説明

接着促進剤、電気活性層及びそれを含む電気活性素子とその方法

【課題】少なくとも1つの電気活性有機層を含む多層電気活性素子の層間の接着促進剤を提供する。
【解決手段】(i)接着促進剤材料と電気活性材料とを混合することにより組成物を調製し、(ii)電気活性素子の組成物を第2の電気活性層上に堆積し、(iii)任意選択的に、第3の電気活性層を第2の層に対向する第1の層の表面上に更に堆積する段階とを含み、組成物が第1の層と第2の層との間、又は第1の層と第3の層との間、或いは第1の層と第2の層及び第3の層の両方との間の接着を可能にする。別の実施形態では、(i)第1の電気活性層の表面上に接着促進剤材料を含む表面処理組成物を堆積し、(ii)接着促進剤を含む第1の層の表面上に第2の電気活性層を堆積する段階とを含み、組成物が電気活性素子の1の層と第2の層との間の接着を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、接着促進剤、及びこれを含む電気活性素子、並びに方法に関する。1つの実施形態では、本発明は、詳細には少なくとも1つの電気活性有機層を含む多層電気活性素子の層間の接着促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
光電子素子、有機発光素子、エレクトロルミネセント素子、光電池、及び有機薄膜トランジスタを含む多くの電気活性素子は、有機又は無機材料の2つ又はそれ以上の層又はこのような層の組み合わせを有する。これらの素子の性能は、これらの層の機械的安定性を改善することにより向上させることができることが望ましい。層間の接着性を改善すると、界面電気抵抗を低減しながら機械的安定性を向上させるのを助けることができる。特に困難な問題は、こうした素子における無機層と有機層との間の接着である。例えば、二酸化チタン層のプラスチック層への接着、又は発光ポリマー層のカソード金属層への接着には問題があることが多い。
【0003】
最新の有機発光素子(OLED)の殆どは多層で構成されている。例証的な多層OLEDは、ITO//HTU/LEP//カソード(ITOはインジウムスズ酸化物を含むアノード、HTLは正孔輸送層、LEPは発光ポリマー、及びカソードは、限定ではないがAl又はCaのような仕事関数の低い金属の1つとすることができる)で表すことができる。各層は、蒸着法によるか、或いはスピンコーティング、浸漬コーティング、及び類似の方法により溶液から堆積させることができる。例証となる光起電デバイス(PV)は、二酸化チタンのような色素コーティング金属酸化物を用いて光を吸収し、色素励起状態から電荷を分離する。例えば、TiOをITOのような導電性金属酸化物上に堆積させることができる。これら及び他の電気活性素子の素子性能は、層間の密接な接触の形成と、可撓性の基材及び素子に特に重要な密接な接触を維持する能力とに依存する。従って、他の特性の中でもとりわけ多層素子の層間の接着性が向上された方法及び素子構造を見出すことが望ましいことになる。また、このような接着性をもたらすのに有用な接着促進剤を特定することも望ましいことになる。
【特許文献1】米国特許第6794061号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要約すると、本発明の1つの態様は、(i)少なくとも1つの接着促進剤材料と少なくとも1つの電気活性材料とを混合することにより第1の層組成物を調製する段階と、(ii)該組成物を前記電気活性素子の第2の電気活性層上に堆積して第1の層を形成する段階と、(iii)任意選択的に、電気活性材料の第3の層を第2の層に対向する第1の層の表面に更に堆積する段階と、を含み、第1の層組成物により、第1の層と第2の層との間の接着、又は第1の層と第3の層との間の接着、或いは第1の層と第2の層及び第3の層の両方との間の接着を可能にする、電気活性素子の第1の層を作るための方法である。
【0005】
本発明の別の態様は、(a)少なくとも1つの接着促進剤材料と少なくとも1つの電気活性材料とを混合することにより第1の層組成物を調製する段階であって、該接着促進剤材料が、チタンテトラアルコキシドとテトラアルキルオルトシリケートとの混合物、チタンテトラブトキシドとテトラエチルオルトシリケートとの混合物、9,9−2置換フルオレニル化合物、α−(1−ナフチル)−ω−トリアルコキシアルカン、スチレンとビニルナフタレンとのコポリマー、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの化合物を調製する段階と、(b)該組成物を電気活性素子の第2の電気活性層上に堆積して第1の層を形成し、任意選択的に、第3の電気活性層を第2の層と対向する第1の層の表面上に更に堆積する段階とを含み、第1の層組成物により、該第1の層と第2の層との間の接着、又は第1の層と第3の層との間の接着、或いは第1の層と第2の層及び第3の層の両方との接着を可能する電気活性素子の第1の層を作る方法である。
【0006】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの接着促進剤材料と1つの電気活性有機材料との均質な混合物を含む電気活性層である。
【0007】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの接着促進剤材料と1つの電気活性有機材料との均質な混合物を含む層を含む電気活性素子である。
【0008】
本発明の別の態様は、(i)第1の電気活性層の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つの接着促進剤材料の表面処理組成物を堆積する段階と、(ii)接着促進剤を含む表面処理組成物の表面上に第2の電気活性層を堆積する段階と、を含み、該組成物により電気活性素子の第1の層と第2の層との間の接着を可能にする電気活性素子の層間の接着性を改善する方法である。
【0009】
本発明の別の態様は、(i)電気活性層の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つの接着促進剤材料を含む表面処理組成物を堆積させる段階と、(ii)該接着促進剤を含む表面処理組成物の表面上に第2の電気活性層を堆積させる段階と、を含み、該接着促進剤材料が、チタンテトラアルコキシドとテトラアルキルオルトシリケートとの混合物、チタンテトラブトキシドとテトラエチルオルトシリケートとの混合物、9,9−2置換フルオレニル化合物、α−(1−ナフチル)−ω−トリアルコキシアルカン、スチレンとビニルナフタレンとのコポリマー、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの化合物を含み、該組成物が電気活性素子の第1の層と第2の層との間の接触を可能にする、電気活性素子の層間の接着性を改善する方法である。
【0010】
本発明の別の態様は、表面処理した電気活性層であり、該表面処理が電気活性層の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つの接着促進剤材料を含む組成物を含み、該組成物が層と電気活性素子の他の少なくとも1つの層との間の接着を可能にし、該接着促進剤材料が、チタンテトラアルコキシドとテトラアルキルオルトシリケートとの混合物、チタンテトラブトキシドとテトラエチルオルトシリケートとの混合物、9,9−2置換フルオレニル化合物、α−(1−ナフチル)−ω−トリアルコキシアルカン、スチレンとビニルナフタレンとのコポリマー、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0011】
本発明の別の態様は、表面処理した少なくとも1つの電気活性層を含む電気活性素子であり、該表面処理には、電気活性層の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つの接着促進剤材料を含む組成物が含まれ、組成物により層と電気活性素子の少なくとも1つの他の電気活性層との間を接着させることができ、該接着促進剤材料が、チタンテトラアルコキシドとテトラアルキルオルトシリケートとの混合物、チタンテトラブトキシドとテトラエチルオルトシリケートとの混合物、9,9−2置換フルオレニル化合物、α−(1−ナフチル)−ω−トリアルコキシアルカン、スチレンとビニルナフタレンとのコポリマー、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0012】
本発明の更に別の態様は、(A)アノード層と、(B)カソード層と、(C)接着促進剤及び第1の電気活性有機材料を含む組成物由来の層と、(D)第1の電気活性有機材料と異なる電気活性有機材料を含む他の少なくとも1つの層とを含む電気活性素子を製造する方法であって、(i)互いに異なる第1及び第2の電極層を準備する段階と、(ii)(a)第1の電極層及び(b)任意選択的に各々が異なる電気活性有機材料を含む1つ又はそれ以上の層を含む第1の複合体構造を形成する段階と、(iii)(c)第2の電極層、及び(d)接着促進剤材料と第1の電気活性有機材料との均質な混合物の層、並びに(e)任意選択的に各々が異なる電気活性有機材料を含む1つ又はそれ以上の層を含む第2の複合体構造を形成する段階と、(iv)第1の複合体構造及び第2の複合体構造を積層することにより素子を形成する段階と、を含み、接着促進剤を含む層が、電極層と、第1の電気活性有機材料と異なる電気活性有機材料の他の少なくとも1つの層と接触してこれらの層間を接着する方法である。
【0013】
本発明の更に別の態様は、(A)アノード層と、(B)カソード層と、(C)第1の電気活性有機材料由来の層と、(D)第1の電気活性有機材料と異なる電気活性有機材料を含む他の少なくとも1つの層とを含む電気活性素子を製造する方法であって、(i)互いに異なる第1及び第2の電極層を準備する段階と、(ii)(a)第1の電極層、及び(b)第1の電極層の1つの表面上に堆積された接着促進剤材料、並びに(c)任意選択的に各々が異なる電気活性有機材料を含む1つ又はそれ以上の層を含む第1の複合体構造を形成する段階と、(iii)(d)第2の電極層、及び(e)各々が異なる電気活性有機材料を含む1つ又はそれ以上の層を含む第2の複合体構造を形成する段階と、(iv)第1の複合体構造及び第2の複合体構造を積層することにより素子を形成する段階と、を含み、接着促進剤が電極層と電気活性有機材料の層とに接触してこれらの間を接着する方法である。
【0014】
本発明の更に別の態様は、(A)アノード層と、(B)カソード層と、(C)第1の電気活性有機材料由来の層と、(D)第1の電気活性有機材料と異なる電気活性有機材料を含む他の少なくとも1つの層とを含む電気活性素子を製造する方法であって、(i)互いに異なる第1及び第2の電極層を準備する段階と、(ii)(a)第1の電極層、及び(b)各々が異なる電気活性有機材料を含む1つ又はそれ以上の層、並びに(c)少なくとも1つの電気活性有機層の少なくとも1つの表面上に堆積された接着促進剤材料を含む第1の複合体構造を形成する段階と、(iii)(d)第2の電極層、及び(e)各々が異なる電気活性有機材料を含む1つ又はそれ以上の層、並びに任意選択的に(f)少なくとも1つの電気活性有機層の少なくとも1つの表面上に堆積された接着促進剤材料を含む第2の複合体構造を形成する段階と、(iv)第1の複合体構造及び第2の複合体構造を積層することにより素子を形成する段階と、を含み、接着促進剤が第1の電気活性有機材料を含む第1の層及び前記第1の電気活性有機材料と異なる電気活性有機材料を含む第2の層に接触してこれらの間を接着する方法である。
【0015】
本発明の更に別の態様は、式(I)の9,9−2置換フルオレニル化合物である。
【0016】
【化6】

【0017】
式中、各Rは、別個にアルキル、アリール、ハロゲン、シアノ、アルコキシド、カルボキシレート、又はヒドロキシであり、各「x」は、別個に0から芳香環上の置換することができる位置の数までの値であり、各Rは、別個にC〜C16のアルキル基又はアリール基であり、各Rは、別個にC〜C16のアルキル基であり、各二重結合の幾何学的配置は別個にシス又はトランスの何れかである。
【0018】
本発明の別の態様は、式(IV)の9,9−ビス(アルキニル)フルオレニル化合物である。
【0019】
【化7】

【0020】
式中、各Rは、別個にアルキル、アリール、ハロゲン、シアノ、アルコキシド、カルボキシレート、又はヒドロキシであり、各「x」は、別個に0から芳香環で置換することができる位置の数までの値であり、各Rは、別個にC〜C16のアルキル基である。
【0021】
本発明の別の態様は、式(I):
【0022】
【化8】

【0023】
の9,9−2置換フルオレニル化合物を調製する方法であって、
(i)反応条件下で溶媒中に式(II)
【0024】
【化9】

【0025】
の9,9−非置換フルオレニル化合物を塩基及び式(III)
【0026】
【化10】

【0027】
(式中、各Rが、別個にアルキル、アリール、ハロゲン、シアノ、アルコキシド、カルボキシレート、又はヒドロキシであり、各「x」が、別個に0から芳香環上の置換することができる位置の数までの値であり、各Rが、別個にC〜C16のアルキル基であり、Zが置換可能基である。)に示す置換可能基を有する置換アルキンと接触させる段階と、
(ii)反応条件下で、段階(i)の反応生成物をヒドロシリル化触媒及び式(RO)−Si−H(式中、Rは別個にC〜C16アルキル基又はアリール基)のヒドロシリル化剤と接触させる段階と、
を含む方法である。
【0028】
本発明の種々の他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明及び添付の請求項を参照すると更に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下の明細書及び請求の範囲では、幾つかの用語を参照することになるが、これらは以下の意味をもつものと定義される。単数形は、前後関係から明らかでない限り複数の指示対象を含む。本明細書で用いる用語「電気活性」とは、(1)電荷(正電荷又は負電荷)を輸送、遮断又は格納することができる材料、(2)通常は蛍光性である必要はないが発光性である材料、及び/又は(3)光誘起性電荷発生に有用な材料を意味する。「電気活性素子」は、電気活性材料を含む素子である。この明細書では、電気活性層とは、少なくとも1つの電気活性有機材料又は少なくとも1つの金属電極材料を含む電気活性素子の層である。本明細書で用いる用語「ポリマー」は、本質的に単一のモノマー由来のホモポリマー又は少なくとも2つのモノマー由来のコポリマーの何れか、或いはホモポリマーとコポリマーの両方を意味することができる。
【0030】
本発明の種々の実施形態で用いる用語「アルキル」は、炭素及び水素原子を含み、任意選択的に炭素及び水素原子に加えて、例えば、周期表の第15、16及び17族から選択された原子を含む直鎖アルキル、分枝アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、トリシクロアルキル及びポリシクロアルキルラジカルを示すものとする。アルキル基は、飽和又は不飽和の何れであってもよく、例えば、ビニル又はアリルを含むことができる。また、用語「アルキル」は、アルコキシド基のアルキル部分を含む。特に断りのない限り、種々の実施形態では、直鎖及び分枝アルキルラジカルは1〜約32の炭素原子を含むものであり、例示的な非制限的な実施例として、C〜C32アルキル(任意選択的にC〜C32アルキル、C〜C15シクロアルキル、又はアリールから選択される1つ又はそれ以上の基で置換されたもの)、及び任意選択的にC〜C32アルキル又はアリールから選択された1つ又はそれ以上の基で置換されたC〜C15シクロアルキルを含む。幾つかの例示的な非制限的な実施例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、ターシャリ−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル(methyl, ethyl, n-propyl, isopropyl, n-butyl, sec-butyl, tertiary-butyl, pentyl, neopentyl, hexyl, heptyl, octyl, nonyl, decyl, undecyl and dodecyl)が含まれる。シクロアルキル及びビシクロアルキルラジカルの幾つかの特定の例示的な非制限的な実施例には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロヘプチル及びアダマンチル(cyclobutyl, cyclopentyl, cyclohexyl, methylcyclohexyl, cycloheptyl, bicycloheptyl and adamantyl)が含まれる。種々の実施形態では、アラルキルラジカルは、7〜約14の炭素原子を含み、これには、ベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル、及びフェニルエチル(benzyl, phenylbutyl, phenylpropyl, and phenylethyl)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の種々の実施形態で用いる用語「アリール」は、6〜20の環炭素原子を含む置換又は非置換アリールラジカルを意味するものとする。アリールラジカルの幾つかの例示的な非制限的な実施例には、周期表の15、16及び17族から選択された原子を含むC〜C32アルキル、C〜C15シクロアルキル、アリール、及び官能基から選択された1つ又はそれ以上の基で任意選択的に置換されたC〜C20アリールが含まれる。アリールラジカルの幾つかの特定の例示的な非制限的な実施例には、置換又は非置換フェニル、ビフェニル、トリル、キシリル、ナフチル及びビナフチル(substituted or unsubstituted phenyl, biphenyl, tolyl, xylyl, naphthyl and binaphthyl)が含まれる。
【0031】
本発明の1つの態様は、(i)少なくとも1つの接着促進剤材料と少なくとも1つの電気活性材料とを混合することにより第1の層組成物を調製する段階と、(ii)第1の層の組成物を前記電気活性素子の第2の電気活性層上に堆積して前記第1の層を形成する段階とを含み、第1の層組成物が第1の層及び第2の層の間の接着を可能にする、電気活性素子の第1の層を製造する方法である。別の実施形態では、電気活性素子は更に、電気活性材料の第3の層を含み、前記第3の層が第1の層に隣接して接触し、且つ該第1の層が前記第2の層と前記第3の層との間にある。特定の実施形態では、この方法は、任意選択的に、第3の層を第2の層に対向する前記第1の層の表面上に堆積する段階を更に含み、前記第1の層組成物により、前記第1の層と前記第2の層との間、又は前記第1の層と前記第3の層との間、或いは前記第1の層と前記第2の層及び前記第3の層の両方との間の接着が可能になる。任意選択的に、任意の層の堆積の後に少なくとも1つの熱処理段階を行うことができる。
【0032】
本発明の別の態様は、電気活性素子の2つの層間の接着を可能にし、又は改善する方法であって、少なくとも1つの接着促進剤材料を少なくとも1つの電気活性有機層又は金属電極層の表面上に堆積させる段階を含む方法である。この方法は、通常、少なくとも1つの接着促進剤材料を含む表面処理組成物を少なくとも1つの電気活性有機層の少なくとも1つの表面上又は少なくとも1つの金属電極層の1つの表面上に堆積する段階を含む。続いて、第2の電気活性層を前記接着促進剤上に堆積させ、前記第2の層と前記接着促進剤が堆積されている層との間の接着を前記接着促進剤が可能にすることができる。特定の1つの実施形態では、少なくとも1つの接着促進剤材料を含む表面処理組成物が、1つの電気活性有機層の1つの表面上又は金属電極層の1つの表面上に堆積される。別の特定の実施形態では、少なくとも1つの接着促進剤材料を含む表面処理組成物が、少なくとも2つの電気活性有機層の1つの表面上、又は電気活性有機層の1つの表面及び1つの金属電極層の1つの表面上に堆積される。1つより多い電気活性層を接着促進剤材料で処理することができ、この場合、接着促進剤材料は同じであっても異なっていてもよい。任意選択的に、任意の層又は表面処理組成物を堆積した後、少なくとも1つの熱処理段階を行うことができる。
【0033】
接着促進剤材料(adhesion promoter material)は、限定ではないが、金属化合物又は9,9−2置換フルオレニル化合物のような材料を含む。金属化合物は、アセトキシ、アセチルアセトナト、アクリロキシ、アルコキシ、アミノプロピル、カルビノール、カルボキシレート、シラノール、シロキシ、亜リン酸塩、リン酸塩、グリシドキシ、メルカプトプロピル、ハロゲン化物、塩化物、臭化物及び酸化物(acetoxy, acetylacetonate, acryloxy, alkoxy, amino propyl, carbinol, carboxylate, silanol, siloxy, phosphite, phosphate, glycidoxy, mercaptopropyl, halide, chloride, bromide and oxide)から成る群から選択される少なくとも1つの部分を含み、前記金属は、シリコン、スズ、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、アンチモン及びチタン(silicon, tin, zirconium, hafnium, aluminum, antimony and titanium)から成る群から選択される。金属化合物の例示的な実施形態には、チタンテトラアルコキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトラプロポキシド、テトラアルキルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、ジルコニウムテトラアルコキシド及び類似の化合物並びにこれらの組み合わせ(titanium tetraalkoxide, titanium tetrabutoxide, titanium tetrapropoxide, tetraalkyl orthosilicate, tetraethyl orthosilicate, zirconium tetraalkoxide and like compounds and combinations thereof)が含まれる。
【0034】
接着促進剤の別の実施例には、α−(1−ナフチル)−ω−トリアルコキシアルカンのような材料が含まれるが、これに限定されない。本発明の1つの態様では、接着促進剤材料は、1−(1−ナフチル)−2−トリアルコキシエタンであり、この例示的実施例には、1−(1−ナフチル)−2−トリエトキシシリルエタン(NTES)及び同様の化合物が含まれる。このようなα−(1−ナフチル)−ω−トリアルコキシアルカンの代表的な実施例は、2004年1月20日に出願された同一出願人による同時係属の出願番号第10/761,696号に記載されている。
【0035】
接着促進剤材料の更に別の実施例は、限定ではないがスチレンなどのアルケニル芳香族化合物と任意選択的に共重合したビニルナフタレンポリマーを含む。本発明の1つの態様では、接着促進剤は、スチレン及びビニルナフタレン(NAPHSTYR)のコポリマーであり、ここでスチレン(x)とビニルナフタレン(1−x)との比がx:1−xであり、xは0〜約0.6の範囲にわたることができる。このようなコポリマーの代表的な実施例は、同一出願人による同時係属出願(GE整理番号148981号)に記載されている。NAPHSTYRの重量平均分子量(Mw)は、1つの実施形態では、約8000と約75000の間の範囲、別の実施形態では、約12000と約65000との間の範囲、更に別の実施形態では、約45000と約65000との間の範囲である。NAPHSTYRの数平均分子量(Mn)は、1つの実施形態では、約4000と約30000との間の範囲、別の実施形態では、約8000と約28000との間の範囲、別の実施形態では、約14000と約26000との間の範囲である。特定の1つの実施形態では、NAPHSTYRのMw値は、約50000と約60000との間の範囲、Mn値は、約18000と約24000との間の範囲である。
【0036】
適切な接着促進剤の更に別の実施例は、限定ではないが、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン(methacryloxyalkyl trialkoxysilanes)のような材料を含み、この例示的な実施例には、限定ではないが、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MAPTMS)及び類似の化合物が含まれる。適切な接着促進剤の更に別の実施例には、限定ではないが、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン(glycidoxyalkyl trialkoxysilanes)のような材料が含まれ、この例示的な実施例には、限定ではないが、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン及び類似の化合物が含まれる。特定の実施形態では、適切なグリシドキシアルキルトリアルコキシシランは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)を含む。
【0037】
堆積方法は、スピンコーティング、浸漬コーティング、逆ロールコーティング、ワイヤ巻き又はマイヤーロッドコーティング、直接及びオフセットグラビアコーティング、スロットダイコーティング、ブレードコーティング、ホットメルトコーティング、カーテンコーティング、ロール式ナイフコーティング、押し出し、エアナイフコーティング、スプレー、ロータリースクリーンコーティング、多層スライドコーティング、共押し出し、メニスカスコーティング、コンマ及びマイクログラビアコーティング、リソグラフィプロセス、ラングミュア法及びフラッシュ蒸発法、蒸着、プラズマ強化化学蒸着(「PECVD」)、RFプラズマ強化化学蒸着(「RFPECVD」)、膨張熱プラズマ化学蒸着(「ETPCVD」)、限定ではないが反応性スパッタリングを含むスパッタリング、電子サイクロトロン共鳴プラズマ強化化学蒸着(「ECRPECVD」)、誘導結合プラズマ強化化学蒸着(「ICPECVD」)及び同様の技術、並びにこれらの組み合わせといった技術(spin coating, dip coating, reverse roll coating, wire-wound or Mayer rod coating, direct and offset gravure coating, slot die coating, blade coating, hot melt coating, curtain coating, knife over roll coating, extrusion, air knife coating, spray, rotary screen coating, multilayer slide coating, coextrusion, meniscus coating, comma and microgravure coating, lithographic process, langmuir process and flash evaporation, vapor deposition, plasma-enhanced chemical-vapor deposition ("PECVD"), radio-frequency plasma-enhanced chemical-vapor deposition ("RFPECVD"), expanding thermal-plasma chemical-vapor deposition ("ETPCVD"), sputtering including, but not limited to, reactive sputtering, electron-cyclotron-resonance plasma-enhanced chemical-vapor deposition (ECRPECVD"), inductively coupled plasma-enhanced chemical-vapor deposition ("ICPECVD"), and like techniques, and combinations thereof)が含まれる。
【0038】
例えば、スピンコーティングでは、所望の厚さを得るために、限定ではないが、速度などのスピナパラメータに応じて、電気活性材料又は接着促進剤、或いはその両方を含む溶液又は分散液中の固体パーセントを変えることができる。その結果、この所望の厚さは、通常は、電気活性材料及び接着促進剤の1つ又は両方並びに存在する他の任意の個体の化学的性質及び材料特性に応じて決めることができ、当業者であれば必要以上に実験することなく容易に定めることができる。特定の1つの実施形態では、堆積することになる溶液又は分散液中の電気活性材料又は接着促進剤或いはその両方の濃度は、約0.01%固体と約10%固体との間の範囲とすることができ、別の実施形態では、約0.5%固体と約3%固体との間の範囲とすることができる。
【0039】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの接着促進剤及び少なくとも1つの電気活性材料の均質な混合物を含む電気活性素子の層である。本明細書では、均質な混合物は、前記層に堆積する前の溶液又は分散液の接着促進剤と電気活性材料との組み合わせから得られるものである。本発明の更に別の態様は、(i)少なくとも1つの接着促進剤材料と少なくとも1つの電気活性材料とを混合することにより第1の層組成物を調製する段階と、(ii)第1の層の組成物を前記電気活性素子の第2の電気活性層上に堆積する段階と、を含み、第1の層組成物により、第1の層と第2の層との間の接着が可能になる方法により作られた電気活性素子の層である。本発明の更に別の態様は、少なくとも1つの接着促進剤及び少なくとも1つの電気活性有機材料の均質な混合物を含む層を含む電気活性素子である。本発明の更に別の態様は、(i)少なくとも1つの接着促進剤材料及び少なくとも1つの電気活性材料とを混合することにより第1の層組成物を調製する段階と、(ii)第1の層の組成物を前記電気活性素子の第2の電気活性層上に堆積する段階と、を含み、第1の層組成物により第1の層と第2の層との間の接着が可能になる方法により作られた層を含む電気活性素子である。
【0040】
本発明の更に別の態様は、少なくとも1つの接着促進剤材料を電気活性層の表面上に堆積する段階を含む方法により調製される電気活性素子の層である。本発明の更に別の態様は、少なくとも1つの接着促進剤材料を電気活性層の表面上に堆積する段階を含む方法により調製された層を含む電気活性素子である。1つの実施形態では、前記接着促進剤の表面厚さは、約1ナノメートルと約100ナノメートルとの間である。本発明の別の実施形態では、接着促進剤の表面厚さは、約1ナノメートルと約10ナノメートルとの間である。
【0041】
幾つかの特定の実施形態では、電気活性素子の電気活性層材料は、電極材料、発光材料、光吸収材料、電荷輸送材料、電荷注入材料、電荷障壁材料及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。幾つかの特定の実施形態では、電気活性素子は、発光素子、有機発光素子、光起電デバイス、光導体、光検出器、液晶ディスプレイ、有機トランジスタ又は他の分子電子素子構成要素、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0042】
本発明の1つの実施形態では、電気活性素子は、通常、(a)アノード、(b)カソード、及び(c)正孔障壁層を含む。別の実施形態では、電気活性素子は、通常、(a)アノード、(b)発光層、(c)正孔障壁層、及び(d)カソードを含む。更に別の実施形態では、電気活性素子は、(i)基材、(ii)該基材を覆って形成されたアノード、(iii)アノードを覆って形成された導電性ポリマー又は正孔トランスポータ材料の層、(iv)任意選択的に電子障壁層、(v)発光材料の層、(vi)正孔障壁材料の層、(vii)電子トランスポータ材料の層、及び(viii)電子トランスポータ材料の層を覆って形成されたカソードを含む場合が多い。更に別の実施形態では、電気活性素子は、典型的には更に、(a)アノード、(b)カソード、及び(c)発光材料の層を含む。幾つかの他の実施形態では、電気活性素子は、(a)基材、(b)基材を覆って形成されたアノード、(c)任意選択的にアノードを覆って形成された導電性ポリマー又は正孔トランスポータ材料の層、(d)任意選択的に電子障壁層、(f)発光材料の層、(g)任意選択的に正孔障壁材料を含む層、(h)任意選択的に電子トランスポータ材料を含む層、及び(i)カソードを含む場合が多い。本発明の1つの実施形態では、光吸収層を備える電気活性素子は、通常、(a)アノード、(b)カソード、及び(c)光吸収材料の層を含む。本発明の電気活性素子は、限定ではないが、1つ又はそれ以上の耐磨耗層、耐化学物質層、光輝性層、放射吸収層、放射反射層、障壁層、平坦化層、及びこれらの組み合わせなどの付加的な層を含むことができる。
【0043】
発光材料の非制限的な例には、ポリ(N−ビニルカルバゾール)及びその誘導体;ポリ(アルキルフルオレン)のようなポリフルオレン及びその誘導体、例えば、ポリ(9,9−ジヘキシルフルオレン)、ポリ(ジオクチルフルオレン)、又はポリ{9,9−ビス(3,6−ジオクサヘプチル)−フルオレン−2,7−ジイル};ポリ(2−デシロキシ−1,4−フェニレン)又はポリ(2,5−ジヘプチル−1,4−フェニレン)のようなポリ(パラ−フェニレン)及びその誘導体;ジアルコキシ置換PPV及びシアノ置換PPVのようなポリ(p−フェニレンビニレン)(「PPV」)及びその誘導体;ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(4,4’−ジアルキル−2,2’−ビチオフェン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)のようなポリチオフェン及びその誘導体;ポリ(ピリジンビニレン)及びその誘導体;ポリキノクサリン及びその誘導体;ポリキノリン及びその誘導体(poly(9,9-dihexylfluorene), poly(dioctylfluorene) or poly{9,9-bis(3,6-dioxaheptyl)-fluorene-2,7-diyl}; poly(para-phenylene) and its derivatives such as poly(2-decyloxy-1,4-phenylene) or poly(2,5-diheptyl-1,4-phenylene); poly(p-phenylene vinylene) (“PPV”) and its derivatives such as dialkoxy-substituted PPV and cyano-substituted PPV; polythiophene and its derivatives such as poly(3-alkylthiophene), poly(4,4’-dialkyl-2,2’-bithiophene), poly(2,5-thienylene vinylene); poly(pyridine vinylene) and its derivatives; polyquinoxaline and its derivatives; and polyquinoline and its derivatives)を含む。これらのポリマー又はこれらのポリマー及び他のポリマーの1つ又はそれ以上に基づくコポリマーの混合物を用いて発光の色を調整することができる。
【0044】
他の部類の適切な発光ポリマー材料は、ポリシランである。典型的には、ポリシランは、種々のアルキル及び/又はアリール側基で置換された直鎖ケイ素骨格ポリマーである。これらは、ポリマー主鎖に沿って非局在σ共役電子を有する準一次元材料である。ポリシランの例には、ポリ(ジ−n−ブチルシラン)、ポリ(ジ−n−ペンチルシラン)、ポリ(ジ−n−ヘキシルシラン)、ポリ(メチルフェニルシラン)、及びポリ{ビス(p−ブチルフェニル)シラン}(poly(di-n-butylsilane), poly(di-n-pentylsilane), poly(di-n-hexylsilane), poly(methylphenylsilane), and poly{bis(p-butylphenyl)silane})が含まれる。
【0045】
また、多数の芳香族単位で作られた分子量が例えば約5000より少ない有機材料も発光材料として利用可能である場合が多い。このような材料の例は、1,3,5−トリス{n−(4−ジフェニルアミノフェニル)フェニルアミノ}ベンゼンである。また、有機発光材料は、フェニルアントラセン、テトラアリールエテン、クマリン、ルブレン、テトラフェニルブタジエン、アントラセン、ペリレン、コロネン、又はこれらの誘導体(phenylanthracene, tetraarylethene, coumarin, rubrene, tetraphenylbutadiene, anthracene, perylene, coronene, or their derivatives)などの低分子量有機分子から調製することもできる。他の適切な材料は、アルミニウムアセチルアセトナト、ガリウムアセチルアセトナト、インジウムアセチルアセトナト、アルミニウム−(ピコリルメチルケトン)−ビス{2,6−ジ(t−ブチル)フェノキシド}、スカンジウム−(4−メトキシ−ピコリルメチルケトン)−ビス(アセチルアセトナト)、及びこれらの混合物(aluminum acetylacetonate, gallium acetylacetonate, indium acetylacetonate, aluminum-(picolylmethylketone)-bis{2,6-di(t-butyl)phenoxide}, scandium-(4-methoxy-picolylmethylketone)-bis(acetylacetonate), and mixtures thereof)などの低分子量金属有機錯体である。他の有機放射材料には、8−ヒドロキシキノリンの有機金属錯体から成る群から選択される材料が含まれる。
【0046】
使用することができるLEPポリマー溶媒の非制限的な実施例には、芳香族化合物、キシレン、トルエン、THF、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等、及びこれらの組み合わせ(aromatics, xylenes, toluene, THF, chlorobenzene, dichlorobenzene, and the like, and combinations thereof)が含まれる。
【0047】
正孔注入促進材料の非制限的な実施例は、限定ではないが、3,4,9,10−ペリレンテトラ−カルボン酸二無水物、ビス(1,2,5−チアジアゾロ)−p−キノビス(1,3−ジチオール)等(3,4,9,10-perylenetetra-carboxylic dianhydride, bis(1,2,5-thiadiazolo)-p-quinobis(1,3-dithiole), and the like)のようなアリーレンベースの化合物である。
【0048】
正孔輸送材料の非制限的な実施例には、トリアリールジアミン、テトラフェニルジアミン、芳香族三級アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ポリチオフェン等(triaryldiamine, tetraphenyldiamine, aromatic tertiary amines, hydrazone derivatives, carbazole derivatives, triazole derivatives, imidazole derivatives, oxadiazole derivatives having an amino group, polythiophenes, and the like)が含まれる。
【0049】
電子注入及び輸送促進材料に適する材料には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノリン誘導体、キノクサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等のような金属有機錯体(tris(8-quinolinolato)aluminum, oxadiazole derivatives, perylene derivatives, pyridine derivatives, pyrimidine derivatives, quinoline derivatives, quinoxaline derivatives, diphenylquinone derivatives, nitro-substituted fluorene derivatives, and the like)が含まれるが、これに限定されない。
【0050】
正孔注入及び輸送材料の非制限的な例には、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)、ポリアニリン等(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) (“PEDOT”), polyaniline, and the like)のような有機ポリマーが含まれるが、これに限定されない。
【0051】
正孔障壁層に適切な材料には、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、バソクプロイン(bathocuproin)(「BCP」)、ビス(2−メチル−8−キノリナト)トリフェニルシラノレートアルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェノレートアルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリナト)4−フェニルフェノレートアルミニウム(III)等(poly(N-vinyl carbazole), bathocurpoine ("BCP"), bis(2-methyl-8-quinolinato)triphenylsilanolate aluminum (III), bis(2-methyl-8-quinolinato)4-phenolate aluminum (III), bis(2-methyl-8-quinolinato)4-phenylphenolate aluminum (III), and the like)が含まれる。
【0052】
電気活性素子に適切なカソード層材料には、通常、仕事関数値が低い材料が含まれる。カソード材料の非制限的な実施例には、限定ではないが、K、Li、Na、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、Au、In、Sn、Zn、Zr、Sc、Y、Mn、Pb、ランタニド系元素、これらの合金、特にAg−Mg合金、Al−Li合金、In−Mg合金、Al−Ca合金、及びLi−Al合金、及びこれらの混合物(K, Li, Na, Mg, Ca, Sr, Ba, Al, Ag, Au, In, Sn, Zn, Zr, Sc, Y, Mn, Pb, elements of the lanthanide series, alloys thereof, particularly Ag-Mg alloy, Al-Li alloy, In-Mg alloy, Al-Ca alloy, and Li-Al alloy, and mixtures thereof)などといった材料を含む。カソード材料の他の実施例には、アルカリ金属フッ化物、又はアルカリ土類フッ化物、或いはこうしたフッ化物の混合物(alkali metal fluorides, or alkaline earth fluorides, or mixtures of such fluorides)を含むことができる。また、インジウムスズ酸化物、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、インジウム亜鉛酸化物、亜鉛インジウムスズ酸化物、酸化アンチモン、炭素ナノチューブ、及びこれらの混合物(indium tin oxide, tin oxide, indium oxide, zinc oxide, indium zinc oxide, zinc indium tin oxide, antimony oxide, carbon nanotubes, and mixtures thereof)などの他のカソード材料も適切である。或いは、カソードを2つの層で作り、電子注入を促進することができる。例示的な実施例には、LiF又はNaFの何れかの内側層に続いてアルミニウム又は銀の外側層、或いはカルシウムの内側層に続いてアルミニウム又は銀の外側層が含まれるが、これに限定されない。
【0053】
電気活性素子に適切なアノード材料には、通常、仕事関数値の高いものを含む。アノード材料の例示的な実施例には、限定ではないが、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、インジウム亜鉛酸化物、ニッケル、金、及びこれらの混合物(indium tin oxide (ITO), tin oxide, indium oxide, zinc oxide, indium zinc oxide, nickel, gold, and mixtures thereof)を含む。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、式(I)
【0055】
【化11】

【0056】
(式中、各Rは、別個にアルキル、アリール、ハロゲン、シアノ、アルコキシド、カルボキシレート、ヒドロキシ、又は類似の置換基、各「x」は、別個に0から芳香環上で置換することができる位置の数までの値、各Rは、別個にC〜C16アルキル基又はアリール基、各Rは、別個にC〜C16アルキル基である)の9,9−2置換フルオレニル化合物を含む。式(I)における二重結合は、特定の幾何学的配置で示されているが、この2つの二重結合の何れの幾何学的配置に関しても限定されないことを理解されたい。2つの二重結合の各々に関する幾何学的配置は、別個にシス又はトランスとすることができる。幾つかの特定の実施形態では、xはゼロ、各Rは同じであり且つC〜C16アルキル基であり、各Rは同じである。他の特定の実施形態では、xはゼロ、各Rは同じであり且つメチル、エチル、及びn−プロピル(methyl, ethyl, and n-propyl)から成る群から選択され、各Rは同じであり且つメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、メチルペンチル、n−ヘキシル、及びイソヘキシル(methyl, ethyl, n-propyl, iso-propyl, n-butyl, sec-butyl, n-pentyl, iso-pentyl, methylpentyl, n-hexyl, and iso-hexyl)から成る群から選択される。
【0057】
別の実施形態では、本発明は、式(I)の9,9−2置換フルオレニル化合物を作る方法を含む。例示的な方法の1つでは、式(II)の9,9−非置換フルオレニル化合物は、第1の段階において、双極子非プロトン性溶媒中の反応条件下で塩基及び式(III)に示すような置換アルキン支持置換可能基と接触させる。
【0058】
【化12】

【0059】
【化13】

【0060】
式中、R、x、及びRは、上記で定義した通りであり、Zは置換可能基である。幾つかの実施形態では、Zは、ハロゲン化物、臭化物、及び塩化物から成る群から選択される。例示的な双極子非プロトン性溶媒には、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等が含まれるが、これに限定されない。例示的な方法では、式(II)の9,9−非置換フルオレニル化合物は、第1の段階において、非極性溶媒中の反応条件下で塩基、相間移動触媒、及び式(III)に示される置換可能基を支持する置換アルキンに接触する。例示的な非極性溶媒には、限定ではないが、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等が含まれる。反応条件は、温度、濃度、時間、及び所望の化合物を所望の収量で生成するのに適切な同様の変数に関する有効な値を含む。任意の有効な塩基を用いることができる。幾つかの実施形態では、有効な塩基には、水酸化ナトリウム、通常は、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ金属水酸化物が含まれる。任意の有効な相間移動触媒を用いることができる。幾つかの実施形態では、有効な相間移動触媒には、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物のような第4級アンモニウム塩を含む。相間移動触媒の量は、当業者により必要以上に実験することなく容易に決定することができる。塩基及びアルキニル化合物(III)の両方の量は、通常は、9,9−非置換フルオレニル化合物の量に関連して各々の少なくとも2当量である。
【0061】
第1の段階の生成物は、式(IV)
【0062】
【化14】

【0063】
(式中、R、x、及びRは、上記で定義した通り)の9,9−ビス(アルキニル)フルオレニル化合物である。式(IV)の9,9−ビス(アルキニル)フルオレニル化合物は、段階1の反応から単離し、任意の有効な方法を用いて精製することもでき、所望であれば、単離の有無に関わりなく未精製の形態で用いることもできる。
【0064】
例示的な方法の典型的な第2の段階では、式(IV)の9,9−ビス(アルキニル)フルオレニル化合物を有効なヒドロシリル化触媒の存在下で有効なヒドロシリル化剤を用いてヒドロシリル化する。典型的な有効なヒドロシリル化剤は、−Si−H成分を含み、多くの実施形態では、式(RO)−Si−H(式中、Rは上記で定義した通り)である。有効なヒドロシリル化触媒は、当技術分野では公知であり、典型的には、プラチナなどの周期表の8、9、又は10族の金属を含む。ヒドロシリル化反応においては、任意選択的に有効な溶媒を用いることができる。特定の実施形態では、ヒドロシリル化反応は、溶媒を存在させずに行う。式(I)の望ましい9,9−2置換フルオレニル化合物は、段階2の反応から単離し、任意の有効な方法を用いて精製することもでき、所望であれば、単離の有無に関係なく未精製の形態で用いることもできる。
【0065】
更に詳細には説明しないが、当業者であれば、本明細書の説明を用いて本発明を最大限に利用することができると考えられる。以下の実施例は、請求項に記載の本発明を当業者が実施する際の追加の指針を提供するために挙げたものである。ここに挙げた実施例は、本出願の教示に役立つ研究の典型的な例証に過ぎない。従って、これらの実施例は、どのような意味においても、添付の請求項で定義される本発明を限定するものではない。
【0066】
以下の実施例では、アノード基材(18)は、ポリ(エチレンテレフタラート)の0.18ミリメートル厚さのシート上に導電インジウムスズ酸化物(ITO)の薄膜を含む。カソード基材(12)は、ポリ(エチレンテレフタラート)の0.18ミリメートル厚さのシート上にアルミニウム薄膜を含む。
[実施例1]
図1の実施形態に示すこの実施例は、電気活性素子の2つの電気活性有機層のうちの少なくとも1つを接着促進剤で表面処理することにより、該2つの層間の接着性が改善されることを実証している。PEDOT−PSSポリマー(水中に2.6%固体)を含む正孔輸送層(16)をアノード基材(18)上に3000rpmでスピンコーティングし、110℃で焼成した。PEDOT−PSS層に表面処理を施し、後続の層への接着性を改善した。詳細には、式(I)(式中、xはゼロ、R及びRが両方ともエチル)の9,9−2置換フルオレニル化合物(p−キシレン中に約0.1%固体)を含む溶液を速度3000rpmでPEDOT−PSS層の表面及び新しいアノード複合体上にスピンコーティングして110℃で焼成した。American Dye Source 329(ADS329)を含む発光ポリマー(LEP)材料(14)をカソード基材(12)上にスピンコーティングし、110℃で焼成した。アノード複合体及びカソード複合体を重ね、図1に示すように、150℃、速度1メートル/分でロールラミネータを通して誘導した。組み立てた素子を、アノード及びカソード部に7ボルトを印加することにより作動させ、電流フローの測定値を得た。輝度及び電流を測定し、PEDOT−PSS表面処理を行うことなく構成された対照素子と比較した。このデータは、本発明の素子の電流フローが比較素子に匹敵すること、或いはより高いことを示した。LEP層とPEDOT−PSS層との間の構造的接着の程度は、ラミネート層を引き離すことにより評価した。表面処理を施さずに積層された複合体層の同じセットと比較すると、LEP材料からPEDOT−PSS層への移動が30%増大しており、これは、本発明の方法により良好な構造的接着が形成されたことを示していることが分かる。
[実施例2]
この実施例は、図2の実施形態に示すように、電気活性有機層と電気活性素子の金属層のうちの少なくとも1つを接着促進剤で表面処理することにより、この2つの層間の接着が改善されることを実証している。PEDOT−PSSポリマー(水中2.6%固体)を含む正孔輸送層(16)を、3000rpmでアノード基材(18)上にスピンコーティングし、110℃で焼成した。American Dye Source 329(ADS329)を含む発光ポリマー(LEP)材料(14)をアノード複合体のPEDOT−PSS表面上にスピンコーティングし、その後、該複合体を110℃で再び焼成した。カソード表面(12)に表面処理を施し、次の層への接着性を改善した。詳細には、式(I)(式中、xはゼロ、R及びRは両方ともエチル)の9,9−2置換フルオレニル化合物を含む溶液(p−キシレン中に約0.1%固体)を速度3000rpmでカソードのアルミニウム表面上にスピンコーティングし、新しいカソード複合体を110℃で焼成した。アノード複合体及びカソード複合体を重ね、図2に示すように、150℃、速度1メートル/分でロールラミネータを通して誘導した。アノード及びカソード部に7ボルト印加することにより組み立てた素子を作動させ、電流フローの測定値を得た。輝度及び電流を測定し、カソード表面処理を行わずに構成された対照素子と比較した。このデータにより、本発明の素子の電流フローが比較素子に匹敵すること、或いは改善されたことが示された。LEPとカソード層との間の構造的接着の程度は、ラミネート層を引き離すことにより評価した。表面処理を施さずに積層された複合体層の同じセットと比較すると、LEP材料のカソード層への移動が50%増大しており、これは、本発明の方法により良好な構造的接着が形成されたことを示していることが分かる。
[実施例3]
この実施例は、電気活性有機層と電気活性素子の金属層のうちの少なくとも1つを接着促進剤で表面処理することにより2つの層間の接着が改善されることを実証している。表面処理をカソード表面に施し、次の層への接着性を改善させる。4つの異なる接着促進剤:(1)約5〜10wt%のチタンテトラブトキシド及び約10〜30wt%のテトラエチルオルトシリケート(脂肪族炭化水素溶媒中約7%固体レベル)を含む市販の下塗り剤(GE Siliconesから入手可能なSS4155型)をイソプロパノールで希釈したもの(SS4155が1に対してイソプロパノールが10の割合)、(2)17ミリグラム(mg)の1:1チタンテトラプロポキシド/テトラエチルオルトシリケートを100ミリリットル(ml)のイソプロパノールに入れたもの、(3)SS4155が1に対してイソプロパノールが100の割合で希釈したもの、及び(4)100mgの1:1チタンテトラプロポキシド/テトラエチルオルトシリケートを100mlイソプロパノールに入れたものを調べた。別の実験で、各接着促進剤溶液を速度4000rpmでカソード基材上にスピンコーティングし、各個々の組立体を100℃で10分間ホットプレートに載せて加熱する。各場合において、下塗りしたカソード表面上にAmerican Dye Source 329(ADS329)を含むLEP層を重ね、新しい組立体を150℃、速度1メートル/分でロールラミネータを通して誘導する。ケルビンプローブを用いて接触電位を測定し、カソード基材に表面処理をしていない対照素子の接触電位と比較する。各接着促進剤の場合では、データは、本発明の素子の電流フローが比較素子に匹敵すること、或いはより高いことを示している。LEPとカソード層との間の構造的接着の程度は、ラミネート層を引き離すことにより評価される。表面処理を施さずに積層された複合体層の同じセットと比較すると、LEP材料のカソード層への移動が増大し、これは、本発明の方法により良好な構造的接着が形成されたことを示していることが分かる。
[実施例4]
この実施例は、図2の実施形態に示すように、電気活性有機層と電気活性素子の金属層のうちの少なくとも1つを接着促進剤で表面処理することにより、2つの層間の接着が改善されることを実証している。PEDOT−PSSポリマーを含む正孔輸送層(16)(水中2.6%固体)を3000rpmでアノード基材(18)上にスピンコーティングし、110℃で焼成した。American Dye Source 329(ADS329)を含む発光ポリマー材料(14)を、アノード複合体のPEDOT−PSS表面上にスピンコーティングし、その後、再び該複合体を110℃で焼成した。カソード表面(12)に表面処理を施し、次の層への接着性を改善させる。詳細には、式(V)の1−(1−ナフチル)−2−トリエトキシシリルエタンを含む溶液(p−キシレン中約0.1%固体レベル)を速度4000rpmでカソード(12)のアルミニウム表面上にスピンコーティングし、新しいカソード複合体を110°Cで焼成した。
【0067】
【化15】

【0068】
アノード複合体及びカソード複合体を重ね、150℃、速度1メートル/分でロールラミネータを通して誘導した。アノード及びカソード部に7ボルト印加することにより組み立てた素子を作動させ、電流フローの測定値を得た。輝度及び電流を測定し、表面処理を行わずに構成された対照素子と比較した。このデータにより、本発明の素子の電流フローが、比較素子に対して匹敵すること、或いは改善されたことが示された。LEPとカソード層との間の構造的接着の程度は、ラミネート層を引き離すことにより評価した。表面処理を施さずに積層された複合層の同じセットと比較すると、LEP材料のカソード表面への移動が20%増大しており、これは、本発明の方法により良好な構造的接着が形成されたことを示していることが分かる。
[実施例5]
この実施例は、図2の実施形態に示すように、電気活性有機層と電気活性素子の金属層のうちの少なくとも1つを接着促進剤で表面処理することにより、2つの層間の接着が改善されることを実証している。PEDOT−PSSポリマーを含む正孔輸送層(16)(水中2.6%固体)を3000rpmでアノード基材(18)上にスピンコーティングし、110℃で焼成した。American Dye Source 329(ADS329)を含む発光ポリマー材料(14)をアノード複合体のPEDOT−PSS表面上にスピンコーティングし、その後、該複合体を110℃で再び焼成した。カソード表面(12)に表面処理を施し、次の層への接着性を改善した。詳細には、スチレン及びビニルナフタレン(スチレン:ビニルナフタレンが約1:1で、Mwが約56000、Mnが約22000であり、p−キシレン中約0.1%固体レベルを用いる)由来のコポリマーを含む溶液を速度4000rpmでカソード(12)のアルミニウム表面上にスピンコーティングし、新しいカソード複合体を110℃で焼成した。アノード複合体及びカソード複合体を重ねて150℃、速度1メートル/分でロールラミネータを通して誘導した。組み立てた素子を、アノード及びカソード部に7ボルトを印加することにより作動させ、電流フローの測定値を得た。輝度及び電流を測定し、表面処理を行わずに構成された対照素子と比較した。このデータにより、本発明の素子の電流フローが比較素子に匹敵すること、或いは改善されたことが示された。LEPとカソード層との間の構造的接着の程度は、ラミネート層を引き離すことにより評価した。表面処理を施さずに積層された複合層の同じセットと比較して、LEP材料のカソード基材への移動は20%増大しており、これは、本発明の方法により良好な構造的接着が形成されたことを示していることが分かる。
[実施例6]
この実施例は、電気活性有機層と電気活性素子の金属層のうちの少なくとも1つを接着促進剤で表面処理することにより、2つの層間の接着が改善されることを実証している。PEDOT−PSSポリマー(水中2.6%固体)を含む正孔輸送層(16)を3000rpmでアノード基材(18)上にスピンコーティングし、110℃で焼成した。カソード表面(12)に表面処理を施し、次の層への接着性を改善させた。詳細には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含む溶液(p−キシレン中に約0.1%固体レベル)を速度4000rpmでカソード上にスピンコーティングし、110℃で焼成した。アノード複合体及びカソード基材を重ね、150℃、速度1メートル/分でロールラミネータを通して誘導した。組み立てた素子を、アノード及びカソード部に7ボルトを印加することにより作動させ、電流フローの測定値を得た。輝度及び電流を測定し、表面処理を行わずに構成された対照素子と比較した。このデータは、本発明の素子の電流フローが比較素子に匹敵すること、或いは改善されたことを示した。PEDOTとカソード層との間の構造的接着の程度は、ラミネート層を引き離すことにより評価した。表面処理を行わずに積層された複合層の同じセットと比較して、PEDOT−PSS材料のカソード層への移動は50%増大しており、これは、本発明の方法により良好な構造的接着が形成されたことを示していることが分かる。
[実施例7]
この実施例は、電気活性有機層と電気活性素子の金属層のうちの少なくとも1つを接着促進剤で表面処理することにより、2つの層間の接着が改善されることを実証している。PEDOT−PSSポリマーを含む正孔輸送層(16)(水中2.6%固体)を3000rpmでアノード基材(18)上にスピンコーティングし、110℃で焼成した。カソード表面(12)に表面処理を施し、次の層への接着性を改善させた。詳細には、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを含む溶液(p−キシレン中約0.1%固体レベル)を速度4000rpmでカソード上にスピンコーティングし、110℃で焼成した。アノード複合体及びカソード基材を重ね、150℃、速度1メートル/分でロールラミネータを通して誘導した。組み立てた素子は、アノード及びカソード部に7ボルトを印加することにより作動させ、電流フローの測定値を得た。輝度及び電流を測定し、表面処理を施さずに構成された対照素子と比較した。このデータは、本発明の素子の電流フローが比較素子に匹敵すること、或いは改善されたことを示した。PEDOTとカソード層との間の構造的接着の程度は、ラミネート層を引き離すことにより評価した。表面処理を行わずに積層された複合層の同じセットと比較すると、PEDOT−PSS材料のカソード基材への移動が50%増大しており、これは、本発明の方法が良好な構造的接着を形成することを示した。
[実施例8]
この実施例は、図3の実施形態に示されるように、接着促進剤の混合物を電気活性有機層と電気活性素子の金属層のうちの少なくとも1つの材料と共堆積することにより2つの層間の接着が改善されることを実証している。PEDOT−PSSポリマーを含む正孔輸送層(16)(水中約2.6%固体)を3000rpmでアノード基材(18)上にスピンコーティングし、110℃で焼成する。American Dye Source 329(ADS329)を含む発光ポリマー(LEP)材料(14)の約1.7%固体と、式(I)(式中、xはゼロ、R1及びR2が両方ともエチル)の9,9−2置換フルオレニル化合物を含む接着促進剤の約0.01−10%固体とを含むp−キシレン中の混合物を速度3000rpmでカソード基材(12)の表面上にスピンコーティングしてカソード複合体を形成し、このカソード複合体を110℃で焼成する。混合接着促進剤−LEP層(140)でコーティングされたカソード(12)が生成される。アノード複合体及びカソード複合体を重ね、図3に示すように150℃、速度1メートル/分でロールラミネータを通して誘導する。7ボルトをアノード及びカソード部に印加することにより組み立てた素子を作動させ、電流フロー値の測定値を得る。輝度及び電流を測定し、接着促進剤を付加することなく構成された対照素子と比較する。このデータは、本発明の素子の電流フローが比較素子に匹敵すること、或いは改善されたことを示す。LEPとカソード層との間の構造的接着の程度は、ラミネート層を引き離すことにより評価される。本発明の素子は、接着促進剤化合物を有さない対照素子と比較して、LEPとカソード層との間の接着性が改善されていることが示される。
[実施例9]
この実施例は、図4の実施形態に示すように、接着促進剤と電気活性有機層及び電気活性素子の金属層のうちの少なくとも1つの材料との混合物を共堆積することにより、2つの層間の接着性が改善されることを実証している。PEDOT−PSSポリマーを含む正孔輸送層(16)(水中約2.6%固体)を3000rpmでアノード基材(18)上にスピンコーティングし、110℃で焼成してアノード複合体を形成する。American Dye Source 329(ADS329)を含む発光ポリマー(LEP)材料(14)のキシレン溶液の約1.7%固体及び式(I)(式中、xはゼロ、R及びRは両方ともエチル)の9,9−2置換フルオレニル化合物を含む接着促進剤の約0.01〜10%固体のキシレン中の混合物を速度3000rpmでアノード複合体のPEDOT−PSS層の表面にスピンコーティングし、その後、複合体を再び110℃で焼成して、新しいノード複合体を形成する。混合接着促進剤−LEP層(140)でコーティングされたアノード複合体が生成される。アノード複合体及びカソード複合体を重ね、図4に示すように150℃、速度1メートル/分でロールラミネータを通して誘導する。7ボルトをアノード及びカソード部に印加することにより組み立てた素子を作動させ、電流フロー値の測定値を得る。輝度及び電流を測定し、接着促進剤を付加せずに構成された対照素子と比較する。このデータは、本発明の素子の電流フローが比較素子に匹敵すること、或いは改善されたことを示す。LEPとカソード層との間の構造的接着の程度は、ラミネート層を引き離すことにより評価される。本発明の素子は、接着促進剤化合物を含まない対照素子と比較してLEPとカソード層との間の接着が改善されることが示される。
[実施例10]
式(IV)の9,9−ビス(アルキニル)フルオレニル化合物の調製:フルオレンを反応条件下、ジメチルスルホキシド溶媒中で1−ブロモ−2−ペンチン及び50%水酸化ナトリウム水溶液に接触させる。プロトン磁気共鳴分光法、炭素−13核磁気共鳴分光法、及び質量分析法による特性決定により所望の生成物が得られることが示される。
[実施例11]
式(IV)の9,9−ビス(アルキニル)フルオレニル化合物の調製:フルオレンを反応条件下、トルエン溶媒中で1−ブロモ−2−ペンチン、50%水酸化ナトリウム水溶液、及びテトラブチルアンモニウムブロミドに接触させる。プロトン磁気共鳴分光法、炭素−13核磁気共鳴分光法、及び質量分析法による特性決定により、所望の生成物が得られたことが示される。
[実施例12]
式(I)の9,9−ビス(アルキニル)フルオレニル化合物の調製:式(IV)(式中、xはゼロ、Rはエチル)の9,9−ビス(アルキニル)フルオレニル化合物を反応条件下で溶媒を存在させずに過剰なトリエトキシシラン及びプラチナ触媒に接触させる。その後、過剰なシランを除去し、プロトン磁気共鳴分光法、炭素−13核磁気共鳴分光法、及び質量分析法による特性決定により、所望の生成物が得られたことが示される。
【0069】
上述の本発明の実施形態は、限定ではないが、多層電気活性素子の機械的安定性を改善することができる新規な組成物及び方法を含む多くの利点を有する。
【0070】
本発明を典型的な実施形態において例証し説明してきたが、本発明の精神からどのようにも逸脱することなく、種々の変更及び置換を行うことができるので、本発明は、ここに示す詳細に限定されるものではない。従って、当業者であれば、所定の実験だけを用いて、本明細書に開示された本発明の別の変更形態及び均等物を想定することができ、全てのこのような変更形態及び均等物は、請求項で定義される本発明の精神及び範囲内にあると考えられる。本明細書で挙げた全ての特許、特許出願、及び出版論文は、引用により本明細書に組み込まれる。また、本願の特許請求の範囲に記載した事項は、明細書に組み込まれ、明細書の記載事項の一部となる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】少なくとも1つの層を接着促進剤で表面処理することにより電気活性素子の2つの電気活性有機層間の接着を促進することを示す本発明の実施形態の概略図。
【図2】少なくとも1つの層を接着促進剤で表面処理することにより電気活性有機層と電気活性素子の金属電極層との間の接着を促進することを示す本発明の別の実施形態の概略図。
【図3】層の少なくとも1つを接着促進剤と共堆積することにより、電気活性素子の2つの電気活性有機層間の接着を促進することを示す本発明の別の実施形態の概略図。
【図4】接着促進剤を電気活性有機層と共堆積することにより電気活性有機層と電気活性素子の金属電極層との間の接着を促進することを示す本発明の更に別の実施形態の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気活性素子の第1の層を製造する方法であって、
(i)少なくとも1つの接着促進剤材料と少なくとも1つの電気活性材料とを混合することにより第1の層組成物を調製する段階と、
(ii)前記組成物を前記電気活性素子の第2の電気活性層上に堆積して前記第1の層を形成する段階と、
(iii)任意選択的に、前記第2の層に対向する前記第1の層の表面上に電気活性材料の第3の層を更に堆積する段階と、
を含み、
前記第1の層の組成物により、前記第1の層と前記第2の層との間、又は前記第1の層と前記第3の層との間、或いは前記第1の層と前記第2の層及び前記第3の層の両方との間の接着を可能にする方法。
【請求項2】
前記接着促進剤材料が、金属化合物、9,9−2置換フルオレニル化合物、α−(1−ナフチル)−ω−トリアルコキシアルカン、スチレン及びビニルナフタレンのコポリマー、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びグリシドキシアルキルトリアルコキシシランから成る群から選択される少なくとも1つの化合物を含み、前記金属化合物が、アセトキシ、アセチルアセトナト、アクリロキシ、アルコキシ、アミノプロピル、カルビノール、カルボキシレート、シラノール、シロキシ、亜リン酸塩、リン酸塩、グリシドキシ、メルカプトプロピル、ハロゲン化物、塩化物、臭化物及び酸化物から成る群から選択される少なくとも1つの成分を更に含み、前記金属が、シリコン、スズ、ジルコニウム,ハフニウム、アルミニウム、アンチモン及びチタンから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気活性材料が、アノード材料、カソード材料、有機発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、正孔障壁材料、電子注入材料、電子輸送材料及びこれらの組み合わせから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1の少なくとも1つの接着促進剤材料と少なくとも1つの電気活性材料とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1の方法により製造される前記第1の層。
【請求項6】
前記素子が、発光素子、有機発光素子、光起電デバイス、光導体、光検出器、液晶ディスプレイ、有機トランジスタ又は分子電子素子部品又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項5の層を含む電気活性素子。
【請求項7】
少なくとも1つの接着促進剤材料と1つの電気活性有機材料との均質な混合物を含む電気活性層。
【請求項8】
少なくとも1つの接着促進剤材料と1つの電気活性有機材料との均質な混合物を含む層を含む電気活性素子。
【請求項9】
電気活性素子の層間の接着性を改善するための方法であって、
(i)少なくとも1つの接着促進剤材料を含む表面処理組成物を第1の電気活性層の少なくとも1つの表面上に堆積する段階と、
(ii)前記接着促進剤を含む前記表面処理組成物の表面上に第2の電気活性層を堆積する段階と、
を含み、
前記組成物により、前記電気活性素子の前記第1の層と前記第2の層との間の接着を可能にする方法。
【請求項10】
前記接着促進剤材料が、金属化合物、9,9−2置換フルオレニル化合物、α−(1−ナフチル)−ω−トリアルコキシアルカン,スチレン及びビニルナフタレンのコポリマー、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン及びグリシドキシアルキルトリアルコキシシランから成る群から選択される少なくとも1つの化合物を含み、前記金属化合物が、アセトキシ、アセチルアセトナト、アクリロキシ、アルコキシ、アミノプロピル、カルビノール、カルボキシレート、シラノール、シロキシ、亜リン酸塩、リン酸塩、グリシドキシ、メルカプトプロピル、ハロゲン化物、塩化物、臭化物及び酸化物から成る群から選択される少なくとも1つの成分を更に含み、前記金属が、シリコン、スズ、ジルコニウム,ハフニウム、アルミニウム、アンチモン及びチタンから成る群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1又は第2の電気活性層が、アノード材料、カソード材料、有機発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、正孔障壁材料、電子注入材料、電子輸送材料及びこれらの組み合わせから成る群から選択される材料を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項9の方法により製造された前記第1の層。
【請求項13】
前記素子が、発光素子、有機発光素子、光起電デバイス、光導体、光検出器、液晶ディスプレイ、有機トランジスタ又は分子電子素子部品又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項12の層を含む電気活性素子。
【請求項14】
表面処理した電気活性層であって、前記表面処理が、前記電気活性層の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つの接着促進剤材料を含む組成物を含み、前記組成物により、前記層と電気活性素子の他の少なくとも1つの層との間の接着が可能になり、前記接着促進剤材料が、チタンテトラアルコキシドとテトラアルキルオルトシリケートとの混合物、チタンテトラブトキシドとテトラエチルオルトシリケートとの混合物、9,9−2置換フルオレニル化合物、α−(1−ナフチル)−ω−トリアルコキシアルカン、スチレンとビニルナフタレンとのコポリマー、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする電気活性層。
【請求項15】
表面処理した少なくとも1つの電気活性層を含む電気活性素子であって、前記表面処理が、前記電気活性層の少なくとも1つの表面上に少なくとも1つの接着促進剤材料を含む組成物を含み、前記組成物により、前記層と前記電気活性素子の少なくとも1つの他の電気活性層との間の接着が可能になり、前記接着促進剤材料が、チタンテトラアルコキシドとテトラアルキルオルトシリケートとの混合物、チタンテトラブトキシドとテトラエチルオルトシリケートとの混合物、9,9−2置換フルオレニル化合物、α−(1−ナフチル)−ω−トリアルコキシアルカン、スチレンとビニルナフタレンとのコポリマー、メタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びこれらの組み合わせから成る群から選択される少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする電気活性素子。
【請求項16】
(A)アノード層と、(B)カソード層と、(C)接着促進剤及び第1の電気活性有機材料を含む組成物由来の層と、(D)前記第1の電気活性有機材料と異なる電気活性有機材料を含む他の少なくとも1つの層とを含む電気活性素子を製造する方法であって、
(i)互いに異なる第1及び第2の電極層を準備する段階と、
(ii)(a)前記第1の電極層、及び(b)任意選択的に各々が異なる電気活性有機材料を含む1つ又はそれ以上の層を含む第1の複合体構造を形成する段階と、
(iii)(c)前記第2の電極層、及び(d)前記接着促進剤材料と前記第1の電気活性有機材料との均質な混合物を含む層、並びに(e)任意選択的に各々が異なる電気活性有機材料を含む1つ又はそれ以上の層を含む第2の複合体構造を形成する段階と、
(iv)前記第1の複合体構造及び前記第2の複合体構造を積層することにより前記素子を形成する段階と、
を含み、
前記接着促進剤を含む層が、電極層と、前記第1の電気活性有機材料と異なる電気活性有機材料の他の少なくとも1つの層と接触してこれらの間を接着する方法。
【請求項17】
式(I)の9,9−2置換フルオレニル化合物。
【化1】

式中、各Rは、別個にアルキル、アリール、ハロゲン、シアノ、アルコキシド、カルボキシレート、又はヒドロキシであり、各「x」の値は、別個に0から前記芳香環上の置換可能な位置の数まで、各Rは、別個にC〜C16アルキル基又はアリール基、各Rは、別個にC〜C16アルキル基、各二重結合の幾何学的配置は別個にシス又はトランスの何れかである。
【請求項18】
式(IV)の9,9−ビス(アルキニル)フルオレニル化合物。
【化2】

式中、各Rが別個にアルキル、アリール、ハロゲン、シアノ、アルコキシド、カルボキシレート、又はヒドロキシであり、各「x」の値は、別個に0から前記芳香環上の置換可能な位置の数まで、各R2は別個にC〜C16アルキル基である。
【請求項19】
式(I)
【化3】

の9,9−2置換フルオレニル化合物を調製する方法であって、
(i)反応条件下で溶媒中に式(II)
【化4】

の9,9−非置換フルオレニル化合物を塩基及び式(III)
【化5】

(式中、各Rは、別個にアルキル、アリール、ハロゲン、シアノ、アルコキシド、カルボキシレート、又はヒドロキシであり、各「x」の値は、別個に0から前記芳香環上の置換可能な位置の数まで、各Rは、別個にC〜C16アルキル基、Zは置換可能基)に示す置換可能基を有する置換アルキンと接触させる段階と、
(ii)反応条件下で前記段階(i)の反応生成物をヒドロシリル化触媒及び式(RO)−Si−H(式中、各Rは、別個にC〜C16アルキル基又はアリール基)のヒドロシリル化剤に接触させる段階と、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−169506(P2006−169506A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296042(P2005−296042)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】