推進方向直列に複数配設して有し、推進方向に隣接する前記筒体間に複数のジャッキ手段を、これら各ジャッキ手段により前記筒体間を押開け自在に設けると共に、推進方向に隣接する前記筒体間の複数のジャッキ手段は該筒体の周面に沿って配置し、前記方向安定装置の後方に前記フレキシブル推進管を着脱自在に接続して構成したことを特徴とする掘進装置。
【請求項2】前記方向安定装置の推進方向における長さは前記推進方向先頭の殻体よりも長いことを特徴とする請求項1記載の掘進装置。
【請求項3】前記ジャッキ手段は油圧ジャッキであり、前記油圧ジャッキに作用する圧力を計測する圧力計測部を設け、前記圧力計測部における計測結果に基づいて掘進状態に関する情報を出力する情報出力部を設けたことを特徴とする請求項1記載の掘進装置。
【請求項4】推進方向に隣接する前記筒体間に、これら筒体間の隙間を覆う形で筒状のカラー部材を設け、前記カラー部材を可撓性材料で形成したことを特徴とする請求項1記載の掘進装置。
【請求項5】前記ジャッキ手段は油圧ジャッキであり、前記複数のジャッキ手段のうち2個以上のジャッキ手段相互間に、これらジャッキ手段相互間で作動油を移動自在に流通させる作動油流通手段を接続したことを特徴とする請求項1記載の掘進装置。
【請求項6】推進方向前方の地盤を掘削自在な掘削マシンの後方より推進管を順次継ぎ足し押し込むことにより、前記掘削マシンによる地盤掘削と、該掘削マシンに後続する前記推進管の地盤への敷設とを行う推進工法において、前記掘削マシンと前記推進管との間に、推進方向に複数の関節を有する屈曲自在な筒状の方向安定装置を接続しておき、前記掘削マシンにより曲線掘削を行う際には、前記方向安定装置を前記掘削すべき曲線の曲率に合わせて屈曲させることにより、該方向安定装置をガイドとして前記掘削マシンの姿勢を前記曲率に合わせるようにすることを特徴とする推進工法。
【請求項7】コンクリート管体と可撓性環材とを推進方向直列に交互に接続して形成したフレキシブル推進管を、前記方向安定装置の後方に接続しておき、前記掘削マシンにより曲線掘削を行う際には、既に曲線掘削された掘削孔に前記フレキシブル推進管を屈曲導入させ、該フレキシブル推進管の姿勢を前記掘削孔に合わせて保持させることで、前記掘削すべき曲線の曲率に合わせて姿勢を保持した前記掘削マシン及び前記方向安定装置及び前記フレキシブル推進管の3者により前記掘削マシンによる掘削方向の安定を図るようにすることを特徴とする請求項6記載の推進工法。
【請求項8】推進方向前方の地盤を掘削手段により掘削しつつ、その後方より推進管を順次継ぎ足し押し込むことにより、前記推進管の地盤への推進及び敷設を行う推進工法において、前記掘削手段と前記推進管との間に、複数の関節を推進方向に配した筒状の方向安定装置を設置しておき、前記掘削手段により曲線掘削を行う際には、掘削すべき曲線の外周側位置において前記関節を推力伝達可能に接続すると共に、掘削すべき曲線の内周側位置において前記関節を収縮可能に設定することにより、掘削すべき曲線の外周側位置において伝達される推力と、前記掘削手段が地盤より受ける反力とで偶力を発生させ、該偶力により前記掘削手段の掘削推進方向を前記掘削すべき曲線の曲率に合わせて変更させることを特徴とする推進工法。
【請求項9】前記関節には、推進方向にラムを駆動自在なジャッキ手段を、前記掘削すべき曲線の外周側位置及び内周側位置にそれぞれ配設しておき、前記掘削手段により曲線掘削を行う際には、掘削すべき曲線の外周側位置において前記ジャッキ手段のラムを突出させて前記関節を推力伝達可能に接続すると共に、掘削すべき曲線の内周側位置において前記ジャッキ手段のラムを後退させて前記関節を収縮可能に設定することを特徴とする請求項8記載の推進工法。
【請求項10】前記掘削手段により曲線掘削を行う際には、掘削すべき曲線の外周側位置において前記ジャッキ手段のラムの先端を前記関節における隣接部位に当接させると共に、掘削すべき曲線の内周側位置において前記ジャッキ手段のラムの先端と前記関節における隣接部位との間にクリアランスを形成することを特徴とする請求項9記載の推進工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2001−311386(P2001−311386A)
【公開日】平成13年11月9日(2001.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−43255(P2001−43255)
【出願日】平成13年2月20日(2001.2.20)
【出願人】(591160671)奥村組土木興業株式会社 (6)
【出願人】(396000374)株式会社西日本油機 (4)
【出願人】(390025999)中川ヒューム管工業株式会社 (15)
【出願人】(597024522)サンコーコンサルタント株式会社 (14)
【出願人】(000157005)関電興業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】