説明

摩擦板の製造方法及び摩擦板

【課題】経時的な摩擦特性の変化を抑制することを可能とする。
【解決手段】相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面7に、起伏9を設けて粗度を調整する摩擦板1の製造方法であって、プレス型材11Aの表面13に、ショット・ピーニングにより起伏21を形成する起伏形成工程3と、起伏21を備えたプレス型11を摩擦板1に押しつけ摩擦面7の起伏9を反転成形する起伏反転工程5とを備え、プレス型11の凸部19の頂部19aは、プレス型11の凹部17の底部17aよりも急峻な形状となり、このプレス型11の表面の押し付けにより摩擦面7に反転成形された起伏9の凸部25の頂部25aは、摩擦面7の凹部23の底部23aよりも緩慢形状にすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の摩擦板の製造方法及び摩擦板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、摩擦板の摩擦面に油膜を形成し易くするために研磨、ショット・ピーニングなどの手段により適切な粗度に調節するもの、切削やプレス形成により周回状の突条を設けるもの等がある。
【0003】
しかし、何れも、摩擦面に鋭利な凸状が形成されるため初期の摩擦係数が極端に高く、経時的な摩耗による摩擦特性の変化が大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−145438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、摩擦面に鋭利な凸状が形成されるため初期の摩擦係数が高く、経時的な摩耗による摩擦特性の変化が大きい点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、経時的な摩擦特性の変化を抑制するために、相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面に、起伏を設けて粗度を調整する摩擦板の製造方法であって、プレス型材の表面に、粒状のショット材のショットにより起伏を形成する起伏形成工程と、前記起伏形成工程で形成された起伏を備えたプレス型を前記摩擦板に押しつけ前記摩擦面の起伏を反転成形する起伏反転工程とを備えたことを摩擦板の製造方法の特徴とする。
【0007】
相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面に、粗度を設定する複数の凹部及び凸部からなる起伏を備えた摩擦板であって、前記凸部の頂部は、前記凹部の底部よりも緩慢形状であることを摩擦板の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面に、起伏を設けて粗度を調整する摩擦板の製造方法であって、プレス型材の表面に、粒状のショット材のショットにより起伏を形成する起伏形成工程と、前記起伏形成工程で形成された起伏を備えたプレス型を前記摩擦板に押しつけ前記摩擦面の起伏を反転成形する起伏反転工程とを備えた。
【0009】
このため、プレス型の凸部の頂部は、プレス型の凹部の底部よりも急峻な形状となり、このプレス型の表面の押し付けにより摩擦面に反転成形された起伏の凸部の頂部は、摩擦面の凹部の底部よりも緩慢形状にすることができる。
【0010】
相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面に、粗度を設定する複数の凹部及び凸部からなる起伏を備えた摩擦板であって、前記凸部の頂部は、前記凹部の底部よりも緩慢形状である。
【0011】
このため、研磨、摩擦面へのショット・ピーニングなどに比較して摩擦面の初期の摩擦係数が極端に高くなる特性を抑え、経時的な摩耗による摩擦特性の変化も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】摩擦板の製造方法を示し、(a)は、起伏形成工程、(b)は、起伏反転工程、(c)は、反転成形後の摩擦板の断面を示す概念図である。(実施例)
【図2】凹凸部のイメージを示し、(a)は、プレス型の表面の起伏を示す斜視図、(b)は、摩擦板の摩擦面の起伏を示す斜視図である。(実施例)
【図3】摩擦板の摩擦面を示し、ショット・ピーニング工程を経たプレス型材により摩擦面へ起伏を反転成形した後窒化処理した3Dスキャン図である。(実施例)
【図4】摩擦板の摩擦面を示し、摩擦面を研磨した3Dスキャン図である。(比較例)
【図5】摩擦板の摩擦面を示し、摩擦面をショット・ピーニング後窒化処理した3Dスキャン図である。(比較例)
【図6】経時的な摩擦係数の変化を示すグラフである。(実施例、比較例)
【図7】電磁摩擦クラッチの断面図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0013】
経時的な摩擦特性の変化を抑制するという目的を、粒状のショット材のショットによるプレス型の起伏を、摩擦板の摩擦面へ押し付けて起伏を反転成形することにより実現した。
【実施例】
【0014】
図1のように、摩擦板1の製造方法は、起伏形成工程3と、起伏反転工程5とを備え、相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面7に、起伏9を設けて粗度を調整する。
【0015】
図1(a)の起伏形成工程3では、図1(b)の摩擦板材の表面7Aをプレスするプレス型材11Aの表面13に、粒状のショット材としての球状のショット材のショットとしてショット・ピーニングを行う。
【0016】
なお、「ショット・ピーニング」は、ショット材をプレス型材11Aに衝突させ、プレス型材11A表面の加工を行う手法の一例を示すものである。したがって、粒状のショット材のショットとしては、「ショット・ブラスト」、「エアー・ブラスト」、「ウェット・ブラスト」などの手法も採用することができる。これらの手法の選択は、摩擦板の形状や用途に対するそれぞれの手法の利点を生かして決定される。
【0017】
また、球状のショット材15を用いるのは、粒状のショット材の中でも粒子形状が安定し、且つ方向性を持たないのでプレス型材11Aに対して均一な表面を形成し易いからであり、例え粒子形状が一定で無くても平均した粒子形状をそろえ易く、又は異なる粒子径のショット材を混合、混在させても、プレス型材11Aの表面が安定して形成されるからである。しかしながら、本発明の技術思想としては、球状のショット材に限られるものではない。
【0018】
前記ショット・ピーニングにより球状のショット材15がプレス型材11Aの表面13に衝突し、図1(b)のように複数の凹部17及び凸部19からなる起伏21をプレス型11に形成する。
【0019】
プレス型材11Aの材質は、例えばハイスピード鋼が用いられている。ショット材15のショット粒径は、直径2mm以下程度にする必要があり、好ましくは10μm〜500μmが適切である。ショット材15のショット材料は、セラミック、金属、硬質ガラス、樹脂、硬質ゴム等が用いられる。
【0020】
プレス型材11Aの材質とショット材料とショット条件との関係をさらに説明する。
【0021】
プレス型材11Aの材質として、例えば、ハイス鋼、ダイス鋼を用いるならば、これ相当、或いはそれ以上の硬さを持つショット材料を用い、凹部17及び凸部19を備えた起伏21を適切に形成することが望ましい。
【0022】
摩擦板1の摩擦面7における凹部23及び凸部25の底部23aから頂部25aまでの寸法を考慮し、かつ凸部25の基部寸法が中間部より狭くなる(すなわち、中間部が膨出形状を成す)ことを防止する必要がある。
【0023】
このため、ショット材15の粒径がプレス型材11Aの表面13に対し静的にみて1/2以上(プレス型材の衝撃変形を考慮して動的にみて2/3以上)埋め込まれないようにショット材の粒子径を考慮しショットの投射速度が設定される。
【0024】
これにはショット材15とプレス型材11Aの相対的な硬さも影響されるし、ショット材15の投射時間や投射量などの諸条件にも影響されることなので、単にショットの投射速度のみに依存するものではない。
【0025】
ショットの投射角については、摩擦板1が摩擦面7の向きに対して直交方向に摺動する場合に、プレス型材11Aの表面に直交する投射角に設定される。
【0026】
なお、摩擦板1が平面を成さない場合や、平面を成しても摩擦板の回転や移動に方向性を持つ場合などには、摩擦板1の機能上の特性に合わせて、プレス型材11Aの表面に対するショットの投射角を適宜設定しても良い。
【0027】
図1(b)の起伏反転工程5では、前記起伏形成工程3により表面に起伏21を備えたプレス型11を摩擦板材1Aの前記表面7Aに押し付けて図1(c)のように起伏9を反転成形して摩擦板1とする。
【0028】
摩擦板1の材質としては、工具鋼材に相当するSK51、SAE1060などが用いられる。
【0029】
かかる反転成形により図1(c)のように、前記摩擦板1の摩擦面7に前記複数の凹部23及び凸部25からなる起伏9が形成される。
【0030】
この図1(c)の摩擦板1には、プレス加工後に、酸窒化や塩浴窒化などの窒化処理、窒化クロム皮膜形成処理、無電解ニッケルメッキ処理、DLC皮膜形成処理などの表面硬化処理を行い、摩擦面7に形成された凹部23及び凸部25の表面形状を保護し、耐久性を向上させているが、表面硬化処理を行わずに母材表面をそのまま用いてもよい。
【0031】
摩擦板1の表面に摺動時の適度なオイルフィルムを確保するには、凸部25の基部直径寸法は、1μm〜500μm以下程度に設定すべきである。好ましくは、凸部25の基部直径寸法を5μm〜100μmにするのが適切である。この摩擦板1を電磁クラッチに用いた場合にも、凸部25を磁束透過部分として有効に機能させることができる。その結果、磁力線の透過断面積を十分に確保し、摩擦力を強化させることができる。
【0032】
図2(a)(b)は、凹凸部のイメージを示し、(a)は、プレス型材の表面の起伏を示す斜視図、(b)は、摩擦板の摩擦面の起伏を示す斜視図である。
【0033】
図2(a)のように、前記図1(a)の起伏形成工程3において、プレス型材11に形成された起伏21の凸部19の頂部19aは、前記ショット材15の外面曲率に習う凹部17の底部17aよりも急峻な形状となる。
【0034】
前記図1(b)の起伏反転工程5において、凹部23は、プレス型材11の急峻な形状の頂部19aを有した凸部19により反転成形されるから図2(b)のように底部23aが急峻な形状となり、逆に凸部25は、プレス型材11の丸みを帯びた緩慢な形状の底部17aを有した凹部17により反転成形されるから頂部25aが丸みを帯びた緩慢な山形の形状となる。
【0035】
図3〜図5は、摩擦板の摩擦面を示し、図3は、ショット・ピーニング工程を経たプレス型材により摩擦面へ起伏を反転成形した後窒化処理した3Dスキャン図(実施例)、図4は、摩擦面を研磨した3Dスキャン図(比較例)、図5は、摩擦面をショット・ピーニング後窒化処理した3Dスキャン図(比較例)である。
【0036】
この3Dスキャン図は、レーザ顕微鏡を用いて測定した。具体的には、レーザで摩擦面の座標を読み取り3D形状に表現する。使用した測定機器は、オリンハ゜ス製のOLS-1200である。
【0037】
図3〜図5の比較のように、起伏形成工程3を経たプレス型材11により起伏9を反転成形した後の摩擦板1の摩擦面7(図3)は、研磨した摩擦板1Aの摩擦面7A(図4)、ショット・ピーニング後の摩擦板1Bの摩擦面7Bに比較して、全体的に緩慢な丸みを帯びた形状の摩擦面となる。
【0038】
図6は、経時的な摩擦係数の変化を示すグラフであり、○は、本発明実施例の摩擦板、●は、研磨による摩擦板である。横軸は時間(T)、縦軸は摩擦係数(μ)を表す。
【0039】
図6のデータを得た実験条件は以下の通りである。
【0040】
供試品:各表面形状を形成した摩擦板
試験方法:各供試品に対して、所定表面形状を備えた相手側の摩擦板を押圧及び回転接触させ、摩擦係数の経時変化を測定する。試験環境:潤滑油中
押し付け力:2400Nm
差動回転数:75rpm(供試品と相手側の摩擦板との相対回転数)
図6のように、本発明実施例の摩擦板1は、研磨による摩擦板等に比較して初期の摩擦係数の落ち込みが大幅に抑制され経時的な摩擦係数の変化が少なく、初期の摩擦係数に近い状況の摩擦係数を維持できるという結果が得られた。
【0041】
図7は、前記摩擦板1が適用される装置の一例として、電磁摩擦クラッチの断面図を示す。
【0042】
この電磁摩擦クラッチ31は、例えば四輪駆動車のファイナル・ドライブ側に配置され、プロペラ・シャフトとドライブ・ピニオン・シャフトとの間に取り付けられる。
【0043】
図7のように、前記電磁摩擦クラッチ1は、クラッチ・ハウジング33とシャフト35とを備えている。
【0044】
前記クラッチ・ハウジング33及びシャフト35間に、メイン・クラッチ37、パイロット・クラッチ39、カム・プレート41、押圧プレート43、アーマチュア45が配置されている。
【0045】
前記メイン・クラッチ37は、複数枚のインナー・プレート47とアウター・プレート49とを備え、両プレート47,49が交互に配置されている。
【0046】
前記図1,図2に示す本発明実施例の起伏9を備えた摩擦板1の構造は、メイン・クラッチ37,パイロット・クラッチ39の何れか又は双方に適用している。メイン・クラッチ37のインナー・プレート47には、摩擦面にペーパー材を貼り付けているが、この場合にも摩擦板1の構造を適用することができ、ペーパー材は、インナー・プレート47の丸みを帯びた凸部25により表面の摩擦特性の安定性と貼り付き状態を安定させることができる。
【0047】
インナー・プレート47は、前記シャフト35にスプライン係合している。アウター・プレート49は、前記クラッチ・ハウジング33にスプライン係合している。メイン・クラッチ37は、押圧プレート43の押圧によって締結され、クラッチ・ハウジング33とシャフト35との間のトルク伝達を行う。前記押圧プレート43は、前記シャフト35にスプライン係合している。
【0048】
前記パイロット・クラッチ39は、前記アーマチュア45とロータ51との間に介在され、複数枚のインナー・プレート40とアウター・プレート42とを備え、両プレートが交互に配置されている。両プレートの一方又は双方は、前記摩擦板1の構造が適用され、図1の方法により同図(c)の起伏9が形成されている。
【0049】
インナー・プレート40は、前記カム・プレート41の外周面にスプライン係合し、アウター・プレート42は、前記クラッチ・ハウジング33にスプライン係合している。
【0050】
前記アーマチュア45は、前記クラッチ・ハウジング33にスプライン係合している。このアーマチュア45は、後述する電磁石の磁力によって引き付けられ、パイロット・クラッチ39を締結するようにロータ51側へ移動可能である。
【0051】
前記カム・プレート41の背面側は、ニードル・ベアリング53を介して、前記ロータ51側に当接する構成となっている。カム・プレート41と押圧プレート43との間には、ボール55を備えたカム機構57が設けられている。
【0052】
前記ロータ51の収容空間部には、電磁石59が配置されている。電磁石59は、電流制御に応じた電磁力を発生するもので、支持体61に固定されている。支持体61は、ベアリング63を介して、前記ロータ51のボス部外周に相対回転自在に支持されている。支持体61は、車体側のブラケット65に回転不能に係合している。電磁石59は、車体側の電源及びコントローラに対してハーネス67を介し電気的に接続されている。
【0053】
そして、電磁石59への通電制御によって、ロータ51、支持体61、アーマチュア45間に磁路が形成される。この場合、パイロット・クラッチ39のインナー・プレート40には複数の深溝のオイル流通溝が形成され、両クラッチ・プレート40,42の表面のオイルの流通及びオイルの排出を行っている。アウター・プレート42には、図1,図2で示す頂部25aが丸みを帯びた緩慢な山形の凸部25(図1)が形成されており、インナー・プレート40の表面と接するからインナー・プレート40とアウター・プレート42との間に初期から空隙ができにくく、磁路を的確に形成することができる。
【0054】
前記磁路の形成によって、アーマチュア45がロータ51側へ引き付けられ、パイロット・クラッチ39が締結されと、カム・プレート41がクラッチ・ハウジング33側に回転方向に係合する。シャフト35側に係合する押圧プレート43がカム・プレート41に対して相対回転し、カム機構57が働いて推力を発生する。
【0055】
この推力は、ニードル・ベアリング53を介して、ロータ51側へ伝達され、その反力として押圧プレート43に作用する。この反力の作用によって、押圧プレート43が移動し、メイン・クラッチ37を締結する。メイン・クラッチ37は、締結力に応じてクラッチ・ハウジング33からシャフト35へトルク伝達を行う。
【0056】
従って、例えばエンジンからのトルクを後輪側へメイン・クラッチ37の締結力に応じて伝達することができる。
【0057】
[実施例の効果]
本発明実施例では、相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面7に、起伏9を設けて粗度を調整する摩擦板1の製造方法であって、プレス型材11Aの表面13に、ショット・ピーニングにより起伏21を形成する起伏形成工程3と、前記起伏21を備えたプレス型11を前記摩擦面7に押しつけ前記摩擦面7の起伏9を反転成形する起伏反転工程5とを備えた。
【0058】
このため、プレス型11にショット・ピーニングにより形成された起伏21の凸部19の頂部19aは、前記凹部17の底部17aよりも急峻な形状となり、このプレス型11により摩擦面7に反転成形された起伏9の凸部25の頂部25aは、凹部23の底部23aよりも丸みを帯びた緩慢形状にすることができる。
【0059】
相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面7に、粗度を設定する複数の凹部23及び凸部25からなる起伏9を備えた摩擦板1であって、前記凸部25の頂部25aは、前記凹部23の底部23aよりも緩慢形状である。
【0060】
このため、研磨、摩擦面へのショット・ピーニングなどに比較して摩擦面7の高い摩擦係数を維持しながら、経時的な摩耗による摩擦特性の変化も抑制することができる。
【0061】
また、摩擦面7は、摺動時に局部摩耗が防止され、摺動特性が安定する。
【0062】
さらに、電磁クラッチに用いた場合には、摩擦面7表面は、隣接して摺動する摩擦板との間で対向面積を増大させることができるので、透過磁束の伝達効率を向上させることができ、吸引力すなわちクラッチの締結力を増大させる(逆に言えば、締結力の減少を抑制させる)ことができる。
【0063】
一方、摩擦板1に表面硬化処理を行う場合、凸部25表面を持つ起伏9は、従来のように鋭利な柱状部ではないので、柱状部の欠け,割れなどの破損、或いは熱変形が防止され、所望の形状を安定して維持することができる。
【0064】
また、プレス型材11に摩擦板1の表面形状の基となる形状をショット形成することにより、プレス型材11表面に硬化層が形成されるので、プレスの型持ち(すなわち耐久性)が向上し、摩擦板1の生産性が向上する。
[その他]
本発明の摩擦板1は、相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面7に、粗度を設定する複数の凹部23及び凸部25からなる起伏9を備えた摩擦板1であって、前記凸部25の頂部25aは、前記凹部23の底部23aよりも緩慢形状であればよく、必ずしも、前記製造方法によるものには限られない。
【0065】
例えば、ショット・ピーニングで形成されるプレス型材11は、平置きの上下移動型、或いはロール形状の回転型を用いることができる。成形は圧力のみに頼ることなく、プレス及び放電による摩擦板表面組織の微小流動を用いて製造することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 摩擦板
1A 摩擦板材
3 起伏形成工程
5 起伏反転工程
7 摩擦面
7A 表面
9 摩擦板の起伏
11 プレス型
11A プレス型材
13 プレス型材の表面
15 ショット材
17 プレス型材の凹部
17a 凹部の底部
19 プレス型材の凸部
19a 凸部の頂部
21 プレス型材の起伏
23 摩擦板の凹部
23a 凹部の底部
25 摩擦板の凸部
25a 凸部の頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面に、起伏を設けて粗度を調整する摩擦板の製造方法であって、
前記摩擦面をプレスするプレス型材の表面に、粒状のショット材のショットにより複数の凹部及び凸部からなる起伏を形成する起伏形成工程と、
前記起伏形成工程で形成された起伏を備えたプレス型材の表面を前記摩擦板に押しつけ前記摩擦面の起伏を反転成形する起伏反転工程と、
を備えたことを特徴とする摩擦板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の摩擦板の製造方法により表面に複数の凹部及び凸部からなる起伏が反転成形された摩擦板。
【請求項3】
相手摩擦面に接触して摩擦係合を行う摩擦面に、粗度を設定する複数の凹部及び凸部からなる起伏を備えた摩擦板であって、
前記凸部の頂部は、前記凹部の底部よりも緩慢形状である、
ことを特徴とする摩擦板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−2088(P2011−2088A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148049(P2009−148049)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000225050)GKNドライブラインジャパン株式会社 (409)
【Fターム(参考)】