搬送アーム装置
【課題】可動範囲が広く、位置決め精度やメンテナンス性に優れた搬送アーム装置を提供する。
【解決手段】基台2上に基部111を枢設された第1アーム11と、その先端部112に基部121を枢設された第2アーム12と、その先端部122に基部131を枢設されたハンド部13と、第1アーム回動手段6と、第2アーム回動手段7とを有し、基台2に対する第1アーム11および第2アーム12の角度をそれぞれ変化させることでハンド部13の基部131を所定の位置に移動させる搬送アーム装置1であって、第2アーム回動手段7が、基台2上に枢設され第1アーム11と同一の回動中心114を有する回動部材14と、回動部材14と第2アーム12とを連結する連結手段20とを備えており、基台2に対して回動部材14および第2アーム12が同一方向に同一角度連動して回動するように構成した。
【解決手段】基台2上に基部111を枢設された第1アーム11と、その先端部112に基部121を枢設された第2アーム12と、その先端部122に基部131を枢設されたハンド部13と、第1アーム回動手段6と、第2アーム回動手段7とを有し、基台2に対する第1アーム11および第2アーム12の角度をそれぞれ変化させることでハンド部13の基部131を所定の位置に移動させる搬送アーム装置1であって、第2アーム回動手段7が、基台2上に枢設され第1アーム11と同一の回動中心114を有する回動部材14と、回動部材14と第2アーム12とを連結する連結手段20とを備えており、基台2に対して回動部材14および第2アーム12が同一方向に同一角度連動して回動するように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等のワークを搬送するための搬送アーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハ等のワークを製造工程に従って搬送するための搬送アーム装置として、様々なものが知られている。その中でも、人間の肩から上腕、前腕、手と同様に基台上に第1アーム、第2アームおよびハンド部を連結して設け、これらが協同して屈伸運動を行うことで基台に対してハンド部を進退自在に構成したものがある。
【0003】
こうした搬送アーム装置の中でも、例えば下記特許文献1に係るものがある。これは、第1アームの回動と連動してベルト、プーリーを介して第2アームが回動するように構成されており、長さの等しい第1アームと第2アームとが協同して屈伸運動を行うことで、ハンド部が直線上を進退可能とされている。
【0004】
また、特許文献2により開示された技術においては、第1アームを回動させるための機構としてその内部に設けた第1の平行リンク機構と、第2アームを回動させるための機構としてその内部に設けた第2の平行リンク機構とを備えるとともに、これら二つの平行リンク機構の間に連動機構を備えており、双方のアームが連動して屈曲運動をすることで、特許文献1と同様、ハンド部が直線上を進退可能とされている。
【0005】
さらに、特許文献3により開示された技術では、第1アームおよび第2アームの内部に、それぞれ第1の平行リンク機構、第2の平行リンク機構を備えるとともに、両者の間の連動機構を備える点は特許文献2と同様であるものの、第1アームの回動とは別に第1の平行リンク機構の角度を変更する手段を有し、その変更と連動して第2の平行リンク機構および第2アームの回動角度を変えることを可能に構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−124300号公報
【特許文献2】特許第3853645号公報
【特許文献3】特開2008−188719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る先行技術においては、ベルトの伸びによる位置精度の悪化や、ベルトとプーリーとの摺動に起因した摩耗粉によるワーク汚れが発生する可能性がある。
【0008】
他方、特許文献2および特許文献3に係る先行技術においては、金属部品を主体とする平行リンク機構の組み合わせによるものであり、位置精度の向上やゴミ発生の抑制等の点では特許文献1のものに比し有利となる。しかしながら上腕である第1アームの回動に連動して、前腕である第2アームの回動を行わせるため、それぞれに設けた平行リンク機構を2つ連結して相互に連動させるための連動機構を設ける必要がある。当該連動機構は搬送アームの内部、具体的には上腕と前腕とが連結された肘部分の内部に組み込む必要がある。従って搬送アーム全体の構成が複雑となり、十分な剛性を持たすことが困難である。よって、いまだ位置決め精度の点で十分とは言い難い。また、構成が複雑であるためメンテナンス性が悪くなってしまう。さらに、機構上の制約が多いため可動範囲を広くすることが困難となる。
【0009】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には可動範囲を広くするとともに、ハンド部の位置決め精度を向上させることが可能であり、メンテナンス性に優れた搬送アーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明の搬送アーム装置は、基台上に基部を枢設され、当該基部より外径方向に延出された先端部を有する第1アームと、当該第1アームの先端部に基部を枢設され、当該基部より外径方向に延出された先端部を有し、前記第1アームの回動平面と略平行な面内を回動可能な第2アームと、当該第2アームの先端部に基部を枢設され、当該第1アームおよび第2アームの回動平面と略平行な面内を回動可能なハンド部と、前記基台に対する前記第1アームの角度を変化させる第1アーム回動手段と、前記基台に対する前記第2アームの角度を変化させる第2アーム回動手段とを有し、前記基台に対する前記第1アームおよび前記第2アームの角度をそれぞれ変化させることで前記ハンド部の基部を所定の位置に移動させるものであって、前記第2アーム回動手段が、前記基台上に枢設され前記第1アームと同一の回動中心を有する回動部材と、当該回動部材と前記第2アームとを連結する連結手段とを備えており、前記基台に対して前記回動部材および前記第2アームが同一方向に同一角度連動して回動するように構成したことを特徴とする。
【0012】
このように構成すると、ハンド部の基部の位置となる第2アームの先端部の位置は、第1アームの回動角度と、第1アームと第2アームと回動部材と連結手段とから構成される一個のリンク機構の動作とのみによって決定されることになる。そのため、従来技術で用いていたベルト・プーリー構成や2個の平行リンク機構の組み合わせ構成に比し、構成が簡単で部品点数や部品間の連結部が少なくなり、剛性を高めて位置決め精度を向上させることができるとともに、メンテナンス性を向上させることが可能となる。また、第2アームと第1アームとの連動は、まず第1アームと回動部材とを連動させ、この回動部材とリンクして第2アームが動作することで実現するようにしてあるため、第1アームと第2アームの連結部である肘部は、特別な連動機構を有していない簡単な構成とすることができる。そのため、機構上の制約が少なくなることから、第2アームの第1アームに対する回動範囲を広くすることができ、その結果搬送アーム全体の可動範囲を広くすることが可能となる。
【0013】
さらに、上記の効果を高めて可動範囲をより広くするためには、前記連結手段が、取付位置の位相を変えて設けられた複数の連結部材からなるように構成することが好適である。
【0014】
また、上記の効果をさらに高めるためには、前記複数の連結部材を前記第1アームの回動する平面と直交する方向に、相互に位置をずらして配置するよう構成することがより好適である。
【0015】
また、第1アームと第2アームとが連動して、ハンド部が直線上を進退可能とするためには、前記第1アームの回動中心から前記第2アームの回動中心までの距離と、当該第2アームの回動中心から前記ハンド部の回動中心までの距離を略同一にするとともに、前記回動部材を前記第1アームの回動と連動して逆方向に同一角度回動するよう構成することが好適である。
【0016】
さらには、上記ハンド部が進退動作とは無関係に、常時同じ方向を向くようにするためには、前記第1アームの先端部に第2アームと同一の回動中心を有する補助アームを枢設し、当該補助アームおよび前記第1アームの双方をリンクとして含み、前記基台に対する前記補助アームの向きを維持するための平行リンク機構と、前記補助アーム、前記第2アームおよび前記ハンド部をリンクとして含み、前記補助アームと前記ハンド部の平行を維持するための別の平行リンク機構とを有するように構成することが好適である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した本発明によれば、ハンド部の可動範囲を広くするとともに、位置決め精度の向上を可能とし、かつ、メンテナンス性に優れた搬送アーム装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送アーム装置の斜視図。
【図2】同搬送アーム装置の基準位置における上面図。
【図3】同搬送アーム装置の一の動作位置における上面図。
【図4】同搬送アーム装置の別の動作位置における上面図。
【図5】同搬送アーム装置の別の動作位置における上面図。
【図6】同搬送アーム装置の別の動作位置における上面図。
【図7】同搬送アーム装置の別の動作位置における上面図。
【図8】同搬送アーム装置の各アームの回動角度を説明する模式図。
【図9】同搬送アーム装置の連結手段の動作を説明する模式図。
【図10】同搬送アーム装置の連結手段の動作を説明する模式図。
【図11】同搬送アーム装置のリンク機構を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、この実施形態の搬送アーム装置1は大きくは基台2、第1アーム11、第2アーム12およびハンド部13から構成され、それぞれ人間の肩、上腕、前腕および手の部分に相当する。そして、これらが協同して動作を行い、ハンド部13が基台2に対して進退動作を行うことによって、図示しない被搬送物(半導体ウェハ等のワーク)の受渡しを行うことが可能となっている。
【0021】
本搬送アーム装置1の具体的構成を以下に説明する。
【0022】
まず、第1アーム11は基部111から先端部112にかけて延出された板状の部材であり、基部111の下部に設けられた円筒状の軸部113を介して基台2の上面に枢設されている。そのため、基部111を中心に先端部112を外側として回転が可能になっている。
【0023】
同様に、第2アーム12も基部121から先端部122にかけて延出された板状の部材であり、基部121の下部に設けられた円筒状の軸部123を介して第1アーム11の先端部112に枢設されている。そのため、基部121を中心に先端部122を外側として回転が可能になっているとともに、軸部123によって第1アームと第2アームとの間には上下方向に間隙が設けられている。
【0024】
さらに、ハンド部13は第2アーム12の先端部122にその基部131を枢設され、当該基部131を中心に回転が可能となっている。ハンド部13の先端は略U字形状の平面を有する載置部132となり、当該載置部132の上に図示しない被搬送物を載せることが可能となっている。なお、載置部132の形状は、被搬送物の形状に応じて適宜変更することが可能である。
【0025】
また、これらの第1アーム11、第2アーム12およびハンド部13は、それぞれ互いに平行となる面内を回動するように構成している。本実施形態においては、基台2の上面を平面に構成し、第1アーム11、第2アーム12およびハンド部13の回動平面と平行となるように構成しているが、基台2の上面を平面とすることは本発明において必須ではなく、第1アーム11、第2アーム12およびハンド部13等と平行に構成することも必須ではない。
【0026】
さらに、第1アーム11および第2アーム12の長さをほぼ等しく、厳密には上方から見た際の第1アーム11と第2アーム12の回動中心114、124間の距離と、第2アームおよびハンド部の回動中心124、134間の距離を等しくするようにしている。そのため、基台2に対して第1アーム11が回動した際、後述のように第2アーム12も基台2に対して逆方向に同じ角度の回動を行うように構成すれば、ハンド部13の基部131が直線上を進退することが可能となる。
【0027】
上記のような基本構成を有する搬送アーム装置1の各部を、所定の規則を持って運動させるため本実施形態の搬送アーム装置1は、図11に模式的に示したような、第1〜第4の平行リンク機構101〜104を備えている。このうち、第1および第2の平行リンク機構101、102は、第2アーム12の基台2に対する角度を変更することによってハンド部13の手首部分ともいえる基部131の位置決めを行う機能を有し、第3および第4の平行リンク機構103、104は、ハンド部13が基部131の位置にかかわらず常時同じ方向を向くように方向を規制する機能を有するように構成されている。
【0028】
以下、具体的な構成について説明を行う。
【0029】
本搬送アーム装置1は、図1に示すように、第1アーム11の回動中心114と同一の回動中心となるように、基台2上にリング状の回動部材14を、第1アーム11とは独立して回転可能に枢設している。そして、当該回動部材14の動作を第2アーム12に伝え連動させるための連結手段20を有している。
【0030】
上記回動部材14は上部を平面に構成してあり、図2に示すように、当該回動部材14の回動中心114から見て図中の上方向を0°とし、反時計方向を+として表したとき、+45°の位置と、−45°の位置にそれぞれ第1連結点41、第2連結点42を備えている。そして、これらの箇所において、図1および図2に示すように、それぞれ連結手段20としての第1連結部材21、第2連結部材22が枢結されている。
【0031】
第1連結部材21および第2連結部材22は、それぞれ上記第1連結点41および第2連結点42より第2アームの基部121まで延出したレバー型の形状をしており、各々第2アーム基部121の下面に設けられた第3連結点43、第4連結点44に枢結されている。第3連結点43および第4連結点44は、図2に示すように、第1連結点41、第2連結点42と同様、第2アーム12の回動中心124に対してそれぞれ+45°の位置と−45°の位置に設けられている。さらに、第1および第2連結点41、42と回動部材14の回動中心114との間の距離、並びに第3および第4連結点43、44と第2アーム12の回動中心124との間の距離が全て同一となるように構成している。
【0032】
また、図1に示すように、第1連結部材21と第2連結部材22とは上下方向に位置をずらして設けることで、相互の干渉を防ぐとともに、双方ともに第1アーム11と第2アーム12の回動平面間に設けることで、コンパクトな構成としてある。さらに、第1連結部材21は長手方向の中間付近を図中の左側に屈曲させることで、図7のようにハンド部13が後退した際に第4連結点44と干渉しないようにしている。また、このような形状とすることで、図5のようにハンド部13が進出した際に第1アーム11の上部より大きく張り出さないようにすることも可能となっている。さらに、図1および図2示すように、第2連結部材22は第3連結点43から第2アーム12の基部121に向け直線上に延出された後、大きな円弧を描きつつほぼ直角に屈曲してから第4連結点44に連結されている。このような形状をとることで、図5のようにハンド部13が進出した際でも、第2アーム12下部の軸部123との干渉を防止することが可能となる。
【0033】
また、本搬送アーム装置1は、図2に示すように、第1アーム回動中心114からみて左方向、つまりはハンド部13が進出する方向とは逆側で、所定の距離離れた基台2上に第5連結点45を設けている。そして、図1に示すように、第1アーム11の先端部112上に第2アーム12の回動中心124と同一の回動中心を有する板状の補助アーム15が枢設している。当該補助アーム15は当該回動中心124より、外側に向かって延出した形状としており、その先端には第6連結点46を設けている。そして、当該第6連結点46と第2アーム回動中心124の間の距離が、第5連結点45と第1アーム11の回動中心114の間の距離と同一となるように設定している。さらに、第5連結点45に枢結されるとともに、そこから延出された後に第6連結点46に枢結されることで両者を連結する、略レバー状の第3連結部材33を設けている。この第3連結部材33は、連結を行う第5連結点45と第6連結点46との間の距離を、第1アーム11および第2アーム12の回動中心114、124間の距離と同一となるように長さを設定している。
【0034】
さらに、図1および図2に示すように、ハンド部13を、その回動中心131を挟んで載置部132とは反対側にも延出した形状として、その先端には第7連結点47を設けている。そして、当該第7連結点47とハンド部13の回動中心131との距離が、第2アーム回動中心124と第6連結点46の間の距離と同一となるように設定している。さらに、第6連結点46に枢結されるとともに、そこから延出された後に第7連結点47に枢結されることで両者を連結する、略レバー状の第4連結部材34を設けている。この第4連結部材34は、連結を行う第6連結点46と第7連結点47との間の距離を、第2アーム12およびハンド部13の回動中心124、134間の距離と同一となるように長さを設定している。
【0035】
上記の構成の中で、第1アーム11、回動部材14、第1連結部材21、第2アーム12が連結された部分が、図11に示す第1の平行リンク機構101として機能することになる。図1と図11を対比させつつ詳述すると、第1アーム11の中でも第1アーム回動中心114から第2アーム回動中心124までの線分を第1リンク101a、回動部材14の中でもその回動中心114から第1連結点41までの線分を第2リンク101b、第1連結部材21の中でも、第1連結点41から第3連結点43までの線分を第3リンク101c、第2アーム12の中でもその回動中心124から第3連結点43までの線分を第4リンク101dとして、これら4つのリンクより第1の平行リンク機構101は構成されている。
【0036】
同様に、第1アーム11、回動部材14、第2連結部材22、第2アーム12が連結された部分が、図11に示す第2の平行リンク機構102として機能することになる。図1と図11を対比させつつ詳述すると、第1アーム11の中でも第1アーム回動中心114から第2アーム回動中心124までの線分を第1リンク102a、回動部材14の中でもその回動中心114から第2連結点42までの線分を第2リンク102b、第2連結部材22の中でも、第2連結点42から第4連結点44までの線分を第3リンク102c、第2アーム12の中でもその回動中心124から第4連結点44までの線分を第4リンク102dとして、これら4つのリンクより第2の平行リンク機構102は構成されている。
【0037】
このように構成することで、第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102とは、回動部材14の回動と第2アーム12の回動を連動させるという同一の機能を有する。しかしながら、両者が互いの死点を補完し合いながら機能することで、幅広い動作範囲で回動部材14と第2アーム12とを連動させることを可能としている。
【0038】
具体的には、第1連結部材21と第2連結部材22とは位相を90°ずらした位置に取り付けてある。そのため、第1の平行リンク機構101または第2平行リンク機構102の各リンクによって構成される平行四辺形がつぶれて直線の状態となる、いわゆる死点の状態となった時でも、他方の平行リンク機構は死点の状態となることがなく、安定して動作を行わせることができる。
【0039】
さらに、第1アーム11、基台2、第3連結部材33、補助アーム15が連結された部分が、図11に示す第3の平行リンク機構103として機能することになる。図1と図11を対比させつつ詳述すると、第1アーム11の中でも第1アーム回動中心114から第2アーム回動中心124までの線分を第1リンク103a、基台2の中でも第1アーム11の回動中心114から第5連結点45までの線分を第2リンク103b、第3連結部材33の中でも、第5連結点45から第6連結点46までの線分を第3リンク103c、補助アーム15の中でもその回動中心124から第6連結点46までの線分を第4リンク103dとして、これら4つのリンクより第3の平行リンク機構103は構成されている。
【0040】
同様に、第2アーム12、補助アーム15、第4連結部材34、ハンド部13が連結された部分が、図11に示す第4の平行リンク機構104として機能することになる。図1と図11を対比させつつ詳述すると、第2アーム12の中でもその回動中心124からハンド部13の回動中心134までの線分を第1リンク104a、補助アーム15の中でもその回動中心124から第6連結点46までの線分を第2リンク104b、第4連結部材34の中でも、第6連結点46から第7連結点47までの線分を第3リンク104c、ハンド部13の中でもその回動中心134から第7連結点47までの線分を第4リンク104dとして、これら4つのリンクより第4の平行リンク機構104は構成されている。
【0041】
上記のように構成したリンク機構101〜104の駆動源として、図1に示すように、第1アーム11の基部の下方にモータ3を設け、第1アーム11との連結を行っている。これらモータ3とその出力を第1アーム11に伝達するための伝動手段61が、第1アーム回動手段6として機能することになる。そして、モータ3の回動を図示しない制御手段によって制御することにより、第1アーム11の回動位置を制御している。
【0042】
また、本実施形態においては、上記モータ3の出力を適宜ギア等の構成を用いて反転した上で回動部材14に伝達する伝動手段71を有しており、これらモータ3と伝動手段71に加えて、回動部材14と連結手段20とにより、第2アーム回動手段7として機能することになる。そして、第1アーム11の回動と連動して、第2アーム12を逆方向に同じ角度回動することができるように構成している。
【0043】
以下、本実施形態の搬送アーム装置1が行う具体的な動作を説明する。
【0044】
図2〜図7では、各(a)図において第1アーム11が所定の角度となったときの、それぞれの部材の位置関係を示し、これらの図よりハンド部13および補助アーム15を省略したものを各(b)図に示す。
【0045】
ここで、まず図8の模式図を用いて、本実施形態に示す搬送アーム装置における角度の表し方を示す。図8は、模式的に、第1アーム11、第2アーム12および回動部材14を表したものである。本実施形態においては、図2のように第1アーム11の回動中心114とハンド部13の回動中心134とが上下に重なり合う位置、換言すると第1アーム11と第2アーム12とがほぼ重なり合った位置を基準位置とする。すなわち、第1アーム11はその回動中心114から見て先端部が図中の下側となったときを基準とする。同様に、回動部材14はその回動中心114から見て、第1連結点41および第2連結点42が、図中の上方向を基準としてそれぞれ+45°、−45°の位置にあるときを基準とする。これにより、図8のように、第1アーム11の回動角度θ1は回動中心114から見た下方向を基準位置として、ここから反時計回りの方向を+側として定義する。同様に、回動部材14の回動角度θ2は、第1連結点41の基準位置41aからの回動角度として、時計回りを+側として定義する。さらに、このとき第2アーム12が第1アーム11となす角度をθ3として定義する。
【0046】
上述したように、第2アーム12の動作は図11に示す第1の平行リンク機構101および第2の平行リンク機構102によって規制されている。そして、第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102とは、相互に関連づけられ連動して動作するように構成してある。
【0047】
すなわち、図1および図11に示すように、第1アーム11は、第1の平行リンク機構101の第1リンク101aと第2の平行リンク機構102の第1リンク102aの役割を同時に担っている。また、第1の平行リンク機構101の第2リンク101bと第2の平行リンク機構102の第2リンク102bとは一個の回動部材14の一部を構成するものであるため、常に同じ方向に同一角度(図8におけるθ2)でもって運動を行う。同様に、第1の平行リンク機構101の第4リンク101dと第2の平行リンク機構102の第4リンク102dとは一個の第2アーム12の一部を構成するものであるため、常に第2アーム12と同じ回転運動を行うことになる。さらに、第1の平行リンク機構101の第3リンク101cと第2の平行リンク機構102の第3リンク102cとは、それぞれ第1連結部材21、第2連結部材22という別部材ではあるが、連結点に着目すれば常に互いに平行が維持される。
【0048】
このように第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102とを連結して構成していることから、第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102とは常に連動することになる。そして、これら平行リンク機構101、102の働きにより、回動部材14の回動に伴って、同方向に同一角度第2アーム12が回動することになる。すなわち、回動部材14が時計回りにθ2回動すれば第2アーム12も時計回りにθ2回動する。逆に言えば、回動部材14がある回転位相に固定されていれば、第2アーム12も常にその回転位相に応じた方向を向くことになる。
【0049】
よって、図8に戻って説明すると、第1アーム11および第2アーム12が重なり合った基準位置の状態より第1アーム11のみが反時計回りにθ1回動するだけでは、第2アーム12はその基部121が第1アーム11とともに移動するのみで、先端部122は図中の上方向を向いたままとなる。しかしながら、回転部材14が第1アーム11に対して同期逆回転するため、回動部材14が時計回りにθ2回動すれば第2アーム12の先端部122も時計回りにθ2回動することになる。すなわち、第2アーム12が第1アーム11との間でなす角θ3とθ1、θ2との間には、θ3=θ1+θ2との関係がある。以上の関係に加えて、本搬送アーム装置では、上述したように、第1アーム11と第2アーム12の各回転中心間の距離を、第2アーム12とハンド部13の各回転中心間の距離と等しくするとともに、θ1とθ2とが同じ角度となるように構成してあるため、常にハンド部13の基部131が直線上を進退するようになっている。
【0050】
よって、以下においては、各部の位置を表すための代表値としてθ1を用いて説明する。
【0051】
図2から図5にかけては、基準位置にあったハンド部13が、基台2に対して右方向に進出していく際の過程を示したものであり、θ1がそれぞれ0°から22.5°、45°、67.5°と増加している。このときθ1が増加していくにつれて、連結手段20としての第1連結部材21と第2連結部材22とは、徐々に近接していき、やがては重なり合う位置に来る。しかしながら、図1からも分かるように、第1連結部材21は、第2連結部材22の上方に位置をずらして設けているために、両者は干渉することがなく機能は損なわれない。また、第2連結部材22は上述したように第4連結点44付近で約90°大きく屈曲した形状としているため、図5に示すように、θ1が67.5°となった場合においても、第2アーム12下部の軸と干渉することなく第4連結点44との連結を維持している。また、この時、第1連結部材21は上述の通り、中央付近が屈曲した形状となっていることから、第1アーム11の上方より大きくはみ出すことが無く、ハンド部13が進出した際のコンパクト性に寄与している。
【0052】
さらに、こうした構成とすることで、図6および図7に示したように、ハンド部13は基準位置からさらに後方に退避する方向にも動作することが可能となる。具体的には、θ1は−36°まで逆方向に回転することにより、ハンド部13がほぼ基台2の直上にまで退避してくることが可能としている。第1連結部材21は上述の通り、中央付近が屈曲した形状となっていることから、第4連結点44との干渉を生じることが無く、ハンド部13の後退方向への動作範囲の拡大に寄与している。
【0053】
このような中、第1アーム11と第2アーム12との間の相対角度θ3は、θ1の2倍の角度で動作を行う。従って、上述のようにθ1が−36°から67.5°の範囲で変化すれば、θ3は−72°から135°までの207°の範囲内で変化することになり、第1の平行リンク機構101および第2の平行リンク機構102はこうした角度条件の下で動作を適切に行う必要がある。
【0054】
通常、平行リンク機構においては、大きく動作させすぎると各リンクにより構成される平行四辺形が一直線上につぶれた状態が生じ、動作が不安定となるいわゆる死点の状態となるため、これを避けることが必要となる。
【0055】
本実施形態において第1および第2の平行リンク機構101、102は、上述した角度範囲内において図9(a)〜(g)、図10(a)〜(d)に示すような様々な形状を採ることになる。
【0056】
例えば、図9(c)に示すθ1=22.5°の際に、第1の平行リンク機構101のなす平行四辺形が一直線状態となる、いわゆる死点の状態となる。しかしながら、この際にも、第2の平行リンク機構102は平行四辺形を維持しており、この働きによって動作が不安定となることがない。同様に、図9(g)に示すθ1=67.5°の状態では、第2の平行リンク機構102が死点の状態となるが、第1の平行リンク機構101が平行四辺形を維持しているため動作安定性は維持される。さらには、退避方向においても、図10(c)に示すようにθ1=−22.5°の位置で、第2の平行リンク機構102に死点が訪れるが、第1のリンク機構101により動作安定性は維持される。
【0057】
すなわち、第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102とは、基本的には同一の機能を有するものであるが、互いの死点を補完し合う関係にあるものといえる。
【0058】
また、上記のように本搬送アーム装置においては、第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102の作用によりハンド部13の基部は直線上に進退を行うが、さらに第3リンク機構103と第4の平行リンク機構104の作用により、ハンド部13の方向性が維持される。
【0059】
具体的には、図11および図2〜図7の各(a)図に示すように、第3の平行リンク機構103の作用により、第1アーム11の回動にかかわらず、常に補助アーム15は先端が図中の左側を向いた方向を維持する。そして、第4の平行リンク機構104の作用により、ハンド部13は、補助アーム15との平行が常に維持されることになる。その結果、ハンド部13はその基部131が第2アーム12によっていかなる位置に移動されようとも、載置部132が同じ方向を向くようになっている。本搬送アーム装置においては、ハンド部13が進退する方向と載置部132の向きを等しく設定している。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る搬送アーム装置1は、基台2上に基部111を枢設され、当該基部111より外径方向に延出された先端部112を有する第1アーム11と、当該第1アーム11の先端部112に基部121を枢設され、当該基部121より外径方向に延出された先端部122を有し、前記第1アーム11の回動平面と略平行な面内を回動可能な第2アーム12と、当該第2アーム12の先端部122に基部131を枢設され、当該第1アーム11および第2アーム12の回動平面と略平行な面内を回動可能なハンド部13と、前記基台2に対する前記第1アーム11の角度を変化させる第1アーム回動手段6と、前記基台2に対する前記第2アーム12の角度を変化させる第2アーム回動手段7とを有し、前記基台7に対する前記第1アーム11および前記第2アーム12の角度をそれぞれ変化させることで前記ハンド部13の基部131を所定の位置に移動させるものであって、前記第2アーム回動手段7が、前記基台2上に枢設され前記第1アーム11と同一の回動中心114を有する回動部材14と、当該回動部材14と前記第2アーム12とを連結する連結手段20とを備えており、前記基台2に対して前記回動部材14および前記第2アーム12が同一方向に同一角度連動して回動するように構成したものである。
【0061】
このように構成しているため、ハンド部13の基部131の位置は、第1アーム11の回動角度と、機能的には一個のリンク機構といえる第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102の動作だけで決定されることになる。そのため、従来技術で用いていたベルト・プーリー構成や2個の平行リンク機構の組み合わせ構成に比し、構成が簡単で部品点数や部品間の連結部が少なくなり、剛性を高めて位置決め精度を向上させることができるとともに、メンテナンス性を向上させることが可能となる。また、第2アーム12と第1アーム11との連動は、まず第1アーム11と回動部材14とを連動させ、この回動部材14とリンクして第2アーム12が動作することで実現するようにしてあるため、第1アーム11と第2アーム12の連結部である肘部は、特別な連動機構を有していない簡単な構成とすることができる。そのため、機構上の制約が少なくなることから、第2アームの第1アームに対する回動範囲を広くすることができ、その結果搬送アーム1全体の可動範囲を広くすることが可能となる。
【0062】
さらには、前記連結手段20が、取付位置の位相を変えて設けられた複数の連結部材21、22からなるように構成していることから、第2アーム12を回動させる平行リンク機構101、102における死点が相互に補完されており、可動範囲をさらに広くすることが可能となる、
【0063】
また、前記複数の連結部材21、22を前記第1アーム11の回動する平面と直交する方向に、相互に位置をずらして配置するよう構成することにより、その効果をさらに高めることが可能となっている。
【0064】
また、前記第1アーム11の回動中心114から前記第2アーム12の回動中心124までの距離と、当該第2アーム12の回動中心124から前記ハンド部13の回動中心134までの距離を略同一にするとともに、前記回動部材14を前記第1アーム11の回動と連動して逆方向に同一角度回動するよう構成しているため、第1アーム11と第2アーム12とが連動して動作を行い、ハンド部13が直線上に進退可能となっている。
【0065】
さらには、前記第1アーム11の先端部112に第2アーム12と同一の回動中心124を有する補助アーム15を枢設し、当該補助アーム15および前記第1アーム11の双方をリンクとして含み、前記基台2に対する前記補助アーム15の向きを維持するための平行リンク機構103と、前記補助アーム15、前記第2アーム12および前記ハンド部13をリンクとして含み、前記補助アーム15と前記ハンド部13の平行を維持するための別の平行リンク機構104とを有するように構成していることから、ハンド部13が進退動作とは無関係に、常時同じ方向を向くことが可能となっている。
【0066】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0067】
例えば、上記の実施形態では、第1連結部材21と第2連結部材22の取付位置を90°位相をずらした位置としていたが、第1の平行リンク機構と第2の平行リンク機構の死点を補完し合うことができれば、これを90°以外の角度に設定することも可能である。
【0068】
また、上記の実施形態では、一個のモータ3によって第1アーム11および第2アーム12を駆動させるように構成してあるが、それぞれに別のモータを連結させて、これらを同期させるように制御させることも可能である。
【0069】
さらに、基台2を床面に対して回転もしくは移動可能に構成することにより、さらにハンド部13が可動する範囲を拡大することも可能である。
【0070】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…搬送アーム装置
2…基台
3…モータ
4…被搬送物
6…第1アーム回動手段
7…第2アーム回動手段
11…第1アーム
12…第2アーム
13…ハンド部
14…回動部材
15…補助アーム
20…連結手段
21…第1連結部材
22…第2連結部材
33…第3連結部材
34…第4連結部材
101…第1の平行リンク機構
102…第2の平行リンク機構
103…第3の平行リンク機構
104…第4の平行リンク機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等のワークを搬送するための搬送アーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハ等のワークを製造工程に従って搬送するための搬送アーム装置として、様々なものが知られている。その中でも、人間の肩から上腕、前腕、手と同様に基台上に第1アーム、第2アームおよびハンド部を連結して設け、これらが協同して屈伸運動を行うことで基台に対してハンド部を進退自在に構成したものがある。
【0003】
こうした搬送アーム装置の中でも、例えば下記特許文献1に係るものがある。これは、第1アームの回動と連動してベルト、プーリーを介して第2アームが回動するように構成されており、長さの等しい第1アームと第2アームとが協同して屈伸運動を行うことで、ハンド部が直線上を進退可能とされている。
【0004】
また、特許文献2により開示された技術においては、第1アームを回動させるための機構としてその内部に設けた第1の平行リンク機構と、第2アームを回動させるための機構としてその内部に設けた第2の平行リンク機構とを備えるとともに、これら二つの平行リンク機構の間に連動機構を備えており、双方のアームが連動して屈曲運動をすることで、特許文献1と同様、ハンド部が直線上を進退可能とされている。
【0005】
さらに、特許文献3により開示された技術では、第1アームおよび第2アームの内部に、それぞれ第1の平行リンク機構、第2の平行リンク機構を備えるとともに、両者の間の連動機構を備える点は特許文献2と同様であるものの、第1アームの回動とは別に第1の平行リンク機構の角度を変更する手段を有し、その変更と連動して第2の平行リンク機構および第2アームの回動角度を変えることを可能に構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−124300号公報
【特許文献2】特許第3853645号公報
【特許文献3】特開2008−188719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る先行技術においては、ベルトの伸びによる位置精度の悪化や、ベルトとプーリーとの摺動に起因した摩耗粉によるワーク汚れが発生する可能性がある。
【0008】
他方、特許文献2および特許文献3に係る先行技術においては、金属部品を主体とする平行リンク機構の組み合わせによるものであり、位置精度の向上やゴミ発生の抑制等の点では特許文献1のものに比し有利となる。しかしながら上腕である第1アームの回動に連動して、前腕である第2アームの回動を行わせるため、それぞれに設けた平行リンク機構を2つ連結して相互に連動させるための連動機構を設ける必要がある。当該連動機構は搬送アームの内部、具体的には上腕と前腕とが連結された肘部分の内部に組み込む必要がある。従って搬送アーム全体の構成が複雑となり、十分な剛性を持たすことが困難である。よって、いまだ位置決め精度の点で十分とは言い難い。また、構成が複雑であるためメンテナンス性が悪くなってしまう。さらに、機構上の制約が多いため可動範囲を広くすることが困難となる。
【0009】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には可動範囲を広くするとともに、ハンド部の位置決め精度を向上させることが可能であり、メンテナンス性に優れた搬送アーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明の搬送アーム装置は、基台上に基部を枢設され、当該基部より外径方向に延出された先端部を有する第1アームと、当該第1アームの先端部に基部を枢設され、当該基部より外径方向に延出された先端部を有し、前記第1アームの回動平面と略平行な面内を回動可能な第2アームと、当該第2アームの先端部に基部を枢設され、当該第1アームおよび第2アームの回動平面と略平行な面内を回動可能なハンド部と、前記基台に対する前記第1アームの角度を変化させる第1アーム回動手段と、前記基台に対する前記第2アームの角度を変化させる第2アーム回動手段とを有し、前記基台に対する前記第1アームおよび前記第2アームの角度をそれぞれ変化させることで前記ハンド部の基部を所定の位置に移動させるものであって、前記第2アーム回動手段が、前記基台上に枢設され前記第1アームと同一の回動中心を有する回動部材と、当該回動部材と前記第2アームとを連結する連結手段とを備えており、前記基台に対して前記回動部材および前記第2アームが同一方向に同一角度連動して回動するように構成したことを特徴とする。
【0012】
このように構成すると、ハンド部の基部の位置となる第2アームの先端部の位置は、第1アームの回動角度と、第1アームと第2アームと回動部材と連結手段とから構成される一個のリンク機構の動作とのみによって決定されることになる。そのため、従来技術で用いていたベルト・プーリー構成や2個の平行リンク機構の組み合わせ構成に比し、構成が簡単で部品点数や部品間の連結部が少なくなり、剛性を高めて位置決め精度を向上させることができるとともに、メンテナンス性を向上させることが可能となる。また、第2アームと第1アームとの連動は、まず第1アームと回動部材とを連動させ、この回動部材とリンクして第2アームが動作することで実現するようにしてあるため、第1アームと第2アームの連結部である肘部は、特別な連動機構を有していない簡単な構成とすることができる。そのため、機構上の制約が少なくなることから、第2アームの第1アームに対する回動範囲を広くすることができ、その結果搬送アーム全体の可動範囲を広くすることが可能となる。
【0013】
さらに、上記の効果を高めて可動範囲をより広くするためには、前記連結手段が、取付位置の位相を変えて設けられた複数の連結部材からなるように構成することが好適である。
【0014】
また、上記の効果をさらに高めるためには、前記複数の連結部材を前記第1アームの回動する平面と直交する方向に、相互に位置をずらして配置するよう構成することがより好適である。
【0015】
また、第1アームと第2アームとが連動して、ハンド部が直線上を進退可能とするためには、前記第1アームの回動中心から前記第2アームの回動中心までの距離と、当該第2アームの回動中心から前記ハンド部の回動中心までの距離を略同一にするとともに、前記回動部材を前記第1アームの回動と連動して逆方向に同一角度回動するよう構成することが好適である。
【0016】
さらには、上記ハンド部が進退動作とは無関係に、常時同じ方向を向くようにするためには、前記第1アームの先端部に第2アームと同一の回動中心を有する補助アームを枢設し、当該補助アームおよび前記第1アームの双方をリンクとして含み、前記基台に対する前記補助アームの向きを維持するための平行リンク機構と、前記補助アーム、前記第2アームおよび前記ハンド部をリンクとして含み、前記補助アームと前記ハンド部の平行を維持するための別の平行リンク機構とを有するように構成することが好適である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した本発明によれば、ハンド部の可動範囲を広くするとともに、位置決め精度の向上を可能とし、かつ、メンテナンス性に優れた搬送アーム装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送アーム装置の斜視図。
【図2】同搬送アーム装置の基準位置における上面図。
【図3】同搬送アーム装置の一の動作位置における上面図。
【図4】同搬送アーム装置の別の動作位置における上面図。
【図5】同搬送アーム装置の別の動作位置における上面図。
【図6】同搬送アーム装置の別の動作位置における上面図。
【図7】同搬送アーム装置の別の動作位置における上面図。
【図8】同搬送アーム装置の各アームの回動角度を説明する模式図。
【図9】同搬送アーム装置の連結手段の動作を説明する模式図。
【図10】同搬送アーム装置の連結手段の動作を説明する模式図。
【図11】同搬送アーム装置のリンク機構を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、この実施形態の搬送アーム装置1は大きくは基台2、第1アーム11、第2アーム12およびハンド部13から構成され、それぞれ人間の肩、上腕、前腕および手の部分に相当する。そして、これらが協同して動作を行い、ハンド部13が基台2に対して進退動作を行うことによって、図示しない被搬送物(半導体ウェハ等のワーク)の受渡しを行うことが可能となっている。
【0021】
本搬送アーム装置1の具体的構成を以下に説明する。
【0022】
まず、第1アーム11は基部111から先端部112にかけて延出された板状の部材であり、基部111の下部に設けられた円筒状の軸部113を介して基台2の上面に枢設されている。そのため、基部111を中心に先端部112を外側として回転が可能になっている。
【0023】
同様に、第2アーム12も基部121から先端部122にかけて延出された板状の部材であり、基部121の下部に設けられた円筒状の軸部123を介して第1アーム11の先端部112に枢設されている。そのため、基部121を中心に先端部122を外側として回転が可能になっているとともに、軸部123によって第1アームと第2アームとの間には上下方向に間隙が設けられている。
【0024】
さらに、ハンド部13は第2アーム12の先端部122にその基部131を枢設され、当該基部131を中心に回転が可能となっている。ハンド部13の先端は略U字形状の平面を有する載置部132となり、当該載置部132の上に図示しない被搬送物を載せることが可能となっている。なお、載置部132の形状は、被搬送物の形状に応じて適宜変更することが可能である。
【0025】
また、これらの第1アーム11、第2アーム12およびハンド部13は、それぞれ互いに平行となる面内を回動するように構成している。本実施形態においては、基台2の上面を平面に構成し、第1アーム11、第2アーム12およびハンド部13の回動平面と平行となるように構成しているが、基台2の上面を平面とすることは本発明において必須ではなく、第1アーム11、第2アーム12およびハンド部13等と平行に構成することも必須ではない。
【0026】
さらに、第1アーム11および第2アーム12の長さをほぼ等しく、厳密には上方から見た際の第1アーム11と第2アーム12の回動中心114、124間の距離と、第2アームおよびハンド部の回動中心124、134間の距離を等しくするようにしている。そのため、基台2に対して第1アーム11が回動した際、後述のように第2アーム12も基台2に対して逆方向に同じ角度の回動を行うように構成すれば、ハンド部13の基部131が直線上を進退することが可能となる。
【0027】
上記のような基本構成を有する搬送アーム装置1の各部を、所定の規則を持って運動させるため本実施形態の搬送アーム装置1は、図11に模式的に示したような、第1〜第4の平行リンク機構101〜104を備えている。このうち、第1および第2の平行リンク機構101、102は、第2アーム12の基台2に対する角度を変更することによってハンド部13の手首部分ともいえる基部131の位置決めを行う機能を有し、第3および第4の平行リンク機構103、104は、ハンド部13が基部131の位置にかかわらず常時同じ方向を向くように方向を規制する機能を有するように構成されている。
【0028】
以下、具体的な構成について説明を行う。
【0029】
本搬送アーム装置1は、図1に示すように、第1アーム11の回動中心114と同一の回動中心となるように、基台2上にリング状の回動部材14を、第1アーム11とは独立して回転可能に枢設している。そして、当該回動部材14の動作を第2アーム12に伝え連動させるための連結手段20を有している。
【0030】
上記回動部材14は上部を平面に構成してあり、図2に示すように、当該回動部材14の回動中心114から見て図中の上方向を0°とし、反時計方向を+として表したとき、+45°の位置と、−45°の位置にそれぞれ第1連結点41、第2連結点42を備えている。そして、これらの箇所において、図1および図2に示すように、それぞれ連結手段20としての第1連結部材21、第2連結部材22が枢結されている。
【0031】
第1連結部材21および第2連結部材22は、それぞれ上記第1連結点41および第2連結点42より第2アームの基部121まで延出したレバー型の形状をしており、各々第2アーム基部121の下面に設けられた第3連結点43、第4連結点44に枢結されている。第3連結点43および第4連結点44は、図2に示すように、第1連結点41、第2連結点42と同様、第2アーム12の回動中心124に対してそれぞれ+45°の位置と−45°の位置に設けられている。さらに、第1および第2連結点41、42と回動部材14の回動中心114との間の距離、並びに第3および第4連結点43、44と第2アーム12の回動中心124との間の距離が全て同一となるように構成している。
【0032】
また、図1に示すように、第1連結部材21と第2連結部材22とは上下方向に位置をずらして設けることで、相互の干渉を防ぐとともに、双方ともに第1アーム11と第2アーム12の回動平面間に設けることで、コンパクトな構成としてある。さらに、第1連結部材21は長手方向の中間付近を図中の左側に屈曲させることで、図7のようにハンド部13が後退した際に第4連結点44と干渉しないようにしている。また、このような形状とすることで、図5のようにハンド部13が進出した際に第1アーム11の上部より大きく張り出さないようにすることも可能となっている。さらに、図1および図2示すように、第2連結部材22は第3連結点43から第2アーム12の基部121に向け直線上に延出された後、大きな円弧を描きつつほぼ直角に屈曲してから第4連結点44に連結されている。このような形状をとることで、図5のようにハンド部13が進出した際でも、第2アーム12下部の軸部123との干渉を防止することが可能となる。
【0033】
また、本搬送アーム装置1は、図2に示すように、第1アーム回動中心114からみて左方向、つまりはハンド部13が進出する方向とは逆側で、所定の距離離れた基台2上に第5連結点45を設けている。そして、図1に示すように、第1アーム11の先端部112上に第2アーム12の回動中心124と同一の回動中心を有する板状の補助アーム15が枢設している。当該補助アーム15は当該回動中心124より、外側に向かって延出した形状としており、その先端には第6連結点46を設けている。そして、当該第6連結点46と第2アーム回動中心124の間の距離が、第5連結点45と第1アーム11の回動中心114の間の距離と同一となるように設定している。さらに、第5連結点45に枢結されるとともに、そこから延出された後に第6連結点46に枢結されることで両者を連結する、略レバー状の第3連結部材33を設けている。この第3連結部材33は、連結を行う第5連結点45と第6連結点46との間の距離を、第1アーム11および第2アーム12の回動中心114、124間の距離と同一となるように長さを設定している。
【0034】
さらに、図1および図2に示すように、ハンド部13を、その回動中心131を挟んで載置部132とは反対側にも延出した形状として、その先端には第7連結点47を設けている。そして、当該第7連結点47とハンド部13の回動中心131との距離が、第2アーム回動中心124と第6連結点46の間の距離と同一となるように設定している。さらに、第6連結点46に枢結されるとともに、そこから延出された後に第7連結点47に枢結されることで両者を連結する、略レバー状の第4連結部材34を設けている。この第4連結部材34は、連結を行う第6連結点46と第7連結点47との間の距離を、第2アーム12およびハンド部13の回動中心124、134間の距離と同一となるように長さを設定している。
【0035】
上記の構成の中で、第1アーム11、回動部材14、第1連結部材21、第2アーム12が連結された部分が、図11に示す第1の平行リンク機構101として機能することになる。図1と図11を対比させつつ詳述すると、第1アーム11の中でも第1アーム回動中心114から第2アーム回動中心124までの線分を第1リンク101a、回動部材14の中でもその回動中心114から第1連結点41までの線分を第2リンク101b、第1連結部材21の中でも、第1連結点41から第3連結点43までの線分を第3リンク101c、第2アーム12の中でもその回動中心124から第3連結点43までの線分を第4リンク101dとして、これら4つのリンクより第1の平行リンク機構101は構成されている。
【0036】
同様に、第1アーム11、回動部材14、第2連結部材22、第2アーム12が連結された部分が、図11に示す第2の平行リンク機構102として機能することになる。図1と図11を対比させつつ詳述すると、第1アーム11の中でも第1アーム回動中心114から第2アーム回動中心124までの線分を第1リンク102a、回動部材14の中でもその回動中心114から第2連結点42までの線分を第2リンク102b、第2連結部材22の中でも、第2連結点42から第4連結点44までの線分を第3リンク102c、第2アーム12の中でもその回動中心124から第4連結点44までの線分を第4リンク102dとして、これら4つのリンクより第2の平行リンク機構102は構成されている。
【0037】
このように構成することで、第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102とは、回動部材14の回動と第2アーム12の回動を連動させるという同一の機能を有する。しかしながら、両者が互いの死点を補完し合いながら機能することで、幅広い動作範囲で回動部材14と第2アーム12とを連動させることを可能としている。
【0038】
具体的には、第1連結部材21と第2連結部材22とは位相を90°ずらした位置に取り付けてある。そのため、第1の平行リンク機構101または第2平行リンク機構102の各リンクによって構成される平行四辺形がつぶれて直線の状態となる、いわゆる死点の状態となった時でも、他方の平行リンク機構は死点の状態となることがなく、安定して動作を行わせることができる。
【0039】
さらに、第1アーム11、基台2、第3連結部材33、補助アーム15が連結された部分が、図11に示す第3の平行リンク機構103として機能することになる。図1と図11を対比させつつ詳述すると、第1アーム11の中でも第1アーム回動中心114から第2アーム回動中心124までの線分を第1リンク103a、基台2の中でも第1アーム11の回動中心114から第5連結点45までの線分を第2リンク103b、第3連結部材33の中でも、第5連結点45から第6連結点46までの線分を第3リンク103c、補助アーム15の中でもその回動中心124から第6連結点46までの線分を第4リンク103dとして、これら4つのリンクより第3の平行リンク機構103は構成されている。
【0040】
同様に、第2アーム12、補助アーム15、第4連結部材34、ハンド部13が連結された部分が、図11に示す第4の平行リンク機構104として機能することになる。図1と図11を対比させつつ詳述すると、第2アーム12の中でもその回動中心124からハンド部13の回動中心134までの線分を第1リンク104a、補助アーム15の中でもその回動中心124から第6連結点46までの線分を第2リンク104b、第4連結部材34の中でも、第6連結点46から第7連結点47までの線分を第3リンク104c、ハンド部13の中でもその回動中心134から第7連結点47までの線分を第4リンク104dとして、これら4つのリンクより第4の平行リンク機構104は構成されている。
【0041】
上記のように構成したリンク機構101〜104の駆動源として、図1に示すように、第1アーム11の基部の下方にモータ3を設け、第1アーム11との連結を行っている。これらモータ3とその出力を第1アーム11に伝達するための伝動手段61が、第1アーム回動手段6として機能することになる。そして、モータ3の回動を図示しない制御手段によって制御することにより、第1アーム11の回動位置を制御している。
【0042】
また、本実施形態においては、上記モータ3の出力を適宜ギア等の構成を用いて反転した上で回動部材14に伝達する伝動手段71を有しており、これらモータ3と伝動手段71に加えて、回動部材14と連結手段20とにより、第2アーム回動手段7として機能することになる。そして、第1アーム11の回動と連動して、第2アーム12を逆方向に同じ角度回動することができるように構成している。
【0043】
以下、本実施形態の搬送アーム装置1が行う具体的な動作を説明する。
【0044】
図2〜図7では、各(a)図において第1アーム11が所定の角度となったときの、それぞれの部材の位置関係を示し、これらの図よりハンド部13および補助アーム15を省略したものを各(b)図に示す。
【0045】
ここで、まず図8の模式図を用いて、本実施形態に示す搬送アーム装置における角度の表し方を示す。図8は、模式的に、第1アーム11、第2アーム12および回動部材14を表したものである。本実施形態においては、図2のように第1アーム11の回動中心114とハンド部13の回動中心134とが上下に重なり合う位置、換言すると第1アーム11と第2アーム12とがほぼ重なり合った位置を基準位置とする。すなわち、第1アーム11はその回動中心114から見て先端部が図中の下側となったときを基準とする。同様に、回動部材14はその回動中心114から見て、第1連結点41および第2連結点42が、図中の上方向を基準としてそれぞれ+45°、−45°の位置にあるときを基準とする。これにより、図8のように、第1アーム11の回動角度θ1は回動中心114から見た下方向を基準位置として、ここから反時計回りの方向を+側として定義する。同様に、回動部材14の回動角度θ2は、第1連結点41の基準位置41aからの回動角度として、時計回りを+側として定義する。さらに、このとき第2アーム12が第1アーム11となす角度をθ3として定義する。
【0046】
上述したように、第2アーム12の動作は図11に示す第1の平行リンク機構101および第2の平行リンク機構102によって規制されている。そして、第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102とは、相互に関連づけられ連動して動作するように構成してある。
【0047】
すなわち、図1および図11に示すように、第1アーム11は、第1の平行リンク機構101の第1リンク101aと第2の平行リンク機構102の第1リンク102aの役割を同時に担っている。また、第1の平行リンク機構101の第2リンク101bと第2の平行リンク機構102の第2リンク102bとは一個の回動部材14の一部を構成するものであるため、常に同じ方向に同一角度(図8におけるθ2)でもって運動を行う。同様に、第1の平行リンク機構101の第4リンク101dと第2の平行リンク機構102の第4リンク102dとは一個の第2アーム12の一部を構成するものであるため、常に第2アーム12と同じ回転運動を行うことになる。さらに、第1の平行リンク機構101の第3リンク101cと第2の平行リンク機構102の第3リンク102cとは、それぞれ第1連結部材21、第2連結部材22という別部材ではあるが、連結点に着目すれば常に互いに平行が維持される。
【0048】
このように第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102とを連結して構成していることから、第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102とは常に連動することになる。そして、これら平行リンク機構101、102の働きにより、回動部材14の回動に伴って、同方向に同一角度第2アーム12が回動することになる。すなわち、回動部材14が時計回りにθ2回動すれば第2アーム12も時計回りにθ2回動する。逆に言えば、回動部材14がある回転位相に固定されていれば、第2アーム12も常にその回転位相に応じた方向を向くことになる。
【0049】
よって、図8に戻って説明すると、第1アーム11および第2アーム12が重なり合った基準位置の状態より第1アーム11のみが反時計回りにθ1回動するだけでは、第2アーム12はその基部121が第1アーム11とともに移動するのみで、先端部122は図中の上方向を向いたままとなる。しかしながら、回転部材14が第1アーム11に対して同期逆回転するため、回動部材14が時計回りにθ2回動すれば第2アーム12の先端部122も時計回りにθ2回動することになる。すなわち、第2アーム12が第1アーム11との間でなす角θ3とθ1、θ2との間には、θ3=θ1+θ2との関係がある。以上の関係に加えて、本搬送アーム装置では、上述したように、第1アーム11と第2アーム12の各回転中心間の距離を、第2アーム12とハンド部13の各回転中心間の距離と等しくするとともに、θ1とθ2とが同じ角度となるように構成してあるため、常にハンド部13の基部131が直線上を進退するようになっている。
【0050】
よって、以下においては、各部の位置を表すための代表値としてθ1を用いて説明する。
【0051】
図2から図5にかけては、基準位置にあったハンド部13が、基台2に対して右方向に進出していく際の過程を示したものであり、θ1がそれぞれ0°から22.5°、45°、67.5°と増加している。このときθ1が増加していくにつれて、連結手段20としての第1連結部材21と第2連結部材22とは、徐々に近接していき、やがては重なり合う位置に来る。しかしながら、図1からも分かるように、第1連結部材21は、第2連結部材22の上方に位置をずらして設けているために、両者は干渉することがなく機能は損なわれない。また、第2連結部材22は上述したように第4連結点44付近で約90°大きく屈曲した形状としているため、図5に示すように、θ1が67.5°となった場合においても、第2アーム12下部の軸と干渉することなく第4連結点44との連結を維持している。また、この時、第1連結部材21は上述の通り、中央付近が屈曲した形状となっていることから、第1アーム11の上方より大きくはみ出すことが無く、ハンド部13が進出した際のコンパクト性に寄与している。
【0052】
さらに、こうした構成とすることで、図6および図7に示したように、ハンド部13は基準位置からさらに後方に退避する方向にも動作することが可能となる。具体的には、θ1は−36°まで逆方向に回転することにより、ハンド部13がほぼ基台2の直上にまで退避してくることが可能としている。第1連結部材21は上述の通り、中央付近が屈曲した形状となっていることから、第4連結点44との干渉を生じることが無く、ハンド部13の後退方向への動作範囲の拡大に寄与している。
【0053】
このような中、第1アーム11と第2アーム12との間の相対角度θ3は、θ1の2倍の角度で動作を行う。従って、上述のようにθ1が−36°から67.5°の範囲で変化すれば、θ3は−72°から135°までの207°の範囲内で変化することになり、第1の平行リンク機構101および第2の平行リンク機構102はこうした角度条件の下で動作を適切に行う必要がある。
【0054】
通常、平行リンク機構においては、大きく動作させすぎると各リンクにより構成される平行四辺形が一直線上につぶれた状態が生じ、動作が不安定となるいわゆる死点の状態となるため、これを避けることが必要となる。
【0055】
本実施形態において第1および第2の平行リンク機構101、102は、上述した角度範囲内において図9(a)〜(g)、図10(a)〜(d)に示すような様々な形状を採ることになる。
【0056】
例えば、図9(c)に示すθ1=22.5°の際に、第1の平行リンク機構101のなす平行四辺形が一直線状態となる、いわゆる死点の状態となる。しかしながら、この際にも、第2の平行リンク機構102は平行四辺形を維持しており、この働きによって動作が不安定となることがない。同様に、図9(g)に示すθ1=67.5°の状態では、第2の平行リンク機構102が死点の状態となるが、第1の平行リンク機構101が平行四辺形を維持しているため動作安定性は維持される。さらには、退避方向においても、図10(c)に示すようにθ1=−22.5°の位置で、第2の平行リンク機構102に死点が訪れるが、第1のリンク機構101により動作安定性は維持される。
【0057】
すなわち、第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102とは、基本的には同一の機能を有するものであるが、互いの死点を補完し合う関係にあるものといえる。
【0058】
また、上記のように本搬送アーム装置においては、第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102の作用によりハンド部13の基部は直線上に進退を行うが、さらに第3リンク機構103と第4の平行リンク機構104の作用により、ハンド部13の方向性が維持される。
【0059】
具体的には、図11および図2〜図7の各(a)図に示すように、第3の平行リンク機構103の作用により、第1アーム11の回動にかかわらず、常に補助アーム15は先端が図中の左側を向いた方向を維持する。そして、第4の平行リンク機構104の作用により、ハンド部13は、補助アーム15との平行が常に維持されることになる。その結果、ハンド部13はその基部131が第2アーム12によっていかなる位置に移動されようとも、載置部132が同じ方向を向くようになっている。本搬送アーム装置においては、ハンド部13が進退する方向と載置部132の向きを等しく設定している。
【0060】
以上のように、本実施形態に係る搬送アーム装置1は、基台2上に基部111を枢設され、当該基部111より外径方向に延出された先端部112を有する第1アーム11と、当該第1アーム11の先端部112に基部121を枢設され、当該基部121より外径方向に延出された先端部122を有し、前記第1アーム11の回動平面と略平行な面内を回動可能な第2アーム12と、当該第2アーム12の先端部122に基部131を枢設され、当該第1アーム11および第2アーム12の回動平面と略平行な面内を回動可能なハンド部13と、前記基台2に対する前記第1アーム11の角度を変化させる第1アーム回動手段6と、前記基台2に対する前記第2アーム12の角度を変化させる第2アーム回動手段7とを有し、前記基台7に対する前記第1アーム11および前記第2アーム12の角度をそれぞれ変化させることで前記ハンド部13の基部131を所定の位置に移動させるものであって、前記第2アーム回動手段7が、前記基台2上に枢設され前記第1アーム11と同一の回動中心114を有する回動部材14と、当該回動部材14と前記第2アーム12とを連結する連結手段20とを備えており、前記基台2に対して前記回動部材14および前記第2アーム12が同一方向に同一角度連動して回動するように構成したものである。
【0061】
このように構成しているため、ハンド部13の基部131の位置は、第1アーム11の回動角度と、機能的には一個のリンク機構といえる第1の平行リンク機構101と第2の平行リンク機構102の動作だけで決定されることになる。そのため、従来技術で用いていたベルト・プーリー構成や2個の平行リンク機構の組み合わせ構成に比し、構成が簡単で部品点数や部品間の連結部が少なくなり、剛性を高めて位置決め精度を向上させることができるとともに、メンテナンス性を向上させることが可能となる。また、第2アーム12と第1アーム11との連動は、まず第1アーム11と回動部材14とを連動させ、この回動部材14とリンクして第2アーム12が動作することで実現するようにしてあるため、第1アーム11と第2アーム12の連結部である肘部は、特別な連動機構を有していない簡単な構成とすることができる。そのため、機構上の制約が少なくなることから、第2アームの第1アームに対する回動範囲を広くすることができ、その結果搬送アーム1全体の可動範囲を広くすることが可能となる。
【0062】
さらには、前記連結手段20が、取付位置の位相を変えて設けられた複数の連結部材21、22からなるように構成していることから、第2アーム12を回動させる平行リンク機構101、102における死点が相互に補完されており、可動範囲をさらに広くすることが可能となる、
【0063】
また、前記複数の連結部材21、22を前記第1アーム11の回動する平面と直交する方向に、相互に位置をずらして配置するよう構成することにより、その効果をさらに高めることが可能となっている。
【0064】
また、前記第1アーム11の回動中心114から前記第2アーム12の回動中心124までの距離と、当該第2アーム12の回動中心124から前記ハンド部13の回動中心134までの距離を略同一にするとともに、前記回動部材14を前記第1アーム11の回動と連動して逆方向に同一角度回動するよう構成しているため、第1アーム11と第2アーム12とが連動して動作を行い、ハンド部13が直線上に進退可能となっている。
【0065】
さらには、前記第1アーム11の先端部112に第2アーム12と同一の回動中心124を有する補助アーム15を枢設し、当該補助アーム15および前記第1アーム11の双方をリンクとして含み、前記基台2に対する前記補助アーム15の向きを維持するための平行リンク機構103と、前記補助アーム15、前記第2アーム12および前記ハンド部13をリンクとして含み、前記補助アーム15と前記ハンド部13の平行を維持するための別の平行リンク機構104とを有するように構成していることから、ハンド部13が進退動作とは無関係に、常時同じ方向を向くことが可能となっている。
【0066】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0067】
例えば、上記の実施形態では、第1連結部材21と第2連結部材22の取付位置を90°位相をずらした位置としていたが、第1の平行リンク機構と第2の平行リンク機構の死点を補完し合うことができれば、これを90°以外の角度に設定することも可能である。
【0068】
また、上記の実施形態では、一個のモータ3によって第1アーム11および第2アーム12を駆動させるように構成してあるが、それぞれに別のモータを連結させて、これらを同期させるように制御させることも可能である。
【0069】
さらに、基台2を床面に対して回転もしくは移動可能に構成することにより、さらにハンド部13が可動する範囲を拡大することも可能である。
【0070】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…搬送アーム装置
2…基台
3…モータ
4…被搬送物
6…第1アーム回動手段
7…第2アーム回動手段
11…第1アーム
12…第2アーム
13…ハンド部
14…回動部材
15…補助アーム
20…連結手段
21…第1連結部材
22…第2連結部材
33…第3連結部材
34…第4連結部材
101…第1の平行リンク機構
102…第2の平行リンク機構
103…第3の平行リンク機構
104…第4の平行リンク機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に基部を枢設され、当該基部より外径方向に延出された先端部を有する第1アームと、当該第1アームの先端部に基部を枢設され、当該基部より外径方向に延出された先端部を有し、前記第1アームの回動平面と略平行な面内を回動可能な第2アームと、当該第2アームの先端部に基部を枢設され、当該第1アームおよび第2アームの回動平面と略平行な面内を回動可能なハンド部と、前記基台に対する前記第1アームの角度を変化させる第1アーム回動手段と、前記基台に対する前記第2アームの角度を変化させる第2アーム回動手段とを有し、前記基台に対する前記第1アームおよび前記第2アームの角度をそれぞれ変化させることで前記ハンド部の基部を所定の位置に移動させる搬送アーム装置であって、前記第2アーム回動手段が、前記基台上に枢設され前記第1アームと同一の回動中心を有する回動部材と、当該回動部材と前記第2アームとを連結する連結手段とを備えており、前記基台に対して前記回動部材および前記第2アームが同一方向に同一角度連動して回動するように構成したことを特徴とする搬送アーム装置。
【請求項2】
前記連結手段が、取付位置の位相を変えて設けられた複数の連結部材からなることを特徴とする請求項1に記載の搬送アーム装置。
【請求項3】
前記複数の連結部材を前記第1アームの回動する平面と直交する方向に、相互に位置をずらして配置したことを特徴とする請求項2に記載の搬送アーム装置。
【請求項4】
前記第1アームの回動中心から前記第2アームの回動中心までの距離と、当該第2アームの回動中心から前記ハンド部13の回動中心までの距離を略同一にするとともに、前記回動部材を前記第1アームの回動と連動して逆方向に同一角度回動するよう構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の搬送アーム装置。
【請求項5】
前記第1アームの先端部に第2アームと同一の回動中心を有する補助アームを枢設し、当該補助アームおよび前記第1アームの双方をリンクとして含み、前記基台に対する前記補助アームの向きを維持するための平行リンク機構と、前記補助アーム、前記第2アームおよび前記ハンド部をリンクとして含み、前記補助アームと前記ハンド部の平行を維持するための別の平行リンク機構とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の搬送アーム装置。
【請求項1】
基台上に基部を枢設され、当該基部より外径方向に延出された先端部を有する第1アームと、当該第1アームの先端部に基部を枢設され、当該基部より外径方向に延出された先端部を有し、前記第1アームの回動平面と略平行な面内を回動可能な第2アームと、当該第2アームの先端部に基部を枢設され、当該第1アームおよび第2アームの回動平面と略平行な面内を回動可能なハンド部と、前記基台に対する前記第1アームの角度を変化させる第1アーム回動手段と、前記基台に対する前記第2アームの角度を変化させる第2アーム回動手段とを有し、前記基台に対する前記第1アームおよび前記第2アームの角度をそれぞれ変化させることで前記ハンド部の基部を所定の位置に移動させる搬送アーム装置であって、前記第2アーム回動手段が、前記基台上に枢設され前記第1アームと同一の回動中心を有する回動部材と、当該回動部材と前記第2アームとを連結する連結手段とを備えており、前記基台に対して前記回動部材および前記第2アームが同一方向に同一角度連動して回動するように構成したことを特徴とする搬送アーム装置。
【請求項2】
前記連結手段が、取付位置の位相を変えて設けられた複数の連結部材からなることを特徴とする請求項1に記載の搬送アーム装置。
【請求項3】
前記複数の連結部材を前記第1アームの回動する平面と直交する方向に、相互に位置をずらして配置したことを特徴とする請求項2に記載の搬送アーム装置。
【請求項4】
前記第1アームの回動中心から前記第2アームの回動中心までの距離と、当該第2アームの回動中心から前記ハンド部13の回動中心までの距離を略同一にするとともに、前記回動部材を前記第1アームの回動と連動して逆方向に同一角度回動するよう構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の搬送アーム装置。
【請求項5】
前記第1アームの先端部に第2アームと同一の回動中心を有する補助アームを枢設し、当該補助アームおよび前記第1アームの双方をリンクとして含み、前記基台に対する前記補助アームの向きを維持するための平行リンク機構と、前記補助アーム、前記第2アームおよび前記ハンド部をリンクとして含み、前記補助アームと前記ハンド部の平行を維持するための別の平行リンク機構とを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の搬送アーム装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−152851(P2012−152851A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13743(P2011−13743)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】
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