説明

搬送装置

【課題】機械による作業と作業者による作業を効率よく行う。
【解決手段】組立装置1は、内周部分に、組立装置1の上面を一周し、反時計方向に個別に駆動するベルト11〜17を備えている。チャック部23は、レール21やアーム22などによりXYZ方向に移動することができ、部品容器61や部品容器62に置かれた部品をチャッキングして、ピン31やピン33で位置決めされているワーク2に対して部品の組立作業を行う。ピン31で位置決めされ、チャック部23による機械作業で部品が組み立てられたワーク2は、ベルト13からベルト14に搬送され、ベルト14に蓄積される。組立装置1による機械的な作業と、作業者3による手作業は、サイクルが異なるが、これら工程が個別に動作するベルト13〜16によって分断されているため、同一のライン上で作業することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関し、例えば、コンベヤでワークを搬送しながら部品を組み立てるものに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークをコンベヤで搬送しながら機械部品を順次取り付けて製品を製造する製造ラインが広く用いられている。
このような技術として、次の特許文献1の「組付コンベヤ装置」がある。
【特許文献1】特開2008−184317号公報
【0003】
これは、レールを環状に設置し、その上にレールから突出した位置にワークを支持する軸台車を走行させる。
ワークがレールから突出しているために作業者は様々な角度からワークに組付作業を行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロボットによる作業と作業者による作業が混在するラインの場合、ロボットは所定の効率で作業を行えるのに対し、作業者の効率は変動する。
そのため、ロボットに適した搬送速度と作業者に適した搬送速度が異なるという問題があった。
例えば、組立途中に手作業で部品を組み付けたり、検査などの組立以外の作業が入る場合、一度組立ラインからワークを取り出し、作業後に次のラインに送る必要があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ワークを搬送しながら機械による作業と作業者による作業を効率よく行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、機械が作業を行う機械エリアでワークを搬送する第1の搬送手段と、前記機械エリアで作業したワークに対して作業者が追加の作業を行う作業者エリアでワークを搬送する第2の搬送手段と、前記機械エリアで作業したワークが前記第2の搬送手段による搬送経路上に蓄積されるように、前記第1の搬送手段と、前記第2の搬送手段を制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする搬送装置を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記蓄積されたワークの量を取得するワーク量取得手段と、前記取得したワーク量が所定の閾値に達した場合に告知する告知手段と、を具備したことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記作業者エリアに続く他の機械エリアでワークを搬送する第3の搬送手段を具備し、前記第1の搬送手段と、前記第3の搬送手段は、第1の方向にワークを搬送し、前記第2の搬送手段は、前記第1の方向と並行でない第2の方向にワークを搬送することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の搬送装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業者にワークを搬送する際にワークを蓄積することにより機械による作業と作業者による作業を効率よく行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)実施の形態の概要
組立装置1(図1)は、内周部分に、組立装置1の上面を一周し、反時計方向に個別に駆動するベルト11〜17を備えている。
チャック部23は、レール21やアーム22などによりXYZ方向に移動することができ、部品容器61や部品容器62に置かれた部品をチャッキングして、ピン31やピン33で位置決めされているワーク2に対して部品の組立作業を行う。
ピン31で位置決めされ、チャック部23による機械作業で部品が組み立てられたワーク2は、ベルト13からベルト14に搬送され、ベルト14に蓄積される。
【0009】
作業者3は、ベルト14に蓄積されたワーク2に対して作業を行い、作業が終わったワーク2は、ベルト15で搬送され、ピン33で位置決めされる。そして、チャック部23がピン33で位置決めされたワーク2に部品を取り付ける。
組立装置1による機械的な作業と、作業者3による手作業は、サイクルが異なるが、これら工程が個別に動作するベルト13〜16によって分断されているため、同一のライン上で作業することができる。
【0010】
(2)実施の形態の詳細
図1は、本実施の形態に係る組立装置1を上から見たところを示した図である。
組立装置1は、例えば、高さ1[m]、幅1〜3[m]、奥行き1〜2[m]程度の矩形の台を用いて構成されている。
組立装置1の上面の内周部には、ベルト11〜17が設置され、ワーク2、2、・・・(以下、ワーク2)を反時計方向に搬送する。
【0011】
押出装置41〜44は、それぞれ組立装置1の四隅に設置され、四隅に搬送されてきたワーク2を次のベルトに押し出す。
例えば、押出装置41は、ベルト11によって搬送されてきたワーク2をベルト12に押し出す。
このようにしてワーク2は、ベルト11〜17で構成された組立ラインの4隅で次のベルトに移動することができる。
【0012】
ベルト11〜17は、図2で説明する制御装置51によってそれぞれ個別に駆動され、個々に搬送・停止する。
ピン31は、組立装置1の上面から垂直方向に上下動するようになっており、その動作は図示しない制御装置51によって制御されている。
ピン31は、ワーク2がベルト13を搬送されてきた際に、これを度当たりさせて所定の位置に定置するために設置されており、このように度当たりさせる場合には、ベルト13よりも上方に移動して突出し、作業が終了するなどしてワーク2をベルト14に移動させる場合には、ベルト13よりも下降する。
【0013】
ピン32、ピン33もピン31と同様に上下動し、それぞれ、ベルト14、15で搬送されてくるワーク2を度当たりさせて位置決めしたり、通過させたりする。
ピン31、33で位置決めされたワーク2は、組立装置1が自動で機械組立を行い、ピン32で位置決めされ、ベルト14上に蓄積されているワーク2は、作業者3が手作業で組立を行ったり、検査したりなどする。
【0014】
このように、ピン31、33で定置されるワーク2の位置は、組立装置1による作業位置となっており、ピン32でベルト14に蓄積されているワーク2の位置は、作業者3による作業位置となっている。
【0015】
部品容器61、62には、ワーク2に取り付ける部品を蓄積しておく複数の容器が並べてあり、それぞれ異なる種類の部品が蓄積されている。
チャック部23は、部品容器61、62から部品をチャッキングして取り出し、これをワーク2に組み付ける。
【0016】
このため、チャック部23は、レール21によって、部品容器61付近から部品容器62付近まで横方向(Y方向)に移動し、アーム22の移動によって奥行き方向(X方向)に移動し、更に、レール21が上下動することにより上下方向(Z方向)に移動する。
【0017】
制御装置51は、チャック部23のXYZ方向の移動と、チャッキングを制御し、部品容器61から部品を取り出して、ピン31で位置決めされたワーク2に組立を行い、部品容器62から部品を取り出してピン33で位置決めされたワーク2に組立を行う。
このように、組立装置1は、2カ所で自動組立を行うことができる。
【0018】
機械稼動範囲4は、組立装置1がチャック部23を移動したりなど、機械が動く領域であり、作業者範囲5は、作業者3が手作業を行う領域である。
このように、組立装置1では、機械稼動範囲4と作業者範囲5が重なっている。
そのため、作業者3の安全を確保するために、組立装置1は、作業者3が作業を行っている間は、機械の駆動を停止したり、あるいは、チャック部23をピン31、又は、ピン33による作業領域のみで動かし、一方の作業領域から他方の作業領域への移動を行わないなどの制御を行う。
【0019】
また、組立装置1は、図示しないが、ブザーやライトなどの告知装置を備えており、作業者範囲5に所定数量のワーク2が蓄積されると、これを作業者3に告知するようになっている。
そのため、作業者3は、作業者範囲5にワーク2が蓄積されるまで他の装置などで他の作業をしておき、告知があると、組立装置1に赴いて作業者範囲5に蓄積されているワーク2を処理することができ、作業者3の作業効率を高めることができる。
【0020】
また、作業者3が作業を終えると、図示しない釦を押下するなどして組立装置1に通知するように構成することができ、組立装置1は、作業者3に告知してから、釦が押下されるまでの間は、上記のように機械動作を停止するなどして、作業者3の安全を確保する。
【0021】
ここで、ベルト13は、機械が作業を行う機械エリア(チャック部23が組立を行うエリア)でワーク2を搬送する第1の搬送手段として機能し、ベルト14は、機械エリアで作業したワーク2に対して作業者3が追加の作業を行う作業者エリア(作業者範囲5)でワーク2を搬送する第2の搬送手段として機能する。
そして、制御装置51は、機械エリアで作業したワーク2が第2の搬送手段による搬送経路上に(ピン32で止められて)蓄積されるように、第1の搬送手段と、第2の搬送手段を制御している。
また、制御装置51は、作業者範囲5に蓄積されたワーク2の量をセンサなどで取得するワーク量取得手段と、当該取得したワーク量が所定の閾値(所定の個数)に達した場合に(告知装置で)告知する告知手段を備えている。
【0022】
図2は、組立装置1の制御系の一例を示したブロック図である。
制御装置51は、組立装置1の全体を制御する装置であり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクなどで構成された大容量の記憶媒体を備えたコンピュータと、当該コンピュータを告知装置52などの周辺装置と接続するインターフェースなどを備えている。
【0023】
記憶媒体には、組立装置1の動作を制御するプログラムが記憶されており、制御装置51は、当該プログラムをCPUで実行し、周辺装置に制御信号を送信するなどして組立装置1の制御を行う。
【0024】
告知装置52は、例えば、ブザーや点滅ライトなどの告知デバイスを備えており、これらを駆動して作業者範囲5にワーク2が蓄積されたことを告知する。
ベルト駆動モータ53a、53b、・・・(以下、ベルト駆動モータ53)は、ベルト11〜17ごとに設置され、それぞれ独立してベルト11〜17を駆動する。
【0025】
センサ54a、54b、・・・(以下、センサ54)は、各種のセンサであり、例えば、ベルト11〜17の各所に設置され、各ベルトを搬送されるワーク2を検出したり、チャック部23の座標値を検出したりなどする。
また、図示しないが、操作パネル55は、例えば、タッチパネルや各種キーなどを備えており、組立装置1の動作状態を表示したり、担当者が組立装置1を操作するための各種入力が行えるようになっている。
【0026】
以上のように、組立装置1は、ベルト11〜17を個別に駆動することにより、チャック部23による一定の効率による作業と、作業者3による不規則な作業を組立装置1上の同一のラインで行うことができる。
【0027】
図3は、変形例に係る組立装置1aを示した図である。
組立装置1aの制御系は組立装置1と同様である。
組立装置1aは、組立装置1のレール21の長さを約半分にし、機械稼動範囲4を組立装置1aの左半分にしたものである。
組立装置1が作業する領域は組立装置1の左半分であるため、ベルト15の領域までベルト16を延設してある。
【0028】
これによって機械稼動範囲4と作業者範囲5が干渉しない(重なり合う領域がない)ため、作業者3が作業中でも組立装置1aで組立作業を行うことができる。
この例では、作業者3の安全を確保しながら組立装置1aと作業者3が同時に組立作業を行うことができる。
【0029】
図4は、更なる変形例に係る組立装置1bを示した図である。
組立装置1bの制御系は組立装置1と同様である。
組立装置1bでは、組立装置1のベルト14、15をベルト71、72に置き換えたものである。
ベルト71、72は、ベルト13、16の搬送方向に対して垂直に組立装置1(機械稼動範囲4)から遠ざかる方向に形成されている。
なお、組立装置1bでは、ベルト71、72を垂直に形成したが、ベルト13、16の搬送方向と並行でなく、組立装置1から遠ざかる方向であればよい。
【0030】
ベルト13を搬送されたワーク2は、ベルト13とベルト71からなる角部は、チャック部23による作業位置81となっており、制御装置51(図2)は、ベルト13でワーク2を作業位置81に搬送すると、ワーク2を作業位置81で停止させ、チャック部23を用いて部品の組付けを行う。
そして、組付けが終わると、組立装置1は、ベルト71を駆動してワーク2を作業者3の方に搬送し、ベルト71上にワーク2を蓄積する。
【0031】
作業者3は、作業者範囲5でワーク2に作業を行うと、これをベルト72に乗せる。
制御装置51は、ベルト72に乗せられたワーク2を、ベルト72とベルト16の角部に設けられた作業位置82に搬送する。
そして、制御装置51は、ワーク2を作業位置82に定置するとチャック部23を駆動して部品の組付けを行う。
【0032】
このように、組立装置1bでは、機械稼動範囲4と作業者範囲5が離れているため、作業者3の安全を確保しながら組立装置1による作業と作業者3による作業を同時に行うことができる。
また、作業位置81と作業位置82が近接しているため、チャック部23の移動量を小さくすることができ、チャック部23による組立精度が向上するほか、組立装置1bの横幅を小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0033】
このように、組立装置1bは、作業者エリア(作業者範囲5)に続く他の機械エリア(作業位置82)でワーク2を搬送する第3の搬送手段(ベルト16)を具備し、第1の搬送手段(ベルト13)と、第3の搬送手段(ベルト16)は、第1の方向(ベルト13とベルト16の搬送方向、組立装置1の横幅方向)にワーク2を搬送し、第2の搬送手段(ベルト71、ベルト72)は、第1の方向と並行でない第2の方向(例えば、ベルト13とベルト13の搬送方向と垂直な方向、組立装置1の奥行き方向)にワーク2を搬送している。
【0034】
以上に説明した本実施の形態及び変形例によって次のような効果を得ることができる。
(1)ベルトによる搬送を工程によって分断することにより、例えば、機械作業と手作業、あるいは、第1のサイクルによる機械作業と第2のサイクルによる機械作業など、ラインの途中にサイクルの異なる作業を入れることができる。
【0035】
(2)作業のサイクルが異なっても、1のライン上で一通りの作業をすることができるため、1台の装置で行う作業を増やすことができる。
(3)組立装置1a、1bでは、機械稼動範囲4と作業者範囲5を分離することにより、作業者3の安全を確保しながらチャック部23による作業と作業者3による作業を同時に行うことができ、人と機械を融合させて作業効率を高めることができる。
【0036】
(4)組立装置1bでは、ベルト71、72が組立装置1から遠ざかる方向に凸型に形成され、凸型環状コンベヤとなっているため、機械稼動範囲4と作業者範囲5を分離するほか、装置を小型化することができる。
(5)組立装置1a、1bでは、チャック部23による組込ポジション(チャック部23による作業場所)を2カ所設け、1のポジションで前半の組立を行い、その後にワーク2を蓄積するバッファを作って作業者3による組立や検査作業を行い、更に、その後、他のポジションで後半の組立を行うことができる。そして、2つのポジションの間の中間の作業中でも自動の組立作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】組立装置を上から見たところを示した図である。
【図2】組立装置の制御系の一例を示したブロック図である。
【図3】変形例に係る組立装置を示した図である。
【図4】更なる変形例に係る組立装置を示した図である。
【符号の説明】
【0038】
1 組立装置
2 ワーク
3 作業者
4 機械稼動範囲
5 作業者範囲
11〜17 ベルト
21 レール
22 アーム
23 チャック部
31〜33 ピン
41〜44 押出装置
51 制御装置
52 告知装置
53 ベルト駆動モータ
54 センサ
61、62 部品容器
71、72 ベルト
81、82 作業位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械が作業を行う機械エリアでワークを搬送する第1の搬送手段と、
前記機械エリアで作業したワークに対して作業者が追加の作業を行う作業者エリアでワークを搬送する第2の搬送手段と、
前記機械エリアで作業したワークが前記第2の搬送手段による搬送経路上に蓄積されるように、前記第1の搬送手段と、前記第2の搬送手段を制御する制御手段と、
を具備したことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記蓄積されたワークの量を取得するワーク量取得手段と、
前記取得したワーク量が所定の閾値に達した場合に告知する告知手段と、
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記作業者エリアに続く他の機械エリアでワークを搬送する第3の搬送手段を具備し、
前記第1の搬送手段と、前記第3の搬送手段は、第1の方向にワークを搬送し、前記第2の搬送手段は、前記第1の方向と並行でない第2の方向にワークを搬送することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−142921(P2010−142921A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325518(P2008−325518)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】