説明

搬送システム

【構成】 第1の支持手段により物品を支持して搬送する第1の搬送車を設ける。第1の搬送車の走行ルートと平行な区間を含む周回軌道に沿って周回走行すると共に、平行な区間で第1の搬送車と同期して等速走行自在で、かつ第1の支持手段とは異なる箇所で物品を支持する第2の支持手段と、第2の支持手段を昇降させるリフタとを備えた移載装置を設ける。
【効果】 搬送車を停止させずに物品を受け渡しでき、また複雑な走行ルートでも、搬送車の分岐走行を不要にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送車間などでの物品の受け渡しに関する。
【背景技術】
【0002】
搬送車システムでは、地上側との間の物品の受け渡しのために、搬送車が停止する必要がある。また走行ルートに分岐があると、搬送車にあるいは軌道などの側に分岐機構を設ける必要がある。そこで発明者は、搬送車が停止せずに物品の受け渡しができ、また大規模な走行ルートでも搬送車を分岐走行させる必要を無くすことを検討して、この発明に到った。なお特許文献1:JP4026073Bは2つのコンベヤシステムの間を移動する台車を設け、台車をコンベヤと等速で同期走行させることにより、コンベヤと台車間で物品を受け渡しすることを提案している。
【特許文献1】JP4026073B
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、搬送車を停止させずに速やかに物品を受け渡しすることにある。
この発明での追加の課題は、複雑な走行ルートでも、搬送車の分岐走行を不要にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の搬送車システムでは、第1の支持手段により物品を支持して搬送する第1の搬送車と、前記第1の搬送車の走行ルートと平行な区間を含む周回軌道に沿って周回走行すると共に、前記平行な区間で第1の搬送車と同期して等速走行自在で、かつ前記第1の支持手段とは異なる箇所で物品を支持する第2の支持手段と、前記第2の支持手段を昇降させるリフタとを備えた移載装置を設ける。
【0005】
この発明では、第1の搬送車を停止させずに、地上側のロードポートあるいは他の搬送車との間で、物品を受け渡しできる。従って、搬送車の停止に伴う走行ルートの渋滞が無い。
【0006】
好ましくは、前記周回軌道に沿って前記移載装置を複数設ける。搬送車は停止も減速もせずに物品を受け渡しできるので、移載装置を複数設けると、多数の搬送車との間で連続的に物品を受け渡しできる。
【0007】
好ましくは、前記周回軌道を中間にはさんで、前記第1の搬送車の走行ルートと向き合い、かつ周回軌道と平行な区間を含む、第2の搬送車の走行ルートを設けると共に、第2の搬送車は前記第1の支持手段と同じ箇所で物品を支持して搬送し、さらに前記移載装置を、第2の搬送車の走行ルートでの前記平行な区間で、第2の搬送車と同期して等速走行自在に構成することにより、第1の搬送車と第2の搬送車間で、移載装置を介して物品を受け渡し自在にする。
このようにすると、第1の搬送車と第2の搬送車間で、搬送車を停止させずに物品を受け渡しできる。また搬送車の走行ルートに分岐を設ける必要が無くなる。
【0008】
また好ましくは、物品は底面に位置決め用の長溝を複数備え、前記第1の支持手段と前記第2の支持手段を、長溝内の異なる箇所を支持する。
このようにすると、搬送車や移載装置で干渉せずに物品を受け渡しでき、また受け渡しの過程で物品の向きが狂うことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0010】
図1〜図5に、実施例の搬送車システムを示す。各図において、2は搬送車システムで、4はその走行レールであり、搬送車6を走行させる。搬送車6は天井走行でも地上走行でも良く、例えば地上1次あるいは機上1次のLIM(リニア誘導モータ)により走行し、物品の移載手段を備えていない。なお走行レール4は単なる搬送車の走行ルートでもよい。搬送車6は、第1の支持手段の例としてのピン7を備え、FOUP8などの物品を支持する。またFOUP8はフランジ9とそのネック10とを備え、11はFOUP8の扉である。
【0011】
20はコンベヤシステムで、コンベヤ22に移載装置24を例えば複数取り付ける。移載装置24はアーム26とピン28と、図4に示すリフタ30とを備え、ピン28は第2の支持手段の例で、ピン7とは異なる位置で、FOUP8の底面の長溝を支持する。
【0012】
コンベヤシステム20を挟んで一対の搬送車システム2,2が向き合っており、これらは共にコンベヤシステム20と平行な区間を含んでいる。またこの区間で、移載装置24と搬送車6は同期して等速で運動し、FOUP8の受け渡しを行う。さらに一対の搬送車システム2,2は走行方向が逆向きである。実施例では一対の搬送車システム2,2間のFOUP8の受け渡しを示すが、搬送車システム2と地上側のロードポートとの間の物品の受け渡しに、コンベヤシステム20を用いてもよい。この場合、図1のいずれかの搬送車システム2に代えて、図5に示すように、地上側のロードポート60を設ける。
【0013】
14はコントローラで、搬送車システム2とコンベヤシステム20とを制御し、特に走行車6と移載装置24とが前記の平行な区間で同期して等速で走行するように、搬送車6あるいはコンベヤ22を速度制御する。また図4に示すリフタ30を制御して、移載装置24のピン28を昇降させる。ここでコンベヤ22を常時一定速度で運動させ、これと等速で同期するように搬送車6を制御しても良く、あるいはコンベヤ22の速度を可変にし、搬送車6と物品を受け渡しする際に、等速で同期運動するようにしてもよい。
【0014】
図2,図3に搬送車6と移載装置24との間のFOUP8のやり取りを示す。FOUP8は例えば3つの長溝16をその底面に備え、ピン7が長溝16の外側で、ピン28が長溝16の内側で、それぞれFOUP8を支持するので、ピン7,28間の干渉を防止できる。また図4に示すように、移載装置24はリフタ30を備えて、アーム26を昇降させると共に、取付部31でコンベヤ22に取り付けられている。なおコンベヤ22はスチールコンベヤでもベルトコンベヤでも、あるいはチェーンコンベヤなどでも良く、好ましくは図示しない給電線を備えて、非接触あるいは接触により、移載装置24に電力を供給すると共に、コントローラ14との通信を可能にする。またここでは移載装置24はコンベヤ22に取り付けたが、移載装置24を周回走行する台車で構成しても良い。そして搬送車6と移載装置24が等速走行する区間で、リフタ30を昇降させると,FOUP8のやりとりができる。
【0015】
図5に実施例の全体的レイアウトを示すと、50はインターベイシステムで、例えば物品の搬送方向が逆なインターベイシステム50,50が設けられ、これらの間を接続するようにイントラベイシステム52が例えば複数設けられている。コンベヤシステム54はインターベイシステム50とイントラベイシステム52とを接続し、コンベヤシステム56はイントラベイシステム52内のショートカットとして作用する。なおインターベイシステム50,イントラベイシステム52はそれぞれ、搬送車システム2を用いて実現し、コンベヤシステム54,56はコンベヤシステム20を用いて実現する。
【0016】
このようにすると、インターベイシステム50とイントラベイシステム52間での物品の受け渡しはコンベヤシステム54で実現でき、この部分の分岐部や合流部を不要にできる。またコンベヤシステム56により、イントラベイシステム52内でのFOUPの移動に関するショートカットを実現できる。従って複雑なレイアウトでも、搬送車システム2に分岐部や合流部を設ける必要がなくなる。インターベイシステム50,イントラベイシステム52と、コンベヤシステム54,56間での物品の受け渡しは、搬送車を停止させずに実現できる。従って物品の受け渡しのために搬送車が停止し、走行ルートが渋滞することがない。そしてコンベヤシステム54,56当たりの移載装置24の台数を増せば、受け渡し能力を増すことができる。
【0017】
ロードポート60との間の物品の受け渡しでは、コンベヤシステム58を設けて、搬送車とコンベヤシステムの移載装置24との間の物品の受け渡しと、移載装置24とロードポート60との物品の受け渡しの2段階を行えばよい。この場合コンベヤシステム58を可変速とし、搬送車6との間で物品を受け渡しする際には、移載装置を搬送車と同期して等速走行させ、ロードポート60に対しては移載装置を停止させると良い。ロードポート60との移載では、ロードポート60に図示しない他の移載装置を設けても、あるいはコンベヤシステム58の移載装置24を用いても良い。
【0018】
実施例では、移載装置24をコンベヤ22に沿って移動させたが、移載装置を軌道上を走行する走行車で構成してもよい。またロードポート60を、移載装置24と干渉する部分を切り欠いたフリーローラ等で構成すると、移載装置を移動させながらロードポートとの間で荷物の受け渡しができる。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例の搬送システムのレイアウトの要部を示す平面図
【図2】移載手段と搬送車間での物品の受け渡しを示す平面図
【図3】移載手段と搬送車間での物品の受け渡しを示す側面図
【図4】実施例の移載装置の正面図
【図5】実施例の搬送システムの全体的レイアウトを示す平面図
【符号の説明】
【0020】
2 搬送車システム
4 走行レール
6 搬送車
7 ピン
8 FOUP
9 フランジ
10 ネック
11 扉
12 リセス
14 コントローラ
20 コンベヤシステム
22 コンベヤ
24 移載装置
26 アーム
28 ピン
30 リフタ
31 取付部
50 インターベイシステム
52 イントラベイシステム
54,56 コンベヤシステム
58 コンベヤシステム
60 ロードポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の支持手段により物品を支持して搬送する第1の搬送車と、
前記第1の搬送車の走行ルートと平行な区間を含む周回軌道に沿って周回走行すると共に、前記平行な区間で第1の搬送車と同期して等速走行自在で、かつ前記第1の支持手段とは異なる箇所で物品を支持する第2の支持手段と、前記第2の支持手段を昇降させるリフタとを備えた移載装置を設けた搬送システム。
【請求項2】
前記周回軌道に沿って前記移載装置を複数設けたことを特徴とする、請求項1の搬送システム。
【請求項3】
前記周回軌道を中間にはさんで、前記第1の搬送車の走行ルートと向き合い、かつ周回軌道と平行な区間を含む、第2の搬送車の走行ルートを設けると共に、
第2の搬送車は前記第1の支持手段と同じ箇所で物品を支持して搬送し、
さらに前記移載装置を、第2の搬送車の走行ルートでの前記平行な区間で、第2の搬送車と同期して等速走行自在に構成することにより、
第1の搬送車と第2の搬送車間で、移載装置を介して物品を受け渡し自在にしたことを特徴とする、請求項1または2の搬送システム。
【請求項4】
前記物品は底面に位置決め用の長溝を複数備え、
前記第1の支持手段と前記第2の支持手段を、長溝内の異なる箇所を支持するように構成したことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの搬送システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−58942(P2010−58942A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228304(P2008−228304)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】