説明

揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置並びに浄化方法

【課題】有害な汚染物質のみならず、環境に悪影響を与える燃焼ガスや粉塵、処理水を外部に排出することが無く、コンパクトな構成で汚染土壌を効率的に浄化処理することが可能な、環境負荷が極めて少ない揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置並びに浄化方法を提供する。
【解決手段】高周波誘導加熱部14によって汚染物質91を気化分離して土壌90を浄化する加熱分解装置1と、汚染物質91を液化する凝縮装置2と、汚染物質91から油脂成分91aを分離する油水分離部31と、汚染物質91から汚泥を沈殿させて除去する沈殿槽32、33と、有機物を分解して除害水80を排出する分解処理部34、35とが備えられた除害処理装置3と、土壌90を搬送する後処理搬送部42と、除害水80を用いて土壌90を冷却処理する後処理冷却部44と、除害水80を土壌90に添加する除害水供給部45とが備えられた後処理装置4とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、有機系物質等の汚染物質によって汚染された土壌又は汚泥を浄化するための、揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置並びに浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機化合物や重金属等の汚染物質による土壌汚染が顕在化しているため、汚染された土壌を浄化するための各種対策がなされている。一般に、汚染土壌の浄化処理手段としては、例えば、焼却処理や高温熱分解処理、化学分解処理の他、微生物分解処理等の各種方法が挙げられ、特に、焼却処理並びに高温熱分解処理の各手段が主として採用されている。
【0003】
このような、加熱による処理方法が採用された浄化装置としては、例えば、図2に示す浄化装置100のように、汚染土壌を搬送しながらバーナーで加熱する加熱分解装置110と、この加熱分解装置110で分離気化された汚染物質に冷却水を噴霧して液体化する冷却装置120と、液体化された汚染物質を浄水と濃縮汚染物(スラッジ)とに分離する汚染物質分離装置130とが設けられたものが提案されている(例えば、特許文献1等も参照)。図2に示す従来の汚染土壌の浄化装置によれば、上記構成により、汚染物質をスラッジとして抽出し、分離された浄水については配水系に放流している。また、土壌の加熱時に生じた燃焼ガスについては大気に排出し、土壌から気化分離された汚染物質の内、冷却水によって液化されなかった分については、所定のガス浄化処理を施したうえで大気に放出している。
【0004】
しかしながら、図2あるいは特許文献1に記載された構成の浄化装置では、例えば、汚染土壌の加熱に用いた化石燃料から生じる燃焼排気ガスを大気に放出する構成のため、土壌が浄化される一方で、大気汚染が生じるという問題がある。また、近年の環境に対する意識の高まりから、被処理物を燃焼させる際にダイオキシン類が発生する可能性の高い化石燃料を用いた焼却処理ではなく、有害物質を発生させない方法で汚染土壌を加熱処理する方法が求められていた。
【0005】
上記問題を解決するため、例えば、汚染土壌や汚泥、屎尿等の脱水や加熱処理を行う装置として、化石燃料を用いた燃焼加熱を使用せず、所謂、高周波誘導加熱手段を用いたものが提案されている(例えば、特許文献2〜4等を参照)。特許文献2〜4に記載の装置並びに方法によれば、火炎燃焼を伴わずに汚泥等を脱水、加熱処理することが可能となるので、燃焼に伴うCO等の排気ガスが大気に放出されることが無く、また、このような排ガスを処理する装置も不要となる。また、汚泥等の燃焼に伴って発生するダイオキシン類等を発生させることが無いので、大気汚染等を生じさせることなく、汚染土壌の処理を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−334502号公報
【特許文献2】特開平11−273849号公報
【特許文献3】特開2004−255223号公報
【特許文献4】特開2004−290953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2〜4に記載された構成の浄化装置や浄化方法を用いて汚染土壌や汚泥の浄化処理を行った場合には、以下のような問題がある。
まず、上記構成の浄化装置では、汚染土壌から気化分離された汚染物質を液化した、所謂クエンチング排水の処理が必要となるが、この際、浄水が大量に発生するため、専用の排水経路等が必要となり、装置が大型化する等の問題がある。また、クエンチング排水を浄化する際、汚染物質は濃縮汚染物であるスラッジとして排出されるため、取り扱いに手間がかかるという問題がある。また、クエンチング排水を浄化する際、大量の処理水が発生するため、装置の系外に排水するための施設やスペース等が必要になる。また、従来の構成の浄化装置では、汚染土壌に含まれる油脂成分等に起因する臭気が発生し、作業環境が低下するという問題がある。
【0008】
またさらに、従来の装置や方法を用いて汚染土壌や汚泥を浄化処理した場合、最終的に浄化されて排出される土壌等が極度の乾燥状態となるため、浄化土壌等の回収作業時に粉塵が発生し、作業環境の他、装置周辺の環境の低下を招くという問題があった。
【0009】
上述のように、従来の構成の浄化装置や浄化方法を用いて汚染土壌や汚泥の浄化処理を行った場合、多くの有害物質を装置外に排出するため、これらの有害物質を適正に処理しなかった場合には、寧ろ、環境に悪影響を与える可能性があった。また、環境への悪影響の未然防止を目的として、上述した各々の排出物を処理することが可能な設備を全て取り揃えた場合には、多大なコストと設置場所を要するという問題があった。
このため、揮発性特定有害物質からなる汚染物質を含む土壌又は汚泥の浄化処理を行う際、化石燃料等の燃焼を伴わず、また、有害物質を含むガスや排水の他、粉塵等を大気中に放出することが無く、且つ、汚染土壌や汚泥を効率良く安全に浄化処理できる装置及び方法が切に望まれていた。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、有害な汚染物質のみならず、環境に悪影響を与える燃焼ガスや粉塵等の他、大量の処理水を外部に排出することが無く安全性に優れ、コンパクトな構成で汚染土壌や汚泥を効率的に浄化処理することが可能な、揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置並びに浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下に関する。
【0012】
[1] 被処理物である、揮発性特定有害物質からなる汚染物質を含有する土壌又は汚泥を攪拌しながら搬送する搬送部と、前記土壌を誘導加熱する高周波誘導加熱部とを備え、前記土壌又は汚泥から前記汚染物質を気化分離することによって前記土壌又は汚泥を浄化する加熱分解装置と、前記加熱分解装置によって気化分離された前記汚染物質を再凝縮させて液化する凝縮装置と、前記液化された汚染物質から油脂成分を分離する油水分離部と、前記汚染物質を攪拌しながら凝集させた汚泥を沈殿させ、さらに、PHを調整しながら攪拌することで汚泥を沈殿させて除去処理する沈殿槽と、前記汚染物質を活性酸素処理することで有機物を分解した後、さらに、活性炭吸着処理を施して除害水を排出する分解処理部とが順次備えられてなる除害処理装置と、前記加熱分解装置において前記汚染物質が分離された前記土壌又は汚泥を攪拌しながら搬送する後処理搬送部と、前記除害処理装置から排出された除害水を用いて前記土壌又は汚泥を冷却処理する後処理冷却部と、該後処理冷却部において冷却処理に用いられた前記除害水を、前記後処理冷却部で冷却された前記土壌又は汚泥に添加する除害水供給部とが備えられた後処理装置と、を具備することを特徴とする揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
【0013】
[2] さらに、前記汚染物質を含有する土壌又は汚泥を前記加熱分解装置に導入する前に、予め、前記土壌又は汚泥を加温しながら脱水処理するための脱水装置を具備することを特徴とする上記[1]に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
[3] 前記脱水装置は、前記加熱分解装置において気化分離された前記汚染物質並びに蒸気を導入することにより、前記汚染物質を含有する土壌又は汚泥を加温する加温部が備えられてなることを特徴とする上記[2]に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
[4] 前記除害処理装置は、さらに、該除害処理装置の内部において、前記汚染物質から発生する臭気を、直流パルスプラズマを用いて脱臭処理する脱臭装置を備えることを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
[5] 前記凝縮装置は、超微細気泡を含む冷却水を供給することにより、前記汚染物質を再凝縮して液化することを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
[6] 前記除害処理装置に備えられる前記分解処理部は、超微細気泡状の活性酸素を前記汚染物質に添加することにより、該汚染物質に含有される有機物を分解することを特徴とする上記[1]〜[5]の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
【0014】
[7] 被処理物である、揮発性特定有害物質からなる汚染物質を含有する土壌又は汚泥を攪拌しながら搬送するとともに、前記土壌又は汚泥を高周波誘導加熱し、前記土壌又は汚泥から前記汚染物質を気化分離することによって前記土壌又は汚泥を浄化する加熱分解工程と、前記加熱分解工程において気化分離した前記汚染物質を再凝縮させて液化する凝縮工程と、前記液化された汚染物質から油脂成分を分離し、次いで、前記汚染物質を攪拌しながら凝集させた汚泥を沈殿させ、さらに、PHを調整しながら攪拌することで汚泥を沈殿させて除去処理し、次いで、前記汚染物質を活性酸素処理することで有機物を分解した後、さらに、活性炭吸着処理を施して除害水を排出する除害処理工程と、前記加熱分解工程において前記汚染物質が分離された前記土壌又は汚泥を攪拌しながら搬送するとともに、前記除害処理工程において排出された除害水を用いて前記土壌又は汚泥を冷却処理し、該冷却処理に用いられた前記除害水を、冷却された前記土壌又は汚泥に添加する後処理工程と、を具備することを特徴とする揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
【0015】
[8] さらに、前記汚染物質を含有する土壌又は汚泥を前記加熱分解工程に導入する前に、予め、前記土壌又は汚泥を加温しながら脱水処理する脱水工程が備えられていることを特徴とする上記[7]に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
[9] 前記脱水工程は、前記加熱分解工程において気化分離された前記汚染物質並びに蒸気を導入することにより、前記汚染物質を含有する土壌又は汚泥を加温することを特徴とする上記[8]に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
[10] 前記除害処理工程は、さらに、前記汚染物質から発生する臭気を、直流パルスプラズマを用いて脱臭処理することを特徴とする上記[7]〜[9]の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
[11] 前記凝縮工程は、超微細気泡を含む冷却水を供給することにより、前記汚染物質を再凝縮して液化することを特徴とする上記[7]〜[10]の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
[12] 前記除害処理工程は、超微細気泡状の活性酸素を前記汚染物質に添加することにより、該汚染物質に含有される有機物を分解することを特徴とする上記[7]〜[11]の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置によれば、土壌又は汚泥を誘導加熱する高周波誘導加熱部を備え、汚染物質を気化分離することによって土壌又は汚泥を浄化する加熱分解装置と、気化分離された汚染物質を再凝縮させて液化する凝縮装置と、汚染物質から油脂成分を分離する油水分離部と、汚染物質を攪拌しながら凝集させた汚泥を沈殿させて除去処理する沈殿槽と、有機物を分解した後、活性炭吸着処理を施して除害水を排出する分解処理部とが順次備えられてなる除害処理装置と、土壌又は汚泥を攪拌しながら搬送する後処理搬送部と、除害処理装置から排出された除害水を用いて土壌を冷却処理する後処理冷却部と、該後処理冷却部で用いられた除害水を冷却後の土壌又は汚泥に添加する除害水供給部とが備えられた後処理装置とを具備する構成なので、有害な汚染物質のみならず、環境に悪影響を与える燃焼ガスや粉塵等の他、大量の処理水を系外に排出することが無い。また、燃焼ガスの処理設備や燃料貯蔵設備、ポンプ等の付帯設備も不要となるので、装置全体の小型化やコストダウンが可能となる。従って、環境負荷が極めて小さく安全性に優れ、コンパクトな構成で、揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥を効率的に浄化処理することが可能な浄化装置を実現することができる。
【0017】
また、本発明の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法によれば、土壌を攪拌しながら搬送するとともに土壌又は汚泥を高周波誘導加熱し、土壌又は汚泥から汚染物質を気化分離する加熱分解工程と、汚染物質を再凝縮させて液化する凝縮工程と、液化された汚染物質から油脂成分を分離した後、汚染物質を攪拌しながら凝集させて沈殿した汚泥を除去処理し、次いで、汚染物質をなす有機物を分解した後、さらに、活性炭吸着処理を施して除害水を排出する除害処理工程と、浄化された土壌又は汚泥を攪拌しながら搬送するとともに、除害処理工程において排出された除害水を用いて土壌又は汚泥を冷却処理し、該冷却処理に用いられた除害水を冷却された土壌又は汚泥に添加する後処理工程とを具備する方法なので、上記同様、有害な汚染物質のみならず、環境に悪影響を与える燃焼ガスや粉塵等の他、大量の処理水を系外に排出することが無い。従って、環境負荷が極めて小さく安全性に優れ、汚染土壌を効率的に浄化処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置並びに浄化方法の一例を模式的に説明する図であり、浄化装置の全体を示す概略図である。
【図2】従来の汚染土壌の浄化装置並びに浄化方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置並びに浄化方法(以下、単に浄化装置又は浄化方法と略称することがある)について、図1を適宜参照しながら説明する(必要に応じて、図2の従来図も参照)。図1は本実施形態で説明する汚染土壌又は汚泥の浄化装置10の全体概略図である。
また、以下に説明する本発明の実施の形態においては、汚染土壌を浄化するための浄化装置及び浄化方法を例に挙げて説明する。
【0020】
[浄化装置]
本発明に係る浄化装置10は、図1に示す一例のように、揮発性特定有害物質からなる汚染物質91を含有する土壌90を誘導加熱する高周波誘導加熱部14を備え、汚染物質91を気化分離することによって土壌90を浄化する加熱分解装置1と、気化分離された汚染物質91を再凝縮させて液化する凝縮装置2と、汚染物質91から油脂成分91aを分離する油水分離部31と、汚染物質91を攪拌しながら凝集させた汚泥を沈殿させて除去処理する沈殿槽32、33と、有機物を分解した後、活性炭吸着処理を施して除害水80を排出する分解処理部34、35とが順次備えられてなる除害処理装置3と、土壌90を攪拌しながら搬送する後処理搬送部42と、除害処理装置3から排出された除害水80を用いて土壌90を冷却処理する後処理冷却部44と、該後処理冷却部44で用いられた除害水80を冷却後の土壌90に添加する除害水供給部45とが備えられた後処理装置4と、を具備して概略構成される。
【0021】
また、図1に示す例の浄化装置10は、さらに、汚染物質91を含有する土壌90を加熱分解装置1に導入する前に、予め、土壌90を加温しながら脱水処理するための脱水装置5が備えられている。
【0022】
脱水装置5は、内部で土壌90を脱水処理する脱水筒51と、該脱水筒51内部で土壌90を攪拌しながら搬送する搬送部52と、該搬送部52を回転させる駆動源のモータ53と、脱水筒51内の土壌90を加温する加温部54とから構成される。
脱水筒51は、略筒状に構成され、土壌90が投入される投入口51aと、脱水後の土壌90が排出される排出口51bとが備えられる。
【0023】
搬送部52は、脱水筒51の内部に設けられ、モータ53によって回転することにより、土壌90を、投入口51aから排出口51bに向けて攪拌しながら搬送する部材である。なお、図1に示す例の搬送部52は、略スクリュー状の部材として構成されているが、これには限定されず、例えば、リボン状やパドル状等、粉体輸送が可能なものであれば、何ら制限無く採用することができる。
【0024】
加温部54は、詳細な図示を省略するが、脱水筒51の周囲において、例えば、パイプ状に巻き付けられるように設けられる、熱交換機能を有する部材である。加温部54は、詳細を後述する加熱分解装置1において土壌90から気化分離され、加熱された状態の汚染物質91並びに図示略の蒸気が導入されることで、土壌90を加温することが可能な構成とされている。
脱水装置5は、上記各構成により、脱水筒51内において、土壌90を、搬送部52によって攪拌するとともに、投入口51aから排出口51bに向けて搬送しながら、加温部54によって土壌90を加温することで脱水処理を行うものである。
【0025】
加熱分解装置1は、内部で土壌90を加熱分解処理する加熱筒11と、該加熱筒11内部で土壌90を攪拌しながら搬送する搬送部12と、該搬送部12を回転させる駆動源のモータ13と、加熱筒11内の土壌90を加熱する高周波誘導加熱部14とから構成される。
加熱筒11は、上述の脱水装置5に備えられる脱水筒51と同様、略筒状に構成され、土壌90が投入される投入口11aと、脱水後の土壌90が排出される排出口11bと、内部で土壌90から気化分離された、ガス状の汚染物質91並びに蒸気を排出するガス排出口11cとが備えられる。図1に示す例においては、ガス排出口11cにパイプ71が接続され、このパイプ71の他端が上記脱水装置5の加温部54に接続されることにより、ガス状の汚染物質91並びに蒸気を加温部54に送出することが可能な構成とされている。
【0026】
搬送部12は、加熱筒11の内部に設けられ、モータ13によって回転することにより、土壌90を、投入口11aから排出口11bに向けて攪拌しながら搬送するスクリュー状の部材である。なお、図1に示す例の搬送部12は、略スクリュー状の部材として構成されているが、上述の搬送部52と同様、これには限定されず、リボン状やパドル状等、粉体輸送が可能な構成のものを何ら制限無く採用することができる。
【0027】
高周波誘導加熱部14は、詳細な図示を省略するが、加熱筒11の周囲に巻き付けられるように設けられるコイル14aと、このコイル14aに高周波電流を供給するとともに、その電流値、電圧値を制御する高周波制御部14bとから構成される。このような高周波誘導加熱部14としては、従来公知のものを何ら制限無く採用することができる。
【0028】
加熱分解装置1は、上記各構成により、加熱筒11内において、土壌90を、搬送部12によって攪拌するとともに、挿入口11aから排出口11bに向けて搬送しながら、高周波誘導加熱部14によって土壌90を加熱することにより、土壌90に含まれる汚染物質91並びに一部水分が蒸発した蒸気を気化分離し、土壌90の浄化・無害化を行うものである。
【0029】
ここで、本実施形態の浄化装置10においては、土壌90を加熱するための手段として、上記構成の高周波誘導加熱部14が用いられている。このような、化石燃料等による火炎燃焼を伴わない加熱手段を用いて土壌90を熱分解処理することにより、燃焼に伴うCO、NO、SOや煤塵等の排気ガスが大気に放出されることが無く、排気ガスを処理する装置も不要となる。また、燃焼式の加熱手段とは異なり、燃料貯蔵設備やポンプ等の付帯設備が不要となるので、装置全体の小型化やコストダウンが可能となる。
【0030】
また、一般に、高周波誘導による加熱方法は、加熱効率に優れるとともに、燃焼式の加熱装置に比べてスタートアップに要する時間がほとんど無く、温度制御性が極めて良いという特徴がある。これにより、本実施形態の浄化装置10においては、高周波誘導加熱装置14によって土壌90を加熱するにあたり、応答性に優れた温度制御を行なうことが可能となる。本実施形態の浄化装置10においては、例えば、コイル14a又は加熱筒11近傍に図示略の温度センサを設けることにより、検出した温度データを高周波制御部14bにフィードバックしながらコイル14aに印加する電流値・電圧値を制御し、所定の温度で土壌90を加熱することが可能となる。
【0031】
ここで、一般に、加熱筒11に用いられる金属部材の耐熱温度は600℃程度であるので、高周波誘導加熱装置14による加熱温度は、600℃程度、又はそれ以下とすれば良い。
また、汚染された土壌90に含まれる土壌汚染対策法上の特定有害物質、例えば、VOC(有機塩素系化合物)等の第1種特定有害物質からなる汚染物質91は、上記温度であれば土壌90から気化分離させることが可能であり、分解対象の有機成分に合せて加熱温度を設定すれば良い。また、本実施形態の加熱分解装置1は、上記有害物質の他、600℃以下の温度で蒸発、気化する油脂成分や、水銀等の金属成分、シアン等の有害成分についても、土壌90から気化分離することが可能である。
【0032】
凝縮装置2は、気化分離された汚染物質91を再凝縮させて液化するものであり、図1に示すように、汚染物質91を導入して凝縮するコンデンサ21と、このコンデンサ21に冷却水28を供給するとともに、この冷却水28を再冷却して還流させるクーリングタワー22と、ポンプ23とから構成される。また、図1に示す例の凝縮装置2は、コンデンサ21に供給する冷却水28を、超微細気泡を含む冷却水とするための超微細気泡処理部24が設けられている。
【0033】
コンデンサ21は、加熱分解装置1において気化分離され、脱水装置5の加温部54を経由して供給されるガス状の汚染物質91が導入される入口21aと、凝縮された液状の汚染物質91を排出する出口21bとを備える。また、コンデンサ21には、クーリングタワー22から供給される冷却水28が導入される冷却水入口21cと、使用後の冷却水28を排出してクーリングタワー22に還流させるための冷却水出口21dが設けられている。
【0034】
クーリングタワー22は、コンデンサ21において使用された冷却水28が還流される入口22aと、再冷却後の冷却水28をポンプ23によって外部に排出する出口22bとを備える。また、詳細な図示を省略するが、クーリングタワー22の内部は、還流された冷却水28を空冷するための熱交換器が備えられている。
また、図示例の凝縮装置2においては、上述した高周波誘導加熱部14に備えられる高周波制御部14bを冷却するための配管70が、ポンプ23の出口側に接続されている。
【0035】
本実施形態の凝縮装置2は、上記構成により、脱水装置5を経由して導入されるガス状の汚染物質91を凝縮し、液状の汚染物質91として出口21dから排出し、後述の除害処理装置3に送出する。
なお、図示例の凝縮装置2は、超微細気泡処理部24が備えられることにより、超微細気泡状を含む冷却水28をコンデンサ21に供給する構成なので、汚染物質を91再凝縮して液化する際の効率が、従来の凝縮装置に比べて10%程度向上する。
【0036】
除害処理装置3は、図1に示すように、汚染物質91から油脂成分91aを分離する油水分離部31と、汚染物質91から凝集させた汚泥39を沈殿させて除去処理する沈殿槽32、33と、有機物を分解〜除去処理して除害水80を排出する分解処理部34、35とが順次備えられてなる。
【0037】
油水分離部31は、タンク状に構成され、凝縮装置2から導入される液状の汚染物質91が内部に導入された後、所定時間で滞留させることにより、汚染物質91に含有され、上澄液となる油脂成分91aを分離し、廃液として回収するものである。
また、図示例においては、凝縮装置2から導入される液状の汚染物質91とともに、上記脱水装置5で用いられ、加温処理の際に加温部54内で凝縮された液状の汚染物質91についても油水分離部31に導入するように構成されている。
【0038】
沈殿槽32、33は、汚染物質91を攪拌しながら、この汚染物質91の含有成分を凝集させた汚泥39を沈殿させ、除去して回収するものである。図2に示す例では、汚染物質91に凝集剤37を添加して沈殿させた汚泥39を回収する沈殿槽32と、該沈殿槽32において汚泥39が除去された汚染物質91にPH調整剤38を添加し、さらに汚泥39を沈殿させて除去する沈殿槽33とがこの順で備えられている。また、図示例においては、沈殿槽32、33の各々の間にポンプ3Aが備えられており、沈殿槽32、33の各々にモータ及びプロペラからなる攪拌手段32A、33Aが設けられている。
【0039】
沈殿槽32において用いる凝集剤37としては、従来からこの分野で用いられているものを何ら制限無く用いることができる。また、沈殿槽33において用いるPH調整剤38についても、従来からこの分野で用いられているものを何ら制限無く用いることができる。
【0040】
また、本実施形態においては、汚泥39を回収する手段として上記構成の沈殿槽32、33を用いているが、これには限定されず、固液分離できるものであれば何れの構成のものも採用することができ、例えば、従来公知のろ過装置等を何ら制限無く使用することが可能である。
【0041】
分解処理部34、35は、汚染物質91に含まれる有機物を分解して除去するものであり、図2に示す例では、汚染物質91を活性酸素処理することで有機物を分解する分解処理部34と、活性炭吸着処理を施して除害水80を排出する分解処理部35とがこの順で備えられている。
【0042】
分解処理部34において、汚染物質91に活性酸素を添加する手段については、特に限定されないが、図示例のように、超微細気泡活性酸素供給部34Aを備え、超微細気泡状の活性酸素Mを汚染物質91に添加できる構成とすることが好ましい。このように、汚染物質91に超微細気泡状の活性酸素Mを供給可能な超微細気泡活性酸素供給部34Aを備えることにより、汚染物質91に含まれる有害な有機物を効果的に分解することが可能となる。
【0043】
分解処理部35は、タンク35A内に活性炭吸着部材35Bが備えられ、タンク35A内に導入された汚染物質91において、分解処理部34で除去し切れなかった有機物やその他の有害物を吸着して除去するものである。
活性炭吸着部材35Bとしては、この分野において従来公知のものを何ら制限無く用いることができる。また、活性炭吸着部材35Bを定期的に交換することにより、有機物等の吸着作用を維持することが可能となる。
【0044】
本実施形態の除害処理装置3は、上記各構成により、まず、油水分離部31において、汚染物質91から油脂成分91aを分離除去する。そして、沈殿槽32、33において、汚染物質91の含有成分を凝集させ、沈殿した汚泥39を除去した後、分解処理部34、35において、有機物を分解・除去するものである。
【0045】
なお、本実施形態の除害処理装置3においては、図1に示す例のように、さらに、該除害処理装置3の内部において、特に、上述の油脂成分91aから発生する臭気を、直流パルスプラズマを用いて脱臭処理する脱臭装置36を備えた構成とすることが、環境保護や職場環境の向上等の観点からより好ましい。
【0046】
後処理装置4は、図1に示す例のように、内部で土壌90を冷却処理する冷却筒41と、土壌90を攪拌しながら搬送する後処理搬送部42と、該後処理搬送部42を回転させる駆動源のモータ43と、除害処理装置3から排出された除害水80を用いて土壌90を冷却処理する後処理冷却部44と、該後処理冷却部44で用いられた除害水80を冷却後の土壌90に添加する除害水供給部45とから構成される。
【0047】
冷却筒41は、上述した脱水筒51や加熱筒11と同様、略筒状に構成され、土壌90が投入される投入口41aと、冷却後に除害水80が添加された処理済の土壌90を排出する排出口41bとが備えられる。
後処理搬送部42は、冷却筒41の内部に設けられ、図1に示す例においては、上述した搬送部12等と同様、スクリュー状に形成されている。後処理搬送部42は、モータ43によって回転することで、土壌90を投入口41aから排出口41bに向けて攪拌しながら搬送する。なお、搬送部52は、図示例のような略スクリュー状の構成には限定されず、上述の搬送部12等と同様、リボン状やパドル状等、粉体輸送が可能な構成のものを何ら制限無く採用することができる。
【0048】
後処理冷却部44は、詳細な図示を省略するが、冷却筒41の周囲に設けられる熱交換部材である。後処理冷却部44は、上述した除害処理装置3において無害化された除害水80が導入されることで、土壌90を冷却できる構成とされている。
除害水供給部45は、上述の処理冷却部44で用いられた除害水80を、冷却後の土壌90に添加するものであり、公知のパイプやノズル部材等で構成することができる。
【0049】
後処理装置4は、上記各構成により、冷却筒41内において、後処理搬送部42によって土壌90を攪拌しながら搬送する。この際、土壌90は、後処理冷却部44において無害化された除害水80によって冷却される。
さらに、本実施形態の浄化装置10に備えられる後処理装置4においては、後処理冷却部44で用いられた除害水80を、除害水供給部45によって冷却後の土壌90に添加する。これにより、浄化装置10は、大量の排水を系外に放出することが無く、例えば、工場廃水のための処理施設や排水放出場所等の選定等が不要となる。また、土壌90に無害化された水分を含ませることで、処理後の土壌90が飛散するのを防止できるので、粉塵が外部に流出するようなことが無い。
【0050】
なお、本実施形態の浄化装置10は、通常の土壌処理施設内に固定して設置する構成に限定されるものではない。例えば、本実施形態の浄化装置10を、トレーラー等の大型車両等に搭載して移動可能とし、土壌90の採取現場まで浄化装置を自由に運搬できる構成とすることも可能である。本実施形態の浄化装置10は、汚染物質や燃焼ガス、粉塵等の他、大量の処理水を系外に排出することが無く、環境負荷を最小限に抑制でき、また、また、各種処理設備やポンプ等の付帯設備も不要で装置全体が小型化できる構成なので、移動に極めて適したものとなる。また、浄化装置10を移動可能に構成することにより、環境影響評価の実施も不要となる。
【0051】
また、浄化装置10をトレーラー等の車両に搭載して移動可能に構成する場合には、図1に示すような加熱分解装置1、凝縮装置2、除害処理装置3及び後処理装置4等の各設備について、例えば、同一の大型車両に搭載することが可能である。あるいは、上記各設備を、それぞれ別の車両に搭載し、土壌90の処理現場において、各々をパイプ等で接続して使用する構成としても構わない。このような構成とした場合には、浄化装置10を構成する各設備が搭載される車両を、比較的小型のものとすることができるので、運搬移動が容易になるという利点がある。
【0052】
また、本実施形態で説明する例の浄化装置10は、後処理装置4において、浄化された土壌90に除害水80を添加する構成とされているが、例えば、排水経路や貯水タンク等が確保されている場合には、浄化装置10の外部(系外)に排水することも可能である。
【0053】
[有機系汚染土壌の浄化方法]
以下に、本実施形態の有機系汚染土壌の浄化方法について、上述した本発明に係る浄化装置10を用いて土壌91を浄化する場合を例に、以下に説明する。
【0054】
本実施形態の有機系汚染土壌の浄化方法は、揮発性特定有害物質からなる汚染物質を含有する土壌90を攪拌しながら搬送するとともに、この土壌90を高周波誘導加熱し、土壌90から汚染物質91を気化分離する加熱分解工程と、汚染物質91を再凝縮させて液化する凝縮工程と、液化された汚染物質91から油脂成分91aを分離した後、汚染物質91を攪拌しながら凝集させた汚泥39を沈殿させ、さらに、PHを調整しながら攪拌することで汚泥を沈殿させて除去処理し、次いで、汚染物質91を活性酸素処理することで有機物を分解した後、さらに、活性炭吸着処理を施して除害水を排出する除害処理工程と、浄化された土壌90を攪拌しながら搬送するとともに、除害処理工程において排出された除害水80を用いて土壌90を冷却処理し、該冷却処理に用いられた除害水80を冷却された土壌90に添加する後処理工程とを具備する方法である。
【0055】
本実施形態の浄化方法においては、浄化装置10を用い、まず、汚染物質91を含有する土壌90を加熱分解工程に導入する前に、予め、図1に示す脱水装置5によって土壌90を加温しながら脱水処理する脱水工程が備えられていることが好ましい。
【0056】
次に、加熱分解工程においては、図1に示す加熱分解装置1によって、土壌90から汚染物質91を気化分離することによって土壌90を浄化する。
具体的には、被処理物である汚染物質91を含有する土壌90を、搬送部11によって攪拌しながら搬送するとともに、土壌90を高周波誘導加熱部14によって加熱することにより、土壌90から汚染物質91を気化分離する。
【0057】
加熱分解工程においては、高周波誘導加熱部14による土壌90の加熱温度を、例えば600℃程度、又は600℃以下とすることが好ましい。この際、高周波誘導加熱部14に備えられる高周波制御部14bからコイル14aに供給される電力を制御することにより、加熱温度を所望の範囲とすることができる。
【0058】
また、加熱分解工程では、搬送部12による土壌90の搬送速度については、加熱分解装置1全体の能力や、処理する土壌90の量を勘案しながら、適宜、設定すれば良い。
【0059】
次に、凝縮工程においては、図1に示すような凝縮装置2を用い、上述の加熱分解工程において気化分離した汚染物質91を再凝縮させて液化する。この際、コンデンサ21には、超微細気泡を含んだ冷却水28を導入することが、冷却効率並びに凝縮効率の点から好ましい。
【0060】
次に、除害処理工程においては、図1に示すような除害処理装置3を用い、まず、油水分離部31において、液化された汚染物質91から油脂成分91aを分離する。
次いで、沈殿槽32において、汚染物質91に凝集剤37を添加して沈殿させた汚泥39を回収する。そして、沈殿槽33において、沈殿槽32で汚泥39が除去された汚染物質91に、さらにPH調整剤38を添加し、汚泥39を沈殿させて除去する。
【0061】
次いで、分解処理部34において、汚染物質91に活性酸素を添加する活性酸素処理を行うことで有機物を分解する。この際の活性酸素処理としては、超微細気泡状の活性酸素を分解処理部34内に供給して行うことが、汚染物質91に含まれる有機物を効果的に分解できる点から好ましい。そして、分解処理部35において、分解処理部34で除去し切れなかった有機物やその他の有害物を、活性炭吸着部材35Bを用いて吸着し、除去する。
【0062】
なお、上記手順の除害処理工程においては、脱臭装置36を用い、汚染物質91あるいは油脂成分91aから発生する臭気を、直流パルスプラズマを用いて脱臭処理することが好ましい。
【0063】
次に、後処理工程においては、図1に示すような後処理装置4を用い、加熱分解工程において汚染物質91が分離された土壌90を冷却するとともに、除害処理工程において排出された除害水80を土壌90に添加する。これにより、大気中に粉塵を放出することなく、無害化された状態で土壌90を取り出すことができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置10によれば、土壌90を誘導加熱する高周波誘導加熱部14を備え、汚染物質91を気化分離することによって土壌90を浄化する加熱分解装置1と、気化分離された汚染物質91を再凝縮させて液化する凝縮装置2と、汚染物質91から油脂成分91aを分離する油水分離部31と、汚染物質91を攪拌しながら凝集させた汚泥を沈殿させて除去処理する沈殿槽32、33と、有機物を分解した後、活性炭吸着処理を施して除害水80を排出する分解処理部34、35とが順次備えられてなる除害処理装置3と、土壌を攪拌しながら搬送する後処理搬送部42と、除害処理装置3から排出された除害水80を用いて土壌90を冷却処理する後処理冷却部44と、該後処理冷却部44で用いられた除害水80を冷却後の土壌90に添加する除害水供給部45とが備えられた後処理装置4とを具備する構成なので、有害な汚染物質のみならず、環境に悪影響を与える燃焼ガスや粉塵等の他、大量の処理水を系外に排出することが無い。また、燃焼ガスの処理設備や燃料貯蔵設備、ポンプ等の付帯設備も不要となるので、装置全体の小型化やコストダウンが可能となる。従って、環境負荷が極めて小さく安全性に優れ、コンパクトな構成で、揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥を効率的に浄化処理することが可能な浄化装置10を実現することができる。
【0065】
また、本実施形態の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法によれば、土壌90を攪拌しながら搬送するとともに土壌を高周波誘導加熱し、土壌90から汚染物質91を気化分離する加熱分解工程と、汚染物質91を再凝縮させて液化する凝縮工程と、液化された汚染物質91から油脂成分91aを分離した後、汚染物質91を攪拌しながら凝集させて沈殿した汚泥39を除去処理し、次いで、汚染物質91をなす有機物を分解した後、さらに、活性炭吸着処理を施して除害水80を排出する除害処理工程と、浄化された土壌90を攪拌しながら搬送するとともに、除害処理工程において排出された除害水80を用いて土壌90を冷却処理し、該冷却処理に用いられた除害水80を冷却された土壌90に添加する後処理工程とを具備する方法なので、上記同様、有害な汚染物質のみならず、環境に悪影響を与える燃焼ガスや粉塵等の他、大量の処理水を系外に排出することが無い。従って、環境負荷が極めて小さく安全性に優れ、汚染土壌を効率的に浄化処理することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置及び処理方法の構成によれば、工場等から排出される汚染物質等によって汚染された土壌の他、同様に汚染物質を含有する産業廃棄物等を浄化処理する設備に適用することで、大きな効果が得られる。
【符号の説明】
【0067】
1…加熱分解装置、12…搬送部、14…高周波誘導加熱部、2…凝縮装置、24…超微細気泡処理部、3…除害処理装置、31…油水分離部、32、33…沈殿槽、34、35…分解処理部、34A…超微細気泡状活性酸素供給部、35B…活性炭吸着部材、36…脱臭装置、37…凝集剤、38…PH調整剤、39…汚泥、4…後処理装置、42…後処理搬送部、44…後処理冷却部、45…除害水供給部、5…脱水装置、54…加温部、10…浄化装置、80…除害水、90…土壌、91…汚染物質、91a…油脂成分、M…活性酸素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物である、揮発性特定有害物質からなる汚染物質を含有する土壌又は汚泥を攪拌しながら搬送する搬送部と、前記土壌を誘導加熱する高周波誘導加熱部とを備え、前記土壌又は汚泥から前記汚染物質を気化分離することによって前記土壌又は汚泥を浄化する加熱分解装置と、
前記加熱分解装置によって気化分離された前記汚染物質を再凝縮させて液化する凝縮装置と、
前記液化された汚染物質から油脂成分を分離する油水分離部と、前記汚染物質を攪拌しながら凝集させた汚泥を沈殿させ、さらに、PHを調整しながら攪拌することで汚泥を沈殿させて除去処理する沈殿槽と、前記汚染物質を活性酸素処理することで有機物を分解した後、さらに、活性炭吸着処理を施して除害水を排出する分解処理部とが順次備えられてなる除害処理装置と、
前記加熱分解装置において前記汚染物質が分離された前記土壌又は汚泥を攪拌しながら搬送する後処理搬送部と、前記除害処理装置から排出された除害水を用いて前記土壌又は汚泥を冷却処理する後処理冷却部と、該後処理冷却部において冷却処理に用いられた前記除害水を、前記後処理冷却部で冷却された前記土壌又は汚泥に添加する除害水供給部とが備えられた後処理装置と、を具備することを特徴とする揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
【請求項2】
さらに、前記汚染物質を含有する土壌又は汚泥を前記加熱分解装置に導入する前に、予め、前記土壌又は汚泥を加温しながら脱水処理するための脱水装置を具備することを特徴とする請求項1に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
【請求項3】
前記脱水装置は、前記加熱分解装置において気化分離された前記汚染物質並びに蒸気を導入することにより、前記汚染物質を含有する土壌又は汚泥を加温する加温部が備えられてなることを特徴とする請求項2に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
【請求項4】
前記除害処理装置は、さらに、該除害処理装置の内部において、前記汚染物質から発生する臭気を、直流パルスプラズマを用いて脱臭処理する脱臭装置を備えることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
【請求項5】
前記凝縮装置は、超微細気泡を含む冷却水を供給することにより、前記汚染物質を再凝縮して液化することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
【請求項6】
前記除害処理装置に備えられる前記分解処理部は、超微細気泡状の活性酸素を前記汚染物質に添加することにより、該汚染物質に含有される有機物を分解することを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化装置。
【請求項7】
被処理物である、揮発性特定有害物質からなる汚染物質を含有する土壌又は汚泥を攪拌しながら搬送するとともに、前記土壌又は汚泥を高周波誘導加熱し、前記土壌又は汚泥から前記汚染物質を気化分離することによって前記土壌又は汚泥を浄化する加熱分解工程と、
前記加熱分解工程において気化分離した前記汚染物質を再凝縮させて液化する凝縮工程と、
前記液化された汚染物質から油脂成分を分離し、次いで、前記汚染物質を攪拌しながら凝集させた汚泥を沈殿させ、さらに、PHを調整しながら攪拌することで汚泥を沈殿させて除去処理し、次いで、前記汚染物質を活性酸素処理することで有機物を分解した後、さらに、活性炭吸着処理を施して除害水を排出する除害処理工程と、
前記加熱分解工程において前記汚染物質が分離された前記土壌又は汚泥を攪拌しながら搬送するとともに、前記除害処理工程において排出された除害水を用いて前記土壌又は汚泥を冷却処理し、該冷却処理に用いられた前記除害水を、冷却された前記土壌又は汚泥に添加する後処理工程と、を具備することを特徴とする揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
【請求項8】
さらに、前記汚染物質を含有する土壌又は汚泥を前記加熱分解工程に導入する前に、予め、前記土壌又は汚泥を加温しながら脱水処理する脱水工程が備えられていることを特徴とする請求項7に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
【請求項9】
前記脱水工程は、前記加熱分解工程において気化分離された前記汚染物質並びに蒸気を導入することにより、前記汚染物質を含有する土壌又は汚泥を加温することを特徴とする請求項8に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
【請求項10】
前記除害処理工程は、さらに、前記汚染物質から発生する臭気を、直流パルスプラズマを用いて脱臭処理することを特徴とする請求項7〜請求項9の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
【請求項11】
前記凝縮工程は、超微細気泡を含む冷却水を供給することにより、前記汚染物質を再凝縮して液化することを特徴とする請求項7〜請求項10の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。
【請求項12】
前記除害処理工程は、超微細気泡状の活性酸素を前記汚染物質に添加することにより、該汚染物質に含有される有機物を分解することを特徴とする請求項7〜請求項11の何れか1項に記載の揮発性特定有害物質による汚染土壌又は汚泥の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−31208(P2011−31208A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181837(P2009−181837)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(509220448)株式会社ジー・イーテクノス (1)
【出願人】(500295243)株式会社安斉管鉄 (1)
【Fターム(参考)】