説明

携帯型送信機

【課題】意匠性を確保するとともに、落下時におけるケース部材の分離の防止を図る。
【解決手段】ケースは、底面および側面を有する第1のケース部材11と、第1のケース部材11の開口部を覆う第2のケース部材10により構成されており、第1のケース部材11における側面は、釦型電池12と回路基板15の積層方向の中央部が外側に膨らむように丸みを帯びており、第1のケース部材11と第2のケース部材10のケース外面の接合部Jが、第1のケース部材11の側面の側方向の最大径L0よりも小さい径L1の位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池および回路基板を積層するようにケース内に収納して構成され、電池を電源として電波を送信する携帯型送信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電池および回路基板を積層するようにケース内に収納して構成され、電池を電源として電波を送信する携帯型送信機が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−153526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された携帯型送信機は、製品の組み立て易さ等を考慮して、表側ケース部材のケース外面と裏側ケース部材のケース外面の接合部がケース側面の中央に位置するように構成されている。
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載されたような携帯型送信機は、表側ケース部材と裏側ケース部材のケース外面の接合部がケース側面の中央に位置するようになっているので、誤って落としてしまったときに、表側ケース部材と裏側ケース部材のケース外面の接合部に直接衝撃が伝わり易い。このため、表側ケース部材と裏側ケース部材のケース外面の接合部が変形して、表側ケース部材と裏側ケース部材とが分離し易く、ケース内に収納された電池や回路基板等がケースから飛び出してしまうといった問題がある。特に、このような携帯型送信機は、携帯電話やキーホルダ等に取り付けて使用される場合が多く、誤って落としてしまう頻度が高く、表側ケース部材と裏側ケース部材とが容易に分離してしまうのは好ましくない。また、携帯型送信機の小型化のため、ケースの肉厚を薄くすると、落下時における衝撃でケースが変形し易く、表側ケース部材と裏側ケース部材とが分離する頻度が高くなってしまう。
【0006】
また、表側ケース部材のケース外面と裏側ケース部材のケース外面の接合部がケース側面の中央に位置すると、ケース外面の接合部が視認され易くよく目立つため、見栄えが悪く意匠面が低下してしまう。
【0007】
なお、表側ケース部材と裏側ケース部材をネジ部材を用いてネジ固定することにより落下時におけるケース部材の分離を防止することも考えられるが、このような構成では、ネジ山の部分が露出してしまうため意匠性が低下してしまう。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みたもので、意匠性を確保するとともに、落下時におけるケース部材の分離の防止を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、釦型電池と、アンテナを配置した回路基板とを積層するようにケース内に収納して構成され、釦型電池を電源としてアンテナより送信電波を送信する携帯型送信機であって、ケースは、底面および側面を有する第1のケース部材(11)と、当該第1のケース部材(11)の開口部を覆う第2のケース部材(10)により構成されており、第1のケース部材(11)における側面は、釦型電池(12)と回路基板(15)の積層方向の中央部が外側に膨らむように丸みを帯びており、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)のケース外面の接合部(J)が、第1のケース部材(11)の側面の側方向の最大径(L0)よりも小さい径(L1)の位置に配置されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、ケースは、底面および側面を有する第1のケース部材(11)と、第1のケース部材(11)の開口部を覆う第2のケース部材(10)により構成されており、第1のケース部材(11)における側面は、釦型電池(12)と回路基板(15)の積層方向の中央部が外側に膨らむように丸みを帯びており、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)のケース外面の接合部(J)が、第1のケース部材(11)の側面の側方向の最大径(L0)よりも小さい径(L1)の位置に配置されているので、ケース外面の接合部(J)が目立たないようにすることができ、意匠性を確保することができる。また、落下等によりケース側面が地面等に接触しても、第1のケース部材(11)における側面は、釦型電池(12)と回路基板(15)の積層方向の中央部が外側に膨らむように丸みを帯びており、また、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)のケース外面の接合部(J)が第1のケース部材(11)の側面の側方向の最大径(L0)よりも小さい径(L1)の位置に配置されているので、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)のケース外面の接合部(J)に直接衝撃が加わりにくく、ケース部材の分離の防止を図ることができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、第1のケース部材(11)は、釦型電池(12)と回路基板(15)の積層方向に延びる第1の係止部(11b)を有し、第2のケース部材(10)は、釦型電池(12)と回路基板(15)の積層方向に延びる第2の係止部(10a)を有し、第1のケース部材(11)における第1の係止部(11b)と第2のケース部材(10)における第2の係止部(10a)とが互いに係止し合い、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)とが嵌合していることを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、落下等によりケース側面が地面等に接触してケース側方からの衝撃を受けても、回路基板(15)の積層方向に延びる第1の係止部(11b)と第2の係止部(10a)とが互いに係止し合い、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)とが嵌合しているので、第1の係止部(11b)と第2の係止部(10a)により衝撃が緩和され易く、更に、各ケース部材が分離され難くすることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、第1のケース部材(11)の開口縁部と、第2のケース部材(10)の周縁部には、それぞれネジ山が形成されており、第2のケース部材(10)を第1のケース部材(11)にネジ締めして第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)とが固定されていることを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、第1のケース部材(11)の開口縁部と、第2のケース部材(10)の周縁部には、それぞれネジ山が形成されており、第2のケース部材(10)を第1のケース部材(11)にネジ締めして第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)とが固定されているので、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)とを分離し難くすることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、第1のケース部材(11)の側面は、第1のケース部材(11)の底面および第2のケース部材(10)よりも肉厚となっていることを特徴としている。
【0016】
このように、第1のケース部材(11)の側面は、第1のケース部材(11)の底面および第2のケース部材(10)よりも肉厚とすることにより、ケースを薄型化しつつ、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)とを分離し難くすることができる。
【0017】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯型送信機の外観図である。
【図2】図1中のA方向から携帯型送信機を見た外観図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る携帯型送信機を携帯電話機に取り付けた様子を示した図である。
【図4】携帯型送信機の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態に係る携帯型送信機の外観図を図1に示す。本携帯型送信機1は、車両のドアの施錠、解錠、車両のエンジン等の始動を行うスマートエントリシステムに用いられるもので、車両に搭載された車両側機器(図示せず)との間で、携帯型送信機1の照合のための電波の送受信を行うようになっている。
【0020】
本携帯型送信機1のケースは、底面および側面を有する第1のケース部材11と、この第1のケース部材11の開口部を覆う第2のケース部材10とを嵌合することにより構成されている。なお、第1のケース部材11および第2のケース部材10は、それぞれ樹脂成形により1つの部材として構成されている。
【0021】
また、第1のケース部材11は、携帯電話機等に取り付けるための紐を挿通するための穴部11aを有している。また、第1のケース部材11の表面(第1のケース部材11の底面に相当する)には、リング状のラインLが印刷されている。
【0022】
図2は、図1中のA方向から本携帯型送信機1を見た外観図である。図に示すように、第1のケース部材11と第2のケース部材10のケース外面の接合部Jは、ケース側面とケース裏面との間に配置されるように構成されている。
【0023】
本携帯型送信機1は、図3に示すように、第1のケース部材11に形成された穴部11aを利用して携帯電話機等に取り付けることでアクセサリとしての役割も果たす。
【0024】
図4に、本携帯型送信機1の断面構成を示す。図に示すように、携帯型送信機1は、第1のケース部材11と第2のケース部材10から成るケース内に、釦型電池12、Oリング13、ターミナル14および回路基板15が収納されている。
【0025】
第1のケース部材11における側面は、釦型電池12と回路基板15の積層方向の中央部が外側に膨らむように丸みを帯びており、第1のケース部材11と第2のケース部材10のケース外面の接合部Jが、第1のケース部材11の側面の側方向の最大径L0よりも小さい径L1の位置に配置されている。
【0026】
第1のケース部材11は、釦型電池12と回路基板15の積層方向に延びる複数の爪状の係止部11bを有しており、第2のケース部材10は、釦型電池12と回路基板15の積層方向に延びる複数の爪状の係止部10aを有している。第1のケース部材11における係止部11bと第2のケース部材10における係止部10aとが互いに係止し合い、第1のケース部材11と第2のケース部材10とが嵌合するようになっている。
【0027】
釦型電池12、ターミナル14および回路基板15は、いずれも樹脂製の第1のケース部材11および第2のケース部材10を嵌合することにより構成されるケース内に積層配置されるようになっている。
【0028】
釦型電池12は、略円柱形状をなしており、プラス電極およびマイナス電極を有している。なお、釦型電池12の外形寸法は、電池の種類により異なる。
【0029】
第1のケース部材11におけるケースの内側となる位置には、釦型電池12を収納するための凹部が形成されており、この凹部に釦型電池12が収納されるようになっている。
【0030】
ターミナル14は、釦型電池12の各電極(プラス電極、マイナス電極)と、回路基板15の裏面に形成された電極パッドとの間の電気的接続を行うものである。本実施形態におけるターミナル14は、予め、回路基板15の裏面に形成された電極パッドに半田固定されている。
【0031】
Oリング13は、第1のケース部材11と第2のケース部材10との嵌合部の気密性を確保するためのものである。
【0032】
回路基板15は、円形状をなしており、第2のケース部材10に形成された複数の係止部(図示せず)に対応する位置には、それぞれ切欠部が設けられている。第2のケース部材10に形成された複数の係止部により回路基板15の各切欠部が係止されるようになっている。
【0033】
回路基板15の表面には、2つの1軸アンテナ16a、16b、制御回路16c等の回路素子が搭載されている。また、回路基板15の裏面には、パターン配線により構成されるパターンアンテナ(図示せず)が形成されている。
【0034】
1軸アンテナ16a、16bは、近距離用の電波の送信および受信を行うためのものであり、パターンアンテナ17は、長距離用の電波の送信を行うためのものである。なお、1軸アンテナ16a、16bの送信電波の周波数帯域はLF帯となっており、パターンアンテナ17の送信電波の周波数帯域は、RF帯となっている。
【0035】
1軸アンテナ16aと1軸アンテナ16bは、互いに直交するように回路基板15上に搭載されている。2軸(X軸、Y軸)対応の2軸アンテナは、チップサイズが大きくなるため、本実施形態では、このように2つの1軸アンテナ16a、16bを直交するように配置して2軸アンテナを構成している。
【0036】
制御回路16cは、メモリを内蔵したマイコンとして構成されており、メモリに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施するようになっている。
【0037】
本携帯型送信機1は、釦型電池12および回路基板15を積層するようにケース内に収納して構成され、釦型電池12を電源として送信電波を送信する。
【0038】
次に、本携帯型送信機1の組み付けについて説明する。まず、図4に示すように、第2のケース部材10を用意した後、第2のケース部材10に形成された凹部に釦型電池12を挿入する。
【0039】
次に、回路基板15の裏面に固定されたターミナル14と釦型電池12の接続が確実となるように、釦型電池12の上方に回路基板15を配置し、第1のケース部材11に形成された係止部により回路基板15を係止させる。これにより、回路基板15の裏面と釦型電池12の上面とが接合され、回路基板15が固定される。
【0040】
次に、第2のケース部材10と第1のケース部材11との間にOリング13を嵌め込むようにした後、第2のケース部材10の上側から第1のケース部材11を被せるようにして第1のケース部材11と第2のケース部材10を嵌合させ、組み付けが完了する。
【0041】
上記した構成によれば、ケースは、底面および側面を有する第1のケース部材(11)と、第1のケース部材(11)の開口部を覆う第2のケース部材(10)により構成されており、第1のケース部材(11)における側面は、釦型電池(12)と回路基板(15)の積層方向の中央部が外側に膨らむように丸みを帯びており、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)のケース外面の接合部(J)が、第1のケース部材(11)の側面の側方向の最大径(L0)よりも小さい径(L1)の位置に配置されているので、ケース外面の接合部(J)が目立たないようにすることができ、意匠性を確保することができる。また、落下等によりケース側面が地面等に接触しても、第1のケース部材(11)における側面は、釦型電池(12)と回路基板(15)の積層方向の中央部が外側に膨らむように丸みを帯びており、また、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)のケース外面の接合部(J)が第1のケース部材(11)の側面の側方向の最大径(L0)よりも小さい径(L1)の位置に配置されているので、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)のケース外面の接合部(J)に直接衝撃が加わりにくく、ケース部材の分離の防止を図ることができる。
【0042】
また、回路基板15の積層方向に延びる係止部11bと係止部10aとが互いに係止し合い、第1のケース部材11と第2のケース部材10とが嵌合しているので、落下等によりケース側面が地面等に接触してケース側方からの衝撃を受けても、係止部11bと係止部10aにより衝撃が緩和され、更に、各ケース部材が分離され難くすることができる。
【0043】
また、第1のケース部材11の側面は、第1のケース部材11の底面および第2のケース部材10よりも肉厚とすることにより、ケースを薄型化しつつ、第1のケース部材11と第2のケース部材10とを分離し難くすることができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0045】
例えば、上記実施形態では、第1のケース部材11と第2のケース部材10のケース外面の接合部Jが、ケース側面とケース裏面との間に配置される構成を示したが、例えば、第1のケース部材11と第2のケース部材10のケース外面の接合部Jが、ケース側面よりもケース裏面側に配置されるように構成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、第1のケース部材11における第1の係止部11bと第2のケース部材10における第2の係止部10aとが互いに係止し合い、第1のケース部材11と第2のケース部材10とが嵌合するように構成したが、例えば、第1のケース部材11の開口縁部と、第2のケース部材10の周縁部に、それぞれネジ山を形成し、第2のケース部材10を第1のケース部材11にネジ締めして第1のケース部材11と第2のケース部材10とを固定して、第1のケース部材11と第2のケース部材10とを分離し難くするようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、ケース表面から見た形状が円形となっているが、必ずしも円形でなくてもよく、例えば、三角形、四角形等の多角形となるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 携帯型送信機
10 第1のケース部材
11 第2のケース部材
12 釦型電池
13 Oリング
14 ターミナル
15 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釦型電池と、アンテナを配置した回路基板とを積層するようにケース内に収納して構成され、前記釦型電池を電源として前記アンテナより送信電波を送信する携帯型送信機であって、
前記ケースは、底面および側面を有する第1のケース部材(11)と、当該第1のケース部材(11)の開口部を覆う第2のケース部材(10)により構成されており、
前記第1のケース部材(11)における側面は、前記釦型電池(12)と前記回路基板(15)の積層方向の中央部が外側に膨らむように丸みを帯びており、
前記第1のケース部材(11)と前記第2のケース部材(10)のケース外面の接合部(J)が、前記第1のケース部材(11)の側面の側方向の最大径(L0)よりも小さい径(L1)の位置に配置されていることを特徴とする携帯型送信機。
【請求項2】
前記第1のケース部材(11)は、前記釦型電池(12)と前記回路基板(15)の積層方向に延びる第1の係止部(11b)を有し、
前記第2のケース部材(10)は、前記釦型電池(12)と前記回路基板(15)の積層方向に延びる第2の係止部(10a)を有し、
前記第1のケース部材(11)における前記第1の係止部(11b)と前記第2のケース部材(10)における前記第2の係止部(10a)とが互いに係止し合い、第1のケース部材(11)と第2のケース部材(10)とが嵌合していることを特徴とする請求項に記載の携帯型送信機。
【請求項3】
前記第1のケース部材(11)の開口縁部と、前記第2のケース部材(10)の周縁部には、それぞれネジ山が形成されており、
前記第2のケース部材(10)を前記第1のケース部材(11)にネジ締めして前記第1のケース部材(11)と前記第2のケース部材(10)とが固定されていることを特徴とする請求項1に記載の携帯型送信機。
【請求項4】
前記第1のケース部材(11)の側面は、前記前記第1のケース部材(11)の底面および前記第2のケース部材(10)よりも肉厚となっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の携帯型送信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−44647(P2012−44647A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132348(P2011−132348)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】