説明

描画処理装置、描画処理方法、及び描画処理プログラム

【課題】鳥瞰図変換により鳥瞰図を描画すると、本来は交わっていない道路が交差することがある。
【解決手段】地図情報Mは、複数の補間点により補間されるラインに関する情報を含む。逆鳥瞰図変換部68は、所定の視点位置から2次元地図を見下ろした場合の鳥瞰図を表示する画面の表示枠を逆鳥瞰図変換することにより、鳥瞰図として表示される2次元地図上の矩形領域を求める。補間点追加部70は、求めた矩形領域の辺上または内部に存在し、かつ、既存の隣接する補間点の間にあってラインを補間する点を当該ラインの新たな補間点として追加する。鳥瞰図変換部62は、追加された補間点を含め、ラインを補間するための補間点を鳥瞰図変換することにより、視点位置から2次元地図を見下ろした場合の鳥瞰図を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図情報を描画する描画処理装置、描画処理方法、及び描画処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地図を表示する描画処理装置の一例であるナビゲーション装置は様々な分野で用いられており、主に車両等に搭載され、現在地から目的地までの経路を案内するために用いられる。ナビゲーション装置は、自車位置の真上から視線方向を真下に見下ろした2次元地図を表示するヘディングアップモードやノースアップモードを備える他、自車位置の上空の進行方向後ろから視線方向を進行方向先に見下ろした鳥瞰図を表示する3次元モードも備える。
【0003】
鳥瞰図に関して、表示画面領域に対応する台形の道路地図領域を算出して、地図情報から道路地図領域内にある補間点を選出して射影変換するナビゲーション装置が一般的に知られている(たとえば、特許文献1参照)。また、鳥瞰図の作成を高速化するために、道路の補間点を画面表示位置や表示優先度に応じて間引いて、鳥瞰図を表示するナビゲーション装置も提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−160852号公報
【特許文献2】特開平8―159783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された一般的な鳥瞰図の生成技術では、道路を表す連続する複数の補間点を射影変換して、補間点の調整を行い、補間点と補間点を結ぶラインで道路を描画すると、道路を補間する補間点の精度の違いから、本来は交わっていない二つの道路が交差することがある。
【0006】
地図情報内にある道路の補間点は、真上から見た2次元の緯度・経度の座標で構成されている。そのため、鳥瞰図中心位置から離れた2次元地図の補間点は、鳥瞰図変換すると大きく座標が移動する。全道路に対して、1メートル間隔で補間点を格納している地図情報であれば、全補間点を鳥瞰図変換して道路描画するだけで、特許文献1や特許文献2に記載の技術でも正確な鳥瞰図を表示することができる。しかし、実際の地図情報は、1メートル間隔の補間点で構成される道路もあれば、100メートル間隔の補間点で構成される道路もある。特に、道路を表す連続する補間点の距離間隔が互いに異なる2本の道路が近接しており、かつ平行して存在している場合は、鳥瞰図にするために道路の全補間点に対して鳥瞰図変換し、算出した点と点をラインで結ぶと、意図せず交わってしまうことがある。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、2次元地図情報から正確な位置関係をもつ鳥瞰図を作成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の描画処理装置は、ラインを形成するための複数の補間点に関する情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶部と、前記地図情報に基づき描画される2次元地図を所定の視点位置から見下ろしたと仮定した場合の鳥瞰図を表示する画面の表示枠に対して、鳥瞰図生成のための補間点の変換処理とは逆の逆変換処理を行うことにより、鳥瞰図として表示される2次元地図上の矩形領域を求める逆変換処理部と、前記矩形領域の辺上または内部に存在し、かつ、既存の隣接する補間点の間にあってラインを形成するための点を当該ラインの新たな補間点として追加する補間点追加部と、追加された補間点を含め、ラインを形成するための補間点を前記変換処理することにより、前記鳥瞰図を生成する鳥瞰図生成部とを含む。
【0009】
本発明の別の態様は、描画処理方法である。この方法は、ラインを形成するための複数の補間点に関する情報を含む地図情報をメモリから参照するステップと、前記地図情報に基づき描画される2次元地図を所定の視点位置から見下ろしたと仮定した場合の鳥瞰図を表示する画面の表示枠に対して、鳥瞰図生成のための補間点の変換処理とは逆の逆変換処理を行うことにより、鳥瞰図として表示される2次元地図上の矩形領域を求めるステップと、前記矩形領域の辺上または内部に存在し、かつ、既存の隣接する補間点の間にあってラインを形成するための点を当該ラインの新たな補間点として追加するステップと、追加された補間点を含め、ラインを形成するための補間点を前記変換処理することにより、前記鳥瞰図を生成するステップとを含む。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2次元地図情報をもとに正確な位置関係をもつ鳥瞰図を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係るナビゲーション装置の機能を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1の演算装置の構成図である。
【図3】画面に2次元地図を表示する場合の2次元ウィンドウ座標系を説明する図である。
【図4】2次元ウィンドウ座標系の補間点により表示された2次元地図の例を示す図である。
【図5】画面に鳥瞰図を表示する場合の3次元ウィンドウ座標系を説明する図である。
【図6】3次元ウィンドウ座標系の補間点により表示された鳥瞰図の例を示す図である。
【図7】図4の2次元地図を描画するための2次元ウィンドウ座標系の補間点を説明する図である。
【図8】図7に図示された2次元ウィンドウ座標系の補間点を鳥瞰図変換して描画された鳥瞰図を説明する図である。
【図9】鳥瞰図が表示される画面の表示枠を逆鳥瞰図変換して2次元地図内に表示した図である。
【図10】新たに追加された補間点を用いて鳥瞰図変換することにより描画される鳥瞰図を示す図である。
【図11】本実施の形態に係る鳥瞰図生成方法を説明するフローチャートである。
【図12】二つの道路とその補間点を3次元ウィンドウ座標系で示した鳥瞰図である。
【図13】鳥瞰図が表示される図12の画面の表示枠を逆鳥瞰図変換して2次元地図内に表示した図である。
【図14】新たに追加された補間点を用いて鳥瞰図変換することにより描画される鳥瞰図を示す図である。
【図15】二つの道路とその補間点を3次元ウィンドウ座標系で示した鳥瞰図である。
【図16】鳥瞰図が表示される図15の画面の表示枠を逆鳥瞰図変換して2次元地図内に表示した図である。
【図17】新たに追加された補間点を用いて鳥瞰図変換することにより描画される鳥瞰図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るナビゲーション装置1の機能を概略的に示すブロック図である。
【0014】
ナビゲーション装置1は、ユーザであるドライバの現在地を検出する位置検出装置2、補間点と補間点をラインで結ぶ道路地図や道路法規、背景、アイコン、名称に関する地図情報Mなど地図表示に必要な情報を記憶する情報記憶部3、ドライバとのインタフェイスとして機能するユーザインタフェイス部4、及び地図情報Mなどの情報の各種変換処理を行う情報処理部5等を備えている。このようなナビゲーション装置1はドライバが運転する車両等に搭載されて用いられ、そのドライバに出発地から目的地までの最適経路を案内する。
【0015】
位置検出装置2は、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号を受信するGPSセンサ21、ジャイロセンサ22、ビーコンやFM多重放送等からの道路交通情報を受信する道路情報受信センサ23、及び速度センサ24等を備えている。このような位置検出装置2は、外部からの電波や情報を受信し、それらの電波や情報を情報処理部5に送信する。
【0016】
情報記憶部3は、地図情報Mも含め情報処理部5が必要とする各種の情報を記憶し、各種の情報を情報処理部5との間で送受信する。
【0017】
ユーザインタフェイス部4は、音声入力及び音声出力を行うための音声入出力装置41、各種の画面を表示するLCD(液晶ディスプレイ)等のディスプレイ42、ドライバからの操作を受け付けるコントロール装置43等を備えている。このようなユーザインタフェイス部4は、音声情報や画像情報等を情報処理部5との間で送受信する。なお、音声入出力装置41は、情報処理部5により検索された経路を音声案内する。また、音声入出力装置41は音声入力機能を有するため、音声によるドライバからの指示を受け付ける。ここで、音声入出力装置41及びコントロール装置43は入力部として機能し、ディスプレイ42は表示部として機能する。
【0018】
情報処理部5は、各種の演算を行う演算装置51、センサインタフェイス52、通信インタフェイス53及び画像音声処理装置54等を備えている。
【0019】
演算装置51は、各部を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)、CPUが実行する各種プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)、CPUのワークエリア等として機能するRAM(Random Access Memory)、タイマ及び画像メモリ等(いずれも図示せず)から構成されており、各種の演算処理を実行する。たとえば、演算装置51は、後述のアフィン変換部、鳥瞰図変換部、逆鳥瞰図変換部、補間点追加部などの処理を行う。
【0020】
センサインタフェイス52は、位置検出装置2の各センサ21,22,23,24で検出された位置情報を受信し、その位置情報を演算装置51に送信する。また、演算装置51は、その位置情報に基づいて、現在地情報、渋滞情報及び事故情報等の道路情報を求め、さらに、その現在地情報及び目的地情報に基づいて最適経路情報と別経路情報とを求める。
【0021】
なお、目的地情報は、コントロール装置43に対するドライバの操作や音声入出力装置41に対する音声によるドライバの指示により設定される。すなわち、演算装置51は、コントロール装置43に対するドライバの操作や音声入出力装置41に対する音声によるドライバの指示に応じて目的地を設定する。
【0022】
通信インタフェイス53は、情報記憶部3から地図情報Mを取得し、演算装置51に送信する。また、通信インタフェイス53は、ユーザインタフェイス部4のコントロール装置43からの信号を受信する。
【0023】
画像音声処理装置54は、ユーザインタフェイス部4の音声入出力装置41やディスプレイ42にそれぞれ音声情報や画像情報を送信し、外部(例えばドライバ)からの音声情報を受信する。
【0024】
図2は、演算装置51の構成図である。ここでは、演算装置51の機能の内、鳥瞰図を生成するための機能を図示している。
【0025】
地図情報Mは、道路、川、鉄道などのノード情報を含み、各ノード情報は複数の補間点を有する。たとえば、道路の場合、補間点は、緯度・経度の2次元座標と車線数などの道路属性で構成される。車線数により道路の幅が決まる。本明細書では、補間点により補間して表示される道路、川、鉄道などのノードを総称して「ライン」と呼び、ラインを補間するための補間点とラインの属性を含む情報を「ライン情報」と呼ぶ。「ライン」は、ラインの属性に応じた太さをもつ。
【0026】
アフィン変換部60は、情報記憶部3に記憶された地図情報Mに含まれるライン情報をもとにディスプレイ42の画面に2次元地図を描画するため、ラインの補間点の緯度・経度で表された一般座標を縮尺や回転角に応じて、ディスプレイ42の画面に対応した2次元ウィンドウ座標系にアフィン変換する。アフィン変換後の2次元ウィンドウ座標系の補間点72の情報はメモリに記憶される。
【0027】
逆鳥瞰図変換部68は、鳥瞰図が表示されるディスプレイ42の画面の表示枠を逆鳥瞰図変換することにより、鳥瞰図として画面に表示される領域を2次元地図上に射影する。これにより、2次元地図内には鳥瞰図として表示される台形領域が求まる。より具体的には、逆鳥瞰図変換部68は、鳥瞰図が表示される画面の表示枠の頂点(後述の「3次元ウィンドウ座標系」で表される)を逆鳥瞰図変換して、2次元地図上の台形領域の頂点(後述の「2次元ウィンドウ座標系」で表される)を求める。
【0028】
補間点追加部70は、ラインの既存の隣接する補間点の間に、ラインを補間する点を新たな補間点として追加する。この新たな補間点は、鳥瞰図として表示される台形領域の返上または内部に設ける。
【0029】
特に、補間点追加部70は、補間点を順次つないで形成される線分と鳥瞰図として表示される台形領域のいずれかの辺が交わる場合、その交点を当該道路の新たな補間点として追加してもよい。あるいは、補間点追加部70は、台形領域内部において、ラインの補間点の間隔が、他と比べて粗である区間に新たな補間点を追加するようにしてもよい。
【0030】
補間点追加部70は、鳥瞰図として表示される台形領域内に存在する複数のラインについて補間点の密度を求め、補間点の密度が粗であるラインについて優先的に新たな補間点を追加する処理を行ってもよい。あるいは、補間点の密度が所定の閾値よりも高いラインについては新たな補間点を追加する処理をスキップしてもよい。これにより、必要以上に補間点の追加処理を行うのを避けて計算効率を高めることができる。
【0031】
補間点追加部70は、新しい補間点の座標や属性を追加することで、メモリに記憶された2次元ウィンドウ座標系の補間点72の情報を更新する。これにより、道路などのラインは、もともと地図情報Mとして存在していた補間点の他、新たな補間点を加えて補間されることになり、補間精度が高まる。
【0032】
鳥瞰図変換部62は、所定の視点から視線方向に地図を見た場合の鳥瞰図を生成するために、メモリに記憶された2次元ウィンドウ座標系の補間点72を射影変換する。射影変換した補間点に対して、更に奥行き感を出すために調整を行い、3次元ウィンドウ座標系に鳥瞰図変換する。画面中心となる視点位置より画面上部にある補間点データは視点位置方向へ、画面下部にある補間点データは視点位置と反対方向へ移動する。移動量は、視点位置から離れた補間点ほど大きく、画面に対して、視点位置からの縦の成分に比例する。鳥瞰図変換後の3次元ウィンドウ座標系の補間点74の情報はメモリに記憶される。
【0033】
ライン描画部64は、メモリに記憶された3次元ウィンドウ座標系の補間点74をつなぐことで道路などのラインを描画する。ラインの太さは道路の車線数などのライン属性にもとづいて決められる。
【0034】
表示部66は、背景画像にライン描画部64により描画された道路などのラインを合成して得られる鳥瞰図の画像をディスプレイ42に表示する。
【0035】
図3は、画面に2次元地図を表示する場合の2次元ウィンドウ座標系を説明する図である。
【0036】
ヘディングアップモードやノースアップモードでは、道路を真上から見た2次元地図が画面に表示される。ラインの補間点が緯度・経度で与えられる地図情報をXY平面上に表し、XY平面と垂直なZ軸を想定する。ディスプレイ42の画面に表示させる領域がXY平面上の矩形領域ABCD(符号200)であるとすると、矩形ABCDの中心Fが、ディスプレイ42の画面の表示枠abcd(符号210)の中央に表示されるように、矩形ABCDの中心Fの真上に視点Eが設定され、矩形領域ABCDが画面の表示枠abcdにアフィン変換される。具体的には、自車の進行方向や方位に応じた回転角で矩形領域ABCDを回転させた上で、視点高度に応じた縮尺で矩形領域ABCDを表示枠abcdに縮小すればよい。
【0037】
2次元地図を表示する場合、ディスプレイ42の画面の表示枠abcdはXY平面と平行に置かれる。XY平面上の矩形領域ABCD内の補間点をアフィン変換により画面の表示枠abcd内に変換した後の補間点の座標系を「2次元ウィンドウ座標系」と呼ぶ。
【0038】
図4は、2次元ウィンドウ座標系の補間点により表示された2次元地図の例を示す図である。ここでは、真上から見た場合の二本の道路R0、R1と自車Aが2次元で表示されている。
【0039】
情報処理部5は、センサインタフェイス52で受信した位置情報をもとに自車位置を算出する。演算装置51は、自車位置周辺の領域内にある道路などのラインの補間点を地図情報Mから取得し、アフィン変換後の2次元ウィンドウ座標系の補間点をラインで結んで道路などのラインを描画する。ラインのポイント(太さ)は、縮尺と車線数などのライン属性によって算出される。自車位置についても演算装置51がアフィン変換を行い、対応する画面位置に自車位置アイコンAをアイコン描画する。ここで、二つの道路R0と道路R1は途中から平行している。
【0040】
図5は、画面に鳥瞰図を表示する場合の3次元ウィンドウ座標系を説明する図である。
【0041】
視点Eから視線EFに沿ってXY平面上の地図を見下ろすとする。XY平面上の台形領域ABCD(符号300)は、鳥瞰図変換によってディスプレイ42の画面の表示枠abcd(符号310)に変換され、鳥瞰図として表示される。逆に言えば、ディスプレイ42の画面に鳥瞰図が表示される表示枠abcdは、逆鳥瞰図変換によって2次元地図上の台形領域ABCDに変換される。
【0042】
車両の後方からではなく、車両の斜め後方から見た鳥瞰図を生成する場合は、鳥瞰図として表示される領域ABCDは台形ではなく、一般には矩形になることに留意する。いずれの場合でも、鳥瞰図は、車両から遠方に行くほど縮小され、手前ほど拡大されるため、鳥瞰図として表示される2次元地図上の領域ABCDは、画面に対して上側の辺が下側の辺よりも広がりをもつ形状になる。
【0043】
鳥瞰図を表示する場合、ディスプレイ42の画面の表示枠abcdは、3次元空間XYZ内に置かれる。XY平面上の台形領域ABCD内の補間点を鳥瞰図変換により画面の表示枠abcd内に変換した後の補間点の座標系を「3次元ウィンドウ座標系」と呼ぶ。
【0044】
図6は、3次元ウィンドウ座標系の補間点により表示された鳥瞰図の例を示す図である。ここでは、図4の例に対応して、車両の後方から前方を見下ろした見た場合の二本の道路R0、R1と自車Aが立体的に表示されている。
【0045】
二本の道路R0とR1は本来は交わることがないが、単純に二本の道路の補間点を鳥瞰図変換すると、図6のように、鳥瞰図において二本の道路が交差することがある。本実施の形態では、このような不都合が生じないように、逆鳥瞰図変換部68および補間点追加部70の働きにより、道路の補間点が追加され、補間精度が補強される。以下、図6のような不都合が起きる原因を説明した上で、本実施の形態による解決手段について詳しく説明する。
【0046】
図7は、図4の2次元地図を描画するための2次元ウィンドウ座標系の補間点を説明する図である。道路R0は、2次元ウィンドウ座標系の15個の補間点を順につないでライン描画されている。一方、道路R1は、2次元ウィンドウ座標系の4個の補間点H0、H1、H2、H3を順につないでライン描画されている。最初の3つの隣接する補間点H0、H1、H2の間隔に比べて、3番目の補間点H2と4番目の補間点H3の間隔は大きい。また、道路R0と道路R1では、補間点の数に開きがあり、補間精度が大きく異なる。
【0047】
図8は、図7に図示された2次元ウィンドウ座標系の補間点を鳥瞰図変換して描画された鳥瞰図を説明する図である。
【0048】
演算装置51の鳥瞰図変換部62は、視点位置が自車位置の進路後方上空で、視線方向が車両進行方向前方になるように、図7の補間点を鳥瞰図変換する。ライン描画部64は、鳥瞰図変換された3次元ウィンドウ座標系の補間点を順につなぐことで道路を描画する。
【0049】
図8の鳥瞰図において、道路R1の3次元ウィンドウ座標系の4個の補間点H10、H11、H12、H13は、それぞれ、図7の2次元ウィンドウ座標系の4個の補間点H0、H1、H2、H3を鳥瞰図変換して画面に表示したものである。これらの3次元ウィンドウ座標系の4個の補間点H10、H11、H12、H13の隣接する2点をラインで順に結んでいくことで、道路が描画される。
【0050】
図7と図8を見比べればわかるように、道路R1の4番目の補間点H3のX方向(横方向)の座標は、鳥瞰図変換により大きく変化し、画面の中央に移動している。3次元ウィンドウ座標系において、3番目の補間点H12と4番目の補間点H13を結んで道路R1を描画すると、道路R0と交わってしまい、正確な鳥瞰図が得られない。これは、道路R0の補間点の密度が粗であり、鳥瞰図変換により補間誤差が増大するからである。
【0051】
正確な鳥瞰図を表示するために、演算装置51の逆鳥瞰図変換部68および補間点追加部70が実行する補間点の追加処理について、図9を参照して説明する。
【0052】
図9は、鳥瞰図が表示される画面の表示枠を逆鳥瞰図変換して2次元地図内に表示した図である。逆鳥瞰図変換部68は、図8の鳥瞰図が表示される画面の表示枠を逆鳥瞰図変換して2次元地図内の台形領域Tを求める。具体的には、2次元地図内の自車の位置を原点とするXY座標を定めると、台形領域Tの頂点、特に台形領域Tの上辺のY座標値Y2、下辺のY座標値Y1を求める。
【0053】
道路R1の2次元ウィンドウ座標系の4つの補間点H0、H1、H2、H3の内、最初の3つの補間点H0、H1、H2は台形領域Tの内部にあるが、4番目の補間点H3は台形領域Tの外部にある。補間点追加部70は、道路R1の4つの補間点H0、H1、H2、H3を順につないで形成される線分が台形領域Tの上辺または下辺と交わるかどうかを調べる。ここでは、3番目の補間点H2と4番目の補間点H3をつなぐ線分が台形領域Tの上辺と交点H4において交わる。この交点H4を道路R1を補間するための新たな補間点として追加する。
【0054】
道路R0の補間点についても、補間点を結ぶ線分が同様に台形領域Tの上辺または下辺と交点をもつかどうか調べてもよいが、道路R0については補間点の密度が道路R1に比べて高いことから、道路R0については補間点の追加処理をスキップしてもよい。
【0055】
台形領域Tの上辺において、道路R1の新たな補間点H4と道路R0の補間点は離れた位置にあることから、新たな補間点H4を含む道路R1について、補間点を鳥瞰図変換して鳥瞰図を求めても二つの道路R1とR0が交わることはない。
【0056】
図10は、新たに追加された補間点を用いて鳥瞰図変換することにより描画される鳥瞰図を示す図である。二つの道路R0とR1は鳥瞰図において交わることがなく、正確に描画されている。
【0057】
図11は、本実施の形態に係る鳥瞰図生成方法を説明するフローチャートである。
【0058】
アフィン変換部60は、地図情報Mから取得した表示対象の道路を表す補間点の緯度・経度座標を2次元ウィンドウ座標系にアフィン変換する(ステップS1)。
【0059】
変換した2次元ウィンドウ座標系の補間点は、図9の例で言えば、道路R0の15個の補間点と道路R1の4個の補間点H0、H1、H2、H3である。アフィン変換部60は、アフィン変換の際、各道路の車線数と2次元地図の縮尺率にもとづいてラインのポイント(太さ)を算出して、2次元ウィンドウ座標系の補間点情報として格納する(ステップS2)。
【0060】
次に、逆鳥瞰図変換部68は、鳥瞰図として画面表示する矩形領域を2次元地図上に逆鳥瞰図変換する(ステップS3)。図9に示すように、逆鳥瞰図変換した領域が台形領域Tであり、具体的に求める必要があるのは、台形領域Tの上辺のY座標Y2と下辺のY座標Y1である。よって、鳥瞰図として画面表示する矩形領域の上辺および下辺のY座標のみを逆鳥瞰図変換して、2次元地図上の台形領域Tの上辺および下辺のY座標値Y2およびY1を算出する。
【0061】
補間点追加部70は、2次元ウィンドウ座標系において道路の隣接する二つの補間点を順に結んでラインを形成し、台形領域Tの上辺または下辺と交わるかどうかか検出する(ステップS4)。具体的には、道路の補間点のY座標値と、台形領域Tの上辺、下辺のY座標値Y2、Y1との大小関係を比較することで上辺または下辺と交わるかどうかを判定することができる。
【0062】
図9の例で言えば、2次元ウィンドウ座標系において道路R1の第1補間点H0と第2補間点H1を結ぶラインは、台形領域Tの上辺、下辺のいずれとも交わらない。第2補間点H1と第3補間点H2を結ぶラインも台形領域Tの上辺、下辺のいずれとも交わらない。第3補間点H2と第4補間点H3を結ぶラインは、台形領域Tの上辺と交わる。道路のラインが台形領域Tの辺と交わる場合(ステップS4のY)は、その交点の座標とラインのポイント(太さ)を算出し、交点の情報を第3補間点H2と第4補間点H3の間に新たな補間点H4として追加する(ステップS5)。道路のラインが台形領域Tの辺と交わらない場合(ステップS4のN)、ステップS5を飛ばして、ステップS6に進む。
【0063】
同様に道路R0の15個の補間点についても、隣接する補間点をつなぐラインが台形領域Tの上辺または下辺と交わるかどうかを調べるが、台形領域Tの下辺とは交わりがなく、台形領域Tの上辺またはその近傍に補間点が存在するため、新たに設定すべき補間点はない。
【0064】
次に、鳥瞰図変換部62は、新たに設定された補間点H4を含むすべての2次元ウィンドウ座標系の補間点を鳥瞰図変換する(ステップS6)。ライン描画部64は、鳥瞰図変換して算出されたすべての3次元ウィンドウ座標系の補間点をラインで結び、ラインの太さを調整し、道路を描画する(ステップS7)。これにより、図8のように二つの道路R0と道路R1が交わることなく、図10に示すような正確な鳥瞰図を描画することができる。
【0065】
上記の説明では、道路のラインが台形領域Tの上辺、下辺のいずれかと交わる場合に、その交点を新たな補間点として設定することで道路の補間精度を高めるようにした。ここで、台形領域Tの上辺は、鳥瞰図変換により画面上に縮小されて表示されるのに対して、台形領域Tの下辺は鳥瞰図変換により画面上に拡大されて表示される。この点を考慮すると、台形領域Tの上辺に補間点を追加することは、台形領域Tの下辺に補間点を追加することに比べて、道路の意図しない交差を防ぐ意味で、より重要性が高い。そこで、鳥瞰図において縮小表示される台形領域Tの上辺における交点を優先して、補間点として追加し、台形領域Tの下辺における交点は求めないようにしてもよい。これにより、計算効率を高めることができる。
【0066】
上記の説明では、道路が台形領域Tの上辺または下辺と交わる場合を考え、台形領域Tの左辺や右辺と交わる場合は考慮していなかった。これは、ナビゲーション装置のディスプレイ画面は通常、横長であるため、鳥瞰図を表示した場合、特に画面の表示枠の上辺において補間誤差が鳥瞰図変換によって増大する傾向があるからである。しかしながら、道路の補間点の数が十分でない場合は、画面の左右において補間誤差のために道路が意図せず交差してしまうことも起こりうる。このような場合も考慮して、鳥瞰図の精度を一層高めるために、道路と台形領域Tの左辺や右辺との交点を求めて補間点として追加してもよい。これにより、台形領域Tの上辺または下辺とは交わらない道路についても、補間点の数が十分でない場合に補間点を追加して補間精度を高めることができる。
【0067】
以下、台形領域の上辺以外の辺で交点を求めて補間点を設定して鳥瞰図を描画した例を説明する。
【0068】
図12〜図14を参照して、台形領域の下辺に補間点を設定する場合を説明する。図12は、二つの道路R20、R21とその補間点を3次元ウィンドウ座標系で示した鳥瞰図である。道路R21の3つの補間点J10、J11、J12は画面内にあるが、4番目の補間点J13は画面外にある。そのため、補間誤差によって、図12の鳥瞰図では二つの道路R20とR21は意図せず交わってしまう。
【0069】
図13は、鳥瞰図が表示される図12の画面の表示枠を逆鳥瞰図変換して2次元地図内に表示した図である。鳥瞰図として表示される台形領域Tと、二つの道路R20、R21、およびその補間点が2次元ウィンドウ座標系で表示されている。台形領域Tの上辺のY座標はY2、下辺のY座標はY1である。
【0070】
道路R21の3つの補間点J0、J1、J2(それぞれ、図12の3次元ウィンドウ座標系の3つの補間点J10、J11、J12に対応する)は、台形領域T内に存在するが、4番目の補間点J3(図12の補間点J13に対応する)は、台形領域T外に存在する。
【0071】
第3補間点J2と第4補間点J3を結ぶ線分が台形領域Tの下辺と交点J4で交わることから、補間点追加部70はこの交点J4を道路R21の新たな補間点として追加する。
【0072】
図14は、新たに追加された補間点を用いて鳥瞰図変換することにより描画される鳥瞰図を示す図である。台形領域Tの下辺において道路R21に新たな補間点J4が追加されたことから、鳥瞰図変換しても画面の下側で道路R21が道路R20と交わることはなく、鳥瞰図が正確に描画される。
【0073】
図15〜図17を参照して、台形領域の右辺に補間点を設定する場合を説明する。図15は、二つの道路R30、R31とその補間点を3次元ウィンドウ座標系で示した鳥瞰図である。道路R31の3つの補間点K10、K11、K12は画面内にあるが、4番目の補間点K13は画面外にある。そのため、補間誤差によって、図15の鳥瞰図では二つの道路R30とR31は意図せず交わる。
【0074】
図16は、鳥瞰図が表示される図15の画面の表示枠を逆鳥瞰図変換して2次元地図内に表示した図である。鳥瞰図として表示される台形領域Tと、二つの道路R30、R31、およびその補間点が2次元ウィンドウ座標系で表示されている。
【0075】
道路R31の3つの補間点K0、K1、K2(それぞれ、図15の3次元ウィンドウ座標系の3つの補間点K10、K11、K12に対応する)は、台形領域T内に存在するが、4番目の補間点K3(図15の補間点K13に対応する)は、台形領域T外に存在する。
【0076】
第3補間点K2と第4補間点K3を結ぶ線分が台形領域Tの右辺と交点K4で交わることから、補間点追加部70はこの交点K4を道路R31の新たな補間点として追加する。
【0077】
図17は、新たに追加された補間点を用いて鳥瞰図変換することにより描画される鳥瞰図を示す図である。台形領域Tの右辺において道路R31に新たな補間点K4が追加されたことから、鳥瞰図変換しても画面右側で道路R31が道路R30と交わることはなく、鳥瞰図が正確に描画される。
【0078】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0079】
本実施の形態で説明した補間点を追加して鳥瞰図を作成する方法は、道路描画にかかわらず、補間点と補間点を結びライン描画する川や鉄道などの他のノード情報を鳥瞰図変換する場合にも適用することができる。
また、本実施の形態で説明した鳥瞰図変換以外の変換方法による鳥瞰図生成にも当然本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 ナビゲーション装置、 2 位置検出装置、 3 情報記憶部、 4 ユーザインタフェイス部、 5 情報処理部、 51 演算装置、 60 アフィン変換部、 62 鳥瞰図変換部、 64 ライン描画部、 66 表示部、 68 逆鳥瞰図変換部、 70 補間点追加部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインを形成するための複数の補間点に関する情報を含む地図情報を記憶する地図情報記憶部と、
前記地図情報に基づき描画される2次元地図を所定の視点位置から見下ろしたと仮定した場合の鳥瞰図を表示する画面の表示枠に対して、鳥瞰図生成のための補間点の変換処理とは逆の逆変換処理を行うことにより、鳥瞰図として表示される2次元地図上の矩形領域を求める逆変換処理部と、
前記矩形領域の辺上または内部に存在し、かつ、既存の隣接する補間点の間にあってラインを形成するための点を当該ラインの新たな補間点として追加する補間点追加部と、
追加された補間点を含め、ラインを形成するための補間点を前記変換処理することにより、前記鳥瞰図を生成する鳥瞰図生成部と
を含むことを特徴とする描画処理装置。
【請求項2】
前記補間点追加部は、既存の補間点を順次つないで形成される線分と前記矩形領域のいずれかの辺とが交わる場合、その交点を当該ラインの新たな補間点として追加することを特徴とする請求項1に記載の描画処理装置。
【請求項3】
前記補間点追加部は、既存の補間点を順次つないで形成される線分と前記矩形領域の前記画面に対して上側の辺とが交わる場合、その上側の辺との交点を当該ラインの新たな補間点として追加することを特徴とする請求項2に記載の描画処理装置。
【請求項4】
前記補間点追加部は、既存の補間点を順次つないで形成される線分と前記矩形領域の前記画面に対して下側の辺とが交わる場合、その下側の辺との交点を当該ラインの新たな補間点として追加することを特徴とする請求項2または3に記載の描画処理装置。
【請求項5】
前記補間点追加部は、前記矩形領域内に存在する複数のラインについて補間点の密度を求め、補間点の密度が所定の閾値よりも高いラインについては新たな補間点を追加する処理をスキップすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の描画処理装置。
【請求項6】
ラインを形成するための複数の補間点に関する情報を含む地図情報をメモリから参照するステップと、
前記地図情報に基づき描画される2次元地図を所定の視点位置から見下ろしたと仮定した場合の鳥瞰図を表示する画面の表示枠に対して、鳥瞰図生成のための補間点の変換処理とは逆の逆変換処理を行うことにより、鳥瞰図として表示される2次元地図上の矩形領域を求めるステップと、
前記矩形領域の辺上または内部に存在し、かつ、既存の隣接する補間点の間にあってラインを形成するための点を当該ラインの新たな補間点として追加するステップと、
追加された補間点を含め、ラインを形成するための補間点を前記変換処理することにより、前記鳥瞰図を生成するステップと
を含むことを特徴とする描画処理方法。
【請求項7】
ラインを形成するための複数の補間点に関する情報を含む地図情報をメモリから参照する機能と、
前記地図情報に基づき描画される2次元地図を所定の視点位置から見下ろしたと仮定した場合の鳥瞰図を表示する画面の表示枠に対して、鳥瞰図生成のための補間点の変換処理とは逆の逆変換処理を行うことにより、鳥瞰図として表示される2次元地図上の矩形領域を求める機能と、
前記矩形領域の辺上または内部に存在し、かつ、既存の隣接する補間点の間にあってラインを形成するための点を当該ラインの新たな補間点として追加する機能と、
追加された補間点を含め、ラインを形成するための補間点を前記変換処理することにより、前記鳥瞰図を生成する機能と
をコンピュータに実現させることを特徴とする描画処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−49244(P2010−49244A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169924(P2009−169924)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】