説明

搬送システム、搬送方法および薄膜形成装置

【課題】形状が互いに異なる複数種類の板状の被搬送物を安定して吸着保持・搬送するための搬送システム、搬送方法および薄膜形成装置を提供する。
【解決手段】搬送システムは、第1の被搬送物2および第2の被搬送物3を載置可能な回転テーブル4と、被搬送物に接触する吸着面に吸着孔を有する吸着部材40と、吸着部材40を回転テーブル4の径方向に移動可能な移動機構21とを有する。そして、前記吸着孔内の気圧を下げることで被搬送物を前記吸着面に接触させた状態で吸着可能であり、前記被搬送物2の外面で前記吸着孔が吸着可能な第1の吸着可能領域の形状と、前記被搬送物3の外面で前記吸着孔が吸着可能な第2の吸着可能領域の形状とを重ね合わせて重複する領域から求められる第1の重心と、前記吸着孔の開口領域の第2の重心とが、吸着部材40で被搬送物2または被搬送物3を吸着する場合のいずれにおいても略同一の垂線上にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状が互いに異なる複数種類の板状の被搬送物を安定して吸着保持・搬送するための搬送システム、搬送方法および薄膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、形状が互いに異なる複数種類の被搬送物を搬送する場合には、それぞれの被搬送物の形状に合わせて吸着パッドの配置や形状寸法等を設定する必要があった。
【0003】
例えば、特許文献1には、寸法形状の異なる複数種類のチップをボンディングするためのボンディング機構が開示されている。特許文献1のボンディング機構では、それぞれのチップに適した形状を有するポケットが別々に用意されており、対応するポケットにチップを収容することにより安定して真空吸着し保持するようになっている。
【0004】
特許文献2には、厚さや重量の異なる二種類の基板に対して、保持に使用する吸着パッドを切り替えることを特徴とする基板搬送システムが開示されている。特許文献2の基板搬送システムでは、薄く軽いかつ割れやすい基板に対しては少数の小径パッドのみを使用し、厚く重い基板に対しては充分な吸着力が得られるよう多数の大径パッドを使用することでそれぞれの基板に適した吸着状態を得ることが可能となっている。
【0005】
特許文献3には、試料台をつかんで持ち上げてステージの上に移動させ、この位置で下降してステージに置いて放す、またはその逆の動作を、順次自動的に行うことができるCDV装置の試料台の取り付け取り外し機構が開示されている。
【0006】
また特許文献5では、格子状に配列された吸着パッドのうち、各種サイズのワークに対して四隅に近いパッドを含む必要なパッドのみを選択して作動させることで、なるべくワークの形状の全面において充分な吸着力を得られるよう構成された露光装置用吸着式搬送システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−219647号公報(1991年9月27日公開)
【特許文献2】特開2006−62801号公報(2006年3月9日公開)
【特許文献3】特開昭59−200434号公報(1984年11月13日公開)
【特許文献4】特開2006−173560号公報(2006年6月29日公開)
【特許文献5】実開平4−84243号公報(1992年7月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1,2および特許文献5に開示された搬送システムでは、形状が互いに異なる複数種類の被搬送物を一つの移動機構を用いて搬送することは困難であった。具体的には、特許文献1に示されるボンディング機構では、対象となる被搬送物は外形寸法の非常に小さい半導体チップであることから、例えば文献中に示されるように四種類のチップのそれぞれに適した形状を有する四種類のポケットを別々に用意したとしても、吸着ハンドとしてのボンディング機構のサイズはそれほど大きくならない。しかし被搬送物の外形寸法が数十ミリメートルから数メートルと大きくなる場合ほど無視できない問題となり、装置の形態や被搬送物の仕様によっては現実的でない場合が多い構造であるといえる。
【0009】
特許文献2に示される基板搬送システムは、薄くて割れやすい基板を吸着する際に吸着力を自ら制限して基板の割れを防止することを目的として設計されている。それゆえ、形状が互いに異なる複数種類の被搬送物を一つの移動機構を用いて搬送することは想定されていない。
【0010】
特許文献3に開示された機構では、移動される被搬送物は試料台一種のみであり、チャックヘッドの形状は試料台に対して最適な形状を取る。それゆえ、試料台と異なる形状を有する他の被搬送物を移動することは困難である。
【0011】
特許文献5に示される露光装置用吸着式搬送システムは、ワークの形状に対応してワークの吸着に作用し得るパッドのみを作動させることを目的とした真空排気系の選択切り替えの手段を有する。しかし、全てのパッドの吸着面高さが同一である必要があることから、複数のワークが密接して同一平面に並べられているような場合には、任意のワークの吸着に際して吸着エリア外として作動させない残りのパッドが、隣接するワークの表面にまで接触することが避けられない。特に例えば一部のワークが基板トレイであり、外周部のみが吸着時のパッド接触を許容され、内周部の基板表面に対しては汚染防止の点から吸着パッドの接触が禁じられている場合には、作動させない吸着パッドが基板表面に接触してしまうといった不具合が生じる場合がある。
【0012】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、使用する移動機構の複雑かつ大掛かりな切り替えや機構や、使用する吸着部材の選択切り替えを行う複雑な機構などは必要とせず、効率的な形状でかつ効率的な位置で吸着動作を行うことで、形状が互いに異なる複数種類の板状の被搬送物を、一つの移動機構によって移動することが可能な搬送システム、搬送方法および薄膜形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明に係る搬送システムは、第1の被搬送物と、当該第1の被搬送物とは互いに全体を内包できない形状の第2の被搬送物とを搬送する搬送システムにおいて、
前記搬送システムが、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を載置することができる回転テーブルと、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物に接触する吸着面に、吸着孔を有する吸着部材と、前記吸着部材を前記回転テーブルの径方向に移動させることができる移動機構と、を有しており、
前記吸着孔は、当該吸着孔内の気圧を下げることで、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を、前記吸着面に接触させた状態で吸着することができ、前記第1の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第1の吸着可能領域の形状と、前記第2の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第2の吸着可能領域の形状とを、重ね合わせた場合に重複する領域から求められる第1の重心と、前記吸着孔の開口領域の第2の重心とが、前記吸着部材で前記第1の被搬送物を吸着する場合、および前記吸着部材で前記第2の被搬送物を吸着する場合、のいずれにおいても、略同一の垂線上にあることを特徴としている。
【0014】
前記構成であれば、使用する移動機構の複雑かつ大掛かりな切り替えや機構や、使用する吸着部材の選択切り替えを行う複雑な機構などは必要とせず、効率的な形状でかつ効率的な位置で吸着動作を行うことで、形状が互いに異なる複数種類の板状の被搬送物を、一つの移動機構によって移動することができる。
【0015】
その理由を以下に具体的に説明する。吸着部材の開口している部分が吸着孔であり、吸着孔の内部を真空に引くことで、吸着部材は被搬送物を吸着する。前記「開口領域」の重心位置(第2の重心)は、吸着部材が物を吸着するときに最も安定して被搬送物を吸着できる位置となる。すなわち、被搬送物の重心と開口領域の重心とが合致している位置が、最も安定した吸着が可能となる位置である。
【0016】
そこで、本発明に係る搬送システムでは、第1の被搬送物の吸着可能領域と第2の被搬送物の吸着可能領域とが重なった領域の重心位置(第1の重心)を、前記「開口領域」の重心位置(第2の重心)と合致させる。それゆえ、第1の被搬送物の吸着可能領域と第2の被搬送物の吸着可能領域とが重なった領域(以下、「共通吸着可能領域」と称する)について最も安定して吸着が可能となる。
【0017】
この場合、第1の被搬送物および第2の被搬送物の両方に対して同等の安定性を確保できる位置となる。すなわち、第1の被搬送物も第2の被搬送物も、どちらも同等に安定して吸着が可能となる。さらに、本発明に係る搬送システムでは、第1の被搬送物と第2の被搬送物との重ね合わせの仕方を工夫することで、第1の被搬送物および第2の被搬送物の両方を最も安定して吸着することも可能となる。
【0018】
尚、特許文献4には、複数枚に分割されたウエハガイドについて記載されているが、かかるウエハガイドの搬送システムおよび搬送方法に関しては全く開示されていない。まして、形状が互いに異なる、複数枚に分割されたウエハガイドとウエハとを一つの移動機構によって移動するという発想自体、全く記載されていない。
【0019】
本発明に係る搬送システムは、第1の被搬送物と、第1の被搬送物とは形状の異なる第2の被搬送物とを搬送する搬送システムにおいて、
前記搬送システムが、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を載置することができる回転テーブルと、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物に接触する吸着面に、吸着孔を有する吸着部材と、前記吸着部材を前記回転テーブルの径方向に移動させることができる移動機構と、を有しており、
前記吸着孔は、当該吸着孔内の気圧を下げることで、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を、前記吸着面に接触させた状態で吸着することができ、前記第1の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第1の吸着可能領域の形状と、前記第2の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第2の吸着可能領域の形状とを、重ね合わせた場合に重複する複数の領域のうち、面積が最小である最小領域の面積を、最大化するように重ね合わせた場合の当該最小領域の形状に、内包されるように設けられており、
前記吸着面は、前記第1の吸着可能領域に収まる範囲で、前記第1の被搬送物に接触するかもしくは前記第2の吸着可能領域に収まる範囲で、前記第2の被搬送物に接触することを特徴としている。
【0020】
前記構成であれば、複数の吸着箇所に対して吸着を行う場合に、最も面積が小さく吸着力が得られにくい領域の面積を最大化することになるので、吸着力の分布やバランスを縮小し、より安定した吸着状態が得られる。それゆえ、気相成長炉などの高温処理装置において、より高い温度の被搬送物を吸着するために前記吸着部材として金属やカーボンやセラミック等の硬質な素材を用いる場合であっても吸着の安定性を確保することが可能となる。
【0021】
本発明に係る搬送システムでは、前記第1の被搬送物または前記第2の被搬送物を前記吸着部材によって吸着し、前記吸着された被搬送物を移動した後で、前記回転テーブルを所定角度回転させるとともに、前記移動機構によって前記吸着部材を前記回転テーブルの径方向に所定量だけ移動させ、その後、前記吸着された被搬送物とは別の形状の被搬送物を、前記吸着部材によって吸着することが好ましい。
【0022】
さらに、本発明に係る搬送システムでは、前記回転テーブルに載置される前記第1の被搬送物をn枚とし、前記回転テーブルに載置された前記第1の被搬送物の中心と、前記回転テーブルの回転中心との距離をRとした場合に、前記所定量を、R(1―cos(π/n))とすることが好ましい。
【0023】
前記構成によれば、複数の吸着箇所に対して吸着を行う場合に、最も面積が小さく吸着力が得られにくい領域の面積をより最大化することになるので、吸着力の分布やバランスを縮小し、より安定した吸着状態が得られる。それゆえ、異なる形状を有する複数の被搬送物を、一つの移動機構によってより安定的に移動することができる。
【0024】
本発明に係る薄膜形成装置は、本発明に係る搬送システムを備えたことを特徴としている。
【0025】
上述したように、本発明に係る搬送システムによれば、複数の吸着箇所に対して吸着を行う場合に、上述した最小領域の面積を最大化することになるので、吸着力の分布やバランスを縮小し、より安定した吸着状態が得られる。それゆえ、本発明に係る搬送システムを備えた薄膜形成装置は、気相成長炉などの高温処理装置において、より高い温度の被搬送物を吸着するために前記吸着部材として金属やカーボンやセラミック等の硬質な素材を用いる場合であっても吸着の安定性を確保することが可能な薄膜形成装置となる。
【0026】
本発明に係る搬送方法は、第1の被搬送物と、当該第1の被搬送物とは形状の異なる第2の被搬送物とを載置することができる回転テーブルから、または回転テーブルへ、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を移動させる搬送方法において、
前記第1の被搬送物を、吸着部材によって吸着する工程と、当該第1の被搬送物を移動する工程と、前記回転テーブルを予め定められた角度回転させる工程と、移動機構によって前記吸着部材を予め定められた距離量だけ移動させる工程と、前記第2の被搬送物を、前記吸着部材によって吸着する工程と、を含むことを特徴としている。
【0027】
前記方法によれば、使用する移動機構の複雑かつ大掛かりな切り替えや機構や、使用する吸着部材の選択切り替えを行う複雑な機構などは必要とせず、効率的な形状でかつ効率的な位置で吸着動作を行うことで、異なる形状を有する複数の被搬送物を、一つの移動機構によって移動することができる。
【0028】
さらに、本発明に係る搬送方法では移動機構によって吸着部材を予め定められた距離量だけ移動させるので、上述した最小共通吸着可能領域の面積を、より広く設定することができる。それゆえ、気相成長炉などの高温処理装置において、より高い温度の被搬送物を吸着するために前記吸着部材として金属やカーボンやセラミック等の硬質な素材を用いる場合であっても吸着の安定性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る搬送システムは、第1の被搬送物と、当該第1の被搬送物とは互いに全体を内包できない形状の第2の被搬送物とを搬送する搬送システムにおいて、
前記搬送システムが、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を載置することができる回転テーブルと、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物に接触する吸着面に、吸着孔を有する吸着部材と、前記吸着部材を前記回転テーブルの径方向に移動させることができる移動機構と、を有しており、
前記吸着孔は、当該吸着孔内の気圧を下げることで、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を、前記吸着面に接触させた状態で吸着することができ、前記第1の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第1の吸着可能領域の形状と、前記第2の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第2の吸着可能領域の形状とを、重ね合わせた場合に重複する領域から求められる第1の重心と、前記吸着孔の開口領域の第2の重心とが、前記吸着部材で前記第1の被搬送物を吸着する場合、および前記吸着部材で前記第2の被搬送物を吸着する場合、のいずれにおいても、略同一の垂線上にある構成である。
【0030】
これは、換言すれば、本発明に係る搬送システムは、第1の被搬送物と、第1の被搬送物とは形状の異なる第2の被搬送物とを搬送する搬送システムにおいて、
前記搬送システムが、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を載置することができる回転テーブルと、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物に接触する吸着面に、吸着孔を有する吸着部材と、前記吸着部材を前記回転テーブルの径方向に移動させることができる移動機構と、を有しており、
前記吸着孔は、当該吸着孔内の気圧を下げることで、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を、前記吸着面に接触させた状態で吸着することができ、前記第1の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第1の吸着可能領域の形状と、前記第2の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第2の吸着可能領域の形状とを、重ね合わせた場合に重複する複数の領域のうち、面積が最小である最小領域の面積を、最大化するように重ね合わせた場合の当該最小領域の形状に、内包されるように設けられており、
前記吸着面は、前記第1の吸着可能領域に収まる範囲で、前記第1の被搬送物に接触するかもしくは前記第2の吸着可能領域に収まる範囲で、前記第2の被搬送物に接触する構成である。
【0031】
また、本発明に係る薄膜形成装置は、本発明に係る搬送システムを備えている。
【0032】
また、本発明に係る搬送方法では、第1の被搬送物と、当該第1の被搬送物とは形状の異なる第2の被搬送物とを載置することができる回転テーブルから、または回転テーブルへ、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を移動させる搬送方法において、
前記第1の被搬送物を、吸着部材によって吸着する工程と、当該第1の被搬送物を移動する工程と、前記回転テーブルを予め定められた角度回転させる工程と、移動機構によって前記吸着部材を予め定められた距離量だけ移動させる工程と、前記第2の被搬送物を、前記吸着部材によって吸着する工程と、を含む構成である。
【0033】
それゆえ、本発明に係る搬送システム、およびかかる搬送システムを備えた薄膜形成装置、並びに本発明に係る搬送方法によれば、使用する移動機構の複雑かつ大掛かりな切り替えや機構や、使用する吸着部材の選択切り替えを行う複雑な機構などは必要とせず、効率的な形状でかつ効率的な位置で吸着動作を行うことで、異なる形状を有する複数の被搬送物を、一つの移動機構によって移動することができるという効果を奏する。
【0034】
さらに、移動機構によって吸着部材を予め定められた距離量だけ移動させるので、吸着部材を移動させない場合と比較して、前記吸着孔が吸着することができる第1の吸着可能領域の形状と、前記第2の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第2の吸着可能領域の形状とを、重ね合わせた場合に重複する複数の領域のうち、面積が最小である最小領域の面積を、より広く設定することができる。それゆえ、気相成長炉などの高温処理装置において、より高い温度の被搬送物を吸着するために前記吸着部材として金属やカーボンやセラミック等の硬質な素材を用いる場合であっても吸着の安定性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態である薄膜形成装置と搬送システムとの構成を模式的に示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る移載ハンドの構成を模式的に示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図3】第1実施形態における基板トレイおよび流路カバーのそれぞれの吸着可能領域、基板トレイと流路カバーとの共通吸着可能領域、並びに吸着パッドの形状と配置とを示す平面図である。(a)は基板トレイおよび流路カバーのそれぞれの吸着可能領域を示している図である。(b)は基板トレイと流路カバーとの共通吸着可能領域を示している図である。(c)は吸着パッドの形状と配置とを示している図である。(d)は移載ハンドの移動量を説明している図である。
【図4】移載ハンドをサセプターの半径方向に相対的に移動した移動量と吸着パッドの吸着面の面積または吸着パッドの外径との関係を表す。(a)は移載ハンドをサセプターの半径方向に移動しない場合と、移載ハンドをサセプターの半径方向にR(1−cos(π/n))移動させた場合とにおいて、円形吸着パッドの吸着面の最大径と、吸着パッドの接触領域の面積とをそれぞれ示す平面図であり、(b)は移載ハンドをサセプターの半径方向に相対的に移動した移動量と吸着パッドの吸着面の面積または吸着パッドの外径との関係を表すグラフである。
【図5】本発明に係る搬送方法の一実施形態を説明する図であり、(a)〜(d)は各工程における基板トレイおよび流路カバーの配置を表す平面図および側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る薄膜形成装置の構成を模式的に表す図であり、(a)は薄膜形成装置の平面図であり、(b)は薄膜形成装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。またそれぞれの実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。以下の説明は、搬送システム、薄膜形成装置および搬送方法についての説明を含む。
【0037】
〔1.搬送システムおよび薄膜形成装置〕
本発明に係る搬送システムは、第1の被搬送物と、当該第1の被搬送物とは互いに全体を内包できない形状の第2の被搬送物とを搬送する搬送システムにおいて、
前記搬送システムが、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を載置することができる回転テーブルと、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物に接触する吸着面に、吸着孔を有する吸着部材と、前記吸着部材を前記回転テーブルの径方向に移動させることができる移動機構と、を有しており、
前記吸着孔は、当該吸着孔内の気圧を下げることで、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を、前記吸着面に接触させた状態で吸着することができ、前記第1の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第1の吸着可能領域の形状と、前記第2の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第2の吸着可能領域の形状とを、重ね合わせた場合に重複する領域から求められる第1の重心と、前記吸着孔の開口領域の第2の重心とが、前記吸着部材で前記第1の被搬送物を吸着する場合、および前記吸着部材で前記第2の被搬送物を吸着する場合、のいずれにおいても、略同一の垂線上にある構成である。
【0038】
また、本発明に係る薄膜形成装置は、本発明に係る搬送システムを備えた構成である。
【0039】
そこで、本発明に係る搬送システムおよび薄膜形成装置について、以下の実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0040】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である薄膜形成装置100と搬送システム20との構成を模式的に示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る薄膜形成装置100は、本発明に係る搬送システム20を備えており、8枚の基板トレイ2と、8枚の流路カバー3との二種類の被搬送物を含んで構成される。
【0041】
搬送システム20は、第1の被搬送物としての基板トレイ2および第2の被搬送物としての流路カバー3のそれぞれを吸着して保持し、搬送する。
【0042】
搬送システム20において、回転テーブルとしての円板形のサセプター4は、その円板中心を回転軸(回転中心)として回転可能となるように、公転機構5上に取り付けられている。サセプター4にはサセプター4の回転軸を中心とする同一ピッチ円上に、8枚の自転円板6が備えられている。自転円板6は、公転機構5の回転と同期して、決められた回転数比にて自転させることができる。
【0043】
本実施形態に係る薄膜形成装置100において、搬送システム20によって搬送される第1の被搬送物としての基板トレイ2は、全てが実質的に同じ大きさである。尚、本明細書において、前記「実質的に同じ大きさ」とは、サセプター4に移載される基板トレイ2の内、任意の一枚の、基板トレイ2の表面積を基準の大きさとした場合に、サセプター4に移載されるすべての基板トレイ2の表面積が、前記「基準の大きさ」に対して、80%〜120%、好ましくは95%〜105%の範囲で大きいまたは小さい場合は、これらのすべての基板トレイ2は実質的に同じ大きさであると定義される。
【0044】
気相成長処理時(薄膜形成処理時)には、基板トレイ2はそれぞれ搬送システム20の自転円板6上に1枚ずつ載置され、流路カバー3は、それぞれが、載置後の、8枚の基板トレイ2の間を埋めるように搬送システム20のサセプター4の上面上に突起3aにより位置決めされて載置される。全ての基板トレイ2と流路カバー3とが載置された状態では、基板トレイ2と流路カバー3との間に設けられたわずかな隙間を除いてサセプター4の上面は全てカバーされ、かつ基板トレイ2の上面の高さと流路カバー3の上面の高さとは、ほぼ一致した状態となる。
【0045】
また、サセプター4の裏面にはサセプター4越しに基板トレイ2上の窪み2aに収められた基板7を加熱するための加熱機構8が設けられている。
【0046】
これらの構成要素は、密閉されたステンレス製のチャンバ9内に収められており、同チャンバ9にはガスの導入口10と排出口11および開閉可能な開口部12が設けられている。成膜前後の基板7を載置した基板トレイ2は搬送システム20により開口部12を介して出し入れされる。
【0047】
サセプター4上に全ての基板トレイ2および流路カバー3を設置後、開口部12は閉じられ、窒素置換された後、加熱機構8によって800〜1400℃程度の高温に加熱された基板7の表面に各種プロセスガスを供給することにより、基板7の表面近傍で気相反応を生じさせ、基板7の表面にプロセスガスに応じた任意の組成の結晶薄膜を成長させることができる。成膜後の基板トレイ2は搬送システム20により取り出される。薄膜形成装置100の単位時間あたりの処理能力を向上させるために、チャンバ9内の温度および被搬送物の温度がまだ300℃以上の高温を保っているうちに、開口部12を開いて被搬送物を取り出す場合がある。
【0048】
本実施形態に係る搬送システム20は、基板トレイ2および流路カバー3を真空吸着によって保持する吸着部材としての吸着パッド40を有する移載ハンド30と、移載ハンド30をサセプター4の半径方向(径方向)に相対的に移動可能な移動機構21と、移載ハンド30を上昇/下降させる昇降機構22と、搬送先との間で被搬送物を大きく移動させる走行機構23とを有する。
【0049】
図2は、本発明の第1実施形態に係る移載ハンド30の構成を模式的に示す図であり、(a)は上面図であり、(b)は側面図である。図2に示すように、吸着機構としての移載ハンド30のベースプレート31は、突起32を介してアーム33に接続され、アーム33を介して昇降機構22に接続される。第1実施形態においては、ベースプレート31には、吸着部材としての円形でかつ同じ径の吸着パッド40が4個設置されている。それゆえ、4個の内、いずれかの吸着パッド40が吸着に失敗した場合であっても、残りの吸着パッド40によって安定して保持が可能である。
【0050】
第1実施形態においては、吸着パッド40は、基板トレイ2および流路カバー3に接触して、減圧空間を形成するための吸着面41と、取り付け面42と、ねじ部43と、内部経路44とを有し、ねじ部43に取り付けられたナット45を回転させて前記ベースプレート31の下面と前記パッドの取り付け面42とを密着させて固定される。吸着パッド40の吸着面41は、被搬送物と接触して吸着時のリークを低減する充分な幅を有する縁部47と、被搬送物を保持するのに充分な面積の減圧空間を形成するための吸着孔48とで構成される。
【0051】
吸着パッド40と基板トレイ2との間、または吸着パッド40と流路カバー3との間に形成された空間である内部経路44を、排気経路46を通じて排気し減圧状態とすることによって、吸着パッド40は基板トレイ2または流路カバー3を吸着し保持することができる。
【0052】
吸着パッド40の材質としては、フッ素樹脂ゴムやシリコーンゴム等のゴム系の材質が被搬送物との密着性の点で優れている。但し、チャンバ9内の温度および被搬送物の温度がまだ300℃以上の高温を保っているうちに、被搬送物を取り出すような場合には、ステンレスやモリブデン、インコネル等の金属が耐熱性や強度、寿命の点で適している。またはかかる金属以外の材質として、使用頻度等の条件によってカーボン、窒化ホウ素等の材料を選択して使用することができる。本実施形態では、吸着パッド40の材質として、耐熱温度が約250℃のフッ素樹脂ゴムを使用している。
【0053】
ここで、第1実施形態における4個の円形の吸着パッド40の形状と配置とを図3に基づいて説明する。図3は、第1実施形態における基板トレイ2bおよび流路カバー3bのそれぞれの吸着可能領域、基板トレイ2bと流路カバー3bとの共通吸着可能領域13、並びに吸着パッド40の形状と配置とを示す図である。図3の(a)は、基板トレイ2bおよび流路カバー3bのそれぞれの吸着可能領域(2xおよび3x)を示している。図3の(b)は、基板トレイ2bと流路カバー3bとの共通吸着可能領域13を示している。図3の(c)は、吸着パッド40の形状と配置とを示している。図3の(d)は、移載ハンド30の移動量を説明する図である。
【0054】
基板トレイ2の窪み2aに納められた基板7に、吸着パッド40が少しでも接触すると、基板7が汚染される。このため、基板7の汚染を防止する観点から、第1の被搬送物としての基板トレイ2においては、図3の(a)に示すように、斜線で示された基板トレイ2の外周部のみが吸着可能領域2x(第1の吸着可能領域)となる。一方、第2の被搬送物としての流路カバー3においては、流路カバー3の全面が吸着可能領域3x(第2の吸着可能領域)となる。
【0055】
図3の(b)に示すように、基板トレイ2と流路カバー3との共通吸着可能領域13は、流路カバー3が有する吸着可能領域3xを、サセプター4の回転中心を支点として基板トレイ2が有する吸着可能領域2x上へ回転移動させることによって、基板トレイ2の表面上に移動された、流路カバー3が有する移動後の吸着可能領域3x’と、基板トレイ2が有する吸着可能領域2xとが重なる領域として規定される。
【0056】
図3に示すように、本実施形態に係る搬送システムでは、吸着孔48は、基板トレイ2の外面で、吸着孔48が吸着することができる吸着可能領域2x(第1の吸着可能領域)の形状と、流路カバー3の外面で、吸着孔48が吸着することができる吸着可能領域3x(第2の吸着可能領域)の形状とを、重ね合わせた場合に重複する領域(共通吸着可能領域)から求められる第1の重心と、吸着孔48の開口領域の第2の重心とが、吸着パッド40を用いて基板トレイ2を吸着する場合、および吸着パッド40を用いて流路カバー3を吸着する場合、のいずれにおいても、略同一の垂線上にあるように構成される。
【0057】
尚、吸着パッド40の開口している部分が吸着孔48であり、吸着パッド40の開口している部分の領域を前記「開口領域」として本明細書では規定する。本発明に係る搬送システムが複数の吸着パッド40および複数の吸着孔48を有する場合は、全ての吸着孔48の「開口領域」を合わせた領域を「開口領域」として規定する。
【0058】
前記「開口領域」の重心位置(第2の重心)とは、前記「開口領域」に、前記「開口領域」の形状と一致するように厚さが均一な板が存在すると仮定した場合の、かかる板の重心を前記「開口領域」の面へ投影した位置を指す。尚、本発明に係る搬送システムが複数の吸着パッド40および複数の吸着孔48を有する場合は、前記「開口領域」の重心位置(第2の重心)とは、全ての吸着パッド40の開口領域についての重心位置(1つ)を指す。具体的には、各吸着パッド40の前記「開口領域」に、前記「開口領域」の形状と一致するように厚さが均一な複数の板群が存在すると仮定した場合の、かかる板群全体の重心位置を指す。
【0059】
また、前記「第1の重心」と、前記「第2の重心」とが、「略同一の垂線上にある」とは、実質的に同一の垂線上にあることを意図している。前記「垂線」とは、前記共通吸着可能領域の面の垂線であり且つその上に前記「第1の重心」が存在する垂線、および前記開口領域の面の垂線であり且つその上に前記「第2の重心」が存在する垂線が意図される。前記「垂線」は、「法線」とも言換え可能である。
【0060】
前記「略同一の垂線上にある」とは、前記「第1の重心が存在する垂線」と前記「第2の重心が存在する垂線」とが実質的に一致して重なるように、前記「第1の重心」と前記「第2の重心」が位置することを意図している。
【0061】
また、本明細書において、前記「吸着可能領域」とは、吸着部材を用いて被搬送物を実際に吸着することが困難であるか容易であるかによって決定されるものではなく、吸着部材を用いて被搬送物の吸着が可能か完全に不可能かに加えて、例えば本実施形態にて記載されているように、基板7の表面を「吸着/接触してはいけない」といった許可の有無を基準に判断されるものとする。例えば、微小な段差や溝等が存在する平面においても、前記基準にて吸着可能領域と規定される場合がある。
【0062】
また、吸着孔48は、被搬送物の重心を、被搬送物の外面の法線に沿って、前記外面へ投影した重心投影点が、吸着パッド40の吸着面41上の任意の2点を結ぶ直線上に位置するように、被搬送物が吸着されることが好ましい。具体的には、上述の吸着パッド40の形状および配置において、被搬送物の重心を吸着面に投影した点は、各吸着パッド40の吸着面41における外形の円弧をそれぞれ接線でつないだ領域の内部に含まれていることが好ましい。吸着パッド40をこのような構成とすることにより、てこの原理により、吸着パッド40の吸着面(接触面)をはがす方向に働く力が被搬送物の重量以上に増幅されることがない。
【0063】
また、換言すれば、吸着孔48は、基板トレイ2の外面で、吸着孔48が吸着することができる吸着可能領域2x(第1の吸着可能領域)の形状と、流路カバー3の外面で、吸着孔48が吸着することができる吸着可能領域3x(第2の吸着可能領域)の形状とを、重ね合わせた場合に重複する領域(共通吸着可能領域)のうち、面積が最小である最小領域の面積を、最大化するように重ね合わせた場合の当該最小領域の形状に、内包されるように設けられており、吸着面41は、吸着可能領域2xに収まる範囲で、基板トレイ2に接触するかもしくは吸着可能領域3xに収まる範囲で、流路カバー3に接触する構成でもある。
【0064】
尚、本発明では、吸着可能領域に本発明で開示される技術的思想とは直接関係のない構成を追加しても、例えば、被搬送物の表面に微小な細溝を作製、追加したとしても、その細溝で分けられる領域を以って最小領域とは判断せず、第1吸着可能領域と第2吸着可能領域との重ね合わせによって生じる領域の中から最小領域を判断する。
【0065】
共通吸着可能領域13のうち、前記「面積が最小である最小領域」の面積を、最大化する観点から、被搬送物としての基板トレイ2または流路カバー3を吸着パッド40によって吸着し、吸着された被搬送物を移動した後で、サセプター4(図1を参照)を所定角度回転させるとともに、移動機構21(図1を参照)によって吸着パッド40をサセプター4の径方向に所定量だけ移動させ、その後、前記吸着された被搬送物とは別の形状の被搬送物を、吸着パッド40によって吸着することが好ましい。
【0066】
具体的には、例えば、被搬送物としての基板トレイ2を吸着パッド40によって吸着し、吸着された基板トレイ2を移動した後で、流路カバー3を、サセプター4の回転中心を支点として、移動前の基板トレイ2が位置していた角度位置へ回転移動させるように、サセプター4(図1を参照)を所定角度回転させるとともに、吸着パッド40をサセプター4の回転中心へ近づけるように、移動機構21(図1を参照)によってサセプター4の半径方向へ所定量だけ移動させ、その後、吸着された基板トレイ2とは別の形状の被搬送物(この場合、流路カバー3)を、吸着パッド40によって吸着することが好ましい。
【0067】
より具体的には、流路カバー3bの吸着可能領域3xを、サセプター4の回転中心を中心として(π/n)だけ回転させ、かつ、サセプター4の回転中心から遠ざかる方向へ移動量R(1−cos(π/n))だけ移動させたうえで、基板トレイ2の吸着可能領域2xと重なる領域を共通吸着可能領域13とすることが好ましい。ここで、Rは回転テーブルに載置された第1の被搬送物の中心と、前記回転テーブルの回転中心との距離であり、具体的には、サセプター4上に載置時の基板トレイ2のピッチ円半径、もしくはサセプター4上に配置された自転機構としての自転円板6のピッチ円半径である。また、nは基板トレイ2の枚数であって3以上の整数であり、本実施形態ではn=8である。尚、前記「R」は、回転テーブルに載置された第1の被搬送物の中心と、前記回転テーブルの回転中心との距離として規定されるが、前記「第1の被搬送物の中心」は「第1の被搬送物の重心」とも言換え可能である。
【0068】
前記移動量は、図3の(d)からわかるように吸着可能領域3xの最もくびれた部分が吸着可能領域2xの円の中心に一致するよう幾何学的に計算できる寸法であり、前記回転かつ移動後の吸着可能領域3x’と2xとが重なる領域を共通吸着可能領域13とすれば、図3の(b)に示すように共通吸着可能領域13は形方向およびそれと垂直な方向に対称な形状となっている。前記4個の円形の吸着パッド40の外径は、なるべく大きな接触面積を取って充分な吸着力を得られるよう、それぞれが前記共通吸着可能領域13に対して、径方向中心軸13a,外周円弧13bおよびくびれ円弧13cの三線にほぼ接するような径および位置を取ることが最適であり、この状態に吸着パッドを配置した例を図3の(c)に示す。
【0069】
ここで、移載ハンド30(図1を参照)をサセプター4(図1を参照)の半径方向に相対的に所定量移動することの効果について、図4を参照しながら説明する。図4は、移載ハンド30をサセプター4の半径方向に相対的に移動した移動量と、吸着パッド40の吸着面41の面積または吸着パッド40の外径との関係を表す。図4の(a)は、移載ハンド30をサセプター4の半径方向に移動しない場合と、移載ハンド30をサセプター4の半径方向にR(1−cos(π/n))移動させた場合とにおいて、円形吸着パッド40の吸着面41の最大径41dと、吸着パッドの接触領域の面積41sとをそれぞれ示す平面図である。図4の(b)は、移載ハンド30をサセプター4の半径方向に相対的に移動した移動量と吸着パッド40の吸着面41の面積または吸着パッド40の外径との関係を表すグラフである。
【0070】
図4に示すグラフは、サセプター4上に載置された基板トレイ2のピッチ円半径Rを190mm、基板トレイ2の外形を128mm、窪み2aの直径を76mm、載置時の基板トレイ2と流路カバー3との隙間を3mmなどと仮定して計算を行った結果を表している。この場合、後述の(d/R)の値は、d/R=((128/2)+3)/190=0.353となり、後述する式(4)の範囲に含まれる。図4の(b)によれば、使用可能な吸着パッド径および接触領域の面積は、R(1−cos(π/n))に相当する移動量14.46mmのときに最大となり、このときの接触領域の面積は、移動なしの状態と比較して約2倍程度も得られることがわかる。
【0071】
第1実施形態においては、移動機構21による移載ハンド30の相対的な移動量を、最も効果の高いR(1−cos(π/n))であることが好ましいとしたが、若干効果は低下するものの周辺の位置であれば同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0072】
本実施形態に係る搬送システム20に設けられた吸着パッド40の特に有効な形状は、下記の式(1)から式(3)を全て満たす範囲に限定することができる。ここでdは前記くびれ円弧13cの半径であるが、基板トレイ2と流路カバー3との間の隙間が十分に小さい場合は、基板トレイ2の半径としてもよい。
【0073】
Rcos(π/n)>d
→(d/R)<cos(π/n) ・・・(1)
Rsin(π/n)−d>0
→(d/R)<sin(π/n) ・・・(2)
Rsin(π/n)−d<d
→(d/R)>(1/2)sin(π/n) ・・・(3)
前記式(1)は、前記手順で共通吸着可能領域13を求める際に、流路カバー3が有する吸着可能領域3xをサセプター4の回転軸を中心として回転させ、かつサセプター4の回転中心から遠ざかる方向へ移動させた後の吸着可能領域3x’が、基板トレイ2の吸着可能領域2xよりもサセプター4の回転中心側へ突出するために必要な条件である。そして、少なくとも前記式(1)を満たさない寸法形状の場合、サセプター4の回転中心側において共通吸着可能領域13が外周円弧13bにより規定されない部分が生じる。
【0074】
前記式(2)は、流路カバー3の最もくびれた部分の幅がゼロでなく、細いが或る程度の幅を持つことを示した条件である。前記式(3)は、同じく流路カバー3の最もくびれた部分の幅が2d以下であり、上述した手順によって求められた共通吸着可能領域13が、そのまま基板トレイ2の吸着可能領域2xと一致しないことを示す条件である。基板トレイ2の枚数nがn=1もしくはn=2の場合では、前記式(1)から前記式(3)を全て満たす(d/R)の値は無い。従って、本実施形態においては、nが3以上の整数である場合に、特に有効である。例えば、基板トレイ2の枚数nについて、特に有効な吸着パッド40の形状範囲は具体的には下記のようになる。
【0075】
n=3 0.433<(d/R)<0.5
n=4 0.354<(d/R)<0.707
n=6 0.25 <(d/R)<0.5
n=8 0.191<(d/R)<0.383 ・・・(4)
尚、第1実施形態においては、吸着パッド40を4個備えた移載ハンド30の構成について説明したが、吸着パッド40の数は、4個に限定されるものではない。共通吸着可能領域13と接触する吸着パッド40における吸着面41の吸着孔48の形状が、共通吸着可能領域13に納まる限り、被搬送物の形状に合わせて最適な個数を適宜設けることができる。また、吸着パッド40の吸着面41の大きさ(面積)や吸着孔48の形状も、共通吸着可能領域13に納まる限り、特に限定されるものではない。また、第1実施形態においては、吸着パッド40によって被搬送体の上面を吸着しているが、被搬送物の外面であれば吸着される面は上面に限らず、装置の構成によっては下面等であってもよい。
【0076】
また上述の説明では、図1に示すように、8枚の基板トレイ2の全てを等角度間隔で配置した例を示しているが、それぞれの基板トレイ2同士の角度間隔が異なるように配置してもよい。例えば、基板トレイ2の枚数nがn=8枚であれば、8枚の基板トレイ2同士が45度間隔で載置されれば共通吸着可能領域13として取り得る面積が最大となる効果がある。一方、例えば、8枚の基板トレイ2を、40度および50度の二種類の角度間隔を交互に繰り返すことによって配置してもよいし、43度間隔で配置した7枚の基板トレイ2に、59度間隔で配置した1枚の基板トレイ2を組み合わせて配置してもよい。この場合、最も狭い共通吸着可能領域13に合わせて吸着部材の形状を決定することにより、8枚の基板トレイ2を全て45度間隔で配置した場合と比べて若干効果は低下するものの同様の効果を得ることができる。
【0077】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る薄膜形成装置101の構成を図6に基づいて説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る薄膜形成装置101の構成を模式的に表す図である。図6の(a)は、本発明の第2実施形態に係る薄膜形成装置101の平面図である。図6の(b)は、本発明の第2実施形態に係る薄膜形成装置101の断面図である。
【0078】
本発明の第2実施形態に係る薄膜形成装置101は、移載ハンド30aに設けられた吸着パッド40aの材質が異なる点、および移動機構21aが、第1実施形態における走行機構23(図1を参照)の機能を兼ねることにより走行機構23が省略されている点以外は、第1実施形態において説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0079】
本発明の一実施形態においては、薄膜形成装置101の単位時間あたりの処理能力の向上のために、チャンバ9内の温度および被搬送物の温度がまだ300℃以上の高温を保っているうちに、開口部12を開いて被搬送物を取り出す場合がある。このような場合には各機構に必要な熱対策を行うとともに、特に重要な吸着パッド40aの材質としては、前述のように耐熱性、強度および寿命の点で適した、ステンレス、モリブデン、インコネル等の金属、またはかかる金属以外の材質として、使用頻度等の条件によってカーボン、窒化ホウ素等の材料を選択して使用する。
【0080】
ここで、上述の高温の被搬送物に対して使用可能な材料はいずれも硬質であり、吸着面への密着性はゴム系の軟質な材料と比較して非常に悪い。このため新品や洗浄済みの被搬送物に対しては良好な吸着性能が得られるものの、特に気相成長処理済みの被搬送物の表面において副生成物のパーティクルやフレークが落下していたり、あるいは成膜速度分布による成膜後の表面形状の凹凸等が大きかったりする場合等には、吸着面でのリークが大きくなりやすく、場合によっては吸着不能となるおそれがあるが、本発明によれば、使用する移載ハンド30aの複雑かつ大掛かりな切り替えや機構や、使用する吸着パッド40aの選択切り替えを行う複雑な機構などは必要とせず、効率的な形状でかつ効率的な位置で吸着動作を行うことで、形状が互いに異なる複数種類の板状の被搬送物を、一つの移動機構によって移動することができるという効果を奏する。
【0081】
具体的には、本実施形態においては吸着パッド40aの材質にはステンレスが用いられており、被搬送物の温度が400℃以下となれば搬送動作が許可されるよう設定されている。また、移動機構21aは移載ハンド30aを公転機構5の径方向に移動させる充分なストロークを有しており、移動機構21aを、サセプター4上への基板トレイ2の載置位置およびサセプター4上への流路カバー3の載置位置、並びにチャンバ外の載置位置などの各位置に停止させることで、前述のように第1実施形態における走行機構23(図1を参照)の機能を兼ねている。尚、移動機構21aの具体的な動作についてはここでは説明を省略する。
【0082】
第2実施形態では、吸着面41aの外形は、図3の(b)および(c)に示すように、共通吸着可能領域13における径方向中心軸13aと、外周円弧13bと、くびれ円弧13cにほぼ接する形状を有しているが、走行機構の機能を兼ねる移動機構21の停止精度等を考慮して、共通吸着可能領域13のやや内側に収まる形状としてもよい。また載置時の基板トレイ2と流路カバー3との間に収まる範囲でやや外側にはみ出した形状であってもよい。
【0083】
〔2.搬送方法〕
本発明に係る搬送方法は、第1の被搬送物と、当該第1の被搬送物とは形状の異なる第2の被搬送物とを載置することができる回転テーブルから、または回転テーブルへ、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を移動させる搬送方法において、前記第1の被搬送物を、吸着部材によって吸着する工程と、当該第1の被搬送物を移動する工程と、前記回転テーブルを予め定められた角度回転させる工程と、移動機構によって前記吸着部材を予め定められた距離量だけ移動させる工程と、前記第2の被搬送物を、前記吸着部材によって吸着する工程とを、少なくとも含む。
【0084】
ここで、本発明に係る搬送方法の別の一実施形態について、図5に基づき説明する。図5は、本発明に係る搬送方法の一実施形態を説明する図である。図5の(a)〜(d)は、各工程における基板トレイ2および流路カバー3の配置を表す平面図および側面図である。
【0085】
まず工程(a)では、気相成長処理を完了して被搬送物の温度が250℃以下となったことを確認した後に、まず、気相成長処理済みの基板7を納めた、第1の被搬送物としての基板トレイ2を全て回収する。次いで、工程(b)では、副生成物等が表面に付着した、第2の被搬送物としての流路カバー3を全て回収する。次いで、工程(c)では、副生成物等が表面に付着していない新品もしくは洗浄済みの流路カバー3を、回転テーブルとしてのサセプター4上に全て載置する。最後に、工程(d)では、気相成長処理前の基板7を納めた新品もしくは洗浄済みの基板トレイ2を、サセプター4上に全て載置する。本実施形態においては、サセプター4上に載置された基板トレイ2および基板7の上を流路カバー3が通過することで、基板7の表面にダスト等が落下しないように、基板トレイ2および流路カバー3を回収または載置する順序が規定されている。
【0086】
ここで、工程(a)〜工程(d)について具体的に説明する。まず、工程(a)では、チャンバ9内の気相成長処理済みの基板トレイ2をチャンバ9外へ搬出するために、吸着部材としての吸着パッド(図示しない)の吸着面と、基板トレイ2および流路カバー3とが接触しないように間隔を十分に維持した状態で、走行機構(図示しない)によって移載ハンド(図示しない)がチャンバ9内の所定の位置へ移動される。尚、前記「所定の位置」とは、図3の(c)に示すように、吸着パッド40における吸着面41の吸着孔48が、基板トレイ2における共通吸着可能領域13に納まる位置を意図している。また、図5に示す実施形態においては、流路カバー3の吸着可能領域を、サセプター4の回転軸を中心として(π/n)だけ回転させ、かつ、移動機構(図示しない)によってサセプター4の回転中心から遠ざかる方向へ移動量R(1−cos(π/n))だけ移動させたうえで、基板トレイ2の吸着可能領域と重ねることによって共通吸着可能領域を規定している。
【0087】
次に昇降機構が吸着パッド40を有する移載ハンドを下降させ、各吸着パッドの吸着面が基板トレイ2とちょうど接触するよう予め設定された位置(吸着高さ位置)に、精度良く移載ハンドを停止させる。次いで、排気経路を通じて内部経路の内部が排気されて減圧状態となり、吸着パッドの内部の圧力が低下して十分な真空吸着力が得られたことを確認してから、昇降機構により移載ハンドと吸着保持された基板トレイ2とを上昇させる。その後、走行機構により移載ハンドは、チャンバ9外へと水平移動され、基板トレイ2は回収される。工程(a)では、n枚の基板トレイ2がサセプター4上に等間隔で載置されている場合、公転機構(図示しない)を2π/nの角度ピッチで回転させることによって、同じ停止位置で全ての基板トレイ2を回収することができる。
【0088】
次いで、工程(b)では、チャンバ9内の気相成長処理済みの流路カバー3をチャンバ外へ搬出するために、吸着パッドの吸着面と流路カバー3とが接触しないように間隔を十分に維持した状態で、走行機構によって移載ハンドは、工程(a)において基板トレイ2を回収した位置と同じ位置まで移載ハンドを移動される。さらに移動機構は、移載ハンドをサセプター4の回転中心方向へR(1−cos(π/n))移動させる。このとき図3(c)に示すように、吸着パッド40は、吸着面41の吸着孔48が、流路カバー3における共通吸着可能領域13に納まるように配置されている。工程(b)では、n枚の基板トレイ2がサセプター4上に等間隔で載置され、基板トレイ2同士の隙間を埋めるように、同数の流路カバー3が載置されているとすると、工程(a)における公転機構を、角度ピッチの半分の角度ピッチ分、つまりπ/nの角度ピッチ分さらに回転させることによって1枚目の流路カバーを回収することができ、以降は公転機構を2π/nの角度ピッチで回転させることによって、同じ停止位置で残り全ての流路カバー3を回収することができる。
【0089】
次いで、工程(c)では、チャンバ9外から気相成長処理前の流路カバー3をチャンバ9内のサセプター4上へ載置するために、移載ハンドは、チャンバ9外で、工程(b)で吸着した位置と同じ流路カバー3の位置を吸着し、走行機構によってチャンバ9内の所定の停止位置へ走行する。その後に、工程(b)と同じく、移動機構によって移載ハンドは、移動量R(1−cos(π/n))だけサセプター4の中心方向へ移動され、流路カバー3を載置する。次いで、公転機構を工程(b)と同じ角度ピッチ分回転させ、次の流路カバー3を載置する。この作業を繰り返すことによって、同じ停止位置で全ての流路カバー3を載置することができる。
【0090】
最後に、工程(d)では、チャンバ9外から処理前の基板7を納めた基板トレイ2をチャンバ内のサセプター4上へ載置するために、チャンバ9外で、工程(a)で吸着した位置と同じ基板トレイ2の位置を吸着し、走行機構によってチャンバ9内の所定の位置へ走行し、基板トレイ2を載置する。次いで、公転機構5を工程(a)と同じ角度ピッチ分回転させ、次の基板トレイ2を載置する。この作業を繰り返すことによって、同じ停止位置で全ての基板トレイ2を載置することができる。
【0091】
図5に示す実施形態においては、被搬送物が基板トレイおよび流路カバーである場合について説明したが、被搬送物としては、基板トレイおよび流路カバーに限定されるものではなく、チャンバ内に載置される他の部材であってもよい。
【0092】
また図5に示す実施形態においては、各8枚の基板トレイと流路カバーとを搬送する例を示したが、基板トレイおよび流路カバーの枚数は何枚でもよく、また隣り合う流路カバー同士をつなげた形状とし、例えば基板トレイが9枚に対して流路カバーが3枚(各流路カバーが前記流路カバーを3枚連結した形状としたもの)といった枚数の構成でもよい。
【0093】
上述した実施形態では、流路カバー3の形状がサセプター4の回転中心にまで伸びた形となっていたが、中心部分を別パーツとし、流路カバー3の重心を外周側へ移動させることによって、流路カバー3の重心を共通吸着可能領域の中央へ近づけてもよい。流路カバー3をこのような構成とすることによって、より安定して流路カバー3を吸着保持させることができる。
【0094】
また上述した実施形態では、基板トレイ2および流路カバー3を搬送する順序として、回収時には基板トレイ2から回収し、載置時には流路カバーから載置することとしたが、搬送順序はこれに限定されない。例えば、回収時には流路カバー3から回収し、載置時には基板トレイ2から載置してもよく、基板トレイ2と流路カバー3とを交互に搬送してもよく、またはそれ以外の順序であってもよい。
【0095】
また上述した実施形態では、走行機構によって移載ハンドを走行させた後に、移動機構によって移載ハンドを移動させる構成としたが、移載ハンドの動作順序はこれに限定されない。例えば、移動機構によって移載ハンドを移動させた後に、走行機構によって移載ハンドを走行させてもよく、移動機構による移載ハンドの移動と、走行機構による移載ハンドの走行とを同時に行ってもよい。
【0096】
また上述した実施形態では、基板トレイ2は自転円板上に載置されるが、自転機構のないサセプター上に基板トレイ2と流路カバー3との両方を載置してもよい。
【0097】
尚、共通吸着可能領域の面積を最大にする観点から、第1の被搬送物である基板トレイ2は、等間隔でn枚(nは3以上の整数)載置され、吸着部材である吸着パッドは、任意の第2の被搬送物である流路カバー3を、回転テーブルであるサセプター4の回転中心を支点として前記第1の被搬送物上へ(π/n)度回転移動させるとともに前記回転中心から遠ざかるように前記半径方向へR(1−cos(π/n))移動させることによって当該第1の被搬送物の表面上に投影された、前記第2の被搬送物が有する吸着可能領域と、当該第1の被搬送物が有する吸着可能領域とが重なる領域である共通吸着可能領域を吸着可能なように、共通吸着可能領域と接触する吸着面の吸着孔の形状が、当該共通吸着可能領域に納まる形状であり、前記「前記回転テーブルを予め定められた角度回転させる工程」は、前記回転テーブルを、(π/n)度回転させる工程であり、前記「移動機構によって前記吸着部材を予め定められた距離量だけ移動させる工程」は、前記吸着部材を、前記回転テーブルの半径方向に相対的にR(1−cos(π/n))移動する工程であることが好ましい。しかし、移動機構による吸着部材の相対的な移動量を、最も効果の高いR(1−cos(π/n))の周辺の位置に設定することによって、移動量をR(1−cos(π/n))とした場合よりも若干効果は低下するものの、ほぼ同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0098】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、形状が互いに異なる複数種類の板状の被搬送物、例えば基板トレイおよび流路カバーを安定して吸着保持・搬送するための搬送システム、搬送方法および薄膜形成装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
2 基板トレイ(第1の被搬送物)
3 流路カバー(第2の被搬送物)
4 サセプター(回転テーブル)
13 共通吸着可能領域
21 移動機構
30 移載ハンド
40 吸着パッド(吸着部材)
41 吸着面
48 吸着孔
100 薄膜形成装置
101 薄膜形成装置
2x 第1の吸着可能領域
3x 第2の吸着可能領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被搬送物と、
当該第1の被搬送物とは互いに全体を内包できない形状の第2の被搬送物と
を搬送する搬送システムにおいて、
前記搬送システムが、
前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を載置することができる回転テーブルと、
前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物に接触する吸着面に、吸着孔を有する吸着部材と、
前記吸着部材を前記回転テーブルの径方向に移動させることができる移動機構と、
を有しており、
前記吸着孔は、
当該吸着孔内の気圧を下げることで、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を、前記吸着面に接触させた状態で吸着することができ、
前記第1の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第1の吸着可能領域の形状と、
前記第2の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第2の吸着可能領域の形状とを、
重ね合わせた場合に重複する領域から求められる第1の重心と、
前記吸着孔の開口領域の第2の重心とが、
前記吸着部材で前記第1の被搬送物を吸着する場合、および前記吸着部材で前記第2の被搬送物を吸着する場合、のいずれにおいても、
略同一の垂線上にあることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
第1の被搬送物と、
第1の被搬送物とは形状の異なる第2の被搬送物と
を搬送する搬送システムにおいて、
前記搬送システムが、
前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を載置することができる回転テーブルと、
前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物に接触する吸着面に、吸着孔を有する吸着部材と、
前記吸着部材を前記回転テーブルの径方向に移動させることができる移動機構と、
を有しており、
前記吸着孔は、
当該吸着孔内の気圧を下げることで、前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を、前記吸着面に接触させた状態で吸着することができ、
前記第1の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第1の吸着可能領域の形状と、
前記第2の被搬送物の外面で、前記吸着孔が吸着することができる第2の吸着可能領域の形状とを、
重ね合わせた場合に重複する複数の領域のうち、面積が最小である最小領域の面積を、
最大化するように重ね合わせた場合の当該最小領域の形状に、内包されるように設けられており、
前記吸着面は、
前記第1の吸着可能領域に収まる範囲で、前記第1の被搬送物に接触するか
もしくは前記第2の吸着可能領域に収まる範囲で、前記第2の被搬送物に接触する
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項3】
前記第1の被搬送物または前記第2の被搬送物を前記吸着部材によって吸着し、
前記吸着された被搬送物を移動した後で、
前記回転テーブルを所定角度回転させるとともに、
前記移動機構によって前記吸着部材を前記回転テーブルの径方向に所定量だけ移動させ、
その後、前記吸着された被搬送物とは別の形状の被搬送物を、前記吸着部材によって吸着する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記回転テーブルに載置される前記第1の被搬送物をn枚とし、
前記回転テーブルに載置された前記第1の被搬送物の中心と、前記回転テーブルの回転中心との距離をRとした場合に、
前記所定量を、R(1−cos(π/n))とする
ことを特徴とする請求項3に記載の搬送システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の搬送システムを備えたことを特徴とする薄膜形成装置。
【請求項6】
第1の被搬送物と、
当該第1の被搬送物とは形状の異なる第2の被搬送物とを
載置することができる回転テーブルから、または回転テーブルへ、
前記第1の被搬送物および前記第2の被搬送物を移動させる搬送方法において、
前記第1の被搬送物を、吸着部材によって吸着する工程と、
当該第1の被搬送物を移動する工程と、
前記回転テーブルを予め定められた角度回転させる工程と、
移動機構によって前記吸着部材を予め定められた距離量だけ移動させる工程と、
前記第2の被搬送物を、前記吸着部材によって吸着する工程と、
を含むことを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−187566(P2011−187566A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49537(P2010−49537)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】