説明

接着剤組成物及び該接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造体

【課題】低温かつ短時間の硬化条件においても優れた接着強度を得ることができ、且つ信頼性試験(高温高湿条件での長時間の暴露試験)後においても接着強度や接続抵抗等の特性を充分に維持することができる接着剤組成物を提供すること、また、該接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造体を提供すること。
【解決手段】(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、(c)コア部位に分岐部位が樹状分岐するように結合し、該分岐部位の末端に末端部位を備える樹枝状化合物、及び(d)ラジカル重合開始剤を含む接着剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及び該接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子及び液晶表示素子において、素子中の種々の部材を結合させるために従来から様々な種類の接着剤が使用されている。接着剤に要求される特性は、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等多岐にわたる。また、被着体には、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO、SiN、SiO等、多種多様な表面状態を有する基材が用いられており、被着体や要求される特性にあわせた接着剤組成物の分子設計が必要である。
【0003】
半導体素子や液晶表示素子用の接着剤組成物には、従来、高接着性でかつ高信頼性を示す、エポキシ樹脂を主成分とした熱硬化性樹脂が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。熱硬化性樹脂の構成成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂との反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。熱潜在性触媒は接着剤組成物の硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温での貯蔵安定性と加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられてきた。
【0004】
また、従来、半導体素子及び液晶表示素子の実際の製造工程においては、170〜250℃の温度で1〜3時間、上述した接着剤組成物を硬化することにより、所望の接着を得ていた。しかしながら、最近の半導体素子の高集積化、液晶素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチが狭小化しており、硬化時の加熱によって、周辺部材に悪影響が及ぶ恐れが出てきた。さらに低コスト化のためには、スループットを向上させる必要があり、接着剤組成物には、より低温でかつ短時間で硬化(低温速硬化性)する特性が求められている。この低温速硬化性を達成するためには、活性化エネルギーの低い熱潜在性触媒を使用する必要があり、その場合室温付近での貯蔵安定性を兼備することが非常に難しいことが知られている。
【0005】
最近、アクリレート誘導体やメタクリレート誘導体等のラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤である過酸化物を併用した、ラジカル硬化型の接着剤組成物が注目されている。ラジカル硬化は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間での硬化が可能である(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、ラジカル硬化型の接着剤組成物は、硬化反応が速いため、被着体との濡れ性が不十分であり、接着強度が劣ることが問題になっている。濡れ性を改善する方法としては、接着剤組成物に液状ゴムを添加し、濡れ性を向上させ、接着強度を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】国際公開98/44067号パンフレット
【特許文献3】国際公開2004/50779号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体素子や液晶表示素子に用いる接着剤組成物の硬化物には、高温高湿条件(例えば85℃/85%RH)に長時間暴露されても特性が安定していることが要求される。しかしながら、特許文献3に記載された接着剤組成においては、接着強度は改善されるものの、硬化後の弾性率等の接着剤物性が充分とはいえず、信頼性試験(高温高湿条件での長時間の暴露試験)後に接着力や接続抵抗等の特性を充分に維持することが難しいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、低温かつ短時間の硬化条件においても優れた接着強度を得ることができ、且つ信頼性試験後においても接着強度や接続抵抗等の特性を充分に維持することができる接着剤組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、該接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、(c)コア部位に分岐部位が樹状分岐するように結合し、該分岐部位の末端に末端部位を備える樹枝状化合物、及び(d)ラジカル重合開始剤を含む接着剤組成物を提供する。なお、コア部分とは、分子の中心、すなわち分岐の中心となる部分をいい、末端部位は、分岐部位の末端であっても、分岐部位の末端に形成された官能基であってもよい。
【0010】
本発明の接着剤組成物は、上述した各成分(a)〜(d)を含むことにより、低温かつ短時間の硬化条件においても優れた接着強度を得ることができ、且つ信頼性試験後においても特性(接着強度や接続抵抗)を充分に維持することができる。
【0011】
また、樹枝状化合物の重量平均分子量が、1000以上10000未満であることが好ましい。このような構成により、接着剤組成物の硬化物の耐熱性を向上させることができ、信頼性試験後も特性(接着強度や接続抵抗)を充分に維持させることができる。
【0012】
樹枝状化合物としては、末端部位の少なくとも一部が、ラジカル重合性官能基であるものを使用できる。このような樹枝状化合物を用いることにより、樹枝状化合物が他の成分と反応することが期待できることから、接着剤組成物の硬化物の耐熱性をさらに向上させることができるようになる。またこれに対応して、信頼性試験後の特性(接着強度や接続抵抗)の維持を充分に図ることが可能になる。
【0013】
ラジカル重合性官能基の数が、樹枝状化合物の1分子あたり6以上であることが好ましい。官能基数が分子あたり6以上であると、高い架橋密度が得られるため、接着剤組成物の硬化物の耐熱性が顕著に向上し、信頼性試験後も特性(接着強度や接続抵抗)を充分に維持することができる。
【0014】
(b)ラジカル重合性化合物は、リン酸基を有するビニル化合物とリン酸基を有するビニル化合物以外の(b)ラジカル重合性化合物とを、それぞれ1種以上含むものであることが好ましい。このようなラジカル重合性化合物を用いることにより、接着剤組成物の、基材、特に金属基材、との接着強度を向上させることができる。
【0015】
(a)熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる1種以上の樹脂を用いることができる。このような樹脂を採用すると、耐熱性、接着性を向上させることができ、優れた接着強度を得ることができるとともに、信頼性試験後も特性(接着強度や接続抵抗)を充分に維持することができる。
【0016】
本発明の接着剤組成物は、(f)導電性粒子をさらに含有してもよい。導電性粒子を含有することにより、良好な導電性又は異方導電性を付与することができ、回路電極を有する回路部材同士の接着剤用途に特に好適に使用することが可能となる。また、上記接着剤組成物を介して電気的に接続された回路間の接続抵抗をより十分に低減することができる。
【0017】
本発明は、また、主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材と、接続部材とを備える回路部材の接続構造体であって、第一及び第二の接続端子が対向するように、第一及び第二の回路部材が接続部材を介して配置されるとともに、第一及び第二の接続端子が電気的に接続され、接続部材が本発明の接着剤組成物の硬化物で構成されている、回路部材の接続構造体を提供する。このような構造の回路部材の接続構造体は、一対の回路部材を接続する接続部材が上記本発明の接着剤組成物の硬化物により構成されているため、回路部材間の接着強度を十分に高くすることができるとともに、さらに、信頼性試験(例えば85℃/85%RH放置)後においても特性(接着強度や接続抵抗)を充分に維持することができる回路部材の接続構造体が得られる。なお、接続部材として用いられる本発明の接着剤組成物は、完全硬化(所定硬化条件で達成できる最高度の硬化)している必要はなく、上記特性を生じる限りにおいて部分硬化の状態であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温かつ短時間の硬化条件においても優れた接着強度を得ることができるとともに、信頼性試験(例えば、85℃/85%RHで240時間保持)後においても、接着強度及び接続抵抗といった特性を維持することが可能であり、さらに取扱性に優れた接着剤組成物及びそれを用いた回路部材の接続構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に関わる、導電性粒子を含有しない接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造体の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に関わる、第一の回路部材、第二の回路部材及び接着剤組成物(導電性粒子を含有しない)の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に関わる、導電性粒子を含有する接着剤組成物を用いた回路部材の接続構造体の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に関わる、第一の回路部材、第二の回路部材及び接着剤組成物(導電性粒子を含有する)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお本明細書において、(メタ)アクリルとはアクリル又はそれに対応するメタクリルを意味し、同様の骨格を有する他の化合物においても同様に解釈する。
【0021】
なお、本明細書において、(a)熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)とは、以下で定義される主分散ピーク温度をいう。すなわち、動的粘弾性測定装置(例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製粘弾性アナライザー「RSA−3」(商品名))を用いて、(a)熱可塑性樹脂のフィルムについて、昇温速度5℃/min、周波数10Hz、測定温度−150〜300℃の条件で動的粘弾性を測定し、tanδのピーク温度を主分散ピーク温度とする。
【0022】
本発明における、重量平均分子量及び数平均分子量とは、表1に示した条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して得られる、標準ポリスチレン換算値である。
【表1】

【0023】
本発明の接着剤組成物は、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、(c)コア部位に分岐部位が樹状分岐するように結合し、該分岐部位の末端に末端部位を備える樹枝状化合物、及び(d)ラジカル重合開始剤を含む。
【0024】
(a)熱可塑性樹脂(以下、単に(a)成分という場合がある。)は、加熱により粘度の高い液状状態になって外力により自由に変形でき、冷却し外力を取り除くとその形状を保ったままで硬くなり、この過程を繰りかえして行える性質を持つ樹脂(高分子)をいう。また、上記の性質を有する反応性官能基を有する樹脂(高分子)も含む。(a)熱可塑性樹脂のTgは、0〜190℃が好ましく、20〜170℃がより好ましい。
【0025】
なお、上記の(a)熱可塑性樹脂の定義に該当しても、後述する(c)成分の構造、すなわち、「コア部位に分岐部位が樹状分岐するように結合し、該分岐部位の末端に末端部位を備える」構造を有する化合物は、(c)成分に分類する。
【0026】
(a)熱可塑性樹脂は、主鎖が直鎖状である高分子が好ましい。なお、(a)熱可塑性樹脂が側鎖を有する場合は、当該側鎖が樹状形状(先端に向かうにつれて分岐が増えていく形状をいう)を形成していないものが好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などを用いることができる。さらに、これらポリマー中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これら樹脂は、単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。これらは混合する樹脂同士が完全に相溶するか、もしくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。
【0027】
接着剤組成物をフィルム状に成形する場合、(a)熱可塑性樹脂の分子量が大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、またフィルム状接着剤組成物としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。(a)熱可塑性樹脂の分子量は、重量平均分子量で、5000〜150000が好ましく、10000〜80000が特に好ましい。重量平均分子量を、5000以上とすることで良好なフィルム形成性が得られやすく、一方、150000以下とすることで他の成分との良好な相溶性が得られやすい。
【0028】
接着剤組成物において、(a)熱可塑性樹脂は、含有量が接着剤組成物全量を基準として5〜80重量%であることが好ましく、15〜70重量%であることがより好ましい。5重量%以上とすると良好なフィルム形成性が得られやすく、また、80重量%以下とすると接着剤組成物が良好な流動性を示す傾向にある。
【0029】
(b)ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合開始剤の作用でラジカル重合を生じる化合物をいうが、光や熱等の活性化エネルギーを付与することでそれ自体ラジカルを生じる化合物であってもよい。ラジカル重合性化合物としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレイミド基等の活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を好適に使用可能である。
【0030】
具体的には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基にエチレングリコールやプロピレングリコールを付加させた化合物に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入した化合物、下記一般式(1)及び(2)で示される化合物が挙げられる。
【化1】


(ここでR及びRは、各々独立に水素又はメチル基を示し、a及びbは各々独立に1〜8の整数を表す。)
【化2】


(ここでR及びRは、各々独立に水素又はメチル基を示し、c及びdは、各々独立に0〜8の整数を表す。)
【0031】
また、(b)ラジカル重合性化合物として、単独で30℃に静置した場合にワックス状、ろう状、結晶状、ガラス状、粉状等の流動性が無く固体状態を示すものであっても、特に制限することなく使用できる。
【0032】
具体的には、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、N−フェニルマレイミド、N−(o−メチルフェニル)マレイミド、N−(m−メチルフェニル)マレイミド、N−(p−メチルフェニル)−マレイミド、N−(o−メトキシフェニル)マレイミド、N−(m−メトキシフェニル)マレイミド、N−(p−メトキシフェニル)−マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N−メタクリロキシマレイミド、N−アクリロキシマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、N−メタクリロイルオキシコハク酸イミド、N−アクリロイルオキシコハク酸イミド、2−ナフチルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−ポリスチリルエチルメタクリレート、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、テトラメチルピペリジルメタクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、ペンタメチルピペリジルアクリレート、オクタデシルアクリレート、N−t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロシキメチル)アクリルアミド、下記一般式(3)〜(12)で示される化合物が挙げられる。
【化3】


(ここでeは、1〜10の整数を表す。)
【化4】


【化5】


(ここで、R及びRは、各々独立に、水素又はメチル基を表す。fは、15〜30の整数を表す。)
【化6】


(ここで、R及びRは、各々独立に、水素又はメチル基を表す。gは、15〜30の整数を表す。)
【化7】


(ここでRは、水素又はメチル基を表す。)
【化8】


(ここでR10は、水素又はメチル基、hは、1〜10の整数を表す。)
【化9】


(ここでR11は、水素又は下記一般式I又はIIに示す有機基、iは、1〜10の整数を表す。)
【化10】


(なお、一般式中、*は他の原子と結合していることを表す。)
【化11】


(ここでR12、は水素又は下記一般式III又はIVに示す有機基、jは、1〜10の整数を表す。)
【化12】


(なお、一般式中、*は他の原子と結合していることを表す。)
【化13】


(ここでR13は、水素又はメチル基を表す。)
【化14】


(ここでR14は、水素又はメチル基を表す。)
【0033】
(b)ラジカル重合性化合物は、1種類の化合物を用いてもよいし、複数の化合物を混合して用いてもよい。
【0034】
また、(b)成分に属する化合物である、リン酸基含有ビニル化合物や、N−ビニル化合物及びN,N−ジアルキルビニル化合物からなる群より選ばれるN−ビニル系化合物を、これら以外の(b)成分と併用することができる。リン酸基含有ビニル化合物の併用により、接着剤組成物の金属基材への接着性を向上させることが可能になる。また、N−ビニル系化合物の併用により、接着剤組成物の橋かけ率を向上させることができる。
【0035】
リン酸基含有ビニル化合物としては、リン酸基及びビニル基を有する化合物であれば特に制限はないが、下記一般式(35)〜(37)で示される化合物が好ましい。
【化15】


(ここでR15は、(メタ)アクリロイル基を示し、R16は水素原子又はメチル基、n、oは各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R15同士、R16同士、n同士及びo同士はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【化16】


(ここでR17は、(メタ)アクリロイル基を示し、p、qは各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R17同士、p同士及びq同士はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【化17】


(ここでR18は、(メタ)アクリロイル基を示し、R19は、水素原子又はメチル基、r及びsは各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R18同士、R19同士、r同士及びs同士はそれぞれ同一でも異なってもよい。)
【0036】
リン酸基含有ビニル化合物の具体的としては、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、EO変性リン酸ジメタクリレート、リン酸変性エポキシアクリレート、リン酸ビニル、等が挙げられる。
【0037】
リン酸基含有ビニル化合物の添加量は、リン酸基含有ビニル化合物以外の(b)ラジカル重合性化合物の添加量とは独立に、(a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.2〜300重量部とするのが好ましく、また、1〜200重量部とするのがより好ましい。リン酸基含有ビニル化合物の添加量を0.2重量部以上とすることで、高い接着強度が得られやすくなり、また、300重量部以下とすることで、硬化後の接着剤組成物の物性が低下しにくく、信頼性を確保しやすくなり、好ましい。
【0038】
一方、N−ビニル系化合物としては、具体的には、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N-ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0039】
上述したリン酸基含有ビニル化合物に含まれる化合物を除いた(b)ラジカル重合性化合物の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100重量部に対して、50〜250重量部であることが好ましく、より好ましくは60〜150重量部である。添加量が50重量部以上であると、硬化後に充分な耐熱性が得られやすい。また、250重量部以下であると、フィルムとして使用する場合に、良好なフィルム形成性が得られやすい。
【0040】
本発明における(c)コア部位に分岐部位が樹状分岐するように結合し、該分岐部位の末端に末端部位を備える樹枝状化合物は、コア部位、分岐部位及び末端部位からなる樹状形状を有する。コア部位は、例えば、反応性官能基Aを少なくとも2つ以上有する化合物からなる。分岐部位は、例えば、コア部位の反応性官能基Aと結合反応を生じ得る官能基Cを一つと、官能基Cと結合反応を生じ得る反応性官能基B(コア部位の反応性官能基Aと同じであっても異なっていてもよい)を2つ以上有する単位化合物から構成される。この単位化合物は、反応性官能基Aと官能基Cとが結合することによりコア部位と結合しており、反応性官能基Bと官能基Cとの単位化合物間結合が繰り返されることにより分岐部位が形成され、この結果、樹状分岐が生じていることが好ましい。末端部位は、例えば、分岐部位の反応末端に相当する。末端部位は、未反応の反応性官能基Bのままであってもよいし、すべて又は一部が反応性官能基Bと結合反応を生じ得る官能基Dを有する化合物で変性されていてもよい。なお、分岐部位の単位化合物は2種類以上の化合物からなっていてもよく、反応性官能基B及び/又は官能基Cも2種類以上であってよい。末端部位の化合物及び官能基Dについても同様である。
【0041】
反応性官能基A及び/又はBの例としては、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また、末端部位の反応性官能基Bと結合反応を生じ得る官能基Dを有する化合物としては、例えば、モノアルコール、モノカルボン酸、脂肪酸等が挙げられる。
【0042】
また、反応性官能基A及び/又はBと官能基Cとの反応によって生成する結合は、エステル結合、アミド結合であることが好ましい。さらに、反応性官能基Bと官能基Dとの反応によって生成する結合は、エステル結合、アミド結合であることが好ましい。反応性官能基A及び/又はBと官能基Cとの反応によって生成する結合及び反応性官能基Bと官能基Dとの反応によって生成する結合が、それぞれ、エステル結合又はアミド結合であることにより、プリント配線板やポリイミド等の有機基材に対する相互作用、濡れ性が向上する傾向にあり、高い接着強度が得られやすく、接続信頼性が向上する傾向にある。
【0043】
樹枝状化合物は、上述したような構造を有する化合物であることが好ましく、樹枝状化合物は、高分子でもオリゴマーでもよい。また、分岐の規則性が高いデンドリマーや規則性の低いハイパーブランチポリマーも前記樹枝状化合物に含まれる。
【0044】
樹枝状化合物の具体例としては、例えば、ポリエステルデンドリマー、ポリ(アミドアミン)デンドリマー、ポリイミンデンドリマー、ポリアミンデンドリマー、ポリアミドデンドリマー、ポリエーテルアミドデンドリマー、ポリエーテルデンドリマー、ポリエーテルエステルデンドリマー、ポリエーテルケトンデンドリマー、ポリカーボナートデンドリマー等が挙げられる。
【0045】
また、コア部位が下記一般式(13)〜(20)で表される化合物群から選ばれる1つの化合物からなり、分岐部位が下記一般式(21)〜(33)で表される繰り返し構造の1種又は2種以上の組み合わせからなる構造からなり、末端部位で反応性官能基Bのすべて又は一部と結合している化合物が下記一般式(34)で表される化合物からなり、これらが上述のとおり構成される化合物も樹枝状化合物の具体例として挙げられる。さらに、該樹枝状化合物のコア部位と分岐部位との結合、分岐部位間の結合及び分岐部位と末端部位との結合が、それぞれ、エステル結合又はアミド結合であることが好ましい。これらの結合が、エステル結合又はアミド結合であることで、プリント配線板やポリイミド等の有機基材に対する相互作用、濡れ性が向上する傾向にあり、高い接着強度が得られやすく、接続信頼性が向上する傾向にある。
【化18】


【化19】


【化20】


【化21】


【化22】


【化23】


【化24】


【化25】


(なお、一般式中、k、lは、1〜5の整数を表す。また、*は他の原子と結合していることを表す。)
【化26】


(mは、2〜26の整数を表す。また、*は他の原子と結合していることを表す。)
【0046】
(c)成分は、樹枝状化合物を複数種含んでいてもよい。また、(c)成分は、耐熱性の観点から、末端部位の反応性官能基Bのすべて又は一部が、(メタ)アクリル基、ビニル基、スチリル基等のラジカル重合性官能基と官能基Dを有する化合物で変性された前記樹枝状化合物を1種類以上含むことが好ましい。該樹枝状化合物としては、(b)ラジカル重合性化合物との反応性を考慮して、(メタ)アクリル基と官能基Dを有する化合物で変性されたものがより好ましい。さらに、該樹枝状化合物は、ラジカル重合性官能基の数が分子あたり6以上あることが好ましく、ラジカル重合性官能基の数が分子あたり6以上15以下であることがより好ましい。ラジカル重合性官能基の官能基数が分子あたり6以上あることで、耐熱性が充分に向上する傾向にある。
【0047】
(c)成分の添加量は、(a)熱可塑性樹脂の100重量部に対して、0.2〜100重量部であり、好ましくは0.5〜70重量部である。添加量を0.2重量部以上とすると、接着剤組成物の硬化物の耐熱性が向上する傾向にあり、また、100重量部以下とすると、フィルムとして使用する場合に良好なフィルム形成性が得られやすい。
【0048】
(d)ラジカル重合開始剤としては、過酸化物やアゾ化合物等の、活性化エネルギーの付与によりラジカルを発生する化合物を用いることができ、安定性、反応性、相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ分子量が180〜1000の過酸化物が好ましい。1分間半減期温度がこの範囲にあることで、貯蔵安定性に優れるうえ、ラジカル反応性も充分に高く、短時間で硬化できる。また、分子量がこの範囲にあることで、接着剤組成物の他の成分との相溶性に優れる。
【0049】
このような、(d)成分の具体例としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0050】
また、(d)成分としては、150〜750nmの光照射によってラジカルを発生する化合物も好適に用いることができる。このような化合物としては、例えば、Photoinitiation,Photopolymerization,and Photocuring,J.−P.Fouassier,Hanser Publishers(1995年)、17〜35頁に記載されたα−アセトアミノフェノン誘導体やホスフィンオキサイド誘導体が光照射に対する感度が高いためより好ましく用いられる。
これらの化合物は、単独で用いる他に、前記過酸化物やアゾ化合物と混合して用いてもよい。
【0051】
(d)成分の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜500重量部が好ましく、1〜300重量部がさらに好ましい。(d)成分の添加量を0.1重量部以上とすると、接着剤組成物が充分に硬化しやすく、また、500重量部以下とした場合には、放置安定性がよい傾向にある。
【0052】
(f)導電性粒子は、粒子全体として導電性を有するものであればよいが、接続端子を有する回路部材の接続に使用する場合は、接続端子間距離より平均粒径が小さいものを用いる。(f)導電性粒子の具体例としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に前記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものでもよい。(f)導電性粒子が、プラスチックを核とし、この核に上記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものや熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。
【0053】
また、これらの(f)導電性粒子の表面を、さらに高分子樹脂などで被覆した微粒子は、導電性粒子の配合量を増やした場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性が向上できることから、適宜これを単独あるいは導電性粒子と混合して用いてもよい。
【0054】
この(f)導電性粒子の平均粒径は、分散性、導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。このような(f)導電性粒子を含有する場合、接着剤組成物は異方導電性接着剤組成物として、好適に用いることができる。
【0055】
(f)導電性粒子の添加量は、接着剤組成物の(f)導電性粒子以外の成分の全体積に対して、0.1〜30体積%とすることが好ましく、0.1〜10体積%とすることがより好ましい。0.1体積%以上含有することにより、硬化後の接着剤組成物の導電性がよくなり好ましい。また、30体積%以下とすることにより、回路の短絡が生じにくくなり好ましい。なお、体積%は23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算して求めることができる。また、メスシリンダー等にその成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたものに、その成分を投入し増加した体積をその体積として求めることもできる。
【0056】
接着剤組成物には、硬化速度の制御や貯蔵安定性を付与するために、安定化剤を添加することできる。このような安定化剤としては、安定化剤として公知の化合物を特に制限なく使用することができるが、ベンゾキノンやハイドロキノン等のキノン誘導体、4−メトキシフェノールや4−t−ブチルカテコール等のフェノール誘導体、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルや4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体が好ましい。
【0057】
上記安定化剤の添加量は、接着剤組成物100重量部に対して、0.01〜30重量部であり、好ましくは0.05〜10重量部である。添加量を0.01重量部以上とすることで、安定化剤の添加効果が現れやすくなり、また、30重量部以下とすることで、他の成分との相溶性に悪影響を及ぼしにくい。
【0058】
接着剤組成物には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤及び密着向上剤、レベリング剤などの接着助剤を適宜添加してもよい。具体的には、下記一般式(38)で示される化合物が好ましく、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0059】
【化27】


(ここでR20、R21、R22は独立に、水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基、アリール基、R23は(メタ)アクリロイル基、ビニル基、イソシアナート基、イミダゾール基、メルカプト基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、ウレイド基、グリシジル基、tは1〜10の整数を示す。)
【0060】
接着剤組成物は、応力緩和及び接着性向上を目的として、ゴム成分を含んでいてもよい。ゴム成分とは、そのままの状態でゴム弾性(例えばJIS K6200)を示す成分又は反応によりゴム弾性を示す成分をいう。ゴム成分は、室温(25℃)で固形でも液状でもよいが、流動性向上の観点から液状であることが好ましい。ゴム成分としては、ポリブタジエン骨格を有する化合物が好ましい。ゴム成分は、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基を有していてもよい。また、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム成分が好ましい。なお、ポリブタジエン骨格を有していても、熱可塑性を示す場合は(a)成分に分類し、ラジカル重合性を示す場合は(b)成分に分類する。
【0061】
上記ゴム成分の具体例としては、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマー末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられ、極性基であるアクリロニトリル含有量が10〜60質量%が好ましい。
【0062】
本発明の接着剤組成物は、応力緩和及び接着性向上を目的として、有機微粒子をさらに含んでいてもよい。有機微粒子とは、有機化合物からなる微粒子(例えば、平均粒径は0.05〜1.0μm)をいう。なお、有機微粒子が上述のゴム成分からなる場合は、有機微粒子ではなくゴム成分に分類し、有機微粒子が上述の(a)熱可塑性樹脂からなる場合は、有機微粒子ではなく熱可塑性樹脂に分類する。
【0063】
有機微粒子としては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマー末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリオレフィングリコール(メタ)アクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体、シリコーン(メタ)−アクリル共重合体又は複合体からなる有機微粒子が挙げられる。これらの化合物は単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0064】
接着剤組成物は、常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものであれば、特に制限は受けないが、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点を50℃以上とした場合、室温で放置しても揮発しにくく、開放系での使用が制限されないため好ましい。また、沸点が150℃以下であると、溶剤を揮発させやすくなり、接着後の信頼性を得やすくなる。
【0065】
接着剤組成物はフィルム状にして用いることもできる。接着剤組成物に必要により溶剤等を加えるなどした溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に前記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去してフィルムとして使用することができる。フィルムの形状で使用すると取扱性等の点から一層便利である。
【0066】
接着剤組成物は加熱及び加圧を併用して接着させることができる。加熱温度は、特に制限は受けないが、100〜250℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限はないが、一般的に用いられている圧力である0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましい。また、本発明の接着剤組成物は、140〜200℃、3MPa、10秒の加熱及び加圧でも接着が可能である。
【0067】
接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0068】
接着剤組成物は、回路部材及び回路端子同士が接続された接続構造体や半導体装置を得るために用いることができる。
【0069】
図1は、(f)導電性粒子を含有しない本発明の接着剤組成物を用いた、実施形態に係る回路端子の接続構造体を示す断面図である。
【0070】
図1に示す回路端子の接続構造体100は、第一の回路基板31の主面31a上に第一の接続端子32を有する第一の回路部材30と、第二の回路基板41の主面41a上に第二の接続端子42を有する第二の回路部材40と、及び第一の接続端子32と第二の接続端子42とが対向するように、第一の回路基板31の主面31aと第二の回路基板41の主面41aとを接続する接続部材10Cとを、備える。第一の接続端子32と第二の接続端子42は、互いに接することにより、電気的に接続されている。また、接続部材10Cは、本発明の接着剤組成物10の硬化物からなる。
【0071】
図1に示す回路端子の接続構造体100は、例えば次のようにして製造することができる。
【0072】
まず、図2に示すように、第一の回路部材30、第二の回路部材40及びフィルム状に成形した接着剤組成物10を用意する。次に、接着剤組成物10を、第二の回路部材40における第二の接続端子42が形成されている主面42aに載せ、さらに、接着剤組成物10の上に、第一の接続端子32が第二の接続端子42と対向するように、第一の回路部材30を載せる。続いて、第一の回路部材30及び第二の回路部材40を介して接着剤組成物10を加熱しながらこれを硬化させ、同時に主面31a、41aに垂直な方向に加圧し、第一及び第二の回路部材30、40の間に接続部材10Cを形成させて、図1の回路端子の接続構造体100を得る。
【0073】
図3は、(f)導電性粒子を含有する本発明の接着剤組成物を用いた、実施形態に係る回路端子の接続構造体を示す断面図である。
【0074】
図3に示す回路端子の接続構造体200は、第一の回路基板31の主面31a上に第一の接続端子32を有する第一の回路部材30と、第二の回路基板41の主面41a上に第二の接続端子42を有する第二の回路部材40と、及び第一の接続端子32と第二の接続端子42とが対向するように、第一の回路基板31の主面31aと第二の回路基板41の主面41aとを接続する接続部材20Cとを、備える。なお、接続部材20Cは、接着剤組成物の導電性粒子以外の成分21中に導電性粒子22が分散した接着剤組成物20の硬化物(すなわち、接着剤組成物の導電性粒子以外の成分の硬化物21C中に導電性粒子22が分散したもの)であり、対向する第一の接続端子32と第二の接続端子42との間において、導電性粒子22が両接続端子に接することにより、導電性粒子22を介して両接続端子が電気的に接続されている。
【0075】
図3に示す回路端子の接続構造体200は、例えば、図4に示すように、第一の回路部材30、第二の回路部材40及びフィルム状に成形した接着剤組成物20を用意し、上記の回路端子の接続構造体100を得るのと同様の方法により、製造することができる。
【0076】
ここで、接続端子を備える回路基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機質、ポリイミド、ポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等のこれら複合の各組み合わせが適用できる。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0078】
[熱可塑性樹脂(フェノキシ樹脂(YP−50))の調整]
フェノキシ樹脂(製品名:YP−50、東都化成社製)は樹脂40gを、メチルエチルケトン60gに溶解して、固形分40重量%の溶液とした。
【0079】
[熱可塑性樹脂(ポリエステルウレタン樹脂(UR−1400))の準備]
ポリエステルウレタン樹脂(製品名:UR−1400、東洋紡社製)は樹脂分30%のメチルエチルケトンとトルエンの1:1混合溶媒溶解品を用いた。
【0080】
[熱可塑性樹脂(ウレタン樹脂)の合成]
重量平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール(製品名:ポリブチレンアジペートジオール、Aldrich社製)450重量部と、平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール(製品名:ポリオキシテトラメチレングリコール、Aldrich社製)450重量部、1,4−ブチレングリコール(製品名:1,4−ブチレングリコール、Aldrich社製)100重量部を、メチルエチルケトン(製品名:2−ブタノン、和光純薬工業(株)社製)4000重量部中で溶解し、ジフェニルメタンジイソシアネート(製品名:ジフェニルメタンジイソシアネート、Aldrich社製)390重量部を加えて70℃にて60分間反応させて、ウレタン樹脂を得た。得られたウレタン樹脂の重量平均分子量をGPC法によって測定したところ、100,000であった。
【0081】
[樹枝状化合物(DA−1)の合成]
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置、及び水分離器を備えた反応器に、Perstorp社製 BOLTORN H20(OH価:504mgKOH/g)55.7gと、反応溶媒としてトルエン150ml、重合禁止剤としてハイドロキノン0.143g、塩基触媒としてピリジン39.6gを仕込み、攪拌しながらアクリルクロイド(東京化成工業(株)社製)49.8g(0.55モル)を滴下する。滴下後2時間還流し放冷した後、反応混合物に水を加えてトルエンで抽出する。得られたトルエン抽出液を、10%硫酸ナトリウムで3回洗浄した。トルエンを減圧留去して樹枝状化合物(DA−1)を80.5g得た。得られた樹枝状化合物の官能基数:16官能(アクリロイル基)、重量平均分子量(MW):1580であった。なお、樹枝状化合物の官能基数(アクリロイル基)は、反応原料の混合量(当量比)から計算して得られる理論値である。
【0082】
[樹枝状化合物(H2004、及び#1000)の準備]
ポリエステルポリオール末端アクリレート#1000(MW:1850、官能基数:12官能(アクリロイル基)、大阪有機化学工業株式会社製)及びBOLTORN H2004(MW:3200、ラジカル重合性官能基無、Perstorp社製)を準備した。
【0083】
[ラジカル重合性化合物(M−215)の準備]
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(製品名:M−215、東亜合成株式会社製)を準備した。
【0084】
[ラジカル重合性化合物(ウレタンアクリレート(UA))の合成]
攪拌機、温度計、塩化カルシウム乾燥管を備えた還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に数平均分子量860のポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(Aldrich社製)860重量部(1.00モル)、ジブチルスズジラウレート(Aldrich社製)5.53重量部を投入した。充分に窒素ガスを導入した後、70〜75℃に加熱し、イソフォロンジイソシアネート(Aldrich社製)666重量部(3.00モル)を3時間かけて一定の速度で滴下し、反応させた。滴下完了後約10時間反応を継続した。これに2−ヒドロキシエチルアクリレート(Aldrich社製)238重量部(2.05モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル(Aldrich社製)0.53重量部を投入し、さらに10時間反応させ、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、ウレタンアクリレート(UA)を得た。得られたUAの数平均分子量は3,700であった。
【0085】
[リン酸基含有ビニル化合物(P−2M)の準備]
2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(製品名:ライトエステルP−2M、共栄社化学株式会社製)を準備した。
【0086】
[ラジカル重合開始剤(パーヘキシルO)の準備]
ラジカル重合開始剤としてt―ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(製品名:パーヘキシルO、日本油脂株式会社製)を準備した。
【0087】
[導電性粒子の作製]
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径4μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。
【0088】
(実施例1〜6、比較例1〜3)
固形重量比で表2に示すように配合し、さらに導電性粒子を1.5体積%配合分散させ、厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状接着剤組成物を得た。
【0089】
【表2】

【0090】
[接続抵抗、接着強度の測定]
実施例1〜6、比較例1〜3のフィルム状接着剤組成物を、ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmの酸化インジウム(ITO)の薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/℃)との間に介在させた。これを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング株式会社製)を用いて、170℃、3MPaで10秒間加熱及び加圧して幅2mmに渡って接続し、接続体を作製した。この接続体の隣接回路間の抵抗値を、接着直後と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(試験後)にマルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗37点の平均で示した。
【0091】
また、この接続体の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は東洋ボールドウィン株式会社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。以上のようにして行ったフィルム状接着剤組成物の接続抵抗及び接着強度の測定の結果を下記表3に示した。
【0092】
【表3】

【0093】
実施例1〜6で得られた接着剤組成物は、加熱温度170℃で接着した直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(信頼性試験後)でも、約3Ω以下の良好な接続抵抗及び600N/m以上の良好な接着強度を示すことが明らかとなった。
【0094】
これらに対して、本発明における(c)樹枝状化合物を使用していない比較例1、2の接着剤組成物では、良好な接続抵抗を示すものの、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(信頼性試験後)の接続抵抗が高いことが明らかとなった。また、比較例3、4では、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(信頼性試験後)の接続抵抗が高いことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0095】
10、20…接着剤組成物、10C、20C…接続部材、21…導電性粒子を含まない接着剤組成物、22…導電性粒子、21C…導電性粒子を含まない接着剤組成物の硬化物、30…第一の回路部材、31…第一の回路基板、31a…主面、32…第一の接続端子、40…第二の回路部材、41…第二の回路基板、41a…主面、42…第二の接続端子、100、200…回路部材の接続構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、(c)コア部位に分岐部位が樹状分岐するように結合し、該分岐部位の末端に末端部位を備える樹枝状化合物、及び(d)ラジカル重合開始剤を含む接着剤組成物。
【請求項2】
前記樹枝状化合物の重量平均分子量が、1000以上10000未満である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記末端部位の少なくとも一部は、ラジカル重合性官能基である請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記ラジカル重合性官能基の数は、前記樹枝状化合物の1分子あたり6以上である請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
(b)ラジカル重合性化合物は、リン酸基を有するビニル化合物と、該化合物以外のラジカル重合性化合物とを、それぞれ1種以上含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
(a)熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる1種以上である請求項1〜5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
(f)導電性粒子をさらに含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材と、接続部材とを備える回路部材の接続構造体であって、
前記第一及び第二の接続端子が対向するように、前記第一及び第二の回路部材が前記接続部材を介して配置されるとともに、前記第一及び第二の接続端子が電気的に接続され、前記接続部材が請求項1〜7のいずれか一項に記載の接着剤組成物の硬化物で構成されている、回路部材の接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−38075(P2011−38075A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112509(P2010−112509)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】