説明

接続構造体

【課題】フレキシブル基板とリジッド基板との間の配線どうしの接続について、配線間が狭ピッチ化しても、配線間のショートのおそれがなく、しかも高い信頼性が得られるようにした接続構造体を提供する。
【解決手段】第1配線2が設けられたフレキシブル基板3と、リジッド基材5a上に第2配線7が設けられたリジッド基板5と、フレキシブル基板3とリジッド基板5との間を、第1配線2と第2配線4とが接続した状態で接続固定する第1樹脂層6と、を備えた接続構造体1である。リジッド基板5にはリジッド基材5aと第2配線7との間に第2樹脂層7が形成されている。第2配線4が第1配線2と接続することで変形しているとともに、第2樹脂層7も第2配線4の変形に倣って弾性変形しており、これら第2配線4の変形状態と第2樹脂層7の弾性変形状態とが第1樹脂層6によって保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板やフレキシブル基板等の回路基板の電極に、他のガラス基板やフレキシブル基板、あるいは電子部品等の回路基板の電極を電気的に接合する技術として、導電粒子が分散された接着剤樹脂組成物、例えば異方導電性ペースト(ACP)や異方導電性フィルム(ACF)を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術は、接合対象となる電極間にACP又はACFからなる異方導電性接着剤を配置し、回路基板を介して異方導電性接着剤を圧着ツールで加熱加圧することで、該異方導電性接着剤を溶融させ、導電粒子を介して電極間を導通させる技術である。
【0003】
このような異方導電性接着剤等を用いる電極接合技術は、様々な形態の電極接合に適応可能であり、例えば、ガラス基板とフレキシブル基板との電極接合(FOG)、ガラス基板とICチップ部品との電極接合(COG)、フレキシブル基板とICチップ部品との電極接合(COF)、プリント配線基板とICチップ部品との電極接合、フレキシブル基板とフレキシブル基板との電極接合、フレキシブル基板とプリント配線基板との電極接合等、幅広く適用されている。
【0004】
ところで、近年ではガラス基板の配線(電極)とフレキシブル基板の配線(電極)との接合技術が、例えばフラットパネルの接合技術として用いられている。このような接合技術では、電極間に高電圧が印加されるときの信頼性の確保とともに、電子機器の高密度化に伴って隣接する配線(電極)間の更なる狭ピッチ化(微細化)が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−306024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ACF又はACPからなる異方導電性接着剤を用いた接続方法では、配線(電極)ピッチが更に微細化された場合、粒子捕捉性や端子間絶縁性について以下のような課題が生じる。
ACFやACPによる接続では、樹脂中の導電粒子で配線間の導通を得るため、基板に形成配置された配線(電極)の幅が狭ピッチ化に伴って細く(狭く)なると、接続面の面積が小さくなり、接続面上に十分な量の導電粒子が捕捉(確保)されなくなってしまう。その結果、安定した導通が得られなくなったり、抵抗が大きくなってしまう。
【0007】
なお、導電粒子を十分に捕捉(確保)するべく配線幅を太くし、接続面積を大きくしようとすると、配線(電極)の狭ピッチ化(微細化)が困難になってしまう。
また、狭ピッチ化により幅を狭くした配線(電極)の接続面上に、確実に導電粒子がのるように前記ACFやACP中の導電粒子の数を増やすことも考えられるが、その場合には、隣り合う配線間に導電粒子が分散することで、これら配線間でショートが発生するおそれが生じる。
【0008】
このような課題を解決するには、異方導電性接着剤から導電粒子を無くしたNCP(絶縁樹脂ペースト)やNCF(絶縁樹脂フィルム)等の絶縁樹脂、例えば熱硬化性樹脂のみを用いることが効果的である。
しかしながら、その場合には、熱硬化性樹脂に熱や湿度による緩みが発生した際、導電粒子が無いことで配線間の接続信頼性が低下するといった新たな課題が生じる。すなわち、導電粒子がある場合には、熱硬化性樹脂に緩みが発生しても配線間において弾性変形した状態にある導電粒子が弾性復帰すること、つまり導電粒子が反発することより、配線と導電粒子との接触が安定維持され、配線(電極)間の導通が確保される。しかし、導電粒子が無い場合にはこのような導電粒子による作用が得られず、前記したように配線間の接続信頼性が低下してしまう。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、特にフレキシブル基板とリジッド基板との間の配線どうしの接続について、配線間が狭ピッチ化しても、配線間のショートのおそれがなく、しかも高い信頼性が得られるようにした接続構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の接続構造体は、第1配線が設けられたフレキシブル基板と、リジッド基材上に第2配線が設けられたリジッド基板と、これらフレキシブル基板とリジッド基板との間を、前記第1配線と前記第2配線とが接続した状態で接続固定する第1樹脂層と、を備えてなり、
前記リジッド基板には、前記リジッド基材と前記第2配線との間に第2樹脂層が形成され、
前記第2配線が前記第1配線と接続することで変形しているとともに、前記第2樹脂層も前記第2配線の変形に倣って弾性変形しており、これら第2配線の変形状態と第2樹脂層の弾性変形状態とが前記第1樹脂層によって保持されていることを特徴としている。
【0011】
この接続構造体によれば、例えば第1樹脂層が熱や湿度により膨張し、該第1樹脂層に緩みが発生すると、該第1樹脂層による第2配線の変形状態や第2樹脂層の弾性変形状態の保持のための規制力も緩み、第2樹脂層が弾性復帰することで反発力を発揮し、第1配線や第2樹脂層の変形状態が一部元に戻る。すると、第2配線が第1配線側に戻り、これによって第1配線と第2配線との間の接触状態が良好に維持される。したがって、第1配線と第2配線との間の導通が良好に確保され、配線間の高い接続信頼性が得られる。
【0012】
また、前記接続構造体において、前記第1樹脂層は熱硬化性樹脂からなっており、該第1樹脂層が硬化させられた際の温度における該第1樹脂層の弾性率は、前記温度におけるフレキシブル基板の基材の弾性率より小さいことが好ましい。
このように、フレキシブル基板とリジッド基板とを第1樹脂層で接続するべく、該第1樹脂層を熱硬化させた際、その温度での第1樹脂層の弾性率が該温度でのフレキシブル基板の基材の弾性率より小さければ、第1樹脂層はフレキシブル基板の基材に比べて相対的に変形し易くなり、逆にフレキシブル基板の基材は第1樹脂層に比べて相対的に変形しにくくなる。したがって、第1樹脂層が硬化させられた際にフレキシブル基板の基材が変形するのが防止される。
【0013】
また、前記接続構造体において、前記第1配線および前記第2配線は、いずれも、少なくともその表層部が貴金属からなっているのが好ましい。
このようにすれば、第1配線、第2配線はいずれもその表層部が酸化しにくく、したがって酸化膜が形成されにくくなっているため、配線間の抵抗上昇が抑えられ、導通不良が確実に防止される。
【0014】
また、前記接続構造体において、前記第2配線の配線幅は、前記第1配線の配線幅より広いことが好ましい。
このようにすれば、第1配線と第2配線とが当接させられ、その状態で加圧されると、配線幅の広い第2配線の方が凹んだ状態に変形し易くなる。したがって、この第2配線の変形に倣って第2樹脂層も容易に弾性変形するようになる。
【0015】
また、前記接続構造体において、前記第2配線の厚さは、前記第1配線の厚さより薄いことが好ましい。
このようにすれば、第1配線と第2配線とが当接させられ、その状態で加圧されると、厚さの薄い第2配線の方が凹んだ状態に変形し易くなる。したがって、この第2配線の変形に倣って第2樹脂層も容易に弾性変形するようになる。
【0016】
また、前記接続構造体において、前記第1配線および前記第2配線はいずれも複数設けられており、前記第2樹脂層の厚さは、前記第1配線間の厚さのばらつき、および前記第2配線間の厚さのばらつきより厚いことが好ましい。
このようにすれば、各配線間のばらつきが第2樹脂層で吸収されることにより、全ての第1配線とこれに対応する第2配線とが確実に接触するようになる。
【0017】
また、前記接続構造体において、前記第1配線および前記第2配線はいずれも複数設けられており、前記第2配線の変形厚さの最大値は、前記第1配線間の厚さのばらつきと前記第2配線間の厚さのばらつきとの和より大きいことが好ましい。
このようにすれば、各配線間のばらつきが第2配線の変形で吸収されることにより、全ての第1配線とこれに対応する第2配線とが確実に接触するようになる。
【0018】
また、前記接続構造体において、前記第1配線は、その幅方向の断面形状が、先端側を凸とする山型となっているのが好ましい。
このようにすれば、第1配線と第2配線とが当接させられ、その状態で加圧されると、先端側を凸とする山型の第1配線に押圧されることにより、第2配線が凹んだ状態により容易に変形するようになる。したがって、この第2配線の変形に倣って第2樹脂層も容易に弾性変形するようになる。また、第1配線の先端側が山型となっていることで、第1配線と第2配線との間の樹脂がこれらの間から排出され易くなり、したがって第1配線と第2配線との間がより良好に導通するようになる。
【0019】
なお、この接続構造体において、前記第1配線は、その幅方向の断面形状が、先端側を角部とする山型となっているのが好ましい。
このようにすれば、山型の第1配線に押圧されることにより、第2配線がさらに容易に変形するようになる。また、第1配線と第2配線との間の樹脂が、これらの間からより確実に排出され易くなり、したがって第1配線と第2配線との間がより良好に導通するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の接続構造体の一実施形態を示す要部側断面図である。
【図2】(a)〜(c)は図1に示した接続構造体の製造工程説明図である。
【図3】本発明の接続構造体の他の実施形態を示す要部側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明に係る接続構造体を詳しく説明する。なお、各図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて示している場合がある。
図1は、本発明の接続構造体の一実施形態を示す図であり、図1中符号1は接続構造体である。この接続構造体1は、複数の第1配線2が設けられたフレキシブル基板3と、複数の第2配線4が設けられたリジッド基板5と、これらフレキシブル基板3とリジッド基板5との間を、前記第1配線2と前記第2配線4とが接続した状態で接続固定する第1樹脂層6と、を備えて構成されたものである。
【0022】
フレキシブル基板3は、ポリイミド膜やフォトソルダーレジスト膜からなるフィルム状の絶縁体(基材)3a上に、第1配線2を形成したもので、柔軟性があり、大きく変形させることが可能なプリント基板である。第1配線2は、その一部が電極または接続端子として機能するもので、例えば絶縁体3aに設けられた銅箔がエッチング等によってパターニングされて形成されたものであり、さらにその表面に金メッキが施されたことにより、表層部に金メッキ層(貴金属層)2aを形成したものである。
【0023】
また、第1配線2は、本実施形態では互いに並列した状態で等間隔に整列配置されたもので、特に狭ピッチ化に伴い、その配線幅が20〜40μm程度、隣り合う第1配線2、2間のピッチ(中心線間の距離)が50〜80μm程度に形成されたものである。また、これら第1配線2の横断面形状、すなわち幅方向における断面形状は、図1に示すように接続側となる先端側が狭く、絶縁体3aに接する基端側が広い台形状になっている。これは、前述したように銅箔をエッチング等によってパターニングすることで形成していることによる。なお、本実施形態において前記配線幅は、後述する第2配線4との接続面となる側の幅、すなわち先端側の狭い幅によって定義される。
【0024】
また、第1配線2は、その厚さ(高さ)が10〜15μm程度となっている。なお、これら複数の第1配線2間には、製造上、その厚さに僅かながらばらつきがある。この第1配線2間のばらつきについては、本発明では最大厚さ(max1)と最小厚さ(min1)との差(R1)で定義する。実際には、このばらつき(R1)は厚さの10%以下程度、すなわち2μm以下程度となっている。
【0025】
リジッド基板5は、ガラスやシリコン等の無機材料からなるリジッド基材5a上に第2樹脂層7を形成し、この第2樹脂層上に第2配線4を形成したもので、基本的には柔軟性がほとんどなく、したがって変形させることがほとんどできないプリント基板である。
第2樹脂層7は、リジッド基材5a上面の全面に形成されたもので、ポリイミド樹脂やアクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の感光性絶縁樹脂や熱硬化性絶縁樹脂などによって形成されたものである。
【0026】
この第2樹脂層7は、その厚さが、前記した第1配線2間の厚さのばらつき(R1)、および後述する第2配線4間の厚さのばらつき(R2)より厚くなるように形成されている。具体的には、前記したように第1配線2間の厚さのばらつきが2μm以下程度であり、後述するように第2配線4間の厚さのばらつきも2μm以下程度であるのに対し、この第2樹脂層7の厚さは5〜20μm程度となっている。このように第1配線2間の厚さのばらつき(R1)、および第2配線4間の厚さのばらつき(R2)より厚く形成されているため、各配線間のばらつきが第2樹脂層7で容易に吸収されるようになる。
【0027】
第2配線4は、前記第1配線2と同様にその一部が電極または接続端子として機能するもので、前記第1配線2と同様に銅箔の表層部に金メッキ層(貴金属層)を形成したもの、あるいは金等の貴金属によって直接形成されたものである。
また、第2配線4は、互いに並列した状態で等間隔に整列配置されたもので、第1配線2に対応して狭ピッチ化されたものであり、隣り合う第2配線4、4間のピッチ(中心線間の距離)が第1配線2間のピッチと同じピッチに形成されたものである。
【0028】
これら第2配線4は、その配線幅が第1配線2の配線幅より広く形成されている。例えば、第1配線2の配線幅に対し、1.2倍から2.0倍程度に広く形成されている。このようにすることで、後述するように製造時において第1配線2と第2配線4とを当接させ、その状態で加圧した際、第2配線4は第1配線2に押圧されることで容易に凹状に変形するようになる。なお、この第2配線4の配線幅も、第1配線2との接続面となる側の幅、すなわち先端側の幅からなっている。
【0029】
また、これら第2配線4は、その厚さ(高さ)が第1配線2の厚さ(高さ)より薄く(低く)形成されている。例えば、第1配線2の厚さに対し、0.8倍から0.1倍程度に薄く形成されている。このようにすることで、後述するように製造時において第1配線2と第2配線4とを当接させ、その状態で加圧した際、第2配線4は第1配線2に押圧されることで容易に凹状に変形するようになる。
【0030】
なお、これら複数の第2配線4間にも、製造上、その厚さに僅かながらばらつきがある。この第2配線4間のばらつきについても、本発明では最大厚さ(max2)と最小厚さ(min2)との差(R2)で定義する。実際には、このばらつき(R2)も厚さの10%以下程度、すなわち2μm以下程度となっている。
【0031】
第1樹脂層6は、異方導電性接着剤から導電粒子を無くしたNCP(絶縁樹脂ペースト)やNCF(絶縁樹脂フィルム)等の絶縁樹脂、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性絶縁樹脂からなるものである。このような熱硬化性絶縁樹脂としては、特に、後述する製造工程において該熱硬化性絶縁樹脂を硬化し第1樹脂層6を形成する際の温度における該第1樹脂層6の弾性率が、前記温度におけるフレキシブル基板3の絶縁体(基材)3aの弾性率より小さいものが好適に用いられる。なお、ここでいう弾性率は体積弾性率であって、圧力をかけたときの体積の縮みと力の関係から求められる定数であり、変形のしにくさを表す物性値である。
【0032】
また、この第1樹脂層6は、前記したようにフレキシブル基板3とリジッド基板5との間を接続固定するもので、特に第1配線2とこれに対応する第2配線4とが接続した状態を保持固定して、フレキシブル基板3とリジッド基板5との間を接続したものである。
この第1樹脂層6は、第1配線2の厚さ(高さ)と第2配線4の厚さ(高さ)との合計厚さよりやや薄い厚さに形成されている。これは、第1配線2と第2配線4とが接続した際、後述するように互いに押し付けられる方向に加圧されることで、主に第2配線4側が凹状に変形し、さらにこれに倣って第2樹脂層7も凹状に弾性変形するからである。
【0033】
フレキシブル基板3は、その第1配線2がリジッド基板5の対応する第2配線4に対してそれぞれ接続するように位置決めされ、その状態で加圧されている。したがって、第1配線2と第2配線4とは接続した際に互いに押し付けられ、これによって主に第2配線4側が凹状に変形させられている。すなわち、幅が広く厚さが薄い第2配線4の方が、変形し易くなっている。また、これに倣って第2樹脂層7も凹状に弾性変形させられている。そして、この状態で第1樹脂層6が硬化させられている。したがって、第1配線2は凹状に変形した状態で第1樹脂層6に固定され、また第2樹脂層7も凹状に弾性変形した状態で第1樹脂層6に固定されている。
【0034】
ここで、このように凹状に変形した第1配線2の変形厚さ(変形量)、すなわち第2配線4に当接せず、したがって変形していない面から第2配線4に当接し押圧されて凹んでいる(変形している)面までの距離(変形厚さ)は、第1配線2や第2配線4の厚さ(高さ)にばらつきがあることから、各配線の組間でばらついている。そこで、このようなばらつきがあるうちの最大値、つまり最も変形厚さが大きい配線の組での変形厚さを、第1配線2間の厚さのばらつきと第2配線4間の厚さのばらつきとの和より大きくなるようにするのが好ましい。このようにすることで、各配線間のばらつきを第2配線4の変形(変形厚さ)で吸収することができ、これによって全ての第1配線2とこれに対応する第2配線4とを確実に接触させることができる。
【0035】
このような構成の接続構造体1を製造するには、まず、図2(a)に示すようにリジッド基材5上に第2樹脂層7を介して第2配線4を形成してなるリジッド基板5と、絶縁体3a上に第1配線2を形成してなるフレキシブル基板3とを用意する。そして、第2配線4を上側にしてリジッド基板5を基台(図示せず)上に載置し、その上に第1樹脂層6の形成材料である熱硬化性樹脂6aとして、NCP又はNCFを配置する。
【0036】
次に、リジッド基板5に対してフレキシブル基板3を位置合わせし、図2(b)に示すように複数の第2配線4に対してそれぞれに対応する第1配線2が当接するように、フレキシブル基板3をリジッド基板5上に配置する。その際、第1配線2の接続面(先端側の面)全体が第2配線4の接続面上に載るように、フレキシブル基板3を配置する。
【0037】
次いで、フレキシブル基板3を図示しない加圧装置によって加圧し、リジッド基板5に対してフレキシブル基板3を圧着させる。すると、フレキシブル基板3はその第1配線2を熱硬化性樹脂6a中に下降させ、第2配線4に当接させる。その際、第2配線4と第1配線2との間に存在していた熱硬化性樹脂6aは第1配線2によってかき出され、第2配線4と第1配線2との間から外側に排出される。
【0038】
さらに、加圧装置による加圧が続けられることにより、第2配線4は第1配線2によって押圧され、図2(c)に示すように変形する。また、第2配線4の変形に倣って第2樹脂層7も弾性変形する。
そして、予め設定した加圧状態となるように加圧を行い、第2配線4が設定した変形量となったら、その加圧状態に保持する。なお、リジッド基板5とフレキシブル基板3との間からはみ出た熱硬化性樹脂については、取り除いておく。
【0039】
その後、熱硬化性樹脂6aが硬化する適宜な温度で加熱し、熱硬化性樹脂を硬化させて第1樹脂層6とする。その際、熱硬化性樹脂6aを硬化した温度での硬化後の第1樹脂層6の弾性率が、前記温度におけるフレキシブル基板3の絶縁体(基材)3aの弾性率より小さいので、第1樹脂層6はフレキシブル基板3の絶縁体(基材)3aに比べて相対的に変形し易くなり、逆にフレキシブル基板3の絶縁体3aは第1樹脂層6に比べて相対的に変形しにくくなる。したがって、第1樹脂層6が硬化させられた際にフレキシブル基板3の絶縁体3aが変形するのを防止することができる。
【0040】
そして、このような熱硬化性樹脂6aの硬化による第1樹脂層6の形成により、図1に示した本実施形態の接続構造体1が得られる。
このようにして得られた接続構造体1では、第1配線2によって第2配線4を押圧し、これによって第2配線4を凹状に変形させ、さらにこの第2配線4の変形に倣って第2樹脂層7を弾性変形させ、その状態に保持したままで熱硬化性樹脂6aを硬化させ、第1樹脂層6を形成しているので、第2配線4の変形状態と第2樹脂層7の弾性変形状態とが第1樹脂層6によって保持されたものとなっている。
【0041】
したがって、この接続構造体1にあっては、使用時等において例えば第1樹脂層6が熱や湿度により膨張し、該第1樹脂層6に緩みが発生すると、該第1樹脂層6による第2配線4の変形状態や第2樹脂層7の弾性変形状態の保持のための規制力も緩み、第2樹脂層4が弾性復帰することで反発力を発揮し、第1配線2や第2樹脂層7の変形状態が一部元に戻る。すると、第2配線4が第1配線2側に戻り、これによって第1配線2と第2配線4との間の接触状態が良好に維持される。よって、配線間が狭ピッチ化されていても、第1配線2と第2配線4との間の導通が良好に確保され、配線間の高い接続信頼性が得られるようになる。また、ACPやACFを用いることなく、NCPやNCFなどによって第1樹脂層6を形成しているので、配線間のショートのおそれも無くなる。
【0042】
また、第1配線2および第2配線4を、少なくともその表層部が金(貴金属)からなるように形成しているので、これら第1配線2、第2配線4はいずれもその表層部が酸化しにくくなり、したがって酸化膜が形成されにくくなる。よって、配線間の抵抗上昇を抑え、導通不良を確実に防止することができる。
【0043】
また、第2配線4の配線幅を第1配線2の配線幅より広くしているので、配線幅の広い第2配線4の方が凹んだ状態に変形し易くなり、したがってこの第2配線4の変形に倣って第2樹脂層7も容易に弾性変形するようになる。
また、第2配線4の厚さを第1配線2の厚さより薄くしているので、厚さの薄い第2配線4の方が凹んだ状態に変形し易くなり、したがってこの第2配線4の変形に倣って第2樹脂層7も容易に弾性変形するようになる。
【0044】
また、第2樹脂層7の厚さを、第1配線2間の厚さのばらつき、および第2配線4間の厚さのばらつきより厚くなるようにしているので、各配線間のばらつきを第2樹脂層7で吸収することができ、したがって全ての第1配線2とこれに対応する第2配線4とを確実に接触させることができる。
【0045】
図3は、本発明の接続構造体の他の実施形態を示す図であり、図3中符号10は接続構造体である。この接続構造体10が図1に示した接続構造体1と異なるところは、第1配線11の横断面形状にある。
すなわち、本実施形態の接続構造体10において第1配線11は、第1配線11をその横断面形状で表している図3に示すように、先端側を凸とする山型になっている。
【0046】
特に本実施形態では、先端側を鋭角な角部とする山型になっている。したがって、この第1配線11の配線幅は、図1に示した第1配線2の配線幅に比べ、格段に狭くなっている。なお、この第1配線11も、例えば銅箔がエッチング等によってパターニングされて形成されたもので、その表層部には金メッキ層(貴金属層)11aが形成されている。
【0047】
このような構成からなる接続構造体10によれば、その製造時において第1配線11と第2配線4とが当接させられ、その状態で加圧された際、先端側を角部とする山型の第1配線11に押圧されることにより、第2配線4が凹んだ状態により容易に変形するようになり、この第2配線4の変形に倣って第2樹脂層7も容易に弾性変形するようになる。また、このように第2配線4がより容易に変形するようになるため、フレキシブル基板3側を加圧する際の加圧荷重を小さくすることもできる。さらに、第1配線11の先端側が山型となっていることで、第1配線11と第2配線4との間の樹脂がこれらの間から排出され易くなり、したがって第1配線11と第2配線4との間がより良好に導通するようになる。
【0048】
よって、この接続構造体10にあっても、配線間が狭ピッチ化されているにもかかわらず、第1配線11と第2配線4との間の導通が良好に確保され、配線間の高い接続信頼性が得られるようになる。また、ACPやACFを用いることなく、NCPやNCFなどによって第1樹脂層6を形成しているので、配線間のショートのおそれも無くなる。
なお、本実施形態では、図3に示したように第1配線11の先端側を鋭角な角部とする山型にしたが、この山型としては、先端側が鈍角な角部であってもよく、さらには丸みを有する凸部であってもよい。
【0049】
また、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前記実施形態では第1樹脂層6を熱硬化性樹脂によって形成したが、これに代えて感光性絶縁樹脂を用いてもよい。
また、前記実施形態では、第2樹脂層7をリジッド基材5a上面の全面に形成するようにしたが、例えば第2配線4の形成位置に対応する箇所のみに形成するようにしてもよく、さらには、第2配線4と第1配線2とが接続する箇所に対応する箇所のみに形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…接続構造体、2…第1配線、2a…金メッキ層(貴金属層)、3…フレキシブル基板、3a…絶縁体(基材)、4…第2配線、5…リジッド基板、5a…リジッド基材、6…第1樹脂層、6a…熱硬化性樹脂、7…第2樹脂層、10…接続構造体、11…第1配線、11a…金メッキ層(貴金属層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配線が設けられたフレキシブル基板と、リジッド基材上に第2配線が設けられたリジッド基板と、これらフレキシブル基板とリジッド基板との間を、前記第1配線と前記第2配線とが接続した状態で接続固定する第1樹脂層と、を備えてなり、
前記リジッド基板には、前記リジッド基材と前記第2配線との間に第2樹脂層が形成され、
前記第2配線が前記第1配線と接続することで変形しているとともに、前記第2樹脂層も前記第2配線の変形に倣って弾性変形しており、これら第2配線の変形状態と第2樹脂層の弾性変形状態とが前記第1樹脂層によって保持されていることを特徴とする接続構造体。
【請求項2】
前記第1樹脂層は熱硬化性樹脂からなっており、該第1樹脂層が硬化させられた際の温度における該第1樹脂層の弾性率は、前記温度におけるフレキシブル基板の基材の弾性率より小さいことを特徴とする請求項1記載の接続構造体。
【請求項3】
前記第1配線および前記第2配線は、いずれも、少なくともその表層部が貴金属からなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の接続構造体。
【請求項4】
前記第2配線の配線幅は、前記第1配線の配線幅より広いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の接続構造体。
【請求項5】
前記第2配線の厚さは、前記第1配線の厚さより薄いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の接続構造体。
【請求項6】
前記第1配線および前記第2配線はいずれも複数設けられており、
前記第2樹脂層の厚さは、前記第1配線間の厚さのばらつき、および前記第2配線間の厚さのばらつきより厚いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の接続構造体。
【請求項7】
前記第1配線および前記第2配線はいずれも複数設けられており、
前記第2配線の変形厚さの最大値は、前記第1配線間の厚さのばらつきと前記第2配線間の厚さのばらつきとの和より大きいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の接続構造体。
【請求項8】
前記第1配線は、その幅方向の断面形状が、先端側を凸とする山型となっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の接続構造体。
【請求項9】
前記第1配線は、その幅方向の断面形状が、先端側を角部とする山型となっていることを特徴とする請求項8記載の接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−99551(P2012−99551A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243891(P2010−243891)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】