説明

搬送機及び洗浄装置

【課題】単純な構成でありながら、略円筒形のワークを搬送路に沿って順次搬送すると共に、ワークに対して均等に洗浄液を吹き付けることのできる搬送機及びその搬送機を用いた洗浄装置を得る。
【解決手段】スプロケット8によって駆動される搬送チェーン7のローラ12に、案内板10と当接する駆動部14と、略円柱状のワーク3を支持する支持部15とを備える。駆動部14は案内板10上を移動することによって回転し、支持部15は駆動部14の回転に追従して回転する。支持部15はワーク3の外周と当接するため、ワーク3は支持部15の回転に追従して回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送機及び洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、切削や研磨などの加工により形成されたワークは、該ワークに残留する塵埃や加工油を除去するため洗浄装置によって洗浄処理される。洗浄装置は、例えば、特許文献1に示されるように走行台車に取り付けられたハンガによりワークを吊下し搬送する搬送機や、図8(a)及び(b)に示されるようにワーク101を治具102上に載置して搬送する搬送機を備えている。
【0003】
図8(a)及び(b)に示す搬送機は、左右一対の無端状のチェーン103の間に治具102が取着され、チェーン103を駆動することにより治具102上に載置されたワーク101を搬送する。そして、洗浄装置は、ワーク101の搬送方向の左右両側と上方とに配置した複数のノズル104から洗浄液(図8において二点破線で示す)をワーク101に向かって噴射し、該ワーク101の表面を洗浄する。特許文献1に開示された搬送機は、同様にチェーンにて走行台車を移動させるようにしている。
【特許文献1】特開平9−220541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や図8(a)及び(b)に示す搬送機によりワークを搬送する場合、ワークが治具102やハンガと接触しているため、ノズル104をどのように配設しても洗浄液等を治具102とワーク101との当接部に直接吹き付けることができない。そのため、ワークの表面全体を洗浄することができない、つまり未洗浄部分が発生するという問題があった。また、これらの搬送機は、ワーク101を支持する部材(治具102)とそれを移動させるための駆動部103とによって構成されているため、構成が複雑となっていた。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、単純な構成でありながら、ワークの表面を確実に処理することのできる搬送機及びその搬送機を用いた洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、略円柱形の被搬送物を搬送する搬送機であって、前記被搬送物の搬送路に沿って配設された2つのスプロケットの間に掛け渡された無端状のチェーンと、前記搬送機構を駆動する駆動手段と、を備え、前記チェーンは、ローラと、前記ローラを軸支する回転軸と、互いに隣接する前記回転軸を連結する連結部材と、から構成され、前記ローラは、搬送路に沿って配設された案内板上を転動され、前記被搬送物は、隣接する2つの前記ローラの外周に当接し搬送されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の搬送機において、前記ローラは、略円柱形状を有するとともに前記案内板と当接し駆動力を伝達される駆動部と、略円柱形状を有するとともに前記駆動部に追従して回転し前記被搬送物を支持する支持部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の搬送機において、前記駆動部の直径は、前記支持部の直径よりも小さいことを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送機において、前記ローラの回転軸間の距離は、前記被搬送物の直径よりも広いことを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の搬送機において、前記被搬送物の両側には、前記搬送機構に沿って延びるガイドが配設されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に記載の発明は、略円柱形の被搬送物を搬送する搬送機と、洗浄するための媒体を前記被搬送物に吹き付ける洗浄機と、を備える洗浄装置であって、前記搬送機は、前記被搬送物の搬送路に沿って配設された2つのスプロケットの間に掛け渡された無端状のチェーンと、前記搬送機構を駆動する駆動手段と、を備え、前記チェーンは、ローラと、前記ローラを軸支する回転軸と、互いに隣接する前記回転軸を連結する連結部材と、から構成され、前記ローラは、搬送路に沿って配設された案内板上を転動され、前記被搬送物は、隣接する2つの前記ローラの外周に当接し搬送されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の洗浄装置において、前記ローラは、略円柱形状を有するとともに前記案内板と当接し駆動力を伝達される駆動部と、略円柱形状を有するとともに前記駆動部に追従して回転し前記被搬送物を支持する支持部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の洗浄装置において、前記駆動部の直径は、前記支持部の直径よりも小さいことを特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、請求項6〜8の何れか1項に記載の洗浄装置において、前記ローラの回転軸間の距離は、前記被搬送物の直径よりも広いことを特徴とする。
【0013】
また、請求項10に記載の発明は、請求項6〜9の何れか1項に記載の洗浄装置において、前記被搬送物の両端側には、前記搬送機構に沿って延びるガイドが配設されることを特徴とする。
【0014】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、被搬送物を隣接する2つのローラの外周に当接させることにより、被搬送物を回転させながら搬送することができる。また、ローラによって被搬送物を支持するため、被搬送物を搬送するための部材を必要とせず、構成を単純にすることができる。また、ローラは案内板上を転動するため、ローラのみを駆動させる駆動力が不要となり、単純な構成で被搬送物を回転させることができる。また、ローラは案内板上に配設されるため、チェーンのたわみが案内板によって抑制されることとなりローラを軸支する連結部材の摩耗を抑制することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、駆動手段からチェーンへの駆動力は駆動部を介して直接伝達される。よって、駆動手段からチェーンへ動力を伝達するための部材を必要とせず、搬送機の構成をより単純にすることができる。また、駆動部および搬送部は略円柱形状となっているため、案内板から支持部と被搬送物との当接部までの距離は、回転による駆動部と案内板との当接位置の変化によらず一定に保たれる。よって、被搬送物は支持部によって同一平面上で支持されながら搬送されることとなり、被搬送物を安定した状態で搬送するとともに的確に回転させることができる。また、支持部と被搬送物とが線接触するため、点接触に比べ、被搬送物を安定した状態で搬送することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、駆動部の直径を支持部の直径よりも小さくすることにより、支持部の外周面における被搬送物との当接部の移動距離は、駆動部の外周面における案内板との当接部の移動距離よりも大きくなる。よって、駆動部の外周面の移動距離は支持部によって拡大されるため、短い搬送距離で被搬送物を一回転させることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、被搬送物を支持する隣接したローラの一方を共有する二組のローラによって、被搬送物同士を干渉させることなく支持することができる。また、被搬送物の回転軸は隣接するローラの回転中心同士を結ぶ仮想的な直線に近づく。被搬送物の回転軸は被搬送物の重心位置であるから、被搬送物の重心が安定する。すなわち、被搬送物はローラによって確実に保持される。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、被搬送物の端面に垂直な方向に荷重が作用した場合でも、被搬送物の回転軸の長手方向における変位は被搬送物がガイドによって支持されることにより規制される。よって、被搬送物をチェーンから離脱させることなく的確に搬送することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、被搬送物を隣接する2つのローラの外周に当接させることにより、被搬送物を回転させながら搬送することができる。また、ローラによって被搬送物を支持するため、被搬送物を搬送するための部材を必要とせず、構成を単純にすることができる。また、ローラは案内板上を転動するため、ローラのみを駆動させる駆動力が不要となり、単純な構成で被搬送物を回転させることができる。また、ローラは案内板上に配設されるため、チェーンのたわみが案内板によって抑制されることとなりローラを軸支する連結部材の摩耗を抑制することができる。また、被搬送物を回転させながら搬送させることにより被搬送物とその被搬送物を支持するチェーンとの当接部が変化する。よって、被搬送物全体に洗浄液やエアーなどを吹き付けることが可能となり洗浄精度が向上する。また、洗浄後の乾燥も短時間で完了することが可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、駆動手段からチェーンへの駆動力は駆動部を介して直接伝達される。よって、駆動手段からチェーンへ動力を伝達するための部材を必要とせず、搬送機の構成をより単純にすることができる。また、駆動部および搬送部は略円柱形状となっているため、案内板から支持部と被搬送物との当接部までの距離は、回転による駆動部と案内板との当接位置の変化によらず一定に保たれる。よって、被搬送物は支持部によって同一平面上で支持されながら搬送されることとなり、被搬送物を安定した状態で搬送するとともに的確に回転させることができる。また、支持部と被搬送物とが線接触するため、転接触に比べ、被搬送物を安定した状態で搬送することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、駆動部の直径を支持部の直径よりも小さくすることにより、支持部の外周面における被搬送物との当接部の移動距離は、駆動部の外周面における案内板との当接部の移動距離よりも大きくなる。よって、駆動部の外周面の移動距離は支持部によって拡大されるため、短い搬送距離で被搬送物を一回転させることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、被搬送物を支持する隣接したローラの一方を共有する二組のローラによって、被搬送物同士を干渉させることなく支持することができる。また、被搬送物の回転軸は隣接するローラの回転中心同士を結ぶ仮想的な直線に近づく。被搬送物の回転軸は被搬送物の重心位置であるから、被搬送物の重心が安定する。すなわち、被搬送物はローラによって確実に保持される。
【0023】
請求項10に記載の発明によれば、洗浄液やエアーなどを吹き付けることにより被搬送物の端面に垂直な方向に荷重が作用した場合でも、被搬送物の回転軸の長手方向における変位は被搬送物がガイドによって支持されることにより規制される。よって、被搬送物をチェーンから離脱させることなく的確に搬送することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、単純な構成でありながら、略円筒形のワークを搬送路に沿って順次搬送すると共に、ワークに対して均等に洗浄液を吹き付けることのできる搬送機及びその搬送機を用いた洗浄装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は本実施の形態に係る洗浄装置の正面図である。
図1に示すように、洗浄装置は、被搬送物(ワーク)を洗浄する洗浄機1(図4参照)と、そのワークを搬送する搬送機2とから構成されている。
【0026】
洗浄機1は、処理部として洗浄部1aとエアーブロー部1bと乾燥部1cとを備え、各処理部1a〜1cは直線状に配置されている。洗浄部1aとエアーブロー部1bとの間にはエアーカーテン1dが配設されている。搬送機2は、各処理部1a〜1cが配置された方向(搬送方向であり図1において左から右へ進む方向)に沿ってワーク3を搬送するように構成されている。
【0027】
洗浄装置は、ワーク3を搬送機2によって洗浄部1a、エアーブロー部1bおよび乾燥部1cを順次通過させ、該ワーク3の表面を洗浄する。
洗浄部1aは、搬送されるワーク3に対して洗浄液を噴射し、該ワーク3の表面に付着した塵埃や切削等の加工に用いられる加工油を除去する。エアーブロー部1bは、搬送されるワーク3に対して所定温度のエアーを噴射し、該ワーク3の表面に残留した洗浄液を吹き飛ばす。乾燥部1cは、ワーク3の表面が確実に乾燥するように設けられている。
【0028】
次に、洗浄装置を構成する洗浄機1について説明する。
図4は本実施の形態に係る洗浄装置の一部概略構成図である。
図4に示すように、洗浄部1aは、搬送機2の上方及び左右に配設されワーク3の搬送方向に沿って配列された複数のノズル1eを有する。
【0029】
ノズル1eは、それぞれワーク3に媒体を噴射する噴出孔を備えている。その噴出孔は、噴射された媒体(洗浄液等)が直線状に広がるように略長方形型に形成されている。そして、搬送方向に沿って配列された複数のノズル1eは、搬送されるワーク3の表面において、その直径よりも長く広がるようにワーク3の搬送中心から離間した位置に配設されている。そして、各ノズル1eは、噴射される媒体の広がる方向が搬送方向に対して所定の角度をなし、噴出孔が平行となるように配設されている。よって、噴出孔からフラット状に噴出する洗浄液等のワーク3を洗浄するための媒体(図4において二点破線で示す)は互いに干渉することなくワーク3に吹き付けられる。
【0030】
エアーブロー部1bは、図示しないが、洗浄部1aと同様に、搬送機2の上方及び左右に配設されワーク3の搬送方向に沿って配列された複数のノズル1eを有し、ワーク3には、各ノズル1eから媒体として所定温度に加熱されたエアーが噴出される。
【0031】
次に、搬送機2について説明する。なお、本実施形態にかかる搬送機2で搬送されるワーク3は、直径D、高さHを持つ略円柱形状に形成されている(図2参照)。なお、そのようなワーク3として例えばギヤなどがあげられる。
【0032】
図1に示すように、搬送機2は、搬送部4と、該搬送部4の始点側(図1図示状態左側)に配設された投入部5と、該搬送部4の終点側(図1図示状態右側)に配設された排出部6と、から構成されている。
【0033】
なお、説明の簡略化のために以後、図1、図4、図5(a),(b)および図6において左側を投入側とし、右側を排出側とする。
投入部5は、搬送部4の上面に漸近する斜面5aと、該斜面5aを挟んで両側に配設された一対のガイド板5bとを備える。斜面5aの幅及びガイド板5bの間隔は、ワーク3の高さHよりも若干広くなっており、略円柱形状に加工されたギヤなどのワーク3はガイド板5bによって案内されながら斜面5aを転がり、搬送部4に投入される。
【0034】
排出部6は、搬送部4の排出側端部を覆う態様で、ワーク3の端面に対向する面である第1面6aと、搬送部4の排出側端部に対向する面である第2面6bとを備える。搬送部4の排出側端部に到達したワーク3は、排出部6に案内されながら搬送部4から排出される。
【0035】
搬送部4は、搬送機構としての搬送チェーン7と、駆動手段としてのスプロケット8及びモータ(図示略)と、案内板10と、一対のガイド11とを備えている。
搬送チェーン7は無端チェーンであり、搬送部4の投入側と排出側に配設された一対のスプロケット8(投入側のスプロケット8a及び排出側のスプロケット8b)で折り返す態様で該スプロケット8(8a,8b)に掛け合わされている。投入側と排出側に配設されたスプロケット8a,8bの間には、搬送チェーン7を図1図示状態下側から支持する態様で案内板10が配設されている。
【0036】
また、搬送チェーン7の上方には搬送方向に沿って延びるガイド11が配設されている。ガイド11は、上下方向及び左右方向にそれぞれ2本配置されている、つまり4本のガイド11が配置されている。(図2参照)。ガイド11の間隔W1はワーク3の幅W2(ワーク3は略円柱状に形成され、中心軸が水平かつ搬送方向と直交する姿勢にて搬送されるため、ワーク3の幅W2は略円柱の高さHとなる)よりも若干大きくなっている(図2参照)。
【0037】
投入側のスプロケット8aは支持軸9aによって回動可能に軸支されている。排出側のスプロケット8bは駆動軸9bにて軸支され、図示しないモータにより図1図示状態で時計回りに回転する。従って、図1図示状態において投入側のスプロケット8aの上端から排出側のスプロケット8bの上端までの区間にある搬送チェーン7は投入側から排出側へ送られる。なお、ワーク3はスプロケット8の上側にある搬送チェーン7上に配設され、モータ(駆動軸9)の回転に伴い投入側(図1図示状態左側)から排出側(図1図示状態右側)へ搬送される。
【0038】
案内板10は、搬送チェーン7に沿って投入側から排出側へ延びる態様で配設されており、その上面が搬送チェーン7と当接する当接面10aとなっている。案内板10は、当接面10aによって搬送チェーン7およびワーク3を支持する。
【0039】
次に図3を用いて搬送チェーン7について詳述する。
図3に示すように、搬送チェーン7は、ローラ12と、該ローラ12を連結する連結部材13と、によって構成されている。
【0040】
ローラ12は、案内板10(図2参照)と当接する駆動部14と、ワーク3を支持する支持部15とを備えている。
支持部15は略円柱状となっており、その中心には該支持部15の両端面を貫通する態様で軸受孔16が形成されている。また、支持部15の両端面17にはそれぞれ、該両端面17から略垂直に突出する態様で、軸受孔16と同一の内径をもった円環状の軸受部18が一体に形成されている。支持部15は、軸受孔16に配設される後述する連結部材13の回転軸19が挿通されている。支持部15はその外周面である支持面15aでワーク3と当接する。
【0041】
駆動部14は支持部15の両端面17に接する態様で配設されている。駆動部14は、略円環状に形成されており、その内周面14aは支持部15の軸受部18と当接し、外周面14b側は案内板10の当接面10aに当接する(図2参照)。また、駆動部14の外径は支持部15の外径よりも小さく形成されている。また、軸受部18の突出方向において、駆動部14と軸受部18とが当接する部分の長さは、軸受部18が支持部15の両端面17から突出する長さと同等若しくはそれよりも小さくなっている。
【0042】
連結部材13は、回転軸19と、交互に配置されそれぞれ隣接するローラ12の回転軸19を連結する第1連結部20及び第2連結部21と、によって構成されている。
図2に示すように、駆動部14の外周面14bはスプロケット8(8a,8b)と当接する。すなわち、スプロケット8の駆動力は直接搬送チェーン7(駆動部14)に伝達される。
【0043】
なお、支持部15の直径は駆動部14の直径より大きいためスプロケット8(8a,8b)は常に支持部15を挟んで配設されることとなる。よって、支持部15とスプロケット8(8a,8b)とが当接するためスプロケット8の支持部15方向への変位は規制される。すなわち、駆動部14とスプロケット8(8a,8b)とのかみ合いは支持部15によって保持される。
【0044】
次に、本実施の形態に係る搬送機2の駆動態様について説明する。
図5(a)及び(b)は搬送機2の一部概略構成図である。
図5(a)に示すように、ワーク3は互いに隣接するローラ12(以後、第1搬送ローラ12aおよび第2搬送ローラ12bとする)によって支持される。
【0045】
搬送時、モータによって駆動されるスプロケット8(8a,8b)は、図1図示状態で時計回りに回転する(図1参照)。スプロケット8(8a,8b)の回転により搬送チェーン7の第1搬送ローラ12a及び第2搬送ローラ12bは、案内板10に案内されながら投入側(図5(a)図示状態で左側)から排出側(図5(a)図示状態で右側)へ送られる(矢印X)。
【0046】
第1搬送ローラ12a及び第2搬送ローラ12bの駆動部14は、外周面14bで案内板10と当接し、回転軸19によって回動可能に軸支されているため、図5(a)の状態から図5(b)の状態へ並進移動した距離に相当する分だけ時計回りに回転する(矢印X1)。
【0047】
ここで、案内板10とが当接しないローラ12は回転することなく移動する。斜面5aは、搬送チェーン7の案内板10と当接していない部分に漸近するため、投入部5から投入されたワーク3は、まず、回転せずに並進移動しているローラ12によって支持されることとなる(図1参照)。
【0048】
支持部15と駆動部14とが軸受部18(図3参照)において当接しているため、支持部15は駆動部14に追従し時計回りに回転する(矢印X2)。
さらに、支持部15に配設されたワーク3は、支持部15の回転に追従して回転する(矢印X3)。すなわち、ワーク3は、ローラ12が案内板10上を移動(矢印X)することにより、搬送路に沿って回転(矢印X3)しながら投入側から排出側へ搬送される。
【0049】
このとき、支持部15の直径は駆動部14の直径よりも大きいため、支持部15とワーク3とが当接した部分の長さは駆動部14と案内板10とが当接した長さ(すなわち、ローラ12が搬送された距離)Lよりも大きくなる。すなわち、ワーク3を案内板10上で直接転がした場合より、ワーク3の回転角度は大きくなる(回転数は多くなる)。
【0050】
なお、所定の搬送距離におけるワーク3の回転数はローラ12の支持部15及び駆動部14の直径によって決定される。すなわち、支持部15の外径をD1、駆動部14の外径をD2とすると、ローラ12(ワーク3)が距離L1進む間の直径Dを有するワーク3の回転数NはN=(D1×L1)/(D2×π×D)となる。
【0051】
同様に、直径Dを有するワーク3を一回転させるために必要な搬送距離も駆動部14および支持部15の直径によって決定される。すなわち、前述したように、支持部15の外径をD1、駆動部14の外径をD2とすると、直径Dを有するワーク3を一回転させるために必要な距離L2はL2=(D2×π×D)/D1となる。
【0052】
そして、図4に示すノズル1eは、距離L2よりも長い範囲に洗浄液を噴射するように配置されている。従って、回転しながら搬送されるワーク3は、その表面全体に少なくとも1度洗浄液が当る。
【0053】
ここで、ワーク3の回転軸からローラ12(第1搬送ローラ12aまたは第2搬送ローラ12b)の回転軸までの距離は隣接するローラ12(第1搬送ローラ12aと第2搬送ローラ12bとの間)の回転軸19の距離よりも広くなっている。また、ワーク3の回転軸とローラ12の回転軸19とは平行となっている。
【0054】
以上のように構成された洗浄装置により、ワーク3は以下の態様で洗浄される。
図1に示すように、投入部5の斜面5a上を転がり搬送部4に投入されたワーク3は、搬送チェーン7のローラ12によって支持され、洗浄機1に沿って回転しながら搬送される。
【0055】
まず、ワーク3は洗浄部1aにおいて洗浄液を吹き付けられる。このとき、ワーク3は一定の速度で回転しながら搬送される。このため、ワーク3の表面全体に洗浄液が少なくとも1度当るため、全面が確実に洗浄される。
【0056】
洗浄部1aで塵埃や加工油を除去されたワーク3はエアーブロー部1bに搬送される。ワーク3は、洗浄部1aと同様に、エアーブロー部1bで全面に吹き付けられるエアーによって洗浄液が払拭された後、乾燥部1cでさらに乾燥され排出部6から排出される。
【0057】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)ワーク3は洗浄機1に沿って回転されながら搬送されるため、ローラ12との当接部が変化する。よって、洗浄液などをワーク3全体に直接吹き付けることが可能となり、塵埃や加工油を的確に除去することができる。さらに、エアーなども全体に直接吹き付けることが可能となり、乾燥に要する搬送距離を短くすることができる。また、ワーク3は一定の速度で回転するため、洗浄液やエアーが均等に吹き付けられ洗浄むらを抑制することができる。
【0058】
(2)搬送チェーン7のローラ12(詳しくは支持部15)でワーク3を支持することによって、ローラ12を支持するための治具などの部材が不要となり搬送機2の構成を単純にすることができる。
【0059】
(3)案内板10と回転軸19によって回動可能に軸支されているローラ12の駆動部14とが当接しているため、スプロケット8(8a,8b)によって移動するローラ12は案内板10と駆動部14との静止摩擦により回転する。隣接するローラ12によって支持されているワーク3は、このローラ12の回転に追従して回転する。よって、スプロケット8(8a,8b)の回転によってワーク3は回転力を得ることとなる。すなわち、ワーク3を回転させるためだけの駆動力を必要とせず、搬送機2を単純な構成とすることができる。
【0060】
(4)ローラ12が案内板10に支持されているため、案内板10上の搬送チェーン7はワーク3の荷重によって変位することなく直線状に配設される。よって、連結部材13はスプロケット8(8a,8b)の駆動力による搬送方向のみの荷重を支持すればよいため、連結部材13の摩耗は抑制される。
【0061】
(5)駆動部14とスプロケット8(8a,8b)とが当接するため、スプロケット8(8a,8b)の駆動力は搬送チェーン7に直接伝達される。よって、搬送機引いては洗浄装置を構成する部材点数が少なくなり、単純な構造とすることができる。
【0062】
(6)略円柱状に形成された支持部15によってワーク3を支持することにより、ワーク3と支持部15との当接部が線接触となる。よって、ワーク3の重心を安定させた状態で搬送することができる。
【0063】
(7)支持部15及び駆動部14の回転軸を同一とすることにより、駆動部14の回転によって支持部15の回転軸が変化することを妨げることができる。すなわち、ワーク3と支持部15との当接部と、案内板10と駆動部14との当接部と、の距離がローラ12の回転角に関わらず常に一定となる。よって、ワーク3は支持部15によって同一平面上で支持されながら搬送されることとなり、ワーク3を安定させた状態で搬送することができる。
【0064】
(8)支持部15及び駆動部14は同一の回転軸を持つ略円柱状であるため、駆動部14の外径と支持部15の外径とからワーク3を所定量回転させるために必要な搬送距離が算出できる。よって、適当な搬送距離を設定することが可能となるため、搬送距離を短くし装置全体を縮小化することができる。また、ワーク3の回転速度が一定に保たれるため洗浄液をワーク3全体に均一に吹き付けることができる。
【0065】
(9)支持部15の外径は駆動部14の外径よりも大きいため、支持部15の外周面におけるワーク3との当接部の移動距離は、駆動部14の外周面における案内板10との当接部の移動距離よりも大きくなる。よって、駆動部14の外周面の移動距離は支持部15によって拡大されるため、短い搬送距離で被搬送物を一回転させることができる。
【0066】
(10)ローラ12は板状に形成された第1連結部20及び第2連結部21により挟まれる態様で回動可能に軸支される。よって、回転軸19に必要とされる長さは第1連結部20及び第2連結部21の厚さ分とローラ12の回転軸に沿った部分の長さ分とのみになり回転軸19が端尺化されるため、回転軸19のたわみを抑制することが可能となり、ワーク3を安定して搬送することができる。また、回転軸19の長手方向において搬送チェーン7が端尺化されることとなり、搬送機2を小型化することが可能となる。
【0067】
(11)互いに隣接するローラ12の回転軸19間の直径は、隣接するローラ12の回転軸間の距離よりも短いため、ワーク3を支持する一方のローラ12を共有する二組の隣接するローラ12によって、ワーク3同士は干渉させることなく支持される。また、ワーク3の回転軸は隣接するローラ12の回転中心同士を結ぶ仮想的な直線に近づく。ワーク3の回転軸はワーク3の重心位置であるから、ワーク3の重心が安定する。すなわち、ワーク3はローラ12によって確実に保持される。
【0068】
(12)ワーク3の両端側には、搬送機2に沿って延びるガイドが配設されているため、ワーク3は搬送方向以外の移動が規制され確実に搬送される。
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0069】
○上記実施形態では、洗浄装置は洗浄部1a、エアーブロー部1b及び乾燥部1cから構成されているとした。しかし、上述した構成を有する搬送機2によれば乾燥に要する搬送距離を短くすることが可能となるため、乾燥部1cを省略することは可能である。また、洗浄機1のノズル1eの配置などは適宜変更可能である。
【0070】
○上記実施形態では図5に示すように、互いに隣接するローラ12の回転中心間の距離W3は、ワーク3の直径Dよりも大きくなっている。しかし、互いに隣接するローラ22の回転中心の間隔は図6に示すように、ワーク3の直径Dより小さい距離W4としてもよい。このような構成によっても、ワーク3はローラ22に支持され回転しながら搬送される。
【0071】
○上記実施の形態では図2に示すように、ガイド11はワーク3の端面側に配設されている。しかし、ガイド11の配置、本数及び個数は本実施形態に限定されず適宜変更しても良い。
【0072】
○上記実施形態では、ローラ12の駆動部14と支持部15とが別体から構成されている。しかし、図7に示すローラ23ように駆動部24と支持部25とは一体に形成されても良い。このような構成によれば、駆動部24から支持部25への回転力はより確実に伝達される。
【0073】
上記各実施形態から把握できる技術的思想を以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る洗浄装置の正面図。
【図2】本発明に係る搬送機の側面図。
【図3】本発明に係る搬送機の一部断面図。
【図4】本発明に係る洗浄装置の概略正面図。
【図5】(a)、(b)本発明に係る搬送機の概略正面図。
【図6】本発明の他の実施形態の正面図。
【図7】本発明の他の実施形態の一部断面図。
【図8】(a)従来の洗浄装置の側面図、(b)従来の洗浄装置の正面図。
【符号の説明】
【0075】
D…直径、L,L1,L2…距離、W1…ガイド11の間隔、W2…ワーク3の幅、W3,W4…ローラ12の回転中心間の距離、1…洗浄機、2…搬送機、7…搬送チェーン、8,8a,8b…スプロケット、10…案内板、10a…当接面、11…ガイド、12,12a,12b,22,23…ローラ、13…連結部材、14,24…駆動部、15,25…支持部、19…回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱形の被搬送物を搬送する搬送機であって、
前記被搬送物の搬送路に沿って配設された2つのスプロケットの間に掛け渡された無端状のチェーンと、
前記搬送機を駆動する駆動手段と、を備え、
前記チェーンは、ローラと、前記ローラを軸支する回転軸と、互いに隣接する前記回転軸を連結する連結部材と、から構成され、
前記ローラは、搬送路に沿って配設された案内板上を転動され、
前記被搬送物は、隣接する2つの前記ローラの外周に当接し搬送される
ことを特徴とする搬送機。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送機において、
前記ローラは、略円柱形状を有するとともに前記案内板と当接し前記駆動手段から駆動力を伝達される駆動部と、略円柱形状を有するとともに前記駆動部に追従して回転し前記被搬送物を支持する支持部とを備える
ことを特徴とする搬送機。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送機において、
前記駆動部の直径は、前記支持部の直径よりも小さい
ことを特徴とする搬送機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送機において、
前記ローラの回転軸間の距離は、前記被搬送物の直径よりも広い
ことを特徴とする搬送機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の搬送機において、
前記被搬送物の両側には、前記チェーンに沿って延びるガイドが配設される
ことを特徴とする搬送機。
【請求項6】
略円柱形の被搬送物を搬送する搬送機と、洗浄するための媒体を前記被搬送物に吹き付ける洗浄機と、を備える洗浄装置であって、
前記搬送機は、前記被搬送物の搬送路に沿って配設された2つのスプロケットの間に掛け渡された無端状のチェーンと、
前記搬送機を駆動する駆動手段と、を備え、
前記チェーンは、ローラと、前記ローラを軸支する回転軸と、互いに隣接する前記回転軸を連結する連結部材と、から構成され、
前記ローラは、搬送路に沿って配設された案内板上を転動され、
前記被搬送物は、隣接する2つの前記ローラの外周に当接し搬送される
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
請求項6に記載の洗浄装置において、
前記ローラは、略円柱形状を有するとともに前記案内板と当接し前記駆動手段から駆動力を伝達される駆動部と、略円柱形状を有するとともに前記駆動部に追従して回転し前記被搬送物を支持する支持部とを備える
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項8】
請求項7に記載の洗浄装置において、
前記駆動部の直径は、前記支持部の直径よりも小さい
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項9】
請求項6〜8の何れか1項に記載の洗浄装置において、
前記ローラの回転軸間の距離は、前記被搬送物の直径よりも広い
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項10】
請求項6〜9の何れか1項に記載の洗浄装置において、
前記被搬送物の両端側には、前記チェーンに沿って延びるガイドが配設される
ことを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−137527(P2006−137527A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327745(P2004−327745)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(595024010)株式会社渡辺機械製作所 (4)
【Fターム(参考)】