説明

撮像装置及び撮像方法

【課題】複数の人物を撮影する際に、主被写体を特定してカメラ制御を行うことができるようにする。
【解決手段】主被写体認識部108により、検出された人物の表情の変化量(特徴ベクトル)を算出し、表情の変化量が最も大きい人物を主被写体と特定する。もしくは、検出された人物の表情の変化量及び動作の変化量を算出し、重み付けに従って、表情及び動作の変化量が最も大きい人物を主被写体と特定するようにして、複数の人物を撮影する際に、撮影者が撮影状況を十分に把握していない場合でも、特定した主被写体を基準にしてカメラ制御を行うことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置、撮像方法、プログラム及び記録媒体に関し、特に、顔検出機能を用いて撮影を行うために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
顔画像の自動認識は、建物への入退出を監視したり、銀行のATM(Automated Teller Machine)などで個人認識を行ったりするために応用されている。さらに、マンマシンインタフェイスや、ロボットとの対話、ビデオ画像の検索のためのキーとして利用されるなど、様々な分野で応用され、盛んに研究されている。実環境下で顔画像の自動認識をロバストに行うことは難しい課題であるが、ある程度制限された環境下では高い認識率が得られることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。一方、撮像装置に顔検出機能を搭載し、顔検出の結果に応じて主被写体を特定し、より安定したカメラ制御を行う撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−189325号公報
【特許文献2】特開2002−251380号公報
【特許文献3】特開2005−293539号公報
【非特許文献1】M.turk and A.Pentland "Eigenface for recognition," Journal of Cognitive Neuroscience, Vol.3, No.1, pp.71-86(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の撮像装置では、複数の人物がシーンの中に存在する場合に主被写体を特定してカメラ制御を行うことが困難である。例えば、パーティ会場などにおいて、様々な人のグループの集まりを撮影する場合、撮影者は様々なグループを順番に撮影する場合がある。撮影者は、必ずしも全てのグループの会話の文脈(コンテクスト)を理解しているわけではなく、雰囲気を壊さないよう気を遣って撮影対象とは距離をおいて撮影していることが多い。このため、どの人物がグループの会話の中心となって盛り上がっているか撮影を開始した直後に理解することは難しい。
【0005】
本発明は前述の問題点に鑑み、複数の人物を撮影する際に、主被写体を特定してカメラ制御を行うことができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像手段と、前記撮像手段による撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定手段と、前記特定手段によって特定された主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
また、本発明の撮像装置の他の特徴とするところは、複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像手段と、前記撮像手段による撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量または動作の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定手段と、前記特定手段によって特定された主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
また、本発明の撮像装置のその他の特徴とするところは、複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像手段と、前記撮像手段による撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量の重み付けを行う重み付け手段と、前記重み付け手段によって重み付けされた条件に従って、前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量に基づいて主被写体を特定する特定手段と、前記特定手段によって特定された主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の撮像方法は、複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定工程と、前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の撮像方法の他の特徴とするところは、複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量または動作の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定工程と、前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の撮像方法のその他の特徴とするところは、複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量の重み付けを行う重み付け工程と、前記重み付け工程において重み付けされた条件に従って、前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量に基づいて主被写体を特定する特定工程と、前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のプログラムは、複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定工程と、前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明のプログラムの他の特徴とするところは、複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量または動作の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定工程と、前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
また、本発明のプログラムのその他の特徴とするところは、複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量の重み付けを行う重み付け工程と、前記重み付け工程において重み付けされた条件に従って、前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量に基づいて主被写体を特定する特定工程と、前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
本発明の記録媒体は、前記の何れかに記載のプログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の人物を撮影する際に、撮影者が撮影状況を十分に把握していない場合でも、主被写体を特定し、特定した主被写体を基準にしてカメラ制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述する。
まず、本実施形態に係る撮像装置の構成及び動作について図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る撮像装置の構成例を示すブロック図である。
図1において、レンズ101及び絞り102を介した光は、撮像素子103の結像面上に被写体像として結像される。撮像素子103は、光電変換機能を有する素子であり、結像された光学像に応じた電荷を電気信号(アナログ信号)に変換する。
【0012】
A/D変換回路104は、撮像素子103に接続されており、撮像素子103から電気信号(アナログ信号)を入力する。そして、A/D変換回路104は、アナログ信号をデジタルデータ(デジタル信号)に変換する。
【0013】
カメラ信号処理部105は、A/D変換回路104、CPU106及びコーデック部112に接続されている。カメラ信号処理部105は、デジタルデータをA/D変換回路104から入力し、CPU106から受け取った制御信号に基づき、デジタルデータの信号処理を行う。コーデック部112は、カメラ信号処理部105において信号処理された画像データの圧縮・符号化を行い、記憶部114に記憶する。また、信号処理された画像信号を表示部113に表示させる。なお、記憶部114は、着脱可能なメモリカードや、内蔵のハードディスクなどである。
【0014】
顔検出回路107は、シーンにおいて人物の顔を検出し、被写体の人数と顔領域とを特定するためのものである。なお、顔検出については公知の顔検出方法を用いる。顔検出の公知技術としては、顔に関する知識(肌色情報、目・鼻・口などのパーツ)を利用する方法や、ニューラルネットに代表される学習アルゴリズムにより顔検出を行うための識別器を構成する方法などがある。そして、認識率を向上させるためにこれらの方法を組み合わせて顔認識を行うのが一般的である。具体的には、例えば、特許文献2に記載のウェーブレット変換と画像特徴量とを利用して顔検出する方法などが挙げられる。また、顔検出を行う際に、画面を横切る人物及び背後の群衆や単なる通行人といったエキストラを顔検出の対象から除くようにしてもよい。
【0015】
主被写体認識部108は、顔検出回路107で得られたシーンにおける複数の被写体の中から、主被写体である人物を特定するためのものであり、表情変化量測定部109と優先順位決定部110とから構成されている。
【0016】
表情変化量測定部109は、表情の検出を行い、検出結果に基づいて一定の撮影時間の経過に応じた複数の被写体の表情の変化量を測定する。コンピュータビジョンの分野では顔の表情の認識や表情の変化量に着目した研究が古くから行われている。特に、表情の変化量の定量的記述に関しては、Ekmanらの顔動作記述法(FACS:Facial Action Coding System)が有名である。
【0017】
このFACSでは、顔の筋肉の動きを44種の標準動作単位(AU:Action unit)に分割し、その組み合わせにより任意の顔表情の定量的記述を可能にしている。顔の表情の変化量を測定するときにFACSを用いる場合、顔の動き検出に3次元計測が必要となってしまうため、2次元の顔の動画像から特徴点抽出を行う手法が一般的である。
【0018】
図5は、表情変化量測定部109の詳細な構成例を示すブロック図である。
図5において、表情変化量測定部109は、顔器官抽出部501と、顔器官特徴点抽出部502と、特徴点変化量測定部503とを備えている。顔器官抽出部501では、顔検出回路107において検出された画像情報を元に、顔の中でも表情を表すのに最も重要な役割を果たす、眉、目、口の3つの器官を抽出する。なお、眉、目、口の検出は、色情報や形状情報を用いて行う。
【0019】
次に、顔器官特徴点抽出部502は、顔器官抽出部501において検出された眉、目、口の3つの器官に対して特徴点をプロットする。特徴点をプロットした例を図6に示す。特徴点変化量測定部503は、表情変化を表す特徴量関数を予め用意しておき、顔器官特徴点抽出部502において得られた各特徴点を用いて、特徴点と特徴点との変化量を測定し、表情の変化量(特徴ベクトル)を測定する。
【0020】
ここで、特徴ベクトルを測定する場合には、表情による位置の変化がほとんどない両眼両端の端点である特徴点P11、P13、P15、P17の平均値を基準とする。例えば、表情変化を表す特徴量関数としてP1とP11との差分を特徴量関数V1として設定し、このような特徴量関数を用いて表情の変化量(特徴ベクトル)を測定する。
【0021】
また、例えば特許文献3に記載の公知の表情検出技術などを用いて、目、眉、口の形状情報を検出する際に、顔領域にLPF(ローパスフィルタ)を施すなどし、顔の構成要素の形状情報である特定周波成分を抽出してもよい。そして、表情の検出が行われた後に、一定時間の検出結果の差分を表情の変化量(特徴ベクトル)として算出する方法を用いてもよい。例えば、映像撮影中の各フレームのフレーム間の差分量を表情の変化量として用いてもよい。
【0022】
優先順位決定部110は特定手段として機能し、表情変化量測定部109において得られた全被写体の各々の変化量をもとに、変化量の大きいものから優先順位をつけ、最大の変化量を持つ被写体を主被写体として特定する。
【0023】
測距・測光・測色枠検出部111は、カメラ信号処理部105から出力された画像データに対して、主被写体認識部108にて決定された主被写体に対応した、測距・測光・測色枠をそれぞれ設定する。その後、CPU106は制御手段として機能し、撮像手段として機能するレンズ101、絞り102、撮像素子103、及びカメラ信号処理部105を制御する。そして、測距・測光・測色枠検出部111において設定された枠に合わせ、AF(Auto Focus)/AE(Auto Exposure)/AWB(Auto White Balance)それぞれにおいて、最適なカメラ制御を行う。なお、AF、AE、AWB以外に、さらに電子ズーム制御を行い、さらに最適なカメラ制御を行うようにしてもよい。
【0024】
コーデック部112は、生成された画像データの情報量を圧縮する際に符号量の割り当てを行うものであり、主被写体認識部108において特定された主被写体を中心に、CPU106の制御により情報量圧縮の際に最適な符号量の割り当てを行う。
【0025】
次に、本実施形態における撮像装置100における顔検出によるカメラ制御について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る撮像装置100における顔検出によるカメラ制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、撮影を開始することにより処理を開始する。そして、ステップS201において、顔検出回路107は、顔検出を行い、シーンの人物の顔領域を特定する。そして、ステップS202において、顔検出の結果から人物の数を特定する。
【0026】
次に、ステップS203において、表情変化量測定部109は、特定された顔領域の表情検出を開始する。そして、ステップS204において、特定した人数分の表情検出を行ったか否かを判断する。この判断の結果、特定した人数分の表情検出を行っていない場合は、そのまま処理を繰り返す。一方、ステップS204の判断の結果、特定した人数分の表情検出を行った場合は、ステップS205に進む。
【0027】
次に、ステップS205において、表情変化量測定部109は、それぞれの人物の表情の変化量(特徴ベクトル)を算出する。次に、ステップS206において、優先順位決定部110は、人物毎に表情の変化量が大きい順に優先順位をつける。そして、ステップS207において、ステップS206でつけた優先順位の一番高かった人物を主被写体として特定する。
【0028】
次に、ステップS208において、測距・測光・測色枠検出部111は、ステップS207で特定された主被写体を中心とした測距・測光・測色枠を設定する。そして、ステップS209において、CPU106により、ステップS208で設定された測距枠・測光枠・測色枠に応じてそれぞれ最適なカメラ制御を行う。
【0029】
以下、カメラ制御についてそれぞれ具体的に述べる。焦点制御(AF)においては、ステップS208で設定された測距枠をもとに制御を行う。そして、合焦していると判断すると、合焦制御値(フォーカスレンズ駆動量)を算出してCPU106の内部メモリに記憶する。
【0030】
また、露出制御(AE)においては、ステップS208で設定された測光枠をもとに制御を行う。そして、露出が適正であると判断すると、露出制御値(シャッタースピードTv及び絞り値Av)を算出してCPU106の内部メモリに記憶する。
【0031】
さらに、ホワイトバランス制御(AWB)においては、ステップS208で設定された測色枠をもとに制御を行う。そして、ホワイトバランスが適正であると判断すると、ホワイトバランス制御値(ホワイトバランスゲイン)を算出してCPU106の内部メモリに記憶する。
【0032】
次に、ステップS210において、ステップS207で決定された主被写体に応じて、コーデック部112は、CPU106の制御により情報量を圧縮する際に最適な符号量の割り当てを行う。具体的には、主被写体の人物に対して多くの符号量を割り当てられるように符号量を制御する。そして、割当てられた符号量に応じて、入力された画像データの情報量を圧縮符号化し、記憶部114に記憶して、処理を終了する。
【0033】
また、ステップS205における表情の変化量の算出は、人の大きさや位置に共通性がある被写体群を処理対象とするものとする。さらに、ステップS206における主被写体の優先順位付けには、画面内での中心あるいは周辺などの位置も判定基準に加えてもよい。
【0034】
ここで、本実施形態では、複数人で会話しているときにおける表情の変化量の大きさから主被写体を特定したが、話し手が次々に変わり主被写体の特定が難しい場合もある。この場合、ある一定の長さの撮影時間を設け、その撮像時間内での平均値を用いて主被写体を特定し、その人物に対して徐々にカメラ制御を行うようにしてもよい。また、状況によっては、顔の器官のパーツのうち、口の動きだけに限定するなど顔の器官に重み付けして、主被写体を特定してもよい。
【0035】
また、表情の変化量により主被写体と特定された人物が、よそ見などをした場合は、ある一定期間検出を続けた後に検出が困難となる場合もある。この場合は、主被写体はそのシーンを離れ、主被写体が別の人物に移ったとみなし、再度、表情の変化量を測定し、主被写体を特定する。
【0036】
以上のように本実施形態によれば、主被写体認識部108により、検出された人物の表情の変化量(特徴ベクトル)を算出し、表情の変化量が最も大きい人物を主被写体と特定するようにした。これにより、複数の人物を撮影する際に、撮影者が撮影状況を十分に把握していない場合でも、特定した主被写体を基準にしてカメラ制御を行うことができる。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本実施形態における撮像装置について、図3のブロック図及び図4のフローチャートを参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る撮像装置の構成例を示すブロック図である。以下、第1の実施形態と共通の構成に関しては、説明を割愛する。なお、第1の実施形態との相違点は、主被写体認識部308に人物変化量検出部309を設け、さらに、人物変化量検出部309に表情変化量測定部109と動作変化量測定部311とを設けている点である。人物変化量検出部309では、人物の表情の変化量と動作の変化量とを検出する。
【0038】
図4は、本実施形態に係る撮像装置300における顔検出によるカメラ制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
まず、撮影を開始することにより処理を開始する。そして、ステップS401において、顔検出回路107は、顔検出を行い、シーンの人物の顔領域を特定する。そして、ステップS402において、顔検出の結果から人物の数を特定する。
【0039】
次に、ステップS403において、表情変化量測定部109は、特定された人物の顔領域の表情検出を開始する。そして、ステップS404において、動作変化量測定部311は、特定された人物の動作検出を開始する。次に、ステップS405において、特定した人数分の表情検出及び動作検出を行ったか否かを判断する。この判断の結果、特定した人数分の表情検出及び動作検出を行っていない場合は、そのまま処理を繰り返す。一方、ステップS405の判断の結果、特定した人数分の表情検出及び動作検出を行った場合は、ステップS406に進む。
【0040】
次に、ステップS406において、表情変化量測定部109は、それぞれの人物の表情の変化量を算出する。そして、ステップS407において、動作変化量測定部311は、それぞれの人物の動作の変化量を算出する。
【0041】
次に、ステップS408において、人物変化量検出部309は重み付け手段として機能し、ステップS406及びS407において算出された表情及び動作の変化量に対して重み付けを行う。この重み付けを行う方法としては、顔の大きさ(画面に占める割合)に応じて両者の重み付けを切り替える方法や、顔を検出できない(見失った)場合に「動作の変化」を参照する方法、ズーム倍率が高いほど表情の変化を優先させる方法などがある。
【0042】
画面に占める顔の割合に応じて重み付けを行う場合は、顔の割合が大きいほど表情の変化量の重み付けを大きくし、顔の割合が小さいほど動作の変化量の重み付けを大きくする。また、顔を検出できない場合(顔の誤検出の場合)は、表情の変化量の重み付けをなくして、動作の変化量を用いる。さらに、ズーム倍率によって重み付けを行う場合は、拡大ズームであるほど画面に占める顔の割合が大きくなるため、表情の変化量の重み付けを大きくし、縮小ズームであるほど画面に占める顔の割合が小さくなるため、動作の変化量の重み付けを大きくする。本実施形態では、どの重み付け方法を用いてもよい。
【0043】
次に、ステップS409において、優先順位決定部110は、ステップS408で得られた重み付けに従って、人物毎に表情及び動作の変化量の優先順位をそれぞれつける。そして、ステップS410において、ステップS409でつけた優先順位の一番高かった人物を主被写体として特定する。なお、ステップS411〜ステップS413の処理については、第1の実施形態で説明した図2のステップS208〜ステップS210と同じなので説明は割愛する。
【0044】
また、ステップS406における表情の変化量の算出は、人の大きさや位置に共通性がある被写体群を処理対象とするものとする。さらに、ステップS409における主被写体の優先順位付けには、画面内での中心あるいは周辺などの位置も判定基準に加えてもよい。
【0045】
さらに、本実施形態では、表情の変化量及び動作の変化量の重み付けを行い、主被写体を特定した。一方、表情の変化量、動作の変化量の何れか一方を用いて主被写体を特定するようにしてもよい。例えば、ある人物における画面に占める顔の割合が所定値よりも大きい場合には表情の変化量を算出し、所定値よりも小さい場合は、動作の変化量を算出し、主被写体を特定してもよい。
【0046】
以上のように本実施形態によれば、主被写体認識部108により、検出された人物の表情の変化量及び動作の変化量を算出し、重み付けに従って、表情及び動作の変化量が最も大きい人物を主被写体と特定するようにした。これにより、複数の人物を撮影する際に、撮影者が撮影状況を十分に把握していない場合でも、特定した主被写体を基準にしてカメラ制御を行うことができる。
【0047】
(本発明に係る他の実施形態)
前述した本発明の実施形態における撮像装置を構成する各手段、並びに撮像方法の各工程は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0048】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記録媒体等としての実施形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0049】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(実施形態では図2、4に示すフローチャートに対応したプログラム)を、システムまたは装置に直接、または遠隔から供給する場合も含む。そして、そのシステムまたは装置のコンピュータが前記供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される場合を含む。
【0050】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0051】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0052】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどがある。さらに、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM、DVD−R)などもある。
【0053】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する方法がある。そして、前記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0054】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0055】
また、その他の方法として、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記録媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0056】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0057】
さらに、その他の方法として、まず記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。そして、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置における顔検出によるカメラ制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る撮像装置における顔検出によるカメラ制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施形態における表情変化量測定部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図6】眉、目、口の3つの器官に対して特徴点をプロットした例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
101 レンズ
102 絞り
103 撮像素子
104 A/D変換回路
105 カメラ信号処理部
106 CPU
107 顔検出回路
108 主被写体認識部
109 表情変化量測定部
110 優先順位決定部
111 測距・測光・測色枠検出部
112 コーデック部
113 表示部
114 記憶部
309 人物変化量検出部
311 動作変化量測定部
501 顔器官抽出部
502 顔器官特徴点抽出部
503 特徴点変化量測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像手段と、
前記撮像手段による撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量は、フレーム間におけるシーンの差分量であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記特定手段は、画面を横切る人物及びエキストラを除く、画面内に留まっている被写体から前記主被写体を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記特定手段は、人物の大きさ及び位置が共通している被写体群を対象として、前記主被写体を特定することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記特定手段は、前記表情の変化量とともに、画面内での位置も判定して前記主被写体を特定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記主被写体を基準とした焦点制御、露出制御、ホワイトバランス制御または電子ズーム制御となるように前記撮像手段を制御することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像手段と、
前記撮像手段による撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量または動作の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像手段と、
前記撮像手段による撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量の重み付けを行う重み付け手段と、
前記重み付け手段によって重み付けされた条件に従って、前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量に基づいて主被写体を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
前記重み付け手段による重み付けを行う条件とは、画面に占める顔の割合、顔の誤検出、またはズーム倍率であることを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記重み付け手段は、重み付けを行う条件として前記画面に占める顔の割合とした場合は、顔の割合が大きいほど前記表情の変化量の重み付けを大きくし、顔の割合が小さいほど前記動作の変化量の重み付けを大きくすることを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記重み付け手段は、重み付けを行う条件として前記顔の誤検出とした場合は、前記表情の変化量の重み付けをなくして、前記動作の変化量を用いることを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記重み付け手段は、重み付けを行う条件として前記ズーム倍率とした場合は、拡大ズームであるほど前記表情の変化量の重み付けを大きくし、縮小ズームであるほど前記動作の変化量の重み付けを大きくすることを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記制御手段はさらに、前記特定手段によって特定された主被写体に基づいて、前記撮像手段によって生成される画像データの符号量を制御することを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、
前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定工程と、
前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とを有することを特徴とする撮像方法。
【請求項15】
複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、
前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量または動作の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定工程と、
前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とを有することを特徴とする撮像方法。
【請求項16】
複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、
前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量の重み付けを行う重み付け工程と、
前記重み付け工程において重み付けされた条件に従って、前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量に基づいて主被写体を特定する特定工程と、
前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とを有することを特徴とする撮像方法。
【請求項17】
複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、
前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定工程と、
前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項18】
複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、
前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量または動作の変化量に基づいて、主被写体を特定する特定工程と、
前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項19】
複数の人物を撮像して画像データを生成する撮像工程と、
前記撮像工程における撮影時間の経過に応じた前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量の重み付けを行う重み付け工程と、
前記重み付け工程において重み付けされた条件に従って、前記複数の人物の表情の変化量及び動作の変化量に基づいて主被写体を特定する特定工程と、
前記特定工程において特定した主被写体を基準としたカメラ制御となるように前記撮像工程における処理を制御する制御工程とをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項20】
請求項17〜19の何れか1項に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−278287(P2009−278287A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126436(P2008−126436)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】