説明

接続構造体

【課題】より短い接着剤加熱時間で、基板同士の接着強度のばらつきをより小さくすることができる接続構造体を提供する。
【解決手段】2つの基板3を電気接続する接続構造体1に係る。接続構造体1は、接着剤4が充填される接着剤充填溝5であって、接続端子2を挟んで設けられた接着剤充填溝5と、接続端子2を挟む2つの接着剤充填溝5を連通する連通溝6からなり、2つの基板3の接続端子2が対向した状態で接着剤4が流れる複数の流路9と、を備える。流路9の1つは、一方の接着剤充填溝5aから他方の接着剤充填溝5bへ流れる接着剤4の流動抵抗が他方の接着剤充填溝5bから一方の接着剤充填溝5aへ流れる接着剤4の流動抵抗よりも小さく、他の流路9は、他方の接着剤充填溝5bから一方の接着剤充填溝5aへ流れる接着剤4の流動抵抗が一方の接着剤充填溝5aから他方の接着剤充填溝5bへ流れる接着剤4の流動抵抗よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板を電気的に接続する接続構造体に関する。接着剤(熱可塑性・熱硬化性)で複数の基板を接着することによって該複数の基板を電気的に接続する接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板やフレキシブル配線基板などの、接続端子が比較的高い密度で配設された基板同士を電気的に接続する方法として、異方導電性を有する接着剤を用いて該基板同士を接着する接続方法が知られている。異方導電性を有する接着剤は、圧力が加えられた方向に導電性が発現され、圧力が加えられていない方向には絶縁性が保持される特性を有する。
【0003】
異方導電性を有する接着剤を用いた接続方法について説明する。まず、一方または両方の基板に当該接着剤を塗布する。このとき、基板に設けられた接続端子が覆われるように接着剤を塗布する。
【0004】
次に、それぞれの基板の接続端子が対向するようにそれぞれの基板を配置し、該基板同士が押付けられる方向に圧力を加える。その後、接着剤を硬化させることによって、基板同士が接着される。
【0005】
それぞれの基板の対向する接続端子の間に残留した接着剤には、基板同士が押付けられる方向、すなわち接続端子が対向する方向に圧力が加えられたため、該方向に導電性が発現する。そのため、それぞれの基板の対向する接続端子は接着剤を介して電気的に接続される。
【0006】
また、それぞれの基板における接続端子の並び方向には圧力が加えられていないため、該方向における接着剤の絶縁性が保持されている。その結果、それぞれの基板における接続端子間の絶縁性を保つことができる。
【0007】
異方導電性を有する接着剤を用いた接続方法では、それぞれの基板の対向する接続端子間のみを導電性接着剤で電気接続している。そのため、接着強度が弱い箇所では、対向して接着された接続端子が離れやすくなって両基板で対向する接続端子間の電気抵抗が大きくなりやすい。また、電気抵抗が大きくなることによって通電による発熱も大きくなり、接続端子として使用した金属成分が接着剤の上を移動しやすくなり(マイグレーション現象)、それぞれの基板における接続端子間の絶縁性を低下させることがあった。
【0008】
近年では、基板同士の接着強度を高めるために、加熱手段で接着剤を加熱して接着剤の流動性を高めておき、基板同士を押付ける方向に圧力を加える方法が提案されている。
【0009】
接着剤の流動性を高めることによって、接着剤はそれぞれの基板における接続端子間の間隙からなる接着剤充填溝に流れ込みやすくなり、接着剤と、接続端子および基板との接触面積がより広くなる。接着剤との接触面積がより広くなることによって、基板同士の接着強度をより強固にすることができる。その結果、対向して接着された接続端子が離れにくくなり、両基板で対向する接続端子間の電気抵抗が小さくなり、マイグレーション現象を抑制することができる。
【0010】
しかしながら、加熱手段で熱を均一に接着剤に加えたとしても、接着剤の塗布量のばらつきや、基板および該基板に設けられた他の部品の熱伝導の影響により、接着剤の流動性にばらつきが生じることがある。接着剤の流動性の低い領域では、それぞれの基板の接続端子間の接着剤充填溝に接着剤が十分に流れ込まず、接着剤の接着強度が低下することがあった。そこで、特許文献1では、接着剤の接着強度のばらつきを抑制することができる接続構造体が開示されている。
【0011】
特許文献1に開示されている接続構造体について説明する。図6は、特許文献1に開示されている接続構造体であって、接続されていた基板同士を分離した状態の接続構造体の概略図である。
【0012】
図6に示すように、特許文献1に開示されている接続構造体1では、複数の接続端子2が間隙を隔てて基板3の面と平行な方向Xに沿って基板3上に配列されている。接続端子2間の間隙が、接着剤4が充填される接着剤充填溝5となっている。また、接続構造体1には、複数の接着剤充填溝5を連通するように方向Xに沿って連通溝6が複数形成されている。すなわち、接着剤が加熱されたときに接着剤の流れ込む空間は、接着剤充填溝5と連通溝6とで格子状に形成されている。
【0013】
接続端子2に連通溝6を設けることによって、隣り合う接着剤充填溝5に流れ込んだ接着剤4の熱の授受が、連通溝6に流れ込んだ接着剤4を介して行われて接着剤4の温度が均一になりやすい。このため、接着剤4の流動性のばらつきを抑制することができる。
【0014】
また、隣り合う接着剤充填溝5の接着剤4同士に温度差がある場合、接着剤充填溝5間を連通する連通溝6を介して熱拡散が生じる。すなわち、接着剤4の温度が高い側から低い側への熱の移動が生じるため、接着剤4の温度勾配が解消され接着剤4の流動性のばらつきがより小さくなる。その結果、接着剤4を冷却固化したときに、基板3同士の接着強度をより均一にすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−319665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に開示されている接続構造体1では、接着剤4の加熱時に、1つの連通溝6において、連通溝6を挟んで両側の接着剤充填溝5から連通溝6内へ接着剤4が流れることがある。すなわち、1つの連通溝6に2つの向かい合う流れが発生し、連通溝6における接着剤4の流れやすさが低下する。このため、場所によって連通溝6における接着剤4の流れやすさが低いことを考慮して、接着剤4の温度を均一にするための接着剤4の加熱時間を比較的長くする必要があり、基板3同士を接着する工程の生産性の低下の要因となっていた。
【0017】
そこで、本発明は、より短い接着剤加熱時間で、基板同士の接着強度のばらつきをより小さくすることができる接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の一の態様は、複数の接続端子が間隙を隔てて配列された2つの基板を、接着剤を用いて電気的に接続する接続構造体に係る。この態様において、2つの基板を接続するために接着剤が充填される接着剤充填溝であって、接続端子が配列された方向に接続端子の各々を挟んで設けられた接着剤充填溝と、接続端子を挟む2つの接着剤充填溝を連通するように接続端子を横断する連通溝からなり、2つの基板の接続端子が対向した状態で接着剤が流れる複数の流路と、を備え、流路の少なくとも1つは、接続端子を挟む2つの接着剤充填溝のうちの一方の接着剤充填溝から2つの接着剤充填溝のうちの他方の接着剤充填溝へ流れる接着剤の流動抵抗が他方の接着剤充填溝から一方の接着剤充填溝へ流れる接着剤の流動抵抗よりも小さく、他の流路のうちの少なくとも1つは、他方の接着剤充填溝から一方の接着剤充填溝へ流れる接着剤の流動抵抗が一方の接着剤充填溝から他方の接着剤充填溝へ流れる接着剤の流動抵抗よりも小さい。
【発明の効果】
【0019】
本発明における接続構造体よれば、より短い接着剤加熱時間で、基板同士の接着強度のばらつきをより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態における接続構造体を備えた基板の平面図および断面図である。
【図2】接続構造体の一部(図1に示すB部)を拡大した平面図である。
【図3】流路の他の実施形態を示す平面図である。
【図4】本実施形態における接続構造体を備えた基板同士を、接着剤を用いて接着したときの平面図および断面図ある。
【図5】本実施形態における接続構造体を備えた基板同士の接着方法を説明するための図である。
【図6】従来における、接続されていた基板同士を分離した状態の接続構造体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態における接続構造体について、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態における接続構造体は、接着剤を用いて接続構造体同士を接着する場合に有効である。
【0022】
図1(a)は、本発明の実施形態における接続構造体を備えた基板の平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す基板および接続構造体をA−A線で切断したときの断面図である。
【0023】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態における接続構造体1は、基板3上に設けられた細長い複数の接続端子2と、複数の接続端子2を囲うように基板3に設けられた枠体7と、を備えている。
【0024】
複数の接続端子2は間隙を隔てて配列されている。また、各々の接続端子2は、基板3上に設けられた配線8と電気的に接続されている。配線8は、基板3上に設けられた電子部品(不図示)と電気的に接続されており、接続端子2および配線8を介して該電子部品と外部との間で電力や電気信号の送受ができるようになっている。
【0025】
また、接続構造体1は、基板3を同じ他の接続構造体を備える基板(以下、他の基板)と接続するときに接着剤が充填される接着剤充填溝5を備えている。接着剤充填溝5は、枠体7の内側面または接続端子2の側面と、基板3の、接続端子2および枠体7を備える面と、で形成されている。接着剤充填溝5の、基板3と接続される他の基板と対向する側は開口となっており、該開口から接着剤充填溝5へ接着剤が流れ込むことができる。
【0026】
枠体7の内側面は、接続端子2の長手方向の端面と接している。また、枠体7は、接続端子2の配列の端に位置する接続端子2と間隙を隔てて設けられており、該間隙も接着剤充填溝5の1つとなっている。
【0027】
さらに、接続端子2の上面には、接続端子2を挟む2つの接着剤充填溝5を連通するように接続端子2を横断する連通溝6が複数設けられている。接続端子2と他の基板の接続端子2とが対向した状態で連通溝6から流路が形成される。接着剤は、該流路を流れることができる。
【0028】
ここで、接続構造体1における流路について、図2を用いて詳述する。図2は、接続構造体1の一部(図1(a)に示すB部)を拡大した平面図である。なお、図2は、接続構造体1に、熱を加えられて流動性が高められた接着剤4が接着剤充填溝5および連通溝6に充填された状態の図であり、連通溝6(図1)から流路9が形成されている。
【0029】
図1(a)および図2では、1つの接続端子2に対して2つの流路9が設けられているが、もちろん流路9が3つ以上設けられていてもよい。
【0030】
2つの流路9のうちの一方の流路9aでは、一方の接着剤充填溝5aから他方の接着剤充填溝5bへ流れる接着剤4の流動抵抗が、他方の接着剤充填溝5bから一方の接着剤充填溝5aへ流れる接着剤4の流動抵抗よりも小さい。また、2つの流路9のうちの他方の流路9bでは、他方の接着剤充填溝5bから一方の接着剤充填溝5aへ流れる接着剤4の流動抵抗が一方の接着剤充填溝5aから他方の接着剤充填溝5bへ流れる接着剤4の流動抵抗よりも小さい。
【0031】
本実施形態では、このような流路9を実現する構造として、流路9の、流れ方向に対して垂直な断面の面積(以下、流路断面積と称す)が、流れ方向に向かって変化する構造を採用している。
【0032】
具体的には、一方の流路9aでは、一方の接着剤充填溝5aから他方の接着剤充填溝5bへ向かって流路断面積が大きくなっている。したがって、一方の流路9aを一方の接着剤充填溝5aから他方の接着剤充填溝5bへ向かう流れ方向F1の流れでは、接着剤4は広がりながら流れる。一方の流路9aを他方の接着剤充填溝5bから一方の接着剤充填溝5aへ向かう流れ方向F2の流れでは、接着剤4は圧縮されていく。そのため、流れ方向F1における接着剤4の流動抵抗は、流れ方向F2における接着剤4の流動抵抗よりも小さくなる。
【0033】
同様に、他方の流路9bでは、他方の接着剤充填溝5bから一方の接着剤充填溝5aへ向かって流路断面積が大きくなっている。したがって、他方の流路9aを他方の接着剤充填溝5bから一方の接着剤充填溝5aへ向かう流れ方向F3の流動抵抗は、一方の接着剤充填溝5aから他方の接着剤充填溝5bへ向かう流れ方向F4の流動抵抗よりも小さくなる。
【0034】
2つの接着剤充填溝5a、5bに貯留されている接着剤4に温度差がある場合、接着剤4が2つの接着剤充填溝5a、5bとの間を移動する流れが生じる。このとき、一方の流路9aでは流れ方向F1の方が流れ方向F2よりも流動抵抗が小さいため流れ方向F1の流れが生じ、他方の流路9bでは流れ方向F3の方が流れ方向F4よりも流動抵抗が小さいため流れ方向F3の流れが生じる。
【0035】
したがって、一方の接着剤充填溝5aと他方の接着剤充填溝5bとの間を接着剤が循環する流れが生じ、2つの接着剤充填溝5a、5bに貯留されている接着剤が効率よく混ざり合う。その結果、2つの接着剤充填溝5a、5bにおける温度差はより短い時間で解消される。
【0036】
本実施形態では、流路9aおよび9bを接続端子2に設けているが、接続端子2以外の場所、例えば枠体7に設けてもよい。
【0037】
さらに、図3に示すように、流路9の流れ方向での流路断面積の変化が、それぞれの接着剤充填溝5を連通する流路9毎に異なっていてもよい。図3は、流路9の他の実施形態を示す平面図である。
【0038】
流路9の流れ方向での流路断面積の変化をより大きくすることによって、接着剤4がより流れやすくなり、接着剤4の循環量を増やすことができる。これは、これは、基板3(図1)に設けられた電子部品(不図示)により基板3の熱伝導率が部分的に異なっている場合に有効である。つまり、基板3の熱伝導率が部分的に大きく接着剤4の熱が放出されやすい部分における流路9の流れ方向での流路断面積の変化をより大きくして接着剤4の循環量を多くすることによって、接着剤4の温度や流動性のばらつきをより抑制することができる。
【0039】
図4(a)は、本発明の実施形態における接続構造体を備えた基板同士を、接着剤を用いて接着したときの平面図であり、図4(b)は、図4(a)に示す基板および接続構造体をC−C線で切断したときの断面図である。
【0040】
図4(a)および(b)に示すように、第一の基板3aに第一の接続構造体1aが設けられており、第二の基板3bに第二の接続構造体1bが設けられている。第一および第二の基板3a、3bは、第一および第二の接続構造体1a、1bを対向して配置し、第一および第二の接続構造体1a、1bの間に充填された接着剤4が硬化することによって接着される。
【0041】
第二の接続構造体1bに設けられた第二の接続端子2bは、第一の接続構造体1aに設けられた第一の接続端子2aに対応して配置されている。したがって、第一の接続構造体1aと第二の接続構造体1bとが圧着されたとき、第一の接続端子2aと第二の接続端子2bとが電気的に接続される。
【0042】
また、本実施形態では、第一の接続構造体1aに含まれている枠体7は、第一および第二の基板3a、3bが接着されたときに第二の基板3bに当接する。すなわち、接着剤充填溝5は流路9で連通されている部分以外は塞がれた状態となり、接着剤4は枠体7で囲まれている領域から漏れない。
【0043】
したがって、流動性を高められた接着剤4の流れは流路9を介して各接着剤充填溝5の間を移動する流れのみとなり、接着剤4は、接着剤4が枠体7で囲まれている領域から漏れる場合に比べて流路9をより流れやすくなる。枠体7を用いて接着剤4の漏れを抑制することにより、各接着剤充填溝5に貯留されている接着剤4はより高い効率で混ざり合う。
【0044】
なお、枠体7が第一および第二の接続構造体1a、1bのそれぞれに含まれ、それぞれの枠体7が当接して接着剤4の漏れを抑制する構造でもよい。また、流路9は、第一または第二の接続構造体1a、1bの少なくともどちらか一方に設けられた連通溝6(図1)から形成されていればよい。
【0045】
次に、本実施形態における接続構造体1を備えた基板3を他の基板に接着する方法について説明する。図5は、本実施形態における接続構造体1を備えた基板3を他の基板に接着する方法を説明するための図である。
【0046】
図5(a)に示すように、作業者は、まず、第一の基板3a及び第二の基板3bを用意し、第二の基板3bに接着剤4を塗布する。第一および第二の基板3a、4bには第一および第二の接続構造体1a、1bが設けられており、第二の接続構造体1bを覆うように接着剤4を塗布する。
【0047】
第二の接続構造体1bを覆うように接着剤4を塗布するとき、接着剤4の、第二の基板3bに対して垂直な方向の厚さを、接着したときの2つの基板3a、3bの間隔よりも大きくすることが望ましい。このようにすることによって、接着剤充填溝5に接着剤4を充填させることができる。
【0048】
なお、第一の接続構造体1aに接着剤4を塗布してもよいし、2つの接続構造体1a、1bの両方に接着剤4を塗布してもよい。
【0049】
次に、図5(b)に示すように、第一および第二の接続構造体1a、1bを対向して配置し、第一および第二の接続構造体1a、1bを圧着する。このとき、接着剤4に熱を加えるための加熱手段10を用いて接着剤4を加熱しながら圧着する。接着剤4を加熱することによって接着剤4の流動性が高められ、さらに2つの接続構造体1a、1bを圧着することによって接着剤4は接着剤充填溝5に流れ込む。
【0050】
加熱手段10による接着剤4への加熱方法や、2つの基板3a、3bにおける熱伝導の影響により、接着剤4の温度や流動性にばらつきが生じることがある。本実施形態では、図1および図2に示すように、1つの接続端子2を挟む接着剤充填溝5が連通溝6で連通されているため、接着剤4は連通溝6を介して各接着剤充填溝5の間を移動することができる。
【0051】
また、連通溝6は、基板3の接続端子2が対向した状態で接着剤4が流れる流路9を形成する。1つの接続端子2に2つの連通溝6が設けられており、対向する接続端子2の1つには2つの流路9が形成される。
【0052】
さらに、2つの流路9のうちの一方の流路9aでは、一方の接着剤充填溝5aから他方の接着剤充填溝5bへ流れる接着剤4の流動抵抗が、他方の接着剤充填溝5bから一方の接着剤充填溝5aへ流れる接着剤4の流動抵抗よりも小さい。また、他方の流路9bでは、他方の接着剤充填溝5bから一方の接着剤充填溝5aへ流れる接着剤4の流動抵抗が一方の接着剤充填溝5aから他方の接着剤充填溝5bへ流れる接着剤4の流動抵抗よりも小さい。
【0053】
すなわち、接着剤4は、一方の流路9aでは一方の接着剤充填溝5aから他方の接着剤充填溝5bへ流れやすく、他方の流路9bでは他方の接着剤充填溝5bから一方の接着剤充填溝5aへ流れやすい。
【0054】
したがって、2つの接着剤充填溝5a、5bに貯留されている接着剤4に温度差がある場合、2つの接着剤充填溝5a、5b間での熱対流に伴って接着剤4が一方の接着剤充填溝5aと他方の接着剤充填溝5bとの間を循環する。その結果、2つの接着剤充填溝5a、5bに貯留されている接着剤4が効率よく混ざり合い、各接着剤充填溝5における接着剤4の温度や流動性のばらつきはより短い時間で解消される。
【0055】
接着剤4の温度や流動性が均一になったところで、加熱手段10による接着剤4への加熱を停止し、接着剤4を冷却硬化させる。冷却硬化を開始するときには、接着剤4の流動性は各接着剤充填溝5間で均一になっており、接着剤4の流動性が不足している箇所がない。すなわち、各接着剤充填溝5に接着剤4が十分に流れ込んでおり、この状態で接着剤4を冷却硬化することによって、接着剤4の接着強度のばらつきを抑制することができる。
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、以下の説明では上述した実施形態において示したのと同じ部分に対しては同じ符号を用いて説明する。
【0057】
(実施例1)
第一の実施例では、図4に示す第一の基板3aとしてプリント配線基板を用意し、第二の基板3bとしてフレキシブル配線基板を用意した。第一の接続端子2a間、および第二の接続端子2b間の間隙は0.2mmから0.5mmとした。
【0058】
本実施例では、第一の接続端子2a間、および第二の接続端子2b間の絶縁性を保持するために、接着剤4として異方導電性を有する接着剤を用いた。具体的には、導電粒子を有する異方性導電膜(Anisotropic Conductive Film:ACF)を用いた。
【0059】
もちろん、接着剤4は、ACFに限られるものではなく、導電粒子を含まない異方性導電膜(Non Conductive Film:NCF)でもよい。導電粒子を有する異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste:ACP)、導電粒子を含まない異方性導電ペースト(Non Conductive Paste:NCP)でもよい。また、接続端子2の間の絶縁性を必要としない場合には、全方向に導電性を有する接着剤を用いてもよい。
【0060】
流路9は、流れ方向と平行な断面が台形形状の形を有するものとし、該台形形状の上底の長さを導電粒子の直径(4〜5μm)よりも大きくかつ1mm以下とし、該台形形状の下底の長さを上底の長さに50μmから200μmを加えた長さとした。
【0061】
このような条件で第一および第二の基板3a、3bを電気接続したところ、第一および第二の接続端子2a、2bの接続強度のばらつきについて図6の連通溝6を用いるものと比べて小さくすることができた。
【符号の説明】
【0062】
1 接続構造体
2 接続端子
3 基板
4 接着剤
5 接着剤充填溝
6 連通溝
7 枠体
9 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接続端子が間隙を隔てて配列された2つの基板を、接着剤を用いて電気的に接続する接続構造体であって、
前記2つの基板を接続するために前記接着剤が充填される接着剤充填溝であって、前記接続端子が配列された方向に前記接続端子の各々を挟んで設けられた接着剤充填溝と、
前記接続端子を挟む2つの前記接着剤充填溝を連通するように前記接続端子を横断する連通溝からなり、前記2つの基板の前記接続端子が対向した状態で前記接着剤が流れる複数の流路と、を備え、
前記流路の少なくとも1つは、前記接続端子を挟む2つの接着剤充填溝のうちの一方の接着剤充填溝から前記2つの接着剤充填溝のうちの他方の接着剤充填溝へ流れる前記接着剤の流動抵抗が前記他方の接着剤充填溝から前記一方の接着剤充填溝へ流れる前記接着剤の流動抵抗よりも小さく、
他の前記流路のうちの少なくとも1つは、前記他方の接着剤充填溝から前記一方の接着剤充填溝へ流れる前記接着剤の流動抵抗が前記一方の接着剤充填溝から前記他方の接着剤充填溝へ流れる前記接着剤の流動抵抗よりも小さい、接続構造体。
【請求項2】
前記流路の少なくとも1つは、前記一方の接着剤充填溝から前記他方の接着剤充填溝へ向かって前記接着剤の流れ方向に対して垂直な断面の面積が大きくなっており、
他の前記流路の少なくとも一つは、前記他方の接着剤充填溝から前記一方の接着剤充填溝へ向かって前記接着剤の流れ方向に対して垂直な断面の面積が大きくなっている、請求項1に記載の接続構造体。
【請求項3】
前記流路の、流れ方向に対して垂直な断面の面積の該流れ方向での変化が、それぞれの前記接着剤充填溝を連通する前記流路毎に異なっている、請求項1または2に記載の接続構造体。
【請求項4】
前記接着剤充填溝は、前記2つの基板が接続されたときに前記流路で連通されている部分以外は塞がれる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−69653(P2012−69653A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212050(P2010−212050)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】