説明

搬送ロボット装置

【課題】搬送全工程の所要時間を短縮することができる搬送ロボット装置を提供する。
【解決手段】制御装置と、この制御装置とのハンドシェイクにより指示されるコマンドに対応した処理を実行可能であって、現コマンドの実行中に並行して次のコマンドを読み込み、これを、現コマンドに引き続いて実行する搬送ロボットとを備えた搬送ロボット装置とする。この場合、現コマンドの実行中に並行して次のコマンドが読み込まれ、その後実行される、という過程が順次行われることにより、一度のハンドシェイクで複数コマンドを連続して実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、及び、これとのハンドシェイクによりコマンドを実行する搬送ロボットを備えた搬送ロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業現場で多用される搬送ロボットは、一般に、外部の制御装置と接続され、制御装置からの指令に応じて動作する。双方は通信機能を備えており、ハンドシェイク(例えば特許文献1,2参照。)により相互に通信が可能である。
例えば、液晶ガラス基板を熱処理する工程で使用される搬送ロボットは、それ自体は、単独コマンドの実行マシンである。連続した動作を行わせるためには、1コマンド完結(実行終了)して原点位置に戻り、完全停止した搬送ロボットに対して、制御装置がハンドシェイクを行い、次のコマンドを与える、という動作を繰り返すことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−234825号公報
【特許文献2】特開2002−108424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように1コマンド完結ごとにハンドシェイクを行って複数のコマンドを実行させるシステムでは、複数回のハンドシェイクに相応の時間を要する他、毎回原点位置に戻って完全停止することの無駄があり、その結果、全工程の所要時間が長くなる。また、一般に、搬送ロボットには原点位置に戻りきらなくても次のコマンドを実行できるオーバーラップ機能があるが、1コマンド完結ごとにハンドシェイクを行うとなると、この機能を活用することができない。
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、搬送全工程の所要時間を短縮することができる搬送ロボット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の搬送ロボット装置は、制御装置と、前記制御装置とのハンドシェイクにより指示されるコマンドに対応した処理を実行可能であって、現コマンドの実行中に並行して次のコマンドを読み込み、これを、現コマンドに引き続いて実行する搬送ロボットとを備えたものである。
上記のような搬送ロボット装置においては、現コマンドの実行中に並行して次のコマンドが読み込まれ、その後実行される、という過程が順次行われることにより、一度のハンドシェイクで複数コマンドを連続して実行することができる。
【0006】
また、上記搬送ロボットは、複数コマンドを連続して実行するモードであることを示す情報を前記制御装置から受け取った場合にのみ次のコマンドの読込を行い、当該情報を受け取らない場合には、現コマンドの実行のみで終了となるようにしてもよい。
このような情報に基づいて、次のコマンドを読み込むべきか否かを判断すれば、確実な判断を行うことができ、また、連続でない(単独の)場合に無駄な動作を行うことがない。
【0007】
また、上記搬送ロボットは、オーバーラップ機能を有し、コマンドの実行終了時に完全停止することなく次のコマンドを実行するものであってもよい。
この場合、オーバーラップ機能により1コマンド終了で完全停止せずに次のコマンドを実行することができるので、搬送全工程の実行に要する時間が、さらに短縮される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の搬送ロボット装置によれば、一度のハンドシェイクで複数コマンドを連続して実行することができるので、1コマンドごとにハンドシェイクを行う場合に比べて、搬送全工程の実行に要する時間が短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送ロボット装置を、周辺の装置と共に示す図である。
【図2】搬送ロボットの動作のフローチャートである。
【図3】図2におけるコマンド処理(ステップS3)の詳細を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送ロボット装置を、周辺の装置と共に示す図である。これは、例えば液晶基板を熱処理するための搬送ロボット装置である。図において、搬送ロボット装置は、ダブルアームの搬送ロボット1と、PLC(プログラマブルコントローラ)からなる制御装置2とによって構成される。搬送ロボット1と制御装置2とはケーブル3により接続されており、搬送ロボット1は、制御装置2とのハンドシェイクにより指示されるコマンドに対応した処理を実行可能である。
【0011】
具体的には、まず、搬送ロボット1は、ダブルアームにより、搬入部4から液晶基板のワーク(図示せず。)を搬入する。このとき、例えば、アーム伸縮や、吸着の動作が行われる。次に、搬送ロボット1は、ダブルアームのそれぞれを用いて、第1炉体5及び第2炉体6へそれぞれ、ワークを収納する。また、収納したワークを離した後、既に熱処理が終わった他のワークを取り出して戻る。そして、これら熱処理済みのワークを冷却部(又は搬出部)7に収納し、次工程へ送る。
【0012】
図2は、搬送ロボット1の動作のフローチャートである。動作の開始後、搬送ロボット1は、まず、動作準備のための所定の初期処理を行う(ステップS1)。続いて、搬送ロボット1は、制御装置2からハンドシェイクを受け付けたか否かの判断を行い(ステップS2)、受け付けていないときはそのまま受付を待つ。なお、ハンドシェイクの受付は例えば、制御装置2からのストローブ(Strobe)信号を搬送ロボット1が受けることにより成立する。ハンドシェイクを受け付けると、搬送ロボット1は、コマンド処理に入り(ステップS3)、その実行完了後、原点位置に戻って完全に停止する等の、コマンド終了処理を行う(ステップS4)。
【0013】
図3は、図2におけるコマンド処理(ステップS3)の詳細を示すフローチャート(サブルーチン)である。図3において、搬送ロボット1は、制御装置2からコマンド読込を行う(ステップS31)。なお、詳細には、制御装置2から搬送ロボット1へコマンド書込を行った後、制御装置2が搬送ロボット1へ読込要求を行うことにより、搬送ロボット1によるコマンド読込が行われる。そして、搬送ロボット1は、読み込んだコマンドの実行を開始する(ステップS32)。例えば、コマンドが「搬入」であれば、搬送ロボット1は、搬入部4(図1)からワークの搬入を開始する。
【0014】
続いて、搬送ロボット1は、コマンドの連続要求すなわち、複数コマンドを連続して実行するモードであるか否かの判断を行う(ステップS33)。連続要求は、制御装置2がコマンドの単独/連続を示すフラグとして出力するものであり、連続動作を行う間、連続した信号(例えばHレベル固定)として出力される。一方、コマンドが単独の場合は、このフラグはLレベルである。連続要求がない場合(すなわち単独の場合)、搬送ロボット1は、ステップS34でコマンドの実行を完了したか否かの判断を行い、完了によりメインルーチン(図2)に戻り、コマンド終了処理(ステップS4)を行う。
【0015】
一方、ステップS33において連続要求がある場合、搬送ロボット1は、現コマンドの実行開始後から完了までの間に、制御装置2に対して次コマンド受付可報告(次コマンドの受付が可能である旨の報告)を行う(ステップS35)。当該報告を行うタイミングでないときは、現コマンドを実行しながら、そのタイミングを待つことになる。なお、ここで言う「完了」とはコマンドの実質的な内容のみの完了を意味し、原点位置に戻って完全停止することは含まれない。
具体的には、1つのコマンドは複数動作を含んでおり、例えば、指定位置へ旋回し、上昇し、ハンドを伸長させ、上昇してワークを受け取り、吸着し、ハンドを戻す、という一連の動作を順番に行う。そこで、搬送ロボット1は、例えば、最後にハンドを戻す動作開始と同時に次コマンド受付可報告を行う。
【0016】
上記の次コマンド受付可報告を受けて、制御装置2は搬送ロボット1に次コマンドを書き込み、書込が終わったら次コマンド書込済の通知を搬送ロボット1に与える。そこで、搬送ロボット1は、制御装置2から次コマンド書込済の通知が来るのを待ち(ステップS36)、書込済を確認すると、ステップS31に戻って、書き込まれた次のコマンドを読み込む。読み込み後、搬送ロボット1は、次コマンドの実行を開始する(ステップS32)。但し、実際のロボット動作は、現コマンドの最後の動作に引き続いて実行される。例えば、現在実行中のコマンドが搬入であれば、次コマンドは炉への収納となる。
【0017】
以上のようにして、1つのコマンドの実行完了に要する時間待ちの間に、次のコマンドを書き込み、書込済になれば読み込むことができる。すなわち、次に実行するコマンドの予約が可能である。一方、読み込まれた「次コマンド」は「現コマンド」となり、搬送ロボット1は実行を開始する(ステップS32)。そして、搬送ロボット1は、実行開始後、完了までの間に、制御装置2に対して次コマンド受付可報告を行う(ステップS35)。まだ当該報告を行うタイミングでないときは、現コマンドを実行しつつ、当該報告を行うタイミングを待つ。そして、搬送ロボット1は、現コマンドの最後の動作開始と同時に、次コマンド受付可報告を行う(ステップS35)。
【0018】
例えば、実行するコマンドがAコマンド,Bコマンド,Cコマンドの順であれば、搬送ロボット1は、Aコマンド実行中(具体的には最後の動作開始と同時)にBコマンドの書込を受け、書込完了で読込を行う。但し、さらにCコマンドの書込までは行われない。そして、搬送ロボット1は、Aコマンドに続いて直ちにBコマンドを実行する。また、搬送ロボット1は、Bコマンド実行中(具体的には最後の動作開始と同時)にCコマンドの書込を受け、書込完了で読込を行う。こうして、常に次コマンドのみを予約可能としつつ、複数コマンドを連続して処理する。連続した複数のコマンドが全て実行され、連続要求が無くなった時点(ステップS33における「NO」)で、搬送ロボット1は最後のコマンドの実行完了を待ち(ステップS34)、完了するとメインルーチン(図2)に戻り、コマンド終了処理を行う(ステップS4)。
【0019】
上記のような搬送ロボット装置においては、現コマンドの実行中に並行して次のコマンドの書込・読込が行われ(いわば先読みされ)、その後実行される、という過程が順次行われることにより、一度のハンドシェイクで複数コマンドを連続して実行することができる。従って、1コマンドごとにハンドシェイクを行う場合に比べて、搬送全工程の実行に要する時間が短縮される。
例えば、搬入から冷却部7へ収納するまでの各コマンドについてハンドシェイクを行う場合と比較すると、約2秒の短縮が可能である。
【0020】
また、搬送ロボット1は、複数コマンドを連続して実行するモードであることを示す情報(連続要求有りのフラグ)を制御装置2から受け取った場合にのみ次のコマンドの読込を行い、当該情報を受け取らない場合には、現コマンドの実行のみで終了となることにより、次のコマンドを読み込むべきか否かの確実な判断を行うことができ、また、連続でない(単独の)場合に無駄な動作を行うことがない。
【0021】
一方、搬送ロボット1は、オーバーラップ機能を有している。すなわち、原点位置まで戻って完全停止しなくても、次のコマンドを実行することは可能である。このオーバーラップ機能により1コマンド終了で完全停止せずに次のコマンドを実行することができるので、搬送全工程の実行に要する時間が、さらに短縮される。例えば、搬入から冷却部7へ収納するまでの各コマンドについてハンドシェイクを行うべくその都度完全停止させる場合と比較すると、約6秒の短縮が可能である。すなわち、ハンドシェイク回数削減による短縮と合わせると約8秒短縮できることになる。例えば、2つの炉で、搬送ロボット装置のタクト44秒では処理量は3928枚/1日のところ、8秒短縮して36秒になると、処理量は4800枚/1日となり、生産性が向上する。
【0022】
なお、上記実施形態では説明を省略したが、非常停止の操作がされた場合、搬送ロボット1は、現コマンドの実行を即座に停止する他、次コマンドを破棄する。従って、非常停止により、搬送ロボット1の現在及びその後の動作を確実に停止することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 搬送ロボット
2 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、
前記制御装置とのハンドシェイクにより指示されるコマンドに対応した処理を実行可能であって、現コマンドの実行中に並行して次のコマンドを読み込み、これを、現コマンドに引き続いて実行する搬送ロボットと
を備えたことを特徴とする搬送ロボット装置。
【請求項2】
前記搬送ロボットは、複数コマンドを連続して実行するモードであることを示す情報を前記制御装置から受け取った場合にのみ次のコマンドの読み込みを行い、当該情報を受け取らない場合には、現コマンドの実行のみで終了となる請求項1記載の搬送ロボット装置。
【請求項3】
前記搬送ロボットはオーバーラップ機能を有し、コマンドの実行終了時に完全停止することなく次のコマンドを実行する請求項1記載の搬送ロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−201572(P2010−201572A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50870(P2009−50870)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000167200)光洋サーモシステム株式会社 (180)
【Fターム(参考)】