説明

撮像装置および画像処理方法

【課題】RGB3バンドによる撮影を行う撮像装置において、解像度を落とさずに簡易な撮影を行うことによって、撮像センサ入射光の分光特性の特徴を検知・弁別することは困難であった。
【解決手段】RGB画素からなる撮像センサ上に、BGバンド間およびRGバンド間波長に分光感度ピークを有する追加バンド画素BG,OGを配置する。そして、該撮像センサによる追加バンドの画素値とRGB各バンドの画素値により、センサ入射光の分光特性における特徴量を取得し、画像処理に適用する。なお、撮像センサにおいて追加バンド画素の画素数はRGBの各画素数よりも極少であるため、撮影解像度は維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体からの入射光をRGBの各バンド画素を備えた撮像センサで受光して撮影画像を取得する撮像装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に被写体光は、光源光そのもの、もしくは光源光と被写体反射率の総合としての分光特性を有する。感光フィルムを用いた銀塩カメラやデジタル画像データを取得するデジタルカメラを問わず、被写体の色を正確に再現するために、その分光特性に依存した光源光情報を把握する技術が広く開発されている。
【0003】
例えば、カメラが存在する環境を測色するセンサを備え、該センサにより判定された光源情報を記録媒体上に記録する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、透過波長域の異なる多種類のフィルタを通した撮影を行うマルチバンドカメラを用いることによって、被写体を分光分布もしくは分光反射率の画像として記録する技術が開示されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、デジタルカメラ等の撮像装置においては、撮影レンズにより発生する色収差が、画像の品質を低下させる要因となっている。この色収差を画像処理によって補正するために、以下のような技術が知られている。例えば、撮影レンズによる色収差が、該レンズの結像面である撮像素子の中心からの像高と入射した光の波長により決まることを利用して、色収差補正を行う技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。また、色収差補正を点像分布関数(PSF)の逆特性を持つフィルタもしくは逆特性PSFを生じるOTF特性を用いて行う技術が開示されている(例えば、特許文献4,5参照)。
【0005】
以上のような色収差補正はより厳密には、撮像センサに入射する光線の分光特性に応じて行う必要がある。そこで、カメラの色温度もしくはホワイトバランス情報に基づいて、色収差補正を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05-197009号公報
【特許文献2】特開2007-278950号公報
【特許文献3】特開平06-292207号公報
【特許文献4】特開昭62-12976号公報
【特許文献5】特開平04-88765号公報
【特許文献6】特開2007-158628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、撮像センサへの入射光は、光源の分光特性と被写体の分光反射率、さらに、発光する被写体の発光分光特性によって決まる。このとき、撮像センサに入射する光線の特徴量把握を、RGB各バンドの画素値、色温度、測色値やホワイトバランス情報に基いて行うと、正確性が確保できないという問題がある。例えば、緑色の人工物と植物を区別し、それぞれに最適な色処理を行いたい場合、それぞれの分光特性の違いに着目する必要がある。しかしながらこのような場合、それぞれのRGB画素値を取得しても、互いの測色値が近い場合には弁別不可能であり、目的の処理を行うことができない。
【0008】
一方、マルチバンドカメラを用いる事で、撮像センサへの入射光の分光特性を推定することは可能である。例えば、モノクローム特性を有するカメラにおいて各バンドのフィルタを切り替えて複数枚数撮影する方法や、または全バンドが単板撮像センサに配置されたカメラを用いる方法が考えられる。しかしながら、前者の場合は撮影が極めて煩雑であり、さらに動く被写体を撮影することができないという問題がある。また後者の場合は、撮影解像度がRGB3バンドカメラに対して低下してしまうという問題がある。
【0009】
また、上述したようなレンズの色収差補正を画像処理によって実現する場合には、隣り合ったバンド(RGおよびBG)間の波長に大きなパワーのピークを持つ入射光線と、RGBの各バンド内に平均的にパワーを持つ入射光線と、を弁別する必要がある。これら入射光線における分光特性の違いを把握できないと、色収差補正が正しく行われないばかりでなく、むしろ悪化させてしまう場合もあった。
【0010】
本発明は上述した問題を解決するためになされたものであり、以下の機能を有する撮像装置および画像処理方法を提供することを目的とする。すなわち、RGB3バンドによる撮影を行う撮像装置において、解像度を落とさずに簡易な撮影を可能とし、同時に入射光の分光特性における特徴量を検出し、該特徴量に応じた適切な画像処理を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための一手段として、本発明の撮像装置は以下の構成を備える。
【0012】
すなわち、RGBの各バンド内にそれぞれ分光感度ピーク波長を有するRバンド画素、Gバンド画素、Bバンド画素からなる基準バンド画素と、RGBの各バンドにおいて隣り合う2つのバンドの分光感度ピーク波長間に分光感度ピーク波長を有する追加バンド画素、が配置された撮像センサを有し、被写体からの入射光を該撮像センサで受光することによって被写体像を撮影する撮像手段と、前記撮像手段で撮影した被写体像における、前記撮像センサの前記基準バンド画素で検出された基準バンド画素値と前記追加バンド画素で検出された追加バンド画素値とを取得する取得手段と、前記基準バンド画素値と前記追加バンド画素値とを解析することによって、前記入射光の分光特性における特徴量を取得する分光解析手段と、前記被写体像に対し前記特徴量に応じた画像処理を行う画像処理手段、を有し、前記撮像センサにおいて、前記追加バンド画素の画素数は、前記Rバンド画素、前記Gバンド画素、前記Bバンド画素のいずれの画素数よりも少ないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上記構成からなる本発明によれば、RGB3バンドによる撮影を行う撮像装置において、解像度を落とさずに簡易な撮影を可能とし、入射光の分光特性における特徴量の検出と、該特徴量に応じた適切な画像処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態におけるRGB画素と追加画素を有する撮像センサの画素配置図、
【図2】第1実施形態の撮像センサにおける各画素の分光感度特性を示す図、
【図3】第1実施形態における撮像装置の構成を示すブロック図、
【図4】第1実施形態における分光解析部の詳細構成を示す図、
【図5】第2実施形態における色収差補正処理を示すフローチャート、
【図6】第2実施形態における基本的な色収差補正処理を説明する図、
【図7】第2実施形態における輝線を含む光源に対する色収差補正結果を示す図、
【図8】第2実施形態における輝線を含まない光源に対する色収差補正結果を示す図、である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に関る本発明を限定するものではなく、また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0016】
<第1実施形態>
本実施形態を説明するに先立ち、まず本実施形態の特徴である撮像センサにおける画素配置について説明する。
【0017】
●撮像センサの画素配置
本実施形態の撮像装置においては、Rバンド画素、Gバンド画素、Bバンド画素を基準バンド画素として有する撮像センサ上に、隣り合う2バンド(RG,BG)の分光感度ピーク波長間に分光感度ピークを有する追加バンド画素を配置する。そして、該追加バンド画素によって検出された追加バンド画素値と、RGBの各基準バンド画素によって検出された基準バンド画素値とに基づき、撮像センサへの入射光における分光特性上の特徴量を取得することを特徴とする。
【0018】
図1に、本実施形態における撮像センサの画素配置の一部を示す。その基本的な配列は、RGB3つのそれぞれが異なる感度特性を持つ画素をベイヤー配置したものである。図1において、1はGバンド内に分光感度ピークを有するGバンド画素(G画素)であり、同様に2はBバンド画素(B画素)、3はRバンド画素(R画素)、の配置位置を示している。これらはベイヤー配列となっているため、左上の4画素のように、G画素2画素に対して、B画素R画素がそれぞれ1画素配置される。そして、4はBGバンド間、すなわちBバンドおよびGバンドの分光感度ピーク波長間(Blue Green相当)に分光感度ピークを有する第1の追加バンド画素であり、以下、BG画素と称する。また、5はRGバンド間、すなわちRバンドおよびGバンドの分光感度ピーク波長間(Orange相当)に分光感度ピークを有する第2の追加バンド画素であり、以下、OG画素と称する。このBG画素とOG画素は、ベイヤー配置におけるG画素位置に、RGBの各画素数よりも少ない数がまばらに配置される。
【0019】
本実施形態においては、詳細は後述するが、これら追加バンド画素の信号を画像信号から取り除いた後に、周囲のG画素によって補間して再び画像信号に加える、すなわち追加バンド画素を置換する必要がある。例えば図1に示す配列の場合、BG画素4に対する置換は、G1〜G4で示す周囲の4画素のデータ平均によって行われる。また、G画素の変化方向に従って、G1とG4の平均またはG2とG3の平均から、置換対象となる値を選択しても良い。このように、追加バンド画素の信号は最終的に画像信号から取り除かれるため、撮像解像度に影響がある。そのため、撮像センサにおける追加バンド画素の配置頻度は、総画素数の0.1%以下程度であることが望ましい。
【0020】
ここで図2に、図1で示した撮像センサにおける、各バンドの相対的な分光感度特性を示す。図2において、10はG画素の分光感度特性、20はB画素の分光感度特性、30はR画素の分光感度特性をそれぞれ示す。また、40、50はそれぞれBG画素、OG画素の分光感度特性を示す。図2によれば、BG画素の分光感度ピーク波長はG画素とB画素の分光感度ピークの間に設けられ、OG画素の分光感度ピークはG画素とB画素の分光感度ピークの間に設けられていることが分かる。
【0021】
●装置構成
図3に、本実施形態における撮像装置の構成を示す。同図において、101は被写体の光量を検知する撮像部であり、撮像レンズ102、絞り103、シャッター104、CMOSやCCD等の撮像センサ105、からなる。撮像センサ105は、上記図1,図2を用いて説明したように構成され、撮像部101では被写体からの入射光を撮像レンズ102、絞り103、シャッター104を介して撮像センサ105で受光することによって被写体像を撮影する。
【0022】
106はA/D変換部であり、撮像センサ105の各画素に入射した光量に応じて発生するアナログ信号をデジタル値に変換する。107は分光解析部であり、その詳細については後述する。108は画像処理部であり、上記デジタル値に対してデモザイキング処理、ホワイトバランス処理、ガンマ処理等の画像処理を施し、デジタル画像を生成する。ここでの画像処理は、分光解析部107の解析結果に基づいて行うことができる。109はメディアインターフェースであり、PCやその他のメディア(例えば、ハードディスク、メモリーカード、CFカード、SDカード、USBメモリ等)に接続し、デジタル画像を該メディアへ送出する。
【0023】
110はCPUであり、本実施形態の撮像装置の各構成における処理全てに関わり、ROM111やRAM112に格納された命令を順次読み込んで解釈し、その結果に従って各処理を実行する。ROM111とRAM112は、それらの処理に必要なプログラム、データ、作業領域等をCPU110に提供する。113は撮像系制御部であり、CPU110の指示に基いて、フォーカス、シャッター、絞り等の撮像系の制御を行う。114は操作部であり、ボタンやモードダイヤルなどが該当し、これらを介して入力されたユーザ指示を受け取る。
【0024】
なお、本実施形態の撮像装置におけるデジタル画像の撮像処理に関しては、通常のデジタルカメラにおける撮像と何ら変わるところが無いため、ここでは説明を省略する。
【0025】
●分光特性推定処理
本実施形態の撮像装置においては、撮像センサ105のRGB画素により3バンドのデジタル画像を獲得するが、同時にRGB画素とGB、OGの追加バンド画素を利用して、撮像センサ105への入射光における分光特性を推定することを特徴とする。
【0026】
図4は、図3に示した構成において、特に分光特性の推定に関連した部分を抜き出し、それらの関係を示した図である。同図において、撮像部101、A/D変換部106、分光解析部107、ROM111、RAM112については、上記図3と同じ番号で示してある。ROM111内において、115は推定行列保持部であり、R,G,BおよびBG,OGの5バンドの画像データを分光特性に変換するために予め作成された推定行列を保持している。RAM112内において、116は、撮像センサ105のRGB画素で検出されたRGB画素値を記憶するRGB画素値記憶部である。117は、撮像センサ105のRB,OGの各追加バンド画素で検出された追加バンド画素値を記憶する追加バンド画素値記憶部である。118は、本実施形態で推定された分光特性データを記憶する分光画像データ記憶部である。
【0027】
本実施形態においては、撮像センサ105に追加バンド画素は非常にまばらにしか存在しないため、以下のような処理によって、分光特性を推定する。まず、分光推定を行う処理単位として、少なくとも1つのBG画素と1つのOG画素を含む領域に着目する。例えば図1においては、これら追加バンド画素を1つずつ含む領域6が、該処理単位領域に相当する。そして、この処理単位領域内で読み取られたRGB、BG、OGの各バンドの平均値のそれぞれを、当該領域におけるRGB画素値、および追加バンド画素値として、上記RGB画素値記憶部116および追加バンド画素値記憶部117に記憶する。
【0028】
すると分光解析部107においては、以上のように記憶されたRGB画素値および追加バンド画素値に基づき、推定行列記憶部115に記憶された推定行列を用いて、当該処理単位領域における中央座標の画素に対する分光特性を推定する。このように、推定された分光特性を処理単位領域の中央座標にしたがって配置することにより、撮像されたRGBデジタル画像に対応する分光特性画像が得られる。この分光特性画像は、分光画像データ記憶部118に記憶される。
【0029】
なお、分光解析部107における分光特性推定方法としては既知の手法が適用可能であり、例えばウィーナー推定法を用いることができる。この場合、推定行列は、入力バンド数である5次元を、分光データの次元数、例えば380nmから730nmのスペクトル情報を10nmごとに記録する36次元に変換する。これにより、36次元データからなる分光特性画像が得られる。
【0030】
以上説明したように本実施形態によれば、撮像センサ上にRGバンド間およびBGバンド間波長に感度ピークを有する追加バンド画素を配置し、これらの画素値とRGBの各画素値に基づき、撮像センサ入射光の分光特性を推定することができる。したがって、人間の肌と同色に見える肌色の塗料等、RGBデジタルデータのみでは分別できない画像を、分光特性に基づいて適切に分別することが可能となり、後段の画像処理部108において適切な画像処理を施すことができる。さらに、被写体の光源情報も分光特性に基いて取得できるため、撮像画像に対して高度なホワイトバランス処理を行うことも可能となる。
【0031】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態の撮像装置における撮像センサを含む構成は、上述した第1実施形態の図1〜図3と同様であるため説明を省略するが、分光解析部107における処理が第1実施形態とは異なる。第2実施形態においては、分光解析部107で分光特性を解析し、該解析結果にしたがって、撮像レンズ102の色収差による画像劣化を除去することを特徴とする。
【0032】
●基本的な色収差補正方法
ここで図6を用いて、第2実施形態における基本的な色収差補正方法としての、第1の色収差補正処理について説明する。
【0033】
一般に、Gバンドにおける基本波長530nmで色ずれが発生しない、すなわち色ずれ量を0としたとき、Bバンドの波長460nm及びRバンドの波長620nmでは色ずれが発生する。例えば図6に、画面中心を(0,0)とした場合の点P(x,y)における、Gバンドに対するBバンドの波長の色ずれ距離Sを示す。すなわち、撮像レンズ102を透過する画像に対し、このSに相当するずれ量だけ、Bバンドの画像を拡大(もしくは縮小)してGバンドに重ねることにより、両者の間の色収差によるずれが補正される。なお、RバンドとGバンドの間についても同様のずれ補正がなされる。
【0034】
しかしながら、光源の色温度により、最適なずらし量は変化することが知られている。例えば高色温度の光源では、標準色温度の光源と比較して分光特性が短波長側にシフトするため、色ずれ量は青側で増加し、赤側で減少する。逆に、低色温度光源では分光特性が長波長側にシフトするため、色ずれ量は青側で減少し、赤側で増加する。このように、色ずれ量は光源の色温度により変化する。
【0035】
第2実施形態ではこのような色温度による色ずれ量の変化に対応するために、図6に示すように、色ずれ距離Sに対して光源色温度に応じた色温度補正係数kを乗じることによって、光源の色温度を加味した色収差補正量kSを得る。ここで色温度補正係数kは、光源の色温度ごとに予め求めておいた係数であり、例えばカラーフィルタの分光特性と光源の分光特性とから容易に算出することが可能である。
【0036】
ここで、撮像素子の水平画素ピッチをpH、垂直画素ピッチをpVとし、水平色ずれ画素数をdx、垂直色ずれ画素数をdyとすると、任意の点Pでは以下の関係が成り立つ。なお、撮像素子の1画素未満である色ずれについては補正しないため、小数点以下については切り捨て等の丸め処理を行えば良い。
【0037】
dx=kScosθ/pH
dy=kSsinθ/pV
図6に示す例では、dx=2及びdy=2となるので、Bバンドについて垂直方向及び水平方向のいずれにおいても2画素分の補正を行うことにより、Gバンドに対する色収差が補正される。なお、色温度係数kは、像高又は光学特性(焦点距離及び合焦位置等)に応じて変化させても良い。
【0038】
以上が、第2実施形態における第1の色収差補正処理である。なお、第2実施形態における第1の色収差補正方法は図6に示す第1の色収差補正処理に限らず、撮像レンズの特性に基づいて実空間上で画像を回復するフィルタを生成し、これを用いて画像を回復する手法を用いても良い。この場合の撮像レンズの特性としては、Point Spread Function(PSF)、またはOptical Transfer Function(OTF)、等が考えられる。
【0039】
●色収差補正処理
以下、第2実施形態における色収差補正の全体処理について、図5のフローチャートを用いて詳細に説明する。第2実施形態では画像処理部108において、分光解析部107で解析された分光特性にしたがって、撮像レンズ102の色収差による画像劣化を除去する色収差補正の強度を変更する。
【0040】
まず分光解析部107において、S201〜S203の処理を行う。S201では、所定の処理対象領域について、RGB画素と、GB,OG画素の全画素値を画像Iとして取得する。そしてS202で、画像IにおけるRGB全画素値の平均値に基づき、RGB画素置とGB、OG画素値の比較を行うための閾値を設定する。例えば、該算出したRGB全画素値の平均値をそのまま閾値とすれば良い。
【0041】
そしてS203で、画像IにおけるGB画素値の平均とOG画素値の平均を、それぞれ所定の閾値と比較する。それらのいずれもが閾値よりも小さい場合には、画像IにおいてGB,OGの追加バンドには輝度ピークが存在しないと判断し、S204に進む。S204では画像処理部108において、画像Iに対して上記図6で説明した第1の色収差補正方法による収差補正を行い、S206に進む。なお、分光解析部107におけるS203の比較結果は、例えばRAM112内の色収差補正/非補正を示す所定のフラグにセットして画像処理部108から参照可能なようにしておけば良い。
【0042】
一方、S203において、画像IにおけるGB画素の平均とOG画素の平均値の少なくともいずれかが閾値以上である場合には、画像Iにおいて該閾値以上であるGB,OGの追加バンドに輝度ピークが存在すると判断し、S205に進む。S205では画像処理部108において画像Iに対し、S204の第1の色収差補正方法とは異なる、第2の色収差補正方法による収差補正処理(第2の色収差補正処理)を行う。これは、たとえ色温度の等しい光源であっても、撮像センサ105に入射する光線の分光特性が輝線を含んでいる、すなわち追加バンド内に離散的な輝度ピークが存在している場合には、第1の色収差補正方法では十分な補正が行えないためである。
【0043】
S205ではすなわち、S203での比較結果に応じて、BG画素が閾値以上であればBバンドについては収差補正を行わず(収差補正の無効化)、それ以外のバンド(R)の収差補正を行う。同様に、OG画素が閾値以上であればRバンドについては収差補正を行わず、それ以外のバンド(B)の収差補正を行う。なお、BG,OG画素が両者共に閾値以上であれば、B,Rバンドのいずれについても収差補正を行わない。このS205における色収差補正処理は、上記図6の説明で用いた色温度補正係数k=0とするのと同等である。なお、この色温度補正係数kを必ずしも0とせず、1よりも小さい値に設定して、対応するバンドの補正量を抑制しても良い。
【0044】
そしてS206において、画像処理部108は処理済みの画像IをメディアI/F109に送り、処理を終了する。
【0045】
●色収差補正結果
ここで、第2実施形態における輝線を含む光源に対する処理結果を図7に示し、説明する。図7(a)は光源の分光特性を示しており、具体的には普通型蛍光灯(電灯光)の実測値である。この分光特性においては、図中丸で囲んで示すように、GバンドとRバンドの中間波長に、輝線による大きなピークを持っていることが特徴的であり、このピーク位置は、図2に示すOG画素の分光感度特性50のピーク位置に相当している。このピーク部は単一色に近いため、撮像レンズ102では色収差は発生しない。したがって、該ピーク部に対応するGバンドとRバンド間での色収差補正は不要である。第2実施形態ではこのピーク部がOGバンドとして検出されるため、上記S205において、Rバンドの収差補正が無効化される。
【0046】
図7(b)〜(d)は、白地に黒の細線をもつチャートの撮影画像およびその色収差補正結果を示しており、各図とも、縦方向をレンズの放射方向に、横方向を同心方向に、それぞれ一致させてある。
【0047】
図7(b)は補正を行わない場合、すなわち補正前の撮影画像例であり、撮像レンズ102の色収差により、赤の色にじみ701と、緑の色にじみ702が生じた様子を示している。図7(c)は、図7(b)の画像に対し、上記S205による第2の色収差補正処理でなく、上記S204における第1の色収差補正処理(この場合、一般的なD65光源データに基づく色収差補正)を行った結果である。図7(c)においては、Rバンドの補正量が不適切であることから、緑の色にじみ703と赤の色にじみ704が生じてしまい、図7(b)の画像に対して色にじみの方向が逆転した様子を示している。
【0048】
図7(d)は、図7(b)の画像に対し、上記S205の第2の色収差補正処理を行った結果であり、この場合Rバンドの色収差補正が無効になっているため、色を伴ったにじみが生じていない様子を示している。
【0049】
次に、第2実施形態における輝線を含まない光源に対する処理結果を図8に示し、説明する。図8(a)は光源の分光特性を示しており、具体的にはD65光源の実測値であり、輝線が含まれていない。
【0050】
図8(b)〜(d)は、黒地に白の矩形部をもつチャートの撮影画像およびその色収差補正結果を示しており、各図とも図7と同様に、縦方向がレンズの放射方向、横方向が同心方向を示す。
【0051】
図8(b)は補正を行わない場合、すなわち補正前の撮影画像例であり、撮像レンズ102の色収差により、緑の色にじみ801と、赤の色にじみ802が生じた様子を示している。図8(c)は、図8(b)の画像に対し、上記S204による第1の色収差補正処理(D65光源データに基づく色収差補正)を行った結果であり、色を伴ったにじみが生じていない様子を示している。
【0052】
なお、図8(d)は、この輝線を含まない光源による図8(b)の画像に対し、仮に上記図7(d)と同様に、S205の第2の色収差補正処理によってRバンドの色収差補正を無効とした場合の色収差補正結果を示す。図8(d)によれば、図8(b)に対して多少は改善されるものの、依然として緑の色にじみ803と、赤の色にじみ804が生じている様子が示されている。
【0053】
以上、図7および図8の例からも分かるように、第2実施形態では光源が輝線を含んでいるか否かに応じて、色収差補正処理の強度を切り替えることによって、いずれの光源に対しても色にじみを抑えた適切な補正結果を得ることが可能となる。
【0054】
以上説明したように第2実施形態によれば、撮影画像の分光特性に基づいて、撮像レンズ102の色収差を適切に補正することができる。
【0055】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGBの各バンド内にそれぞれ分光感度ピーク波長を有するRバンド画素、Gバンド画素、Bバンド画素からなる基準バンド画素と、RGBの各バンドにおいて隣り合う2つのバンドの分光感度ピーク波長間に分光感度ピーク波長を有する追加バンド画素、が配置された撮像センサを有し、被写体からの入射光を該撮像センサで受光することによって被写体像を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段で撮影した被写体像における、前記撮像センサの前記基準バンド画素で検出された基準バンド画素値と前記追加バンド画素で検出された追加バンド画素値とを取得する取得手段と、
前記基準バンド画素値と前記追加バンド画素値とを解析することによって、前記入射光の分光特性における特徴量を取得する分光解析手段と、
前記被写体像に対し前記特徴量に応じた画像処理を行う画像処理手段、を有し、
前記撮像センサにおいて、前記追加バンド画素の画素数は、前記Rバンド画素、前記Gバンド画素、前記Bバンド画素のいずれの画素数よりも少ないことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記追加バンド画素の画素数は、前記撮像センサにおける総画素数の0.1%以下であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記追加バンド画素は、ベイヤー配列をなす前記基準バンド画素における前記Gバンド画素の位置に配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記分光解析手段は、前記追加バンド画素値を前記基準バンド画素値と比較した結果を前記特徴量として取得し、
前記画像処理手段は、前記撮像手段で用いられる撮像レンズによる色収差補正の強度を前記特徴量に応じて変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記分光解析手段は、前記追加バンド画素値を前記基準バンド画素値に応じて設定した閾値と比較した結果を前記特徴量として取得し、
前記画像処理手段は、前記特徴量が、前記追加バンド画素値が前記閾値よりも小さいことを示す場合には第1の色収差補正処理を行い、前記追加バンド画素値が前記閾値以上であることを示す場合には、前記第1の色収差補正処理において、前記追加バンド画素に対応するとして予め定められたRGBのいずれかのバンドについての色収差補正処理を無効とする第2の色収差補正処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記追加バンド画素は、RバンドとGバンドの間に分光感度ピーク波長を有する第1の追加バンド画素と、BバンドとGバンドの間に分光感度ピーク波長を有する第2の追加バンド画素と、の少なくとも一方からなり、
前記第2の色収差補正処理においては、前記第1の追加バンド画素に対する追加バンド画素値が前記閾値以上である場合には前記第1の色収差補正処理においてRバンドに対する色収差補正を無効とし、前記第2の追加バンド画素に対する追加バンド画素値が前記閾値以上である場合には前記第1の色収差補正においてBバンドに対する色収差補正を無効とすることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記分光解析手段は、予め作成された推定行列に対し、前記基準バンド画素値と前記追加バンド画素値を入力することで推定される分光特性を、前記特徴量として取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記追加バンド画素は、RバンドとGバンドの間に分光感度ピーク波長を有する第1の追加バンド画素と、BバンドとGバンドの間に分光感度ピーク波長を有する第2の追加バンド画素と、の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項または請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
RGBの各バンド内にそれぞれ分光感度ピーク波長を有するRバンド画素、Gバンド画素、Bバンド画素からなる基準バンド画素と、RGBの各バンドにおいて隣り合う2つのバンドの分光感度ピーク波長間に分光感度ピーク波長を有する追加バンド画素とが、該追加バンド画素の画素数が、前記Rバンド画素、前記Gバンド画素、前記Bバンド画素のいずれの画素数よりも少なくなるように配置された撮像センサを有し、被写体からの入射光を該撮像センサで受光することによって被写体像を撮影する撮像装置における画像処理方法であって、
該撮像装置で撮影した被写体像における、前記撮像センサの前記基準バンド画素で検出された基準バンド画素値と前記追加バンド画素で検出された追加バンド画素値とを取得する取得ステップと、
前記基準バンド画素値と前記追加バンド画素値とを解析することによって、前記入射光の分光特性における特徴量を取得する分光解析ステップと、
前記被写体像に対し前記特徴量に応じた画像処理を行う画像処理ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
撮像装置が備えるコンピュータに、請求項9に記載の画像処理方法の各ステップを実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−109620(P2011−109620A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265533(P2009−265533)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】