説明

握り寿司容器

【課題】 5℃以下で保存することができ、陳列時にはあたかも完成した握り寿司のように見えながら、食する際には、ネタをまとめて握り飯から離し、握り飯のみをマイクロ波により人肌程度に加温することができる握り寿司容器を提供する。
【解決手段】 皿型或いは箱型の容器本体と、透明なプラスチック製蓋とが開封容易に結合している握り寿司容器において、容器本体と蓋との間に透明な中蓋が介在し、該中蓋上面には、長さ方向の側面及び断面が円弧状に突出している複数のネタ載せ台が、中蓋の一方の辺に対し45度±5度の角度で互いに平行に、且つ、互いに隣接するネタ載せ台の長さ方向中心線同士の間隔が、握り寿司1個の間隔を保って配列し、更に、中蓋の周囲に側周部が下方又は上方に延出し、ネタ載せ台と、他の隣接するネタ載せ台の長さ方向中心線同士の間隔が、握り寿司1個の間隔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスーパーマーケット、弁当屋等で販売される握り寿司の容器に関し、より詳しくは、なま物の好ましい保存温度である5℃以下で保存することができ、陳列時にはあたかも完成した握り寿司のように見えながら、食する際には、ネタをまとめて握り飯から離し、握り飯のみをマイクロ波により人肌程度に加温することができる握り寿司容器に関する。
【背景技術】
【0002】
握り寿司は古来から庶民に愛されてきた食品である。炊きたてのご飯に調味料を配合した食酢を加え、急速に冷却しながら人肌の温度に冷却した酢飯を俵状に握り、握り飯を製造する。俗にこれをシャリとも呼ぶ。その上に一般にネタと呼ばれる各種生鮮魚介類、或いはしめ鯖、あなごの煮物、玉子焼き等を握り飯が隠れる程度に載せたものである。本発明においては、握り飯上に載せる素材をネタと称呼する。
握り寿司を食べるには、寿司屋に出向き、製造したての寿司が最高である。しかし、出向けない場合には寿司屋に出前寿司を依頼していた。
【0003】
近時、スーパーマーケットや弁当屋が繁盛し、各種食品や半加工食品を持ち帰り、家庭で冷蔵、冷凍保存し、必要時小分け、再加熱をして食卓に供するようになってきた。その流れの中で、持ち帰り寿司も販売されているが、握り寿司は非加熱の生の魚介類を使用しているため、鮮度の維持が困難で大量の作り置きができなかった。そこで、製造時刻を記入する方法も採用されているが、より後の時刻に製造した商品を陳列すると、前に製造した商品は売れ残り扱いとなる欠点があった。
冷凍の握り寿司も開発されたが、解凍に問題があった。特許文献1には冷凍握り寿司をマイクロ波で解凍するにあたり、寿司ネタ部位にマイクロ波遮断膜を形成した容器が開示されている。
【特許文献1】特開2004−136975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そもそも握り寿司とは、握り飯の上に山葵を介して生の魚介類を載せて一体に成型したものである。美味しい握り寿司の条件は、人肌温度の炊きたての酢飯に、新鮮で且つ冷たい生の魚介類を載せたものである。握り飯とネタの2種の食材が、温度差を有したまま一体になって美味しく感じさせるものであり、時間の経過と共に、この温度差はなくなるため、寿司屋で食べる握り寿司が一番美味しいという結論になる。したがって、握り飯と寿司ネタを一旦一体化してしまえば、この2素材間の温度差は時間の経過と共に消滅し、再度温度差を発生させることは不可能に近い。
【0005】
マイクロ波加熱は短時間に食品を中心部から加熱する長所を有する。しかしながら、実際に使用されているマイクロ波加熱機は、室内に均等にマイクロ波が届くものではない。直接照射されるマイクロ波の他に、二次、三次……と何回も反射した反射波とが錯綜し、食品中に含まれる水分を加熱するものである。マイクロ波の密度にムラが生じ、ターンテーブルを用いて電子レンジ内の食品を回転させても、マイクロ波加熱した食品は局所的に冷たい部位と熱い部位とが偏在することは日頃経験することである。中でも生鮮魚介類は主として蛋白質からなり、加熱すると蛋白質変成を起こして明らかに変色し、味も低下する。例えば、冷凍マグロをマイクロ波解凍すれば、局所的に熱変成した白い部分が必ず発生する。そこで、ネタをマイクロ波加熱せずに握り寿司を低温保存する技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決することを目的とし、その構成は、皿型或いは箱型の容器本体と、透明なプラスチック製蓋とが開封容易に結合している握り寿司容器において、容器本体と蓋との間に透明な中蓋が介在し、該中蓋上面には、長さ方向の側面及び断面が円弧状に突出している複数のネタ載せ台が、中蓋の一方の辺に対し45度±5度の角度で互いに平行に、且つ、互いに隣接するネタ載せ台の長さ方向中心線同士の間隔が、握り寿司1個の間隔を保って配列し、更に、中蓋の周囲に側周部が下方又は上方に延出し、ネタ載せ台と、他の隣接するネタ載せ台の長さ方向中心線同士の間隔が、握り寿司1個の間隔であることを特徴とする。
【0007】
すなわち、本発明は握り寿司容器本体に、握り寿司を配置するのと同一配列に握り飯のみを配置し、その上に透明なプラスチックシートからなる中蓋を配置するものである。この中蓋は握り飯と同様の膨らみ、すなわち、ネタ載せ台を有し、この中蓋を握り飯に接触するかしないかの状態に置く。その上でネタ載せ台上に各種のネタを並べるとネタの周辺はネタ載せ台からはみ出して垂れ下がり、あたかも握り飯と寿司ネタを一体化したかの状態になる。この上に透明な蓋を被せれば、中蓋も透明なため完成した握り寿司と同一に見える。透明な中蓋は寿司ネタを載せたまま、握り飯から離すことが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、握り飯とネタとが一体化したかに見えながら、寿司ネタに好ましい低温で保存し、寿司ネタのみを外して握り飯のみを人肌に加温することが可能になった。その結果、小売店においては大量に作りおきしても鮮度の低下を心配せずにすみ、購入者は握り飯のみを加温して冷たいネタを載せればよく、家庭においても人肌の握り飯に冷たい寿司ネタが載った握り寿司を楽しむことが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は透明な蓋の他に、透明な中蓋を有する握り寿司容器である。握り飯は炊きたてのご飯に調味料を配合した食酢を加え、急速に冷却しながら人肌の温度に冷却した酢飯を俵状に握ったものである。ネタはこの握り飯の上に、山葵を介して載せる具であり、主として生鮮魚介類が用いられる。例えば、マグロのトロ、中トロ、赤身、鯛、比目魚、鮭、烏賊、蛸、鰯、秋刀魚、赤貝、はしら、海老、しゃこ、しめ鯖、いくら、うに等の生物の他に、玉子焼き、あなごの煮物等も使用される。更に、好みに応じて納豆、焼豚、ハム、鶏の加工品等素材に限定はない。
【0010】
図1は本発明中蓋の1例であり、図2はこの中蓋を皿型容器本体に装着した場合のA−A線端面図である。容器本体6は握り寿司を持ち帰り可能に並べることのできる容器であればよい。側縁11が上方に開いた図2に示すような皿型でもよく、寿司折りのような箱型形状であってもよい。
持ち帰り寿司の容器本体6は開封容易な蓋9を要する。販売促進の面から蓋した状態で内容物が見えるように透明な蓋9が好ましい。容器本体の形状が皿型の場合には、図2に示すように、容器リブ10に上方から嵌合する嵌合蓋でもよく、嵌合蓋は箱型容器にも使用できる。容器が皿型、箱型を問わず、容器本体6が蓋9に嵌合する形態でもよく、単に透明プラスチック板を蓋として被せセロハンテープで止めてもよい。更に、上面をラップフィルムで覆って密着させてもよく、この場合にはラップフィルムが蓋9となる。
【0011】
本発明は容器本体6と蓋9の間に中蓋1を設けることに特徴がある。寿司容器に通常の握り寿司を並べる間隔で握り飯のみを並べ、その上に本発明の中蓋1を載せると、握り飯8と中蓋1に設けたネタ載せ台3の膨らみとが一致する。ネタ載せ台3の上にネタを載せると、ネタの中央部はネタ載せ台3の形状に膨らみ、周囲がネタ載せ台3の周囲に垂れ下がり、あたかも握り飯8に直接ネタ7を載せたような外観を呈する。この状態で蓋9を被せて陳列すれば、蓋も中蓋も透明であるため完成した握り寿司の形状と区別できない。
食する段階で、中蓋1を外し、山葵と生姜を取出して容器本体6と握り飯8のみをマイクロ波で弱く人肌になるまで加温する。加温後、再度握り飯8に山葵を載せ、ネタ載せ台3上のネタを被せれば、温かい握り飯と冷えたネタとからなる美味しい握り寿司を得ることができる。
【0012】
中蓋1はネタ載せ台3の膨らみを有する透明板である。図1、図2においては下方に延出した側周部2を有する中蓋を示したが、図3(a)のように容器本体6の側縁11の内面に段差12を設けた場合には側周部2は不要である。また、図3(b)に示すように、容器本体の側縁11の傾斜の最適の位置で止まる大きさの中蓋1を使用すれば、側周部2は不要である。
図1、図2においては、側周部2は下方に延出して容器本体の側縁11の中間部で係止しているが、容器本体底面に達する側周部2を採用することもできる。この場合には、側周部2の下端は容器本体の底部の可及的に外方であることが好ましい。更に、図3(c)に示すように、中蓋1の外周から上方に延出した側周部2を設けることもできる。この場合には上端に容器本体の側縁に係合できる懸架部13を設ける。
【0013】
中蓋1にはネタ載せ台3を突出させる。ネタ載せ台3は円盤の一部を中蓋から突出させたような太鼓橋状の形状を有する。ネタ載せ台3は、太鼓橋の歩行部分に該当する帯状に膨らんだ上面4と、上面4の端部と中蓋1を連結する側面5を有し、切断した蒲鉾状とも言える。すなわち、長さ方向の側面及び断面が円弧状に突出している形状となる。この形状は、図2から明らかなように、容器本体6と中蓋1の下面においては、配置した握り飯をその形状を維持しながら移動させない膨らみを形成する。これは握り飯8がネタ載せ台3下面に接触するかしないかの境界程度の高さである。
【0014】
ネタ載せ台3上にネタ7を載せた場合に、握り飯8に直接載せたと同様に、ネタ7の4方の辺が握り飯8の周囲に垂れ下がり、中央部は握り飯8の形状そのままに膨らみ、完成した握り寿司そのものの外観を呈する。
中蓋1、蓋9共に透明素材を用いているため、陳列状態で握り飯8とネタ7が分離していることを消費者に気付かれず、購買意欲促進効果を有する。
【0015】
習慣上、握り寿司は容器に斜めに配置される。この習慣に従い、ネタ載せ台3も中蓋1の辺縁部5に対し、45±5度の角度で容器本体6の底辺に対して傾斜させて設ける。上面4の幅は必ずしも等しい必要はないが、ネタ7を載せた場合に不自然に感じさせない範囲で変動してもよい。一般には、10〜15mm幅である。ネタ載せ台3の長さ及び高さも、容器本体6に収納する握り寿司により決定すべきものであるが、常識的には長さ40〜60mm、高さ5〜15mm程度である。
【0016】
持ち帰り用握り寿司は、容器本体にどのように配列しようとも自由であるが、同一容器に大小様々の寿司が並ぶと外観が悪いので、ネタ載せ台3は等間隔に設ける。完成した握り寿司が広すぎず、狭すぎず、最も見場のよい配置に並ぶためにはネタ載せ台3と隣接するネタ載せ台3との各中心線の間隔は完成した握り寿司1個の幅であることが好ましい。図1にはネタ載せ台3を2列に並べたが、何列に並べてもよい。
【0017】
図1において、ネタ載せ台3の中央部に設けた三角点は突起14である。突起14はネタ7の下面に突き刺さり、持ち帰り途中でネタ7の位置ずれを防止する。ネタ7の位置ずれを防止するためには突起14を設けるばかりでなく、上面4に凹凸を設けてもよい。図5は上面4に波型の凹凸15を設けた説明図である。
【0018】
図1における3aは特殊ネタ載せ台である。ウニやイクラのように、ネタによっては1枚の厚みのある素材として取扱えないものがある。一般には、握り飯8を短い海苔巻き状にし、その上にネタ7を載せている。すなわち、海苔で囲われた握り飯の上に同じく海苔で囲われたネタを載せているのである。このようなネタには、ネタ載せ台3も底面が円形や円形に近い楕円形或いは角のとれた四角形にして、底面から盛り上がった球面の一部が盛り上がった特殊ネタ載せ台3aを使用する。底辺の最大径と最小径の比は1:1が好ましいが、1:1.5の範囲までは許容できる。
【実施例1】
【0019】
底面180mm×100mm、深さ20mm、上辺の広さ230mm×150mmの皿型容器本体6に、俵状の握り飯8を45度傾斜させて1列に4個並べ、他の1列には3個の他に、短い海苔巻き状の特殊握り飯を1個並べ、全体で8個の握り飯8を並べた。更に容器本体の隅に生姜と練り山葵を配置した。その上に、図1に示した形状の中蓋1を被せると、図2に示すように、ネタ載せ台3が丁度握り飯の真上にきた。この状態でネタ載せ台3の上に、中トロ、マグロ、こはだ、烏賊、甘エビ、赤貝、玉子焼きをそれぞれ載せ、特殊ネタ載せ台3aの上には紫蘇の葉の上にイクラを載せた。容器本体には透明な嵌合蓋9を被せて店頭に多数陳列し、陳列室内を5℃以下に維持して3時間経過した。外観は一体化した握り寿司と全く変わらなかった。
【0020】
3時間後に、蓋9を開き、中蓋1を持ち上げると握り飯8はきちんと整列していた。生姜と山葵を容器本体から取出し、握り飯の載った容器本体を500Wの電子レンジで30秒加温した。加温した握り飯8の上に山葵を塗り、ネタ載せ台3上のネタをそれぞれ載せたところ、握り飯は人肌であり、ネタは冷たく、寿司屋で食べるのと全く変わらない美味しい握り寿司を味わうことができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】中蓋の1例を示す斜視図である。
【図2】図1の中蓋を皿型容器に装着した場合のA−A線端面図である。
【図3】(a)と(b)は側周部のない中蓋の実例を示す説明図、(c)は側周部が上方に延出している中蓋の1例を示す説明図である。
【図4】上面に波型の凹凸のあるネタ載せ台を有する中蓋の一部を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 中蓋
2 側周部
3 ネタ載せ台
3a 特殊ネタ載せ台
4 上面
5 側面
6 容器本体
7 ネタ
8 握り飯
9 蓋
10 容器リブ
11 側縁
12 段差
13 懸架部
14 突起
15 凹凸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皿型或いは箱型の容器本体と、透明なプラスチック製蓋とが開封容易に結合している握り寿司容器において、
容器本体と蓋との間に透明な中蓋が介在し、該中蓋上面には、長さ方向の側面及び断面が円弧状に突出している複数のネタ載せ台が、中蓋の一方の辺に対し45度±5度の角度で互いに平行に、且つ、一定間隔を保って配列していることを特徴とする握り寿司容器。
【請求項2】
ネタ載せ台が2列以上に配列した中蓋を有することを特徴とする請求項1に記載する握り寿司容器。
【請求項3】
ネタ載せ台と、他の隣接するネタ載せ台の長さ方向中心線同士の間隔が、握り寿司1個の間隔であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載する握り寿司容器。
【請求項4】
容器本体に中蓋を載置した時の中蓋の高さが、容器本体に握り飯のみを並べた状態で、握り飯がネタ載せ台に接触するかしないかの境界程度の高さであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載する握り寿司容器。
【請求項5】
中蓋の周囲に、先端が容器本体の周辺部或いは底辺の最外部に当接する側周部が下方に延出していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載する握り寿司容器。
【請求項6】
中蓋の周囲に、先端が容器本体の側縁の上端に懸架できる側周部が上方に延出していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載する握り寿司容器。
【請求項7】
ネタ載せ台の一部が、他のネタ載せ台に代えて、周囲から盛り上がった球面の一部が突出した形状の突出部であり、その底辺の最大径と最小径の比が、1:1ないし1:1.5の範囲であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載する握り寿司容器。
【請求項8】
ネタ載せ台の中央付近に、1個以上の位置ズレ防止用の突起或いは凹凸を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載する握り寿司容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−204101(P2006−204101A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16179(P2005−16179)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(505029045)
【Fターム(参考)】