説明

搬送装置及び基板処理装置

【課題】移動体の復元力によるモータ負荷を低減し、特異点を通過することによる振動を解消することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】真空容器2内で直線的に往復移動する移動体と、移動体4へ電力、信号、液体又はガスを供給する配線又は配管を収容する収容部を内部に有する屈伸可能な水平アーム機構とを備え、該水平アーム機構を、略水平方向に回動するように一端部が真空容器2に支持された第1アーム61と、略水平方向に回動するように一端部が第1アーム61の他端部に接続され、他端部が移動体4に接続された第2アーム62で構成し、第1アーム61の一端部及び第2アーム62の他端部は、移動体4の移動範囲の中間点及び移動体4の中心からそれぞれ偏倚しており、第2アーム62は、移動体4が移動方向一端側にある場合、移動方向に対して略平行、移動体4が移動方向他端側にある場合、移動方向に対して略垂直になるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内で被搬送物を搬送する搬送装置、及び該搬送装置を備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空容器内で半導体ウエハ、ガラス基板等の被処理基板を搬送する搬送装置を備え、該搬送装置を用いて被処理基板を搬送しながらエッチング処理、成膜処理等の基板処理を行う基板処理装置が実用化されている(例えば、特許文献1)。搬送装置は、リニアモータによって真空容器内を直線的に往復移動する移動体を備える。移動体には、ヘリウムガス及び冷媒による基板冷却を行う冷却部、基板保持を行う静電チャックが設けられており、移動体に対するヘリウムガス、冷媒、電力及び各信号の供給はダクトアームを通じて行われる。
【0003】
ダクトアームは、金属製であり、垂直面内方向に回動するように真空容器に固定された第1アームと、該第1アームの先端部に一端が固定され、他端が移動体に固定された第2アームとを備え、移動体の往復運動に追従して屈伸運動するように構成されている。第1及び第2ダクトアームは、移動体へヘリウムガス、冷媒、電力及び各信号を供給するための配線、配管等を収容する収容部を内部に形成しており、移動体と連通している。配線及び配管は、金属製のダクトアームによって覆われているため、配線及び配管からパーティクル又はガスが真空容器内に発生して被処理基板に悪影響を与えることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/066103号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の搬送装置のダクトアームは、第1及び第2アームが垂直面内方向に回動する縦型構造であるため、移動体の自重によって発生する復元力によるモータ負荷、移動体が特異点を通過することによるダクトアームの関節部分の振動が問題になっていた。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、移動体の復元力によるモータ負荷を低減し、特異点を通過することによる振動を解消することを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送装置は、真空容器内で被搬送物を搬送する搬送装置において、前記真空容器内で直線的に往復移動する移動体と、該移動体へ電力、信号、液体又はガスを供給する配線又は配管を収容可能な収容部を内部に有する屈伸可能な水平アーム機構とを備え、前記水平アーム機構は、略水平方向に回動するように一端部が前記真空容器に支持された第1アームと、略水平方向に回動するように一端部が前記第1アームの他端部に接続され、他端部が前記移動体に接続された第2アームとを備え、前記第1アームの一端部及び前記第2アームの他端部は、前記移動体の移動範囲の中間点及び前記移動体の中心からそれぞれ偏倚しており、前記第2アームは、前記移動体が移動方向一端側にある場合、移動方向に対して略平行、前記移動体が移動方向他端側にある場合、移動方向に対して略垂直になるように構成してあることを特徴とする。
【0008】
本発明にあっては、水平アーム機構を構成する第1アーム及び第2アームは、略水平方向に回動するため、移動体の自重による復元力は生じない。また、特異点は存在しないため、移動体が往復移動しても、特異点を通過することによる振動は発生しない。
【0009】
本発明に係る搬送装置は、真空容器内で被搬送物を搬送する搬送装置において、前記真空容器内で直線的に往復移動する移動体と、該移動体へ電力、信号、液体又はガスを供給する配線又は配管を収容可能な収容部を内部に有する屈伸可能な水平アーム機構とを備え、前記水平アーム機構は、略水平方向に回動するように一端部が前記真空容器に支持された第1アームと、略水平方向に回動するように一端部が前記第1アームの他端部に接続され、他端部が前記移動体に接続された第2アームとを備え、該第1アーム及び第2アームは、
【数1】

の関係を満たすことを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、水平アーム機構を構成する第1アーム及び第2アームは、略水平方向に回動するため、移動体の自重による復元力は生じない。また、第1アーム及び第2アームは、上記式を満たすため、特異点は存在せず、移動体が往復移動しても、特異点を通過することによる振動は発生しない。
【0011】
本発明に係る搬送装置は、前記水平アーム機構は、2組の前記第1アーム及び第2アームを備え、各第1アーム及び第2アームは、前記移動体が、該移動体の移動範囲の中間点に位置する場合、該中間点に関して点対称をなすことを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、2組の第1及び第2アームは、移動体が、該移動体の移動範囲の中間点に位置する場合、該中間点に関して点対称をなしているため、各組のアームのいずれについても移動体の自重による復元力、特異点を通過することによる振動は生じない。
【0013】
本発明に係る搬送装置は、前記移動体を移動させるリニアモータと、前記第1アームの回転角度を検出する回転角度検出部と、該回転角度検出部の検出結果に応じて前記リニアモータの動作を制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、第1アームの角度を回転角度検出部によって検出し、該回転角度検出部の検出結果に応じてリニアモータの動作を制御する。従って、移動体の位置を検出するリニアスケールは不要である。
【0015】
本発明に係る搬送装置は、前記制御部は、
【数2】

によって前記移動体の位置を検出するように構成してあることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、第1アームの角度に基づいて、移動体の位置を算出し、移動体の位置制御ないし移動制御を行うことが可能である。
【0017】
本発明に係る基板処理装置は、被処理基板を搬送する上述のいずれか一つの搬送装置と、該搬送装置によって搬送された被処理基板に対して、基板処理を施す基板処理部とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、復元力によるモータ負荷、移動体が特異点を通過することによる振動が発生しない搬送装置を用いて被処理基板を搬送し、該被処理基板に対して基板処理を施すことが可能である。従って、省電力化を図ることが可能である。また、移動体が特異点を通過することによる振動が基板処理に悪影響を及ぼすことはない。
【発明の効果】
【0019】
本発明にあっては、移動体の復元力によるモータ負荷を低減し、特異点を通過することによる振動を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態1に係る成膜システムの構成を概念的に示した説明図である。
【図2】成膜装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【図3】成膜装置の構成を模式的に示す側断面図である。
【図4】真空容器内の本実施の形態1に係る搬送装置の構成を模式的に示す一部破断斜視図である。
【図5】蓋部及び蒸着ヘッドが取り外された真空容器内の搬送装置を模式的に示す側断面図である。
【図6】蓋部及び蒸着ヘッドが取り外された真空容器内の搬送装置を模式的に示す平面図である。
【図7】図6のVII −VII 線断面図である。
【図8】水平アーム機構を構成する第1アーム及び第2アームの寸法及び接続位置を説明するための説明図である。
【図9】水平アーム機構を構成する第1アーム及び第2アームの構成を模式的に示す側断面図である。
【図10】搬送装置の制御システムを示したブロック図である。
【図11】搬送装置の動作を概念的に示した動作説明図である。
【図12】第1の変形例に係る動作説明図である。
【図13】第2の変形例に係る動作説明図である。
【図14】実施の形態1に係る搬送装置及び各変形例に係る移動体に加わる横負荷を示すグラフである。
【図15】実施の形態1に係る搬送装置及び各変形例に係る移動体に加わる動付加を示すグラフである。
【図16】本実施の形態2に係る成膜システムの構成を概念的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1に係る成膜システムの構成を概念的に示した説明図である。本実施の形態1に係る成膜システムは、被搬送物としての被処理基板G(図3参照)の搬送方向(X方向)に沿って直列順に並べたローダ91、トランスファーチャンバ92、成膜装置1、トランスファーチャンバ93、エッチング装置94、トランスファーチャンバ95、スパッタリング装置96、トランスファーチャンバ97、CVD装置98、トランスファーチャンバ99、及びアンローダ100にて構成される。
【0022】
ローダ91は、被処理基板G、例えば予め表面にITO層が形成されたガラス基板Gを成膜システム内に搬入するための装置である。トランスファーチャンバ92,93,95,97,99は、各処理装置間で被処理基板Gを受け渡しするための装置である。
成膜装置1は、真空蒸着法にて、被処理基板G上にホール注入層、ホール輸送層、青発光層、赤発光層、緑発光層、及び電子輸送層を形成するための装置である。詳細は後述する。
エッチング装置94は、有機層の形状を所定形状に調整するための装置である。
スパッタリング装置96は、パターンマスクを用いて、例えば銀Ag、マグネシウムMg/銀Ag合金等をスパッタリングすることによって、電子輸送層上に陰極層を形成する装置である。
CVD装置98は、窒化膜等からなる封止層をCVD等によって成膜し、ガラス基板G上に形成された各種膜を封止するための装置である。
アンローダ100は、被処理基板Gを成膜システム外へ搬出するための装置である。
【0023】
図2は、成膜装置1の構成を模式的に示す斜視図、図3は、成膜装置1の構成を模式的に示す側断面図である。成膜装置1は、被処理基板Gを収容し、内部で被処理基板Gに対して成膜処理を行うための真空容器2を備える。真空容器2は、搬送方向を長手方向とする中空略直方体形状をなし、アルミニウム、ステンレス等で構成されている。より詳細には、真空容器2は、搬送方向を長手方向とする略長方形の底板21と、該底板21に対して略垂直に形成された側壁22,23,24と、底板21に対して略平行な天板25とを有する。真空容器2の長手方向一端側の側壁22には、被処理基板Gを真空容器2内に搬入するための搬入口22aが形成され、長手方向他端側の側壁23には、被処理基板Gを真空容器2外へ搬出するための搬出口23aが形成されている。搬入口22a及び搬出口23aは、搬入方向に対して直交した長手方向を有するスリット状であり、搬入口22a及び搬出口23aの長手方向は略同一である。以下、搬入口22a及び搬出口23aの長手方向を横方向(Y方向)、該横方向及び搬送方向に直交する方向を上下方向という。また、側壁24の適宜箇所には、排気孔24aが形成されており、排気孔24aには、真空容器2の外部に配された真空ポンプ27が排気管26を介して接続されている。真空ポンプ27が駆動することにより、真空容器2の内部は所定の圧力、例えば10−2Paに減圧される。
【0024】
真空容器2の上部、搬送方向略中央部には、搬送装置10によって搬送された被処理基板Gに対して基板処理、具体的には真空蒸着法にて成膜処理を施す複数の蒸着ヘッド(基板処理部)3が設けられている。蒸着ヘッド3は、ホール注入層を蒸着させる第1ヘッド3a、ホール輸送層を蒸着させる第2ヘッド3b、青発光層を蒸着させる第3ヘッド3c、赤発光層を蒸着させる第4ヘッド3d、緑発光層を蒸着させる第5ヘッド3e、及び電子輸送層を蒸着させる第6ヘッド3fを、搬送方向に沿って順に配置して構成されている。蒸着ヘッド3には、真空容器2の外部に配された図示しない蒸気発生部が配管を介して接続されている。
【0025】
蒸気発生部は、容器と、容器の内部に配された加熱機構とを備える。加熱機構は、各層の材料である有機成膜材料の蒸気を収容可能な容器形状部分を有し、電源から供給された電力によって有機成膜材料を加熱するように構成されている。例えば、電気抵抗体にて加熱するように構成されている。こうして、加熱機構内に収納した有機成膜材料を加熱して、有機性膜材料の蒸気を発生させる。また、容器には、被処理基板Gに対して不活性ガス、例えばArなどの希ガス等からなる輸送ガスを供給する輸送ガス供給管が接続されており、輸送ガス供給管から容器に供給された輸送ガスと共に、有機成膜材料の蒸気を蒸気発生部から配管を介して蒸着ヘッド3へ供給するように構成されている。
【0026】
真空容器2の内部には、被処理基板Gを搬送する搬送装置10が設けられている。
図4は、真空容器2内の本実施の形態1に係る搬送装置10の構成を模式的に示す一部破断斜視図、図5は、蓋部及び蒸着ヘッド3が取り外された真空容器2内の搬送装置10を模式的に示す側断面図、図6は、蓋部及び蒸着ヘッド3が取り外された真空容器2内の搬送装置10を模式的に示す平面図、図7は、図6のVII −VII 線断面図である。搬送装置10は、被処理基板Gを保持し、真空容器2内を搬送するための移動体4と、移動体4を搬送方向に沿って直線的に往復移動させるリニアモータ5と、移動体4へ電力、信号、熱媒体、伝熱用ガス等を供給する配線61e,62e及び配管61d,62dを収容する収容部61c,62c(図9参照)を内部に有する屈伸可能な水平アーム機構6とを備える。
【0027】
移動体4は、断面T字状をなし、略矩形板状のステージ部と、該ステージ部の略中央部から下方へ突出した角柱部とを有する。移動体4は、真空容器2の内部の雰囲気と遮断された空間を内部に有し、角柱部の底面には、水平アーム機構6と接続し、水平アーム機構6の収容部62cと前記空間とを連通させるための孔部が形成されている。移動体4の空間には、ステージ部に載せた被処理基板Gを保持するための静電チャック、被処理基板Gの温度を調節するための熱媒体流路が収容されている。また、ステージ部には、該ステージ部に載せた被処理基板Gの下面と、ステージ部の上面との隙間に伝熱用ガスを供給する伝熱用ガス供給部を有している。静電チャックへ電力を供給するための配線と、熱媒体流路及び伝熱用ガス供給部に熱媒体、伝熱用ガス等を供給するための配管とは、移動体4の空間に引き出され、角柱部の底面に形成された孔部を通じて、水平アーム機構6に引き回されている。
【0028】
リニアモータ5は、横方向に適宜長離隔し、搬送方向に沿って配された2本の円柱状のシャフト52と、移動部材の角柱部の両側面に設けられ、該シャフト52に沿って移動自在に装着された筒形状のスライダ51とを備える。シャフト52は、搬送方向に沿ってN極とS極とが交互に配列した構造である。スライダ51は、非磁性材料からなる筐体を有し、該筐体の内部にはシャフト52を囲繞するように配された電磁石が内蔵されている。スライダ51の筐体は、移動体4の空間に連通しており、電力供給用の配線は、移動体4を通じて電磁石に引き回されている。このように構成されたリニアモータ5にあっては、電磁石を構成するコイルに電流を供給することによって、移動体4を搬送方向へ直線的に往復移動させることができる。
また、搬送装置10は、移動体を搬送方向へ案内する案内部材53を備える。案内部材53は、図7に示すように、真空容器2の両側壁24に設けられた断面略三角形状の棒状の部材であり、移動体4を搬送方向へ案内するための条体53aが上面に形成されている。
【0029】
水平アーム機構6は、略水平方向、即ち底板21の面内方向に回動するように一端部61aが真空容器2の底板21に支持された第1アーム61と、略水平方向に回動するように一端部62aが第1アーム61の他端部61bに接続され、他端部62bが移動体4の底面に接続された第2アーム62とを備える。第1アーム61の一端部61aは、移動体4の移動範囲の中間点から偏倚しており、第2アーム62の他端部62bも、移動体4の中心から偏倚している。第2アーム62は、移動体4が搬送方向一端側にある場合、搬送方向に対して略平行、移動体4が搬送方向他端側にある場合、移動方向に対して略垂直になるように構成してある。また、水平アーム機構6は、第1アーム61及び第2アーム62を2組備え、各第1アーム61及び第2アーム62は、移動体4が、移動体4の移動範囲の中間点に位置する場合、該中間点に関して点対称をなすように構成されている。2組の第1アーム61及び第2アーム62は対称的であるため、以下では主に1組の第1及び第2アーム61、62について説明を行う。なお、第1及び第2アーム61、62は、駆動源を有しておらず、リニアモータ5による移動体4の移動に伴って、屈伸運動を行うのみである。
【0030】
図8は、水平アーム機構6を構成する第1アーム61及び第2アーム62の寸法及び接続位置を説明するための説明図である。より詳細には、第1アーム61及び第2アーム62は、下記式(1)〜(4)を満たす。なお、図8中、「O」は移動範囲の中間点を示し、「P」は、移動体4の中心を示している。また、「A1」,「A2」は、第1アーム61の一端部61aと、真空容器2との接続点、「B1」,「B2」は、第1アーム61の他端部61bと、第2アーム62の一端部62aとの接続点、「C1」,「C2」は、第2アーム62の他端部62bと、移動体4との接続点を示している。
【0031】
【数3】

【0032】
図9は、水平アーム機構6を構成する第1アーム61及び第2アーム62の構成を模式的に示す側断面図である。第1アーム61は、両端が円弧状に曲成された長板状をなし、内部には収容部61cが形成されている。収容部61cには、移動体4へ電力、信号、熱媒体、伝熱用ガス等を供給する配線61e及び配管61dが収容されている。また、第1アーム61の一端部61aには、真空容器2の底板21の面内方向に回動するように第1アーム61を真空容器2に接続するための第1ロータリージョイント66が設けられている。
第2アーム62は、収容部61cと同様、両端が円弧状に曲成された長板状をなし、内部には収容部62cが形成されている。収容部62cにも、配線61e及び配管62dに通じる配線62e及び配管62dが収容されている。また、第1アーム61の他端部61bと、第2アーム62の一端部62aには、真空容器2の底板21の面内方向に回動するように第1アーム61を真空容器2に接続するための第2ロータリージョイント67が設けられている。更に、第2アーム62の他端部62bには、底板21の面内方向に回動するように第2アーム62を移動体4の底面に接続するための第3ロータリージョイント68が設けられている。
更に、第1及び第2アーム61、62の各接続部分及び関節部分には、第1及び収容部62cを真空容器2の雰囲気から遮断するための磁性流体シール63,64,65が設けられている。
【0033】
なお、本実施の形態1に係る搬送装置10は、2組の第1アーム61及び第2アーム62を有し、第1アーム61及び第2アーム62を通じて移動体4へ電力、信号、熱媒体、伝熱用ガスを供給するように構成してあるが、電力、信号、熱媒体、伝熱用ガスの供給系統を、第1の組を構成している第1アーム61及び第2アーム62と、第2の組を構成している第1アーム61及び第2アーム62とで分離すると良い。例えば、第1の組の第1アーム61及び第2アーム62を通じて移動体4へ熱媒体を供給し、第2の組の第1アーム61及び第2アーム62を通じて移動体4へ電力、信号、及び伝熱用ガスを供給するように構成すると良い。電力、信号、熱媒体、及び伝熱用ガスを2系統に分離することによって、信頼性やメンテナンス性を上げることができる。
【0034】
図10は、搬送装置10の制御システムを示したブロック図である。搬送装置10は、第1アーム61の回転角度を検出する回転角度検出部82と、回転角度検出部82の検出結果に応じてリニアモータ5の動作を制御する制御部81と、リニアモータ5を駆動するためのモータドライバ54とを備える。
回転角度検出部82は、例えば第1アーム61の回転角度に応じた信号を制御部81へ出力するロータリーエンコーダであり、真空容器2の外部に設けられている。ロータリーエンコーダには、第1アーム61の回転角度の絶対値に相当する信号を出力するアブソリュート方式、第1アーム61が回動する都度、パルスを出力するインクリメンタル方式等があるが、いずれの方式を採用しても良い。また、回転角度検出部82は、ロータリーエンコーダに限定されず、可変抵抗器を用いて角度を検出するポテンションメータ、その他の検出器を採用しても良い。
【0035】
制御部81は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力部を備えたマイクロコンピュータであり、回転角度検出部82から出力された信号が前記入出力部に入力されるように構成されている。制御部81は、下記式(5)によって、移動体4の位置を算出し、位置検出結果に応じて、リニアモータ5の駆動量を算出する。そして、制御部81は、算出した駆動量を含む制御信号を入出力部を介してモータドライバ54へ出力する。
【0036】
【数4】

【0037】
モータドライバ54は、制御信号を受信し、受信した制御信号に応じて、リニアモータ5を駆動するための信号を生成し、配線61e,62eを通じて、リニアモータ5のスライダ51へ出力する。このように構成された駆動システムによれば、移動体4の位置を検出する真空対応のリニアスケールを真空容器2内に設ける必要が無くなる。
【0038】
また、成膜装置は、蒸着ヘッド3から放出された有機材料の蒸気が、水平アーム機構に付着することを防止する防着板7を備える。防着板7は、真空容器2を上下に分離するように水平方向に設けられている。防着板7は、第2アーム62の他端部62aと、移動体4との接続部分が防着板7の上下に連通するように形成された連通孔7aを有する。連通孔7aは、具体的には、横方向略中央部で搬送方向に沿って形成された長孔である。
【0039】
図11は、搬送装置10の動作を概念的に示した動作説明図である。図11(a)に示すように、移動体4が搬入口22a側に位置している状態でリニアモータ5が駆動すると、移動体4は、図11(b)〜(e)に示すように搬入口22a側から搬出口23a側へ移動する。また、リニアモータ5を逆駆動することによって、移動体4を、搬出口23a側から搬入口22a側へ移動させることができる。本実施の形態1では、水平アーム機構6を採用しているため、移動体4の自重によって発生する復元力としての負荷がモータに及ぶことは無い。また、第1及び第2アーム61、62が上記式(1)〜(4)を満たした場合、移動体4が特異点を通過することは無く、移動体4の揺れは発生しない。更に、第1アーム61の回転角度範囲は約120度、第1及び第2アーム61、62の関節部分の回転角度範囲は約45度、第2アーム62の回転角度範囲は約110度程度に抑えることができ、配線61e,62eのねじれ等の問題を防止することができる。更に、後述するように、移動体4に加わる横方向の負荷を抑えることができる。
図12は、第1の変形例に係る動作説明図、図13は、第2の変形例に係る動作説明図である。変形例1,2に係る搬送装置は、第1及び第2アーム161、162,261,262の長さ、取り付け位置のみが図12及び図13のように、本実施の形態1に係る搬送装置10と異なり、他の構成は本実施の形態1に係る搬送装置10と同様である。変形例1に係る搬送機構は、移動体4が一端側にある場合、第2アーム162は搬送方向に対して斜めになり、移動体4が他端側にある場合、第2アーム162が搬送方向に略平行になるように構成されている。変形例2に係る搬送機構は、移動体4が搬送方向一端側及び他端側のいずれにある場合も、第2アーム262は搬送方向に対して斜めになるように構成されている。
【0040】
図14は、実施の形態1に係る搬送装置10及び各変形例に係る移動体4に加わる横負荷を示すグラフである。横軸は時間、左縦軸は移動体4に加わる横負荷、右縦軸は移動体4の速度を示している。図14から分かるように、本実施の形態1に係る搬送装置10によれば、移動体4の横方向に加わる負荷は小さく、移動体4を安定的に搬送することができる。
【0041】
図15は、実施の形態1に係る搬送装置10及び各変形例に係る移動体4に加わる動付加を示すグラフである。横軸は時間、縦軸は動負荷、つまり移動体4の搬送方向に加わる負荷を示している。本実施の形態1及び変形例1,2は、いずれも水平アーム機構6を採用しており、移動体4に加わる動負荷に大きな違いは見られなかった。
【0042】
本実施の形態1によれば、移動体4の復元力によるモータ負荷を低減し、特異点を通過することによる振動を解消することができる。
また、移動体4に加わる横負荷を抑えることができる。
更に、第1及び第2アーム61、62の回転角度範囲を抑えることができる。
更にまた、移動体4の位置を検出する真空対応のリニアスケールを用いることなく、移動体4の位置を検出し、移動を制御することができる。
更にまた、2組の第1及び第2アーム61、62が対称的に配されているため、各組のアームのいずれについても移動体4の自重による復元力、特異点を通過することによる振動を防止することができ、成膜装置1を小型化することができる。
【0043】
(実施の形態2)
図16は、本実施の形態2に係る成膜システムの構成を概念的に示した説明図である。本実施の形態2に係る成膜システムは、いわゆるリニアベイ型システムである。図16に示すように、この成膜システムでは、被処理基板Gの搬送方向(図16において右向き)に沿って、ローダ311、第1〜第5の調圧チャンバ321〜325(以下、第1PTM321〜第5PTM325という。)、第1PTM321〜第5PTM325と交互に配置される第1〜第4のトランスファーモジュール331〜334(以下、第1TM331〜第4TM334という。)およびアンローダ341を直列に並べることによって、直線状の搬送経路Lが構成されている。なお、本実施の形態2では、第1PTM321〜第5PTM325は2段に構成されている場合を図示している。
【0044】
ローダ311の前方(図16において左方)、ローダ311と第1PTM321との間、第1PTM321〜第5PTM325と第1TM331〜第4TM334とのそれぞれの間、第5PTM325とアンローダ341との間、およびアンローダ341の後方(図16において右方)には、ゲートバルブ351が配置してあり、ローダ311、第1PTM321〜第5PTM325、第1TM331〜第4TM334及びアンローダ341の内部には、図示しない真空ポンプによってそれぞれ真空引きが可能となっている。また、第1TM331〜第4TM334の内部には搬送用アームを有する搬送ロボット331a,332a,333a,334aがそれぞれ配置されている。
【0045】
第1TM331の一方の側面には、真空紫外光(VUV:Vacuum UltraViolet)等により、被処理基板Gのクリーニングを行う洗浄処理装置361がゲートバルブ362を介して接続されている。また、他方の側面には、被処理基板Gに例えばスパッタリング法等によってアノード層、例えばITO膜を形成させる前処理装置363が接続されている。第1TM331内の搬送ロボット331aは、被処理基板Gを搬送経路Lに沿って第1PTM321から第1TM331に搬送すると共に、第1TM331の内部と洗浄処理装置361との間で、被処理基板Gを搬送経路Lと直行する方向に搬送することができる。
【0046】
第2TM332の一方の側面には、被処理基板Gに有機層、例えばホール注入層、ホール輸送層、有機発光層などの薄膜パターン形成を行う成膜装置301がゲートバルブ371を介して接続されている。成膜装置301の構成は、実施の形態1又は変形例1,2と同様である。成膜装置301の第2TM332との接続面の反対側の側面には、成膜装置301との間でマスクの搬送を行うマスクトランスファーモジュール373(以下、MTM373という。)がゲートバルブ372を介して接続されている。MTM373にはマスクストック室374が接続され、所定の成膜パターンを形成させるためのマスクが待機させられている。ここで、被処理基板Gの第2TM332と成膜装置301との間の搬送は、第2TM332内部の搬送ロボット332aによって行われる。
【0047】
第3TM333の一方の側面には、被処理基板Gに例えばパターンマスクを用いたスパッタリング法等によってカソード層を形成させるスパッタ処理装置384がゲートバルブ383を介して接続され、さらに他方の側面にはゲートバルブ382を介してバッファモジュール381が接続されている。スパッタ処理装置384の第3TM333との接続面の反対側の側面には、スパッタ処理装置384との間でマスクの搬送を行うマスクトランスファーモジュール386(以下、MTM386という。)がゲートバルブ385を介して接続されている。MTM386にはマスクストック室387が接続され、所定の成膜パターンを形成させるためのマスクが待機させられている。ここで、被処理基板Gの第3TM333と、スパッタ処理装置384及びバッファモジュール381との間の搬送は、第3TM333内部の搬送ロボット333aによって行われる。
【0048】
第4TM334の両側面にはCVD処理装置391,394がゲートバルブ392,393を介して接続されている。各CVD処理装置391,394においては封止膜層の成膜が行われる。ここで、被処理基板Gの第4TM334と各CVD処理装置391,394の間の搬送は、第4TM334内部の搬送ロボット334aによって行われる。なお、封止膜層の膜構造等によってCVD処理装置の台数は適宜変更され、例えばCVD処理装置391のみを設置し、CVD処理装置392を設置しない場合も考えられる。
【0049】
なお、上記バッファモジュール381は一般的なバッファ機能を有するモジュールであり、各処理モジュールにおける揺らぎ(定常状態における定期的なクリーニング、処理時間のばらつき)を吸収するものである。そのため、必ずしも上述した位置に配置される必要は無く、適宜、揺らぎの発生する箇所に設けることが好ましい。
【0050】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。なお、本実施の形態に係る搬送装置10を成膜装置301に設けた例を説明したが、スパッタ処理装置384に搬送装置10を設けても良い。広く言えば、本実施の形態に係る搬送装置10は、一般に、被処理基板Gを搬送しながら基板処理を行う任意の装置で利用することが可能である。
また、本実施の形態に係る搬送装置は、有機ELディスプレイのみならず、液晶ディスプレイ、太陽電池等の長尺の基板を処理する任意の基板処理装置に用いることが可能である。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 成膜装置
2 真空容器
3 蒸着ヘッド
4 移動体
5 リニアモータ
6 水平アーム機構
7 防着板
10 搬送装置
61 第1アーム
62 第2アーム
61c,62c 収容部
61d,62d 配管
61e,62e 配線
81 制御部
82 回転角度検出部
G 被処理基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内で被搬送物を搬送する搬送装置において、
前記真空容器内で直線的に往復移動する移動体と、
該移動体へ電力、信号、液体又はガスを供給する配線又は配管を収容可能な収容部を内部に有する屈伸可能な水平アーム機構と
を備え、
前記水平アーム機構は、
略水平方向に回動するように一端部が前記真空容器に支持された第1アームと、
略水平方向に回動するように一端部が前記第1アームの他端部に接続され、他端部が前記移動体に接続された第2アームと
を備え、
前記第1アームの一端部及び前記第2アームの他端部は、前記移動体の移動範囲の中間点及び前記移動体の中心からそれぞれ偏倚しており、
前記第2アームは、
前記移動体が移動方向一端側にある場合、移動方向に対して略平行、前記移動体が移動方向他端側にある場合、移動方向に対して略垂直になるように構成してある搬送装置。
【請求項2】
真空容器内で被搬送物を搬送する搬送装置において、
前記真空容器内で直線的に往復移動する移動体と、
該移動体へ電力、信号、液体又はガスを供給する配線又は配管を収容可能な収容部を内部に有する屈伸可能な水平アーム機構と
を備え、
前記水平アーム機構は、
略水平方向に回動するように一端部が前記真空容器に支持された第1アームと、
略水平方向に回動するように一端部が前記第1アームの他端部に接続され、他端部が前記移動体に接続された第2アームと
を備え、
該第1アーム及び第2アームは、
【数1】

の関係を満たす搬送装置。
【請求項3】
前記水平アーム機構は、
2組の前記第1アーム及び第2アームを備え、
各第1アーム及び第2アームは、
前記移動体が、該移動体の移動範囲の中間点に位置する場合、該中間点に関して点対称をなす
請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記移動体を移動させるリニアモータと、
前記第1アームの回転角度を検出する回転角度検出部と、
該回転角度検出部の検出結果に応じて前記リニアモータの動作を制御する制御部と
を備える請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、
【数2】

によって前記移動体の位置を検出するように構成してある請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
被処理基板を搬送する請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の搬送装置と、
該搬送装置によって搬送された被処理基板に対して、基板処理を施す基板処理部と
を備える基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−38779(P2012−38779A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174722(P2010−174722)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】