説明

接着剤組成物、それを用いたカバーレイフィルムおよび接着剤シート

【課題】高い接着力および半田耐熱性を維持しつつ難燃性に優れた接着剤組成物、それを用いたカバーレイフィルムおよび接着剤シートを提供すること。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂、(B)キサンテン型エポキシ樹脂および(C)硬化剤を含有することを特徴とする接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤組成物に関する。より詳しくは、非ハロゲン系難燃性接着剤組成物、それを用いたカバーレイフィルムおよび接着剤シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器は小型化、軽量化、省スペース化の要求に対応するため、薄く軽量でしかも折り曲げ可能なフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuits、以下FPCということがある)が広く一般に用いられている。FPCは、銅張り積層板(以下CCLということがある)、カバーレイフィルム(以下CLということがある)で構成される。CCLは所望の銅箔配線を形成して回路基板として用いられ、CLはその銅箔配線を保護する目的で積層される。また、リジット基板等への接続のために、FPCにコネクターを形成する場合がある。コネクターには、差し込み性、電気接続性を確保するために撓まない程度の強度が必要とされ、FPCに金属板あるいは厚手のプラスチックフィルム等を用いた補強板を、接着剤シートを用いて貼り合せることが一般的である。柔軟性に富み、優れた屈曲性を有するFPC材料は、HDD、CD、DVD、携帯電話、各種電子機器のヒンジ部等、可動部分の基板として好適である。
【0003】
FPC材料をはじめとする電気・電子機器用途に用いられる接着剤組成物には、高い難燃性が求められる。従来、臭素化エポキシ樹脂などのハロゲン系有機化合物が難燃剤として用いられてきた。しかしながら、ハロゲン系有機化合物を含む場合、接着後の時間経過に伴い、腐食性を有するハロゲン化水素(臭化水素)ガスや、毒性の強いポリブロムジベンゾフランおよびポリブロムジベンゾジオキシンを発生する場合があることから、近年、その使用が抑制されつつある。このような理由から、ハロゲンフリーの接着剤組成物が検討されている。
【0004】
例えば、リン含有エポキシ樹脂を含む難燃性接着剤組成物(例えば、特許文献1参照)や、リン含有エポキシ樹脂とホスファゼン化合物を含む難燃性接着剤組成物(例えば、特許文献2参照)が開示されている。しかしながら、一般的にリン含有エポキシ樹脂のリン含有率は数パーセント程度であり、UL94V−0グレードなどの高い難燃性を達成するためには、リン含有エポキシ樹脂を多量に含むことが必要となる。このため、接着力や半田耐熱性との両立が困難であった。また、ホスファゼン化合物などの添加型のリン系難燃剤を用いる場合にも、高い難燃性を達成するためには多量にリン系難燃剤を多量に含むことが必要となる。このため、樹脂成分が相対的に減少し、接着力や半田耐熱性との両立が困難であった。
【0005】
また、ハロゲンおよびリンを含有しない難燃性接着剤組成物として、アクリロニトリルブタジエン変性エポキシ樹脂、硬化剤、エラストマーおよび無機充填剤を含む接着剤組成物(例えば、特許文献3参照)が提案されている。しかしながら、この方法を用いても難燃性は不十分であった。
【特許文献1】特開2002−020715号公報
【特許文献2】特開2005−2294号公報
【特許文献3】特開2007−45882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い接着力および半田耐熱性を維持しつつ難燃性に優れた接着剤組成物、それを用いたカバーレイフィルムおよび接着剤シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)熱可塑性樹脂、(B)キサンテン型エポキシ樹脂および(C)硬化剤を含有する接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、高い接着力、半田耐熱性および難燃性を有する接着剤組成物、カバーレイフィルム、および接着剤シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の詳細について説明する。本発明の接着剤組成物は、(A)熱可塑性樹脂、(B)キサンテン型エポキシ樹脂および(C)硬化剤を含有する。(A)熱可塑性樹脂は、接着性、可とう性、熱応力の緩和、低吸水性による絶縁性の向上等の機能を有する。(B)キサンテン型エポキシ樹脂は、(C)硬化剤と反応することにより、耐熱性、高温での絶縁性、耐薬品性、接着剤層の強度等の物性バランスを実現することができる。さらに、多環芳香族系骨格の剛直な構造に由来する高い難燃効果が得られる。このため、本発明の接着剤組成物は、接着性および半田耐熱性を高いレベルで維持しつつ、難燃性を向上させることができる。
【0010】
本発明に用いられる(A)熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン−エチレン樹脂(SEBS)、スチレン−ブタジエン樹脂(SBS)アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン等公知のものが例示される。これらを2種以上含有してもよい。ブタジエンを重合成分とする重合体が好適に用いられる。
【0011】
また、これらの熱可塑性樹脂は後述のエポキシ樹脂との反応が可能な官能基を有することが好ましい。具体的には、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、メチロール基、イソシアネート基等が挙げられ、カルボキシル基がより好ましい。これらの官能基によりエポキシ樹脂との結合が強固になり、耐熱性が向上する。
【0012】
ブタジエンを共重合成分とし、かつカルボキシル基を有する共重合体としては、例えば、カルボキシル化NBR(NBR−C)、カルボキシル化SEBS(SEBS−C)およびカルボキシル化SBS(SBS−C)等が挙げられる。NBR−Cとしては、PNR−1H(JSR(株)製)、“ニポール(登録商標)”1072J、“ニポール”DN612、“ニポール”DN631(以上日本ゼオン(株)製)、“ハイカー(登録商標)”CTBN(BFグッドリッチ社製)等が挙げられる。また、SEBS−Cとしては、MX−073(旭化成(株)製)が、SBS−CとしてはD1300X(シェルジャパン(株)製)が例示できる。
【0013】
本発明の接着剤組成物は、(B)キサンテン型エポキシ樹脂を含有する。(B)キサンテン型エポキシ樹脂は、骨格に剛直な多環芳香族のキサンテン構造を有する多官能エポキシ化合物であり、その硬直な骨格により、優れた難燃効果を発揮することができる。本発明に用いられる(B)キサンテン型エポキシ樹脂は、下記式(I)で表される化合物が好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
上記一般式(I)中、R〜Rは同じでも異なってもよく、水素原子または有機基を示す。R〜Rの有機基としてはアルキル基またはアリール基が好ましく、例えばメチル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、9−フルオレニル基などが挙げられる。なかでもメチル基またはフェニル基が好ましい。
【0016】
本発明の接着剤組成物において、(B)キサンテン型エポキシ樹脂の含有量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下が好ましい。30重量部以上であれば、難燃性がより向上する。一方、100重量部以下であれば、接着力をより高いレベルで維持することができる。
【0017】
また、本発明の接着剤組成物は、(B)キサンテン型エポキシ樹脂以外に、汎用の非臭素化エポキシ樹脂を含有してもよい。その種類は特に限定されないが、エポキシ基を分子中に少なくとも2個以上含むものであって、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエンジフェノール等のジグリシジルエーテル、エポキシ化フェノールノボラック、エポキシ化クレゾールノボラック、エポキシ化トリスフェニロールメタン、エポキシ化テトラフェニロールエタン等の脂環式エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、あるいはノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。特に、接着剤層の柔軟性を向上させ、接着力を向上させる上でビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。(B)キサンテン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含有する場合、エポキシ樹脂全体の含有量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して90重量部以上200重量部が好ましい。
【0018】
本発明に用いられる(C)硬化剤は、特に限定されるものではないが、例えば、芳香族ポリアミンである3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4,4’−トリアミノジフェニルスルホン、フェノールノボラック樹脂、ジシアンジアミド、酸無水物などが挙げられる。
【0019】
硬化剤の含有量は、硬化剤の活性水酸基数(Hとする)とエポキシ樹脂のエポキシ基数(Eとする)の比率(H/E)が0.1から1.8の範囲となることが好ましい。ここで、エポキシ樹脂のエポキシ基数とは、キサンテン型エポキシ樹脂のエポキシ基の数を指すが、前述した他のエポキシ樹脂が含まれる場合にはこれも含むものとする。
【0020】
本発明の接着剤組成物は、(D)リン系難燃剤を含有してもよい。リン系難燃剤を含有することによって、難燃性をより向上させることができる。リン系難燃剤としては、特に限定されないが、ホスファゼン化合物、有機リン酸エステル化合物、リン酸エステル金属塩、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドやその誘導体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。中でも、ホスファゼン化合物および/またはリン酸エステル金属塩を含有することが好ましい。ホスファゼン化合物は、リンだけでなく窒素も含有しているために、相乗効果によって難燃性がより高くなる効果がある。リン酸エステル金属塩は、リン含有率が比較的高い上に、分解温度が高いことから、難燃性がより高く、また、加工時の圧力や熱などによるブリードアウト現象が起こり難い。
【0021】
ホスファゼン化合物としては、一般式(II)で表されるシクロホスファゼン化合物が好適に用いられる。
【0022】
【化2】

【0023】
上記一般式(II)中、RおよびRはそれぞれ同じでも異なってもよく、水素原子または有機基を示す。有機基としては、例えばフェノキシ基、アルコキシル基、アミノ基、アリル基などが挙げられる。またnは3〜10の整数である。
【0024】
具体例として、RおよびRがフェノキシ基である、「SPB−100」(大塚化学株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0025】
有機リン酸エステル化合物としては、例えば、トリフェニルホスフェイト、トリクレジルホスフェイト、トリキシレニルホスフェイト、クレジルジフェニルホスフェイト、キシレニルジフェニルホスフェイト、レゾルシノール−ビス−(ジフェニルホスフェイト)、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェイト、トリアリルホスフェイト、縮合リン酸エステル、これらの誘導体などが挙げられる。
【0026】
リン酸エステル金属塩としては、「OP935」(クラリアント株式会社製、商品名)などが挙げられる。
【0027】
(D)リン系難燃剤の含有量は、(A)熱可塑性樹脂、(B)キサンテン型エポキシ樹脂、および他の樹脂を含む場合はこれら樹脂の総量100重量部に対して、2重量部以上80重量部以下が好ましい。2重量部以上であれば、難燃性がより向上する。一方、80重量部以下であれば、接着力および半田耐熱性をより高いレベルで維持することができる。
【0028】
本発明の接着剤組成物は、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体などの三フッ化ホウ素のアミン錯体、2−アルキル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−アルキルイミダゾールなどのイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸などの有機酸などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0029】
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて無機粒子剤を含有してもよい。無機粒子剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カルシウム・アルミネート水和物等の金属水酸化物、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物が挙げられ、これらを2種以上用いてもよい。無機粒子剤の含有量は(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して30〜300重量部が好ましい。
【0030】
また、以上の成分以外に、接着剤組成物の特性を損なわない範囲で酸化防止剤、イオン捕捉剤、窒素系難燃剤(メラミン変性フェノール樹脂等)などの有機、無機成分を含有することは何ら制限されるものではない。
【0031】
本発明の接着剤組成物は、例えば、上記各成分を有機溶剤で溶解した後、有機溶剤を除去することによって得ることができる。有機溶剤は特に限定されないが、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン系極性溶剤が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0032】
本発明のカバーレイフィルムは、絶縁性フィルム、前記接着剤組成物から形成される接着剤層および剥離可能な保護フィルムをこの順に有する。各層の厚みは、例えば、絶縁性フィルム(10〜125μm)/接着剤層(2〜100μm)/剥離可能な保護フィルム(12.5〜125μm)である。
【0033】
絶縁性フィルムとしては、ポリイミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、アラミド、ポリカーボネート、ポリアリレート等のプラスチックフィルムが挙げられる。これらから選ばれる複数のフィルムを積層して用いても良い。また必要に応じて、加水分解、コロナ放電、低温プラズマ、物理的粗面化、易接着コーティング処理等の表面処理を施すことができる。
【0034】
また、剥離可能な保護フィルムとしては、CLの形態を損なうことなく剥離できれば特に限定されないが、例えば、シリコーンあるいはフッ素化合物のコーティング処理を施したポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、およびこれらをラミネートした紙が挙げられる。ここで、本発明において剥離可能とは、接着剤層と保護フィルムの剥離力が200Nm−1以下であることをいう。剥離力は1Nm−1以上が好ましい。
【0035】
次に、本発明のCLの製造方法について説明する。例えば、予め接着剤組成物を有機溶剤で適当な固形分濃度に調整してワニスとし、これをリバースロールコーター、コンマコーター、スリットダイコーター等を用いて絶縁性フィルムの片面側に塗布する。この接着剤付き絶縁性フィルムをインラインドライヤーに通して、50〜200℃で1〜30分間加熱処理して、ワニス中の有機溶剤を除去し、接着剤組成物を半硬化状態とする。さらに接着剤面側に保護フィルムを、温度20〜80℃、圧力1〜5MPaの条件で熱ラミネートする。その後、硬化度を調整するために、必要に応じて熱処理を行い、CLとする。
【0036】
本発明の接着剤シートは、前記接着剤組成物から形成される接着剤層の両面に剥離可能な保護フィルムを有する。各層の厚みは、剥離可能な保護フィルム(12.5〜125μm)/接着剤層(2〜200μm)/剥離可能な保護フィルム(12.5〜125μm)である。保護フィルムとしては、CLにおける保護フィルムとして例示したものを挙げることができる。ここで、本発明において剥離可能とは、接着剤層と保護フィルムの剥離力が200Nm−1以下であることをいう。剥離力は1Nm−1以上が好ましく、3Nm−1以上がより好ましい。また、接着剤層の両面に有する保護フィルムのそれぞれの接着剤層に対する剥離力をF、F(F>F)とするとき、F−Fは好ましくは5Nm−1以上、さらに好ましくは15Nm−1以上である。この範囲にすることで、保護フィルムを片側ずつ安定して剥離することができる。
【0037】
次に、本発明の接着剤シートの製造方法について説明する。例えば、予め接着剤組成物を有機溶剤で適当な固形分濃度に調整してワニスとし、これをリバースロールコーター、コンマコーター、スリットダイコーター等を用いて保護フィルムの剥離可能な面に塗布する。この接着剤付き保護フィルムをインラインドライヤーに通して、50〜200℃で1〜30分間加熱処理して、ワニス中の有機溶剤を除去し、接着剤組成物を半硬化状態とする。さらに接着剤面側と保護フィルムの剥離可能な面とを、温度20〜80℃、圧力1〜5MPaの条件で熱ラミネートする。その後、硬化度を調整するために、必要に応じて熱処理を行い、接着剤シートとする。
【0038】
本発明の接着剤組成物、カバーレイフィルム、接着剤シートの用途は特に限定されるものではなく、電子機器、半導体集積回路接続用基板、半導体装置に好適に使用することができる。例えばフレキシブルプリント基板(FPC)、テープオートメーティッドボンディング(TAB)用途、各種パーケージ用途(CSP、BGA)などが挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例の説明に入る前に評価の方法について述べる。
【0040】
A.評価用サンプル作製方法(CL)
12.5μm厚のポリイミドフィルム“カプトン(登録商標)”50EN(東レ・デュポン株式会社製、商品名)に、接着剤溶液をバーコーターで乾燥厚さ約25μmになるように塗布し、150℃5分間乾燥し、接着剤層を形成した。次に、接着剤層にシリコーン離型剤で処理した厚さ25μmのポリエステルフィルムを50℃、10N/cm、5m/分の条件で熱ラミネートしてCLを作製した。後述する全ての実施例および比較例におけるポリエステルフィルムの剥離力は200Nm−1以下であった。
【0041】
B.常態接着力
JIS−C6471(1995)に準拠して行った。まず東レ株式会社製、片面2層CCL「9A1ETP30」(“カプトン”50EN(東レ・デュポン株式会社製、商品名、12.5μm)、USLP(日本電解株式会社製、商品名、1/3oz))の銅箔面に、上記Aに記載の方法で作製したCLのポリエステルフィルムを剥離して露出した接着剤層を合わせ、160℃、4MPa、60分間プレス貼り付けを行った。得られた積層体のカバーレイ側のポリイミドフィルム表面に2mm幅の切れ込みをカッターで入れ、テンシロンを用いてポリイミドフィルムのみを90度方向に引き剥がした場合の強度を測定し、常態接着力とした(引張速度:50mm/分)。常態接着力は、好ましくは8N/cm以上、より好ましくは10N/cm以上である。
【0042】
C.半田耐熱性
JIS−C6471(1995)に準拠した方法で行った。まず上記Bと同様の方法で、片面2層CCLとCLを用いて積層体を得た。得られた積層体を20mm角にカットし、40℃、90%RHの雰囲気下で24時間調湿した後、すみやかに所定の温度の半田浴上に30秒間浮かべ、ポリイミドフィルムの膨れおよび剥がれのない最高温度を測定した。半田耐熱性としては、好ましくは240℃以上、より好ましくは260℃以上である。
【0043】
D.難燃性
東レ株式会社製、両面2層CCL「9A2ETP33」(“カプトン”50EN(東レ・デュポン株式会社製、商品名、12.5μm)、USLP(日本電解株式会社製、商品名、1/3oz))の銅箔を両面全面エッチングしたサンプルを作製した。これに上記Cに記載の方法で作製したCLのポリエステルフィルムを剥離して露出した接着剤層を合わせ、160℃、4MPa、60分間プレス貼り付けを行った。得られた積層体の難燃性をUL94VTMおよびV試験方法に準拠して測定した。
【0044】
実施例1
熱可塑性樹脂として、「PNR−1H」(JSR(株)製、商品名、カルボキシル基変性アクリロニトリルブタジエン共重合体)100重量部、エポキシ樹脂として、「jER834」(JER株式会社製、商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)80重量部、および「EXA−7336」(大日本化学工業株式会社製、商品名、キサンテン型エポキシ樹脂)100重量部、硬化剤として、「3,3’−DDS」(小西化学工業株式会社製、商品名)30重量部をジメチルアセトアミドに溶解し、60℃で撹拌、混合して30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0045】
実施例2
「EXA−7336」を30重量部、「3,3’−DDS」を20重量部に変更した他は実施例1と同様にして30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0046】
実施例3
無機粒子剤として、「H−42I」(昭和電工(株)製、商品名、水酸化アルミニウム)70重量部をジメチルアセトアミドに分散させ、サンドミル処理して水酸化アルミニウム分散液を作製した。この分散液に、熱可塑性樹脂として、「PNR−1H」100重量部、エポキシ樹脂として、「jER834」80重量部、および「EXA−7336」60重量部、硬化剤として、「3,3’−DDS」25重量部、硬化促進剤として、「2E4MZ」2重量部を溶解し、60℃で撹拌、混合して30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0047】
実施例4
「EXA−7336」を20重量部、「3,3’−DDS」を20重量部に変更した他は実施例3と同様にして30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.8であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0048】
実施例5
「EXA−7336」を110重量部、「3,3’−DDS」を35重量部に変更した他は実施例3と同様にして30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.8であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0049】
実施例6
熱可塑性樹脂として、「PNR−1H」100重量部、エポキシ樹脂として、「jER834」80重量部、および「EXA−7336」60重量部、硬化剤として、「3,3’−DDS」25重量部、リン系難燃剤として、「SPB−100」(大塚化学株式会社製、商品名、ホスファゼン化合物)2重量部をジメチルアセトアミドに溶解し、60℃で撹拌、混合して30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0050】
実施例7
「SPB−100」を5重量部に変更した他は実施例6と同様にして30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0051】
実施例8
「SPB−100」を190重量部に変更した他は実施例6と同様にして30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0052】
実施例9
「SPB−100」を220重量部に変更した他は実施例6と同様にして30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0053】
比較例1
熱可塑性樹脂として、「PNR−1H」100重量部、エポキシ樹脂として、「jER834」80重量部、硬化剤として、「3,3’−DDS」15重量部をジメチルアセトアミドに溶解し、60℃で撹拌、混合して30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0054】
比較例2
無機粒子剤として、「H−42I」80重量部をジメチルアセトアミドに分散させ、サンドミル処理して水酸化アルミニウム分散液を作製した。この分散液に、熱可塑性樹脂として、「PNR−1H」100重量部、エポキシ樹脂として、「jER834」80重量部、および「jER1001」80重量部、硬化剤として、「3,3’−DDS」25重量部を溶解し、60℃で撹拌、混合して30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.8であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0055】
比較例3
熱可塑性樹脂として、「PNR−1H」100重量部、エポキシ樹脂として、「jER834」80重量部、および「jER154」100重量部、硬化剤として、「3,3’−DDS」40重量部をジメチルアセトアミドに溶解し、60℃で撹拌、混合して30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0056】
比較例4
熱可塑性樹脂として、「PNR−1H」100重量部、エポキシ樹脂として、「jER834」80重量部、およびリン含有エポキシ樹脂「FX289B」(大日本化学工業株式会社製、商品名、リン含有率2重量%)100重量部、硬化剤として、「3,3’−DDS」30重量部をジメチルアセトアミドに溶解し、60℃で撹拌、混合して30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0057】
比較例5
熱可塑性樹脂として、「PNR−1H」100重量部、エポキシ樹脂として、「jER834」150重量部、リン系難燃剤として、「SPB−100」50重量部、硬化剤として、「3,3’−DDS」30重量部をジメチルアセトアミドに溶解し、60℃で撹拌、混合して30重量%のCL用接着剤組成物の溶液(接着剤溶液)を調製した。この接着剤組成物におけるH/Eは0.7であった。得られた接着剤溶液を用いて前述の方法で評価用サンプルを作製し、常態接着力、半田耐熱性、難燃性を評価した。
【0058】
実施例1〜9、比較例1〜5の接着剤組成および評価結果を表1〜2に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂、(B)キサンテン型エポキシ樹脂および(C)硬化剤を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して、(B)キサンテン型エポキシ樹脂の含有量が30〜100重量部であることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
さらに(D)リン系難燃剤を含有することを特徴とする請求項1または2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
絶縁性フィルム、請求項1〜3いずれか記載の接着剤組成物から形成される接着剤層および剥離可能な保護フィルムをこの順に有することを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか記載の接着剤組成物から形成される接着剤層の両面に剥離可能な保護フィルムを有することを特徴とする接着剤シート。

【公開番号】特開2009−197179(P2009−197179A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42734(P2008−42734)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】