説明

携帯端末装置、携帯端末システム、キャリブレーション方法

【課題】 方位センサのキャリブレーションを正確に行うことができる、携帯端末装置および携帯端末システムを提供する。
【解決手段】 方位センサを有する携帯端末装置1は車内に設置したホルダ3に固定し、カーナビゲーション装置2と通信ケーブル4で接続する。携帯端末装置1はカーナビゲーション装置2で検出した方位情報を受信し、受信した方位情報が90度以上になった時点で方位センサのキャリブレーションを開始する。また、キャリブレーションでは、携帯端末装置1の方位センサで検出した磁場データだけでなく、カーナビゲーション装置2から受信した信頼性の高い方位情報も使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、方位を検出する方位センサを有する携帯端末装置と、自車の車両の進行方向を特定する手段を有するカーナビゲーション装置とから構成される携帯端末システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の携帯端末装置では高機能化が進み、方位を測定するために地磁気を検出する磁気センサを備えたものが開発されている。このように磁気センサを備えた携帯端末装置においては、端末内部を流れる電気信号で発生する磁場の影響等を校正するためにキャリブレーションを行う必要がある。
【0003】
従来のキャリブレーション方法は、携帯電話機をユーザが所定の方向に回転させながら定期的に磁気センサのデータを取り込んで蓄積し、得られたデータから地磁気以外の磁場による影響を算出し取り除くという方法で行われていた。
なお、本出願に関する従来技術の参考文献として、特許文献1ないし特許文献5が知られている。
【特許文献1】特開2003-247833号公報
【特許文献2】特開2000-304559号公報
【特許文献3】特開2000-253438号公報
【特許文献4】特開2002-300640号公報
【特許文献5】特開2002-357652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の上記キャリブレーション方法では、キャリブレーションを実施した後にも磁気センサで検出した方位に大きな誤差が発生するという課題があった。この誤差は、キャリブレーション用に蓄積したデータを用いて方位円の方程式を推定して求めるときに発生し、蓄積したデータの量が少ない程推定の精度が悪くなり、誤差が大きくなる。この方位円の推定誤差を低減するには、サンプリング回数を増やしてデータを多く蓄積する必要があるが、現実にはキャリブレーション用のデータを蓄積するメモリの容量は有限であり、またキャリブレーションの演算に費やすことができる時間も限られている。
【0005】
したがって、限られた時間内に限られたデータを用いて行うキャリブレーションで上述の推定誤差を低減するためには、携帯電話機の磁気センサより精度の高い、外部の方位情報に頼らざるを得ない。しかし、外部の方位情報をキャリブレーションで使用するためには、方位情報の送受信方法だけでなく、どのようなタイミングでキャリブレーションを行うのか、また外部からの方位情報をどのようにキャリブレーションで使用するのか等についても考慮する必要があり、従来技術では上述の課題を解決した例は報告されていない。
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、方位センサのキャリブレーションを正確に行うことができる、携帯端末装置および携帯端末システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、自車の車両の進行方向を特定する方位特定手段を有するカーナビゲーション装置と、方位を検出する方位センサを有する携帯端末装置とから構成される携帯端末システムにおいて、前記カーナビゲーション装置は、前記方位特定手段で検出した方位情報を前記携帯端末装置に送信する送信手段を備えており、前記携帯端末装置は、前記カーナビゲーション装置から前記方位情報を受信する受信手段と、前記方位センサのキャリブレーションを行う校正手段と、前記受信手段で受信した前記方位情報に基づいて前記校正手段の開始を判定する判定手段とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記判定手段が、前記受信した方位情報を蓄積し、一定角度範囲以上の方位情報を蓄積した段階で前記校正手段を開始することを特徴としている。また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記校正手段が、前記方位センサで検出した情報と前記受信手段で受信した前記方位情報とに基づいてキャリブレーションを行うことを特徴としている。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、方位を検出する方位センサを有する携帯端末装置において、他の装置から方位情報を受信する受信手段と、前記方位センサのキャリブレーションを行う校正手段と、前記受信手段で受信した方位情報に基づいて前記校正手段の開始を判定する判定手段とを備えていることを特徴としている。また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記判定手段が、前記受信した方位情報を蓄積し、一定角度範囲以上の方位情報を蓄積した段階で前記校正手段を開始することを特徴としている。また、請求項6に記載の発明は、請求項4または請求項5に記載の発明において、前記校正手段が、前記方位センサで検出した情報と前記受信手段で受信した方位情報とに基づいてキャリブレーションを行うことを特徴としている。
【0009】
また、請求項7に記載の発明は、自車の車両の進行方向を特定する方位特定手段を有するカーナビゲーション装置と、方位を検出する方位センサを有する携帯端末装置とで構成される携帯端末システムで用いる前記方位センサのキャリブレーション方法であって、前記カーナビゲーション装置は、前記方位特定手段で検出した方位情報を前記携帯端末装置に送信する送信ステップを備えており、前記携帯端末装置は、前記カーナビゲーション装置から前記方位情報を受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信した情報に基づいて前記方位センサのキャリブレーション開始を判定する判定ステップとを備えており、前記方位センサで検出した情報と前記受信ステップで受信した前記方位情報とに基づいて前記方位センサの校正を行うことを特徴としている。
【0010】
また、請求項8に記載の発明は、方位を検出する方位センサを有する携帯端末装置で用いる前記方位センサのキャリブレーション方法であって、前記携帯端末装置は、他の装置から方位情報を受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信した方位情報に基づいて前記方位センサのキャリブレーション開始を判定する判定ステップとを備えており、前記方位センサで検出した情報と前記受信ステップで受信した方位情報とに基づいて前記方位センサの校正を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、携帯端末装置とカーナビゲーション装置とを連携させて、携帯端末装置の方位センサのキャリブレーションを行うことができる。携帯端末装置は、カーナビゲーション装置から受信した方位情報に基づいて、適切なタイミングを判断して自動的にキャリブレーションを開始する。また、カーナビゲーション装置の信頼性の高い方位情報を用いて方位円を推定することで、方位センサの上記推定誤差を低減することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について説明する。図1はこの発明の実施形態にかかる、カーナビゲーション装置と携帯電話機(携帯端末装置)とで構成される携帯端末システムを表した外観図であり、図2は携帯電話機1の端末ユニットを開いた状態にしたときの正面図であり、X軸およびY軸は図1、図2の矢印で示す方向に設定する。図1において、カーナビゲーション装置2を搭載する車両にはホルダ3を設け、携帯電話機1はこのホルダ3に固定する。ここで、携帯電話機1は筐体を開いた状態にし、XY平面が水平面と平行になるように、ディスプレイ側を上にして寝かせた状態で固定する。携帯電話機1とカーナビゲーション装置2とは、通信ケーブル4で接続する。図2において、端末ユニット1−1、1−2は携帯電話機1の2つの筐体である。
【0013】
図3はこの発明の実施形態にかかる携帯電話機1の構成を示すブロック図である。図3において、アンテナ101は図示しない無線基地局との間で電波の送受信を行うためのアンテナである。送受信回路102は、アンテナ101が受信する高周波信号を入力して受信データに変換し、制御部103へ出力するものである。さらにこの送受信回路102は、制御部103から入力する送信信号によって高周波のキャリアを変調し、アンテナ101へ出力して送信を行うものである。
【0014】
主制御部103は、携帯電話機1内の各ブロックを制御する制御部である。メインメモリ104は、制御部103で使用するプログラムを保持する。音声処理部105は、制御部103からの音声データを入力してアナログ信号に変換し、スピーカ106へ出力して発音させるものである。さらにこの音声処理部105は、マイクロホン107からの音声信号を入力してデジタル信号に変換し、制御部103へ出力するものである。センサ制御部108は、制御部103からの制御信号を受け、磁気センサ(方位センサ)109による測定結果をデジタルデータに変換し、制御部103へ出力する。ここで、磁気センサ109は、図2に示す互いに直交するX軸・Y軸の2つの軸に対応する2つの磁気センサで構成される。
【0015】
インタフェース回路110は、制御部103からの送信信号を入力しコネクタ111へ出力して送信を行うものである。ここで送信する信号は、図1の通信ケーブル4を通して後述のカーナビゲーション装置2で受信される。さらに、このインタフェース回路110は、コネクタ111からの受信信号を入力し、制御部103へ出力するものである。
【0016】
図4はこの発明の実施形態にかかるカーナビゲーション装置2の概略を示すブロック図である。図4において、GPSアンテナ201は、GPS(Global Positioning System)衛星からの電波信号を受信するためのアンテナである。GPS部202は、GPS衛星から受信した電波信号に基づいてカーナビゲーション装置2の緯度・経度(3次元モードの場合はさらに高度等)で表される位置を算出し、結果を制御部203へ出力するものである。
【0017】
制御部203は、カーナビゲーション装置2の主制御を司る制御部である。メインメモリ204は、制御部203で使用するプログラムを保持する。ドライバ回路205は、制御部203からの制御信号を入力しディスク装置206へ出力するものである。ディスク装置206は、ドライバ回路205からの制御信号を入力し、内部に挿入されたCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)等のディスクもしくは内蔵のハードディスクから地図情報を読み出すものである。
【0018】
インタフェース回路207は制御部203からの送信信号を入力し、コネクタ208へ出力して送信を行うものである。ここで送信する信号は、図1の通信ケーブル4を通して前述の携帯電話機1で受信される。さらに、このインタフェース回路207は、コネクタ208からの受信信号を入力し、制御部203へ出力するものである。
【0019】
次に、上述した実施形態における磁気センサ109のキャリブレーション方法について図5ないし図9を参照して説明する。図5は携帯電話機1の動作を表したフローチャート、図6は図5のステップS107(サブルーチン)の動作を表したフローチャート、図7はカーナビゲーション装置2の動作を表したフローチャート、図8は図7のステップS209(サブルーチン)の動作を表したフローチャートである。
【0020】
図1のように携帯電話機1をホルダ3に固定した後、コネクタ111とカーナビゲーション装置2のコネクタ208とを通信ケーブル4で接続する(図5のステップS101、図7のステップS201)。通信ケーブル4が接続されたことは、以下の方法で自動的に検出する。まず携帯電話機1のコネクタ111に通信ケーブル4が接続されると、携帯電話機1はケーブル接続を認識し、一定の間隔で接続検知用のパルス信号を送信する。通信ケーブル4がコネクタ208にも接続されると、カーナビゲーション装置2はこのパルス信号を受信し、携帯電話機1と通信が可能になったと判断する。パルス信号を受信したカーナビゲーション装置2は、通信が可能になったことを携帯電話機1に知らせるため、接続完了を示す識別信号を送信する。携帯電話機1がこの識別信号を受信すると、カーナビゲーション装置2と通信が可能になったと判断する。
【0021】
携帯電話機1およびカーナビゲーション装置2が互いに相手との接続を検知すると、連動モードに移行する(図5のステップS102、図7のステップS202)。連動モードに移行すると、まず初めに携帯電話機1がホルダ3に固定されて、ぶれていない事を確認する(以下では、ぶれチェックと呼ぶ)。この確認は、携帯電話機1で検出した方位データとカーナビゲーション2で検出した方位データとの方位差を一定時間T秒の間監視し、その方位差の変動が一定値以下になっているかで判断する方法を取る。図5および図7を参照して、ぶれチェックについて説明する。
【0022】
図5において、ぶれチェックでは、まず携帯電話機1が磁気センサ109で検出した磁場データを取得し(ステップS103)、取得した磁場データを方位データに変換しカーナビゲーション装置2に送信する(ステップS104)。この後、携帯電話機1は、予め決められた検出間隔t1の間待機する(ステップS105)。待機している間に、カーナビゲーション装置2から後述のぶれチェック終了通知を受信した場合はキャリブレーションのサブルーチンへと進む(ステップS106:Yes)。終了通知を受信するまでは、ステップS103に戻って磁場データを取得し、以後ステップS103〜ステップS106を繰り返し実行する。
【0023】
一方、図7において、カーナビゲーション装置2は内蔵のタイマーを0にセットし、時間の計測を開始する(ステップS203)。その後、図5のステップS104で送信された方位データを受信すると(ステップS204)、カーナビゲーション装置2でも方位データを取得する(ステップS205)。続いて、携帯電話機1で検出した方位データとカーナビゲーション装置2で検出した方位データとの方位差を算出する(ステップS206)。1度目にステップS206を通るときは、ここで算出した方位差を保存してステップS207に進むが、2度目以降では前回算出した方位差と今回算出した方位差との差を求めて、その差が一定値以内であるかの判定を行う。
【0024】
判定結果が一定値未満であればステップS207へ進み、一定値以上であれば警報を出してステップS204へ戻り、再び携帯電話機1からの方位データを受信するまで待機する(ステップS206:Yes、ステップS211)。ステップS207では、ステップS203でセットしたタイマーの時刻を参照し、T秒以上経過していなければ、ステップS204に戻って方位差の監視を続ける(ステップS207:No)。T秒以上経過していれば、方位差の変動はないと判断し、ぶれチェックを終了する(ステップS207:Yes)。ぶれチェックが終了すると、終了通知を携帯電話機1に送信し(ステップS208)、携帯電話機1、カーナビゲーション装置2ともにキャリブレーションのサブルーチンを実行する(ステップS107、ステップS209)。
【0025】
キャリブレーションのサブルーチンであるステップS107およびステップS209では、携帯電話機1の磁気センサで検出した磁場データとカーナビゲーション装置2で検出した方位データとを蓄積し、90度以上の方位変化を検出した後に、蓄積したデータに基づいて磁気センサの校正を行う。図6および図8を参照して、キャリブレーションの説明をする。
【0026】
図6において、キャリブレーションではまず携帯電話機1において磁気センサ109の検出したX軸、Y軸方向の磁場データ(Hxi、Hyi)を取得する。それと同時に、カーナビゲーション装置2に対して、方位データを取得するように命令を送る(ステップS108)。その後、カーナビゲーション装置2からの方位データθを受信するまで待機する(ステップS109)。方位データを受信すると、(Hxi、Hyi、θ)の3つを同じ時刻に検出したデータとして蓄積保存する(ステップS110)。車両が90度以上回転して、カーナビゲーション装置2から90度以上の角度範囲の方位データを受信するまで、一定時間t2ごとにステップS108〜ステップS112を繰り返し実行してデータを蓄積する。(ステップS111:No)
【0027】
一方、図8において、カーナビゲーション装置2では、携帯電話機1のステップS108から方位データ取得の命令が来るまで待機し、命令が来たと同時に方位データを取得する(ステップS210)。取得した方位データを携帯電話機1に送信すると(ステップS211)、次にキャリブレーションを開始してから車両が90度以上回転したかを判定する(ステップS212)。90度以上回転していなければ、再びステップS210に戻って携帯電話機1からの命令を待ち、以後ステップS210〜ステップS212を繰り返し実行する(ステップS212:No)。キャリブレーション開始後に車両が90度以上回転した場合は、キャリブレーションのサブルーチンを終了する(ステップS212:Yes)。
【0028】
図6に戻って、携帯電話機1が90度以上の角度範囲の方位データを受信すると、磁気センサ109の校正を開始する(ステップS111:Yes)。ここからは、図6、図9を参照して校正の方法を説明する。図9は磁気センサ109で検出した磁場をグラフにしたものであり、縦軸がY軸方向の磁気センサで検出した磁場、横軸がX軸方向の磁気センサで検出した磁場である。図9で、三角の印が磁場の測定データ(Hxi、Hyi)であり、その三角を結んでいる円状の線が測定データを近似した楕円を表し、黒丸が近似した楕円の中心である。以下では、この楕円を方位円と呼ぶ。
【0029】
図6のステップS113では、測定データに対して最尤推定となる方位円の方程式を求める。従来技術では、最尤推定の際に用いるデータは(Hxi、Hyi)のみであり、方位円の楕円方程式
【0030】
【数1】

【0031】
に対して最小二乗誤差を
【0032】
【数2】

【0033】
と定義していた。ここで、aおよびbは楕円方程式の係数、(Hx0、Hy0)は楕円の中心座標、Σは測定した全ての磁場データに関する和である。そして、数2のεを最小にするようにa、b、(Hx0、Hy0)を求めていた。しかし、この方法では、前述のとおり、校正を行った後でも測定した方位が実際の方位とずれるという問題があった。
【0034】
本実施形態では、(Hxi、Hyi、θ)の3つのデータがあり、θはカーナビゲーション装置2で検出した信頼性の高い方位である。θの信頼性が高い理由は、カーナビゲーション装置2がマップマッチングを用いているからである。マップマッチングとは、カーナビゲーション装置2で検出した位置および進行方向を周辺の地図情報と照らし合わせ、車両の走行している道路が特定できた場合に、その道路上を通行するように位置および進行方向を修正することである。マップマッチングにより修正された車両の進行方向は、地図に表示される道路の方向となり、この道路の方向は地図から正確に知ることができる。したがって、カーナビゲーション装置2は車両の進行方向に関して正確な方位情報を持っていることになる。
【0035】
そこで、本実施形態では、(Hxi、Hyi)を数1に示す方程式の係数を用いて変換することで求められる方位θと、カーナビゲーション装置2で検出したθとの差を最小二乗誤差として定義する。すなわち、方位θの表式は
【0036】
【数3】

【0037】
と表され、
【0038】
【数4】

【0039】
を最小二乗誤差と定義し、数4のεを最小にするように楕円率b/a、(Hx0、Hy0)を求める。この方法では、カーナビゲーション装置2で検出した、信頼性の高い方位情報との差が最小になるように方位円を求めるため、従来の方法より正確に推定を行うことができる。
【0040】
方位円の方程式を求めると、次にその方程式の係数に基づいて変換を行う(ステップS114)。携帯電話機1が地磁気以外の磁気の影響を受けていない理想的な場合は、図9の(a)に示すように方位円は真円となる。この場合は、Hx−Hy平面上で原点からの角度θが方位に対応する。ここで、誤差要因として例えば携帯電話機内部の磁場により2つの磁気センサの原点出力電圧がずれた場合、図9の(b)に示すように方位円の中心が原点からずれる。この場合は、中心がずれた量をオフセットとして引き去る。一方、携帯電話機1のX軸、Y軸方向の2つの磁気センサの感度が異なる場合には、図9の(c)に示すように方位円は楕円となる。この場合は、楕円率を用いて真円に変換する真円演算を行う。一般的には、磁気センサは様々な影響を同時に受けるため、図9の(d)に示すように方位円は中心が原点からずれた楕円となり、上記オフセットの引き算と真円演算の両方を行う。ここまでは方位円を楕円と仮定して話を進めてきたが、方位円が真円に近いことが予め分かっている場合には、方位円を真円と仮定して計算を行い、ステップS113,ステップS114の処理を減らすことも可能である。
【0041】
以上、この発明の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本実施形態では携帯電話機1をホルダ3に固定し有線でカーナビゲーション装置2と通信を行っているが、携帯電話機1をホルダ3に固定せず、Bluetooth等既存の無線通信技術を用いて通信を行うことも可能である。また、方向だけでなく高さを検出する方位センサが実装されている場合には、キャリブレーションを開始する契機として、坂道の勾配が一定値以上であるかで判断する形態も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、方位を検出する機能を有する携帯電話等の携帯端末装置に用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明の実施形態にかかる、カーナビゲーション装置と携帯電話機とで構成されるシステムを表した外観図である。
【図2】この発明の実施形態にかかる携帯電話機1の端末ユニットを開いた状態にしたときの正面図である。
【図3】この発明の実施形態にかかる携帯電話機1の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施形態にかかるカーナビゲーション装置2の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施形態にかかる携帯電話機1の動作を示したフローチャートである。
【図6】図5のステップS107(サブルーチン)の動作を示したフローチャートである。
【図7】この発明の実施形態にかかるカーナビゲーション装置2の動作を示したフローチャートである。
【図8】図7のステップS209(サブルーチン)の動作を示したフローチャートである。
【図9】図3における磁気センサ109で検出した磁場データのグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1…携帯電話機(携帯端末装置)、2…カーナビゲーション装置、3…ホルダ、4…通信ケーブル、103…制御部、108…センサ制御部、109…磁気センサ(方位センサ)、110…インタフェース回路、111…コネクタ、201…GPSアンテナ、202…GPS部、203…制御部、205…ドライバ回路、206…ディスク装置、207…インタフェース回路、208…コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の車両の進行方向を特定する方位特定手段を有するカーナビゲーション装置と、方位を検出する方位センサを有する携帯端末装置とから構成される携帯端末システムにおいて、
前記カーナビゲーション装置は、
前記方位特定手段で検出した方位情報を前記携帯端末装置に送信する送信手段を備えており、
前記携帯端末装置は、
前記カーナビゲーション装置から前記方位情報を受信する受信手段と、
前記方位センサのキャリブレーションを行う校正手段と、
前記受信手段で受信した前記方位情報に基づいて前記校正手段の開始を判定する判定手段と、
を備えていることを特徴とする携帯端末システム。
【請求項2】
前記判定手段が、
前記受信した方位情報を蓄積し、一定角度範囲以上の方位情報を蓄積した段階で前記校正手段を開始することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末システム。
【請求項3】
前記校正手段が、
前記方位センサで検出した情報と前記受信手段で受信した前記方位情報とに基づいてキャリブレーションを行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の携帯端末システム。
【請求項4】
方位を検出する方位センサを有する携帯端末装置において、
他の装置から方位情報を受信する受信手段と、
前記方位センサのキャリブレーションを行う校正手段と、
前記受信手段で受信した方位情報に基づいて前記校正手段の開始を判定する判定手段と、
を備えていることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項5】
前記判定手段が、
前記受信した方位情報を蓄積し、一定角度範囲以上の方位情報を蓄積した段階で前記校正手段を開始することを特徴とする請求項4に記載の携帯端末装置。
【請求項6】
前記校正手段が、
前記方位センサで検出した情報と前記受信手段で受信した方位情報とに基づいてキャリブレーションを行うことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の携帯端末装置。
【請求項7】
自車の車両の進行方向を特定する方位特定手段を有するカーナビゲーション装置と、方位を検出する方位センサを有する携帯端末装置とで構成される携帯端末システムで用いる前記方位センサのキャリブレーション方法において、
前記カーナビゲーション装置は、
前記方位特定手段で検出した方位情報を前記携帯端末装置に送信する送信ステップを備えており、
前記携帯端末装置は、
前記カーナビゲーション装置から前記方位情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信した情報に基づいて前記方位センサのキャリブレーション開始を判定する判定ステップとを備えており、
前記方位センサで検出した情報と前記受信ステップで受信した前記方位情報とに基づいて前記方位センサの校正を行うことを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項8】
方位を検出する方位センサを有する携帯端末装置で用いる前記方位センサのキャリブレーション方法において、
前記携帯端末装置は、
他の装置から方位情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信した方位情報に基づいて前記方位センサのキャリブレーション開始を判定する判定ステップとを備えており、
前記方位センサで検出した情報と前記受信ステップで受信した方位情報とに基づいて前記方位センサの校正を行うことを特徴とするキャリブレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−275763(P2006−275763A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95284(P2005−95284)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】